説明

加熱装置

【課題】被加熱物に放射する熱の分布の均一性を確保しつつ、より高い温度で加熱できる加熱装置を提供する。
【解決手段】複数の棒状の赤外線ランプ11が平面上に平行に配置され、この赤外線ランプ11が配置される平面と対向する平面上に複数の棒状の赤外線ランプ12が平行に配置されており、各赤外線ランプ11,12には、長手方向に等間隔に配置され、電気的に直列に接続された複数の同一長さの発熱部が含まれ、当該赤外線ランプ11,12が配置される平面に対して垂直な向から見た平面視において、当該赤外線ランプ11,12に含まれる複数の発熱部が規則的なパターンを構成し、平面上に均一に分布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線ランプ等の熱源によって物体を加熱する装置に係り、特に、放射熱の分布の均一化を図った加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造や研究・開発においては、半導体のウェハを所定の温度で熱処理するために加熱装置が用いられる。この加熱装置には、例えば、棒型の赤外線ランプを平行に等間隔で並べて配設したものや、円弧型の赤外線ランプを同心状に等間隔で配設したもの、球型の赤外線ランプを格子状に配設したものなどが一般的に使用されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−332849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェハを熱処理する場合、製造されるデバイスの特性のばらつきを抑えるため、ウェハ表面の熱分布ができるだけ均一になるように加熱する必要がある。一方、赤外線ランプの光は放射状に広がるため、ウェハと赤外線ランプの距離が短くなるほど、放射熱の面分布の不均一性が高まる。そのため、熱分布の均一性を確保するためには、ウェハと赤外線ランプをある程度離して配置する必要がある。しなしながら、両者の距離が長くなると、ウェハの温度をあまり高くできなくなるという不利益がある。例えば、大電力用の半導体デバイスの材料として近年注目されているSiC(炭化ケイ素)の基板などでは、通常のシリコンの基板に比べて高温の熱処理が必要であり、従来よりも高い温度で加熱できる装置が要望されている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加熱物に放射する熱の分布の均一性を確保しつつ、より高い温度で加熱できる加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱装置は、平面上に平行に配設された複数の棒状の第1発熱体と、前記複数の第1発熱体が配設される平面と対向する平面上に平行に配設され、前記第1発熱体と直角に交差する複数の棒状の第2発熱体とを備える。前記第1発熱体及び前記第2発熱体は、長手方向に等間隔に配設され、電気的に直列に接続された複数の同一長さの発熱部をそれぞれ含む。前記複数の第1発熱体及び前記複数の第2発熱体をそれぞれの前記平面に対して垂直な方向から視た平面視において、前記発熱部が平面上に規則的なパターンで分布する。
【0007】
好適に、前記平面視において、前記第1発熱体の前記発熱部と前記第2発熱体の前記発熱部とにより同一形状に形作られた発熱ブロックが複数形成されてよく、当該複数の発熱ブロックが規則的なパターンで配列されてよい。
【0008】
好適に、前記平面視において、隣り合った前記第1発熱体に属する2つの平行な前記発熱部と、隣り合った前記第2発熱体に属する2つの平行な前記発熱部とにより、四角形状若しくは井型形状に形作られた発熱ブロックが複数形成されてよい。あるいは、前記平面視において、前記第1発熱体の1つの前記発熱部と前記第2発熱体の1つの前記発熱部とにより十字形状に形作られた発熱ブロックが複数形成されてもよい。
【0009】
好適に、前記第1発熱体及び前記第2発熱体は、前記発熱部の直列回路の端部において更に直列に接続され、前記発熱部より長い端部発熱部を有してよい。
【0010】
好適に、隣接する前記第1発熱体の端部の電極同士を接続することにより、2以上の前記第1発熱体が直列に接続されてよい。また、隣接する前記第2発熱体の端部の電極同士を接続することにより、2以上の前記第2発熱体が直列に接続されてもよい。
【0011】
好適に、平面上に配設された複数の前記第1発熱体のうち、両端の少なくとも1本の第1発熱体は他の第1発熱体と前記直列接続されないようにしてよい。また、平面上に配設された複数の前記第2発熱体のうち、両端の少なくとも1本の第2発熱体は他の第2発熱体と前記直列接続されないようにしてもよい。
【0012】
好適に、上記加熱装置は、前記第1発熱体及び前記第2発熱体に流れる電流を供給する電源部を有してよい。この電源部は、前記複数の第1発熱体のうち端部の少なくとも1本の第1発熱体には他の中間部の第1発熱体に比べて大きな電流を供給してよく、また、前記複数の第2発熱体のうち端部の少なくとも1本の第2発熱体には他の中間部の第2発熱体に比べて大きな電流を供給してもよい。
【0013】
前記複数の第1発熱体が前記複数の第2発熱体に比べて被加熱物の近くに配設される場合、前記電源部は、前記第1発熱体に比べて前記第2発熱体に大きな電流を供給してよい。
【0014】
好適に、上記加熱装置は、被加熱物への熱が放射される側の反対側において前記複数の第1発熱体及び前記複数の第2発熱体を支持する支持台と、前記平面視における前記発熱部の前記パターンの中央部に面した前記支持台の表面において開口する少なくとも1つの通路と、前記開口部において前記発熱部からの熱気が吸い込まれるように前記通路における気体の流れを発生する気体流発生部とを有してよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、直列に接続された発熱部がそれぞれ熱源となっていることから、熱源の配置密度を高め易く、また、発熱部が平面視において規則的なパターンで平面上に分布していることから、被加熱物への放射熱の面分布を均一化できる。これにより、被加熱物に放射する熱の分布の均一性を確保しつつ、より高い温度で加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱装置の構成の一例を示す図である。
【図2】熱源部における赤外線ランプの配置を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る赤外線ランプの構造の一例を示す図である。
【図4】図3に示す赤外線ランプを図2に示すように交差して配置した場合の発熱部の分布のパターンを示す図である。
【図5】熱源部の各赤外線ランプに流れる電流を供給する電源部の一例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る加熱装置における発熱部の分布のパターンを示す図である。
【図7】第3の実施形態に係る加熱装置における赤外線ランプの構造の一例を示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る加熱装置における発熱部の分布のパターンを示す図である。
【図9】第4の実施形態に係る加熱装置における赤外線ランプの構造の一例を示す図である。
【図10】第4の実施形態に係る加熱装置における発熱部の分布のパターンを示す第1の図である。
【図11】第4の実施形態に係る加熱装置における発熱部の分布のパターンを示す第2の図である。
【図12】第5の実施形態に係る加熱装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る加熱装置の構成の一例を示す図であり、水平方向から見た断面を表す。
図1に示す加熱装置は、熱源としての赤外線ランプを備える熱源部1と、被加熱物としてのウェハ(半導体基板)5を支持するウェハ支持部2を有する。熱源部1がウェハ支持部2の上に載置されており、ウェハ5の上面に熱源部1の赤外線が照射される。
【0018】
熱源部1は、平面上に平行に配設された複数の棒状の赤外線ランプ11(第1発熱体)と、この赤外線ランプ11が配設される平面と対向する平面上に平行に配設された複数の棒状の赤外線ランプ12(第2発熱体)を有する。赤外線ランプ11及び12は互いに直角に交差している。すなわち、赤外線ランプ11が紙面の横方向(X方向)へ、赤外線ランプ12が紙面と垂直な方向(Y方向)へ延びている。赤外線ランプ11は、赤外線ランプ12に比べてウェハ5の近く(図の下側)に配設される。
【0019】
熱源部1は、この赤外線ランプ(11,12)を支持するための基台10を有する。基台10は、ウェハ5への熱が放射される側の反対側(図の上側)において赤外線ランプ(11,12)を支持する。基台10は、厚みをもった四角形の板体であり、その下側の面には、赤外線ランプ(11,12)の貫通孔を備えた固定部13,14が立設される。固定部13は、赤外線ランプ11が貫通する複数の孔H2を有しており、赤外線ランプ11の両端に対してそれぞれ設けられている。固定部14は、赤外線ランプ12が貫通する複数の孔H3を有しており、赤外線ランプ12の両端に対してそれぞれ設けられている。
【0020】
固定部13は、孔H2の中心付近で上下に2つの部材に分離される。固定部13の上下の部材が孔H2の窪みにおいて赤外線ランプ11を挟み込むことにより、赤外線ランプ11が孔H2に貫通した状態となる。固定部14もこれと同様の構造を有しており、孔H3の中心付近で上下2つの部材に分離される。
【0021】
固定部13,14は、基台10の下面からの高さが同じであり、その下側の端がウェハ支持部2の本体20の上面に固定される。すなわち、熱源部1の基台10とウェハ支持部2の本体20が、固定部13,14を介して互いに固定される。
【0022】
基台10の下面における四つの辺の縁には、図の下側へ突出した凸部101がそれぞれ設けられている。凸部101は、赤外線ランプ(11,12)の両側の端部と当接する。赤外線ランプ(11,12)の端部は、図示しない金具等によってこの凸部101に固定される。
【0023】
基台10の下面には、面状に配置された赤外線ランプ(11,12)のほぼ中央部分と面した位置に、開口部H4が設けられている。開口部H4は、廃熱用の通路に接続されている。この廃熱用通路の先には、開口部H4において熱気が吸い込まれるように気体の流れを発生する気体流発生部19(回転フィン等)が設けられている。
【0024】
基台10の下面と赤外線ランプ12との間には、ウェハ5に向けて下側に赤外線を反射するための反射板15が介挿されている。反射板15は、例えばスペーサ等によって基台10の下面から浮いた位置に固定されており、基台10の下面と反射板15との間に隙間が設けられている。また、固定部13,14の内側面と反射板15との間にも隙間が設けられている。赤外線ランプ(11,12)で熱せられた空気は、これらの隙間を通って開口部H4から廃熱用通路に流れ込む。
【0025】
基台10の側縁部には、赤外線ランプ(11,12)のリード線116を接続する端子台16と、孔H3,H4から突き出た複数の赤外線ランプ(11,12)の端部を全体的に覆うカバー17が設けられている。リード線116と端子台16との接続部分は、カバー17の内側に含まれる。カバー17には、外部の冷えた空気を取り入れるための孔H1が設けられる。孔H1から取り入れられた空気が、孔H2,H3を通って固定部13,14の内側の加熱エリアに流入する。
【0026】
図2は、熱源部1における赤外線ランプ(11,12)の配置を示す図であり、図1におけるA−A線から上方向を見た断面を表す。なお、図2においては、端子台16とカバー17の図示を省略している。
【0027】
赤外線ランプ(11,12)は、例えば図2に示すように、端を揃えてほぼ隙間なく密に配設される。赤外線ランプ11は縦方向(Y方向)へ等間隔に配設され、赤外線ランプ12は横方向(X方向)へ等間隔に配設される。
固定部13,14は、赤外線ランプ11と赤外線ランプ12が直角に交差している領域の周囲を取り囲むように配置される。赤外線ランプ11及び12の光源(発熱部100)は、この固定部13,14によって囲まれた領域の内側に位置する。
【0028】
図3は、赤外線ランプ(11,12)の構造の一例を示す図である。図3(A)は、赤外線ランプ(11,12)を水平方向(図2のX方向又はY方向)より見た図を示し、図3(B)は、赤外線ランプ(11,12)を垂直方向(図1のZ方向)より見た図を示す。また図3(C)は、赤外線ランプ(11,12)の内部の構造を示す。
赤外線ランプ(11,12)は、例えば図3(B)に示すように、2本ずつ直列に接続される。個々の赤外線ランプ(11,12)は、光源として複数の発熱部100を有する。ほぼ同一長さの複数の発熱部100が、長手方向に等間隔に配列されており、抵抗値の低い導体線112によって電気的に直列に接続されている。発熱部100と導体線112は、例えばタングステン等のフィラメントにより形成される。発熱部100は、フィラメントをコイル状に巻いて高抵抗にすることにより形成され、巻かれていない線状の部分が導体線112となる。
【0029】
この直列接続された発熱部100は、赤外線透過性を有するガラスなどのチューブ121の内部に封じ込められる。各発熱部100は、チューブ121の内側のほぼ中心に位置するように、図示しないリングによって支えられる。チューブ121の内部には、不活性ガスが導入される。不活性ガスが外部に流出しないようにするため、リード線114,116が引き出されるチューブ121の端部123,124は押しつぶして封じられる。
【0030】
平行に配置された2本の赤外線ランプ(11,12)は、近接する左端のリード線114同士を互いに接続される。赤外線ランプ(11,12)の右端のリード線116は、端子台16(図1)を介して後述の電源部30(図5)に接続される。
【0031】
2本の赤外線ランプ(11,12)の両端は、セラミックス等の固定部材125,126によって互いに固定される。チューブ121の左側の端部123が固定部材125によって互いに固定され、チューブ121の右側の端部124が固定部材126によって互いに固定される。
【0032】
図4は、図2に示すように交差して配置された赤外線ランプ(11,12)の発熱部100と導体線112が現れるようにチューブ121の図示を省略した図である。
手前側の平面においてX軸方向に延びる赤外線ランプ11の2本の発熱部100と、奥側の平面においてY軸方向に延びる赤外線ランプ12の2本の発熱部100は、これらの平面と垂直な方向からみた平面視において、四角形状に形作られた微小な発熱ブロックB1を形成している。
【0033】
図5は、熱源部1の各赤外線ランプ(11,12)に流れる電流を供給する電源部30の一例を示す図である。
熱源部1は、直列接続された2本の赤外線ランプ11のペアに対してそれぞれ独立に電流を供給する複数の電源回路31_1〜31_nと、直列接続された2本の赤外線ランプ12のペアに対してそれぞれ独立に電流を供給する複数の電源回路32_1〜32_nを有する。
【0034】
電源回路31_1〜31_n及び電源回路32_1〜32_nによって各赤外線ランプ(11,12)に供給される電流は、ウェハ5の表面における放射熱の分布が均一となるように、それぞれ調節される。
【0035】
赤外線ランプ12は赤外線ランプ11に比べてウェハ5に対する距離が離れているため、両者の発光強度が等しい場合、赤外線ランプ12によるウェハ5表面の放射熱は赤外線ランプ11に比べて小さくなる。そこで、電源部30は、ウェハ5の表面における放射熱が赤外線ランプ11と12で同等になるように、電源回路32_1〜32_nの電流を電源回路31_1〜31_nの電流に比べて若干大きめに設定する。
【0036】
また、面状に配置された赤外線ランプ(11,12)によるウェハ5の表面の放射熱は、全ランプが同じ発光強度の場合、発光領域の縁部の温度が中心部に比べて低くなる傾向がある。そこで、電源部30は、発光領域の縁部と中心部における放射熱の差が小さくなるように、端部に配置される赤外線ランプ(11,12)の電流を中心部に配置される赤外線ランプ(11,12)に比べて大きめに設定する。
【0037】
図1に戻り、ウェハ支持部2について説明する。
ウェハ支持部2の本体20には、その内部にウェハ5を収容する処理室21が設けられている。ウェハ5は、処理室21の内部においてウェハ支持具23により表面を上側に向けて支持されている。処理室21は、例えば図示しないポンプによって真空に近い状態に排気される。処理室21の上側には、熱源部1から放射された赤外線を透過する石英等の窓22が設けられている。窓22を介して透過した赤外線がウェハ5の表面に照射される。
【0038】
ここで、上述した構成を有する加熱装置の動作を説明する。
まず、ウェハ支持具23によりウェハ5を支持した状態で、処理室21を適度な真空度まで排気し、必要に応じて所定のガスを処理室21内に導入する。そして、気体流発生部19により排気を行いながら、電源部30から各赤外線ランプ(11,12)への電流供給を開始する。制御部(不図示)は、温度センサ(不図示)により測定されるウェハ5の温度に応じて電源部30を制御し、ウェハ5を所望の温度まで加熱する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る加熱装置では、複数の棒状の赤外線ランプ11が平面上に平行に配置され、この赤外線ランプ11が配置される平面と対向する平面上に複数の棒状の赤外線ランプ12が平行に配置される。そして、赤外線ランプ(11,12)が配置される平面に対して垂直な方向から見た平面視において、各赤外線ランプ(11,12)に含まれる複数の発熱部100が図4に示すような規則的なパターンで平面上に均一に分布している。微小な四角形の発熱ブロックB1を擬似的な点光源と見なせば、図4に示すパターンは点光源を格子状のパターンで配置したものと見なすことができる。
また、本実施形態に係る加熱装置では、1本の赤外線ランプにおいて複数の微小な発熱部100を直列に接続することにより、多数の微小な発光体が構成される。そのため、これと同様な微小な発光体をそれぞれ赤外線ランプで構成する場合に比べて、発光体同士の間隔をより短くすることが可能であり、発光体の配置密度を高めることができる。
従って、本実施形態に係る加熱装置によれば、微小な光源が均一なパターンで高密度に配置された面光源に近い光源を実現できる。これにより、ウェハ5の表面における放射熱の分布の均一性を確保しつつ、より高い温度でウェハ5を加熱することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る加熱装置によれば、平行に配置された2本の赤外線ランプ(11,12)が直列に接続されているため、赤外線ランプ(11,12)と電源部30との間の配線が半分になり、配線を大幅に簡略化できる。
【0041】
更に、本実施形態に係る加熱装置によれば、ウェハ5から離れている赤外線ランプ12の電流をウェハ5に近い赤外線ランプ11に比べて大きな値に設定している。これにより、ウェハ5における赤外線ランプ11と12の放射熱の差が小さくなるので、発熱ブロックB1(図4)のX方向とY方向における放射熱分布の差を低減し、ウェハ5における放射熱の面分布の均一性を更に高めることができる。
【0042】
加えて、本実施形態に係る加熱装置によれば、面状の配置において端部に位置する赤外線ランプ(11,12)の電流を、中間部に位置する赤外線ランプ(11,12)に比べて大きな値に設定している。これにより、外側へ熱が逃げやすいウェハ5の縁部と中央部との放射熱の差を小さくしているので、ウェハ5における放射熱の面分布の均一性をより一層高めることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る加熱装置によれば、発熱部100の規則的なパターン(図4)の中央部に面した基台100の表面に廃熱用通路の開口部H4が形成されており、廃熱用通路の先に設けられた気体流発生部19によって開口部H4から廃熱用通路に熱気が吸い込まれる。これにより、カバー17の孔H1から取り込まれた外部の空気が、固定部13,14の孔H2,H3を通り、反射板15と固定部13,14の隙間を抜けて、基台100の中央部の孔H4に吸い込まれる。従って、赤外線ランプ(11,12)で熱せられた空気を、比較的耐熱性の低い端子台16などの電線の接続部分へ流れ難くすることができるとともに、これらの部材を外部の空気によって冷却することができる。
【0044】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態に係る加熱装置では、平面上に配列される赤外線ランプ(11,12)が全て図3(B)に示すように2本ずつ直列接続されている。これに対し、本実施形態に係る加熱装置では、図6に示すように、面状の配置における端部の2本の赤外線ランプ(11,12)が直列に接続されておらず、それぞれ電源部30から独立に電流を供給される。
【0045】
上述した実施形態では、端部の2本の赤外線ランプ(11,12)が直列に接続されており、これらに共通の電流が流れるため、端部の2本の赤外線ランプ(11,12)において発光強度がほぼ等しくなる。これに対し、本実施形態では、端部の2本の赤外線ランプ(11,12)に独立の電流を供給し、それぞれの発光強度を独立に設定することができる。これにより、発光領域の端部における赤外線ランプ(11,12)の発光強度をより微妙に調節できるので、ウェハ5の端部における放射熱の面分布をより均一にすることができる。
【0046】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係る加熱装置における赤外線ランプの構造の一例を示す図である。第1の実施形態に係る加熱装置では、赤外線ランプ(11,12)に含まれる発熱部100が全て同じ長さを有しているが、本実施形態に係る加熱装置では、図7に示すように、発熱部100に比べて長い発熱部100Aが発熱部100の直列回路の両端部において直列に接続される。すなわち、端部の発熱部100Aが中間部の発熱部100に比べて長い。
【0047】
図8は、図7に示す赤外線ランプ(11,12)を図2に示すように交差して配置した場合の発熱部(100,100A)の分布パターンを示す図である。図8に示す分布パターンは、端部の発熱部100Aが中間部の発熱部100より長くなっていることから、図4に示す分布パターンに比べて、発光領域の縁における発光体(光源)の密度が高くなっている。
【0048】
従って、本実施形態に係る加熱装置によれば、発光領域の縁部における光の強度を相対的に高めることができるので、ウェハ5の縁部と中心部における放射熱の違いを低減して、温度分布をより均一にすることができる。
【0049】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態に係る加熱装置における赤外線ランプの構造の一例を示す図である。上述した実施形態に係る加熱装置では、直列接続された2本の赤外線ランプ(11,12)において、その長手方向における発熱部100の位置が互いに揃っているのに対して、本実施形態に係る加熱装置では、長手方向における発熱部100の位置が互いにずれている。このずれの長さは、図9の例において、発熱部100の間隔Lに対して約半分(L/2)になっている。
【0050】
また、図9に示す赤外線ランプ(11,12)では、両端部の発熱部100B,100Cが中間部の発熱部100に比べて長くなっている。発熱部100Bが最も長く、次いで発熱部100Cが長く、発熱部100が最も短い。発熱部100の直列回路において、一方の端部に発熱部100Bが接続され、他方の端部に発熱部100Cが接続される。2本の赤外線ランプ(11,12)は、発熱部100Bの端部と発熱部100Cの端部において直列接続される。
【0051】
図10,11は、図9に示す赤外線ランプ(11,12)を図2に示すように交差して配置した場合の発熱部(100,100B,100C)の分布パターンを示す図であり、それぞれ異なる分布パターンを示す。
図10に示す分布パターンでは、X方向に延びる赤外線ランプ11の発熱部100と、Y方向に延びる赤外線ランプ12の発熱部100とが直角に交差することによって、十字形状に形作られた発熱ブロックB2が複数形成されている。
他方、図11に示す分布パターンでは、縁の部分を除いて、赤外線ランプ11の発熱部100と赤外線ランプ12の発熱部100とが互いに交差しない。言い換えれば、赤外線ランプ11の発熱部100と赤外線ランプ12の導体線112とが互いに交差し、赤外線ランプ12の発熱部100と赤外線ランプ11の導体線112とが互いに交差する。
【0052】
このように、本実施形態に係る加熱装置においても、赤外線ランプ(11,12)が配設される平面と垂直な方向から見た平面視において、各赤外線ランプ(11,12)に含まれる複数の発熱部100が図10,図11に示すような規則的なパターンで密に分布する。そのため、上述した実施形態と同様に、ウェハ5の表面における放射熱の面分布の均一性を確保しつつ、より高い温度でウェハ5を加熱することができる。
【0053】
また、図10,11に示す分布パターンは、端部の発熱部100B,Cが中間部の発熱部100より長くなっていることから、発光領域の縁部における光の強度を相対的に高めることができるので、ウェハ5の縁部と中心部における放射熱の違いを低減して、温度分布をより均一にすることができる。
【0054】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
本実施形態に係る加熱装置では、放射熱の面分布がより均一になるように、熱源部1をウェハ支持部2に対して旋回運動させる。
【0055】
図12は、第5の実施形態に係る加熱装置の構成の一例を示す図である。
図12に示す加熱装置において、熱源部1はウェハ支持部2と分離されている。熱源部1の下面には、上述の実施形態において説明した赤外線ランプ(11,12)が面状に配設され、その四隅に球体のキャスター24が設けられている。この球体がウェハ支持部2の上面を転がることによって、ウェハ支持部2の上面を熱源部1が前後左右に(図のX軸方向及びY軸方向に)移動可能となっている。
【0056】
機構部4は、赤外線ランプ(11,12)が配設される平面と平行な平面において熱源部1を旋回させる。すなわち、機構部4は、所定の円軌道に沿って熱源部1を振動させる。この円軌道の直径は、例えば、図4等の発熱部100の分布パターンにおける発熱ブロック(「B1」等)の配置間隔Lの1/2倍から3/2倍程度に設定される。
【0057】
機構部4は、例えば図12に示すように、モータ41の回転運動に応じて熱源部1を旋回させる機構を備える。
モータ41は、円柱状の回転体43の中心軸に固定された軸42を回転する。軸42は、赤外線ランプ(11,12)が配設される平面に対して垂直な方向(Z軸方向)に延びている。回転体43の中心軸から所定の距離だけ離れた位置には、軸42と平行な軸44が固定される。軸44の他方の端部は、延長部材21Aと回動可能に連結される。延長部材21Aは、熱源部1の上面に固定されており、熱源部1と一体に運動する。
【0058】
摺動部材49とレール部材410は、Y軸と平行に熱源部1が直線運動するように熱源部1の軌道をガイドする機構(第1ガイド部)を構成する。
摺動部材49は、延長部材21Aを介して熱源部1と固定されており、その底部にレール部材410と嵌り合う溝が形成される。Y軸方向に延設されたレール部材410の上を、摺動部材49の溝が摺動する。
【0059】
摺動部材47A,47Bとレール部材48A,48Bは、熱源部1と第1ガイド部(49,410)とを合わせたブロック全体がX軸と平行に直線運動するように第1ガイド部(49,410)の軌道をガイドする機構(第2ガイド部)を構成する。
摺動部材47Aは、レール部材410の一方の端部に固定されており、その底部にレール部材48Aと嵌り合う溝が形成される。摺動部材47Aの溝が、X軸方向に延設されたレール部材48Aの上を摺動する。
摺動部材47Bは、レール部材410の他方の端部に固定されており、その底部にレール部材48Bと嵌り合う溝が形成される。摺動部材47Bの溝が、X軸方向に延設されたレール部材48Bの上を摺動する。
レール部材48A,48Bは、支持部3及びモータ41とともに不図示のベース台に固定されており、旋回運動する熱源部1に対して静止している。
【0060】
モータ41の駆動により回転体43が回転すると、軸44が軸42の周りを回転し、これに応じて、延長部材21に固定される熱源部1が旋回振動する。このとき、熱源部1の移動方向は、第1ガイド部(49,410)と第2ガイド部(47A,47B,48A,48B)によってX軸に平行な方向とY軸に平行な方向にガイドされているため、軸42や軸44を中心とした熱源部1の回転が生じないようになっている。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る加熱装置では、赤外線ランプ(11,12)が配設される平面と平行な平面において熱源部1が旋回振動することにより、図4に示すような規則的パターンで配置される発熱ブロックがウェハ5に対してそれぞれ旋回する。これにより、個々の発熱ブロックの加熱領域が実質的に拡大し、ウェハ5において放射熱を受ける面積が広がるため、放射熱の面分布の変化が緩やかになる。従って、熱源部1をウェハ5に対して固定する場合に比べて、放射熱の面分布の均一性を更に高めることができる。
また、放射熱の面分布の均一性を確保しつつ、赤外線ランプ(11,12)とウェハ5との距離を更に短くすることができるので、加熱温度を更に高温にすることが可能になる。
【0062】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0063】
上述した実施形態では2本の赤外線ランプを直列に接続する例が示されているが、本発明の他の実施形態では3本以上の赤外線ランプを直列に接続してもよい。
【0064】
図5に示す電源部30では、直列接続された赤外線ランプのペアに対してそれぞれ独立に電流を供給しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、複数ペアの赤外線ランプを並列に接続して電流を供給してもよい。
【0065】
図4における発熱ブロックB1は四角形に形作られているが、発熱部100の長さを更に長くすることによって発熱ブロックを井型形状にしてもよい。
【0066】
図1に示す加熱装置では、反射板15と固定部13,14との隙間を空気が流れるように構成されているが、本発明の他の実施形態では、反射板15に多数の微小な孔を設けて空気が流れるようにしてもよい。
【0067】
図1,図3の例では、赤外線ランプ(11,12)のチューブ121の断面が円形に形成されているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、隣接する赤外線ランプ同士の距離が更に短くなるように、チューブ121の断面を他の形状(例えば楕円形)に形成してもよい。あるいは、チューブ121の長手方向に平らな面を形成し、隣接する赤外線ランプのチューブ同士がこの平らな面で互いに接触(接合)するようにしてもよい。
【0068】
また、本発明の他の実施形態では、直角に交差する赤外線ランプ11と12の距離がより短くなるように、両者のチューブ121が接触する部分に平らな面を形成してもよい。あるいは、一方の赤外線ランプのチューブ121を断面円形とし、この断面円形のチューブ121がめり込むように他方の赤外線ランプのチューブ121に凹部を形成してもよい。
【0069】
図4,6,8,10,11に示す例では、直列接続された赤外線ランプのペア(11,12)の電源接続用端子(リード線116)を、赤外線ランプの長手方向の一方側(赤外線ランプ11は図の右側、赤外線ランプ12は図の上側)に揃えているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、長手方向の一方側に電源接続用端子が位置する赤外線ランプのペアと、長手方向の他方側に電源接続用端子が位置する赤外線ランプのペアとを、交互に配設してもよい。これにより、電源接続用端子同士の間隔が広がるので、赤外線ランプの端子付近における配線の密集・混雑を緩和できる。
【0070】
上述した第5の実施形態では熱源部1を振動させているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、被加熱物の支持部を振動させてもよいし、熱源部と支持部の両方を相対的に振動させてもよい。
【0071】
上述した実施形態では被加熱物として半導体のウェハを例に挙げているが、本発明は他の種々の物体を加熱する装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…熱源部、11,12…赤外線ランプ、100,100A〜100C…発熱部、112…導体線、114,116…リード線、125,126…固定部材、13,14…固定部、15…反射板、16…端子台、17…カバー、19…気体流発生部、2…ウェハ支持部、21…処理室、22…窓、23…ウェハ支持具、30…電源部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に平行に配設された複数の棒状の第1発熱体と、
前記複数の第1発熱体が配設される平面と対向する平面上に平行に配設され、前記第1発熱体と直角に交差する複数の棒状の第2発熱体と、
を備え、
前記第1発熱体及び前記第2発熱体は、長手方向に等間隔に配設され、電気的に直列に接続された複数の同一長さの発熱部をそれぞれ含んでおり、
前記複数の第1発熱体及び前記複数の第2発熱体をそれぞれの前記平面に対して垂直な方向から視た平面視において、前記発熱部が平面上に規則的なパターンで分布する、
加熱装置。
【請求項2】
前記平面視において、前記第1発熱体の前記発熱部と前記第2発熱体の前記発熱部とにより同一形状に形作られた発熱ブロックが複数形成されており、当該複数の発熱ブロックが規則的なパターンで配列される、
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記平面視において、隣り合った前記第1発熱体に属する2つの平行な前記発熱部と、隣り合った前記第2発熱体に属する2つの平行な前記発熱部とにより、四角形状若しくは井型形状に形作られた発熱ブロックが複数形成される、
又は、
前記平面視において、前記第1発熱体の1つの前記発熱部と前記第2発熱体の1つの前記発熱部とにより十字形状に形作られた発熱ブロックが複数形成される、
請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第1発熱体及び前記第2発熱体は、前記発熱部の直列回路の端部において更に直列に接続され、前記発熱部より長い端部発熱部を有する、
請求項2又は3に記載の加熱装置。
【請求項5】
隣接する前記第1発熱体の端部の電極同士を接続することにより、2以上の前記第1発熱体が直列に接続され、
かつ/又は、
隣接する前記第2発熱体の端部の電極同士を接続することにより、2以上の前記第2発熱体が直列に接続される、
請求項2乃至4の何れか一項に記載の加熱装置。
【請求項6】
平面上に配設された複数の前記第1発熱体のうち、両端の少なくとも1本の第1発熱体は他の第1発熱体と前記直列接続されておらず、
かつ/又は、
平面上に配設された複数の前記第2発熱体のうち、両端の少なくとも1本の第2発熱体は他の第2発熱体と前記直列接続されていない、
請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第1発熱体及び前記第2発熱体に流れる電流を供給する電源部であって、前記複数の第1発熱体のうち端部の少なくとも1本の第1発熱体には他の中間部の第1発熱体に比べて大きな電流を供給し、かつ/又は、前記複数の第2発熱体のうち端部の少なくとも1本の第2発熱体には他の中間部の第2発熱体に比べて大きな電流を供給する電源部を有する、
請求項2乃至6の何れか一項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1発熱体及び前記第2発熱体に流れる電流を供給する電源部であって、前記第1発熱体に比べて前記第2発熱体に大きな電流を供給する電源部を有し、
前記複数の第1発熱体が前記複数の第2発熱体に比べて被加熱物の近くに配設される、
請求項2乃至7の何れか一項に記載の加熱装置。
【請求項9】
被加熱物への熱が放射される側の反対側において前記複数の第1発熱体及び前記複数の第2発熱体を支持する支持台と、
前記平面視における前記発熱部の前記パターンの中央部に面した前記支持台の表面において開口する少なくとも1つの通路と、
前記開口部において前記発熱部からの熱気が吸い込まれるように前記通路における気体の流れを発生する気体流発生部と
を有する請求項2乃至8の何れか一項に記載の加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−68002(P2012−68002A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215659(P2010−215659)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000192383)アルバック理工株式会社 (26)
【Fターム(参考)】