加熱装置
【課題】電磁誘導加熱方式の加熱装置において、磁束調整部材7の自重撓みおよび誘導発熱部材1の加圧変形による相対距離を任意の距離にして、磁束調整部材7と誘導発熱部材1との相対距離を適正にすることにある。
【解決手段】磁束発生手段と、内部に配置された前記磁束発生手段からの磁束により発熱して被加熱材を加熱する回転可能な発熱部材1と、前記磁束発生手段と前記発熱部材との間に配置され、前記発熱部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向に関する前記発熱部材への磁束作用領域を調整する磁束調整部材7と、前記磁束調整部材を移動させる移動手段と、を有し、前記移動手段により前記磁束調整部材を所定の磁束調整位置に移動させることで前記発熱部材の前記長手方向に関する温度分布を調整する加熱装置において、前記磁束調整部材7は、該磁束調整部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径φd1と端部の外径φd2との関係がφd1<φd2なる関係を有する形状である。
【解決手段】磁束発生手段と、内部に配置された前記磁束発生手段からの磁束により発熱して被加熱材を加熱する回転可能な発熱部材1と、前記磁束発生手段と前記発熱部材との間に配置され、前記発熱部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向に関する前記発熱部材への磁束作用領域を調整する磁束調整部材7と、前記磁束調整部材を移動させる移動手段と、を有し、前記移動手段により前記磁束調整部材を所定の磁束調整位置に移動させることで前記発熱部材の前記長手方向に関する温度分布を調整する加熱装置において、前記磁束調整部材7は、該磁束調整部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径φd1と端部の外径φd2との関係がφd1<φd2なる関係を有する形状である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真方式・静電記録方式等のプリンタ・複写機等の画像形成装置において、記録材上に転写方式もしくは直接方式で形成担持させた加熱溶融性の未定着トナー画像を加熱定着させるための定着装置として用いて好適な電磁誘導加熱方式の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導加熱方式の加熱装置は、発熱部材(加熱部材)として電磁誘導発熱体を用い、該電磁誘導発熱体に磁束(磁場)発生手段で磁束(交番磁束)を作用させて該電磁誘導発熱体に発生する渦電流に基づくジュール発熱で被加熱材を加熱する、定着装置にあっては未定着トナー画像を形成担持させた記録材に熱を付与してトナー画像を記録材面に加熱定着処理する装置である。
【0003】
特許文献1には、電磁誘導加熱方式の定着装置が記載されている。この定着装置は、誘導発熱部材としての金属スリーブと弾性加圧ローラとを並行配列して圧接させて回転させ、金属スリーブ内に磁束発生手段としてのコイル・アセンブリを非回転に配置し、コイル・アセンブリのコイルに高周波電流を通電して高周波磁界を生じさせることで金属スリーブを誘導発熱させる。そして金属スリーブと弾性加圧ローラとの圧接ニップ部に未定着トナー画像を形成担持させた記録材を導入して挟持搬送させ、金属スリーブの熱でトナー画像を記録材面に加熱定着処理するものである。
【0004】
また、この定着装置には、いわゆる非通紙部昇温現象を解決するために、磁束発生手段としてのコイル・アセンブリと誘導発熱部材としての金属スリーブ間に磁束調整部材(磁束遮蔽部材)を配設し、この磁束調整部材を、ワイヤと、ワイヤが装架される回転自在なプーリと、プーリを回転駆動させるモータ等を有する駆動手段にて移動して金属スリーブの非通紙部に対する磁束調整を行う手段を具備させている。
【特許文献1】特開平10−74009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような電磁誘導加熱方式の加熱装置は、磁束発生手段と誘導発熱部材との隙間(クリアランス)は小さければ小さいほど熱交換効率は向上する。したがって、磁束発生手段とは、磁束発生手段や誘導発熱部材の自重撓み・加圧変形・熱変形等により両者の距離が異常に近くなり接触するに至る状態を生じさせないために必要とされる所要隙間は確保して、かつ両者を可及的に近づけた所定の相対位置に高精度に保持されることが望まれる。
【0006】
また、磁束発生手段と誘導発熱部材との隙間内で磁束調整部材を移動させる装置構成のものにおいては、誘導発熱部材の内面との間に任意の距離を有してその内面に沿うように磁束調整部材が設けられているため、誘導発熱部材の加圧変形や磁束調整部材の電磁力作用による周期的振動等による誘導発熱部材との接触による磁束調整部材の動作不良を生じさせないために必要とされる所要隙間は確保して、かつ磁束発生手段との両者を可及的に近づけた所定の相対位置に高精度に保持されることが望まれる。
【0007】
そこで本発明の目的は、電磁誘導加熱方式の加熱装置において、磁束調整部材の自重撓みおよび誘導発熱部材の加圧変形による相対距離を任意の距離にして、磁束調整部材と誘導発熱部材との相対距離を適正にすることにある。
【0008】
また本発明の他の目的は、磁束発生手段と誘導発熱部材との相対位置を高精度に保持することにある。
【0009】
また本発明のさらに他の目的は、磁束調整部材の動作不良を起こすことなく、被加熱材のサイズに対応した、適切な磁束調整部材の移動駆動を安定化させることで、誘導発熱部材の非通紙部昇温を適切に制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る加熱装置の代表的な構成は、磁束発生手段と、内部に配置された前記磁束発生手段からの磁束により発熱して被加熱材を加熱する回転可能な発熱部材と、前記磁束発生手段と前記発熱部材との間に配置され、前記発熱部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向に関する前記発熱部材への磁束作用領域を調整する磁束調整部材と、前記磁束調整部材を移動させる移動手段と、を有し、前記移動手段により前記磁束調整部材を所定の磁束調整位置に移動させることで前記発熱部材の前記長手方向に関する温度分布を調整する加熱装置において、前記磁束調整部材は、該磁束調整部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径φd1と端部の外径φd2との関係がφd1<φd2なる関係を有する形状であることを特徴とする加熱装置、である。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、磁束調整部材の自重撓みおよび発熱部材の加圧変形による相対距離を任意の距離にすることができて、磁束調整部材と誘導発熱部材との相対距離を適正にできる。すなわち、磁束調整部材の動作不良を起こすことなく、被加熱材のサイズに対応した、適切な磁束調整部材の移動駆動を安定化させることで、誘導発熱部材の非通紙部昇温を適切に制御することができるとともに、発熱部材と磁束発生手段の相対位置精度を向上し、誘導発熱部材と磁束発生手段を安定的に近接することができるため、電磁誘導発熱効率が向上し、誘導発熱部材の所定温度への立上げ時間の短縮を行うことができて、エネルギー消費効率を極めて向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
【実施例】
【0013】
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る電磁誘導加熱方式の加熱装置を画像加熱定着装置(以下、定着装置と記す)として搭載した画像形成装置の一例の概略模型図である。本例の画像形成装置は転写式電子写真プロセス利用のレーザープリンタである。
【0014】
101は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。矢印の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0015】
102は帯電手段としての接触帯電ローラである。回転する感光ドラム101の外周面を所定の極性・電位に一様に帯電処理する。
【0016】
103は露光手段としてのレーザースキャナである。画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調したレーザー光を出力して、回転する感光ドラム101の一様帯電処理面を走査露光Lする。これにより感光ドラム面に走査露光パターンに対応した静電潜像が形成される。
【0017】
104は現像装置である。感光ドラム面の静電潜像をトナー画像として反転現像または正規現像する。
【0018】
105は転写手段としての転写ローラである。感光ドラム101に対して所定の押圧力で接触して転写ニップ部Tを形成している。この転写ニップ部Tに不図示の給紙機構部から被加熱材としての記録材Pが所定の制御タイミングにて給送されて転写ニップ部Tを挟持搬送されていく。また転写ローラ105には所定の制御タイミングで所定の転写バイアスが印加される。これにより、転写ニップ部Tを挟持搬送される記録材Pの面に感光ドラム101面側のトナー画像が順次に静電転写される。
【0019】
転写ニップ部Tを出た記録材Pは感光ドラム101面から分離されて定着装置100に導入される。定着装置100は導入された記録材P上の未定着トナー画像を永久固着画像として加熱・加圧定着する。そして記録材Pは排出搬送する。
【0020】
106は感光ドラムクリーニング器であり、記録材分離後の感光ドラム上の転写残トナーを除去する。転写残トナーが除去されて清浄面化された感光ドラム面は繰り返して作像に供される。
【0021】
aは記録材Pの搬送方向である。本実施例の画像形成装置において、記録材Pの給紙・搬送は記録材中心の中央通紙基準でなされる。
【0022】
(2)定着装置100
図2は定着装置の要部の正面模型図、図3は拡大横断面模型図である。図4は定着ローラアセンブリ部分の縦断面模型図である。
【0023】
この定着装置は、誘導発熱部材としての定着ローラと、磁束発生手段(加熱手段)としての励磁コイルアセンブリの相対位置精度の向上を目的に、定着ローラを回転可能に支持する支持部材の位置決め手段と励磁コイルアセンブリの位置決め手段を含む位置決め部材により、定着ローラと励磁コイルアセンブリを同軸上に支持可能に構成された定着装置である。
【0024】
1は誘導発熱部材としての定着ローラである。鉄・ニッケル・SUS430などの誘導発熱体(導電性磁性材)から形成された、肉厚が例えば0.1mm〜1.5mm程度の円筒状のローラである。一般に、その外周表面に、フッ素樹脂等の離型層、あるいは弾性層と離型層等を形成して用いられる。鉄など強磁性の金属(透磁率の高い金属)を使うことで、磁束発生手段から発生する磁束を金属内部により多く拘束させることができる。すなわち、磁束密度を高くすることができることにより効率的に金属表面に渦電流を発生させられる。
【0025】
この定着ローラ1はその前側端部と後側端部を定着前側板21と定着後側板22の外側にそれぞれ取り付けた前側支持部材(芯決め板)26の第1支持部材26aと後側支持部材(芯決め板)27の第1支持部材27aとの間にそれぞれ断熱ブッシュ23a・23b及びベアリング24a・24bを介して回転自由に軸受支持させてある。
【0026】
断熱ブッシュ23a・23bは定着ローラ1からベアリング24a・24bへの伝熱を低減させるために用いている。G1は定着ローラ1の前側端部に外嵌して固着した定着ローラ駆動ギアである。このギアG1に第1モータM1の回転力が動力伝達系(不図示)を介して伝達されることで定着ローラ1が図3において矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。図7は、断熱ブッシュ23a・23bと定着ローラギアG1が取り付けられた状態の定着ローラ1の外観斜視図である。
【0027】
2は加圧部材としての加圧ローラである。芯金2aと、該芯金2aの回りに同心一体にローラ状に形成具備させた弾性層2b等からなる弾性ローラである。弾性層2bは例えばa表面離型性耐熱ゴム層であるシリコーンゴム層である。この加圧ローラ2は上記定着ローラ1の下側に並行に配列されて、芯金2aの前側端部と後側端部を定着前側板21と定着後側板22との間にそれぞれベアリング25a・25bを介して回転自由に軸受支持させてある。ベアリング25a・25bは定着前側板21と定着後側板22とにそれぞれ定着ローラ1の方向にスライド移動可能に配設してある。このベアリング25a・25bを付勢手段(不図示)により定着ローラ方向に押上付勢することで、加圧ローラ2を定着ローラ1の下面に対して弾性層2bの弾性に抗して所定の押圧力Fにて圧接させて定着ローラ1と加圧ローラ2との間に加熱ニップ部としての所定幅の定着ニップ部Nを形成させている。加圧ローラ2は定着ローラ1が回転駆動されることで定着ニップ部Nで摩擦回転力を受けて従動回転する。
【0028】
3は磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリである。この励磁コイルアセンブリ3は上記の円筒状の定着ローラ1の内空部に挿入して配設してある。励磁コイルアセンブリ3は、励磁コイル(以下、コイルと略記する)4、横断面T字型に配設された磁性体コア(以下、コアと略記する)5a・5b、上記のコイル4とコア5a・5bを内蔵させて保持させたホルダー6、このホルダー6の外側にホルダー6と同軸に回転自由に配設した磁束調整部材(磁束遮蔽部材、シャッター)7、等の組み立て体である。図8はこの励磁コイルアセンブリ3と磁束調整部材移動手段M2・28・G4・G5の外観斜視図である。図9はホルダー6と磁束調整部材7の分解斜視図である。図10はホルダー6の内部の分解斜視図である。
【0029】
ここで、以下において、定着装置の構成部材・部分について、長手方向とは、記録材搬送路面において記録材搬送方向aに直交(交差)する方向とする。
【0030】
ホルダー6はその長手方向全域で断面形状を略円筒形状にしてある。材質は、耐熱性と機械的強度を兼ね備えたPPS系樹脂にガラスを添加したものを用いている。ホルダー6には、PPS系樹脂、PEEK系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、セラミック、液晶ポリマー、フッ素系樹脂などの材質が適している。
【0031】
このホルダー6は、図10のように、長手軸線に略沿って縦2つ割りとした第1半体6aと第2半体6bの形態で成形してある。第1半体6aと第2半体6bを重ね合わせて接着剤で一体に接合する、あるいは嵌め合い構造部で一体に接合する等により断面形状を長手方向全域で略円筒形状の部材にしている。第1半体6aの内部にコイル4、コア5a・5bが組み込まれる。この第1半体6aに対して蓋するように第2半体6bを重ね合わせて一体に接合することで、コイル4とコア5a・5bを内蔵させて保持させたホルダー6が組み立てられる。4a・4bはコイル4の引出し線(リード線)である。この引出し線4a・4bはホルダー6の前側端面に設けた穴部6cからホルダー6の外側に出される。
【0032】
コイル4は、図10のように、定着ローラ1の長手方向に長い略楕円形状(横長舟形)をしており、定着ローラ1の内面に沿うようにホルダー6の第1半体6aの内部に配置されている。コイル4は加熱に十分な交番磁束を発生するものにする。そのためには抵抗成分を低く、インダクタンス成分を高くとる必要がある。コイル4の芯線としては、φ0.1〜0.3の細線を略80〜160本程度束ねたリッツ線を用いている。細線には絶縁被覆電線を用いている。また、第1コア5aを周回するように6〜12回巻回してコイル1を構成したものが使われる。
【0033】
コア5aはコイル4の巻き中心部にある第1コア(垂直部)である。コア5bはその上部の第2コア(水平部)である。この2つのコア5a・5bにより横断面T字型コアを構成させている。コア5a・5bはフェライト等の高透磁率残留磁束密度の低いものを用いると良いが、磁束を発生できるものであれば良く、特に規定するものではない。また、コア5a・5bの形状・材質を規定するものではなく、第1コア5a及び第2コア5bを一体成形でT字型にしてもよい。
【0034】
磁束調整部材7は、図9のように、長手方向全域で基本的には横断面円弧形状を形成していて、長手両側部の円周方向に幅広の円弧状シャッター部7a・7aと、その両者7a・7a間の幅狭の円弧状つなぎ板部7bを有している。材質は一般にアルミや銅系金属などの非鉄金属が用いられ、中でも電気抵抗率が低いものが好ましく用いられる。この磁束調整部材7は、その両端部に曲げ越し7c・7cを形成し、その曲げ越し7c・7cをホルダー6の前側端部と後側端部とにそれぞれ回転自由に外嵌される第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3とに係合させて第1と第2のシャッタギアG2・G3間に両持ちで支持させるようにしている。
【0035】
励磁コイルアセンブリ3のホルダー6は、図2・図4のように、その前側端部を定着ローラ1の前側端部開口から外方に突出させて円筒状の端部を、定着前側板21の外側に取り付けた前側支持部材26の第2支持部材26bに設けた嵌合丸穴26cに嵌合させて支持させてある。また、後側端部を定着ローラ1の後側端部開口から外方に突出させて、後側端部に設けたD字形状部6dを、定着後側板22の外側に取り付けた後側支持部材27の第2支持部材27bに設けた嵌合D穴27cにD嵌合させることで回転不能に固定支持させる。これによりホルダー6を定着ローラ1内にホルダー6と定着ローラ1とを略同軸にして、ホルダー外面と定着ローラ内面との間に所定のギャップを保持させた状態で、かつ円周方向に所定の角度姿勢で非回転に位置決めして配置している。ホルダー6の前側端面に設けた穴部6cからホルダー外側に出されているコイル引出し線4a・4bは励磁回路51に接続される。なお、本実施例では上記ホルダー6の周方向の位置決めをD嵌合で行っているが、特にD嵌合に限定するものではない。ホルダー6の周方向の位置が決まれば任意の手段構成にすることができる。
【0036】
磁束調整部材7は、前記のように、長手両端部に設けた曲げ越し7c・7c(図8・図9)をホルダー6の前側端部と後側端部とにそれぞれ回転自由に外嵌させた第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3とに係合させて第1と第2のシャッタギアG2・G3間に両持ちで支持させている。そしてこの磁束調整部材7は、第1と第2のシャッタギアG2・G3が磁束調整部材移動手段M2・28・G4・G5で回転されることで、定着ローラ1内においてホルダー外面と定着ローラ内面との円周方向ギャップ内をホルダー6と略同軸に回動移動する。
【0037】
図8の磁束調整部材移動手段M2・28・G4・G5において、M2は第2モータ、28はシャフト、G4は第1出力ギア、G5は第2出力ギアである。シャフト28は定着ローラ1の外側において定着ローラ1に並行に配列して定着前側板21と定着後側板22との間に軸受部材(不図示)を介して回転自由に支持させてある。第2モータM2はこのシャフト28を回転する駆動源であり、ステッピングモータを用いている。第1出力ギアG4と第2出力ギアG5は、それぞれシャフト28に同軸に固着して配設してあり、第1出力ギアG4は励磁コイルアセンブリ3の第1のシャッタギアG2に、第2出力ギアG5は第2のシャッタギアG3に、それぞれ噛合させてある。第2モータM2が回転駆動されることで、第1と第2のシャッタギアG2・G3に回転力が伝達される。これにより磁束調整部材7がホルダー6の外回りをホルダー6と略同軸に回動移動する。ギアの材質は雰囲気温度やトルクにより様々な樹脂材が選択可能である。
【0038】
図2において、50は制御回路部(CPU)である。制御回路部50は、画像形成シーケンス制御の所定の制御タイミングにおいて、ドライバ52を介して第1モータM1を起動させる。これにより定着ローラ駆動ギアG1に回転力が与えられて定着ローラ1が図3の矢印の時計方向に回転駆動される。加圧ローラ2は従動回転する。
【0039】
また制御回路部50は、所定の制御タイミングにおいて、励磁回路51を起動させてコイル4に交番電流を供給する。これにより発生する交番磁束(交番磁界)の作用で定着ローラ1が誘導発熱して昇温する。
【0040】
図6は上記のような系における定着ローラ1の発熱の状態を定着ローラ1の横断側面模型図で示したもので、磁束発生手段の主たる磁束発生領域と、それに対応する定着ローラ部分の円周方向発熱量分布の説明図ある。コイル4は交番電流が流されることで交番磁束を発生する。定着ローラ1は前記のように磁性金属または磁性材料を用いており、定着ローラ1の肉厚内では磁界を打ち消すように誘導電流(渦電流)が発生する。この誘導電流によるジュール熱により定着ローラ1自体が発熱し、昇温していくことになる。
【0041】
本実施例の構成においては、ホルダー6の、コイル4とコア5a・5bを組み込んだ第1半体6aの外面側が主たる磁束発生領域であり、この磁束発生領域において定着ローラ1に磁束が作用して定着ローラ1の加熱がなされる。そして、定着ローラ1の円周方向において、その主たる磁束発生領域に対応する定着ローラ部分にて発熱する発熱量分布は模式図に示すように、2ヶ所に発熱量の多い部分H・Hが存在する。本実施例においては、その1箇所部Hが定着ニップ部Nに対応位置するように、他の1箇所部Hが定着ニップ部Nよりも定着ローラ回転方向上流側に位置するように、ホルダー6を、その円周方向の角度姿勢状態を位置決めして非回転に固定支持させて配置している。
【0042】
磁束調整部材7は、常時は、ホルダー6の外面と定着ローラ1の内面との間の円周方向ギャップ内において、図3・図6のように、上記の主たる磁束発生領域に対応するギャップ部分とは反対側のギャップ部分に位置移動されて保持されている。この反対側のギャップ部分は磁束発生手段から定着ローラ1に磁束が実質的に作用しない部分、あるいは作用磁束量が少ない部分である。この磁束調整部材7の図3・図6の保持位置を第1切換え位置とする。
【0043】
そして、その定着ローラ1の昇温温度が定着ローラ1の長手方向の略中央部の位置に定着ローラ1に接触あるいは非接触に配設した温度検知手段である中央部サーミスタTH1で検知されて制御回路50に入力する。制御回路50はその中央部サーミスタTH1から入力する定着ローラ検知温度が所定の目標温度(定着温度)に維持されるように励磁回路51からコイル4への供給電力を制御して定着ローラ1の温度制御を行う。磁束調整部材7が図3・図6の第1切換え位置に保持されている状態においては定着ローラ1はその長手方向の有効加熱全長域が所定の目標温度に温調維持される。
【0044】
定着ローラ1の温度が所定の定着温度に立ち上って温調された状態において、定着ニップ部Nに未定着トナー画像tを担持した記録材Pが導入されて、定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。これにより、定着ローラ1の熱と定着ニップ部Nの加圧力で、未定着トナー画像tが記録材Pの面に加熱加圧定着される。
【0045】
ここで、紙幅とは記録材Pの平面において記録材搬送方向aに直交する方向の記録材寸法である。前記したように、本実施例においては、記録材通紙は記録材中心の中央通紙基準である。図2・図4において、Oはその記録材中央通紙基準線(仮想線)である。Aは装置に通紙使用可能な最大紙幅の記録材の通紙領域幅である。この通紙領域幅Aに対応する紙幅の記録材を大サイズ記録材とする。Bは大サイズ記録材の紙幅よりも小さい紙幅の記録材の通紙領域幅である。大サイズ記録材の紙幅よりも小さい紙幅の記録材を小サイズ記録材とする。Cは大サイズ記録材通紙領域幅Aと小サイズ記録材通紙領域幅Bとの差領域幅である。すなわち小サイズ記録材を通紙した時に記録材搬送路面内に生じる非通紙領域幅である。記録材通紙が中央基準であるから、小サイズ記録材を通紙した時の非通紙領域は小サイズ記録材通紙領域幅Bの左右両側に生じる。非通紙領域幅Cは通紙された小サイズ記録材の紙幅の大小により異なる。
【0046】
上記の中央部サーミスタTH1は定着ローラ1の温調制御用として、大小どの紙幅の記録材が通紙されても記録材通紙領域となる小サイズ記録材通紙領域幅B内に対応する位置に配設してある。
【0047】
TH2は非通紙領域幅C内に対応する位置に接触あるいは非接触に配設した、非通紙部昇温監視用としての温度検知手段である端部サーミスタである。この端部サーミスタTH2の検知温度情報も制御回路部50に入力する。
【0048】
小サイズ記録材の通紙が連続的になされると、定着ローラ1の非通紙領域幅Cの部分が非通紙部昇温して行く。その昇温状態が端部サーミスタTH2から制御回路部50に入力する。制御回路部50は端部サーミスタTH2から入力する非通紙部昇温温度が所定の許容温度よりも高くなったら、ドライバイ53を介して第2モータM2を起動させて、磁束調整部材7を図3・図6の第1切換え位置から図5の第2切換え位置に回動移動させる。
【0049】
この磁束調整部材7の第2切換え位置は、磁束調整部材7の長手両側部の幅広円弧状のシャッター部7a・7aがそれぞれ、ホルダー6の外面と定着ローラ1の内面との間の円周方向ギャップ内において主たる磁束発生領域に対応するギャップ部分であって、かつ非通紙領域幅C・Cに対応するギャップ部分に進入した位置である。
【0050】
これにより、非通紙領域幅C・Cに対応する定着ローラ部分に対する磁束発生手段からの作用磁束量が低減されて、非通紙領域幅C・Cに対応する定着ローラ部分の発熱が抑えられる。すなわち、非通紙部昇温が抑えられる。
【0051】
シャッター部7a・7aは、主たる磁束発生領域に対応するギャップ部分であって、かつ非通紙領域幅C・Cに対応するギャップ部分の全体に進入させる構成にすることもできるし、そのギャップ部分の一部に進入させる構成にすることもできる。図5は上記のギャップ部分の略半分の領域に進入させる構成である。
【0052】
制御回路部50は磁束調整部材7が第2切換え位置に回動移動された後、端部サーミスタTH2から入力する非通紙領域部温度が所定の許容温度よりも低くなったら、すなわち非通紙領域部温度が下がり過ぎたことを検知したら、磁束調整部材7を第1切換え位置に戻し回動移動させて、非通紙領域部温度の下がり過ぎを防止する。
【0053】
また制御回路部50は磁束調整部材7が第2切換え位置に回動移動された後、通紙使用される記録材が小サイズ記録材から大サイズ記録材に切換えられたら磁束調整部材7を第1切換え位置に戻し回動移動させる。
【0054】
である定着ローラ1と磁束調整部材7の相対距離(ギャップ)を確保する方法として、磁束調整部材7と定着ローラ1との距離を広げる方法がある。しかしながら、これに伴い、必要以上にコア5と定着ローラ1との距離を広げると、熱交換効率が悪化するため今日ではあまり用いられていない。磁束調整部材7およびホルダー6はコイル4が配置されている反対側にもホルダーを延長させホルダー6の断面形状を長手方向全域で略円形状にする。この形状にすることによりホルダー6、定着ローラ1、磁束調整部材7の断面中心を合わせる事により、相対位置精度を向上することができる。
【0055】
前記のように、磁束調整部材7を駆動する駆動伝達手段として、ホルダー6の前側端部と後側端部とにそれぞれ回転自由に第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3を配置する。磁束調整部材7の両端は曲げ越し6cを形成し、それぞれ上記第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3とに係合させて磁束調整部材7を第1と第2のシャッタギアG2・G3間に両持ちで支持させている。上記第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3は磁束調整部材7の曲げ越し6cと係合していない領域ではホルダー6に嵌合している。このため磁束調整部材7はホルダー6の面全体とギアG2・G3の内径部とで支持され回動する。ギアG2・G3とホルダー6とが嵌合する領域においてホルダー6の最大外径部はストレート形状を形成している。ここで最大外径部と表記しているのは上記嵌合領域においてホルダー6に肉抜きなどを施しても良いことを意味している。これにより、ホルダー6、磁束調整部材7を嵌合させることにより精度良く断面中心を合わせる事により、相対位置精度を向上することができる。
【0056】
磁束調整部材7は定着ローラ長手方向全域で基本的に円弧形状を形成し、両端部から中央部にかけて円弧部の長さが変わっている。小サイズ記録材を流すときには非通紙領域に対応する磁束調整部材両端部のシャッター部7a・7aを磁束発生領域に移動させることで定着ローラ端部の昇温を抑えている。また、磁束発生領域の通紙部に対応する中央部に磁束遮蔽部材(シャッター部)を移動させることで定着ローラ長手方向における通紙部と非通紙部の発熱分布を変えることで定着ローラ端部の昇温を抑えてもよい(逆シャッター)。
【0057】
定着ローラ1及びホルダー6の前側端部及び後側端部を支持するための前側支持部材26と後側支持部材27について図11〜13により今少し今少し説明する。
【0058】
前側支持部材26と後側支持部材27はそれぞれ定着前側板21と定着後前側板22に対して位置26d・26e、27d・27eにおいてラフ丸穴と嵌合丸長穴でビス締結されている。従って、ビスを外すことにより定着ローラ1やホルダー6を容易に交換することができる。
【0059】
図11を参照して、前側支持部材26は、第1と第2の2つの支持部材26aと26bで構成される。第1の支持部材26aはベアリング24aを支持する嵌合穴を有しており、断熱ブッシュ23aを介して定着ローラ1の前側端部を支持するように構成されている。また、第2の支持部材26bはホルダー6の円筒状の前側端部を支持する嵌合丸穴26cを有している。
【0060】
さらに、上記の第1と第2の2つの支持部材26aと26bは位置26fにおいてスポット溶接することにより一体化されている。このとき、図13の(a)のように、位置決め補助手段である固定冶具61を用いて第1と第2の2つの支持部材26aと26bを位置決めしてスポット溶接するため、定着ローラ1とホルダー6を同軸上に高精度で支持する前側支持部材26を作製することができる。
【0061】
図12を参照して、後側支持部材27も、第1と第2の2つの支持部材27aと27bで構成される。第1の支持部材27aはベアリング24bを支持する嵌合穴を有しており、断熱ブッシュ23bを介して定着ローラ1の後側端部を支持するように構成されている。また、第2の支持部材27bは、ホルダー6の後側端部の回転規制するD字型状端部6dとD嵌合させる嵌合D穴27cを有している。
【0062】
さらに、上記の第1と第2の2つの支持部材27aと27bは位置27fにおいてスポット溶接することにより一体化されている。このとき、図13の(b)のように、位置決め補助手段である固定冶具62を用いて第1と第2の2つの支持部材27aと27bを位置決めしてスポット溶接するため、定着ローラ1とホルダー6を同軸上に、かつ、ホルダー6の回転角を高精度で支持する後側支持部材27を作製することができる。
【0063】
この後側支持部材27は定着後側板22に対して位置27d・27eにおいてラフ丸穴と嵌合丸長穴でビス締結されているため、ホルダー6を定着後側板22に対して回転規制することができる。
【0064】
発熱部材としての定着ローラ1および磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3のホルダー6を支持部材26・27に、定着ローラ1は回動可能に、ホルダー6は固定して、かつ、定着ローラ1とホルダー6の中心軸を略同軸上にして支持するように構成したことで、定着ローラ1とホルダー6の相対位置精度を向上することができる。これにより、定着ローラ1とホルダー6を安定的に近接することができるため、電磁誘導発熱効率が向上し、定着ローラ1の所定の定着温度への立上げ時間の短縮を行うことができて、エネルギー消費効率を極めて向上させることができる。
【0065】
また、発熱部材としての定着ローラ1および磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3のホルダー6の支持部材を、定着ローラ1およびホルダー6の長手方向の一端側を支持する支持部材26と、これとは独立して、他端側を支持する支持部材27とで構成したことで、定着ローラ1とホルダー6の相対位置を高精度に維持し、かつ、定着ローラ1およびホルダー6すなわち磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3の交換性を向上することができる。
【0066】
また、支持部材26・27を、発熱部材としての定着ローラ1の支持部を具備させた第1支持部材26a・27aと、これとは別体で、励磁コイルアセンブリ3のホルダー6の支持部26c・27cを具備させた第2支持部材26b・27bとの二部材で構成し、第1支持部材26a・27aの前記支持部と第2支持部材26b・27bの前記支持部を位置決め補助手段61・62を用いて略同軸に位置決め状態にして第1支持部材26a・27aと第2支持部材26b・27bとを一体に結合にして構成したことで、定着ローラ1とホルダー6の相対位置を高精度に維持し、かつ、支持部材26・27の加工性を向上することができる。
【0067】
これらの効果により、定着ローラ1と磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3のホルダー6を安定的に近接することができて電磁誘導発熱効率が向上するため、定着ローラ1のコピー開始可能温度までの立ち上り時間短縮を行うことができるため、エネルギー消費効率を極めて向上させることができる。
【0068】
また、磁束調整部材7を有する装置においては、磁束調整部材7の動作不良を起こすことなく、紙サイズに対応した、適切な磁束調整部材7の回転駆動を付与することが可能となる。このような性能の改善を達成しながらさらに寿命の改善にも大きく効果をもたらした。従って、動作不良の回避に伴い磁束調整部材7の回転移動を安定化させることで、定着ローラ1の非通紙部昇温を適切に制御することが可能となった。
【0069】
ここで本実施例の定着装置において、発熱部材である定着ローラ1の内径はφ46程度である。その内部に、磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3を配置してある。該励磁コイルアセンブリ3のホルダー6の外径はφ40程度である。磁束調整部材7は両端部でφ40で、長手方向の長さが約400mm程度にもなるため、200℃程度の温度に長時間さらされると、中央部で熱により自重撓みを生じる。この状態で磁束調整部材7を回動させると最大撓み部において定着ローラ1の内面との摺動抵抗が増大し磁束調整部材7の回動安定性が著しく悪化する。
【0070】
このため、本実施例においては、図14の模型図に極めて誇張して表したように、磁束調整部材7はその長手方向両端部では外径φ40であるが、長手方向中央部においては外径φ38程度にし、逆クラウン形状を形成している。
【0071】
磁束調整部材7は、板厚0.5mm程度の銅板を、円筒かつ中央部が0.3mmの凹形状に製作された型にプレスされることにより、円筒クラウンン形状が転写されて、上記の磁束調整部材7として成形される。
【0072】
ただし、これは、磁束調整部材7の自重撓みと定着ローラ1の加圧撓みにより決定されるものであり、普遍的な解は存在しない。また、磁束調整部材7は一般的にアルミや銅系金属などの非鉄金属が用いられ、中でも電気抵抗率が低いものが使われ、実施例の銅板材料に限定するものではない。
【0073】
定着ローラ1と磁束調整部材7の相対距離の確保する方法として、定着ローラ1と磁束調整部材7との距離を広げる方法がある。しかしながら、これに伴い、必要以上に磁性コア5と定着ローラ1との距離を広げると、熱交換効率が悪化するため今日ではあまり用いられていない。
【0074】
磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3のホルダー6は断面形状を長手方向全域で略円形状にする。この形状にすることによりホルダー6、定着ローラ1、磁束調整部材7の断面中心を合わせる事により、相対位置精度を向上することができる。
【0075】
磁束調整部材7は長手方向全域で基本的に円弧形状を形成し、両端部と中央部において円弧部の長さが変わっていて、中央部の円弧部の長さw1は両端部の円弧部の長さw2よりも短く設定されている。前記したように、磁束調整部材7を駆動するシャッタギアG2・G3をホルダー6に配置する。磁束調整部材7の両端は曲げ越し7c・7cを形成し、前記シャッタギアG2・G3に係合させている。さらにシャッタギアG2・G3は磁束調整部材7と係合していない領域ではホルダー6に嵌合している。このため磁束調整部材7はホルダー6の面全体とシャッタギアG2・G3の内径部とで支持され回動する。
【0076】
前記シャッタギアG2・G3とホルダー6とが嵌合する領域においてホルダー6の最大外径部はストレート形状を形成し逆クラウン形状は形成していない。ここで最大外径部と表記しているのは上記嵌合領域においてホルダー3に肉抜きなどを施しても良いことを意味している。これにより、ホルダー6、磁束調整部材7を嵌合させることにより精度良く断面中心を合わせる事により、相対位置精度を向上することができる。
【0077】
上記のように、磁束調整部材7は、該磁束調整部材7の被加熱材搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径φd1と端部の外径φd2との関係がφd1<φd2なる関係を有する形状であることにより、磁束調整部材7の自重撓みおよび発熱部材である定着ローラ1の加圧変形による相対距離を任意の距離にすることができる。
【0078】
また、前記磁束調整部材の外径φd2の両端部のどちらか少なくとも一方には最大外径に変化がないストレート形状部があることにより、磁束調整部材7の端部形状を磁束調整部材保持部材に対して嵌合が容易となるためホルダー6および定着ローラ1との相対位置を高精度に保持することができる。
【0079】
さらに、磁束調整部材7は長手方向全域で略円形状(略円弧状)とすることにより、円筒形状の定着ローラ1およびホルダー6との相対位置を軸穴の嵌合により高精度に保持することができる。
【0080】
これらの効果により、磁束調整部材7の動作不良を起こすことなく、紙サイズに対応した、適切な磁束調整部材7の回転駆動を付与することが可能となった。このような性能の改善を達成しながらさらに寿命の改善にも大きく効果をもたらした。従って、動作不良の回避に伴い磁束調整部材7の回転移動を安定化させることで、定着ローラ1の非通紙部昇温を適切に制御することが可能となった。
【0081】
ここで、実施例の定着装置100について、定着前側板21側と定着後側板22側のそれぞれに対する、定着ローラ1の端部、断熱ブッシュ23a・23b、ベアリング24a・24b、定着ローラ駆動ギアG1、ホルダー6、磁束調整部材(シャッター)7、シャッタギアG2・G3、前側支持部材26、後側支持部材27、の組付け手順・要領について説明する。
【0082】
目的:定期交換部品としての定着ローラ1および故障による交換部品としてのホルダー7、ベアリング24a・24b、断熱ブッシュ23a・23b、シャッター7、ギアG2・G3等の交換。
【0083】
手順1:定着上ユニットを取り外す→加圧ローラを含む下ユニット、定着駆動ユニットの取り外す。
【0084】
手順2:前側支持部材26および後側支持部材27を取り外す→定着ローラ1(ギアG1、断熱ブッシュ23a・23b、ベアリング24a・24b付き)、ホルダー6、シャッター7、シャッターギアG2・G3の取り外す。
【0085】
手順3:不図示のグリップリング(スラスト止め)を取り外し、ギアG1、断熱ブッシュ23a・23b、ベアリング24a・24bを定着ローラ1より取り外して新しい部品に交換する。
【0086】
(3)その他
1)実施例の装置は大サイズ記録材と小サイズ記録材の大小2種類の記録材に対応して磁束調整部材7の移動は第1切換え位置と第2切換え位置とに切換えるものであるけれども、3種類以上の記録材紙幅に対応させて多段に位置切換する構成にすることもできることは勿論である。図15は大・中・小の3種類の記録材紙幅に対応させた磁束調整部材7の斜視模型図である。
【0087】
2)実施例の装置は記録材の搬送を中央通紙基準で行なう装置構成であるけれども、片側通紙基準の装置構成にも本発明は有効に適用することができる。図16と図17はそれぞれ片側通紙基準の装置である場合における磁束調整部材形態例を示したものである。O´が片側通紙基準線である。
【0088】
3)本発明の電磁誘導加熱方式の像加熱装置は、実施例の画像加熱定着装置に限られず、未定着画像を記録材に仮定着する仮定着装置、定着画像を担持した記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する表面改質装置等の像加熱装置としても有効である。またその他、例えばシート状被加熱部材のしわ除去用の熱プレス装置や、熱ラミネート装置、紙等の被加熱部材の含水分を蒸発させる加熱乾燥装置など、シート状被加熱材を加熱処理する加熱装置として用いても有効であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】画像形成装置の一例の概略模型図
【図2】定着装置の要部の正面模型図
【図3】定着装置の要部の拡大横断面模型図
【図4】定着ローラアセンブリ部分の縦断面模型図
【図5】磁束調整部材が第2切換え位置に回動移動されている状態時の定着装置の要部の拡大横断面模型図
【図6】主たる磁束発生領域と、それに対応する定着ローラ部分の円周方向発熱量分布の説明図
【図7】断熱ブッシュと定着ローラギアが取り付けられた状態の定着ローラの外観斜視図
【図8】励磁コイルアセンブリと磁束調整部材移動手段の外観斜視図
【図9】ホルダーと磁束調整部材の分解斜視図
【図10】ホルダーの内部の分解斜視図
【図11】定着ローラとホルダーの一端側を支持する前側支持部材の説明図
【図12】定着ローラとホルダーの他端側を支持する後側支持部材の説明図
【図13】前側支持部材と後側支持部材のそれぞれの位置決め補助手段の説明図
【図14】磁束調整部材の逆クラウン形状、および周辺部材の撓みを示した誇張模型図
【図15】大・中・小の3種類の記録材紙幅に対応させた磁束調整部材の斜視模型図
【図16】片側通紙基準の装置である場合の磁束調整部材形態例の斜視模型図図
【図17】片側通紙基準の装置である場合の、他の磁束調整部材形態例の斜視模型図
【符号の説明】
【0090】
1・・誘導発熱部材(定着ローラ)、2・・加圧部材(加圧ローラ)、3・・磁束発生手段(励磁コイルアセンブリ)、6・・ホルダー、7・・磁束調整部材、P・・被加熱材(記録材)、N・・定着ニップ部、26・・前側支持部材、27・・後側支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真方式・静電記録方式等のプリンタ・複写機等の画像形成装置において、記録材上に転写方式もしくは直接方式で形成担持させた加熱溶融性の未定着トナー画像を加熱定着させるための定着装置として用いて好適な電磁誘導加熱方式の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導加熱方式の加熱装置は、発熱部材(加熱部材)として電磁誘導発熱体を用い、該電磁誘導発熱体に磁束(磁場)発生手段で磁束(交番磁束)を作用させて該電磁誘導発熱体に発生する渦電流に基づくジュール発熱で被加熱材を加熱する、定着装置にあっては未定着トナー画像を形成担持させた記録材に熱を付与してトナー画像を記録材面に加熱定着処理する装置である。
【0003】
特許文献1には、電磁誘導加熱方式の定着装置が記載されている。この定着装置は、誘導発熱部材としての金属スリーブと弾性加圧ローラとを並行配列して圧接させて回転させ、金属スリーブ内に磁束発生手段としてのコイル・アセンブリを非回転に配置し、コイル・アセンブリのコイルに高周波電流を通電して高周波磁界を生じさせることで金属スリーブを誘導発熱させる。そして金属スリーブと弾性加圧ローラとの圧接ニップ部に未定着トナー画像を形成担持させた記録材を導入して挟持搬送させ、金属スリーブの熱でトナー画像を記録材面に加熱定着処理するものである。
【0004】
また、この定着装置には、いわゆる非通紙部昇温現象を解決するために、磁束発生手段としてのコイル・アセンブリと誘導発熱部材としての金属スリーブ間に磁束調整部材(磁束遮蔽部材)を配設し、この磁束調整部材を、ワイヤと、ワイヤが装架される回転自在なプーリと、プーリを回転駆動させるモータ等を有する駆動手段にて移動して金属スリーブの非通紙部に対する磁束調整を行う手段を具備させている。
【特許文献1】特開平10−74009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような電磁誘導加熱方式の加熱装置は、磁束発生手段と誘導発熱部材との隙間(クリアランス)は小さければ小さいほど熱交換効率は向上する。したがって、磁束発生手段とは、磁束発生手段や誘導発熱部材の自重撓み・加圧変形・熱変形等により両者の距離が異常に近くなり接触するに至る状態を生じさせないために必要とされる所要隙間は確保して、かつ両者を可及的に近づけた所定の相対位置に高精度に保持されることが望まれる。
【0006】
また、磁束発生手段と誘導発熱部材との隙間内で磁束調整部材を移動させる装置構成のものにおいては、誘導発熱部材の内面との間に任意の距離を有してその内面に沿うように磁束調整部材が設けられているため、誘導発熱部材の加圧変形や磁束調整部材の電磁力作用による周期的振動等による誘導発熱部材との接触による磁束調整部材の動作不良を生じさせないために必要とされる所要隙間は確保して、かつ磁束発生手段との両者を可及的に近づけた所定の相対位置に高精度に保持されることが望まれる。
【0007】
そこで本発明の目的は、電磁誘導加熱方式の加熱装置において、磁束調整部材の自重撓みおよび誘導発熱部材の加圧変形による相対距離を任意の距離にして、磁束調整部材と誘導発熱部材との相対距離を適正にすることにある。
【0008】
また本発明の他の目的は、磁束発生手段と誘導発熱部材との相対位置を高精度に保持することにある。
【0009】
また本発明のさらに他の目的は、磁束調整部材の動作不良を起こすことなく、被加熱材のサイズに対応した、適切な磁束調整部材の移動駆動を安定化させることで、誘導発熱部材の非通紙部昇温を適切に制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る加熱装置の代表的な構成は、磁束発生手段と、内部に配置された前記磁束発生手段からの磁束により発熱して被加熱材を加熱する回転可能な発熱部材と、前記磁束発生手段と前記発熱部材との間に配置され、前記発熱部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向に関する前記発熱部材への磁束作用領域を調整する磁束調整部材と、前記磁束調整部材を移動させる移動手段と、を有し、前記移動手段により前記磁束調整部材を所定の磁束調整位置に移動させることで前記発熱部材の前記長手方向に関する温度分布を調整する加熱装置において、前記磁束調整部材は、該磁束調整部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径φd1と端部の外径φd2との関係がφd1<φd2なる関係を有する形状であることを特徴とする加熱装置、である。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、磁束調整部材の自重撓みおよび発熱部材の加圧変形による相対距離を任意の距離にすることができて、磁束調整部材と誘導発熱部材との相対距離を適正にできる。すなわち、磁束調整部材の動作不良を起こすことなく、被加熱材のサイズに対応した、適切な磁束調整部材の移動駆動を安定化させることで、誘導発熱部材の非通紙部昇温を適切に制御することができるとともに、発熱部材と磁束発生手段の相対位置精度を向上し、誘導発熱部材と磁束発生手段を安定的に近接することができるため、電磁誘導発熱効率が向上し、誘導発熱部材の所定温度への立上げ時間の短縮を行うことができて、エネルギー消費効率を極めて向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
【実施例】
【0013】
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る電磁誘導加熱方式の加熱装置を画像加熱定着装置(以下、定着装置と記す)として搭載した画像形成装置の一例の概略模型図である。本例の画像形成装置は転写式電子写真プロセス利用のレーザープリンタである。
【0014】
101は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。矢印の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0015】
102は帯電手段としての接触帯電ローラである。回転する感光ドラム101の外周面を所定の極性・電位に一様に帯電処理する。
【0016】
103は露光手段としてのレーザースキャナである。画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調したレーザー光を出力して、回転する感光ドラム101の一様帯電処理面を走査露光Lする。これにより感光ドラム面に走査露光パターンに対応した静電潜像が形成される。
【0017】
104は現像装置である。感光ドラム面の静電潜像をトナー画像として反転現像または正規現像する。
【0018】
105は転写手段としての転写ローラである。感光ドラム101に対して所定の押圧力で接触して転写ニップ部Tを形成している。この転写ニップ部Tに不図示の給紙機構部から被加熱材としての記録材Pが所定の制御タイミングにて給送されて転写ニップ部Tを挟持搬送されていく。また転写ローラ105には所定の制御タイミングで所定の転写バイアスが印加される。これにより、転写ニップ部Tを挟持搬送される記録材Pの面に感光ドラム101面側のトナー画像が順次に静電転写される。
【0019】
転写ニップ部Tを出た記録材Pは感光ドラム101面から分離されて定着装置100に導入される。定着装置100は導入された記録材P上の未定着トナー画像を永久固着画像として加熱・加圧定着する。そして記録材Pは排出搬送する。
【0020】
106は感光ドラムクリーニング器であり、記録材分離後の感光ドラム上の転写残トナーを除去する。転写残トナーが除去されて清浄面化された感光ドラム面は繰り返して作像に供される。
【0021】
aは記録材Pの搬送方向である。本実施例の画像形成装置において、記録材Pの給紙・搬送は記録材中心の中央通紙基準でなされる。
【0022】
(2)定着装置100
図2は定着装置の要部の正面模型図、図3は拡大横断面模型図である。図4は定着ローラアセンブリ部分の縦断面模型図である。
【0023】
この定着装置は、誘導発熱部材としての定着ローラと、磁束発生手段(加熱手段)としての励磁コイルアセンブリの相対位置精度の向上を目的に、定着ローラを回転可能に支持する支持部材の位置決め手段と励磁コイルアセンブリの位置決め手段を含む位置決め部材により、定着ローラと励磁コイルアセンブリを同軸上に支持可能に構成された定着装置である。
【0024】
1は誘導発熱部材としての定着ローラである。鉄・ニッケル・SUS430などの誘導発熱体(導電性磁性材)から形成された、肉厚が例えば0.1mm〜1.5mm程度の円筒状のローラである。一般に、その外周表面に、フッ素樹脂等の離型層、あるいは弾性層と離型層等を形成して用いられる。鉄など強磁性の金属(透磁率の高い金属)を使うことで、磁束発生手段から発生する磁束を金属内部により多く拘束させることができる。すなわち、磁束密度を高くすることができることにより効率的に金属表面に渦電流を発生させられる。
【0025】
この定着ローラ1はその前側端部と後側端部を定着前側板21と定着後側板22の外側にそれぞれ取り付けた前側支持部材(芯決め板)26の第1支持部材26aと後側支持部材(芯決め板)27の第1支持部材27aとの間にそれぞれ断熱ブッシュ23a・23b及びベアリング24a・24bを介して回転自由に軸受支持させてある。
【0026】
断熱ブッシュ23a・23bは定着ローラ1からベアリング24a・24bへの伝熱を低減させるために用いている。G1は定着ローラ1の前側端部に外嵌して固着した定着ローラ駆動ギアである。このギアG1に第1モータM1の回転力が動力伝達系(不図示)を介して伝達されることで定着ローラ1が図3において矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。図7は、断熱ブッシュ23a・23bと定着ローラギアG1が取り付けられた状態の定着ローラ1の外観斜視図である。
【0027】
2は加圧部材としての加圧ローラである。芯金2aと、該芯金2aの回りに同心一体にローラ状に形成具備させた弾性層2b等からなる弾性ローラである。弾性層2bは例えばa表面離型性耐熱ゴム層であるシリコーンゴム層である。この加圧ローラ2は上記定着ローラ1の下側に並行に配列されて、芯金2aの前側端部と後側端部を定着前側板21と定着後側板22との間にそれぞれベアリング25a・25bを介して回転自由に軸受支持させてある。ベアリング25a・25bは定着前側板21と定着後側板22とにそれぞれ定着ローラ1の方向にスライド移動可能に配設してある。このベアリング25a・25bを付勢手段(不図示)により定着ローラ方向に押上付勢することで、加圧ローラ2を定着ローラ1の下面に対して弾性層2bの弾性に抗して所定の押圧力Fにて圧接させて定着ローラ1と加圧ローラ2との間に加熱ニップ部としての所定幅の定着ニップ部Nを形成させている。加圧ローラ2は定着ローラ1が回転駆動されることで定着ニップ部Nで摩擦回転力を受けて従動回転する。
【0028】
3は磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリである。この励磁コイルアセンブリ3は上記の円筒状の定着ローラ1の内空部に挿入して配設してある。励磁コイルアセンブリ3は、励磁コイル(以下、コイルと略記する)4、横断面T字型に配設された磁性体コア(以下、コアと略記する)5a・5b、上記のコイル4とコア5a・5bを内蔵させて保持させたホルダー6、このホルダー6の外側にホルダー6と同軸に回転自由に配設した磁束調整部材(磁束遮蔽部材、シャッター)7、等の組み立て体である。図8はこの励磁コイルアセンブリ3と磁束調整部材移動手段M2・28・G4・G5の外観斜視図である。図9はホルダー6と磁束調整部材7の分解斜視図である。図10はホルダー6の内部の分解斜視図である。
【0029】
ここで、以下において、定着装置の構成部材・部分について、長手方向とは、記録材搬送路面において記録材搬送方向aに直交(交差)する方向とする。
【0030】
ホルダー6はその長手方向全域で断面形状を略円筒形状にしてある。材質は、耐熱性と機械的強度を兼ね備えたPPS系樹脂にガラスを添加したものを用いている。ホルダー6には、PPS系樹脂、PEEK系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、セラミック、液晶ポリマー、フッ素系樹脂などの材質が適している。
【0031】
このホルダー6は、図10のように、長手軸線に略沿って縦2つ割りとした第1半体6aと第2半体6bの形態で成形してある。第1半体6aと第2半体6bを重ね合わせて接着剤で一体に接合する、あるいは嵌め合い構造部で一体に接合する等により断面形状を長手方向全域で略円筒形状の部材にしている。第1半体6aの内部にコイル4、コア5a・5bが組み込まれる。この第1半体6aに対して蓋するように第2半体6bを重ね合わせて一体に接合することで、コイル4とコア5a・5bを内蔵させて保持させたホルダー6が組み立てられる。4a・4bはコイル4の引出し線(リード線)である。この引出し線4a・4bはホルダー6の前側端面に設けた穴部6cからホルダー6の外側に出される。
【0032】
コイル4は、図10のように、定着ローラ1の長手方向に長い略楕円形状(横長舟形)をしており、定着ローラ1の内面に沿うようにホルダー6の第1半体6aの内部に配置されている。コイル4は加熱に十分な交番磁束を発生するものにする。そのためには抵抗成分を低く、インダクタンス成分を高くとる必要がある。コイル4の芯線としては、φ0.1〜0.3の細線を略80〜160本程度束ねたリッツ線を用いている。細線には絶縁被覆電線を用いている。また、第1コア5aを周回するように6〜12回巻回してコイル1を構成したものが使われる。
【0033】
コア5aはコイル4の巻き中心部にある第1コア(垂直部)である。コア5bはその上部の第2コア(水平部)である。この2つのコア5a・5bにより横断面T字型コアを構成させている。コア5a・5bはフェライト等の高透磁率残留磁束密度の低いものを用いると良いが、磁束を発生できるものであれば良く、特に規定するものではない。また、コア5a・5bの形状・材質を規定するものではなく、第1コア5a及び第2コア5bを一体成形でT字型にしてもよい。
【0034】
磁束調整部材7は、図9のように、長手方向全域で基本的には横断面円弧形状を形成していて、長手両側部の円周方向に幅広の円弧状シャッター部7a・7aと、その両者7a・7a間の幅狭の円弧状つなぎ板部7bを有している。材質は一般にアルミや銅系金属などの非鉄金属が用いられ、中でも電気抵抗率が低いものが好ましく用いられる。この磁束調整部材7は、その両端部に曲げ越し7c・7cを形成し、その曲げ越し7c・7cをホルダー6の前側端部と後側端部とにそれぞれ回転自由に外嵌される第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3とに係合させて第1と第2のシャッタギアG2・G3間に両持ちで支持させるようにしている。
【0035】
励磁コイルアセンブリ3のホルダー6は、図2・図4のように、その前側端部を定着ローラ1の前側端部開口から外方に突出させて円筒状の端部を、定着前側板21の外側に取り付けた前側支持部材26の第2支持部材26bに設けた嵌合丸穴26cに嵌合させて支持させてある。また、後側端部を定着ローラ1の後側端部開口から外方に突出させて、後側端部に設けたD字形状部6dを、定着後側板22の外側に取り付けた後側支持部材27の第2支持部材27bに設けた嵌合D穴27cにD嵌合させることで回転不能に固定支持させる。これによりホルダー6を定着ローラ1内にホルダー6と定着ローラ1とを略同軸にして、ホルダー外面と定着ローラ内面との間に所定のギャップを保持させた状態で、かつ円周方向に所定の角度姿勢で非回転に位置決めして配置している。ホルダー6の前側端面に設けた穴部6cからホルダー外側に出されているコイル引出し線4a・4bは励磁回路51に接続される。なお、本実施例では上記ホルダー6の周方向の位置決めをD嵌合で行っているが、特にD嵌合に限定するものではない。ホルダー6の周方向の位置が決まれば任意の手段構成にすることができる。
【0036】
磁束調整部材7は、前記のように、長手両端部に設けた曲げ越し7c・7c(図8・図9)をホルダー6の前側端部と後側端部とにそれぞれ回転自由に外嵌させた第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3とに係合させて第1と第2のシャッタギアG2・G3間に両持ちで支持させている。そしてこの磁束調整部材7は、第1と第2のシャッタギアG2・G3が磁束調整部材移動手段M2・28・G4・G5で回転されることで、定着ローラ1内においてホルダー外面と定着ローラ内面との円周方向ギャップ内をホルダー6と略同軸に回動移動する。
【0037】
図8の磁束調整部材移動手段M2・28・G4・G5において、M2は第2モータ、28はシャフト、G4は第1出力ギア、G5は第2出力ギアである。シャフト28は定着ローラ1の外側において定着ローラ1に並行に配列して定着前側板21と定着後側板22との間に軸受部材(不図示)を介して回転自由に支持させてある。第2モータM2はこのシャフト28を回転する駆動源であり、ステッピングモータを用いている。第1出力ギアG4と第2出力ギアG5は、それぞれシャフト28に同軸に固着して配設してあり、第1出力ギアG4は励磁コイルアセンブリ3の第1のシャッタギアG2に、第2出力ギアG5は第2のシャッタギアG3に、それぞれ噛合させてある。第2モータM2が回転駆動されることで、第1と第2のシャッタギアG2・G3に回転力が伝達される。これにより磁束調整部材7がホルダー6の外回りをホルダー6と略同軸に回動移動する。ギアの材質は雰囲気温度やトルクにより様々な樹脂材が選択可能である。
【0038】
図2において、50は制御回路部(CPU)である。制御回路部50は、画像形成シーケンス制御の所定の制御タイミングにおいて、ドライバ52を介して第1モータM1を起動させる。これにより定着ローラ駆動ギアG1に回転力が与えられて定着ローラ1が図3の矢印の時計方向に回転駆動される。加圧ローラ2は従動回転する。
【0039】
また制御回路部50は、所定の制御タイミングにおいて、励磁回路51を起動させてコイル4に交番電流を供給する。これにより発生する交番磁束(交番磁界)の作用で定着ローラ1が誘導発熱して昇温する。
【0040】
図6は上記のような系における定着ローラ1の発熱の状態を定着ローラ1の横断側面模型図で示したもので、磁束発生手段の主たる磁束発生領域と、それに対応する定着ローラ部分の円周方向発熱量分布の説明図ある。コイル4は交番電流が流されることで交番磁束を発生する。定着ローラ1は前記のように磁性金属または磁性材料を用いており、定着ローラ1の肉厚内では磁界を打ち消すように誘導電流(渦電流)が発生する。この誘導電流によるジュール熱により定着ローラ1自体が発熱し、昇温していくことになる。
【0041】
本実施例の構成においては、ホルダー6の、コイル4とコア5a・5bを組み込んだ第1半体6aの外面側が主たる磁束発生領域であり、この磁束発生領域において定着ローラ1に磁束が作用して定着ローラ1の加熱がなされる。そして、定着ローラ1の円周方向において、その主たる磁束発生領域に対応する定着ローラ部分にて発熱する発熱量分布は模式図に示すように、2ヶ所に発熱量の多い部分H・Hが存在する。本実施例においては、その1箇所部Hが定着ニップ部Nに対応位置するように、他の1箇所部Hが定着ニップ部Nよりも定着ローラ回転方向上流側に位置するように、ホルダー6を、その円周方向の角度姿勢状態を位置決めして非回転に固定支持させて配置している。
【0042】
磁束調整部材7は、常時は、ホルダー6の外面と定着ローラ1の内面との間の円周方向ギャップ内において、図3・図6のように、上記の主たる磁束発生領域に対応するギャップ部分とは反対側のギャップ部分に位置移動されて保持されている。この反対側のギャップ部分は磁束発生手段から定着ローラ1に磁束が実質的に作用しない部分、あるいは作用磁束量が少ない部分である。この磁束調整部材7の図3・図6の保持位置を第1切換え位置とする。
【0043】
そして、その定着ローラ1の昇温温度が定着ローラ1の長手方向の略中央部の位置に定着ローラ1に接触あるいは非接触に配設した温度検知手段である中央部サーミスタTH1で検知されて制御回路50に入力する。制御回路50はその中央部サーミスタTH1から入力する定着ローラ検知温度が所定の目標温度(定着温度)に維持されるように励磁回路51からコイル4への供給電力を制御して定着ローラ1の温度制御を行う。磁束調整部材7が図3・図6の第1切換え位置に保持されている状態においては定着ローラ1はその長手方向の有効加熱全長域が所定の目標温度に温調維持される。
【0044】
定着ローラ1の温度が所定の定着温度に立ち上って温調された状態において、定着ニップ部Nに未定着トナー画像tを担持した記録材Pが導入されて、定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。これにより、定着ローラ1の熱と定着ニップ部Nの加圧力で、未定着トナー画像tが記録材Pの面に加熱加圧定着される。
【0045】
ここで、紙幅とは記録材Pの平面において記録材搬送方向aに直交する方向の記録材寸法である。前記したように、本実施例においては、記録材通紙は記録材中心の中央通紙基準である。図2・図4において、Oはその記録材中央通紙基準線(仮想線)である。Aは装置に通紙使用可能な最大紙幅の記録材の通紙領域幅である。この通紙領域幅Aに対応する紙幅の記録材を大サイズ記録材とする。Bは大サイズ記録材の紙幅よりも小さい紙幅の記録材の通紙領域幅である。大サイズ記録材の紙幅よりも小さい紙幅の記録材を小サイズ記録材とする。Cは大サイズ記録材通紙領域幅Aと小サイズ記録材通紙領域幅Bとの差領域幅である。すなわち小サイズ記録材を通紙した時に記録材搬送路面内に生じる非通紙領域幅である。記録材通紙が中央基準であるから、小サイズ記録材を通紙した時の非通紙領域は小サイズ記録材通紙領域幅Bの左右両側に生じる。非通紙領域幅Cは通紙された小サイズ記録材の紙幅の大小により異なる。
【0046】
上記の中央部サーミスタTH1は定着ローラ1の温調制御用として、大小どの紙幅の記録材が通紙されても記録材通紙領域となる小サイズ記録材通紙領域幅B内に対応する位置に配設してある。
【0047】
TH2は非通紙領域幅C内に対応する位置に接触あるいは非接触に配設した、非通紙部昇温監視用としての温度検知手段である端部サーミスタである。この端部サーミスタTH2の検知温度情報も制御回路部50に入力する。
【0048】
小サイズ記録材の通紙が連続的になされると、定着ローラ1の非通紙領域幅Cの部分が非通紙部昇温して行く。その昇温状態が端部サーミスタTH2から制御回路部50に入力する。制御回路部50は端部サーミスタTH2から入力する非通紙部昇温温度が所定の許容温度よりも高くなったら、ドライバイ53を介して第2モータM2を起動させて、磁束調整部材7を図3・図6の第1切換え位置から図5の第2切換え位置に回動移動させる。
【0049】
この磁束調整部材7の第2切換え位置は、磁束調整部材7の長手両側部の幅広円弧状のシャッター部7a・7aがそれぞれ、ホルダー6の外面と定着ローラ1の内面との間の円周方向ギャップ内において主たる磁束発生領域に対応するギャップ部分であって、かつ非通紙領域幅C・Cに対応するギャップ部分に進入した位置である。
【0050】
これにより、非通紙領域幅C・Cに対応する定着ローラ部分に対する磁束発生手段からの作用磁束量が低減されて、非通紙領域幅C・Cに対応する定着ローラ部分の発熱が抑えられる。すなわち、非通紙部昇温が抑えられる。
【0051】
シャッター部7a・7aは、主たる磁束発生領域に対応するギャップ部分であって、かつ非通紙領域幅C・Cに対応するギャップ部分の全体に進入させる構成にすることもできるし、そのギャップ部分の一部に進入させる構成にすることもできる。図5は上記のギャップ部分の略半分の領域に進入させる構成である。
【0052】
制御回路部50は磁束調整部材7が第2切換え位置に回動移動された後、端部サーミスタTH2から入力する非通紙領域部温度が所定の許容温度よりも低くなったら、すなわち非通紙領域部温度が下がり過ぎたことを検知したら、磁束調整部材7を第1切換え位置に戻し回動移動させて、非通紙領域部温度の下がり過ぎを防止する。
【0053】
また制御回路部50は磁束調整部材7が第2切換え位置に回動移動された後、通紙使用される記録材が小サイズ記録材から大サイズ記録材に切換えられたら磁束調整部材7を第1切換え位置に戻し回動移動させる。
【0054】
である定着ローラ1と磁束調整部材7の相対距離(ギャップ)を確保する方法として、磁束調整部材7と定着ローラ1との距離を広げる方法がある。しかしながら、これに伴い、必要以上にコア5と定着ローラ1との距離を広げると、熱交換効率が悪化するため今日ではあまり用いられていない。磁束調整部材7およびホルダー6はコイル4が配置されている反対側にもホルダーを延長させホルダー6の断面形状を長手方向全域で略円形状にする。この形状にすることによりホルダー6、定着ローラ1、磁束調整部材7の断面中心を合わせる事により、相対位置精度を向上することができる。
【0055】
前記のように、磁束調整部材7を駆動する駆動伝達手段として、ホルダー6の前側端部と後側端部とにそれぞれ回転自由に第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3を配置する。磁束調整部材7の両端は曲げ越し6cを形成し、それぞれ上記第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3とに係合させて磁束調整部材7を第1と第2のシャッタギアG2・G3間に両持ちで支持させている。上記第1のシャッタギアG2と第2のシャッタギアG3は磁束調整部材7の曲げ越し6cと係合していない領域ではホルダー6に嵌合している。このため磁束調整部材7はホルダー6の面全体とギアG2・G3の内径部とで支持され回動する。ギアG2・G3とホルダー6とが嵌合する領域においてホルダー6の最大外径部はストレート形状を形成している。ここで最大外径部と表記しているのは上記嵌合領域においてホルダー6に肉抜きなどを施しても良いことを意味している。これにより、ホルダー6、磁束調整部材7を嵌合させることにより精度良く断面中心を合わせる事により、相対位置精度を向上することができる。
【0056】
磁束調整部材7は定着ローラ長手方向全域で基本的に円弧形状を形成し、両端部から中央部にかけて円弧部の長さが変わっている。小サイズ記録材を流すときには非通紙領域に対応する磁束調整部材両端部のシャッター部7a・7aを磁束発生領域に移動させることで定着ローラ端部の昇温を抑えている。また、磁束発生領域の通紙部に対応する中央部に磁束遮蔽部材(シャッター部)を移動させることで定着ローラ長手方向における通紙部と非通紙部の発熱分布を変えることで定着ローラ端部の昇温を抑えてもよい(逆シャッター)。
【0057】
定着ローラ1及びホルダー6の前側端部及び後側端部を支持するための前側支持部材26と後側支持部材27について図11〜13により今少し今少し説明する。
【0058】
前側支持部材26と後側支持部材27はそれぞれ定着前側板21と定着後前側板22に対して位置26d・26e、27d・27eにおいてラフ丸穴と嵌合丸長穴でビス締結されている。従って、ビスを外すことにより定着ローラ1やホルダー6を容易に交換することができる。
【0059】
図11を参照して、前側支持部材26は、第1と第2の2つの支持部材26aと26bで構成される。第1の支持部材26aはベアリング24aを支持する嵌合穴を有しており、断熱ブッシュ23aを介して定着ローラ1の前側端部を支持するように構成されている。また、第2の支持部材26bはホルダー6の円筒状の前側端部を支持する嵌合丸穴26cを有している。
【0060】
さらに、上記の第1と第2の2つの支持部材26aと26bは位置26fにおいてスポット溶接することにより一体化されている。このとき、図13の(a)のように、位置決め補助手段である固定冶具61を用いて第1と第2の2つの支持部材26aと26bを位置決めしてスポット溶接するため、定着ローラ1とホルダー6を同軸上に高精度で支持する前側支持部材26を作製することができる。
【0061】
図12を参照して、後側支持部材27も、第1と第2の2つの支持部材27aと27bで構成される。第1の支持部材27aはベアリング24bを支持する嵌合穴を有しており、断熱ブッシュ23bを介して定着ローラ1の後側端部を支持するように構成されている。また、第2の支持部材27bは、ホルダー6の後側端部の回転規制するD字型状端部6dとD嵌合させる嵌合D穴27cを有している。
【0062】
さらに、上記の第1と第2の2つの支持部材27aと27bは位置27fにおいてスポット溶接することにより一体化されている。このとき、図13の(b)のように、位置決め補助手段である固定冶具62を用いて第1と第2の2つの支持部材27aと27bを位置決めしてスポット溶接するため、定着ローラ1とホルダー6を同軸上に、かつ、ホルダー6の回転角を高精度で支持する後側支持部材27を作製することができる。
【0063】
この後側支持部材27は定着後側板22に対して位置27d・27eにおいてラフ丸穴と嵌合丸長穴でビス締結されているため、ホルダー6を定着後側板22に対して回転規制することができる。
【0064】
発熱部材としての定着ローラ1および磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3のホルダー6を支持部材26・27に、定着ローラ1は回動可能に、ホルダー6は固定して、かつ、定着ローラ1とホルダー6の中心軸を略同軸上にして支持するように構成したことで、定着ローラ1とホルダー6の相対位置精度を向上することができる。これにより、定着ローラ1とホルダー6を安定的に近接することができるため、電磁誘導発熱効率が向上し、定着ローラ1の所定の定着温度への立上げ時間の短縮を行うことができて、エネルギー消費効率を極めて向上させることができる。
【0065】
また、発熱部材としての定着ローラ1および磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3のホルダー6の支持部材を、定着ローラ1およびホルダー6の長手方向の一端側を支持する支持部材26と、これとは独立して、他端側を支持する支持部材27とで構成したことで、定着ローラ1とホルダー6の相対位置を高精度に維持し、かつ、定着ローラ1およびホルダー6すなわち磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3の交換性を向上することができる。
【0066】
また、支持部材26・27を、発熱部材としての定着ローラ1の支持部を具備させた第1支持部材26a・27aと、これとは別体で、励磁コイルアセンブリ3のホルダー6の支持部26c・27cを具備させた第2支持部材26b・27bとの二部材で構成し、第1支持部材26a・27aの前記支持部と第2支持部材26b・27bの前記支持部を位置決め補助手段61・62を用いて略同軸に位置決め状態にして第1支持部材26a・27aと第2支持部材26b・27bとを一体に結合にして構成したことで、定着ローラ1とホルダー6の相対位置を高精度に維持し、かつ、支持部材26・27の加工性を向上することができる。
【0067】
これらの効果により、定着ローラ1と磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3のホルダー6を安定的に近接することができて電磁誘導発熱効率が向上するため、定着ローラ1のコピー開始可能温度までの立ち上り時間短縮を行うことができるため、エネルギー消費効率を極めて向上させることができる。
【0068】
また、磁束調整部材7を有する装置においては、磁束調整部材7の動作不良を起こすことなく、紙サイズに対応した、適切な磁束調整部材7の回転駆動を付与することが可能となる。このような性能の改善を達成しながらさらに寿命の改善にも大きく効果をもたらした。従って、動作不良の回避に伴い磁束調整部材7の回転移動を安定化させることで、定着ローラ1の非通紙部昇温を適切に制御することが可能となった。
【0069】
ここで本実施例の定着装置において、発熱部材である定着ローラ1の内径はφ46程度である。その内部に、磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3を配置してある。該励磁コイルアセンブリ3のホルダー6の外径はφ40程度である。磁束調整部材7は両端部でφ40で、長手方向の長さが約400mm程度にもなるため、200℃程度の温度に長時間さらされると、中央部で熱により自重撓みを生じる。この状態で磁束調整部材7を回動させると最大撓み部において定着ローラ1の内面との摺動抵抗が増大し磁束調整部材7の回動安定性が著しく悪化する。
【0070】
このため、本実施例においては、図14の模型図に極めて誇張して表したように、磁束調整部材7はその長手方向両端部では外径φ40であるが、長手方向中央部においては外径φ38程度にし、逆クラウン形状を形成している。
【0071】
磁束調整部材7は、板厚0.5mm程度の銅板を、円筒かつ中央部が0.3mmの凹形状に製作された型にプレスされることにより、円筒クラウンン形状が転写されて、上記の磁束調整部材7として成形される。
【0072】
ただし、これは、磁束調整部材7の自重撓みと定着ローラ1の加圧撓みにより決定されるものであり、普遍的な解は存在しない。また、磁束調整部材7は一般的にアルミや銅系金属などの非鉄金属が用いられ、中でも電気抵抗率が低いものが使われ、実施例の銅板材料に限定するものではない。
【0073】
定着ローラ1と磁束調整部材7の相対距離の確保する方法として、定着ローラ1と磁束調整部材7との距離を広げる方法がある。しかしながら、これに伴い、必要以上に磁性コア5と定着ローラ1との距離を広げると、熱交換効率が悪化するため今日ではあまり用いられていない。
【0074】
磁束発生手段としての励磁コイルアセンブリ3のホルダー6は断面形状を長手方向全域で略円形状にする。この形状にすることによりホルダー6、定着ローラ1、磁束調整部材7の断面中心を合わせる事により、相対位置精度を向上することができる。
【0075】
磁束調整部材7は長手方向全域で基本的に円弧形状を形成し、両端部と中央部において円弧部の長さが変わっていて、中央部の円弧部の長さw1は両端部の円弧部の長さw2よりも短く設定されている。前記したように、磁束調整部材7を駆動するシャッタギアG2・G3をホルダー6に配置する。磁束調整部材7の両端は曲げ越し7c・7cを形成し、前記シャッタギアG2・G3に係合させている。さらにシャッタギアG2・G3は磁束調整部材7と係合していない領域ではホルダー6に嵌合している。このため磁束調整部材7はホルダー6の面全体とシャッタギアG2・G3の内径部とで支持され回動する。
【0076】
前記シャッタギアG2・G3とホルダー6とが嵌合する領域においてホルダー6の最大外径部はストレート形状を形成し逆クラウン形状は形成していない。ここで最大外径部と表記しているのは上記嵌合領域においてホルダー3に肉抜きなどを施しても良いことを意味している。これにより、ホルダー6、磁束調整部材7を嵌合させることにより精度良く断面中心を合わせる事により、相対位置精度を向上することができる。
【0077】
上記のように、磁束調整部材7は、該磁束調整部材7の被加熱材搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径φd1と端部の外径φd2との関係がφd1<φd2なる関係を有する形状であることにより、磁束調整部材7の自重撓みおよび発熱部材である定着ローラ1の加圧変形による相対距離を任意の距離にすることができる。
【0078】
また、前記磁束調整部材の外径φd2の両端部のどちらか少なくとも一方には最大外径に変化がないストレート形状部があることにより、磁束調整部材7の端部形状を磁束調整部材保持部材に対して嵌合が容易となるためホルダー6および定着ローラ1との相対位置を高精度に保持することができる。
【0079】
さらに、磁束調整部材7は長手方向全域で略円形状(略円弧状)とすることにより、円筒形状の定着ローラ1およびホルダー6との相対位置を軸穴の嵌合により高精度に保持することができる。
【0080】
これらの効果により、磁束調整部材7の動作不良を起こすことなく、紙サイズに対応した、適切な磁束調整部材7の回転駆動を付与することが可能となった。このような性能の改善を達成しながらさらに寿命の改善にも大きく効果をもたらした。従って、動作不良の回避に伴い磁束調整部材7の回転移動を安定化させることで、定着ローラ1の非通紙部昇温を適切に制御することが可能となった。
【0081】
ここで、実施例の定着装置100について、定着前側板21側と定着後側板22側のそれぞれに対する、定着ローラ1の端部、断熱ブッシュ23a・23b、ベアリング24a・24b、定着ローラ駆動ギアG1、ホルダー6、磁束調整部材(シャッター)7、シャッタギアG2・G3、前側支持部材26、後側支持部材27、の組付け手順・要領について説明する。
【0082】
目的:定期交換部品としての定着ローラ1および故障による交換部品としてのホルダー7、ベアリング24a・24b、断熱ブッシュ23a・23b、シャッター7、ギアG2・G3等の交換。
【0083】
手順1:定着上ユニットを取り外す→加圧ローラを含む下ユニット、定着駆動ユニットの取り外す。
【0084】
手順2:前側支持部材26および後側支持部材27を取り外す→定着ローラ1(ギアG1、断熱ブッシュ23a・23b、ベアリング24a・24b付き)、ホルダー6、シャッター7、シャッターギアG2・G3の取り外す。
【0085】
手順3:不図示のグリップリング(スラスト止め)を取り外し、ギアG1、断熱ブッシュ23a・23b、ベアリング24a・24bを定着ローラ1より取り外して新しい部品に交換する。
【0086】
(3)その他
1)実施例の装置は大サイズ記録材と小サイズ記録材の大小2種類の記録材に対応して磁束調整部材7の移動は第1切換え位置と第2切換え位置とに切換えるものであるけれども、3種類以上の記録材紙幅に対応させて多段に位置切換する構成にすることもできることは勿論である。図15は大・中・小の3種類の記録材紙幅に対応させた磁束調整部材7の斜視模型図である。
【0087】
2)実施例の装置は記録材の搬送を中央通紙基準で行なう装置構成であるけれども、片側通紙基準の装置構成にも本発明は有効に適用することができる。図16と図17はそれぞれ片側通紙基準の装置である場合における磁束調整部材形態例を示したものである。O´が片側通紙基準線である。
【0088】
3)本発明の電磁誘導加熱方式の像加熱装置は、実施例の画像加熱定着装置に限られず、未定着画像を記録材に仮定着する仮定着装置、定着画像を担持した記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する表面改質装置等の像加熱装置としても有効である。またその他、例えばシート状被加熱部材のしわ除去用の熱プレス装置や、熱ラミネート装置、紙等の被加熱部材の含水分を蒸発させる加熱乾燥装置など、シート状被加熱材を加熱処理する加熱装置として用いても有効であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】画像形成装置の一例の概略模型図
【図2】定着装置の要部の正面模型図
【図3】定着装置の要部の拡大横断面模型図
【図4】定着ローラアセンブリ部分の縦断面模型図
【図5】磁束調整部材が第2切換え位置に回動移動されている状態時の定着装置の要部の拡大横断面模型図
【図6】主たる磁束発生領域と、それに対応する定着ローラ部分の円周方向発熱量分布の説明図
【図7】断熱ブッシュと定着ローラギアが取り付けられた状態の定着ローラの外観斜視図
【図8】励磁コイルアセンブリと磁束調整部材移動手段の外観斜視図
【図9】ホルダーと磁束調整部材の分解斜視図
【図10】ホルダーの内部の分解斜視図
【図11】定着ローラとホルダーの一端側を支持する前側支持部材の説明図
【図12】定着ローラとホルダーの他端側を支持する後側支持部材の説明図
【図13】前側支持部材と後側支持部材のそれぞれの位置決め補助手段の説明図
【図14】磁束調整部材の逆クラウン形状、および周辺部材の撓みを示した誇張模型図
【図15】大・中・小の3種類の記録材紙幅に対応させた磁束調整部材の斜視模型図
【図16】片側通紙基準の装置である場合の磁束調整部材形態例の斜視模型図図
【図17】片側通紙基準の装置である場合の、他の磁束調整部材形態例の斜視模型図
【符号の説明】
【0090】
1・・誘導発熱部材(定着ローラ)、2・・加圧部材(加圧ローラ)、3・・磁束発生手段(励磁コイルアセンブリ)、6・・ホルダー、7・・磁束調整部材、P・・被加熱材(記録材)、N・・定着ニップ部、26・・前側支持部材、27・・後側支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束発生手段と、内部に配置された前記磁束発生手段からの磁束により発熱して被加熱材を加熱する回転可能な発熱部材と、前記磁束発生手段と前記発熱部材との間に配置され、前記発熱部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向に関する前記発熱部材への磁束作用領域を調整する磁束調整部材と、前記磁束調整部材を移動させる移動手段と、を有し、前記移動手段により前記磁束調整部材を所定の磁束調整位置に移動させることで前記発熱部材の前記長手方向に関する温度分布を調整する加熱装置において、前記磁束調整部材は、該磁束調整部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径φd1と端部の外径φd2との関係がφd1<φd2なる関係を有する形状であることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記磁束調整部材の外径φd2の両端部のどちらか少なくとも一方には最大外径に変化がないストレート形状部があることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記磁束調整部材は長手方向全域で略円形状とすることを特徴としる請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記発熱部材は、円筒状の金属ローラであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加熱装置。
【請求項5】
前記磁束発生手段は、少なくとも、励磁コイルと、前記励磁コイルを保持するホルダ−を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記磁束調整部材は、前記磁束発生手段の外側において該磁束発生手段の中心軸と略同軸に回動移動可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の加熱装置。
【請求項1】
磁束発生手段と、内部に配置された前記磁束発生手段からの磁束により発熱して被加熱材を加熱する回転可能な発熱部材と、前記磁束発生手段と前記発熱部材との間に配置され、前記発熱部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向に関する前記発熱部材への磁束作用領域を調整する磁束調整部材と、前記磁束調整部材を移動させる移動手段と、を有し、前記移動手段により前記磁束調整部材を所定の磁束調整位置に移動させることで前記発熱部材の前記長手方向に関する温度分布を調整する加熱装置において、前記磁束調整部材は、該磁束調整部材の被加熱材搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径φd1と端部の外径φd2との関係がφd1<φd2なる関係を有する形状であることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記磁束調整部材の外径φd2の両端部のどちらか少なくとも一方には最大外径に変化がないストレート形状部があることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記磁束調整部材は長手方向全域で略円形状とすることを特徴としる請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記発熱部材は、円筒状の金属ローラであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加熱装置。
【請求項5】
前記磁束発生手段は、少なくとも、励磁コイルと、前記励磁コイルを保持するホルダ−を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記磁束調整部材は、前記磁束発生手段の外側において該磁束発生手段の中心軸と略同軸に回動移動可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図14】
【公開番号】特開2006−120526(P2006−120526A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308506(P2004−308506)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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