加熱装置及び加熱方法
【課題】本発明は、加熱対象であるブランク内に正確な温度分布を設けることが可能な加熱技術を提供することを課題とする。
【解決手段】通電加熱装置1は、ブランク2の所定部位に接触可能であり、かつ、ブランク2の所定部位との接触部位に非導電性の接触部を有するとともに、自身の温度を調整可能である温度制御部材20と、ブランク2への加熱途中の所定のタイミングで、温度制御部材20をブランク2に対して近接する方向に移動させて、温度制御部材20をブランク2と接触させる押圧部材30と、を具備し、温度制御部材20は、ブランク2の温度と同一温度に制御された状態でブランク2に接触され、前記所定温度に制御された温度制御部材20により、前記加熱途中のブランク2の所定部位から抜熱することにより、ブランク2内に所定の温度分布を設ける。
【解決手段】通電加熱装置1は、ブランク2の所定部位に接触可能であり、かつ、ブランク2の所定部位との接触部位に非導電性の接触部を有するとともに、自身の温度を調整可能である温度制御部材20と、ブランク2への加熱途中の所定のタイミングで、温度制御部材20をブランク2に対して近接する方向に移動させて、温度制御部材20をブランク2と接触させる押圧部材30と、を具備し、温度制御部材20は、ブランク2の温度と同一温度に制御された状態でブランク2に接触され、前記所定温度に制御された温度制御部材20により、前記加熱途中のブランク2の所定部位から抜熱することにより、ブランク2内に所定の温度分布を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電加熱、高周波誘導加熱等の加熱方法を用いて、ブランクを所望温度に加熱する技術に関する。特に、ホットプレス成形の前工程として行われる加熱工程において、加熱中のブランクの温度を部分的に制御して、係る温度制御部位と、他の部位との間に所定の温度差を設ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼き入れ性のある素材(鋼材等)からなるブランクを所定温度まで加熱して、金型内に投入するとともに金型を型締めして、ブランクを型締めした状態の金型に接触させることによって急冷して焼き入れつつ、所望の形状にプレス成形するホットプレス成形が公知である。
上記ホットプレス成形により得られる成形品は、所定の焼き入れ工程を経ることによって高強度部材又は超高強度部材として成形されており、トリム加工、穴あけ加工等の適宜の後加工を経て、自動車車体の構造部材、補強部材等の製品として用いられる。
しかし、上記のように高強度部材又は超高硬度部材として成形される成形品は、その硬度により後加工の際に高い加工能力を有する加工装置が必要であること、さらに、後加工に要する時間が長くなること等の問題がある。
【0003】
上記のような問題を解決する一手段として、特許文献1には、加熱炉の輻射熱を用いてブランクを加熱する方法であって、ブランクよりも熱伝導率の低い断熱材をブランクの所定部位に装着することによって、当該断熱材が装着された部位への輻射熱を遮蔽し、係る断熱材装着部位が所定の温度以下となるように加熱する技術が開示されている。
このような加熱技術を用いて加熱された後の断熱材装着部位は、オーステナイト変態点(Ac3点)以下となる低温部位としてブランク内に存在するため、ホットプレス成形時に焼き入れされることがない。これにより、断熱材装着部位を加工容易な軟質部位として成形することが可能となる。
【0004】
しかしながら、特許文献1における断熱材は、厳密な温度管理がなされていないため、ブランクに発生する低温部位の温度が安定しないという問題がある。特に、特許文献1に開示される技術を量産工程に適用した場合、加熱工程を繰り返す際に、断熱材の温度が上昇し、低温部位の温度が上昇するため、断熱材装着部位の硬度が安定せず、後加工に不具合をもたらす可能性がある。
また、加熱開始時からブランクに断熱材を取り付けているため、断熱材装着部位近傍の加熱効率が低下するという問題、並びに、断熱材装着部位近傍の徐変部位の領域が大きくなるという問題がある。これにより、強度が必要な部位が十分に焼き入れられないという不具合が生じ得る。
さらに、加熱炉内で同時に複数のブランクを加熱する場合には、多数の断熱材が必要となるため、量産工程に持ち込む際にコスト面、作業性で劣るという課題が残る。
以上のように、従来の加熱技術では、ブランク内に正確な温度分布を設けることが困難であった。また、従来の加熱技術を量産工程に適用する際に解決すべき課題が残されているため、実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−61473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、加熱対象であるブランク内に正確な温度分布を設けることが可能な加熱技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様である加熱装置は、ホットプレス成形に用いるブランクを加熱する加熱装置であって、前記ブランクの所定部位に接触可能であり、かつ、当該ブランクの所定部位との接触部位に非導電性の接触部を有するとともに、自身の温度を調整可能である温度制御部材と、前記ブランクへの加熱途中の所定のタイミングで、前記温度制御部材を前記ブランクに対して近接する方向に移動させて、前記温度制御部材を前記ブランクと接触させる押圧部材と、を具備し、前記温度制御部材は、前記ブランクの温度と同一温度に制御された状態で当該ブランクに接触され、前記所定温度に制御された温度制御部材により、前記加熱途中のブランクの所定部位から抜熱することにより、前記ブランク内に所定の温度分布を設ける。
【0008】
前記ブランクは、一方向を長手方向とする矩形状を有し、前記温度制御部材及び押圧部材は、少なくとも前記ブランクの長手方向に向けて複数に分割され、当該複数に分割される温度制御部材及び押圧部材は、個別に押圧されることが好ましい。
【0009】
前記ブランクの所定部位は、前記ホットプレス成形後の後加工時に加工が施される部位であり、前記押圧部材は、前記ブランクがAc1変態点温度に到達する直前となるタイミングで、当該ブランクと同一温度に制御された状態の前記温度制御部材を前記ブランクに接触させることが好ましい。
【0010】
前記ブランクへの加熱は、通電加熱により行われることが好ましい。
【0011】
本発明の第二の態様である加熱方法は、ホットプレス成形工程に用いるブランクを加熱する加熱方法であって、前記ブランクへの加熱途中の所定のタイミングで、前記ブランクの所定部位に、非導電性の接触部を当該ブランクとの接触部位に有し、前記加熱途中のブランクと同一温度に制御された温度制御部材を接触させることによって、前記ブランクの所定部位の温度を所定の温度以下に制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱対象であるブランク内に正確な温度分布を設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】加熱対象であるブランクを示す斜視図であり、(a)はブランク、(b)は成形品、(c)は製品を示す。
【図2】第一実施形態に係る通電加熱装置を示す平面概略図であり、便宜上、ブランク及び温度制御部材のみを示している。
【図3】第一実施形態に係る通電加熱装置を示す側面図である。
【図4】第一実施形態に係る通電加熱装置の制御構成を示す図である。
【図5】第二実施形態に係る通電加熱装置を示す平面図であり、便宜上、ブランク及び温度制御部材のみを示している。
【図6】第二実施形態に係る通電加熱装置を示す側面図である。
【図7】第三実施形態に係る通電加熱装置を示す平面図であり、便宜上、ブランク及び温度制御部材のみを示している。
【図8】第三実施形態に係る通電加熱装置を示す側面図である。
【図9】第四実施形態に係る通電加熱装置を示す平面図であり、便宜上、ブランク及び温度制御部材のみを示している。
【図10】第四実施形態に係る通電加熱装置を示す側面図である。
【図11】第四実施形態に係る通電加熱装置の加熱対象であるブランクを示す図であり、(a)はブランク、(b)は製品を示す。
【図12】第四実施形態に係る通電加熱装置の制御構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
以下では、図面を参照して、本発明に係る加熱装置の第一実施形態である通電加熱装置1について説明する。通電加熱装置1は、ブランク2に通電することによりブランク2を均一的に加熱する。
ブランク2は、通電加熱装置1による加熱対象であり、焼き入れ性のある鋼材(例えばボロン鋼)を材料とする平板部材である。
また、図1に示すように、ブランク2は、通電加熱装置1による加熱工程後、適宜のホットプレス成形装置を用いて所定形状を有する成形品3として成形され、さらにトリム加工、穴あけ加工等の後加工を経て最終的な製品4として製造される。本実施形態では、製品4を自動車車体のドアビームとして、当該ドアビームの形態に応じて形状等が設計されるブランク2に対する加熱工程について取り扱う。
【0015】
図1(a)に示すように、ブランク2は、一方向を長手方向とする矩形状を有する平板部材である。
図1(b)に示すように、成形品3は、ブランク2をプレス成形して得られる中間品であり、ハット型断面を有する。
図1(c)に示すように、製品4は、ハット型断面を有するドアビームであり、成形品3に対して所定のトリム加工、及び穴あけ加工を施すことにより、所定の外形を有する形状にトリミングされ、かつ、頂面に複数の穴5・5、フランジ面に複数の穴6・6が形成されている。これらの穴5・5・6・6は、例えば自動車車体に固定する際等に用いられる。
【0016】
図2及び図3に示すように、通電加熱装置1は、一対の通電電極10・10、温度制御部材20、押圧部材30を具備する。
通電加熱装置1では、通電電極10・10間に流れる電流によってブランク2が均一的に加熱される。一方で、ブランク2への加熱途中の所定のタイミングで押圧部材30を駆動し、所定の温度に制御された状態の温度制御部材20をブランク2の所定部位に押し当てて、温度制御部材20を接触させることにより係る部位から抜熱する。このようにして、通電加熱によって加熱されるブランク2内に所定の温度分布を設けるものである。
【0017】
図2及び図3に示すように、通電電極10・10は、クリップ式の電極であり、ブランク2を厚み方向両側から挟持することによりブランク2の両端部にそれぞれ取り付けられている。通電電極10・10には、図示せぬ電源装置が接続されており、当該電源装置によって通電電極10・10間に所定の電圧が印加され、一方の通電電極10から他方の通電電極10に電流が流れる。このようにして、通電電極10・10によってブランク2が均一的に通電加熱される。
【0018】
図2及び図3に示すように、温度制御部材20は、ブランク2の所定部位に面接触可能である。
ここで、ブランク2の所定部位とは、ホットプレス成形後、つまり成形品3から製品4を製造する際に、後加工としてトリム加工又は穴あけ加工が施される部位であり、ホットプレス成形時に低硬度部位として成形される部位である。
【0019】
図2及び図3に示すように、温度制御部材20は、第一ブロック21・21・21・21、第二ブロック22を含む。
第一ブロック21は、製品4に形成される穴5・6の形状に沿う形状を有する円筒状の部材であり、成形品3に対する穴あけ加工の際に打ち抜かれるブランク2の部位に対応する形状を有する。各第一ブロック21は、ブランク2を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
第二ブロック22は、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位に対応する形状を有する。第二ブロック22は、ブランク2を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
このように、ブランク2を厚み方向両側から挟み込む上下の対として構成される各第一ブロック21及び第二ブロック22は、それぞれブランク2の厚み方向両側に配置されており、ブランク2を挟み込むようにしてブランク2の両面側から面接触する。
【0020】
各第一ブロック21及び第二ブロック22は、内部に熱線等の発熱手段、及び水冷配管等の冷却手段を備え、これら発熱手段及び冷却手段を適宜制御することによって、各第一ブロック21及び第二ブロック22自身の温度がそれぞれ所望の温度を満足するように、個別に温度調整可能に構成されている。
各第一ブロック21及び第二ブロック22は、所定の温度に調整された状態で、上述のようにブランク2の所定部位に接触する。つまり、各第一ブロック21及び第二ブロック22の温度とブランク2の温度との間に所定の温度差を発生させた状態で接触させることが可能である。
これにより、ブランク2から各第一ブロック21及び第二ブロック22へ移動する熱伝導量が安定し、ブランク2に対する安定的な抜熱が実現される。従って、ブランク2の所定部位における温度を正確に制御することができ、ブランク2内に正確な温度分布を設けることができる。
以上のように、各第一ブロック21及び第二ブロック22は、ホットプレス成形後に後加工が施されるブランク2の所定部位に対して厚み方向両面側から面接触可能に構成され、かつ、個別に温度調整可能に構成されている。
【0021】
また、各第一ブロック21及び第二ブロック22は、少なくともブランク2との接触部位に高熱伝導性、かつ、非導電性の接触部を備える。つまり、各第一ブロック21及び第二ブロック22は、高熱伝導性、かつ、非導電性の接触部を介してブランク2と接触する。
つまり、第一ブロック21及び第二ブロック22におけるブランク2側の部位が接触部位として構成され、前記接触部位においてブランク2に実際に接触する面が接触部として構成されている。例えば、ブランク2の上方に配置される第一ブロック21及び第二ブロック22においては、その下部がブランク2に対する接触部位となり、その下面がブランク2に対する接触部となる。
このように、ブランク2内に流れる電流が各第一ブロック21及び第二ブロック22側へ流入することが防止されるため、ブランク2の通電加熱に影響を与えることがない。
また、前記接触部は、ブランク2よりも熱伝導率の高い部材により構成されている。このため、ブランク2から各第一ブロック21及び第二ブロック22への良好な熱の移動が実現される。
【0022】
上記高熱伝導率、かつ、非導電性を確保する材料としては、例えばセラミック等が挙げられる。つまり、各第一ブロック21及び第二ブロック22の構成材料をセラミックとすることによって、ブランク2からの電流の流入を防止することが可能であるとともに、大きい熱伝導率により効率的にブランク2の所定部位を抜熱することが可能である。
また、ブランク2との接触部位側の表面にセラミックコーティングを施して、接触部のみに非導電性の機能を持たせ、本体を銅等の安価な高熱伝導率材料によって構成することも可能であり、各第一ブロック21及び第二ブロック22を構成する材料を限定するものではなく、これらの部材を製造する際のコスト面、製造負荷等を考慮して選択することが可能である。
ここで、各第一ブロック21及び第二ブロック22におけるブランク2との間の非導電性の機能は、通電加熱中のブランク2から各第一ブロック21及び第二ブロック22側への電流の流入を防止することであるため、例えば前記接触部を構成する材料に、ブランク2の電気抵抗値に比べて非常に大きい電気抵抗値を有する金属を適用し、各第一ブロック21及び第二ブロック22側への電流の流れを防止する構成とすることも可能である。
【0023】
図2及び図3に示すように、押圧部材30は、温度制御部材20の第一ブロック21・21・21・21を押圧する第一押圧部材31・31・31・31、及び第二ブロック22を押圧する第二押圧部材32を含む。
第一押圧部材31は、第一ブロック21を着脱自在に支持する支持部材31a、支持部材31aを往復移動するシリンダ31b等を含む。
第二押圧部材32は、第二ブロック22を着脱自在に支持する支持部材32a、支持部材32aを往復移動するシリンダ32b等を含む。
【0024】
支持部材31aは、第一ブロック21の外形よりも大きい平板状の部材であり、十分な剛性及び絶縁性を有する材料によって構成されている。
シリンダ31bは、エアシリンダ、油圧シリンダ、コイルばね等により構成されるアクチュエータであり、支持部材31aの重心部に接続されており、支持部材31aをバランスよく押圧することが可能である。シリンダ31bは、適宜の制御装置に接続され、その駆動が制御される。
【0025】
支持部材32aは、第二ブロック22の外形よりも大きい平板状の部材であり、十分な剛性及び絶縁性を有する材料によって構成されている。
シリンダ32bは、エアシリンダ、油圧シリンダ、コイルばね等により構成されるアクチュエータであり、支持部材32aの重心部に接続されており、支持部材32aをバランスよく押圧することが可能である。シリンダ32bは、適宜の制御装置に接続され、その駆動が制御される。
【0026】
各第一押圧部材31及び第二押圧部材32のシリンダ31b・32bは、適宜の制御装置からの制御信号を受けて駆動され、支持部材31a・32aに支持される各ブロック21・22をブランク2に対して近接する方向/離間する方向に往復移動するとともに、近接する方向に移動する際に、各ブロック21・22を介してブランク2に対して所定の押圧力を付与する。
なお、帯状に形成される第二ブロック22を押圧する第二押圧部材32の支持部材32aを分割することにより、シリンダ32bから支持部材32aを介した第二ブロック22へ伝達される押圧力のばらつきを低減する構成としても良く、各ブロック21・22を安定的にブランク2に押し当てることが可能であれば適用できる。
【0027】
上記のように、各第一ブロック21及び第二ブロック22は、支持部材31a・32aによって着脱自在に支持されているため、各第一ブロック21及び第二ブロック22に不具合が生じた場合に個別に交換することが可能である。本実施形態では、このように作業性・汎用性に優れる形態を実現している。
【0028】
以下に、図4を参照して、通電加熱装置1における、温度制御部材20の温度制御、及び押圧部材30の押圧タイミング制御について説明する。
(1)ブランク2の温度Tが、Ac1変態点温度に到達する直前(より厳密には、Ac1変態点よりも若干(数十℃)低くなる程度)の温度T1となるタイミングで、押圧部材30を駆動して、温度制御部材20(各第一ブロック21、第二ブロック22)をブランク2に接触させる。このとき、温度制御部材20は、温度T1となるように温度制御されている。
(2)温度制御部材20は、ブランク2と接触した状態で、温度T1を保持するように温度制御される。温度制御部材20と接触したブランク2の所定部位は、加熱断面積が大きくなるため、通電加熱による昇温が抑制されている。また、一定温度に温度制御される温度制御部材20の存在によって、周囲からの熱伝導による加熱も行われない。つまり、ブランク2における温度制御部材20と接触している部位も所定の温度T1に保持される。
また、温度制御部材20のブランク2との接触部は、非導電性のものとして構成されているため、温度制御部材20がブランク2と接触しているときにも、通電加熱による加熱は妨害されることがない。
(3)ブランク2の加熱終了後、押圧部材30を駆動し、温度制御部材20をブランク2から離間する方向に移動し、温度制御部材20とブランク2との接触を解除する。温度制御部材20が接触していた部位は、Ac1変態点温度よりも低い温度T1に保持され、温度制御部材20が接触していなかった部位(一般部位)の温度T0は、所定のターゲット温度(例えば850℃以上であり、Ar3変態点温度を大きく超えた温度)に加熱される。
(4)通電加熱終了後、ホットプレス成形装置により、ブランク2が成形品3として成形される。このとき、ホットプレス成形装置の型締め時に温度制御部材20が接触していなかった部位の温度Tpは、Ar3変態点温度よりも高い温度となるように設定されている。言い換えれば、ホットプレス成形開始時におけるブランク2の所定部位を除く一般部位の温度が、ホットプレス成形時に十分に焼き入れされる温度となるように上記(3)におけるターゲット温度が設定される。
【0029】
以上のように、温度制御部材20及び押圧部材30を制御することによって、温度制御部材20と接触するブランク2の所定部位は、所定の温度T1以上、つまりAc1変態点以上に昇温することがなく、オーステナイト化されない低温部位として加熱が終了する。
これにより、ブランク2の所定部位には、ホットプレス成形時に焼き入れが行われないため、ブランク2の所定部位における硬度が当該所定部位を除く部位と比べて低い「低硬度部位」として成形される。なお、本実施形態における「低硬度部位」とは、元々のブランク2の材料硬度を示している。
従って、通電加熱装置1を用いた通電加熱において、ブランク2内に正確な温度分布を持たせることができ、低温部位として加熱が終了した部位については、ホットプレス成形後に加工容易な低硬度部位として成形することが可能となる。
また、このように低硬度部位として成形される部位に対して後加工を施す際には、切断工程、穴あけ工程の簡易化、プレス工具、刃具の長寿命化等の効果を奏する。
【0030】
また、温度制御部材20は、ブランク2の温度と同一温度である温度T1に制御された状態でブランク2と接触するため、接触部位の周囲への影響を最小限に抑えることができ、温度徐変部位の発生を最小限に抑えることが可能となる。
これにより、低温部位以外の部位での焼き入れが安定して行われることとなるので、所定の硬度及び強度を有する成形品3を成形することが可能となり、製品4の品質を向上できる。さらに、温度徐変部位の発生を最小限に抑えることにより、製品4の形状精度も確保できる。
【0031】
また、温度制御部材20を構成する各第一ブロック21及び第二ブロック22は、独立した温度制御が可能であるため、量産工程で繰り返し行われる加熱工程において、同一の条件でブランク2に接触させることが可能である。
これにより、通電加熱装置1を量産工程に用いたとしても、各加熱工程において安定した加熱、及び抜熱を実現することが可能であり、安定した量産工程を提供できる。
【0032】
また、通電加熱装置1は、通電加熱による加熱形態を採っているため、加熱装置の小型化を図ることができ、さらに、短時間での加熱が可能となる。
これにより、ワークスペースの確保、加熱工程にかかるサイクルタイムの短縮等の効果を奏し、通電加熱装置1を用いた加熱工程を容易に量産工程に適用することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態では、ブランク2を加熱する方法として、通電電極10・10を用いた通電加熱方式を採用しているが、温度制御部材20を接触させた状態でもブランク2を均一的に加熱可能、かつ、所定温度以上に加熱可能であれば本発明の加熱方法として適用可能である。例えば、高周波誘導加熱方法を採用しても、本実施形態の温度制御部材20及び押圧部材30を用いることによって、同様の作用効果を得ることが可能である。
【0034】
[第二実施形態]
以下では、図5及び図6を参照して、本発明の加熱装置の第二実施形態である通電加熱装置101について説明する。
図5及び図6に示すように、通電加熱装置101は、通電電極10・10、温度制御部材120、押圧部材130を具備し、通電電極10・10を用いてブランク2に通電することによりブランク2を均一的に加熱する加熱装置である。
【0035】
図5及び図6に示すように、温度制御部材120は、四対の第一ブロック121・121・121・121、ブランク2の一面側(図6において上面側)に配置され、複数に分割される第二上側ブロック122(本実施形態では、第二上側ブロック122a〜122nの14個に分割されている)、ブランク2の他面側(図6において下面側)に配置され、かつ、第二上側ブロック122とブランク2を挟んで対向するように配置され、一体的に構成される第二下側ブロック123を含む。
第一ブロック121は、製品4に形成される穴5・6の形状に沿う形状を有する円筒状の部材であり、成形品3に対する穴あけ加工の際に打ち抜かれるブランク2の部位に対応する部位である。各第一ブロック121は、ブランク2を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
各第二上側ブロック122a〜122nは、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位を複数に分割した部位に対応する部位である。
第二下側ブロック123は、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位に対応する部位である。第二下側ブロック123は、分割される各第二上側ブロック122a〜122nを結合した形状と同一形状を有し、これら第二上側ブロック122a〜122nとブランク2を挟んで対向した状態で配置されている。
【0036】
各第一ブロック121、第二上側ブロック122、及び第二下側ブロック123は、各第一ブロック21及び第二ブロック22と同様に、内部に熱線等の発熱手段、及び水冷配管等の冷却手段を備え、これら発熱手段及び冷却手段を適宜制御することによって、各第一ブロック121、第二上側ブロック122、及び第二下側ブロック123自体の温度が所望の温度を満足するように、個別に温度調整可能に構成されている。
【0037】
図5及び図6に示すように、押圧部材130は、第一ブロック121・121・121・121を押圧する第一押圧部材131・131・131・131、各第二上側ブロック122a〜122nを押圧する第二上側押圧部材132a〜132n、第二下側ブロック123を押圧する第二下側押圧部材135を含む。
第一押圧部材131は、第一ブロック121を着脱自在に支持する支持部材131a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材131aを往復移動するシリンダ131b等を含む。
各第二上側押圧部材132a〜132nは、各第二上側ブロック122a〜122nを着脱自在に支持する上側支持部材133、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、上側支持部材133を往復移動する上側シリンダ134等を含む。
第二下側押圧部材135は、第二下側ブロック123を着脱自在に支持する下側支持部材136、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、下側支持部材136を往復移動する下側シリンダ137等を含む。
各シリンダ131b・134・137は、適宜の制御装置からの制御信号を受けて駆動され、各支持部材131a・133・136に支持される各第一ブロック121、各第二上側ブロック122a〜122n及び第二下側ブロック123をブランク2に対して近接する方向/離間する方向に往復移動するとともに、近接する方向に移動する際にブランク2に対して所定の押圧力を付与する。
つまり、複数の部位に分割される第二上側ブロック122a〜122nは、第二下側ブロック123(又は下側支持部材136)を基準面として、第二上側押圧部材132a〜132nによって、ブランク2の厚み方向両面側から個別の押圧力が付与される構成である。
【0038】
以上のように構成される通電加熱装置101により、通電加熱中にブランク2に反り、捩れ、波打ち等が発生した場合にも、第二下側ブロック123を基準面として、第二上側ブロック122a〜122nが個別に押し付けられるため、均一かつ確実なブランク2と温度制御部材120との接触面を確保できる。
従って、通電加熱装置101を用いた加熱工程におけるブランク2の加熱をより安定的に行うことが可能となる。
なお、通電加熱装置101における温度制御部材120の温度制御、及び押圧部材130の押圧タイミング制御については、通電加熱装置1における制御構成と同様であるため、本実施形態での制御構成、及びそれにより奏する作用効果に関する詳細な説明は省略する。
【0039】
[第三実施形態]
以下では、図7及び図8を参照して、本発明の加熱装置の第三実施形態である通電加熱装置201について説明する。
図7及び図8に示すように、通電加熱装置201は、通電電極10・10、温度制御部材220、押圧部材230を具備し、通電電極10・10を用いてブランク2に通電することによりブランク2を均一的に加熱する加熱装置である。
【0040】
図7及び図8に示すように、温度制御部材220は、四対の第一ブロック221・221・221・221、ブランク2の一面側(図8において上面側)に配置され、複数に分割される第二上側ブロック222(本実施形態では、第二上側ブロック222a〜222nの14個に分割されている)、ブランク2の他面側(図8において下面側)に配置され、かつ、第二上側ブロック222とブランク2を挟んで対向するように配置され、複数に分割される第二下側ブロック223(本実施形態では、第二下側ブロック223a〜223nの14個に分割されている)を含む。
第一ブロック221は、製品4に形成される穴5・6の形状に沿う形状を有する円筒状の部材であり、成形品3に対する穴あけ加工の際に打ち抜かれるブランク2の部位に対応する部位である。各第一ブロック221は、ブランク2を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
各第二上側ブロック222a〜222nは、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位を複数に分割した部位に対応する部位である。
各第二下側ブロック223a〜223nは、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位を複数に分割した部位に対応する部位である。分割された各第二上側ブロック222a〜222n及び第二下側ブロック223a〜223nは、ブランク2を挟んで互いに対向した状態で配置されている。
【0041】
各第一ブロック221、第二上側ブロック222、及び第二下側ブロック223は、各第一ブロック21及び第二ブロック22と同様に、内部に熱線等の発熱手段、及び水冷配管等の冷却手段を備え、これら発熱手段及び冷却手段を適宜制御することによって、各第一ブロック221、第二上側ブロック222、及び第二下側ブロック223自体の温度が所望の温度を満足するように、個別に温度調整可能に構成されている。
【0042】
図7及び図8に示すように、押圧部材230は、第一ブロック221・221・221・221を押圧する第一押圧部材231・231・231・231、各第二上側ブロック222a〜222nを押圧する第二上側押圧部材232a〜232n、各第二下側ブロック223a〜223nを押圧する第二下側押圧部材235a〜235nを含む。
第一押圧部材231は、第一ブロック221を着脱自在に支持する支持部材231a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材231aを往復移動するシリンダ231b等を含む。
各第二上側押圧部材232a〜232nは、各第二上側ブロック222a〜222nを着脱自在に支持する上側支持部材233、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、上側支持部材233を往復移動する上側シリンダ234等を含む。
各第二下側押圧部材235a〜235nは、各第二下側ブロック223a〜223nを着脱自在に支持する下側支持部材236、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、下側支持部材236を往復移動する下側シリンダ237等を含む。
各シリンダ231b・234・237は、適宜の制御装置からの制御信号を受けて駆動され、各支持部材231a・233・236に支持される各第一ブロック221、各第二上側ブロック222a〜222n及び第二下側ブロック223a〜223nをブランク2に対して近接する方向/離間する方向に往復移動するとともに、近接する方向に移動する際にブランク2に対して所定の押圧力を付与する。
つまり、複数の部位に分割される各第二上側ブロック222a〜222n及び各第二下側ブロック223a〜223nは、各第二上側押圧部材232a〜232n及び各第二下側押圧部材235a〜235nによって、ブランク2のそれぞれの部位に対して厚み方向両面側から個別の押圧力が付与される構成である。
【0043】
以上のように構成される通電加熱装置201により、通電加熱中にブランク2に反り、捩れ、波打ち等が発生した場合にも、複数部位に分割される第二上側ブロック222a〜222nと、それらに対応して複数部位に分割される第二下側ブロック223a〜223nとが個別に押し付けられるため、均一かつ確実なブランク2と温度制御部材220との接触面を確保できる。
従って、通電加熱装置201を用いた加熱工程におけるブランク2の加熱をより安定的に行うことが可能となる。
なお、通電加熱装置201における温度制御部材220の温度制御、及び押圧部材230の押圧タイミング制御については、通電加熱装置1における制御構成と同様であるため、本実施形態での制御構成、及びそれにより奏する作用効果に関する詳細な説明は省略する。
【0044】
[第四実施形態]
以下では、図9〜図12を参照して、本発明の加熱装置の第四実施形態である通電加熱装置301について説明する。
図9及び図10に示すように、通電加熱装置301は、通電電極310・310、温度制御部材320、押圧部材330を具備し、通電電極310・310を用いてブランク302に通電することによりブランク302を均一的に加熱する加熱装置である。
本実施形態のブランク302は、通電加熱装置1による加熱工程後、適宜のホットプレス成形装置を用いて所定形状を有する成形品として成形され、当該成形品に対してさらにトリム加工等の後加工を経て最終的な製品304として製造される。
【0045】
本実施形態では、図11に示すように、製品304を自動車車体のセンターピラーとして、当該センターピラーの形態に応じて形状、強度等が設計されているブランク302に対する加熱工程について取り扱う。特に、本実施形態の製品304では、長手方向における強度を部分的に任意に設定可能な加熱工程について説明する。
図11に示すように、製品304は長手方向に延びる中央部と、その長手方向両端部から当該長手方向と直交する方向に延出する両端部とを含む形状を有し、略I字状に形成されている。製品304では、前記両端部のうち下方側に位置する下方側端部304a(図11において符号Aで示される領域)が低強度部位、長手方向に延びる前記中央部における中途部304b(図11において符号Bで示される領域)が中強度部位、前記中央部における上方側の中央上部304c(図11において符号Cで示される領域)が高強度部位、残りの部位が超高強度部位となるように製造される。
【0046】
つまり、通電加熱装置301では、通電電極310・310間に流れる電流によってブランク302が均一的に加熱される。一方で、ブランク302への加熱途中の所定のタイミングで押圧部材330を駆動し、所定の温度に制御された状態の温度制御部材320をブランク302の所定部位に押し当てて、温度制御部材320を接触させることにより係る部位から抜熱する。このようにして、通電加熱によって加熱されるブランク302内に所定の温度差を設けることにより、ホットプレス成形後の強度に分布を持たせるものである。
【0047】
図9及び図10に示すように、通電電極310・310は、クリップ式の電極であり、ブランク302を厚み方向両側から挟持することによりブランク302の両端部にそれぞれ取り付けられている。通電電極310・310には、図示せぬ電源装置が接続されており、当該電源装置によって通電電極310・310間に所定の電圧が印加され、一方の通電電極310から他方の通電電極310に電流が流れる。このようにして、通電電極310・310によってブランク302が均一的に通電加熱される。
【0048】
図9及び図10に示すように、温度制御部材320は、ブランク302の所定部位に面接触可能である。
ここで、ブランク302の所定部位とは、上述のように製品304内において、ホットプレス成形時に低強度部位、中低強度部位、中強度部位として成形される部位である。
【0049】
図9及び図10に示すように、温度制御部材320は、第一ブロック321、第二ブロック322、第三ブロック323を含む。
第一ブロック321は、製品304において低強度部位として設定される下方側端部304aに対応するブランク302の所定部位を含む矩形状を有する加熱手段である。第一ブロック321は、ブランク302を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
第二ブロック322は、製品304において中強度部位として設定される中途部304bに対応するブランク302の所定部位を含む矩形状を有する加熱手段である。第二ブロック322は、ブランク302を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
第三ブロック323は、製品304において高強度部位として設定される中央上部304cに対応するブランク302の所定部位を含む矩形状を有する加熱手段である。第三ブロック323は、ブランク302を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
【0050】
第一ブロック321、第二ブロック322及び第三ブロック323は、内部に熱線等の発熱手段、及び水冷配管等の冷却手段を備え、これら発熱手段及び冷却手段を適宜制御することによって、第一ブロック321、第二ブロック322及び第三ブロック323の温度が所望の温度を満足するように、個別に温度調整可能に構成されている。
以上のように、第一ブロック321、第二ブロック322及び第三ブロック323は、ブランク302の所定部位に対して厚み方向両面側から面接触可能に構成され、かつ、個別に温度調整可能に構成されている。
【0051】
図9及び図10に示すように、押圧部材330は、温度制御部材320の第一ブロック321を押圧する第一押圧部材331、第二ブロック322を押圧する第二押圧部材332、第三ブロック323を押圧する第三押圧部材333を含む。
第一押圧部材331は、第一ブロック321を着脱自在に支持する支持部材321a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材321aを往復移動するシリンダ331b等を含む。
第二押圧部材332は、第二ブロック322を着脱自在に支持する支持部材322a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材322aを往復移動するシリンダ332b等を含む。
第三押圧部材333は、第三ブロック323を着脱自在に支持する支持部材323a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材323aを往復移動するシリンダ333b等を含む。
【0052】
第一押圧部材331、第二押圧部材332及び第三押圧部材333のシリンダ331b・332b・333bは、適宜の制御装置からの制御信号を受けて駆動され、支持部材331a・332a・333aに支持される第一ブロック321、第二ブロック322及び第三ブロック323をブランク302に対して近接する方向/離間する方向に往復移動するとともに、近接する方向に移動する際にブランク302に対して所定の押圧力を付与する。
【0053】
以下に、図12を参照して、通電加熱装置301における、温度制御部材320の温度制御、及び押圧部材330の押圧タイミング制御について説明する。
(1)ブランク302の温度Tが、Ac1変態点温度未満(より厳密には、Ac1変態点よりも若干(数十℃)低くなる程度の低温状態)の温度T1となるタイミングで、押圧部材330の第一押圧部材331を駆動して、温度制御部材320の第一ブロック321をブランク302に接触させる。このとき、第一ブロック321は、温度T1となるように温度制御されている。
ブランク302の第一ブロック321と接触する部位は、第一ブロック321の温度調整によって、加熱終了後まで温度T1に保持される。つまり、係る低温部位はオーステナイト化されず、ブランク302に対するホットプレス成形後の係る部位は、材料強度そのままの低強度部位として成形される。
(2)ブランク302の温度Tが、Ac1変態点温度を超えた(より厳密には、Ac1変態点温度を若干(数十℃)超えた程度の中低温状態)温度T2となるタイミングで、押圧部材330の第二押圧部材332を駆動して、温度制御部材320の第二ブロック322をブランク302に接触させる。このとき、第二ブロック322は、温度T2となるように温度制御されている。
ブランク302の第二ブロック322と接触する部位は、第二ブロック322の温度調整によって、加熱終了後まで温度T2に保持される。つまり、係る中低温部位では、その一部においてオーステナイト化が進むこととなる。これにより、ブランク302に対するホットプレス成形後の係る部位は、ある程度の焼き入れが施され、中強度部位として成形される。
(3)ブランク302の温度Tが、温度T2を超えた(より厳密には、温度T2を若干(数十℃)超え、かつ、Ac3変態点温度を超えない程度の中温状態)温度T3となるタイミングで、押圧部材330の第三押圧部材333を駆動して、温度制御部材320の第三ブロック323をブランク302に接触させる。このとき、第三ブロック323は、温度T3となるように温度制御されている。
ブランク302の第三ブロック323と接触する部位は、第三ブロック323の温度調整によって、加熱終了後まで温度T3に保持される。つまり、係る中温部位では、その全体に対してある程度のオーステナイト化が進むこととなる。これにより、ブランク302に対するホットプレス成形後の係る部位は、ある程度の焼き入れが施され、高強度部位として成形される。
(4)ブランク302において温度制御部材320が接触していない部位の温度T0が所定のターゲット温度(例えば850℃以上であり、Ar3変態点温度を大きく超えた高温)に達したところで、通電加熱を終了し、押圧部材330の各押圧部材331・332・333を駆動し、温度制御部材320をブランク302から離間する方向に移動し、温度制御部材320とブランク302との接触を解除する。
ブランク302において温度制御部材320と接触していない部位(一般部位)は、オーステナイト化が完了する高温部位として加熱される。これにより、ブランク302に対するホットプレス成形後の係る部位は、焼き入れが施され、超高強度部位として成形される。
(5)通電加熱終了後、ホットプレス成形装置により、ブランク302を成形品として成形する。
【0054】
以上のように、温度制御部材320及び押圧部材330を制御することによって、温度制御部材320の各ブロック321・322・323と接触するブランク302の所定部位の温度は、それぞれ所定の温度T1・T2・T3に正確に温度制御される。
これにより、ブランク302の所定部位において、ホットプレス成形時の焼き入れ度合いに正確な差を設けることができ、焼き入れ後の強度に正確な分布を持たせることが可能となる。
従って、通電加熱装置301を用いた通電加熱において、ブランク302内に正確な温度分布を持たせることができ、ブランク302を用いたホットプレス成形工程を経ることによって、所定の強度分布を持つ成形品を成形することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 通電加熱装置
2 ブランク
10 通電電極
20 温度制御部材
21 第一ブロック
22 第二ブロック
30 押圧部材
31 第一押圧部材
32 第二押圧部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電加熱、高周波誘導加熱等の加熱方法を用いて、ブランクを所望温度に加熱する技術に関する。特に、ホットプレス成形の前工程として行われる加熱工程において、加熱中のブランクの温度を部分的に制御して、係る温度制御部位と、他の部位との間に所定の温度差を設ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼き入れ性のある素材(鋼材等)からなるブランクを所定温度まで加熱して、金型内に投入するとともに金型を型締めして、ブランクを型締めした状態の金型に接触させることによって急冷して焼き入れつつ、所望の形状にプレス成形するホットプレス成形が公知である。
上記ホットプレス成形により得られる成形品は、所定の焼き入れ工程を経ることによって高強度部材又は超高強度部材として成形されており、トリム加工、穴あけ加工等の適宜の後加工を経て、自動車車体の構造部材、補強部材等の製品として用いられる。
しかし、上記のように高強度部材又は超高硬度部材として成形される成形品は、その硬度により後加工の際に高い加工能力を有する加工装置が必要であること、さらに、後加工に要する時間が長くなること等の問題がある。
【0003】
上記のような問題を解決する一手段として、特許文献1には、加熱炉の輻射熱を用いてブランクを加熱する方法であって、ブランクよりも熱伝導率の低い断熱材をブランクの所定部位に装着することによって、当該断熱材が装着された部位への輻射熱を遮蔽し、係る断熱材装着部位が所定の温度以下となるように加熱する技術が開示されている。
このような加熱技術を用いて加熱された後の断熱材装着部位は、オーステナイト変態点(Ac3点)以下となる低温部位としてブランク内に存在するため、ホットプレス成形時に焼き入れされることがない。これにより、断熱材装着部位を加工容易な軟質部位として成形することが可能となる。
【0004】
しかしながら、特許文献1における断熱材は、厳密な温度管理がなされていないため、ブランクに発生する低温部位の温度が安定しないという問題がある。特に、特許文献1に開示される技術を量産工程に適用した場合、加熱工程を繰り返す際に、断熱材の温度が上昇し、低温部位の温度が上昇するため、断熱材装着部位の硬度が安定せず、後加工に不具合をもたらす可能性がある。
また、加熱開始時からブランクに断熱材を取り付けているため、断熱材装着部位近傍の加熱効率が低下するという問題、並びに、断熱材装着部位近傍の徐変部位の領域が大きくなるという問題がある。これにより、強度が必要な部位が十分に焼き入れられないという不具合が生じ得る。
さらに、加熱炉内で同時に複数のブランクを加熱する場合には、多数の断熱材が必要となるため、量産工程に持ち込む際にコスト面、作業性で劣るという課題が残る。
以上のように、従来の加熱技術では、ブランク内に正確な温度分布を設けることが困難であった。また、従来の加熱技術を量産工程に適用する際に解決すべき課題が残されているため、実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−61473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、加熱対象であるブランク内に正確な温度分布を設けることが可能な加熱技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様である加熱装置は、ホットプレス成形に用いるブランクを加熱する加熱装置であって、前記ブランクの所定部位に接触可能であり、かつ、当該ブランクの所定部位との接触部位に非導電性の接触部を有するとともに、自身の温度を調整可能である温度制御部材と、前記ブランクへの加熱途中の所定のタイミングで、前記温度制御部材を前記ブランクに対して近接する方向に移動させて、前記温度制御部材を前記ブランクと接触させる押圧部材と、を具備し、前記温度制御部材は、前記ブランクの温度と同一温度に制御された状態で当該ブランクに接触され、前記所定温度に制御された温度制御部材により、前記加熱途中のブランクの所定部位から抜熱することにより、前記ブランク内に所定の温度分布を設ける。
【0008】
前記ブランクは、一方向を長手方向とする矩形状を有し、前記温度制御部材及び押圧部材は、少なくとも前記ブランクの長手方向に向けて複数に分割され、当該複数に分割される温度制御部材及び押圧部材は、個別に押圧されることが好ましい。
【0009】
前記ブランクの所定部位は、前記ホットプレス成形後の後加工時に加工が施される部位であり、前記押圧部材は、前記ブランクがAc1変態点温度に到達する直前となるタイミングで、当該ブランクと同一温度に制御された状態の前記温度制御部材を前記ブランクに接触させることが好ましい。
【0010】
前記ブランクへの加熱は、通電加熱により行われることが好ましい。
【0011】
本発明の第二の態様である加熱方法は、ホットプレス成形工程に用いるブランクを加熱する加熱方法であって、前記ブランクへの加熱途中の所定のタイミングで、前記ブランクの所定部位に、非導電性の接触部を当該ブランクとの接触部位に有し、前記加熱途中のブランクと同一温度に制御された温度制御部材を接触させることによって、前記ブランクの所定部位の温度を所定の温度以下に制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱対象であるブランク内に正確な温度分布を設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】加熱対象であるブランクを示す斜視図であり、(a)はブランク、(b)は成形品、(c)は製品を示す。
【図2】第一実施形態に係る通電加熱装置を示す平面概略図であり、便宜上、ブランク及び温度制御部材のみを示している。
【図3】第一実施形態に係る通電加熱装置を示す側面図である。
【図4】第一実施形態に係る通電加熱装置の制御構成を示す図である。
【図5】第二実施形態に係る通電加熱装置を示す平面図であり、便宜上、ブランク及び温度制御部材のみを示している。
【図6】第二実施形態に係る通電加熱装置を示す側面図である。
【図7】第三実施形態に係る通電加熱装置を示す平面図であり、便宜上、ブランク及び温度制御部材のみを示している。
【図8】第三実施形態に係る通電加熱装置を示す側面図である。
【図9】第四実施形態に係る通電加熱装置を示す平面図であり、便宜上、ブランク及び温度制御部材のみを示している。
【図10】第四実施形態に係る通電加熱装置を示す側面図である。
【図11】第四実施形態に係る通電加熱装置の加熱対象であるブランクを示す図であり、(a)はブランク、(b)は製品を示す。
【図12】第四実施形態に係る通電加熱装置の制御構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
以下では、図面を参照して、本発明に係る加熱装置の第一実施形態である通電加熱装置1について説明する。通電加熱装置1は、ブランク2に通電することによりブランク2を均一的に加熱する。
ブランク2は、通電加熱装置1による加熱対象であり、焼き入れ性のある鋼材(例えばボロン鋼)を材料とする平板部材である。
また、図1に示すように、ブランク2は、通電加熱装置1による加熱工程後、適宜のホットプレス成形装置を用いて所定形状を有する成形品3として成形され、さらにトリム加工、穴あけ加工等の後加工を経て最終的な製品4として製造される。本実施形態では、製品4を自動車車体のドアビームとして、当該ドアビームの形態に応じて形状等が設計されるブランク2に対する加熱工程について取り扱う。
【0015】
図1(a)に示すように、ブランク2は、一方向を長手方向とする矩形状を有する平板部材である。
図1(b)に示すように、成形品3は、ブランク2をプレス成形して得られる中間品であり、ハット型断面を有する。
図1(c)に示すように、製品4は、ハット型断面を有するドアビームであり、成形品3に対して所定のトリム加工、及び穴あけ加工を施すことにより、所定の外形を有する形状にトリミングされ、かつ、頂面に複数の穴5・5、フランジ面に複数の穴6・6が形成されている。これらの穴5・5・6・6は、例えば自動車車体に固定する際等に用いられる。
【0016】
図2及び図3に示すように、通電加熱装置1は、一対の通電電極10・10、温度制御部材20、押圧部材30を具備する。
通電加熱装置1では、通電電極10・10間に流れる電流によってブランク2が均一的に加熱される。一方で、ブランク2への加熱途中の所定のタイミングで押圧部材30を駆動し、所定の温度に制御された状態の温度制御部材20をブランク2の所定部位に押し当てて、温度制御部材20を接触させることにより係る部位から抜熱する。このようにして、通電加熱によって加熱されるブランク2内に所定の温度分布を設けるものである。
【0017】
図2及び図3に示すように、通電電極10・10は、クリップ式の電極であり、ブランク2を厚み方向両側から挟持することによりブランク2の両端部にそれぞれ取り付けられている。通電電極10・10には、図示せぬ電源装置が接続されており、当該電源装置によって通電電極10・10間に所定の電圧が印加され、一方の通電電極10から他方の通電電極10に電流が流れる。このようにして、通電電極10・10によってブランク2が均一的に通電加熱される。
【0018】
図2及び図3に示すように、温度制御部材20は、ブランク2の所定部位に面接触可能である。
ここで、ブランク2の所定部位とは、ホットプレス成形後、つまり成形品3から製品4を製造する際に、後加工としてトリム加工又は穴あけ加工が施される部位であり、ホットプレス成形時に低硬度部位として成形される部位である。
【0019】
図2及び図3に示すように、温度制御部材20は、第一ブロック21・21・21・21、第二ブロック22を含む。
第一ブロック21は、製品4に形成される穴5・6の形状に沿う形状を有する円筒状の部材であり、成形品3に対する穴あけ加工の際に打ち抜かれるブランク2の部位に対応する形状を有する。各第一ブロック21は、ブランク2を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
第二ブロック22は、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位に対応する形状を有する。第二ブロック22は、ブランク2を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
このように、ブランク2を厚み方向両側から挟み込む上下の対として構成される各第一ブロック21及び第二ブロック22は、それぞれブランク2の厚み方向両側に配置されており、ブランク2を挟み込むようにしてブランク2の両面側から面接触する。
【0020】
各第一ブロック21及び第二ブロック22は、内部に熱線等の発熱手段、及び水冷配管等の冷却手段を備え、これら発熱手段及び冷却手段を適宜制御することによって、各第一ブロック21及び第二ブロック22自身の温度がそれぞれ所望の温度を満足するように、個別に温度調整可能に構成されている。
各第一ブロック21及び第二ブロック22は、所定の温度に調整された状態で、上述のようにブランク2の所定部位に接触する。つまり、各第一ブロック21及び第二ブロック22の温度とブランク2の温度との間に所定の温度差を発生させた状態で接触させることが可能である。
これにより、ブランク2から各第一ブロック21及び第二ブロック22へ移動する熱伝導量が安定し、ブランク2に対する安定的な抜熱が実現される。従って、ブランク2の所定部位における温度を正確に制御することができ、ブランク2内に正確な温度分布を設けることができる。
以上のように、各第一ブロック21及び第二ブロック22は、ホットプレス成形後に後加工が施されるブランク2の所定部位に対して厚み方向両面側から面接触可能に構成され、かつ、個別に温度調整可能に構成されている。
【0021】
また、各第一ブロック21及び第二ブロック22は、少なくともブランク2との接触部位に高熱伝導性、かつ、非導電性の接触部を備える。つまり、各第一ブロック21及び第二ブロック22は、高熱伝導性、かつ、非導電性の接触部を介してブランク2と接触する。
つまり、第一ブロック21及び第二ブロック22におけるブランク2側の部位が接触部位として構成され、前記接触部位においてブランク2に実際に接触する面が接触部として構成されている。例えば、ブランク2の上方に配置される第一ブロック21及び第二ブロック22においては、その下部がブランク2に対する接触部位となり、その下面がブランク2に対する接触部となる。
このように、ブランク2内に流れる電流が各第一ブロック21及び第二ブロック22側へ流入することが防止されるため、ブランク2の通電加熱に影響を与えることがない。
また、前記接触部は、ブランク2よりも熱伝導率の高い部材により構成されている。このため、ブランク2から各第一ブロック21及び第二ブロック22への良好な熱の移動が実現される。
【0022】
上記高熱伝導率、かつ、非導電性を確保する材料としては、例えばセラミック等が挙げられる。つまり、各第一ブロック21及び第二ブロック22の構成材料をセラミックとすることによって、ブランク2からの電流の流入を防止することが可能であるとともに、大きい熱伝導率により効率的にブランク2の所定部位を抜熱することが可能である。
また、ブランク2との接触部位側の表面にセラミックコーティングを施して、接触部のみに非導電性の機能を持たせ、本体を銅等の安価な高熱伝導率材料によって構成することも可能であり、各第一ブロック21及び第二ブロック22を構成する材料を限定するものではなく、これらの部材を製造する際のコスト面、製造負荷等を考慮して選択することが可能である。
ここで、各第一ブロック21及び第二ブロック22におけるブランク2との間の非導電性の機能は、通電加熱中のブランク2から各第一ブロック21及び第二ブロック22側への電流の流入を防止することであるため、例えば前記接触部を構成する材料に、ブランク2の電気抵抗値に比べて非常に大きい電気抵抗値を有する金属を適用し、各第一ブロック21及び第二ブロック22側への電流の流れを防止する構成とすることも可能である。
【0023】
図2及び図3に示すように、押圧部材30は、温度制御部材20の第一ブロック21・21・21・21を押圧する第一押圧部材31・31・31・31、及び第二ブロック22を押圧する第二押圧部材32を含む。
第一押圧部材31は、第一ブロック21を着脱自在に支持する支持部材31a、支持部材31aを往復移動するシリンダ31b等を含む。
第二押圧部材32は、第二ブロック22を着脱自在に支持する支持部材32a、支持部材32aを往復移動するシリンダ32b等を含む。
【0024】
支持部材31aは、第一ブロック21の外形よりも大きい平板状の部材であり、十分な剛性及び絶縁性を有する材料によって構成されている。
シリンダ31bは、エアシリンダ、油圧シリンダ、コイルばね等により構成されるアクチュエータであり、支持部材31aの重心部に接続されており、支持部材31aをバランスよく押圧することが可能である。シリンダ31bは、適宜の制御装置に接続され、その駆動が制御される。
【0025】
支持部材32aは、第二ブロック22の外形よりも大きい平板状の部材であり、十分な剛性及び絶縁性を有する材料によって構成されている。
シリンダ32bは、エアシリンダ、油圧シリンダ、コイルばね等により構成されるアクチュエータであり、支持部材32aの重心部に接続されており、支持部材32aをバランスよく押圧することが可能である。シリンダ32bは、適宜の制御装置に接続され、その駆動が制御される。
【0026】
各第一押圧部材31及び第二押圧部材32のシリンダ31b・32bは、適宜の制御装置からの制御信号を受けて駆動され、支持部材31a・32aに支持される各ブロック21・22をブランク2に対して近接する方向/離間する方向に往復移動するとともに、近接する方向に移動する際に、各ブロック21・22を介してブランク2に対して所定の押圧力を付与する。
なお、帯状に形成される第二ブロック22を押圧する第二押圧部材32の支持部材32aを分割することにより、シリンダ32bから支持部材32aを介した第二ブロック22へ伝達される押圧力のばらつきを低減する構成としても良く、各ブロック21・22を安定的にブランク2に押し当てることが可能であれば適用できる。
【0027】
上記のように、各第一ブロック21及び第二ブロック22は、支持部材31a・32aによって着脱自在に支持されているため、各第一ブロック21及び第二ブロック22に不具合が生じた場合に個別に交換することが可能である。本実施形態では、このように作業性・汎用性に優れる形態を実現している。
【0028】
以下に、図4を参照して、通電加熱装置1における、温度制御部材20の温度制御、及び押圧部材30の押圧タイミング制御について説明する。
(1)ブランク2の温度Tが、Ac1変態点温度に到達する直前(より厳密には、Ac1変態点よりも若干(数十℃)低くなる程度)の温度T1となるタイミングで、押圧部材30を駆動して、温度制御部材20(各第一ブロック21、第二ブロック22)をブランク2に接触させる。このとき、温度制御部材20は、温度T1となるように温度制御されている。
(2)温度制御部材20は、ブランク2と接触した状態で、温度T1を保持するように温度制御される。温度制御部材20と接触したブランク2の所定部位は、加熱断面積が大きくなるため、通電加熱による昇温が抑制されている。また、一定温度に温度制御される温度制御部材20の存在によって、周囲からの熱伝導による加熱も行われない。つまり、ブランク2における温度制御部材20と接触している部位も所定の温度T1に保持される。
また、温度制御部材20のブランク2との接触部は、非導電性のものとして構成されているため、温度制御部材20がブランク2と接触しているときにも、通電加熱による加熱は妨害されることがない。
(3)ブランク2の加熱終了後、押圧部材30を駆動し、温度制御部材20をブランク2から離間する方向に移動し、温度制御部材20とブランク2との接触を解除する。温度制御部材20が接触していた部位は、Ac1変態点温度よりも低い温度T1に保持され、温度制御部材20が接触していなかった部位(一般部位)の温度T0は、所定のターゲット温度(例えば850℃以上であり、Ar3変態点温度を大きく超えた温度)に加熱される。
(4)通電加熱終了後、ホットプレス成形装置により、ブランク2が成形品3として成形される。このとき、ホットプレス成形装置の型締め時に温度制御部材20が接触していなかった部位の温度Tpは、Ar3変態点温度よりも高い温度となるように設定されている。言い換えれば、ホットプレス成形開始時におけるブランク2の所定部位を除く一般部位の温度が、ホットプレス成形時に十分に焼き入れされる温度となるように上記(3)におけるターゲット温度が設定される。
【0029】
以上のように、温度制御部材20及び押圧部材30を制御することによって、温度制御部材20と接触するブランク2の所定部位は、所定の温度T1以上、つまりAc1変態点以上に昇温することがなく、オーステナイト化されない低温部位として加熱が終了する。
これにより、ブランク2の所定部位には、ホットプレス成形時に焼き入れが行われないため、ブランク2の所定部位における硬度が当該所定部位を除く部位と比べて低い「低硬度部位」として成形される。なお、本実施形態における「低硬度部位」とは、元々のブランク2の材料硬度を示している。
従って、通電加熱装置1を用いた通電加熱において、ブランク2内に正確な温度分布を持たせることができ、低温部位として加熱が終了した部位については、ホットプレス成形後に加工容易な低硬度部位として成形することが可能となる。
また、このように低硬度部位として成形される部位に対して後加工を施す際には、切断工程、穴あけ工程の簡易化、プレス工具、刃具の長寿命化等の効果を奏する。
【0030】
また、温度制御部材20は、ブランク2の温度と同一温度である温度T1に制御された状態でブランク2と接触するため、接触部位の周囲への影響を最小限に抑えることができ、温度徐変部位の発生を最小限に抑えることが可能となる。
これにより、低温部位以外の部位での焼き入れが安定して行われることとなるので、所定の硬度及び強度を有する成形品3を成形することが可能となり、製品4の品質を向上できる。さらに、温度徐変部位の発生を最小限に抑えることにより、製品4の形状精度も確保できる。
【0031】
また、温度制御部材20を構成する各第一ブロック21及び第二ブロック22は、独立した温度制御が可能であるため、量産工程で繰り返し行われる加熱工程において、同一の条件でブランク2に接触させることが可能である。
これにより、通電加熱装置1を量産工程に用いたとしても、各加熱工程において安定した加熱、及び抜熱を実現することが可能であり、安定した量産工程を提供できる。
【0032】
また、通電加熱装置1は、通電加熱による加熱形態を採っているため、加熱装置の小型化を図ることができ、さらに、短時間での加熱が可能となる。
これにより、ワークスペースの確保、加熱工程にかかるサイクルタイムの短縮等の効果を奏し、通電加熱装置1を用いた加熱工程を容易に量産工程に適用することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態では、ブランク2を加熱する方法として、通電電極10・10を用いた通電加熱方式を採用しているが、温度制御部材20を接触させた状態でもブランク2を均一的に加熱可能、かつ、所定温度以上に加熱可能であれば本発明の加熱方法として適用可能である。例えば、高周波誘導加熱方法を採用しても、本実施形態の温度制御部材20及び押圧部材30を用いることによって、同様の作用効果を得ることが可能である。
【0034】
[第二実施形態]
以下では、図5及び図6を参照して、本発明の加熱装置の第二実施形態である通電加熱装置101について説明する。
図5及び図6に示すように、通電加熱装置101は、通電電極10・10、温度制御部材120、押圧部材130を具備し、通電電極10・10を用いてブランク2に通電することによりブランク2を均一的に加熱する加熱装置である。
【0035】
図5及び図6に示すように、温度制御部材120は、四対の第一ブロック121・121・121・121、ブランク2の一面側(図6において上面側)に配置され、複数に分割される第二上側ブロック122(本実施形態では、第二上側ブロック122a〜122nの14個に分割されている)、ブランク2の他面側(図6において下面側)に配置され、かつ、第二上側ブロック122とブランク2を挟んで対向するように配置され、一体的に構成される第二下側ブロック123を含む。
第一ブロック121は、製品4に形成される穴5・6の形状に沿う形状を有する円筒状の部材であり、成形品3に対する穴あけ加工の際に打ち抜かれるブランク2の部位に対応する部位である。各第一ブロック121は、ブランク2を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
各第二上側ブロック122a〜122nは、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位を複数に分割した部位に対応する部位である。
第二下側ブロック123は、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位に対応する部位である。第二下側ブロック123は、分割される各第二上側ブロック122a〜122nを結合した形状と同一形状を有し、これら第二上側ブロック122a〜122nとブランク2を挟んで対向した状態で配置されている。
【0036】
各第一ブロック121、第二上側ブロック122、及び第二下側ブロック123は、各第一ブロック21及び第二ブロック22と同様に、内部に熱線等の発熱手段、及び水冷配管等の冷却手段を備え、これら発熱手段及び冷却手段を適宜制御することによって、各第一ブロック121、第二上側ブロック122、及び第二下側ブロック123自体の温度が所望の温度を満足するように、個別に温度調整可能に構成されている。
【0037】
図5及び図6に示すように、押圧部材130は、第一ブロック121・121・121・121を押圧する第一押圧部材131・131・131・131、各第二上側ブロック122a〜122nを押圧する第二上側押圧部材132a〜132n、第二下側ブロック123を押圧する第二下側押圧部材135を含む。
第一押圧部材131は、第一ブロック121を着脱自在に支持する支持部材131a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材131aを往復移動するシリンダ131b等を含む。
各第二上側押圧部材132a〜132nは、各第二上側ブロック122a〜122nを着脱自在に支持する上側支持部材133、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、上側支持部材133を往復移動する上側シリンダ134等を含む。
第二下側押圧部材135は、第二下側ブロック123を着脱自在に支持する下側支持部材136、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、下側支持部材136を往復移動する下側シリンダ137等を含む。
各シリンダ131b・134・137は、適宜の制御装置からの制御信号を受けて駆動され、各支持部材131a・133・136に支持される各第一ブロック121、各第二上側ブロック122a〜122n及び第二下側ブロック123をブランク2に対して近接する方向/離間する方向に往復移動するとともに、近接する方向に移動する際にブランク2に対して所定の押圧力を付与する。
つまり、複数の部位に分割される第二上側ブロック122a〜122nは、第二下側ブロック123(又は下側支持部材136)を基準面として、第二上側押圧部材132a〜132nによって、ブランク2の厚み方向両面側から個別の押圧力が付与される構成である。
【0038】
以上のように構成される通電加熱装置101により、通電加熱中にブランク2に反り、捩れ、波打ち等が発生した場合にも、第二下側ブロック123を基準面として、第二上側ブロック122a〜122nが個別に押し付けられるため、均一かつ確実なブランク2と温度制御部材120との接触面を確保できる。
従って、通電加熱装置101を用いた加熱工程におけるブランク2の加熱をより安定的に行うことが可能となる。
なお、通電加熱装置101における温度制御部材120の温度制御、及び押圧部材130の押圧タイミング制御については、通電加熱装置1における制御構成と同様であるため、本実施形態での制御構成、及びそれにより奏する作用効果に関する詳細な説明は省略する。
【0039】
[第三実施形態]
以下では、図7及び図8を参照して、本発明の加熱装置の第三実施形態である通電加熱装置201について説明する。
図7及び図8に示すように、通電加熱装置201は、通電電極10・10、温度制御部材220、押圧部材230を具備し、通電電極10・10を用いてブランク2に通電することによりブランク2を均一的に加熱する加熱装置である。
【0040】
図7及び図8に示すように、温度制御部材220は、四対の第一ブロック221・221・221・221、ブランク2の一面側(図8において上面側)に配置され、複数に分割される第二上側ブロック222(本実施形態では、第二上側ブロック222a〜222nの14個に分割されている)、ブランク2の他面側(図8において下面側)に配置され、かつ、第二上側ブロック222とブランク2を挟んで対向するように配置され、複数に分割される第二下側ブロック223(本実施形態では、第二下側ブロック223a〜223nの14個に分割されている)を含む。
第一ブロック221は、製品4に形成される穴5・6の形状に沿う形状を有する円筒状の部材であり、成形品3に対する穴あけ加工の際に打ち抜かれるブランク2の部位に対応する部位である。各第一ブロック221は、ブランク2を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
各第二上側ブロック222a〜222nは、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位を複数に分割した部位に対応する部位である。
各第二下側ブロック223a〜223nは、製品4の外形に沿う形状を有する帯状の部材であり、成形品3に対するトリム加工の際に切断されるブランク2の部位を複数に分割した部位に対応する部位である。分割された各第二上側ブロック222a〜222n及び第二下側ブロック223a〜223nは、ブランク2を挟んで互いに対向した状態で配置されている。
【0041】
各第一ブロック221、第二上側ブロック222、及び第二下側ブロック223は、各第一ブロック21及び第二ブロック22と同様に、内部に熱線等の発熱手段、及び水冷配管等の冷却手段を備え、これら発熱手段及び冷却手段を適宜制御することによって、各第一ブロック221、第二上側ブロック222、及び第二下側ブロック223自体の温度が所望の温度を満足するように、個別に温度調整可能に構成されている。
【0042】
図7及び図8に示すように、押圧部材230は、第一ブロック221・221・221・221を押圧する第一押圧部材231・231・231・231、各第二上側ブロック222a〜222nを押圧する第二上側押圧部材232a〜232n、各第二下側ブロック223a〜223nを押圧する第二下側押圧部材235a〜235nを含む。
第一押圧部材231は、第一ブロック221を着脱自在に支持する支持部材231a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材231aを往復移動するシリンダ231b等を含む。
各第二上側押圧部材232a〜232nは、各第二上側ブロック222a〜222nを着脱自在に支持する上側支持部材233、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、上側支持部材233を往復移動する上側シリンダ234等を含む。
各第二下側押圧部材235a〜235nは、各第二下側ブロック223a〜223nを着脱自在に支持する下側支持部材236、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、下側支持部材236を往復移動する下側シリンダ237等を含む。
各シリンダ231b・234・237は、適宜の制御装置からの制御信号を受けて駆動され、各支持部材231a・233・236に支持される各第一ブロック221、各第二上側ブロック222a〜222n及び第二下側ブロック223a〜223nをブランク2に対して近接する方向/離間する方向に往復移動するとともに、近接する方向に移動する際にブランク2に対して所定の押圧力を付与する。
つまり、複数の部位に分割される各第二上側ブロック222a〜222n及び各第二下側ブロック223a〜223nは、各第二上側押圧部材232a〜232n及び各第二下側押圧部材235a〜235nによって、ブランク2のそれぞれの部位に対して厚み方向両面側から個別の押圧力が付与される構成である。
【0043】
以上のように構成される通電加熱装置201により、通電加熱中にブランク2に反り、捩れ、波打ち等が発生した場合にも、複数部位に分割される第二上側ブロック222a〜222nと、それらに対応して複数部位に分割される第二下側ブロック223a〜223nとが個別に押し付けられるため、均一かつ確実なブランク2と温度制御部材220との接触面を確保できる。
従って、通電加熱装置201を用いた加熱工程におけるブランク2の加熱をより安定的に行うことが可能となる。
なお、通電加熱装置201における温度制御部材220の温度制御、及び押圧部材230の押圧タイミング制御については、通電加熱装置1における制御構成と同様であるため、本実施形態での制御構成、及びそれにより奏する作用効果に関する詳細な説明は省略する。
【0044】
[第四実施形態]
以下では、図9〜図12を参照して、本発明の加熱装置の第四実施形態である通電加熱装置301について説明する。
図9及び図10に示すように、通電加熱装置301は、通電電極310・310、温度制御部材320、押圧部材330を具備し、通電電極310・310を用いてブランク302に通電することによりブランク302を均一的に加熱する加熱装置である。
本実施形態のブランク302は、通電加熱装置1による加熱工程後、適宜のホットプレス成形装置を用いて所定形状を有する成形品として成形され、当該成形品に対してさらにトリム加工等の後加工を経て最終的な製品304として製造される。
【0045】
本実施形態では、図11に示すように、製品304を自動車車体のセンターピラーとして、当該センターピラーの形態に応じて形状、強度等が設計されているブランク302に対する加熱工程について取り扱う。特に、本実施形態の製品304では、長手方向における強度を部分的に任意に設定可能な加熱工程について説明する。
図11に示すように、製品304は長手方向に延びる中央部と、その長手方向両端部から当該長手方向と直交する方向に延出する両端部とを含む形状を有し、略I字状に形成されている。製品304では、前記両端部のうち下方側に位置する下方側端部304a(図11において符号Aで示される領域)が低強度部位、長手方向に延びる前記中央部における中途部304b(図11において符号Bで示される領域)が中強度部位、前記中央部における上方側の中央上部304c(図11において符号Cで示される領域)が高強度部位、残りの部位が超高強度部位となるように製造される。
【0046】
つまり、通電加熱装置301では、通電電極310・310間に流れる電流によってブランク302が均一的に加熱される。一方で、ブランク302への加熱途中の所定のタイミングで押圧部材330を駆動し、所定の温度に制御された状態の温度制御部材320をブランク302の所定部位に押し当てて、温度制御部材320を接触させることにより係る部位から抜熱する。このようにして、通電加熱によって加熱されるブランク302内に所定の温度差を設けることにより、ホットプレス成形後の強度に分布を持たせるものである。
【0047】
図9及び図10に示すように、通電電極310・310は、クリップ式の電極であり、ブランク302を厚み方向両側から挟持することによりブランク302の両端部にそれぞれ取り付けられている。通電電極310・310には、図示せぬ電源装置が接続されており、当該電源装置によって通電電極310・310間に所定の電圧が印加され、一方の通電電極310から他方の通電電極310に電流が流れる。このようにして、通電電極310・310によってブランク302が均一的に通電加熱される。
【0048】
図9及び図10に示すように、温度制御部材320は、ブランク302の所定部位に面接触可能である。
ここで、ブランク302の所定部位とは、上述のように製品304内において、ホットプレス成形時に低強度部位、中低強度部位、中強度部位として成形される部位である。
【0049】
図9及び図10に示すように、温度制御部材320は、第一ブロック321、第二ブロック322、第三ブロック323を含む。
第一ブロック321は、製品304において低強度部位として設定される下方側端部304aに対応するブランク302の所定部位を含む矩形状を有する加熱手段である。第一ブロック321は、ブランク302を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
第二ブロック322は、製品304において中強度部位として設定される中途部304bに対応するブランク302の所定部位を含む矩形状を有する加熱手段である。第二ブロック322は、ブランク302を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
第三ブロック323は、製品304において高強度部位として設定される中央上部304cに対応するブランク302の所定部位を含む矩形状を有する加熱手段である。第三ブロック323は、ブランク302を挟んで対向する上下一対の部材として配置されている。
【0050】
第一ブロック321、第二ブロック322及び第三ブロック323は、内部に熱線等の発熱手段、及び水冷配管等の冷却手段を備え、これら発熱手段及び冷却手段を適宜制御することによって、第一ブロック321、第二ブロック322及び第三ブロック323の温度が所望の温度を満足するように、個別に温度調整可能に構成されている。
以上のように、第一ブロック321、第二ブロック322及び第三ブロック323は、ブランク302の所定部位に対して厚み方向両面側から面接触可能に構成され、かつ、個別に温度調整可能に構成されている。
【0051】
図9及び図10に示すように、押圧部材330は、温度制御部材320の第一ブロック321を押圧する第一押圧部材331、第二ブロック322を押圧する第二押圧部材332、第三ブロック323を押圧する第三押圧部材333を含む。
第一押圧部材331は、第一ブロック321を着脱自在に支持する支持部材321a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材321aを往復移動するシリンダ331b等を含む。
第二押圧部材332は、第二ブロック322を着脱自在に支持する支持部材322a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材322aを往復移動するシリンダ332b等を含む。
第三押圧部材333は、第三ブロック323を着脱自在に支持する支持部材323a、エアシリンダ、油圧シリンダ、ばね部材等のアクチュエータからなり、支持部材323aを往復移動するシリンダ333b等を含む。
【0052】
第一押圧部材331、第二押圧部材332及び第三押圧部材333のシリンダ331b・332b・333bは、適宜の制御装置からの制御信号を受けて駆動され、支持部材331a・332a・333aに支持される第一ブロック321、第二ブロック322及び第三ブロック323をブランク302に対して近接する方向/離間する方向に往復移動するとともに、近接する方向に移動する際にブランク302に対して所定の押圧力を付与する。
【0053】
以下に、図12を参照して、通電加熱装置301における、温度制御部材320の温度制御、及び押圧部材330の押圧タイミング制御について説明する。
(1)ブランク302の温度Tが、Ac1変態点温度未満(より厳密には、Ac1変態点よりも若干(数十℃)低くなる程度の低温状態)の温度T1となるタイミングで、押圧部材330の第一押圧部材331を駆動して、温度制御部材320の第一ブロック321をブランク302に接触させる。このとき、第一ブロック321は、温度T1となるように温度制御されている。
ブランク302の第一ブロック321と接触する部位は、第一ブロック321の温度調整によって、加熱終了後まで温度T1に保持される。つまり、係る低温部位はオーステナイト化されず、ブランク302に対するホットプレス成形後の係る部位は、材料強度そのままの低強度部位として成形される。
(2)ブランク302の温度Tが、Ac1変態点温度を超えた(より厳密には、Ac1変態点温度を若干(数十℃)超えた程度の中低温状態)温度T2となるタイミングで、押圧部材330の第二押圧部材332を駆動して、温度制御部材320の第二ブロック322をブランク302に接触させる。このとき、第二ブロック322は、温度T2となるように温度制御されている。
ブランク302の第二ブロック322と接触する部位は、第二ブロック322の温度調整によって、加熱終了後まで温度T2に保持される。つまり、係る中低温部位では、その一部においてオーステナイト化が進むこととなる。これにより、ブランク302に対するホットプレス成形後の係る部位は、ある程度の焼き入れが施され、中強度部位として成形される。
(3)ブランク302の温度Tが、温度T2を超えた(より厳密には、温度T2を若干(数十℃)超え、かつ、Ac3変態点温度を超えない程度の中温状態)温度T3となるタイミングで、押圧部材330の第三押圧部材333を駆動して、温度制御部材320の第三ブロック323をブランク302に接触させる。このとき、第三ブロック323は、温度T3となるように温度制御されている。
ブランク302の第三ブロック323と接触する部位は、第三ブロック323の温度調整によって、加熱終了後まで温度T3に保持される。つまり、係る中温部位では、その全体に対してある程度のオーステナイト化が進むこととなる。これにより、ブランク302に対するホットプレス成形後の係る部位は、ある程度の焼き入れが施され、高強度部位として成形される。
(4)ブランク302において温度制御部材320が接触していない部位の温度T0が所定のターゲット温度(例えば850℃以上であり、Ar3変態点温度を大きく超えた高温)に達したところで、通電加熱を終了し、押圧部材330の各押圧部材331・332・333を駆動し、温度制御部材320をブランク302から離間する方向に移動し、温度制御部材320とブランク302との接触を解除する。
ブランク302において温度制御部材320と接触していない部位(一般部位)は、オーステナイト化が完了する高温部位として加熱される。これにより、ブランク302に対するホットプレス成形後の係る部位は、焼き入れが施され、超高強度部位として成形される。
(5)通電加熱終了後、ホットプレス成形装置により、ブランク302を成形品として成形する。
【0054】
以上のように、温度制御部材320及び押圧部材330を制御することによって、温度制御部材320の各ブロック321・322・323と接触するブランク302の所定部位の温度は、それぞれ所定の温度T1・T2・T3に正確に温度制御される。
これにより、ブランク302の所定部位において、ホットプレス成形時の焼き入れ度合いに正確な差を設けることができ、焼き入れ後の強度に正確な分布を持たせることが可能となる。
従って、通電加熱装置301を用いた通電加熱において、ブランク302内に正確な温度分布を持たせることができ、ブランク302を用いたホットプレス成形工程を経ることによって、所定の強度分布を持つ成形品を成形することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 通電加熱装置
2 ブランク
10 通電電極
20 温度制御部材
21 第一ブロック
22 第二ブロック
30 押圧部材
31 第一押圧部材
32 第二押圧部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットプレス成形に用いるブランクを加熱する加熱装置であって、
前記ブランクの所定部位に接触可能であり、かつ、当該ブランクの所定部位との接触部位に非導電性の接触部を有するとともに、自身の温度を調整可能である温度制御部材と、
前記ブランクへの加熱途中の所定のタイミングで、前記温度制御部材を前記ブランクに対して近接する方向に移動させて、前記温度制御部材を前記ブランクと接触させる押圧部材と、
を具備し、
前記温度制御部材は、前記ブランクの温度と同一温度に制御された状態で当該ブランクに接触され、
前記所定温度に制御された温度制御部材により、前記加熱途中のブランクの所定部位から抜熱することにより、前記ブランク内に所定の温度分布を設ける加熱装置。
【請求項2】
前記ブランクは、一方向を長手方向とする矩形状を有し、
前記温度制御部材及び押圧部材は、少なくとも前記ブランクの長手方向に向けて複数に分割され、当該複数に分割される温度制御部材及び押圧部材は、個別に押圧される請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ブランクの所定部位は、前記ホットプレス成形後の後加工時に加工が施される部位であり、
前記押圧部材は、前記ブランクがAc1変態点温度に到達する直前となるタイミングで、当該ブランクと同一温度に制御された状態の前記温度制御部材を前記ブランクに接触させる請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記ブランクへの加熱は、通電加熱により行われる請求項1〜3の何れか一項に記載の加熱装置。
【請求項5】
ホットプレス成形工程に用いるブランクを加熱する加熱方法であって、
前記ブランクへの加熱途中の所定のタイミングで、
前記ブランクの所定部位に、非導電性の接触部を当該ブランクとの接触部位に有し、前記加熱途中のブランクと同一温度に制御された温度制御部材を接触させることによって、
前記ブランクの所定部位の温度を所定の温度以下に制御する加熱方法。
【請求項1】
ホットプレス成形に用いるブランクを加熱する加熱装置であって、
前記ブランクの所定部位に接触可能であり、かつ、当該ブランクの所定部位との接触部位に非導電性の接触部を有するとともに、自身の温度を調整可能である温度制御部材と、
前記ブランクへの加熱途中の所定のタイミングで、前記温度制御部材を前記ブランクに対して近接する方向に移動させて、前記温度制御部材を前記ブランクと接触させる押圧部材と、
を具備し、
前記温度制御部材は、前記ブランクの温度と同一温度に制御された状態で当該ブランクに接触され、
前記所定温度に制御された温度制御部材により、前記加熱途中のブランクの所定部位から抜熱することにより、前記ブランク内に所定の温度分布を設ける加熱装置。
【請求項2】
前記ブランクは、一方向を長手方向とする矩形状を有し、
前記温度制御部材及び押圧部材は、少なくとも前記ブランクの長手方向に向けて複数に分割され、当該複数に分割される温度制御部材及び押圧部材は、個別に押圧される請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ブランクの所定部位は、前記ホットプレス成形後の後加工時に加工が施される部位であり、
前記押圧部材は、前記ブランクがAc1変態点温度に到達する直前となるタイミングで、当該ブランクと同一温度に制御された状態の前記温度制御部材を前記ブランクに接触させる請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記ブランクへの加熱は、通電加熱により行われる請求項1〜3の何れか一項に記載の加熱装置。
【請求項5】
ホットプレス成形工程に用いるブランクを加熱する加熱方法であって、
前記ブランクへの加熱途中の所定のタイミングで、
前記ブランクの所定部位に、非導電性の接触部を当該ブランクとの接触部位に有し、前記加熱途中のブランクと同一温度に制御された温度制御部材を接触させることによって、
前記ブランクの所定部位の温度を所定の温度以下に制御する加熱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−136342(P2011−136342A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295764(P2009−295764)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
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