説明

加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラム

【課題】利便性を向上させる事ができる加熱調理器、電磁誘導調理器を提供すること。
【解決手段】受け皿105に水があるか否かを判断する判断手段107と、上面加熱手段201を通電制御し、かつ、下面加熱手段202に一定電力で所定時間通電制御した後、通電有無の割合を一定の割合で制御するパルス幅変調で制御し、下面加熱手段202の温度を所定温度で安定させる制御手段108とを備え、制御手段108は、判断手段107が受け皿105に水があると判断した場合の下面加熱手段202への電力を、受け皿105に水が無いと判断した場合の下面加熱手段202への電力に比べて増大させるよう構成とし、水の有り無しに関わらず調理時間に差を生じさせずまたは少なくし、利便性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短時間で魚や肉などの被加熱物を加熱調理する加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、被加熱物からの油を受ける受け皿に水を入れて使用する加熱調理器と、受け皿に水を入れずに使用する加熱調理器がある。しかしながらユーザによっては水を入れて使用する加熱調理器に対して、手間を省いて水を入れずに使用する場合や、水を入れずに使用する加熱調理器に対して、被加熱物の油が加熱手段に当たり発煙または発火する事で調理性能が低下するのを防ぐため水を入れて使用する場合がある。このように受け皿に水を入れるか否かはユーザの嗜好にも左右されるという課題があり、この課題を解決する手段として受け皿に熱反射率の高い表面処理を行ったり、受け皿の冷却手段を備えたりする事で、水を入れるか否かに関わらず調理可能な加熱調理器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−177153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、水を入れるか否かに関わらず調理可能な加熱調理器の場合、水を入れるか否かによって調理時間に差がかなり生じ、利便性が損なわれるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、受け皿に水がある時には前記加熱手段への電力を増大させる事で、出力する熱量を増大させて調理時間に差を生じさせずまたは従来と比べ短くし、利便性を向上させる事ができる加熱調理器、電磁誘導調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、載置台の上に載せた被加熱物を収容する調理室と、前記被加熱物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記被加熱物の下面を通電加熱する下面加熱手段と、前記被加熱物からの油を受ける受け皿と、前記受け皿に水があるか否かを判断する判断手段と、前記上面加熱手段を通電制御し、かつ、前記下面加熱手段に一定電力で所定時間通電制御した後、通電有無の割合を一定の割合で制御するパルス幅変調で制御し、前記下面加熱手段の温度を所定温度で安定させる制御手段とを備え、前記制御手段は、前記受け皿の水の有無によって調理時間に差を生じさせないように、通電有無の割合を制御する事により、前記判断手段が前記受け皿に水があると判断した場合の前記下面加熱手段への電力を、前記受け皿に水が無いと判断した場合の前記下面加熱手段への電力に比べて増大させるよう構成している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱調理器、電磁誘導調理器およびそのプログラムは、受け皿に水がある時には、前記受け皿に水が無いと判断した場合の前記加熱手段への電力に比べて加熱手段への電力を増大させる事で、出力する熱量を増大させて調理時間に差を生じさせずまたは少なくして、利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器を概略的に示す構成説明図
【図2】本発明の実施の形態1における動作シーケンスを示す図
【図3】本発明の実施の形態2における加熱調理器を概略的に示す構成説明図
【図4】本発明の実施の形態2における動作シーケンスを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、載置台の上に載せた被加熱物を収容する調理室と、前記被加熱物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記被加熱物の下面を通電加熱する下面加熱手段と、前記被加熱物からの油を受ける受け皿と、前記受け皿に水があるか否かを判断する判断手段と、前記上面加熱手段を通電制御し、かつ、前記下面加熱手段に一定電力で所定時間通電制御した後、通電有無の割合を一定の割合で制御するパルス幅変調で制御し、前記下面加熱手段の温度を所定温度で安定させる制御手段とを備え、前記制御手段は、前記受け皿の水の有無によって調理時間に差を生じさせないように、通電有無の割合を制御する事により、前記判断手段が前記受け皿に水があると判断した場合の前記下面加熱手段への電力を、前記受け皿に水が無いと判断した場合の前記下面加熱手段への電力に比べて増大させるよう構成している。
【0010】
これによって本発明は、受け皿に水がある時には前記加熱手段への電力を増大させる事で、出力する熱量を増大させて調理時間に差を生じさせず、または従来と比べ短くし、利便性を向上させる事ができる。
【0011】
また、電力の制御にパルス幅変調を用いる事で、位相制御で発生するノイズによる誤作動などの危険性が無い。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明において、判断手段は、前記受け皿の温度を検出する受け皿温度検出手段を備え、前記加熱手段へ通電開始後、判定可能時間経過後の前記受け皿温度検出手段の検出した温度が所定度以下の場合は、前記受け皿に水があると判断するよう構成している。
【0013】
これによって本発明は、受け皿の温度検出によって容易に水ありか否かを判断できる。また温度検出にサーミスタ等の小型の機器を用いる事で調理室を圧迫する事無く構成が可能である。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記判断手段は、前記調理時間が終了するまで前記受け皿に水があるか否かの判断を繰り返し、前記受け皿に入っていた水が無くなったと判断した場合には、前記制御手段は、通電有無の割合を制御し、前記下面加熱手段への電力を、前記受け皿に水があると判断した場合の電力から、前記受け皿に水が無いと判断した場合の電力に変更するよう構成している。
【0015】
これによって本発明は、調理の開始前は水を入れていたのにも関わらず、調理中に水が蒸発する等して水が無くなった場合であっても水無し用電力に変更する事で、調理時間に差を生じさせず、または従来と比べ短くし、利便性を向上させる事ができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の加熱調理器を搭載した電磁誘導調理器を提供するものである。
【0017】
これによって本発明は、フライパンや鍋などを加熱調理する電磁誘導調理器において焼き網を使う焼き魚などのメニューが調理可能となり家庭内での調理の幅を広くする事がで
きる。
【0018】
第5の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、加熱調理器または電磁誘導調理器の少なくとも1つをコンピュータに実行させるためのプログラムを提供するものである。
【0019】
そして、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバ等のハードリソースを協働させて本発明の加熱調理器の少なくとも一部を容易に実現することができる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における加熱調理器について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本、本発明の実施の形態1における加熱調理器を概略的に示す構成説明図である。
【0023】
図1は、調理対象である被加熱物101、被加熱物101を載せる載置台102、載置台102の上に載せた被加熱物101を収容する調理室103、被加熱物101を通電加熱する加熱手段104、被加熱物101からの油を受ける受け皿105、受け皿105の温度を検出する温度検出手段106、温度検出手段106が検出した温度より受け皿105に水があるか否かを判断する判断手段107、加熱手段104への電力を制御する制御手段108で構成している。
【0024】
なお、載置台102には焼き網を、調理室103には金属製箱を、加熱手段104にはシーズヒータを、受け皿105には金属皿を、温度検出手段106にはサーミスタを、判断手段107、制御手段108にはマイクロコンピュータを用いる事でこの構成を容易に実現できる。
【0025】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0026】
図2は本発明の実施の形態1における動作シーケンスを示す図である。
【0027】
ユーザは被加熱物101を載置台102の上に載置し、調理室103の中に入れた後、調理開始手段(図は省略)を用いて調理開始操作を行う(S101)。調理開始操作を受け付けると制御手段108は加熱手段104へ通電し加熱する(S102)。
【0028】
受け皿105の温度を用いて受け皿105に水があるか否かの判断を行うには、受け皿105あるいは受け皿105の水が十分熱を吸収し、水があるか否かによって受け皿105の温度に差が出る事で判定が可能になる判定可能時間(例えば1分間)を経過するまで加熱手段104により加熱を続ける必要がある。前記判定可能時間を予め制御手段108に記憶させておき、経過するまで加熱手段104の加熱通電を続ける(S103)。
【0029】
その後に温度検出手段106により受け皿105の温度を検出する(S104)。ここで、受け皿105に水を入れずに判定可能時間経過まで加熱手段104により加熱した場合の受け皿105の判断温度(例えば50℃)を予め制御手段108に記憶させておく。
そして、S104で検出した温度が前記判断温度以上であれば水無しと判断し、前記判断温度未満であれば水有りと判断する(S105)。
【0030】
水無しと判断した場合、加熱手段104への電力を制御手段108が記憶する水無し用電力に変更し通電加熱する(S106)。また水有りと判断した場合、加熱手段104への電力を制御手段108が記憶する水有り用電力に変更し通電加熱する(S107)。前記水有り用電力を前記水無し用電力に比べ増大させ、調理時間が同値になるよう予め制御手段108に記憶しておく。または、同値でなくても調理時間の差を従来に比べ小さくできるように予め制御手段108に記憶しておく。
【0031】
その後、予め制御手段108が記憶する調理終了時間を経過したかの判定を行い(S108)、経過するまでの間S104からS107を繰り返す。これにより、調理の開始前は水有りだったが、調理中に水が蒸発して無くなった場合であっても水無し用電力に変更する事で、調理時間に差を生じさせないか、または差を小さくする。
【0032】
その後、調理終了時間を経過すると調理を終了する(S109)。
【0033】
また、前記判断温度は被加熱物101が熱を吸収する事を考慮して、調理メニュー毎に所定温度減算するよう構成してもよい。これにより、調理メニュー毎に厳密に水があるか否かの判定を行う事が可能となる。
【0034】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における加熱調理器について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図3は本発明の実施の形態2における加熱調理器を概略的に示す構成説明図である。
【0036】
図3は、被加熱物101の上面を加熱する上面加熱手段201、被加熱物101の下面を加熱する下面加熱手段202で構成している。他の手段については実施の形態1と同じなので詳細な説明は省く。
【0037】
なお、上面加熱手段201、下面加熱手段202にはシーズヒータを用いる事でこの構成を容易に実現できる。
【0038】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0039】
図4は本発明の実施の形態2における動作シーケンスを示す図である。
【0040】
ユーザは被加熱物101を載置台102の上に載置し調理室103の中に入れた後、調理開始手段(図は省略)を用いて調理開始操作を行う(S201)。調理開始操作を受け付けると制御手段108は上面加熱手段201と下面加熱手段202へ通電し加熱する(S202)。
【0041】
受け皿105の温度を用いて受け皿105に水があるか否かの判断を行うには、受け皿105あるいは受け皿105の水が十分熱を吸収し、水があるか否かによって受け皿105の温度に差が出る事で判定が可能になる判定可能時間(例えば1分間)を経過するまで上面加熱手段201と下面加熱手段202により加熱を続ける必要がある。前記判定可能時間を予め制御手段108に記憶させておき、経過するまで上面加熱手段201と下面加熱手段202の加熱通電を続ける(S203)。
【0042】
その後に温度検出手段106により受け皿105の温度を検出する(S204)。ここで、受け皿105に水を入れずに判定可能時間経過まで加熱手段104により加熱した場合の受け皿105の判断温度(例えば50℃)を予め制御手段108に記憶させておく。そして、S104で検出した温度が前記判断温度以上であれば水無しと判断し、前記判断温度未満であれば水有りと判断する(S205)。
【0043】
受け皿105の水の有無で調理性能に差が現れるのは受け皿105に近い被加熱物101の下面である。また、調理開始から2〜4分経過すると被加熱物101から油が出始め、下面加熱手段202が高温(例えば550℃)で当たると発火し調理性能が落ちる可能性がある。
【0044】
そこで、発火の可能性が低くかつ調理性能を落とす事の無い温度(例えば450℃〜500℃)で下面加熱手段202が安定するパルス幅変調による通電有無の時間の割合を予め制御手段108に記憶しておく。この割合が下面加熱手段202への電力と比例する事になる。また、この時、水有り用電力(通電有無の割合)を前記水無し用電力(通電有無の割合)に比べ増大させ、調理時間が同値になるよう制御手段108に記憶しておく。
【0045】
下面加熱手段を、発火の可能性が低くかつ調理性能を落とす事の無い温度(例えば450℃〜500℃)となるまで一定電力で所定時間通電制御した後、当該温度で安定するように、予め制御手段108に記憶していたパルス幅変調による通電有無の時間の割合で、通電制御する。
【0046】
そして、水無しと判断した場合、下面加熱手段202への電力を制御手段108が記憶する水無し用電力に変更し通電加熱する(S206)。また水有りと判断した場合、下面加熱手段202への電力を制御手段108が記憶する水有り用電力に変更し通電加熱する(S207)。または、同値でなくても調理時間の差を従来に比べ小さくできるように予め制御手段108に記憶しておく。
【0047】
その後、予め制御手段108が記憶する調理終了時間を経過したかの判定を行い(S208)、経過するまでの間S204からS207を繰り返す。これにより、調理の開始前は水有りだったが、調理中に水が蒸発して無くなった場合であっても水無し用電力に変更する事で、調理時間に差を生じさせないか、または差を小さくする。
【0048】
その後、調理終了時間を経過すると調理を終了する(S209)。
【0049】
なお、本実施の形態で説明した手段は、CPU(またはマイクロコンピュータ)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバ等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録したりインターネットなどの通信回線を用いて配信したりすることで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0050】
なお、実施の形態1または2に記載の加熱調理器を電磁誘導調理器に搭載してもよい。
【0051】
また、判断手段は受け皿の温度を検出する受け皿温度検出手段を備え、受け皿温度検出手段の検出した温度が所定度以下の場合は前記受け皿に水があると判断することとしたが、これに限られず、受け皿に水があるか否かを判断することができれば他の判断手段であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の加熱調理器、電磁誘導調理器とそのプログラムは受け皿に水がある時には前記加熱手段への電力を増大させる事で、出力する熱量を増大させて調理時間に差を生じさせず、利便性を向上させる事ができる。この動作をパルス幅変調で制御せず、位相制御等により加熱手段への電力を制御する事でも構成にも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
101 被加熱物
102 載置台
103 調理室
104 加熱手段
105 受け皿
107 判断手段
108 制御手段
201 上面加熱手段
202 下面加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台の上に載せた被加熱物を収容する調理室と、前記被加熱物の上面を加熱する上面加熱手段と、前記被加熱物の下面を通電加熱する下面加熱手段と、前記被加熱物からの油を受ける受け皿と、前記受け皿に水があるか否かを判断する判断手段と、前記上面加熱手段を通電制御し、かつ、前記下面加熱手段に一定電力で所定時間通電制御した後、通電有無の割合を一定の割合で制御するパルス幅変調で制御し、前記下面加熱手段の温度を所定温度で安定させる制御手段とを備え、前記制御手段は、前記受け皿の水の有無によって調理時間に差を生じさせないように、通電有無の割合を制御する事により、前記判断手段が前記受け皿に水があると判断した場合の前記下面加熱手段への電力を、前記受け皿に水が無いと判断した場合の前記下面加熱手段への電力に比べて増大させる事を特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記判断手段は、前記受け皿の温度を検出する受け皿温度検出手段を備え、前記加熱手段へ通電開始後、判定可能時間経過後の前記受け皿温度検出手段の検出した温度が所定度以下の場合は、前記受け皿に水があると判断する事を特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記判断手段は、前記調理時間が終了するまで前記受け皿に水があるか否かの判断を繰り返し、前記受け皿に入っていた水が無くなったと判断した場合には、前記制御手段は、通電有無の割合を制御し、前記下面加熱手段への電力を、前記受け皿に水があると判断した場合の電力から、前記受け皿に水が無いと判断した場合の電力に変更する事を特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱調理器を搭載した電磁誘導調理器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱調理器の少なくとも1つをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−75274(P2011−75274A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275325(P2010−275325)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【分割の表示】特願2006−154262(P2006−154262)の分割
【原出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】