説明

加熱装置、塗布装置及び加熱方法

【課題】所期の特性を有する塗布膜を形成することができる加熱装置、塗布装置及び加熱方法を提供すること。
【解決手段】塗布膜を有する基板が配置される基板位置を前記塗布膜の膜厚方向に挟む第一加熱部及び第二加熱部と、前記基板位置と前記第一加熱部との第一距離、及び、前記基板位置と前記第二加熱部との第二距離、のうち少なくとも一方を調整する距離調整部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、塗布装置及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Cu、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ga、In、Ti、Znおよびこれらの組合せなどの金属と、S、Se、Te、およびこれらの組合せなどの元素カルコゲンとを含む半導体材料を用いたCIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、高い変換効率を有する太陽電池として注目されている(例えば特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
CIGS型太陽電池は、光吸収層(光電変換層)として例えば上記、Cu、In、Ga、Seの4種類の半導体材料からなる膜を用いる構成になっている。また、CZTS型太陽電池は、光吸収層(光電変換層)として、例えばCu、Zn、Sn、Seの4種類の半導体材料からなる膜を用いる構成になっている。このような太陽電池の構成として、例えばガラスなどからなる基板上にモリブデンなどからなる裏面電極が設けられ、当該裏面電極の上に上記光吸収層が配置される構成が知られている。
【0004】
CIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、従来型の太陽電池に比べて光吸収層の厚さを薄くすることができるため、曲面への設置や運搬が容易となる。このため、高性能でフレキシブルな太陽電池として、広い分野への応用が期待されている。光吸収層を形成する手法として、従来、例えば蒸着法やスパッタリング法などを用いて形成する手法が知られていた(例えば、特許文献2〜特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−340482号公報
【特許文献2】特開2005−51224号公報
【特許文献3】特表2009−537997号公報
【特許文献4】特開平1−231313号公報
【特許文献5】特開平11−273783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対して、本発明者は、光吸収層を形成する手法として、上記半導体材料を液状体で基板上に塗布する手法を提案する。光吸収層を液状体の塗布によって形成する場合、以下の課題が挙げられる。
【0007】
液状体を塗布した後、塗布膜を加熱する焼成工程が行われる。この焼成工程は、塗布膜の光吸収層としての特性に影響を与えるため、より最適な条件で加熱することが必要となる。所期の特性を有する塗布膜を形成するためには、加熱条件を調整可能な構成が求められている。
【0008】
上記のような事情に鑑み、本発明は、所期の特性を有する塗布膜を形成することができる加熱装置、塗布装置及び加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様に係る加熱装置は、塗布膜を有する基板が配置される基板位置を前記塗布膜の膜厚方向に挟む第一加熱部及び第二加熱部と、前記基板位置と前記第一加熱部との第一距離、及び、前記基板位置と前記第二加熱部との第二距離、のうち少なくとも一方を調整する距離調整部とを備える。
【0010】
本発明によれば、塗布膜を有する基板が配置される基板位置を塗布膜の膜厚方向に挟む第一加熱部及び第二加熱部と、基板位置と第一加熱部との第一距離、及び、基板位置と第二加熱部との第二距離、のうち少なくとも一方を調整する距離調整部とを備えるので、基板位置と第一加熱部及び第二加熱部との距離を調整することで、塗布膜に対する加熱条件を調整することができる。これにより、所期の特性を有する塗布膜を形成することができる。
【0011】
上記の加熱装置において、前記距離調整部は、前記第一加熱部及び前記第二加熱部のうち少なくとも一方を前記膜厚方向に移動させる移動部を有する。
本発明によれば、第一加熱部及び第二加熱部のうち少なくとも一方を膜厚方向に移動させることができるので、加熱条件を柔軟に変更することができる。
【0012】
上記の加熱装置において、前記第一加熱部及び前記第二加熱部は、鉛直方向に並んで配置されている。
本発明によれば、第一加熱部及び第二加熱部が鉛直方向に並んで配置されているので、基板を第一加熱部及び第二加熱部の間に配置させやすい構成となる。
【0013】
上記の加熱装置は、前記基板位置に配置される前記基板を保持する基板保持部を更に備える。
本発明によれば、基板位置に配置される基板を保持する基板保持部を備えるので、基板の位置や姿勢が安定した状態で塗布膜の加熱を行うことができる。
【0014】
上記の加熱装置において、前記第一加熱部及び前記第二加熱部のうち、前記基板位置に対して鉛直方向の下側に配置される一方の加熱部は、前記基板保持部を兼ねている。
本発明によれば、第一加熱部及び第二加熱部のうち、基板位置に対して鉛直方向の下側に配置される一方の加熱部が基板保持部を兼ねているので、別途基板保持部を配置させる場合に比べて、省スペース化を図ることができる。
【0015】
上記の加熱装置において、前記距離調整部は、前記第一加熱部及び前記第二加熱部のうち前記基板位置に対して鉛直方向の上側に配置される他方の加熱部が前記塗布膜に接触しないように、前記第一距離及び前記第二距離のうち少なくとも一方を調整する。
本発明によれば、第一加熱部及び第二加熱部のうち基板位置に対して鉛直方向の上側に配置される他方の加熱部が塗布膜に接触しないように加熱を行うことができるので、塗布膜の破損を回避することができる。
【0016】
上記の加熱装置は、前記基板位置、前記第一加熱部及び前記第二加熱部を囲うチャンバーを更に備える。
本発明によれば、基板位置、第一加熱部及び第二加熱部を囲うチャンバーを備えるので、雰囲気の調整を行いやすい環境下で効率的に加熱を行うことができる。
【0017】
上記の加熱装置において、前記チャンバーは、気体を導入する気体導入部を有する。
本発明によれば、チャンバーが、気体を導入する気体導入部を有するので、気体導入部からの気体の導入によりチャンバー内部の雰囲気を維持したり、変更したりすることが可能となる。
【0018】
上記の加熱装置において、前記気体導入部は、前記基板位置との間で前記第一加熱部及び前記第二加熱部のうち少なくとも一方を挟む位置に設けられる。
本発明によれば、気体導入部が、基板位置との間で第一加熱部及び第二加熱部のうち少なくとも一方を挟む位置に設けられるので、基板に対して気体が直接噴射されるのを防ぐことができる。
【0019】
上記の加熱装置において、前記チャンバーは、気体を排出する気体排出部を有する。
本発明によれば、チャンバーが、気体を排出する気体排出部を有するので、気体排出部からの気体の排出によりチャンバー内部の雰囲気を維持したり、変更したりすることが可能となる。
【0020】
上記の加熱装置において、前記チャンバーは、気体を導入する気体導入部及び前記気体を排出する気体排出部を有し、前記気体導入部及び前記気体排出部は、前記基板位置を挟む位置に設けられている。
本発明によれば、チャンバーが、気体を導入する気体導入部及び気体を排出する気体排出部を有し、気体導入部及び気体排出部は、基板位置を挟む位置に設けられているので、気体の導入時及び気体の排出時において、基板に対して気流が直接影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0021】
本発明の第二の態様に係る塗布装置は、易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体の塗布膜を基板に形成する塗布部と、前記塗布膜が形成された前記基板を加熱する加熱部と、前記塗布部と前記加熱部との間で前記基板を搬送する搬送部とを備え、前記加熱部として、本発明の第一の態様に係る加熱装置が用いられる。
本発明によれば、易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体の塗布膜を基板に形成する塗布部と、塗布膜が形成された基板を加熱する加熱部と、塗布部と加熱部との間で基板を搬送する搬送部とを備え、加熱部として、塗布膜に対する加熱条件を調整する加熱装置が用いられるので、所期の特性を有する塗布膜を安定的に形成することができる。
【0022】
本発明の第三の態様に係る加熱方法は、塗布膜を有する基板が配置される基板位置を前記塗布膜の膜厚方向に挟む第一加熱部及び第二加熱部を用いて前記基板を加熱する加熱ステップと、前記基板位置と前記第一加熱部との第一距離、及び、前記基板位置と前記第二加熱部との第二距離、のうち少なくとも一方を調整する距離調整ステップとを含む。
【0023】
本発明によれば、塗布膜を有する基板が配置される基板位置を塗布膜の膜厚方向に挟む第一加熱部及び第二加熱部を用いて基板を加熱し、基板位置と第一加熱部との第一距離、及び、基板位置と第二加熱部との第二距離、のうち少なくとも一方を調整することとしたので、塗布膜に対する加熱条件を調整することができる。これにより、所期の特性を有する塗布膜を形成することができる。
【0024】
上記の加熱方法において、前記基板の加熱が行われている間に前記距離調整ステップを行う。
本発明によれば、基板の加熱が行われている間に、塗布膜に対する加熱条件を調整することができるので、所期の特性を有する塗布膜をより確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、所期の特性を有する塗布膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布装置の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る塗布装置の全体構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るノズルの構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るノズルの構成を示す図。
【図5】本実施形態に係る塗布部の一部の構成を示す図。
【図6】本実施形態に係る減圧乾燥部の構成を示す図。
【図7】本実施形態に係る焼成部の一部の構成を示す図。
【図8】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図9】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図10】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図11】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図12】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図13】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図14】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図15】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図16】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図17】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図18】本発明の変形例に係る加熱装置の構成を示す図。
【図19】本発明の変形例に係る加熱装置の動作を示す図。
【図20】本発明の変形例に係る加熱装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る塗布装置CTRの構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗布装置CTRは、基板Sに液状体を塗布する装置である。塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD、焼成部BK及び制御部CONTを有している。
【0028】
塗布装置CTRは、例えば工場などの床面FLに載置されて用いられる。塗布装置CTRは、一つの部屋に収容される構成であっても構わないし、複数の部屋に分割して収容される構成であっても構わない。塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BKがこの順で一方向に並んで配置されている。
【0029】
なお、装置構成については塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BKがこの順で一方向に並んで配置されることに限られることは無い。例えば、基板供給回収部LUが不図示の基板供給部と不図示の基板回収部に分割されても構わないし、減圧乾燥部VDが省略されても構わない。勿論、一方向に並んで配置されていなくてもよく、不図示のロボットを中心とした上下に積層する配置や、左右に配置する構成でもよい。
【0030】
以下の各図において、本実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するにあたり、表記の簡単のため、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。当該XYZ座標系においては、床面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面において塗布装置CTRの各構成要素(基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BK)が並べられた方向をX方向と表記し、XY平面上でX方向に直交する方向をY方向と表記する。XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0031】
本実施形態では、基板Sとして、例えばガラスや樹脂などからなる板状部材を用いている。本実施形態では更に、基板S上に裏面電極としてスパッタにてモリブデンを形成している。勿論、裏面電極として、他の導電性物質を用いる構成としても構わない。基板Sとして、Z方向視における寸法が330mm×330mmの基板を例に挙げて説明する。なお、基板Sの寸法については、上記のような330mm×330mmの基板に限られることは無い。例えば、基板Sとして、寸法が125mm×125mmの基板を用いても構わないし、寸法が1m×1mの基板を用いても構わない。勿論、上記寸法よりも大きい寸法の基板や小さい寸法の基板を適宜用いることができる。
【0032】
本実施形態では、基板Sに塗布する液状体として、例えばヒドラジンなどの溶媒に、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)または銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、セレン(Se)といった易酸化性の金属材料を含有する液状組成物を用いている。この液状組成物は、CIGSまたはCZTS型太陽電池の光吸収層(光電変換層)を構成する金属材料を含んでいる。
【0033】
本実施形態では、この液状組成物は、CIGSまたはCZTS太陽電池の光吸収層のグレインサイズを確保するための物質を含んでいる。勿論、液状体として、他の易酸化性の金属を分散させた液状体を用いる構成としても構わない。
【0034】
(基板供給回収部)
基板供給回収部LUは、塗布部CTに対して未処理の基板Sを供給すると共に、塗布部CTからの処理済の基板Sを回収する。基板供給回収部LUは、チャンバー10を有している。チャンバー10は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー10の内部には、基板Sを収容可能な収容室10aが形成されている。チャンバー10は、第一開口部11、第二開口部12及び蓋部14を有している。第一開口部11及び第二開口部12は、収容室10aとチャンバー10の外部とを連通する。
【0035】
第一開口部11は、チャンバー10の+Z側の面に形成されている。第一開口部11は、Z方向視で基板Sの寸法よりも大きく形成されている。チャンバー10の外部に取り出される基板Sや、収容室10aへ収容される基板Sは、第一開口部11を介して基板供給回収部LUに出し入れされる。
【0036】
第二開口部12は、チャンバー10の+X側の面に形成されている。第二開口部12は、X方向視で基板Sの寸法よりも大きく形成されている。塗布部CTへ供給される基板Sや塗布部CTから戻される基板Sは、第二開口部12を介して基板供給回収部LUに出し入れされる。
【0037】
蓋部14は、第一開口部11を開放又は閉塞させる。蓋部14は、矩形の板状に形成されている。蓋部14は、不図示のヒンジ部を介して第一開口部11の+X側の辺に取り付けられている。このため、蓋部14は、第一開口部11の+X側の辺を中心としてY軸周りに回動する。第一開口部11は、蓋部14をY軸周りに回動させることで開閉可能となっている。
【0038】
収容室10aには、基板搬送部15が設けられている。基板搬送部15は、複数のローラー17を有している。ローラー17は、Y方向に一対配置されており、当該一対のローラー17がX方向に複数並んでいる。
【0039】
各ローラー17は、Y軸方向を中心軸方向としてY軸周りに回転可能に設けられている。複数のローラー17は、それぞれ等しい径となるように形成されており、複数のローラー17の+Z側の端部はXY平面に平行な同一平面上に配置されている。このため、複数のローラー17は、基板SがXY平面に平行な姿勢になるように当該基板Sを支持可能である。
【0040】
各ローラー17は、例えば不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送部15は、複数のローラー17が基板Sを支持した状態で各ローラー17をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、基板SをX方向(+X方向又は−X方向)に搬送する。基板搬送部15としては、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0041】
(塗布部)
塗布部CTは、基板Sに対して液状体の塗布処理を行う。塗布部CTは、チャンバー20及び基台BCを有している。塗布部CTは、床面FLに載置された基台BC上にチャンバー20が配置された構成である。
【0042】
チャンバー20は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー20の内部には、処理室20aが形成されている。チャンバー20は、第一開口部21及び第二開口部22を有している。第一開口部21及び第二開口部22は、処理室20aとチャンバー20の外部とを連通する。
【0043】
第一開口部21は、チャンバー20の−X側の面に形成されている。第二開口部22は、チャンバー20の+X側の面に形成されている。第一開口部21及び第二開口部22は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、第一開口部21及び第二開口部22を介してチャンバー20に出し入れされる。
【0044】
処理室20aには、吐出部31、メンテナンス部32、液状体供給部33、洗浄液供給部34、廃液貯留部35、気体供給排出部37及び基板搬送部25が設けられている。
【0045】
吐出部31は、ノズルNZ、処理ステージ28及びノズル駆動部NAを有している。
図3ノズルNZの構成を示す図である。
図3に示すように、ノズルNZは、長尺状に形成されており、長手方向がX方向に平行になるように配置されている。ノズルNZは、本体部NZa及び突出部NZbを有している。本体部NZaは、内部に液状体を収容可能な筐体である。本体部NZaは、例えばチタン又はチタン合金を含んだ材料を用いて形成されている。突出部NZbは、本体部NZaに対して+X側及び−X側にそれぞれ突出して形成されている。突出部NZbは、ノズル駆動部NAの一部に保持される。
【0046】
図4は、−Z側からノズルNZを見たときの構成を示している。
図4に示すように、ノズルNZは、本体部NZaの−Z側の端部(先端TP)に吐出口OPを有している。吐出口OPは、液状体が吐出される開口部である。吐出口OPは、X方向に長手となるようにスリット状に形成されている。吐出口OPは、例えば長手方向が基板SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成されている。
【0047】
ノズルNZは、例えば上記のCu、In、Ga、Seの4種類の金属が所定の組成比で混合された液状体を吐出する。ノズルNZは、接続配管(不図示)などを介して、それぞれ液状体供給部33に接続されている。ノズルNZは、内部に液状体を保持する保持部を有している。なお、上記保持部に保持された液状体の温度を調整する温調部が配置されていても構わない。
【0048】
図1及び図2に戻って、処理ステージ28は、塗布処理の対象となる基板Sを載置する。処理ステージ28の+Z側の面は、基板Sを載置する基板載置面となっている。当該基板載置面は、XY平面に平行に形成されている。処理ステージ28は、例えばステンレスなどを用いて形成されている。
【0049】
ノズル駆動部NAは、ノズルNZをX方向に移動させる。ノズル駆動部NAは、リニアモータ機構を構成する固定子40及び可動子41を有している。なお、ノズル駆動部NAとしては、例えばボールスクリュー機構など、他の駆動機構が用いられた構成であっても構わない。固定子40は、Y方向に延在されている。固定子40は、支持フレーム38に支持されている。支持フレーム38は、第一フレーム38a及び第二フレーム38bを有している。第一フレーム38aは、処理室20aの−Y側端部に配置されている。第二フレーム38bは、処理室20aのうち第一フレーム38aとの間で処理ステージ28を挟む位置に配置されている。
【0050】
可動子41は、固定子40の延在方向(Y方向)に沿って移動可能である。可動子41は、ノズル支持部材42及び昇降部43を有する。ノズル支持部材42は、門型に形成されており、ノズルNZの突出部NZbを保持する保持部42aを有している。ノズル支持部材42は、昇降部43と共に固定子40に沿って第一フレーム38aと第二フレーム38bとの間をY方向に一体的に移動する。このため、ノズル支持部材42に保持されるノズルNZは、処理ステージ28をY方向に跨いで移動する。ノズル支持部材42は、昇降部43の昇降ガイド43aに沿ってZ方向に移動する。可動子41は、ノズル支持部材42をY方向及びZ方向に移動させる不図示の駆動源を有している。
【0051】
メンテナンス部32は、ノズルNZのメンテナンスを行う部分である。メンテナンス部32は、ノズル待機部44及びノズル先端管理部45を有している。
ノズル待機部44は、ノズルNZの先端TPが乾燥しないように当該先端TPをディップさせる不図示のディップ部と、ノズルNZを交換する場合やノズルNZに供給する液状体を交換する場合にノズルNZ内に保持された液状体を排出する不図示の排出部とを有している。
【0052】
ノズル先端管理部45は、ノズルNZの先端TP及びその近傍を洗浄したり、ノズルNZの吐出口OPから予備的に吐出したりすることで、ノズル先端のコンディションを整える部分である。ノズル先端管理部45は、ノズルNZの先端TPを払拭する払拭部45aと、当該払拭部45aを案内するガイドレール45bと、を有している。ノズル先端管理部45には、ノズルNZから排出された液状体や、ノズルNZの洗浄に用いられた洗浄液などを収容する廃液収容部35aが設けられている。
【0053】
図5は、ノズルNZ及びノズル先端管理部45の断面形状を示す図である。図5に示すように、払拭部45aは、断面視においてノズルNZの先端TP及び先端TP側の斜面の一部を覆う形状に形成されている。
【0054】
ガイドレール45bは、ノズルNZの吐出口OPをカバーするようにX方向に延びている。払拭部45aは、不図示の駆動源などにより、ガイドレール45bに沿ってX方向に移動可能に設けられている。払拭部45aがノズルNZの先端TPに接触した状態でX方向に移動することで、先端TPが払拭されることになる。
【0055】
液状体供給部33は、第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bを有している。第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bには、基板Sに塗布する液状体が収容される。また、第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bは、それぞれ異なる種類の液状体を収容可能である。
【0056】
洗浄液供給部34は、塗布部CTの各部、具体的にはノズルNZの内部やノズル先端管理部45などを洗浄する洗浄液が収容されている。洗浄液供給部34は、不図示の配管やポンプなどを介して、これらノズルNZの内部やノズル先端管理部45などに接続されている。
【0057】
廃液貯留部35は、ノズルNZから吐出された液体のうち再利用しない分を回収する。なお、ノズル先端管理部45のうち、予備吐出を行う部分と、ノズルNZの先端TPを洗浄する部分とが別々に設けられた構成であっても構わない。また、ノズル待機部44において予備吐出を行う構成であっても構わない。
【0058】
気体供給排出部37は、気体供給部37a及び排気部37bを有している。気体供給部37aは、処理室20aに窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給する。排気部37bは、処理室20aを吸引し、処理室20aの気体をチャンバー20の外部に排出する。
【0059】
基板搬送部25は、処理室20aにおいて基板Sを搬送する。基板搬送部25は、複数のローラー27を有している。ローラー27は、処理室20aのY方向の中央部をX方向に横切るように二列に配置されている。各列に配置されるローラー27は、それぞれ基板Sの+Y側端辺及び−Y側端辺を支持する。
【0060】
基板Sを支持した状態で各ローラー27をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー27によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0061】
(減圧乾燥部)
減圧乾燥部VDは、基板S上に塗布された液状体を乾燥させる。減圧乾燥部VDは、チャンバー50、基台BV及びゲートバルブV2及びV3を有している。減圧乾燥部VDは、床面FLに載置された基台BV上にチャンバー50が配置された構成である。
【0062】
チャンバー50は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー50の内部には、処理室50aが形成されている。チャンバー50は、第一開口部51及び第二開口部52を有している。第一開口部51及び第二開口部52は、処理室50aとチャンバー50の外部とを連通する。
【0063】
第一開口部51は、チャンバー50の−X側の面に形成されている。第二開口部52は、チャンバー50の+X側の面に形成されている。第一開口部51及び第二開口部52は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、第一開口部51及び第二開口部52を介してチャンバー50に出し入れされる。
【0064】
処理室50aには、基板搬送部55及び気体供給部58、排気部59及び加熱部53が設けられている。
基板搬送部55は、複数のローラー57を有している。ローラー57は、Y方向に一対配置されており、当該一対のローラー57がX方向に複数並んでいる。複数のローラー57は、第一開口部21を介して処理室50aに配置された基板Sを支持する。
【0065】
基板Sを支持した状態で各ローラー57をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー57によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0066】
図6は、減圧乾燥部VDの構成を示す模式図である。
図6に示すように、気体供給部58は、処理室50aに窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給する。気体供給部58は、第一供給部58a及び第二供給部58bを有している。第一供給部58a及び第二供給部58bは、ガスボンベやガス管などのガス供給源58cに接続されている。処理室50aへのガスの供給は主として第一供給部58aを用いて行われる。第二供給部58bは、第一供給部58aによる気体の供給量を微調整する。
【0067】
排気部59は、処理室50aを吸引し当該処理室50aの気体をチャンバー50の外部に排出して、処理室50aを減圧させる。処理室50aを減圧させることにより、基板Sの液状体に含まれる溶媒の蒸発を促進させ、液状体を乾燥させる。排気部59は、第一吸引部59a及び第二吸引部59bを有している。第一吸引部59a及び第二吸引部59bは、ポンプなどの吸引源59c及び59dに接続されている。処理室50aからの吸引は主として第一吸引部59aを用いて行われる。第二吸引部59bは、第一吸引部59aによる吸引量を微調整する。
【0068】
加熱部53は、処理室50aに配置された基板S上の液状体を加熱する。加熱部53としては、例えば赤外線装置やホットプレートなどが用いられる。加熱部53の温度は、例えば室温〜100℃程度に調整可能である。加熱部53を用いることにより、基板S上の液状体に含まれる溶媒の蒸発を促進させ、減圧下での乾燥処理をサポートする。
【0069】
(焼成部)
焼成部BKは、基板S上に塗布された塗布膜を焼成する。焼成部BKは、チャンバー60及び基台BBを有している。焼成部BKは、床面FLに載置された基台BB上にチャンバー60が配置された構成である。
【0070】
チャンバー60は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー60の内部には、処理室60aが形成されている。チャンバー60は、開口部61を有している。開口部61は、処理室60aとチャンバー60の外部とを連通する。開口部61は、チャンバー60の−X側の面に形成されている。開口部61は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、開口部61を介してチャンバー60に出し入れされる。
【0071】
処理室60aには、基板搬送部65及び気体供給部68、排気部69及び加熱部70が設けられている。
基板搬送部65は、複数のローラー67と、アーム部71とを有している。ローラー67は、基板案内ステージ66をY方向に挟んで一対配置されており、当該一対のローラー67がX方向に複数並んでいる。複数のローラー67は、開口部61を介して処理室60aに配置された基板Sを支持する。
【0072】
基板Sを支持した状態で各ローラー67をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー67によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0073】
アーム部71は、架台74上に配置されており、複数のローラー67と加熱部70との間で基板Sの受け渡しを行う。アーム部71は、搬送アーム72及びアーム駆動部73を有している。搬送アーム72は、基板支持部72a及び移動部72bを有している。基板支持部72aは、基板Sの+Y側及び−Y側の辺を支持する。移動部72bは、基板支持部72aに連結されており、X方向に移動可能であり、かつθZ方向に回動可能である。
【0074】
アーム駆動部73は、移動部72bをX方向又はθZ方向に駆動する。アーム駆動部73によって移動部72bを+X方向に移動させた場合には、基板支持部72aが加熱部70内に挿入されると共に、基板Sが加熱部70のZ方向視中央部に配置されるようになっている。
【0075】
図7は、加熱部70の構成を示す断面図である。
図7に示すように、加熱部70は、架台74上に配置されており、第一収容部81、第二収容部82、第一加熱板83、第二加熱板84、リフト部85、封止部86、気体供給部87、排気部88及び距離調整部89を有している。
第一収容部81は、Z方向視において矩形の枡状に形成されており、開口部が+Z側を向くようにチャンバー60の底部に載置されている。第二収容部82は、Z方向視において矩形の枡状に形成されており、開口部が第一収容部81に対向するように配置されている。第二収容部82は、不図示の昇降機構を用いてZ方向に移動可能である。第二収容部82の縁部82aを第一収容部81の縁部81aに重ねることにより、当該第一収容部81及び第二収容部82の内部が密閉される。
【0076】
第一加熱板83は、第一収容部81に収容されている。第一加熱板83は、基板Sを載置させた状態で当該基板Sを加熱する。第一加熱板83は、例えば石英などを用いて形成されており、内部には赤外線装置やホットプレートなどの加熱装置が設けられている。第一加熱板83の温度は、例えば200℃〜800℃程度に調整可能である。第一加熱板83には複数の貫通孔83aが形成されている。貫通孔83aは、リフト部85の一部を貫通させる。
【0077】
第二加熱板84は、第二収容部82に収容されている。第二加熱板84は、例えば金属材料を用いて形成されており、内部には赤外線装置やホットプレートなどの加熱装置が設けられている。第二加熱板84の温度は、例えば200℃〜800℃程度に調整可能である。
【0078】
第一加熱板83及び第二加熱板84は、それぞれXY平面に平行に配置されている。また、第一加熱板83及び第二加熱板84は、塗布膜Fが形成された基板Sが配置される基板位置SpをZ方向(塗布膜Fの膜厚方向)に挟むように、Z方向(鉛直方向)に並んで配置されている。
【0079】
リフト部85は、アーム部71と第一加熱板83との間で基板Sを移動させる。リフト部85は、複数の支持ピン85aと、当該支持ピン85aを保持してZ方向に移動可能な移動部85bとを有している。図示を判別しやすくするため、図7では支持ピン85aが2つ設けられた構成が示されているが、実際には例えば16個(図7参照)配置させることができる。第一加熱板83に設けられる複数の貫通孔83aは、Z方向視で複数の支持ピン85aに対応する位置に配置されている。
【0080】
封止部86は、第一収容部81の縁部81aに形成されている。封止部86としては、例えば樹脂材料などを用いて形成されたOリングを用いることができる。封止部86は、第二収容部82の縁部82aが第一収容部81の縁部81aに重ねられた状態で、当該第一収容部81と第二収容部82との間を封止する。このため、第一収容部81及び第二収容部82の内部を密閉することができる。
【0081】
気体供給部87は、処理室60aに水素ガス、アルゴンガス、窒素ガスなどを供給する。気体供給部87は、チャンバー60の+Z側の面に接続されている。気体供給部87は、ガスボンベやガス管などの気体供給源87aと、当該気体供給源87aとチャンバー60とを接続する接続管87bとを有している。
【0082】
排気部88は、処理室60aを吸引し、処理室60aの気体をチャンバー60の外部に排出する。排気部88は、チャンバー60の−Z側の面に接続されている。排気部88は、ポンプなどの吸引源88aと、当該吸引源88aとチャンバー60とを接続する接続管88bとを有している。
【0083】
距離調整部89は、第一加熱板83及び第二加熱板84を個別にZ方向に移動させる移動機構である。距離調整部89としては、例えばモーター機構やエアシリンダー機構などが用いられている。距離調整部89は、第一加熱板83及び第二加熱板84をZ方向に移動させることにより、第一加熱板83と基板Sとの第一距離d1を調整すると共に、第二加熱板84と基板Sとの第二距離d2を調整する。
【0084】
また、本実施形態では、溶媒濃度センサSR3及びSR4が設けられている。溶媒濃度センサSR3及びSR4は、上記の溶媒濃度センサSR1及びSR2と同様に、周囲の雰囲気中における液状体の溶媒(本実施形態ではヒドラジン)の濃度を検出し、検出結果を制御部CONTに送信する。溶媒濃度センサSR3は、処理室60aのうち架台74上の加熱部70の+Y側に配置されている。溶媒濃度センサSR3は、加熱部70から外れた位置に配置されている。溶媒濃度センサSR4はチャンバー60の外部に配置されている。本実施形態では、空気よりも比重が大きいヒドラジンの濃度を検出するため、溶媒濃度センサSR3及びSR4は、上記溶媒濃度センサSR1及びSR4と同様に、それぞれ基板Sの搬送経路よりも鉛直方向の下側に配置されている。また、チャンバー60の外部にも溶媒濃度センサSR4を配置することにより、チャンバー60からのヒドラジンの漏出があった場合にも検出可能である。
【0085】
(基板搬送経路)
基板供給回収部LUの第二開口部12、塗布部CTの第一開口部21並びに第二開口部22、減圧乾燥部VDの第一開口部51並びに第二開口部52、焼成部BKの開口部61は、X方向に平行な直線上に並んで設けられている。このため、基板Sは、X方向に直線上に移動する。また、基板供給回収部LUから焼成部BKの加熱部70に収容されるまでの経路においては、Z方向の位置が保持されている。このため、基板Sによる周囲の気体の攪拌が抑制される。
【0086】
(アンチチャンバー)
図1に示すように、チャンバー20には、アンチチャンバーAL1〜AL3が接続されている。
アンチチャンバーAL1〜AL3は、チャンバー20の内外を連通して設けられている。アンチチャンバーAL1〜AL3は、それぞれ処理室20aの構成要素をチャンバー20の外部へ取り出したり、チャンバー20の外部から処理室20aに当該構成要素を入れ込んだりするための経路である。
【0087】
アンチチャンバーAL1は、吐出部31に接続されている。吐出部31に設けられるノズルNZは、アンチチャンバーAL1を介して処理室20aへの出し入れが可能となっている。アンチチャンバーAL2は、液状体供給部33に接続されている。液状体供給部33は、アンチチャンバーAL2を介して処理室20aへの出し入れが可能となっている。
【0088】
アンチチャンバーAL3は、液状体調合部36に接続されている。液状体調合部36では、アンチチャンバーAL3を介して液体を処理室20aに出し入れ可能となっている。また、アンチチャンバーAL3は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。このため、例えば塗布部CTにおいて液状体の試し塗りを行う場合、アンチチャンバーAL3から未処理の基板Sを処理室20aに供給することが可能である。また、試し塗りを行った後の基板SをアンチチャンバーAL3から取り出すことが可能である。また、緊急時などにアンチチャンバーAL3から臨時に基板Sを取り出すことも可能である。
【0089】
また、チャンバー60には、アンチチャンバーAL4が接続されている。
アンチチャンバーAL4は、加熱部70に接続されている。アンチチャンバーAL4は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。このため、例えば加熱部70において基板Sの加熱を行う場合、アンチチャンバーAL4から基板Sを処理室60aに供給することが可能である。また、加熱処理を行った後の基板SをアンチチャンバーAL4から取り出すことが可能である。
【0090】
(グローブ部)
図1に示すように、チャンバー20には、グローブ部GX1が接続されている。また、チャンバー60には、グローブ部GX2が接続されている。
グローブ部GX1及びGX2は、作業者がチャンバー20及び60内にアクセスするための部分である。作業者がグローブ部GX1及びGX2内に手を挿入することにより、チャンバー20及び60内のメンテナンス動作などを行うことができるようになっている。グローブ部GX1及びGX2は、袋状に形成されている。グローブ部GX1及びGX2は、それぞれチャンバー20及び60の複数個所に配置されている。グローブ部GX1及びGX2内に作業者が手を入れたか否かを検出するセンサなどがチャンバー20及び60内に配置されていても構わない。
【0091】
(ゲートバルブ)
基板供給回収部LUの第二開口部12と塗布部CTの第一開口部21との間には、ゲートバルブV1が設けられている。ゲートバルブV1は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV1をZ方向に移動させることで、基板供給回収部LUの第二開口部12と塗布部CTの第一開口部21とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部12及び第一開口部21が同時に開放されると、これら第二開口部12と第一開口部21との間で基板Sの移動が可能となる。
【0092】
塗布部CTの第二開口部22と減圧乾燥部VDの第一開口部51との間には、ゲートバルブV2が設けられている。ゲートバルブV2は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV2をZ方向に移動させることで、塗布部CTの第二開口部22と減圧乾燥部VDの第一開口部51とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部22及び第一開口部51が同時に開放されると、これら第二開口部22と第一開口部51との間で基板Sの移動が可能となる。
【0093】
減圧乾燥部VDの第二開口部52と焼成部BKの開口部61との間には、ゲートバルブV3が設けられている。ゲートバルブV3は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV3をZ方向に移動させることで、減圧乾燥部VDの第二開口部52と焼成部BKの開口部61とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部52及び開口部61が同時に開放されると、これら第二開口部52と開口部61との間で基板Sの移動が可能となる。
【0094】
(制御装置)
制御部CONTは、塗布装置CTRを統括的に制御する部分である。具体的には、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD、焼成部BKにおける動作、ゲートバルブV1〜V3の動作などを制御する。一例として、制御部CONTは、焼成部BKの第一加熱板83と基板Sとの第一距離d1の調整や、第二加熱板84と基板Sとの第二距離d2の調整などを行わせる。また、例えば、溶媒濃度センサSR1〜SR4による検出結果に基づいて、気体供給部37aの供給量を調整する。制御部CONTは、処理時間の計測等に用いる不図示のタイマーなどを有している。
【0095】
(塗布方法)
次に、本実施形態に係る塗布方法を説明する。本実施形態では、上記のように構成された塗布装置CTRを用いて基板S上に塗布膜を形成する。塗布装置CTRの各部で行われる動作は、制御部CONTによって制御される。
【0096】
制御部CONTは、まず、外部から基板供給回収部LUに基板Sを搬入させる。この場合、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞された状態として、蓋部14を開けて基板Sをチャンバー10の収容室10aに収容させる。基板Sが収容室10aに収容された後、制御部CONTは、蓋部14を閉じさせる。
【0097】
蓋部14が閉じられた後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を開放させ、チャンバー10の収容室10aと塗布部CTのチャンバー20の処理室20aとを連通させる。ゲートバルブV1を開放させた後、制御部CONTは、基板搬送部15を用いて基板SをX方向へ搬送する。
【0098】
塗布部CTの処理室20aに基板Sの一部が挿入された後、制御部CONTは、基板搬送部25を用いて基板Sを処理室20aに完全に搬入させる。基板Sが搬入された後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させる。制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させた後、基板Sを処理ステージ28へと搬送する。
【0099】
図8は、塗布部CTの構成を簡略化し一部の構成を省略して示す図である。以下、図9〜図12においても同様である。図8に示すように、基板Sが処理ステージ28上に載置されると、塗布部CTにおいて塗布処理が行われる。当該塗布処理に先立って、制御部CONTは、ゲートバルブV1及びV2が閉塞された状態とし、気体供給部37a及び排気部37bを用いて不活性ガスの供給及び吸引を行わせる。
【0100】
この動作により、処理室20aの雰囲気及び圧力が調整される。処理室20aの雰囲気及び圧力の調整後、制御部CONTは、ノズル駆動部NA(図8では不図示)を用いてノズルNZをノズル待機部44からノズル先端管理部45へと移動させる。制御部CONTは、以後塗布処理の間、処理室20aの雰囲気及び圧力の調整動作を継続して行わせる。
【0101】
ノズルNZがノズル先端管理部45に到達した後、制御部CONTは、図9に示すように、ノズルNZに対して予備吐出動作を行わせる。予備吐出動作では、制御部CONTは、吐出口OPから液状体Qを吐出させる。予備吐出動作の後、制御部CONTは、図10に示すように、払拭部45aをガイドレール45bに沿ってX方向に移動させ、ノズルNZの先端TP及びその近傍の傾斜部を払拭させる。
【0102】
ノズルNZの先端TPを払拭させた後、制御部CONTは、ノズルNZを処理ステージ28へ移動させる。ノズルNZの吐出口OPが基板Sの−Y側端部に到達した後、制御部CONTは、図11に示すように、ノズルNZを+Y方向に所定速度で移動させつつ、吐出口OPから基板Sへ向けて液状体Qを吐出させる。この動作により、基板S上には液状体Qの塗布膜が形成される。
【0103】
基板Sの所定領域に液状体Qの塗布膜を形成した後、制御部CONTは、基板搬送部25を用いて基板Sを処理ステージ28から第二ステージ26Bへと+X方向に移動させる。また、制御部CONTは、ノズルNZを−Y方向へ移動させ、ノズル待機部44へと戻す。
【0104】
基板Sがチャンバー20の第二開口部22に到達した後、制御部CONTは、ゲートバルブV2を開放させ、基板Sを塗布部CTから減圧乾燥部VDへと搬送させる。基板Sが減圧乾燥部VDに設けられるチャンバー50の処理室50aに収容された後、制御部CONTは、ゲートバルブV2を閉塞させ、処理室50aにおいて基板Sの減圧乾燥処理を行わせる。
【0105】
減圧乾燥処理において、制御部CONTは、気体供給部58を用いて処理室50aの雰囲気を調整させると共に、排気部59を用いて処理室50aを減圧させる。この動作により処理室50aが減圧すると、基板Sに形成された液状体Qの塗布膜に含まれる溶媒の蒸発が促進され、塗布膜が乾燥する。なお、制御部CONTは、加熱部53を用いることにより、基板S上の液状体に含まれる溶媒の蒸発を促進させ、減圧下での乾燥処理をサポートさせても構わない。この処理により、基板S上に塗布膜F(図13参照)が形成される。
【0106】
減圧乾燥処理が行われた後、制御部CONTは、ゲートバルブV3を開放させ、基板Sを減圧乾燥部VDから焼成部BKへと搬送させる。基板Sが焼成部BKに設けられるチャンバー60の処理室60aに収容された後、制御部CONTはゲートバルブV3を閉塞させる。
【0107】
基板支持部72aの移動により基板Sが第一加熱板83上の中央部に配置された後、制御部CONTは、リフト部85を+Z方向に移動させる。この動作により、基板Sは搬送アーム72の基板支持部72aから離れ、リフト部85の複数の支持ピン85aに支持される。このようにして基板Sが基板支持部72aからリフト部85へと渡される。基板Sがリフト部85の支持ピン85aによって支持された後、制御部CONTは、基板支持部72aを加熱部70の外部へ−X方向に退避させる。
【0108】
基板支持部72aを退避させた後、制御部CONTは、図15に示すように、リフト部85を−Z方向に移動させると共に、第二収容部82を−Z方向に移動させる。この動作により、第二収容部82の縁部82aが第一収容部81の縁部81aに重なり、縁部82aと縁部81aとの間で封止部86が挟まれた状態となる。このため、第一収容部81、第二収容部82及び封止部86によって密閉された焼成室80が形成される。
【0109】
焼成室80を形成した後、制御部CONTは、図16に示すように、リフト部85を−Z方向へ移動させて基板Sを第一加熱板83上に載置させる。基板Sが第一加熱板83上に載置された後、制御部CONTは、第二加熱板84を−Z方向に移動させ、第二加熱板84と基板Sとを近づける。また、このとき制御部CONTは、距離調整部89を用いて、第一加熱板83及び第二加熱板84のZ方向の位置を調整させる。
【0110】
なお、本実施形態では、基板Sを第一加熱板83上に載置させるため、基板Sと第一加熱板83との第一距離d1は0のまま固定される。したがって、当該調整により、第二加熱板84と基板Sとの第二距離d2が調整されることになる。
【0111】
第二加熱板84のZ方向の位置を調整させた後、図17に示すように、気体供給部87を用いて焼成室80に窒素ガスもしくは硫化水素ガスを供給すると共に、排気部88を用いて焼成室80を吸引させる。この動作により、焼成室80の雰囲気及び圧力が調整されると共に、第二収容部82から第一収容部81にかけて窒素ガスもしくは硫化水素ガスの気流が形成される。
【0112】
制御部CONTは、窒素ガスもしくは硫化水素ガスの気流が形成された状態で、第一加熱板83及び第二加熱板84を作動させ、基板Sの焼成動作を行わせる。この動作により、基板Sの塗布膜Fから蒸発する溶媒成分などが気流によって押し流され、排気部88から吸引される。また、窒素ガスもしくは硫化水素ガスの気流が基板Sに直接噴射されず、第二加熱板84を介して供給されるため、塗布膜Fの形状に影響が及ぶのを防ぐことができる。
【0113】
制御部CONTは、第一加熱板83及び第二加熱板84による加熱動作を行わせつつ、距離調整部89を用いて第二加熱板84のZ方向の位置を調整させても構わない。この動作により、第二加熱板84と基板Sとの間の第二距離d2が調整され、塗布膜Fに対する最適な加熱状態が形成される。また、第一加熱板83と排気部88との距離、及び、第二加熱板84と気体供給部87との距離が調整されるため、窒素ガスもしくは硫化水素ガスの気流についても調整されることになる。
【0114】
焼成動作が完了した後、制御部CONTは、基板Sを−X方向へ搬送させる。具体的には、加熱部70からアーム部71、基板案内ステージ66を経て焼成部BKから搬出され、減圧乾燥部VD、塗布部CTを経て基板供給回収部LUへ戻される。基板Sが基板供給回収部LUへ戻された後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させた状態で蓋部14を開放させる。その後、作業者は、チャンバー10内の基板Sを回収し、新たな基板Sをチャンバー10の収容室10aに収容させる。
【0115】
なお、基板Sが基板供給回収部LUへ戻された後、基板Sに形成された塗布膜F上に更に別の塗布膜を重ねて形成する場合、制御部CONTは、再度基板Sを塗布部CTへ搬送させ、塗布処理、減圧乾燥処理及び焼成処理を繰り返して行わせる。このようにして基板S上に塗布膜Fが形成される。
【0116】
以上のように、本実施形態では、塗布膜Fを有する基板Sが配置される基板位置Spを塗布膜Fの膜厚方向に挟む第一加熱板83及び第二加熱板84と、基板位置Spと第一加熱板83との第一距離d1、及び、基板位置Spと第二加熱板84との第二距離d2を調整する距離調整部89とを備えるので、基板位置Spと第一加熱板83及び第二加熱板84との距離を調整することで、塗布膜Fに対する加熱条件を調整することができる。これにより、所期の特性を有する塗布膜Fを形成することができる。
【0117】
また、本実施形態では、易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体の塗布膜Fを基板Sに形成する塗布部CTと、塗布膜Fが形成された基板Sを加熱する焼成部BKと、塗布部CTと焼成部BKとの間で基板を搬送する基板搬送部55、65及びアーム部71とを備え、焼成部BKとして、塗布膜Fに対する加熱条件を調整する上記の構成が用いられるので、所期の特性を有する塗布膜Fを安定的に形成することができる。
【0118】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態においては、塗布部CTの構成として、スリット型のノズルNZを用いた構成としたが、これに限られることは無く、例えば中央滴下型の塗布部を用いても構わないし、インクジェット型の塗布部を用いても構わない。また、例えば基板S上に配置される液状体をスキージなどを用いて拡散させて塗布する構成であっても構わない。
【0119】
また、上記実施形態において、塗布装置CTRが一つの部屋に収容される構成である場合、当該部屋の雰囲気を調整する気体供給排出部が設けられた構成であっても構わない。この場合、当該気体供給排出部を用いて部屋の雰囲気中のヒドラジンを排出することができるため、より確実に塗布環境の変化を抑制することができる。
【0120】
また、上記実施形態においては、基板SがXY平面に平行に配置される場合において第一加熱板83及び第二加熱板84が基板SをZ方向に挟むように鉛直方向に並んで配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
例えば、図18に示すように、基板SがYZ平面に平行に配置される場合においては、第一加熱板83及び第二加熱板84が基板SをX方向に挟むように水平方向に並んで配置された構成であっても構わない。
【0121】
また、上記実施形態においては、焼成動作を行う際、基板Sを第一加熱板83上に載置させた状態で加熱を行う態様を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
例えば、図19に示すように、基板Sがリフト部85の支持ピン85aに支持された状態で加熱を行うようにしても構わない。この場合、基板Sに対して、第一加熱板83及び第二加熱板84の両方をZ方向に移動させることができ、第一距離d1及び第二距離d2の両方を調整することができる。このため、基板Sに対して最適な加熱状態を形成することができる。
【0122】
また、上記実施形態では、基板Sの鉛直方向の上側(+Z側)から下側へ気体を流通させる構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
例えば、図20に示すように、第一収容部81に気体供給部87が設けられ、第二収容部82に排気部88が設けられた構成であっても構わない。この場合、気体供給部87から供給される気体としては、空気よりも軽い水素ガスなどが好ましい。
【0123】
また、上記実施形態では、距離調整部89が第一加熱板83及び第二加熱板84の両方を移動させる態様を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、第一加熱板83及び第二加熱板84のいずれか一方のみを移動させ、他方を固定させておく態様であっても構わない。
【符号の説明】
【0124】
CTR…塗布装置 S…基板 CT…塗布部 BK…焼成部 CONT…制御部 NZ…ノズル F…塗布膜 Sp…基板位置 d1…第一距離 d2…第二距離 80…焼成室 81…第一収容部 83…第一加熱板 84…第二加熱板 85a…支持ピン 87…気体供給部 88…排気部 89…距離調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布膜を有する基板が配置される基板位置を前記塗布膜の膜厚方向に挟む第一加熱部及び第二加熱部と、
前記基板位置と前記第一加熱部との第一距離、及び、前記基板位置と前記第二加熱部との第二距離、のうち少なくとも一方を調整する距離調整部と
を備える加熱装置。
【請求項2】
前記距離調整部は、前記第一加熱部及び前記第二加熱部のうち少なくとも一方を前記膜厚方向に移動させる移動部を有する
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第一加熱部及び前記第二加熱部は、鉛直方向に並んで配置されている
請求項1又は請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記基板位置に配置される前記基板を保持する基板保持部を更に備える
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第一加熱部及び前記第二加熱部のうち、前記基板位置に対して鉛直方向の下側に配置される一方の加熱部は、前記基板保持部を兼ねている
請求項3に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記距離調整部は、前記第一加熱部及び前記第二加熱部のうち前記基板位置に対して鉛直方向の上側に配置される他方の加熱部が前記塗布膜に接触しないように、前記第一距離及び前記第二距離のうち少なくとも一方を調整する
請求項4又は請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記基板位置、前記第一加熱部及び前記第二加熱部を囲うチャンバーを更に備える
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記チャンバーは、気体を導入する気体導入部を有する
請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記気体導入部は、前記基板位置との間で前記第一加熱部及び前記第二加熱部のうち少なくとも一方を挟む位置に設けられる
請求項8に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記チャンバーは、気体を排出する気体排出部を有する
請求項7から請求項9のうちいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記チャンバーは、気体を導入する気体導入部及び前記気体を排出する気体排出部を有し、
前記気体導入部及び前記気体排出部は、前記基板位置を挟む位置に設けられている
請求項7から請求項10のうちいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項12】
易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体の塗布膜を基板に形成する塗布部と、
前記塗布膜が形成された前記基板を加熱する加熱部と、
前記塗布部と前記加熱部との間で前記基板を搬送する搬送部と
を備え、
前記加熱部として、請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の加熱装置が用いられる
塗布装置。
【請求項13】
塗布膜を有する基板が配置される基板位置を前記塗布膜の膜厚方向に挟む第一加熱部及び第二加熱部を用いて前記基板を加熱する加熱ステップと、
前記基板位置と前記第一加熱部との第一距離、及び、前記基板位置と前記第二加熱部との第二距離、のうち少なくとも一方を調整する距離調整ステップと
を含む加熱方法。
【請求項14】
前記基板の加熱が行われている間に前記距離調整ステップを行う
請求項13に記載の加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−250230(P2012−250230A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118611(P2012−118611)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】