説明

加熱装置および玄米の炊飯前処理方法

【課題】炊飯前の玄米をマイクロ波加熱し、吸水を促進させて玄米を短時間で炊飯できるようにする簡単な構成の加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱室12と、マイクロ波発生手段13と、加熱室12の左奥底に配設し、加熱室12に蒸気を供給する蒸気供給手段16と、制御手段を備え、操作部からの操作により、加熱室12の玄米11の加熱を開始すると、制御手段はマイクロ波発生手段13、蒸気供給手段16、温度検出手段28、容器検出手段29、モータ30の動作を開始し、玄米11の炊飯前にマイクロ波加熱し、玄米の皮や米粒内部に細かい亀裂を発生させるので玄米を短時間で炊飯することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波と蒸気を用いた加熱装置と玄米の炊飯前処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯に供する前の玄米に施す前処理方法には、玄米の吸水を促進させるためにあらかじめ玄米をマイクロ波加熱する方法が知られている。
【0003】
例えば、上下に設けたベルトコンベア間の密閉空間に生の玄米を保持して搬送しながら、その生の玄米にマイクロ波照射工程を行う方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、生米供給手段によって供給された生米粒を薄いシート状にして載置し、無端コンベアである搬送手段でマイクロ波の照射手段内を通過させながらマイクロ波加熱する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2984223号公報
【特許文献2】特開2003−153657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、玄米をベルトコンベアで搬送するため、大規模な設備が必要となり家庭で実際に設置使用することはできない。また、マイクロ波加熱では、被加熱物の厚さが極端に薄い状態の場合、加熱効率が低下したり米粒総の厚さの違いにより加熱むらが生じる。従来技術では、搬送中に玄米を薄く広げた状態でマイクロ波加熱するため、加熱効率の低下や加熱むらが生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡単な構成の装置で炊飯前の玄米をマイクロ波加熱し、吸水を促進させて玄米を短時間で炊飯できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱装置は、炊飯前の玄米を一塊にまとめてマイクロ波を照射して加熱し、前記玄米が一定温度に達するとマイクロ波の照射を終了する機能を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱装置および玄米の炊飯前処理方法によれば、玄米を効率よくマイクロ波加熱し、玄米の皮や米粒内部に細かい亀裂を発生させ、また高温になった玄米と炊飯水の温度差により玄米の吸水を促進することができ、短時間に玄米を炊飯することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、炊飯前の玄米を一塊にまとめてマイクロ波を照射して加熱し、前記玄米が一定温度に達するとマイクロ波の照射を終了する機能を有する。これにより、玄米を効率よくマイクロ波加熱し、玄米の皮や米粒内部に細かい亀裂を発生させ、また高温になった玄米と炊飯水の温度差により玄米の吸水を促進することができ、短時間に玄米を炊飯することができる。
【0009】
第2の発明は、特に第1の発明の加熱手段は、加熱する玄米は基準量を3合とするものである。これにより、マイクロ波照射用の加熱装置の容量が変更しても、玄米の加熱を一定に収めることができる。
【0010】
第3の発明は、特に第1の発明の加熱装置は、玄米は洗米後にマイクロ波照射するものである。これにより、マイクロ波の加熱効率を上げることができる。
【0011】
第4の発明は、特に第1の発明の加熱装置は、玄米は浸水した状態でマイクロ波照射するものである。これにより、マイクロ波を照射して玄米を加熱すると同時に水温も上昇させ、炊飯時間を短縮することができる。
【0012】
第5の発明は、特に第1の発明の加熱装置は、マイクロ波加熱の際に前記玄米に蒸気の照射を併用するものである。これにより、マイクロ波加熱によって水分が蒸発しやすい上層部の米に給水し、米粒が乾燥することを防ぐことができる。
【0013】
第6の発明は、特に第1の発明の加熱装置は、玄米の表面温度を検出する温度検出手段を備えるものである。これにより、玄米の温度を経時的に測定するため、常に安定した状態で加熱を制御することができる。
【0014】
第7の発明は、特に第1の発明の加熱装置は、マイクロ波は前記玄米の下方から照射する構成とするものである。これにより、加熱むらが生じないようにマイクロ波を照射して加熱することができる。
【0015】
第8の発明は、特に第1の発明の加熱装置は、加熱する玄米の量に応じて照射するマイクロ波の強度を可変するものである。これにより、最小限のマイクロ波で加熱することができるので、無駄なエネルギーを省くことができる。
【0016】
第9の発明は、特に第1の発明の加熱装置は、玄米を入れる容器の形状を検出する容器検出手段を備え、前記マイクロ波の加熱効率が一定値以下になる容器の形状を検出した場合は使用者に前記容器の交換を報知するものである。これにより、常に一定効率で玄米を加熱することができ、省エネを実現できるものである。
【0017】
第10の発明は、特に第1の発明の加熱装置は、複数の容器を載置した場合に、前記マイクロ波の照射パターンを可変するものである。これにより、複数の容器を使用した場合においても、全ての容器の玄米にマイクロ波を満遍なく照射することができるので加熱むらを防ぎ、容器の制限を省くことができるものである。
【0018】
第11の発明は、炊飯前に玄米をマイクロ波加熱して温度を上げ、炊飯時に加水する水を低温とする玄米の炊飯前処理方法とする。これにより、玄米の温度を急激に高温から低温に変動させることにより、玄米の皮や米粒内部に細かな亀裂を発生させ、吸水促進を図ることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱装置の正面断面図、図2は同加熱装置の要部拡大図である。図1、2において、加熱装置10には玄米11を収納する加熱室12が配設されている。収納された玄米11はマイクロ波発生手段13から導波管14、放射アンテナ15を介して、加熱室12の下方から放射されたマイクロ波により誘電加熱される。
【0021】
図1において、加熱室12の左奥底には、蒸気を供給する蒸気供給手段16が配設される。蒸気供給手段16は凹状に構成され蒸発源となる蒸発皿17と、蒸発皿17を下方か
ら加熱する加熱手段18および蒸発皿17を覆う蒸気蓋19を備えている。水タンク20の水は送水管21および給水口22を介して送水手段23により蒸発皿17に給水される。
【0022】
加熱室12の左奥面には、複数の開孔部24、25が設けられ、開孔部24と開孔部25は、加熱室12の外側に配された連結手段26を介して連通されている。開孔部24は蒸気供給手段16で発生した蒸気が送られる開孔部であり、他方の開孔部25は連結手段26を介して開孔部24から流れてきた蒸気を加熱室12に吹出すための開孔部である。蒸気蓋19はその内部に蒸気供給手段16と開孔部24とを連通する空間27を有した形状とし、加熱室12の所定位置に着脱自在に実装される。
【0023】
温度検出手段28は加熱中の玄米11の表面温度を検出し、容器検出手段29はカメラなどから構成され玄米11が入れられている容器形状や数を検出する。
【0024】
放射アンテナ15は、モータ30によって回転駆動あるいは特定の場所に所定時間停止しながらマイクロ波を加熱室12に放射する。
【0025】
制御手段(図示せず)は、操作部(図示せず)からの操作入力信号や温度検出手段28、容器検出手段29からの信号などに基づいて、マイクロ波発生手段13、蒸気供給手段16の加熱手段18、送水手段23、モータ30の動作を制御する。
【0026】
加熱条件や制御条件などは、制御手段と一体化された記憶手段(図示せず)に、一時的あるいは恒久的に記憶される。操作部には、特に図示しないが、表示部、自動加熱操作キー、手動加熱設定キー、加熱開始キー、取消しキーなどが配設される。
【0027】
次に上記構成からなる加熱装置について、その動作、作用を説明する。
【0028】
操作部からの操作により、加熱室12の玄米11の加熱を開始すると、制御手段はマイクロ波発生手段13、蒸気供給手段16、温度検出手段28、容器検出手段29、モータ30の動作を開始する。
【0029】
制御手段は、マイクロ波発生手段13の動作開始と同時に、温度検出手段28と容器検出手段29の検出信号を取り込む。これらの信号により制御手段は玄米11の載置位置、玄米11の入っている容器の形状・数を判定する。
【0030】
玄米11は3合を基準量とする。3合を基準量とする背景は、玄米の含水率は約15%であり、3合とすることで約100gの水分がマイクロ波の加熱負荷となり、マイクロ波加熱を効率よく行うことができる。また、おいしく炊飯を行える量としても適当である。
【0031】
また、玄米11は1個あるいは複数個の容器にいれてマイクロ波加熱するが、見かけ上はそれぞれ一塊になっているような状態とする。マイクロ波は波長の関係から極端に薄い状態では加熱できない。そこで、一塊にすることで効率よく加熱し、かつ加熱むらを防止するものである。
【0032】
玄米11は加熱前に洗米してもしなくてもかまわない。洗米前にマイクロ波加熱する場合は、マイクロ波加熱後に浄水で洗米する工程を炊飯前に挿入する。ただし、洗米は玄米11が熱いうちに行うことが望ましい。玄米11が熱いうちに洗米することで洗米中にも玄米が吸水する効果を高めることができるものである。
【0033】
一方、洗米後にマイクロ波加熱を行う場合は、洗米後にマイクロ波加熱した玄米11は
直接炊飯に使用する。この場合も玄米は熱いうちに行うことが好ましい。
【0034】
さらに、玄米は容器内で浸水した状態でマイクロ波加熱することもできる。玄米を加熱すると同時に周囲の水温も上昇させて吸水を促進することができる。
【0035】
容器検出手段29の検出信号により、制御手段は加熱室12に載置された容器が単数か複数かを判断する。
【0036】
容器が1個の場合は、制御手段はマイクロ波を容器の載置位置に向けて選択集中的に放射するよう放射アンテナ15を制御する。一方、容器が複数個の場合はマイクロ波が加熱室12に万遍なく放射されるように放射アンテナ15を制御する。
【0037】
放射アンテナ15からのマイクロ波は玄米11の容器の下方から放射される。これにより、昇温に伴う玄米の乾燥を防いだり、浸水中は水の対流がおこり満遍なく玄米を加熱することができるものである。
【0038】
制御手段は、あらかじめ設定された加熱条件において送水手段23を制御し、水タンク20から送水管21および給水口22を通して蒸発皿17に送水する。蒸発皿17に入った水は、加熱手段18により加熱される。加熱手段18は複数の加熱手段(図示せず)から構成され、それぞれの加熱手段は単独または複数組み合わせて使用することができる。
【0039】
玄米11加熱中は蒸気供給手段16も動作し、開孔部24、開孔部25から玄米11の載置位置方向に向かって蒸気を吹出す。これにより、容器の上層部の玄米が加熱により乾燥することを防ぎながら玄米の加熱を進めることが出来るものである。
【0040】
制御手段は温度検出手段28の温度検出信号により玄米11が設定温度に到達したことを検知すると、マイクロ波発生手段13の動作を停止する。玄米11の表面温度と内部温度の相関については記憶手段に記憶されており、これらの情報により加熱時間の制御をおこなう。なお、玄米11が設定温度に到達後、一定時間マイクロ波加熱を継続してもかまわない。
【0041】
容器検出手段29の検出信号により、制御手段は容器形状と玄米11の量の関係から加熱効率を演算する。演算結果により、容器が熱効率の低い形状と判断すると、制御手段は容器の変更を促すように使用者に報知する。このときの報知方法は、表示部に表示したり、報知音により報知するなどの手段を採用することができる。
【0042】
温度検出手段28の温度情報や容器検出手段29による容器数の検出信号により、制御手段は加熱室12に載置されている玄米11の量を推定する。玄米が少量の場合は、マイクロ波が吸収されにくいので、マイクロ波強度を断続供給して玄米内部の熱伝導を利用しながら加熱する。一方、玄米が多量の場合は、通常より大きな強度のマイクロ波を連続的に供給する。
【0043】
加熱する玄米11の量に応じてマイクロ波の強度を変化させることで、最適なマイクロ波強度で玄米を加熱することができ、無駄なエネルギーを省くことができる。
【0044】
マイクロ波加熱後の玄米11はマイクロ波加熱により玄米の皮や米粒内部には細かな亀裂が発生し、炊飯中に米が膨張しやすくなる。また、亀裂の入った高温の玄米と低温の炊飯水を同時に入れることで、玄米の温度を急激に高温から低温に変動させることができ、通常の浸漬よりも玄米の吸水が早まり短時間に炊飯できるものである。
【0045】
以上のように本実施の形態によれば、玄米の皮や米粒内部に細かい亀裂を発生させて膨張しやすくし、また高温の玄米と炊飯水の温度差により玄米の吸水を促進させることができるので、短時間に玄米を炊飯することができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、蒸気供給手段16に蒸発皿17を使用したが、蒸気発生に使用する構成はどのようなものを利用してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係わる加熱装置は、マイクロ波を使用して玄米を加熱し、玄米の前処理加熱に使用することができるので、オーブンレンジや電子レンジなどの加熱装置に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理装置の正面断面図
【図2】同加熱調理装置の要部拡大図
【符号の説明】
【0049】
10 加熱装置
11 玄米
12 加熱室
13 マイクロ波発生手段
16 蒸気供給手段
17 蒸発皿(蒸発源)
18 加熱手段(蒸気発生手段)
28 温度検出手段
29 容器検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯前の玄米を一塊にまとめてマイクロ波を照射して加熱し、前記玄米が一定温度に達するとマイクロ波の照射を終了する機能を有した加熱装置。
【請求項2】
玄米は基準量を3合とすることを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
玄米は洗米後にマイクロ波を照射して加熱する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項4】
玄米は浸水した状態でマイクロ波を照射して加熱する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項5】
マイクロ波加熱の際に前記玄米に蒸気の照射を併用しながら加熱する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項6】
玄米の表面温度を検出する温度検出手段を備えた請求項1に記載の加熱装置。
【請求項7】
マイクロ波は前記玄米の下方から照射する構成とした請求項1に記載の加熱装置。
【請求項8】
加熱する玄米の量に応じて照射するマイクロ波の強度を可変する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項9】
玄米を入れる容器の形状を検出する容器検出手段を備え、前記マイクロ波の加熱効率が一定値以下になる容器の形状を検出した場合は使用者に前記容器の交換を報知する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項10】
複数の容器を載置した場合に、前記マイクロ波の照射パターンを可変する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項11】
炊飯前に玄米をマイクロ波加熱して温度を上げ、炊飯時に加水する水を低温とする玄米の炊飯前処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−236513(P2007−236513A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60830(P2006−60830)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】