説明

加熱装置及びこれに用いる冷却管の取付具

【課題】 熱伝導が良好であり、しかも、製造の容易な加熱装置及びこれに用いる冷却管の取付具を提供すること。
【解決手段】基板を加熱するヒーターと、このヒーターを内周に支持する筒状のシェル50と、シェル50の外周側に取り付けられて冷却媒体を流動させる冷却管59とを備える。冷却管59をシェル50に取り付けるための複数の取付具52をさらに設ける。これら取付具52は、冷却管59の外面に跨ってこの冷却管59と面接触する保持部52aと、保持部52aの両端に位置しシェル50に取り付けられる取付部52bと、保持部52a及び取付部52bの間に位置する中間部52cとを有する。この取付部52bはシェル50に複数箇所で部分溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、特に、半導体製造における被処理基板を処理室に収容して発熱体により加熱した状態で処理を施す熱処理技術用の加熱装置及びこれに用いる冷却管の取付具に関する。さらに詳しくは、基板を加熱するヒーターと、このヒーターを内周に支持する筒状のシェルと、前記シェルの外周側に取り付けられて冷却媒体を流動させる冷却管とを備える加熱装置及びこれに用いる冷却管の取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き加熱装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この加熱装置は、図11(a)に示すように、筒状のインナシェル50’の内周側に、基板を処理する処理室308’と発熱体とが配置されている。これらのインナシェル50’の外周側には、インナシェル50’の温度上昇を防ぐために水冷管59’が設けられ上方からの全周にわたる溶接部57’で取り付けられている。
【0003】
同図(b)及び(c)に示す如く、符号Dの部分ではインナシェル50’の熱がそのまま水冷管59’にスムースに伝熱する。しかし、同図(b)及び(d)に示す如く、全周溶接部分の一部に符号Eで表示する未溶接部がある場合、その未溶接部Eでの接触熱抵抗による温度差T3が生じる。
【0004】
このような温度差T3が部分的に生じると、熱応力による金属疲労が生じかねない。
そこで、水冷管59’は、全周溶接によりインナシェル50’に保持する必要があり、製造が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−33117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、熱伝導が良好であり、しかも、製造の容易な加熱装置及びこれに用いる冷却管の取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る加熱装置の特徴は、基板を加熱するヒーターと、このヒーターを内周に支持する筒状のシェルと、前記シェルの外周側に取り付けられて冷却媒体を流動させる冷却管とを備える構成において、前記冷却管を前記シェルに取り付けるための複数の取付具をさらに設け、これら取付具は、前記冷却管の外面に跨ってこの冷却管と面接触する保持部と、前記保持部の両端に位置し前記シェルに取り付けられる取付部と、前記保持部及び前記取付部の間に位置する中間部とを有し、この取付部は前記シェルに複数箇所で部分溶接されていることにある。
【0008】
上記本発明に係る加熱装置の特徴によれば、取付具の保持部は冷却管の外面と面接触により密着するため、熱伝導率が良好である。そして、取付部はシェルに接触し、さらに部分溶接により取り付けられ保持部と取付部とは中間部を介して隔たっているため、取付部が部分溶接で周囲との接触温度差を生じても、熱が拡散され、熱応力の問題を生じない。しかも、取付具をシェルに部分溶接すれば足りるので、製造が容易で安価に製造が可能である。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明に係る基板処理装置の特徴によれば、熱伝導が良好で製造が容易となり、製造コストを圧縮することが可能となった。
【0010】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における加熱装置の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1の天井部近傍における横断面図である。
【図3】図1におけるA部拡大図である。
【図4】図2におけるB部拡大図である。
【図5】図1におけるC部拡大図である。
【図6】取付具を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図7】取付具をインナシェルに取り付けた状態を示す部分斜視図である。
【図8】(a)(b)はインナシェルの伝熱を示す模式図を示し、(c)(d)は温度変化を示すグラフである。
【図9】本発明の第二実施形態における取付具の図6相当図である。
【図10】本発明の第三実施形態における取付具の斜視図である。
【図11】従来技術に係る図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態としての第一の実施形態を説明する。
【0013】
図1〜5に示すように、基板処理装置1は、大略、処理室308を形成する反応容器309と、この反応容器の外周に配置された加熱装置3と、主制御装置4とを備えている。
【0014】
加熱装置3は、大略、天井部10、円筒状の中間部11、下部12及び端子ケース13を有し、中間部11には発熱体20が支持されている。天井部10には下面と側面に開口するエルボ状の排気導路81が形成され、さらにその下部に反射装置90を有している。中間部11は、発熱体20を支持するインナシェル50を絶縁状態でアウタシェル60により包囲し、さらに外周を化粧パネル70で包囲している。インナシェル50とアウタシェル60とは導電性の材料から構成されており、例えば、ステンレス材等の金属材から構成されている。
【0015】
中間部11の上部と吸気アタッチメント7xとの間には冷却ガス導入ダクト7yが取り付けられる。吸気アタッチメント7xの開口には開閉バルブ7aとして例えばバタフライバルブが装着され、流路が開閉できるようになっている。吸気アタッチメント7xは冷却ガス供給ライン7に接続される。インナシェル50及びアウタシェル60の間に円筒状の冷却媒体流通通路としての気道14が形成される。冷却ガス導入ダクト7yは環状に略均等に配置された複数のパイプ61により気道14と連通している。一方、排気導路81には強制排気を行う排気ブロア8aを備えた強制排気ライン8が接続され、加熱装置3の内部空間である加熱空間の強制排気が行われる。そして、冷却ガス供給ライン7から導入された空気若しくは不活性ガス等のガスは気道14及び後述の複数の碍子孔から加熱空間18に冷却ガスとして供給され、強制排気ライン8から排気される。
【0016】
反応容器309は、加熱空間18に順次同心に配置される均熱管315及び反応管310を備え、この反応管310内に処理室308が形成される。この処理室308にはウェーハ305を水平多段に保持するボート300が収納される。このボート300は図示しないボートエレベータにより、処理室内308へ装入、引出し可能である。
【0017】
反応管310内には反応ガス導入管5x及び排気管6xが連通される。反応ガス導入管5xには流量制御器5aが設けられ、排気管6xには圧力制御器6aが設けられる。反応ガスが所定流量で導入されると共に前記反応管310内が所定圧力に維持される様に、排出口6yから内部ガスが排気され、排気管6xを通じて処理室外に排出される。
【0018】
他の冷却ガス供給ライン5yは、均熱管315と反応管310との間に形成される均熱管内空間317に連通される。前記冷却ガス供給ライン5yには流量制御器5bが設けられる。また、吸気アタッチメント7xには開閉バルブ7aが設けられる。強制排気ライン8には排気装置としての排気ブロア8aが設けられる。すなわち、均熱管内空間317と加熱空間18の双方に対して冷却ガスを適宜導入・調整することが可能である。
【0019】
発熱体20は中間部11の円筒の軸心方向に対し、所要のゾーンZ1〜Z5に複数段に区分けされ、ゾーン制御が可能となっている。各ゾーンには各ゾーンの加熱温度を検出する温度検出器が設けられている。なお、発熱体20は各ゾーンそれぞれの成形パターンを同じにすることにより、発熱量を各ゾーンとも均一にする様にしてもよい。
【0020】
基板処理装置1の各部は主制御装置4によって制御され、例えば、反応管310内で処理されるウェーハ305の処理状態は、主制御装置4によって制御される。この主制御装置4は、温度モニタ部4a、加熱制御部(加熱制御装置)4b、反射制御部4c、第一流量制御部4d、反応管310内の圧力を制御する圧力制御部4e、第二流量制御部4f、排気制御部4g及び前記ボートエレベータ等の機構部を制御する駆動制御部4hを備えている。
【0021】
温度モニタ部4aは第一〜第三温度検出器TC1〜TC3の温度を検出する。ここで、第一温度検出器TC1は発熱体20近傍で各ゾーンZ1〜Z5毎に設けられる。第二温度検出器TC2は反応管310内の周部における前記各ゾーンZ1〜Z5毎に設けられる。さらに、第3温度検出器TC3は反応管310より上方若しくは反応管310の上部中央を含む範囲に設けられている。
【0022】
加熱制御部4bは、温度モニタ部4aの検出結果に基づき各ゾーンZ1〜Z5の発熱体20の発熱量を制御する。また、反射制御部4cは、温度モニタ部4aの検出結果に基づき反射装置90の駆動装置としてのアクチュエータ99を制御する。そして、下面が鏡面仕上げされた反射体(リフレクタ)91を適宜傾斜させて発熱体20から反応管310の上部中央に対する集光度を変更し、同部分の温度制御を行う。
【0023】
第一流量制御部4dは流量制御器5aを制御し、圧力制御部4eは圧力制御器6aを制御し、反応ガスの導入と圧力を制御する。また、第二流量制御部4fは流量制御器5bを制御し、排気制御部4gは開閉バルブ7a及び排気ブロア8aを制御し、冷却ガスの導入と排出とを制御する。
【0024】
図3に図1中のA部の拡大図を示す。発熱体(ヒータ素線)20は、アルミナ等の絶縁素材としての吊り碍子30によりインナシェル50に固定されている。前記発熱体20には急速加熱が可能である発熱材料、例えばFe−Al−Cr合金が用いられ、発熱表面積が大きくなる様に、断面は平板形状等の形状が採用され、面状発熱体として構成されている。発熱体20は上下に蛇行状の折返部21,22を有しており、中間部は上折返部21と下折返部22とをそれぞれ半ピッチずらして接続する素線部23と、各素線部23間に位置する隙間24から構成されている。また、発熱体20の上部は吊り碍子30に保持される折曲部20aとして折り曲げ加工がなされている。インナシェル50内面は鏡面仕上げされており、発熱体の素線部23裏面から輻射される熱線を前記内面で反射させ、隙間24から加熱空間18に向かって放射する。
【0025】
絶縁材料としての吊り碍子30はアルミナ等の耐熱絶縁材料よりなる上碍子31及び下碍子32からなり、上金具33と下金具34で発熱体20の上部における折曲部20aを挟んで、ピン35で溶着固定されている。下金具34は二カ所の折曲部においてボルト36によりインナシェル50に取り付けられる。
【0026】
インナシェル50には中央に貫通孔40aを有し気道14内の冷却ガスをインナシェル50内部に供給する複数の急冷パイプ40がインナシェル50の内壁から加熱空間18側に向かって突出するように設けられている。急冷パイプ40はアルミナ等の絶縁耐熱材料により形成されている。この急冷パイプ40は、隙間24において発熱体20を貫通する貫通部40dと、この貫通部40dが発熱体20を貫通する貫通方向Vに交差する方向にこの貫通部40dよりも突出する突出部としての略円形の鍔40b、40cにより発熱体20の中腹の動きを制限する。すなわち、一対の鍔40b、40c間の貫通部40dに溝を形成する。さらに発熱体20の下端を下段の吊り碍子30の上端位置に重なる位置に設け、発熱体20の下端の急冷パイプ40の貫通方向に対する動きを制限する。
【0027】
インナシェル50の裏面には冷却媒体流通通路としての水冷管59が設けられている。この水冷管59は、インナシェル50の外面に軸心方向に螺旋状に巻き付けられ取付具52を介して取り付けられる。
【0028】
インナシェル50の外側には複数の接続碍子51を介して絶縁状態でアウタシェル60が取り付けられる。接続碍子51は絶縁性と耐熱性を有するアルミナ材で製作されているため、不測に発熱体20とインナシェル50とが接触し、インナシェル50に電流が伝わる等により例えば短絡しても、接続碍子51により電流がアウタシェル60に伝わることはない。
【0029】
接続碍子51aの内側はインナシェル50に対し第一のボルト51bで固定される。一方、接続碍子51aの外側はアウタシェル60に対し絶縁耐熱材料としての環状中空状のカラー51cを介して第二のボルト51dで固定される。カラー51cはアウタシェルの取付孔を貫通して設けられ、アウタシェル60の肉厚よりも厚く形成され、第二のボルト51dの頭部下面と接続碍子51a外面との間にクリアランス(隙間)を設けている。インナシェル50が熱膨張によって膨らんでも、その変形分をこのクリアランスにより吸収し、アウタシェル60に熱応力が作用することを防ぎ、アウタシェル60の変形を防止している。
【0030】
アウタシェル60のさらに外側には柱62を介して最外殻である側壁外層としての化粧パネル70が設けられている。この化粧パネル70はフランジを有する柱62を介してアウタシェル60と例えば金属製のリべット62aにより固定アウタシェル60の上部には円筒状の前記気道14に連通する開口61aが設けられ、この開口61aにパイプ61の一端が溶接される。パイプ61は化粧パネル70を貫通し、その他端が冷却ガス導入ダクト7yに連通している。なお、柱62、化粧パネル70は導電性を有する材料から構成されており、例えば、ステンレス材料等の金属材料から構成されている。このため、化粧パネル70とアウタシェル60とは柱62を介して導電する状態で接続されている。なお、アウタシェル60や化粧パネル70に対する導電を上述の如く防ぐことで基板処理装置全体への導電を防止し、作業時の感電等や基板処理装置内の電装品が破損することを防いでいる。
【0031】
図3に示すように、インナシェル50は上下に複数分割されている。分割された上側のシェルとこれに隣接する下側のシェルとの間には隙間50sが設けられている。そして、インナシェル50のうち上側のシェルである上側シェルに設けられた第一フランジ50tと下側シェルの水冷管59との間にセラミックファイバー等の断熱部材よりなる断熱ブランケット50aを介在させ、隙間50sからの熱逃げを防ぎ、熱的に上下のシェルを分断している。
【0032】
次に、図3〜8を参照しながら、発熱体20とその保持構造ないし支持構造について説明する。
発熱体20における蛇行状の上側折返部21は方形を呈し、折り曲げ加工により保持用の折曲部20aとされる。後述の突起32dによる移動制限を行い、発熱体の断線・短絡を防止し、寿命を延長させることが可能である。
【0033】
一方、発熱体の下側折返部22は、素線中腹部分と同じ帯幅 、若しくはそれ以上の帯幅で円弧状とし、素線部23の質量を節約する。これにより、発熱体20全体の熱容量を減少させ、発熱体20全体の応答性を向上させている。
【0034】
前記急冷パイプ40は、インナシェル50の内面に対する直交方向であり前記発熱体20を貫通する方向である貫通方向Vに突出する。そして、先の鍔40b,40cにより上述の発熱体20の中腹の動きを制限する。さらに発熱体20の下端22を下段の吊り碍子30の上端位置に重なる箇所に配置することで、発熱体20の下端22の前記貫通方向Vに対する動きを制限する。すなわち、急冷パイプ40で上下方向中腹の発熱体20の加熱装置径方向ヘの凸変形と凹変形を制限し、吊り碍子30で素線下端の凹変形を制限している。側壁材としてのインナシェル50は熱容量の小さなステンレス鋼等の金属製材料で構成され、大気雰囲気で使用できる発熱体20を絶縁した状態で固定することができる。なお、導電性のある物質の殆どは、金属等の低熱容量の物質であり、導電性のない物質の殆どは、アルミナ、石英などの高熱容量の物質であり、このような構造により、加熱装置3の応答性をさらに向上させている。
【0035】
吊り碍子30の上金具33及び下金具34は剛性の点では上記円弧方向Rに連続していることが望ましい。しかし、発熱体20の加熱時の熱膨張による熱変形を防ぐため、分断の必要もある。そこで、適宜個数の吊り碍子30毎に上金具33及び下金具34を分断することで、捻り剛性を保ちつつ熱膨張による下金具34間の隙間34aを最小限に留めている。また、各下金具34間に各上金具33を跨らせることで、さらに捻り剛性を向上させている。
【0036】
図3に示すように、本実施形態では、上下方向に9段の発熱体20が設けられ、インナシェル50は上下方向に3分割され、各分割体が発熱体20を3段保持する。そして、インナシェル50間には熱膨張による伸びを吸収するために、隙間50sが設けられる。また、冷却ガスが隙間50sから加熱空間18内部に供給されないように断熱材としての断熱ブランケット50uで冷却ガスが隙間50sを塞いでいる。本実施形態では、インナシェル50の下端にフランジ50tを設け、下段のインナシェル50の最上段に位置する水冷管59と同フランジ50tとの間に断熱ブランケット50uを挟み、この隙間50sを塞いでいる。同構成によれば、断熱ブランケット50uにはその伸縮性によりインナシェル50の膨張・収縮を吸収し、インナシェル50と加熱空間18との気密性を維持することができる。
【0037】
冷却管としての水冷管59は、インナシェル50の外周側において、複数の取付具52を介して軸心方向に螺旋状に巻き付けられている。水冷管59は、例えば給・排水経路59a,59bを介して冷却水等の冷却媒体を流すことによりインナシェル50の温度上昇を防ぎ、ほぼ一定に保つ役割を果たしている。取付具52は、熱伝導性の良好な金属材料等からなり、水冷管59の外周面を包囲する保持部52aと、インナシェル50に取り付けられる取付部52bと、中間部52cとから構成される。また、長手方向に直交して3つのスリット52dを有している。
【0038】
取付部52bは、水冷管59の外面に跨って2箇所設けられ、インナシェル50に面接触する。さらに、取付部52bは、図7に示すように、スリット52dを境目とする節ごとに溶接部57においてインナシェル50に部分溶接される。取付具52同士は、隣隙間56を介して部分溶接により溶接部57でインナシェル50に取り付けられる。
【0039】
また、スリット52dで屈曲させることにより、取付具52をインナシェル50に取り付ける際、螺旋状に巻かれた水冷管59との密着性を高めることが可能である。これにより、部品点数を抑えながら熱伝導性を向上させることが可能となる。
【0040】
図8(a)は、インナシェル50の取付具52への熱伝導方向を示す模式断面図、図8(b)は、インナシェル50の取付具52への伝熱を示す模式側面図を示す。取付具52の水冷管59の外周面を包囲する部分のうち水冷管59に接触する部分を保持部52a、水冷管59に接触しない部分を中間部52cとする。インナシェル50の伝熱は、図8(a)の矢印に示す如く、インナシェル50と水冷管59が線状に接触する中央部分から直接的に行われる。一方、取付具52を介して溶接部分と面接触部分からも間接的に行われる。よって、取付具52により2箇所で伝熱が行われ、水冷管59によるインナシェル50の吸熱効率が良好である。
【0041】
図8(c)は、溶接部分Aの伝熱を示すグラフ、図8(d)は、接触部分Bの伝熱を示すグラフを示し、縦軸に温度、横軸に相対距離を示す。溶接部57の溶接部分Aでは、図8(c)のグラフに示す如く、インナシェル50の熱はそのままスムースに中間部52bに伝熱する。それに対し、インナシェル50に接触する接触部分Bでは、図8(d)のグラフに示す如く、温度差T1が生じ、接触熱抵抗により熱伝導率が悪化する。
【0042】
しかし、保持部52aと取付部52bとの間に中間部52cを設けることで、図8(b)に示す如き緩やかな伝熱となる。つまり、この中間部52cは、熱の拡散によりインナシェル50と水冷管59との温度差の緩衝的な役割を果たす。よって、インナシェル50の熱が中間部52cを介して保持部52aの符号B’の部分に伝熱するにつれ、符号A’の部分と符号B’の部分の温度差T2は小さくなる。つまり、インナシェル50の取付具52における伝熱は緩やかに行われるため、取付具52やインナシェル50に歪みや変形は生じず、効率よく吸熱可能である。
【0043】
また、温度差T1は、従来技術の図11(d)のグラフに示す未溶接部Eの温度差T3より小さいので、インナシェル50や取付具52に変形等が生じる可能性が低い。
【0044】
ここで、急冷パイプ40の貫通孔40aは、反応容器309、延いては、その中のウエハを急速に冷却する。しかし、隙間50sは、急冷パイプ40に比べるとコンダクタンスも少ないため、冷却ガスの大部分は隙間50sから加熱空間に漏洩する。しかも、隙間50sはインナシェル50の分割体同士の間に位置し、急冷パイプ40の出口よりも反応容器309と隔たっている。特に反応容器309の手前には発熱体が存在するため、反応容器309への冷却が非効率となってしまう。これを防ぐために上記隙間50sを塞ぐ構造が必要である。
【0045】
隙間50sの近傍では水冷管59を均一な冷却のために必ずしも適切な位置に配置できるとは限らない。したがって、上下9段に積層された発熱体20の各段毎にインナシェルを分断して設けるのではなく、複数段の発熱体20をインナシェル50の一分割体に支持させ、ウエハ間の温度偏差の発生を抑制している。かかる点及び熱膨張による伸長量が比較的小さくて隙間の問題を解消できることから、本実施形態では各分割体に三段の発熱体20を支持させてある。また、水冷管は各分割体毎に一系統設けるので全体で三系統であるが、温度制御が可能である限り、三分割体全体で一系統としたり、さらに異なる数の系統としてもよい。
【0046】
次に、上記基板処理装置1の動作について説明する。
ウェーハ305の処理は、このウェーハ305が装填された前記ボート300がボートエレベータにより前記反応管310に装入され、前記加熱装置3の加熱により所定温度迄急速加熱される。この加熱装置3により前記ウェーハ305を所定温度に加熱した状態で前記反応ガス導入管5xより反応ガスが導入され、前記排気管6xを介して排気ガスが排出され、前記ウェーハ305に所要の熱処理がなされる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0048】
上記実施形態において、取付具52は、図6に示すように、3箇所のスリット52dを設けた。しかし、スリット52dの数は上記実施形態に限られない。また、例えば、図9に示すように、スリット52dを設けずに、長手方向の長さを短くしてもよい。しかし、上記実施形態の方が部品点数を減らすことができる点で優れている。また、図10に示すように、インナシェル50の外周曲線に合わせた曲線状の取付具54に加工することも可能である。しかし、様々なインナシェル50の曲線形状に合わせる観点から、上記第一の実施形態が優れている。
【0049】
さらに、上記実施形態において、取付具52は全体として矩形形状とした。しかし、必ずしもそれに限られず、楕円形等のように角に丸みを帯びていても構わない。
【0050】
反応容器は、均熱管及び反応管の双方を備えるように説明したが、均熱管を備えずに反応管のみであってもよい。その他、2重管のみならず、1管や3重管以上の管数に構成されていてもよい。
【0051】
上記熱処理は酸化処理や拡散処理及び拡散だけでなくイオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフローおよびアニール処理等に限らず、成膜処理等の熱処理であってもよい。基板はウエハに限らず、ホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、光ディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。バッチ式熱処理装置および枚葉式熱処理装置に限らず、ヒータユニットを備えた半導体製造装置全般に適用することができる。上記インナシェル50及び反射体91の鏡面仕上げ部は、ステンレス鋼の研磨により鏡面とする他、金、白金等の貴金属によるメッキを施しても構わない。
【0052】
本発明の実施形態は上記の如く構成されるが、さらに包括的には次に列挙するような構成を備えてもよい。
【0053】
また、本発明に係る水冷管の取付具としては、前記冷却管を前記シェルに取り付けるための構成において、この取付具は、前記冷却管の外面に跨ってこの冷却管と面接触する保持部と、前記保持部の両端に位置し前記シェルに取り付けられる取付部と、前記保持部及び前記取付部の間に位置する中間部とを有し、前記取付部側にスリットを形成することで全体を屈曲可能に構成してもよい。同構成によれば、曲線に沿う取付具の単位体を連続させることで、実質的に部品点数を抑えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、半導体集積回路装置(半導体デバイス)が作り込まれる半導体ウエハに酸化処理や拡散処理、イオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフローやアニール及び熱CVD反応による成膜処理などに使用される基板処理装置に利用することができる。本発明は、このような基板処理装置のうち、特に低温領域でプロセスに対して有効なものである。
【符号の説明】
【0055】
1:基板処理装置,3:加熱装置,4:主制御装置,4a:温度モニタ部,4b:加熱制御部,4c:反射制御部,4d:第一流量制御部,4e:圧力制御部,4f:第二流量制御部,4g:排気制御部,4h:駆動制御部,5a:流量制御器,5b:流量制御器,5x:反応ガス導入管,5y:冷却ガス供給ライン,6a:圧力制御器,6x:反応ガス排気管,7:冷却ガス供給ライン,7a:開閉バルブ,7b:急冷パイプ,7x:吸気アタッチメント,7y:冷却ガス導入ダクト,8:強制排気ライン,8a:排気ブロア,10:天井部,11:中間部,12:下部,13:端子ケース,14:気道(冷却媒体流通通路),18:加熱空間,20:発熱体,20a:折曲部,21:上折返部,22:下折返部,23:素線部,24:隙間,30:吊り碍子,31:上碍子,32:下碍子,33:上金具,34:下金具,34a:隙間,35:ピン,36:ボルト,40:急冷パイプ,40a:貫通孔,40b:鍔,40c:鍔,40d:貫通部,42:急冷パイプ,50:インナシェル(側壁内層),50s:隙間,50t:第一フランジ,50u:断熱ブランケット,50x:第二フランジ,50y:断熱ブランケット,51a:接続碍子,51b:第一のボルト,51c:カラー,51d:第二のボルト,52:取付具,52a:保持部,52b:取付部,52c:中間部,52d:スリット,53:取付具,53a:保持部,53b:取付部,54:取付具,54a:保持部,54b:取付部,55a:開口(第一の開口),55b:箱(隔壁体),55c:鍔,55x:ねじ,56:隣隙間,57:溶接部,59:水冷管(冷却管),60:アウタシェル(側壁中層),60x:第三フランジ,60y:断熱ブランケット,61:パイプ,61a:開口,62:柱,62a:リベット,65:開口(第二の開口),65a:隙間,70:化粧パネル(側壁外層),71:ネジ,72a:底蓋,72b:コイルウケ,81:排気導路,81a:排気口,82:第一の開口,83:第二の開口,90:反射装置,91:反射体,91a:隙間,92:移動機構,93:シャフト,94:中央板,95:ボルト,99:アクチュエーター,100:取付構造,101:温度センサ(温度検出器),102:熱電対接点(温度検出体),103:保護管,103x:隙間,103y:隙間,104:碍子管,105:内鍔,106:外鍔,107:碍子,108:端子,109a:金属管,109b:止めねじ,111:第一パッキン,111a:孔,112:第二パッキン,112a:孔,120a〜c:ねじ,121:温度センサ(温度検出器),125:内鍔,126:外鍔,127:内箱,128:外箱,129:パッキン,131:温度センサ(温度検出器),132:温度センサ(温度検出器),133:保護管,135a〜c:鍔,300:ボート,305:ウエハ,308:処理室,309:反応容器,310:反応管,315:均熱管,317:均熱管内空間,320:L型温度センサ(温度検出器),321:接点(温度検出体),322:接点(温度検出体),330:温度センサ(温度検出器),Z1〜Z5:ゾーン,H1〜H3:貫通孔,R:円弧方向,V:貫通方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱するヒーターと、このヒーターを内周に支持する筒状のシェルと、前記シェルの外周側に取り付けられて冷却媒体を流動させる冷却管とを備える加熱装置であって、
前記冷却管を前記シェルに取り付けるための複数の取付具をさらに設け、これら取付具は、前記冷却管の外面に跨ってこの冷却管と面接触する保持部と、前記保持部の両端に位置し前記シェルに取り付けられる取付部と、前記保持部及び前記取付部の間に位置する中間部とを有し、この取付部は前記シェルに複数箇所で部分溶接されている加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱装置において、前記冷却管を前記シェルに取り付けるための冷却管の取付具であって、
この取付具は、前記冷却管の外面に跨ってこの冷却管と面接触する保持部と、前記保持部の両端に位置し前記シェルに取り付けられる取付部と、前記保持部及び前記取付部の間に位置する中間部とを有し、前記取付部側にスリットを形成することで全体を屈曲可能に構成してある冷却管の取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−187781(P2011−187781A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52725(P2010−52725)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(393000571)貞徳舎株式会社 (18)
【Fターム(参考)】