説明

加熱装置および積層電子デバイス装置の製造方法

【課題】基板接合過程において、加熱される接合基板の温度分布の均一化を図る。
【解決手段】複数の基板を挟んだ一対の基板ホルダを保持する保持部と、保持部に保持された一対の基板ホルダを誘導加熱する誘導加熱部とを備える加熱装置が提供される。加熱装置は、一対の基板ホルダを備え、一対の基板ホルダの少なくとも一方は、誘導加熱部からの磁場により渦電流を生じる導電部材が配される。一対の基板ホルダの少なくとも一方は、導電部材に供給される電圧により基板を静電吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置および積層電子デバイス装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路が形成された2枚のウェハを、接合すべき電極同士が接触するように重ね合わせて、加熱および加圧を行いながら当該2枚のウェハを接合するウェハ接合装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−49066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ウェハ接合装置において、ヒータユニットからの熱伝導によりウェハを加熱する。発熱体の電熱ヒータと加熱対象のウェハとの間に、ヒートモジュール本体、トッププレート、トッププレートカバー、ウェハホルダ等多くの部材を介在する。これらの部材の空間的な熱伝導の差異および相互間の接触の強弱等により、ウェハの温度にムラが生じる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、複数の基板を挟んだ一対の基板ホルダを保持する保持部と、保持部に保持された一対の基板ホルダを誘導加熱する誘導加熱部とを備える加熱装置が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様においては、複数の電子デバイスが形成された複数の基板を挟んだ一対の基板ホルダを準備する工程と、保持部に保持された一対の基板ホルダを介して複数の基板を積層方向に加圧する工程と、保持部に保持された一対の基板ホルダを誘導加熱する工程と、加圧工程および誘導加熱工程により積層された複数の基板を複数の電子デバイスごとに個片化する工程とを備える積層電子デバイス装置の製造方法が提供される。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態である加熱装置100の構造を概略的に示す正面図である。
【図2】上下ステージにより基板および基板ホルダを挟む状態にある加熱装置100のステージ周辺の断面図である。
【図3】図2におけるA−A部の断面図である。
【図4】導電部材による磁気遮蔽効果を概念的に示す。
【図5】下基板ホルダ106の断面図である。
【図6】下基板ホルダ106の裏面を下方から見上げる斜視図である。
【図7】下基板ホルダ106における導電部材の半径方向の導電率分布を示す。
【図8】下基板ホルダ106の他の実施形態である。
【図9】下基板ホルダ106の他の実施形態である。
【図10】積層電子デバイス装置の製造方法のフローチャートを示す。
【図11】他の実施形態である加熱装置のステージ周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、一実施形態である加熱装置100の構造を概略的に示す正面図である。加熱装置100は、真空室110と、上ステージ120と、補助加熱部122と、誘導加熱部124と、下ステージ130と、昇降部140と、上基板ホルダ104と、下基板ホルダ106とを備える。
【0011】
真空室110は、上ステージ120、補助加熱部122、誘導加熱部124、下ステージ130および昇降部140を内部に収容する。真空室110は、気密室を構成し、基板102の接合過程における基板102の酸化および汚染を防ぐ目的で、その内部が一定の真空度および一定のクリーン度に維持される。
【0012】
上ステージ120は、真空室110の天板に固定される。昇降部140は、真空室110の底板に固定される。昇降部140は、シリンダー144とピストン142とを有する。下ステージ130は、昇降部140のピストン142の上に設けられる。昇降部140のピストン142は、外部からの制御信号により上下昇降する。下ステージ130は、ピストン142と共に上下に移動することができる。
【0013】
接合すべき2枚の基板102は、加熱装置100とは別途設けられるアライナーにより、接合すべき電極同士が接触するように位置合せされて重ね合わせられる。さらに、当該2枚の基板102は、上基板ホルダ104と下基板ホルダ106により、位置ずれが起こらないように仮接合された状態で保持される。基板102を保持した上基板ホルダ104と下基板ホルダ106は、ロボットアームにより加熱装置100に装入され、図1に示すように、下ステージ130の上に載置される。
【0014】
下ステージ130は、上昇して、上ステージ120と共に、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を挟み、保持することができる。シリンダー144の油圧を制御しながら下ステージ130を上昇させると、所定の圧力まで2枚の基板102を加圧して、本接合することができる。加圧することにより、2枚の基板102の間に接合すべき電極同士を均一に接触させることができ、均一な接合が実現できる。
【0015】
加熱装置100に装填される基板は、単体のシリコンウェハ、化合物半導体ウェハ、ガラス基板、セラミックス基板等の他、それらに素子、回路、端子等が形成されたものであってよい。装填された基板が、既に複数のウェハを積層して形成された積層基板である場合もある。
【0016】
真空室110は、下ステージ130と上ステージ120により基板102に加圧する場合に、装置の反力により変形すること防ぐ目的で、高剛性材料により形成される。真空室110の壁は、断熱材から形成される。よって、基板102が加熱される場合にも、外部への熱輻射が遮断され、ロボットアーム等周辺に存在する装置、機器への悪影響を防ぎ、高精度に基板の接合を実現できる。
【0017】
誘導加熱部124は、筒状を有する。誘導加熱部124は、下ステージ130と上ステージ120により基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を挟むときに、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を、基板102を挟む方向に直交する方向に囲んで配される。即ち、誘導加熱部124は、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を周囲から囲むことができるように、固定部材126により真空室110の天板に固定される。
【0018】
補助加熱部122は、筒状を有する。補助加熱部122は、誘導加熱部124と上基板ホルダ104および下基板ホルダ106との間に配される。補助加熱部122は、下ステージ130と上ステージ120により基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を挟むときに、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を周囲から囲むことができるように、上ステージ120に固定される。
【0019】
図2は、上下ステージにより基板および基板ホルダを挟む状態にある加熱装置100のステージ周辺の断面図である。上基板ホルダ104および下基板ホルダ106には、それぞれ導電部材204と導電部材206が配される。補助加熱部122には、補助導電部材208が配される。
【0020】
図3は、図2におけるA−A部の断面図である。図3に示すように、筒状の補助導電部材208は、補助加熱部122の内部に収容され、基板102、および下基板ホルダ106を周囲から囲む。更に、筒状の誘導加熱部124は、補助加熱部122を外周から囲む。図3において、固定部材126も筒状を有し、誘導加熱部124を完全に内部に収容しているが、固定部材126は、誘導加熱部124を確実に固定できれば、部分的に誘導加熱部124をサポートする構造を有してもよい。例えば、固定部材126は、誘導加熱部124の円周上において、120°の間隔で部分的に誘導加熱部124をサポートして真空室110の天板に固定してもよい。
【0021】
誘導加熱部124は、導電部材204および導電部材206を誘導加熱する。導電部材204および導電部材206は、それぞれ上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を加熱して、なお上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を介して、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106により保持された基板102を加熱して接合することができる。この加熱により、2枚の基板102における電極接合面の電極同士を確実に接合することができる。導電部材204および導電部材206は、加熱効率を高める目的で、それぞれ上基板ホルダ104および下基板ホルダ106において、基板102に近い位置に配されることが好ましい。
【0022】
誘導加熱部124は、補助導電部材208を誘導加熱する。補助導電部材208は、補助加熱部122を介して、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を外周側から加熱する。補助導電部材208の加熱により、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106の外周から外部への熱輻射による温度降下を防ぐことができる。よって、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106の内部温度分布の均一化が図れる。
【0023】
誘導加熱部124は、電磁誘導コイルを含む。誘導加熱部124は、電気良導体のパイプ、線材、板などにより、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106の周囲を1周以上巻いたコイルであってよい。当該導体の材料は、銅、アルミニウム等のように電気伝導性のよい材料であることが好ましい。
【0024】
誘導加熱部124は、別途に設けられる高周波交流電源により電力が供給される。当該交流電源の周波数は、40kHzから1MHzまでの範囲内で、加熱温度、加熱レート、加熱対象である導電部材204、導電部材206および補助導電部材208の材質、形状等を考慮して決められる。当該交流電源から供給する電力は、加熱温度、加熱レート、加熱対象である導電部材204、導電部材206および補助導電部材208の材質、形状等を考慮して決められるが、例えば、1kWであってよい。
【0025】
誘導加熱部124は、高周波交流電源により交流電流が供給されると、コイルの内側を通過する磁束を有する磁場を形成する。当該磁場は、交流電流の変化により変化する。磁場の変化は、その磁場に置かれた導電部材204、導電部材206および補助導電部材208の中に渦電流を発生させ、発熱させる。その熱により、上基板ホルダ104、下基板ホルダ106および基板102が加熱される。
【0026】
誘導加熱部124は、導電部材204および導電部材206の直径の1倍以上の長さ(図2において高さ方向長さ)を有することが好ましい。誘導加熱部124の長さを確保することにより、コイル内側に形成される磁場の均一性を図ることができる。
【0027】
導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、導電材料から構成される。導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、誘導加熱により十分加熱される電気抵抗率を有する導電材料から形成される。当該導電材料は、例えば、鉄、スチール、ステンレス、ニッケル、タングステン、タンタル、カーボン等であってよい。
【0028】
導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、板状の導電材料から構成される。基板102を均一に加熱する目的で、導電部材204および導電部材206は、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106の基板保持領域より大きいサイズを有することが好ましい。例えば、図2に示すように、導電部材204および導電部材206が円盤状である場合に、当該円盤の直径が基板102の直径より大きいことが好ましい。また、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、メッシュ状であってもよく、櫛状であってもよい。
【0029】
導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、磁性体であってよい。導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、一定以上の透磁率を有する磁性体であってよい。高い透磁率を有する導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、磁束を通しやすいので、誘導加熱部124により形成した磁束を導電部材204、導電部材206および補助導電部材208に集中させる効果を有する。
【0030】
図4は、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208による磁気遮蔽効果を概念的に示す。導電部材204、導電部材206および補助導電部材208が高い透磁率を有する場合には、磁束が通りやすいので、図4に示すように、磁束は導電部材204、導電部材206および補助導電部材208の内部に集中して、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208の間に磁気回路を形成する。従って、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、基板102に入る磁場を遮蔽して、磁束が基板102に入り、基板102に形成された電気回路などを過剰に加熱して溶かすことを防ぐことができる。即ち、高い透磁率を有する導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、磁気を遮蔽することにより、誘導加熱部124により形成した磁場の基板102に対する悪影響を防止することができる。
【0031】
また、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208が磁性体である場合に、高周波交流電流による磁場の急峻な変化に抵抗して、結果として渦電流による加熱に加えて、ヒステリシス損による加熱効果も得られる。磁性体材料として、鉄、ニッケル、磁性ステンレス、パーマロイ等であってよい。磁性体がキュリー温度より高い温度に加熱されると、磁性を失うので、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、加熱温度より高いキュリー温度を有する磁性体であることが好ましい。
【0032】
図5は、下基板ホルダ106の断面図である。図6は、下基板ホルダ106の裏面を下方から見上げる斜視図である。この下基板ホルダ106は、基板102をその上面に保持する。下基板ホルダ106の外形は、基板102よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。下基板ホルダ106は、下基板ホルダ本体310と、導電部材206とを含む。
【0033】
下基板ホルダ本体310は、セラミックス等により形成される。例えば、下基板ホルダ本体310は、窒化シリコン、窒化アルミニウム、アルミナ等によって形成されてよい。下基板ホルダ本体310は、その上面において基板102を保持する基板保持領域を有する。当該領域が高い平坦性を有して、基板102を静電吸着する。
【0034】
導電部材206は、下基板ホルダ106が静電吸着により基板102を保持する静電吸着用電極の機能を兼ねてよい。即ち、導電部材206は、導電部材206に供給される電圧により基板102を静電吸着することができる。上基板ホルダ104も、下基板ホルダ106と同様に、導電部材204を静電吸着用電極として兼用してよい。よって、以下上基板ホルダ104についての説明を省略する。
【0035】
導電部材206は、ステージ用端子312と、搬送部用端子314とを含む。ステージ用端子312は、加熱装置100の下ステージ130側、又は別途に設けられるアライナーの下ステージ側から導電部材206に静電吸着用電圧を印加するステージ用端子である。搬送部用端子314は、別途に設けられる搬送用ロボット側から導電部材206に静電吸着用電圧を印加する搬送部用端子である。
【0036】
図5は、導電部材206とステージ用端子312および搬送部用端子314との接続関係を示す図面であり、各端子の位置関係を限定する図面ではない。図5は、単極方式の導電部材206を示すが、本実施態様において、静電吸着は双極方式であってもよい。双極方式である場合には、導電部材206は、プラス電極とマイナス電極によって構成される。
【0037】
図6に示すように、下基板ホルダ106の裏面(基板102を載置しない面)には、互いに近接した二つの搬送部用端子314が露出する。下基板ホルダ106の裏面には、搬送部用端子314から離間して、且つ互いに離間した二つのステージ用端子312が露出する。
【0038】
ステージ用端子312は、下基板ホルダ106が下ステージ130に載置された場合、下ステージ130の電力供給端子と当接することにより、下ステージ130から導電部材206へ電力を供給する。搬送部用端子314から離間して、且つ互いに離間した位置に、二つのステージ用端子312を設けることにより、真空室110の真空度により発生する電極間の放電を防止できる。
【0039】
搬送部用端子314は、下基板ホルダ106を下ステージ130に対して搬送する場合、ロボットアームの電力供給端子と当接することにより、ロボットアームから導電部材206へ電力を供給する。搬送部用端子314が互いに近接して配されることにより、ロボットアームの給電部分の大きさを小さくすることができる。
【0040】
誘導加熱部124の形状等の要因により、形成した磁場が、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106が置かれるコイルの内側において均一ではないときに、誘導加熱される導電部材204、導電部材206および補助導電部材208は、それぞれの内部における温度分布も均一にならないおそれがある。この場合に、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208における物理的特性を変更することにより、温度分布の均一化を図ることができる。例えば、導電部材204、導電部材206又は補助導電部材208の内部における導電率(電気伝導率)の分布、電気抵抗率の分布、透磁率の分布又は厚さの分布等を変更することにより、温度分布の均一化を図ることができる。
【0041】
図7は、下基板ホルダ106における導電部材206の半径方向の導電率分布を示す。図7(d)は、下基板ホルダ106の断面図である。図7(a)−(c)は、導電部材206の中心から半径方向の導電率分布の例を示す。即ち、導電部材206は、その全体において均一な導電率を有してもよく、図7(a)−(c)に示すように、同心円状に変化した導電率を有してもよい。
【0042】
例えば、誘導加熱部124のコイルの内側において、上ステージ120および下ステージ130の中心対称線(図2における一点鎖線)に近い領域の磁束密度が高く、周辺部の磁束密度が低い場合には、導電部材206が誘導加熱により十分加熱される電気抵抗率の範囲において、図7(a)−(c)に示すように、導電部材206の中心部の導電率を低く、周辺部の導電率を高くすることにより、下基板ホルダ106の面内温度分布の均一化を図ることができる。導電率の変化は図7(a)または(b)のように、連続的に変化してもよく、図7(c)のように段階的に変化してもよい。下ステージ130に設ける熱電対、又は赤外線検知器を有するサーモグラフシステム等により、下基板ホルダ106の温度分布を確認して、それに合わせて適切な導電率の分布を選択すればよい。
【0043】
特定の導電率分布を有する導電部材204、導電部材206又は補助導電部材208の製造は、例えば、まず所定の導電率を有する金属プレートから導電部材206半径の半分の半径を有する円盤を切り出す。上記金属より高い導電率の金属プレートから、当該円盤の半径を内周の半径とし、導電部材206半径を外周の半径とするリングを切り出す。そして、上記円盤をリングの内側に嵌合して組み立てることにより、図7(c)に示すような2段階導電率を有する導電部材206を製造することができる。
【0044】
異なる導電率を有する金属粉末を所定の導電率の分布を形成するように金型に充填して、高密度圧粉成形および焼結をすることによっても、導電部材204、導電部材206又は補助導電部材208を製造することができる。また、図8に示すように、導電率の異なる二つの導電材料322、324を厚さ方向に積層することによっても、特定の導電率分布を有する導電部材204又は導電部材206を製造することができる。例えば、導電材料322には相対的に低い導電率の材料、導電材料324には相対的に高い導電率の材料を使用すると、導電部材206の全体の導電率が中心から半径方向に向けて徐々に大きくなる導電率分布を形成できる。
【0045】
その後、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208をそれぞれ中に埋め込んで、一定の導電率分布を有する上基板ホルダ104、下基板ホルダ106および補助加熱部122を形成できる。
【0046】
上基板ホルダ104、下基板ホルダ106および補助加熱部122の温度分布の均一化を図る他の手段としては、導電部材204、導電部材206および補助導電部材208における各部分の厚さ(断面積)を調整する方法がある。例えば、図9に示すように、導電部材206は、中心から外周に向けて厚さが漸増するように形成する。この場合に、厚い外周部の熱容量が中央部の熱容量より大きくなるので、外周部が冷え難くなる。
【0047】
上述のように、導電部材204、導電部材206又は補助導電部材208の導電率又は厚みを調整することにより、温度分布の均一化を図れるだけでなく、目的に合わせて、特定の温度分布を形成できる上基板ホルダ104、下基板ホルダ106および補助加熱部122を作ることもできる。例えば、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106の温度分布を調整することにより、基板102に特定の温度勾配を付けて加圧して接合することもできる。
【0048】
図10は、加熱装置100を用いて積層電子デバイス装置を製造する製造方法のフローチャートを示す。当該製造方法は、複数の基板を挟んで一対の基板ホルダを準備する段階S010と、基板を加圧する段階S020と、誘導加熱する段階S030と、基板を個片化する段階S040とを備える。
【0049】
まず、複数の基板を挟んで一対の基板ホルダを準備する(S010)。段階S010において、複数の電子デバイスが形成され、互いに接合することにより積層電子デバイス装置が形成できる複数の基板を準備する。ウェハに回路パターンを形成し、パッシベーションした後、表面に接合電極を形成して、接合用基板とする。
【0050】
次に、接合すべき一対の基板102は、別途設けられるアライナーにより、接合すべき電極同士が接触するように位置合せされて重ね合わせられ、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106により、位置ずれが起こらないように仮接合される状態で保持される。そして、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106は、ロボットアームにより加熱装置100の下ステージ130に載置される。この場合、下基板ホルダ106の導電部材206は、下ステージ130から静電吸着用電力が供給されてよい。また、上基板ホルダ104の導電部材204に下ステージ130から静電吸着用電力を供給する端子があれば、導電部材204も下ステージ130から静電吸着用電力が供給されてよい。
【0051】
基板を加圧する(S020)。段階S020において、昇降部140のピストン142が上昇して、基板102を挟む上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を上ステージ120に当接させ、上ステージ120と下ステージ130の間に挟む。加熱装置100は、加圧制御信号に従って、ピストン142を更に上昇させ、上ステージ120および下ステージ130に保持された上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を介して、2枚の基板102を積層方向に加圧する。この加圧により、2枚の基板102の間に接合すべき電極同士が均一に接触することができ、基板の均一な貼り合せが実現できる。上基板ホルダ104および下基板ホルダ106は、上ステージ120および下ステージ130により静電吸着用電力が供給されていた場合に、基板102に加圧してから、その電力供給を停止してよい。
【0052】
次に、誘導加熱する(S030)。段階S030において、誘導加熱部124に高周波交流電流を流して、電気誘導磁場を形成して、コイルの内側にある導電部材204、導電部材206および補助導電部材208を誘導加熱する。導電部材204および導電部材206は、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を介して上下から基板102を加熱する。補助導電部材208は、補助加熱部122を介して、外周側から基板102を加熱する。なお、補助加熱部122および誘導加熱部124は、外周側から基板102を挟む上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を囲み、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106の外周部による熱輻射を遮断することができる。補助導電部材208は、外周部から基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を加熱するので、上基板ホルダ104、下基板ホルダ106および基板102において、均一な温度分布が得られる。
【0053】
基板102は、ヒートコントローラにより温度制御されながら、所定の温度まで加熱される。基板102は、温度制御されながら、一定時間に渡って、加圧され本接合される。加熱が本接合する2枚の基板102における電極接合面を活性化することができるので、電極同士が確実に接合することができる。
【0054】
基板を個片化する(S040)。段階S040において、加熱装置100のピストン142が降下して、基板102に加えた圧力を解除する。ピストン142が更に降下して、ロボットアームにより基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を出し入りできる位置で停止する。ロボットアームは、加熱装置100から基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を取り出す。本接合された基板102が上基板ホルダ104および下基板ホルダ106から分離され、個片化されて、積層電子デバイス装置が完成する。
【0055】
また、基板を本接合した後、加熱装置100において、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106をロボットアームが搬送できる温度まで冷却してから、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を取り出して、別途設けられる基板冷却装置に搬入して、室温近傍まで冷却してもよい。この方法により、迅速に基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を冷却することができ、加熱装置100の回転率を上げることできるので、積層電子デバイス装置の生産ラインのスループットを高めることができる。
【0056】
図11は、他の実施形態である加熱装置のステージ周辺の断面図である。加熱装置100に比して、この加熱装置における誘導加熱部424は、基板102、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106側に対向する面が凹んだ断面形状を有する点において相違する。誘導加熱部424は、このような形状を有することにより、磁束を均一にすることができる。
【0057】
上述の実施形態において、加熱装置100には誘導加熱の加熱方式が採用され、発熱体である導電部材204および導電部材206がそれぞれ上基板ホルダ104および下基板ホルダ106に埋め込まれたので、加熱機構を上ステージ120および下ステージ130に設ける複雑な機械構造を回避でき、装置のコスト大きく下げることができる。なお、基板102が最も近い上基板ホルダ104および下基板ホルダ106により加熱されるので、基板102と加熱体との間に存在する機械部材による熱エネルギーの損失を無くすことができる。また、基板102は、高い平坦性を有する上基板ホルダ104および下基板ホルダ106の基板保持領域と、密接に接触して加熱されるので、多くの機械部材を介して加熱される場合に比して、これらの部材の空間的な熱伝導の差異および相互間の接触の強弱等により生ずる温度ムラを防ぐことできる。
【0058】
導電部材204および導電部材206は、発熱体と静電吸着用電極として兼用できるので、更に、機械構造の簡素化、設備投資の削減が実現できる。また、上ステージ120および下ステージ130から加熱部材を無くし、それによる干渉を排除したので、上ステージ120および下ステージ130における加圧機構の設計の自由度を高めることができ、上ステージ120および下ステージ130の加圧面に対する部分的加圧を実現することが容易になり、圧力分布をより正確に制御することができる。
【0059】
また、導電部材204および導電部材206の導電率の分布を調整することで、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106の面内の温度分布を制御することができる。予め様々な導電率分布を有する導電部材204を含む上基板ホルダ104、および様々な導電率分布を有する導電部材206を含む下基板ホルダ106を用意しておけば、上基板ホルダ104および下基板ホルダ106を交換するだけで、基板102に対して異なる温度分布で加熱することができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0061】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0062】
100 加熱装置、102 基板、104 上基板ホルダ、106 下基板ホルダ、110 真空室、120 上ステージ、122 補助加熱部、124 誘導加熱部、126 固定部材、130 下ステージ、140 昇降部、142 ピストン、144 シリンダー、204 導電部材、206 導電部材、208 補助導電部材、310 下基板ホルダ本体、312 ステージ用端子、322 導電材料、324 導電材料、314 搬送部用端子、424 誘導加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を挟んだ一対の基板ホルダを保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記一対の基板ホルダを誘導加熱する誘導加熱部と
を備える加熱装置。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記一対の基板ホルダを備え、
前記一対の基板ホルダの少なくとも一方は、前記誘導加熱部からの磁場により渦電流を生じる導電部材が配される請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記一対の基板ホルダの前記少なくとも一方は、前記導電部材に供給される電圧により前記複数の基板のいずれかを静電吸着する請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記導電部材は、前記複数の基板への磁場を遮蔽する請求項2または3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記誘導加熱部は、前記一対の基板ホルダを、前記複数の基板を挟む方向に直交する方向に囲んで配される請求項1から4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記誘導加熱部と前記一対の基板ホルダとの間に配された、前記一対の基板ホルダとは別体の補助導電部材をさらに備える請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記補助導電部材は、前記複数の基板への磁場を遮蔽する請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記誘導加熱部は、前記一対の基板ホルダ側に対向する面が凹んだ断面形状を有する請求項5から7のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項9】
前記一対の基板ホルダにおける前記複数の基板を挟む領域は、同心円状に変化した導電率を有する請求項5から7のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項10】
複数の電子デバイスが形成された複数の基板を挟んだ一対の基板ホルダを準備する工程と、
前記一対の基板ホルダを介して前記複数の基板を積層方向に加圧する工程と、
前記一対の基板ホルダを誘導加熱する工程と、
加圧工程および誘導加熱工程により積層された前記複数の基板を前記複数の電子デバイスごとに個片化する工程と
を備える積層電子デバイス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−96949(P2011−96949A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251439(P2009−251439)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】