説明

加熱調理器具

【課題】調理器具であるマイクロ波発熱シートにおいて、食品の両面焼きを可能とするとともに、耐久性、安全性の向上を図り、繰り返しの使用を可能にする。
【解決手段】キュリー温度が200〜300℃の範囲の金属酸化物よりなるフェライト粉末20と、フェライト粉末20のキュリー温度以上の耐熱性を有するバインダーと、非粘着性材料からなる混合体13からなるマイクロ波発熱シート17に、食品22を固定する食品固定手段を設けた構成とすることにより、食品22の両面焼きによる調理性能を向上させるとともに、フェライト粉末20のキュリー温度を利用して300℃以上の過昇温を防止することにより、構成材料の劣化や破損を防止し、耐久性、安全性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジを用いて食品を調理する加熱調理器具に関し、加熱調理器具が照射されたマイクロ波エネルギーを吸収することによって発生した熱を利用して調理器具の表面温度を高温にし、食品を短時間で調理可能とするマイクロ波発熱シートからなる加熱調理器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジのマイクロ波を利用して、魚や肉などの食品を加熱調理する調理シートが開発または実用化されている。これらの調理シートは、マイクロ波を吸収して発熱する機能を有し、この発生した熱によって食品を焼き上げるものであり、グリルヒータなどの加熱源を必要とせず、マイクロ波の照射のみでグリル調理ができるようになっている。
【0003】
従来、この種の調理シートは、図23、図24に示されるような構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記従来の技術について、図面を参照して説明する。図23は、特許文献1に記載された従来のマイクロ波発熱体が設けられた調理シートの平面図、図24は、特許文献1に記載された従来のマイクロ波発熱体が設けられた調理シートの詳細な構造を示すものであり、図23で示した調理シートのA−A部における要部断面図である。
【0005】
図23、図24に示すように、調理シート1は、支持体2と、支持体2の表面にマイクロ波発熱体3が配置され、さらに支持体2とマイクロ波発熱体3との上にはプラスチックフィルム4が配置されて構成されている。
【0006】
プラスチックフィルム4として、ポリエチレンテレフタレートなどが用いられ、このプラスチックフィルム4にアルミニウムなどの金属を蒸着することによって薄膜の金属層からなるマイクロ波発熱体3を形成し、これを紙などからなる支持体2と貼り合わせて調理シート1が製造される。
【0007】
この調理シート1に魚や餅などの食品を載置し、電子レンジの加熱室に入れてマイクロ波を照射すると、調理シート1に設けているマイクロ波発熱体3がマイクロ波を吸収し発熱する。発熱作用によって調理シート1の温度が高くなると、調理シート1のマイクロ波発熱体3の部分と接触している食品が熱伝導により加熱され、焦げ目が付いて調理される。
【0008】
この調理シート1が一つの場合は、食品の片面しか焼けないが、調理シート1を複数用いることにより食品全体を焼くことができるものである。
【0009】
図25は、特許文献2に記載された他の従来のマイクロ波発熱体が設けられた調理シートの要部断面図である。
【0010】
図26に示すように、調理シート5は、ポリエステルなどのプラスチックフィルム6に酸化スズインジウムなどの導電膜を蒸着して形成したマイクロ波発熱体7を紙などの補強材8に接着して構成され、さらにマイクロ波発熱体7のない側の補強材8には食品の調理中に発生する臭いを除去する脱臭剤含有層9が形成されている。
【0011】
図26は、図25で示した調理シート5を食品が内包されて調理するように袋状に加工
した調理袋の斜視図である。
【0012】
図26に示すように、調理袋は、調理シート5のプラスチックフィルム6を内側にしてヒートシールによって作製される。
【0013】
この調理袋の中に食品を配置し、電子レンジの加熱室に入れてマイクロ波を照射すると、食品が加熱調理されるものであり、この調理袋を用いた場合は、食品の両面に焦げ面をつけることができる。
【0014】
図27は、特許文献3に記載された他の従来のマイクロ波発熱体が設けられた調理シートの平面図である。
【0015】
図27に示すように、調理シート10は、第1のマイクロ波発熱体11が形成された第1の支持体12と、第2のマイクロ波発熱体13が形成された第2の支持体14と、第1の支持体12と第2の支持体14を連結する連結体15で構成されており、食品を調理する際には、第1のマイクロ波発熱体11と第2のマイクロ波発熱体13が内側となるように折り曲げるための折り目16が設けられている。
【0016】
なお、第1、第2のマイクロ波発熱体11、13の第1、第2の支持体12、14と反対側の表面には、プラスチックフィルムを設けている(図示せず)。
【0017】
この調理シート10を構成する第1、第2のマイクロ波発熱体11,13のどちらか一方の面に食品を配置し、他方の面が連結体15に設けられている折り目16にそって折り曲げることによって食品の上側を覆った状態とし、これを電子レンジの加熱室に入れてマイクロ波を照射することにより、食品が加熱調理される。
【0018】
この構成においても特許文献2と同様に、食品の上下が第1、第2のマイクロ波発熱体11、13によって加熱されるため、食品の両面に焦げ面をつけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2011−89719号公報
【特許文献2】実公平5−23145号公報
【特許文献3】特開2011−11044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来の調理用シートに用いられているマイクロ波発熱体は、金属層もしくは金属酸化物の導電層であり、マイクロ波を照射し続けると、マイクロ波発熱体がマイクロ波を吸収し続けるものである。
【0021】
この場合、調理シートに食品が配置され、食品とマイクロ波発熱体の部分が接触状態であれば、マイクロ波を照射しても食品の熱容量にマイクロ波発熱体の温度は適度な温度上昇となるが、食品と接触していない部分、あるいは人為的なミスによって食品を配置しないでマイクロ波を照射すると、マイクロ発熱体は高温になり、調理シートに用いているプラスチック材料や紙が熱によって劣化することによる機械的強度の低下や、調理用シートの溶損などが発生し、繰り返しの使用が出来なくなる、調理性能が低下するなどの可能性を有する。
【0022】
また、調理シートに用いられている食品と接触するプラスチックフィルムは、非粘着性
が劣り、食品の表面層の一部がプラスチックシートに強固に付着するため、調理シートを洗剤などで洗浄しても完全に除去することが困難であり、再使用すると所定の調理性能が得られなくなる可能性があるとともに、強固に接着した付着物を無理やり除去すると、調理シートが破損し、再使用できなくなるという課題を有していた。
【0023】
また、食品が付着した調理シートを保管することは衛生面で好ましくなく、長期の保管ができないため、使い捨てになるという課題を有している。
【0024】
また、特許文献2、特許文献3の調理シートは、食品の両面を同時に調理できる利点を有するが、いずれも上述のごとく、繰り返しの使用ができないという課題を有する。
【0025】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、食品の両面加熱を可能とし、かつ調理器具の過昇温の防止と高い防汚性を実現し、耐久性、安全性、衛生性に優れ、長期間の再使用が可能である加熱調理器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の加熱調理器具は、キュリー温度が200〜300℃の範囲の金属酸化物よりなるフェライト粉末と、前記フェライト粉末のキュリー温度以上の耐熱性を有するバインダーと、前記フェライト粉末、及び前記バインダーから構成され、可撓性を有するマイクロ波発熱シートであって、食品が前記マイクロ波発熱シートに内包され、前記マイクロ波発熱シートに広い面積で接触するように内包された状態を維持し、前記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部が固定される食品固定手段を設けた構成としている。
【0027】
これによって、マイクロ波発熱シートが優れた可撓性を有しているので、食品を覆うように湾曲させることができるとともに、マイクロ波発熱シートの端部を固定することによって食品とマイクロ波発熱シートが接触した状態を維持させることができるので、食品の両面を加熱調理することが可能となり、調理の途中で食品を裏返ししなくても食品全体を加熱調理することができる。
【0028】
また、キュリー温度が300℃以下の金属酸化物のフェライト粉末は、マイクロ波の吸収によって発熱するが、キュリー温度近傍になるとマイクロ波の吸収率が低下し、発熱しなくなるので食品が配置されていない状態や、食品と接触していない箇所が存在しても300℃以上の過昇温が防止され、加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの劣化や破損を防止することができる。
【0029】
また、マイクロ波発熱シートは、非粘着性材料を含有させているので、食品がマイクロ波発熱シートへの強固な付着を少なくすることができるとともに、付着しても食品との接着力が弱いため、洗浄によって容易に除去することが可能で、清潔な状態を維持することができ、衛生的である。
【0030】
さらに、加熱調理器具のマイクロ波発熱シートに補強材料を含有させることにより、引っ張りや屈曲などの機械的強度を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の加熱調理器具は、加熱調理器具を構成する材料の耐熱温度以上の昇温を防止することができるので加熱調理器具の劣化や破損を防止することができ、高い耐久性、安全性を実現することができるとともに、加熱調理器具への食品の付着の抑制や、付着した食品を容易に洗浄除去することができるので長期間の再利用が可能である。
【0032】
また、マイクロ波発熱シートが食品全体を覆うことができるので、調理の途中で食品を裏返ししなくても食品全体を加熱調理することができ、調理時間の短縮や食品の乾燥防止など優れた調理性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの平面図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの図1のB−B部の要部断面図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの上面図および底面図
【図4】本発明の実施の形態1における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの図3のC−C部およびD−D部における断面図
【図5】本発明の実施の形態1における加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの他の形状例としての平面図
【図6】本発明の実施の形態2における加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの図5のE−E部における要部断面図
【図7】本発明の実施の形態3における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの平面図
【図8】本発明の実施の形態3における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの図7のH−H部とI−I部およびJ−J部における断面図
【図9】本発明の実施の形態3における加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの食品固定手段である突起部及び突起係止部の要部拡大図
【図10】本発明の実施の形態4における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの平面図
【図11】本発明の実施の形態4における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの図10のK−K部における断面図
【図12】本発明の実施の形態5における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの平面図
【図13】本発明の実施の形態5における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの図12のL−L部とM−M部における断面図
【図14】本発明の実施の形態5における加熱調理器具を構成する切り込み部の位置と数を示すマイクロ波発熱シートの平面図
【図15】本発明の実施の形態6における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの平面図
【図16】本発明の実施の形態6における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの図15のN−N部とO−O部における断面図
【図17】本発明の実施の形態6における加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの食品固定手段である狭持部の構成を示す斜視図および図15のN−N部とO−O部における要部断面図
【図18】本発明の実施の形態7における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの平面図
【図19】本発明の実施の形態7における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの図18のP−P部における断面図
【図20】本発明の実施の形態7における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの平面図
【図21】本発明の実施の形態7における加熱調理器具を構成する食品を固定した状態を示すマイクロ波発熱シートの図20のQ−Q部とR−R部における断面図
【図22】本発明の実施の形態8における加熱調理器具を構成する立体加工部が設けられたマイクロ波発熱シートの斜視図
【図23】従来の調理シートの平面図
【図24】従来の調理シートの図23のA−A部の断面図
【図25】従来の他の調理シートの要部断面図
【図26】従来の他の調理シートからなる調理袋の斜視図
【図27】従来の他の調理シートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
第1の発明は、キュリー温度が200〜300℃の範囲の金属酸化物よりなるフェライト粉末と、前記フェライト粉末のキュリー温度以上の耐熱性を有するバインダーと、前記フェライト粉末及び前記バインダーから構成され、可撓性を有するマイクロ波発熱シートであって、食品が前記マイクロ波発熱シートに内包され、前記マイクロ波発熱シートに広い面積で接触するように内包された状態を維持し、前記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部が固定される食品固定手段を設けた構成とすることにより、マイクロ波発熱シートの優れた可撓性によって食品を覆うように湾曲させることができるとともに、マイクロ波発熱シートの端部を固定することによって食品とマイクロ波発熱シートが接触した状態を維持させることができるので、食品の両面を加熱調理することが可能となり、調理の途中で食品を裏返ししなくても食品全体を加熱調理することができ、調理時間の短縮や食品の乾燥防止など優れた調理性能を実現することができる。
【0035】
また、フェライト粉末がキュリー温度に近づくとマイクロ波による発熱作用が無くなり、300℃以上の過昇温が防止され、加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの劣化や破損を防止することができ、耐久性、安全性に優れた加熱調理器具を実現することができる。
【0036】
また、加熱調理器具のマイクロ波発熱シートに補強材料を含有させることにより、引っ張りや屈曲などの機械的強度をさらに高めることができ、加熱調理器具としての耐久性を一層向上させることができる。
【0037】
第2の発明は、特に、第1の発明の食品固定手段をマイクロ波発熱シートの端部に設けられた少なくとも1つの差込代と、前記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の前記差込代が設けられた端部と対向する他端部に少なくとも1つの前記差込代が挿入される開口部を設けた構成とすることにより、食品を内包する作業を簡単に行うことができるとともに、食品固定手段がマイクロ波発熱シートと一体となっているので固定のための部材を用いる必要がなく、利便性、簡便性、コスト力に優れている。
【0038】
第3の発明は、特に、第1の発明の食品固定手段をマイクロ波発熱シートの端部に設けられた少なくとも一つの突起部と、前記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の前記突起部が設けられた端部と対向する他端部に少なくとも一つの前記突起部が挿入される突起係止部を設けた構成とすることによりマイクロ波発熱シートの端部と他端部を確実に固定することが可能となり、調理中に食品固定手段が外れ、食品上部の調理ができなくなるといったリスクを回避することができるとともに、第2の発明の効果と同様に、食品固定手段がマイクロ波発熱シートと一体となっているので固定のための部材を用いる必要が無く、利便性、簡便性、コスト力に優れている。
【0039】
第4の発明は、特に、第1の発明の食品固定手段をマイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部を重ね合わせた状態で、前記端部と前記他端部とを接着材で接着する構成とすることにより、第3の発明と同様な作用と効果を得ることができる。
【0040】
第5の発明は、特に、第1の発明の食品固定手段を、マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部の少なくとも一方に設けられた切り込み部を構成し、前
記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の前記切り込み部を前記対向する端部もしくは他端部の少なくとも一方に係合させる構成としたことにより、第2の発明と同様な作用と効果を得ることができる。
【0041】
第6の発明は、特に、第1の発明の食品固定手段を、マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部を重ね合わせた状態で、前記端部と前記他端部とを挟持する挟持部で構成されるにより、マイクロ波発熱シートの端部と他端部を確実に固定することができ、調理中に食品固定手段が外れ、食品上部の調理ができなくなるというリスクを回避することができる。
【0042】
第7の発明は、特に、第6の発明の狭持部を、マイクロ波透過材料で構成することにより、マイクロ波の吸収による発熱を回避することができるため、耐久性の高い食品固定手段を実現することができる。
【0043】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明のキュリー温度が200〜300℃の範囲の金属酸化物よりなるフェライト粉末として、鉄、マンガン、亜鉛の複合金属酸化物を用いることにより、マイクロ波の吸収率を高くすることができるので、発熱性能に優れたマイクロ波発熱シートからなる加熱調理器具を実現することができる。
【0044】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの発明のフェライト粉末のキュリー温度以上の耐熱性を有するバインダーとして、架橋されたシリコーンゴムを含む材料を用いることにより、可撓性を損なわずフェライト粉末の含有量を多くすることができるとともに耐熱性を高くすることができ、加熱調理器具としての耐久性や発熱性能を向上させることができる。
【0045】
第10の発明は、特に、第1〜9のいずれか1つの発明のマイクロ波発熱シートが、非粘着性材料を含有される構成とすることで、食品の付着を抑制し、食品の付着力を低下させるため、洗浄によって付着した食品を容易に除去することができ、常に清潔な状態を維持することが可能となるため、長期間再利用できる。
【0046】
第11の発明は、特に、第10の発明の非粘着性材料が、フッ素樹脂を含む材料とすることにより、フッ素樹脂の持つ優れた撥水、撥油の性質を利用することができるため、マイクロ波発熱シートの非粘着性を高くすることができ、食品の付着に対する優れた防汚性、付着した食品の除去性能を実現することができ、加熱調理器としての繰り返し使用の期間を大幅に伸ばすことできる。
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の各実施の形態特有の構成を適宜組み合わせることができる。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0048】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シートの平面図である。
【0049】
図1において、本実施の形態1の加熱調理器具は、マイクロ波発熱シート17で構成され、マイクロ波発熱シート17の端部に差込代18が形成され、マイクロ波発熱シート17を折り曲げた際、この差込代18を設けた端部に対向する他端には開口部19が設けられている。
【0050】
本実施の形態1の食品固定手段は、マイクロ波発熱シート17の中央近傍を湾曲させ、
差込代18を開口部19の穴に通すことによって実現される。
【0051】
図2は、マイクロ波発熱シート17の詳細な構造を示すものであり、図1のB−B部における要部断面図を示すものである。
【0052】
図2において、加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シート17は、マイクロ波を吸収して発熱するフェライト粉末20と、バインダーと非粘着材料の混合体21(バインダーと非粘着材料は固体粒子ではないので明確に区別できない)を含む組成であり、フェライト粉末20は、バインダーと非粘着性材料の混合体21の中に均一に分散した状態となっている。なお、必要に応じて分散剤やゴムの老化防止剤、酸化防止剤などが添加される。
【0053】
フェライト粉末20は、マイクロ波を吸収して発熱する作用を有するが、ある温度以上になると、強磁性体が常磁性体に転移することによってフェライト粉末20の自発磁化が消失し、マイクロ波を吸収しなくなる。強磁性体が常磁性体に転移する温度をキュリー温度という。
【0054】
通常、ハンバーグや魚などの高温を必要とする食品の調理温度は、200℃前後であり、本発明で適用されるフェライト粉末20のキュリー温度は、200℃の調理温度以上であることが望ましい。
【0055】
一方、マイクロ波発熱シート17は、食品を内包させマイクロ波発熱シート17に設けられた差込代18と開口部19で食品固定手段を構成するために可撓性が必要であり、これを実現するためには、有機化合物からなるバインダーとフェライト粉末20との複合組成物とする必要がある。
【0056】
有機化合物からなるバインダーの耐熱性は、高いもので300℃であり、300℃以上に温度が上昇すると、有機化合物からなるバインダーの熱分解が起こり、耐久性が低下するという問題が発生する。
【0057】
以上のことから、マイクロ波発熱シート17は、発熱性能と耐久性を両立する温度範囲で使用される必要があり、これを達成するためのフェライト粉末20のキュリー温度は、200〜300℃の範囲であることが望ましい。
【0058】
また、本実施の形態1で用いられるフェライト粉末20は、特に、主成分が鉄、マンガン、亜鉛の複合金属酸化物であるMn−Zn系フェライトが好適である。
【0059】
Mn−Zn系フェライトは、磁束密度が高く、磁性損失が大きいのでマイクロ波の吸収率を高くすることができるため、このMn−Zn系のフェライト粉末20を含有させたマイクロ波発熱シート17は、昇温速度を速くすることができ、優れた発熱性能を実現することができる。
【0060】
マイクロ波発熱シート17に用いられるフェライト粉末20のキュリー温度以上の耐熱性を有するバインダーとしては、シリコーンゴムやフッ素ゴムが挙げられる。
【0061】
中でもシリコーンゴムは、フェライト粉末20との分散性に優れ、フェライト粉末20を多量に含有させることができるのでマイクロ波による発熱性能を高くすることができ、発熱性能に優れたマイクロ波発熱シート17を実現することができる。
【0062】
また、フェライト粉末20の含有量が多くてもシリコーンゴムとの馴染みがよいので、
優れた可撓性と高い引張強度を維持することができるのでマイクロ波発熱シート17を強い力で擦ったり、落下させても容易に破損することはない。
【0063】
また、シリコーンゴムを架橋剤によって架橋させることにより、高い耐熱性や優れた耐化学薬品性を発現させることができるので、耐久性、信頼性の高いマイクロ波発熱シート17からなる加熱調理器具を実現することができる。
【0064】
非粘着性材料としては、フッ素樹脂が有用である。フッ素樹脂は耐熱性が高く、撥水性、撥油性に優れているため、フッ素樹脂をマイクロ波発熱シート17に含有させることにより、マイクロ波発熱シート17の非粘着性を高くすることができ、調理中の食品の付着を抑制するとともに、食品が付着しても付着力を弱める作用を有するので付着した食品を洗浄によって容易に除去することができる。
【0065】
したがって、マイクロ波発熱シート17を加熱調理器具として常に清潔で衛生な状態を保つことができるので、再利用(繰り返し使用)の期間を大幅に伸ばすことできる。
【0066】
次に、本実施の形態1のマイクロ波発熱シート17からなる加熱調理器具の製造方法の一例について述べる。
【0067】
オープンロールやニーダーなどの混練加工装置を用い、所定の配合量のフェライト粉末20と、フェライト粉末20のキュリー温度以上の耐熱性を有するバインダーとして選択したシリコーンゴムと、非粘着材料として選択したフッ素樹脂が均一に分散するまで混練し、その後、架橋剤を添加し、再度混練する。
【0068】
なお、混練の際にマイクロ波発熱シート17の耐熱性を向上させるための耐熱性剤、老化防止剤や、柔軟性を付与するための油脂剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0069】
混練された組成物の固まり、もしくはオープンロールでシート状に分出したものを必要量採取し、ホットプレスで一次架橋処理を兼ねた加圧成形を行う。その後、ホットプレスからシート状の成形体を取り出し、二次架橋処理を行うことによってマイクロ波発熱シート17が製造され、所定の大きさに加工される。
【0070】
このマイクロ波発熱シート17は、図1に示すように、マイクロ波発熱シート17の端部の一部を加工し、差込代18を形成し、さらに、マイクロ波発熱シート17を折り曲げた際に、差込代18を有する端部と対向する他端部の一部に差込代18が挿入できる大きさの開口部19を形成することによって加熱調理器具が得られる。
【0071】
なお、マイクロ波発熱シート17に形成される差込代18と開口部19の形成は、二次架橋処理後に行っているが、一次架橋処理を兼ねた加圧成形時に用いる金型を加工し、差込代18と開口部19が形成してもよく、また、加圧成形後(二次架橋処理前)に切り取りにより形成してもよい。
【0072】
次に、電子レンジを用い、マイクロ波発熱シート17からなる加熱調理器具の動作と作用について説明する。
【0073】
図3(a)は、図1、図2で示したマイクロ波発熱シート17に食品を配置し、食品を覆うように湾曲させ、マイクロ波発熱シート17に形成されている差込代18と開口部19に挿入することにより、食品を固定した状態を示す上面図である。
【0074】
また、図3(b)は、図3(a)と同様に、図1、図2で示したマイクロ波発熱シート
17に食品を配置し、食品を覆うように湾曲させ、マイクロ波発熱シート17に形成されている差込代18と開口部19に挿入することにより、食品を固定した状態を示す底面図である。
【0075】
図4(a)は、食品が配置された状態を示し、図3(a)のC−C部における断面図を示すものである。図4(b)は、食品が配置された状態を示し、図3(a)のD−D部における断面図を示すものである。
【0076】
図3、図4において、魚やハンバーグなどの食品22は、マイクロ波発熱シート17の表面に配置され、食品22を内包するようにマイクロ波発熱シート17を湾曲させ、マイクロ波発熱シート17に形成されている差込代18を開口部19に挿入されて固定されている。食品22は、その両面がマイクロ波発熱シート17と接触した状態にあり、この状態はマイクロ波発熱シート17の優れた可撓性によって実現されるものである。
【0077】
なお、マイクロ波発熱シート17の折り曲げ方として、マイクロ波発熱シート17の対角線に沿って折り曲げる方法もあり、その場合においても端部と対向する他端部に差込代18と開口部19を設けることで食品を固定することが可能であり図3のような折り方をした場合と同様な効果が得られる。
【0078】
図5は差込代18と開口部19の数を増やした形態の一つであり、マイクロ波発熱シート23を、食品22を内包するように湾曲させた際の、端部と対向する他端部に一端面辺りに複数の差込代18と開口部19を設けたものを表している。
【0079】
図5において、マイクロ波発熱シート17が折り曲げられた際の端部と他端部において、差込代18と開口部19の数を増やすことにより、食品22とマイクロ波発熱シート17の接触する面積をふやすことができ、調理時間の短縮効果が見込まれる。図5は具体例の一つに過ぎず、実際には一端面の差込代18と開口部19の数を増やすだけではなく、全端面での数を多くすることにより、調理中に何らかの原因により開口部19から差込代18が抜けた場合でも、多くの開口部19と差込代18によって固定されているため、何箇所かが外れた場合においても、食品22がマイクロ波発熱シート17との接触から開放されにくくなり調理の失敗を減らすことができる。
【0080】
食品22を固定したマイクロ波発熱シート17からなる加熱調理器具を電子レンジの加熱室に配置し、開閉扉を閉めた状態で電子レンジ加熱の指示操作を行うと、加熱室内にマイクロ波が照射される。照射されたマイクロ波は、マイクロ波発熱シート17に含有するフェライト粉末20が吸収して熱に変換し、変換された熱によってマイクロ波発熱シート17全体が高温に加熱され、載置している食品が加熱調理される。
【0081】
加熱調理器具は、マイクロ波発熱シート17のみで構成しているので、軽量であることにより熱容量を小さくすることができるため、マイクロ波発熱シート17の昇温が速く、短時間で調理温度に到達させることが可能となり、食品22の調理時間を大幅に短縮することができ、優れた省エネ効果を実現することができる。
【0082】
また、調理時間を短縮できることによって、食品22の乾燥を抑制することができ、ジューシーさ、おいしさの向上など優れた調理性能を実現することができる。
【0083】
また、マイクロ波発熱シート17が優れた可撓性を有しているので、食品22を覆うように湾曲させることができるとともに、マイクロ波発熱シート17の両端を固定することによって、食品22とマイクロ波発熱シート17が接触した状態を維持させることができるので、食品22の両面を加熱調理することが可能となり、調理の途中で食品22を裏返
ししなくても食品22の全体を加熱調理することができ、調理時間のさらなる短縮や、食品22の乾燥防止など優れた調理性能を実現することができる。
【0084】
さらに、マイクロ波発熱シート17自体に食品固定手段を設けることにより、食品を内包する作業を簡単に行うことができるとともに、食品固定手段がマイクロ波発熱シート17と一体化されているので固定のための別部材を用意する必要がなく、利便性、簡便性、コスト力に優れている。
【0085】
マイクロ波発熱シート17の食品と接触していない部分は、接触している箇所より、温度が高くなる。しかし、マイクロ波発熱シート17に用いているフェライト粉末20は、キュリー温度近傍に昇温すると強磁性体が常磁性体に転移し、自発磁化が消失し、マイクロ波を吸収しなくなる。
【0086】
したがって、マイクロ波発熱シート17に、200〜300℃のキュリー温度を有するフェライト粉末20を含有させることにより、300℃以上の過昇温が防止され、バインダーであるシリコーンゴムや非粘着性材料をフッ素樹脂などの劣化が防止されるため、マイクロ波発熱シート17の破損や溶損が無くなり、加熱調理器具としての耐久性を向上させることができる。
【0087】
フェライト粉末20は、キュリー温度以上でマイクロ波を吸収しなくなるが、温度が下がると、フェライト粉末20に自発磁化が現れるため、磁束密度、透磁率、磁性損失が大きくなり、マイクロ波を吸収し、発熱するようになる。
【0088】
以上のことから、フェライト粉末20を含有するマイクロ波発熱シート17は、材料自身が自己温度制御の機能を有するため、マイクロ波発熱シート17の温度を検知してマイクロ波電力を制御して過昇温を防止するという安全装置を用いなくとも安全を確保することができる。
【0089】
また、安全装置を必要としないため、マイクロ波を照射する電子レンジに複雑な電子制御・制御デバイスが不要となり、すべての電子レンジで使用することができ、汎用性の高い加熱調理器具を提供することができる。
【0090】
フェライト粉末20としては、加熱調理器具であるマイクロ波発熱シート17を所定の温度に飽和させるために、磁性損失以外の発熱作用が無いフェライト材料、もしくは所定の飽和温度を変化させない程度の発熱作用を有するフェライト材料であることが好ましい。
【0091】
また、フェライト粉末20としては、Mn−Zn系フェライトの他に、Mg−Zn系、Ni−Zn系のフェライトが挙げられ、本発明の目的を達成できる磁性特性、キュリー温度であれば適用できる。
【0092】
本実施の形態の加熱調理器具であるマイクロ波発熱シート17は、膜厚が厚くなると可撓性が低下することにより、耐衝撃性や引張強度が低下し、膜厚が薄くなるとフェライト粉末20の量が少なくなり、マイクロ波の吸収量が低下して昇温速度が遅くなる。
【0093】
キュリー温度が200〜300℃のフェライト粉末20を用いる、すなわち、マイクロ波発熱シート17の飽和温度を200〜300℃とする場合には、上記の課題を解決するためのマイクロ波発熱シート17の膜厚は0.7〜2mmであることが望ましい。
【0094】
また、高い調理温度を得るために、マイクロ波発熱シート17の飽和温度を260〜3
00℃とした場合、マイクロ波発熱シート17のマイクロ波エネルギーの吸収量と放熱量のバランス幅が狭くなるため、マイクロ波発熱シート17の膜厚は1.0〜1.5mmの範囲が適している。
【0095】
また、フェライト粉末20のバインダーに対する含有量は、多くなると可撓性が低下し、耐衝撃性や引張強度が低下し、含有量が少なくなるとフェライト粉末20のマイクロ波の吸収量が低下して昇温速度が遅くなる。
【0096】
マイクロ波発熱シート17の飽和温度を200〜300℃とする場合には、上記の課題を解決するためのフェライト粉末20の含有量は60〜80重量%が適している。
【0097】
また、高い調理温度を得るために、マイクロ波発熱シート17の飽和温度を260〜300℃とした場合、マイクロ波発熱シート17のマイクロ波エネルギーの吸収量と放熱量のバランス幅が狭くなるため、フェライト粉末20の含有量は65〜80重量%の範囲が適している。
【0098】
(実施の形態2)
図6は、本発明の第2の実施の形態におけるマイクロ波発熱シートの詳細な構造を示すものであり、図5のD−D部における要部断面図を示すものである。
【0099】
図6において、実施の形態1のマイクロ波発熱シートと異なる点は、マイクロ波を吸収して発熱するフェライト粉末と、バインダーと、非粘着材料とからなる組成に、補強材料を加えてマイクロ波発熱シートを構成した点であり、図中、実施の形態1と同一材料は同じ符号を付している。
【0100】
図6において、加熱調理器具を構成するマイクロ波発熱シート23は、マイクロ波を吸収して発熱するフェライト粉末20と、バインダーと非粘着材料の混合体21(バインダーと非粘着材料は固体粒子ではないので明確に区別できない)を含む組成に、補強材料26が添加されており、フェライト粉末20と、補強材料26は、バインダーと非粘着性材料の混合体21の中に均一に分散した状態となっている。なお、必要に応じて分散剤やゴムの老化防止剤、酸化防止剤などが添加される。
【0101】
また、実施の形態1で述べたマイクロ波発熱シート17は、食品を内包し、食品とマイクロ波発熱シート17を接触させるときや調理後の洗浄の際に、抗張力が加えられることがある。このような力が加えられると、マイクロ波発熱シート17は、破れや亀裂が入るなどの破損が発生する可能性を有する。
【0102】
補強材料26を添加したマイクロ波発熱シート23は、実施の形態1のマイクロ波発熱シート17よりも機械的強度を向上させ、外力が加わってもシートの破損を防止できるようにしたものである。
【0103】
補強材料26は、繊維状の形状を有し、これをマイクロ波発熱シート23の中に分散させることにより、バインダーとの接着力を向上させることができるため、マイクロ波発熱シート23の抗張力を高くすることができ、機械的強度を一層向上させることができる。
【0104】
補強材料26としては、繊維状の300℃以上の耐熱性を有する材料がよく、アルミナ、シリカなどのセラミック繊維、ガラス繊維が好適である。
【0105】
これらの補強材料26の含有量は、多くなると可撓性が著しく低下するため、可撓性を維持するために5〜30重量%であることが望ましい。
【0106】
(実施の形態3)
図7(a)は本発明の第3の実施の形態を示すもので、食品をマイクロ波発熱シートに配置し、食品を覆うように湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シートの端部と対向する他端部に設けられた突起部と突起係止部により、食品を固定した状態を示す平面図である。また、図7(b)は本発明の第3の実施の形態を示すもので、マイクロ波発熱シートの端部と他端部とが重なり合うように巻いた状態において端部及び対向する他端部に設けられた突起部と突起係止部により、食品を固定した場合における平面図である。
【0107】
図8(a)は図7(a)の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのH−H部における断面図を示すものである。図8(b)は図7(a)の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのI−I部における断面図を示すものである。図8(c)は図7(b)の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのJ−J部における断面図を示すものである。図9(a)〜図9(d)は、図8(a)〜図8(c)の突起部と突起係止部の拡大図である。
【0108】
実施の形態1及び2と異なる点は、マイクロ波発熱シート23の食品固定手段として、マイクロ波発熱シート23を加工し、突起部と突起係止部を設けた点であり、図中、実施の形態1〜2と同一材料には同じ符号を付している。
【0109】
図7(a)、図7(b)、図8(a)〜図8(c)において、魚やハンバーグなどの食品22は、マイクロ波発熱シート23の表面に配置され、食品22を内包するようにマイクロ波発熱シート23を湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シート23の端部と対向する他端部が重なり合った部分にマイクロ波発熱シート23自体を形状加工した突起部27と突起係止部28を設けることで食品が固定されている。食品22はマイクロ波発熱シート23に両面で接触するように内包される状態であり、これはマイクロ波発熱シート23の可撓性により実現される。
【0110】
突起部27と突起係止部28により、マイクロ波発熱シート23が強固に固定されることにより、食品22が容易にマイクロ波発熱シート23との接触から開放されないように、固定することが可能である。
【0111】
また、食品固定手段としてマイクロ波発熱シート23自体を加工した突起部27と突起係止部を用いるため、別部材などを用いる必要が無いため、利便性や簡便性に優れている。
【0112】
さらに、固定手段の小型化が容易なため、よりコンパクトに食品を固定することが可能となり、収納性、簡便性に優れる。また、図9に示すように、突起部27及び突起係止部28の形状には、図9(a)のように、凹部と凸部を結合することにより、マイクロ波発熱シート23を固定する方法や、図9(b)のように、突起係止部28を穴形状とし、突起部27を挿入して固定する方法、図9(c)のように、突起部27を突起係止部28に引っ掛けるようにして固定する方法、図9(d)のように、突起部27及び突起係止部28を鉤爪状に組み合わせ固定する方法などの形状がある。
【0113】
なお、突起部27及び突起係止部28の形状は、図9に示した形状に限定されることはなく、矩形状、多角形形状、円形状、楕円形状や動物などをかたどった複雑な形状であっても良い。さらに、突起部27及び突起係止部28は、複数個設けてもよいし、マイクロ波発熱シート23の両端の重ね合わせた部位の全域を挟持する構成でもよい。
【0114】
(実施の形態4)
図10は、本発明の第4の実施の形態を示すもので、マイクロ波発熱シートを湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シートの両端を重ね合わせ、重ね合わせた部位を接着した状態を示す平面図である。
【0115】
図11は、図10の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのK−K部における断面図を示すものである。
【0116】
実施の形態1および実施の形態3と異なる点は、マイクロ波発熱シート23の食品固定手段として、接着による方法を用いた点であり、図中、実施の形態1〜3と同一材料は同じ符号を付している。
【0117】
図10、図11において、マイクロ波発熱シート23の固定手段は、予め食品22を内包するようにマイクロ波発熱シート23を湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シート23の一端と、この一端と対向する他端の一部を重ね合わせ、この重ね合わせた部位の接触側の面を接着剤や熱融着により接着した接着部29を設けている。
【0118】
魚やハンバーグなどの食品22は、両端に接着部29が形成されたマイクロ波発熱シート23の中に、食品22の両面がマイクロ波発熱シート23と接触した状態となるように配置される。
【0119】
この構成によって、マイクロ波発熱シート23の一端と他端を確実に固定することができ、調理中に食品固定手段である接着部29が外れ、食品22の上部の調理ができなくなるというリスクを回避することができる。
【0120】
本実施の形態では、マイクロ波発熱シートの一端と他端を重ね合わせた全領域に接着部29を設けているが、部分的に接着しても同様な効果を得ることができる。
【0121】
接着部29に適用される接着剤としては、耐熱性が必要であることから、シリコーン系が挙げられる。
【0122】
接着部29は、熱融着による方法も適用できる。この熱融着は、マイクロ波発熱シート23の重ね合わせた部位をヒートシールすることによって実現される。
【0123】
(実施の形態5)
図12は、本発明の第5の実施の形態を示すもので、食品をマイクロ波発熱シートに配置し、食品を覆うように湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シートの端部に食品固定手段として切り込み部を設け、対向する両端部を切り込み部により固定した状態を示す平面図である。
【0124】
図13(a)は図12の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのL−L部における断面図を示すものである。図13(b)は、図12の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのM−M部における断面図を示すものである。
【0125】
実施の形態1、実施の形態3及び実施の形態4と異なる点は、マイクロ波発熱シート23の食品固定手段として、マイクロ波発熱シート23自体に突起部や開口部などを設けることなく、切り込み部30を設けたことである。図中、実施の形態1〜4と同一材料は同じ符号を付している。
【0126】
図12、図13(a)、図13(b)において、魚やハンバーグなどの食品22は、マイクロ波発熱シート23の表面に配置され、食品22を内包するようにマイクロ波発熱シ
ート23を湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シート23の端部と、対向する他端部のどちらか一方に切り込み部30を設けることで、切り込み部30に端部を係合することにより、食品が固定される。これはマイクロ波発熱シート23の優れた可撓性により実現される。
【0127】
切り込み部30と端部との係合により、マイクロ波発熱シート23が固定されることにより、食品22が容易にマイクロ波発熱シート23との接触から開放されないように、固定することが可能である。
【0128】
また、切り込み部30を設けるために必要なマイクロ波発熱シート23への加工は、切断加工のみとなり、その他の形状加工の手間がかからないため、簡便性、コスト力に優れる。
【0129】
図14(a)〜図14(f)において、マイクロ波発熱シート23に対して、切り込み部30を入れる位置や形状についての具体例を挙げる。
【0130】
図14(a)において、マイクロ波発熱シート23の一方の端部に2本の切り込み部30を平行に設けている。さらに、図14(b)は、図14(a)と同様の位置に対して、マイクロ波発熱シート23の端部に2本の切り込み部30を平行ではないように設けている。なお、切り込み部30の数は2本に限定されず、1本でも3本以上であってもよい。
【0131】
また、図14(c)、図14(d)のように、向かい合った端面に切り込み部30を設けてもよい。なお、マイクロ波発熱シート23を、食品を内包するように湾曲させた際、食品の上面側のマイクロ波発熱シート23と下面側のマイクロ波発熱シート23のどちらに切り込み部を設けてもよいし、両方に設けてもよい。また、折り曲げ位置31は、マイクロ波発熱シート23の対角線上でもよい。
【0132】
(実施の形態6)
図15は、本発明の第6の実施の形態を示すもので、食品をマイクロ波発熱シートに配置し、食品を覆うように湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シートの両端を重ね合わせ、重ね合わせた部位を食品固定手段で挟持した状態を示す平面図である。図16(a)は、図15の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのN−N部における断面図を示すものである。図16(b)は、図15の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのO−O部における断面図を示すものである。
【0133】
実施の形態1、実施の形態3、実施の形態4及び実施の形態5と異なる点は、マイクロ波発熱シート23の食品固定手段として、別部材を用いた点であり、図中、実施の形態1〜5と同一材料は同じ符号を付している。
【0134】
図15、図16(a)、図16(b)において、魚やハンバーグなどの食品22は、マイクロ波発熱シート23の表面に配置され、食品22を内包するようにマイクロ波発熱シート23を湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シート23の端部と、この端部と対向する他端部の一部を重ね合わせた部位を設け、この重ね合わせた部位をマイクロ波透過材料からなる狭持部32で挟持し固定されている。
【0135】
食品22は、その両面がマイクロ波発熱シート23と接触した状態にあり、この状態はマイクロ波発熱シート23の優れた可撓性によって実現されるものである。
【0136】
図17(a)は、狭持部32の具体的な構成を示すもので、狭持部32を分解した斜視図である。図17(b)、図17(c)は、狭持部32の具体的な構成を示すもので、図
16(a)、図16(b)の狭持部32の部分を拡大した図である。
【0137】
図17(a)において、狭持部32は、円筒状の突起部を有する狭持部32aと、円筒状の孔を有する狭持部32bとから構成され、食品はマイクロ波発熱シート23の重ね合わせた部位を狭持部32aと狭持部32bで挟み込み、狭持部32aの円筒状の突起部が狭持部32bの円筒の孔に挿入して固定される。
【0138】
図17(b)において、狭持部32cは、マイクロ波発熱シート23の重ね合わせた部分を挟み込むように、貫通して固定する部材であり、貫通穴はあらかじめ開けられていても、この部材により設けられてもよい。
【0139】
図17(c)において、狭持部32dは、マイクロ波発熱シート23の重ね合わせた部分を、貫通穴などを設けることなく、挟み込んで固定する。
【0140】
この構成によって、マイクロ波発熱シート23の一端と他端を確実に固定することができ、調理中に食品固定手段である狭持部32が外れ、食品22の上部の調理ができなくなるというリスクを回避することができる。
【0141】
また、食品固定手段である狭持部32の材料は、マイクロ波を透過する材料を用いることにより、狭持部32のマイクロ波の吸収による発熱を回避することができるので、異常加熱による溶損などの破損が防止され、耐久性の高い食品固定手段を実現することができる。
【0142】
狭持部32として適用されるマイクロ波を透過する材料としては、アルミナ、シリカなどのセラミック材料やポリエーテルサルホン樹脂など耐熱性の高いエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0143】
本実施の形態では、狭持部32を構成する狭持部32aとして円筒状の突起部、狭持部32bとして円筒状の孔を設けているが、これに限定されるものではなく、方形や矩形の突起部と孔の組み合わせでもよい。
【0144】
また、狭持部32aの突起部を狭持部32bの孔への挿入を容易にするために、マイクロ波発熱シート23の両端の重ね合わせた部位の狭持部32が取り付けられる位置に、予め穴を開けておいてもよい。
【0145】
また、狭持部32を凹形状とし、凹部にマイクロ波発熱シート23の両端の重ね合わせた部位を挿入して固定しても同様な作用と用効果を実現することができる。
【0146】
さらに、狭持部32は、複数個設けてもよいし、マイクロ波発熱シート23の両端の重ね合わせた部位の全域を挟持する構成でもよい。
【0147】
(実施の形態7)
図18、図20は、本発明の第7の実施の形態を示すもので、食品をマイクロ波発熱シートに配置し、食品を覆うように湾曲させ、湾曲させたマイクロ波発熱シートの両端を重ね合わせ、重ね合わせた部位を固定させた平面図である。図19は、図18の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのP−P部における断面図を示すものである。図21(a)は、図20の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのQ−Q部における断面図を示すものである。図21(b)は、図20の食品が配置された状態のマイクロ波発熱シートのR−R部における断面図を示すものである。
【0148】
実施の形態1〜6と異なる点は、マイクロ波発熱シート23の食品固定手段として、別部材を用いないこと及び突起部、開口部などの形状加工を行わないことである。図中、実施の形態1〜6と同一材料は同じ符号を付している。
【0149】
図18及び図19において、マイクロ波発熱シート23を、食品22を内包するように湾曲させ、端部と対向する他端部を重ね合わせた状態で、重ね合わせた部分を食品の直下に配置する。食品の直下に配置することにより、食品22の自重により重ねあわされた部分が固定され、食品22をマイクロ波発熱シート23の内部に接触する状態で固定可能である。
【0150】
図20及び図21において、マイクロ波発熱シート23を、食品22を内包するように湾曲させ、端部と対向する他端部を重ね合わせた状態で、折り曲げ部33を設けることで、食品を固定することができる。これはマイクロ波発熱シート23の優れた可撓性によって実現されるものである。また、別部材および形状加工の必要が無いことから、コスト力、簡便性に優れる。
【0151】
(実施の形態8)
図22は本発明の第8の実施の形態を示すもので、マイクロ波発熱シートに立体加工を施したものの斜視図である。実施の形態1〜7と異なる点はマイクロ波発熱シート23の端部とマイクロ波発熱シート23を折り曲げた際が食品を内包するように折り曲げた際の他端部以外に立体加工を施した点である。図中、実施の形態1〜7と同一材料は同じ符号を付している。
【0152】
図22において、立体加工部35のような立体加工を施したことにより、より食品を載置する際に安定した状態で固定できる。またここでの立体加工はマイクロ波発熱シート23の優れた可撓性によって実現できる。マイクロ波発熱シート23の特性により、食品の良好な調理性能の確保や繰り返し使用が可能、簡便性、コスト力に優れるといった効果が得られる。なお、ここでの食品固定部34には、実施の形態1及び実施の形態3〜7で述べた食品固定手段のいずれを用いても良い。
【0153】
なお、実施の形態1〜8で述べたマイクロ波発熱シートにおいて、マイクロ波発熱シートを手で持つ部位が高温にならないように、例えばマイクロ波発熱シートの一部にフェライト粉末を含まないシートを融着するか、耐熱性部材を取り付けることにより、マイクロ波発熱シートを安全に調理機器から取り出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
以上詳細に説明してきたように、本発明にかかる加熱調理器具であるマイクロ波発熱シートは、マイクロ波のみの照射によってグリル調理を可能とすることができるので、ユーザーがすでに購入しているグリル機能を持たない電子レンジ等のマイクロ波加熱装置に適用可能であるとともに、乾燥機など調理機器以外のマイクロ波加熱機器のヒータとしても適用可能である。
【符号の説明】
【0155】
17、23 マイクロ波発熱シート
18 差込代
19 開口部
20 フェライト粉末
21 バインダーと非粘着性材料の混合体
22 食品
26 補強材料
27 突起部
28 突起係止部
29 接着部
30 切り込み部
31 折り曲げ位置
32 狭持部
33 折り曲げ部
34 食品固定部
35 立体加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュリー温度が200〜300℃の範囲の金属酸化物よりなるフェライト粉末と、
前記フェライト粉末のキュリー温度以上の耐熱性を有するバインダーと、
前記フェライト粉末、及び前記バインダーから構成され、可撓性を有するマイクロ波発熱シートであって、
食品が前記マイクロ波発熱シートに内包され、前記マイクロ波発熱シートに広い面積で接触するように内包された状態を維持し、前記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部が固定される食品固定手段を設けてなる加熱調理器具。
【請求項2】
食品固定手段が、マイクロ波発熱シートの端部に設けられた少なくとも1つの差込代と、前記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の前記差込代が設けられた端部と対向する他端部に少なくとも1つの前記差込代が挿入される開口部を設けて構成される請求項1に記載の加熱調理器具。
【請求項3】
食品固定手段が、マイクロ波発熱シートの端部に設けられた少なくとも一つの突起部と、前記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の前記突起部が設けられた端部と対向する他端部に少なくとも一つの前記突起部が挿入される突起係止部を設けて構成される請求項1に記載の加熱調理器具。
【請求項4】
食品固定手段が、マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部を重ね合わせた状態で、前記端部と前記他端部とを接着材で接着する構成とした請求項1に記載の加熱調理器具。
【請求項5】
食品固定手段が、マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部の少なくとも一方に設けられた切り込み部を構成し、前記マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の前記切り込み部を前記対向する端部もしくは他端部の少なくとも一方に係合させる構成とした請求項1記載の加熱調理器具。
【請求項6】
食品固定手段が、マイクロ波発熱シートが折り曲げられた際の端部と対向する他端部を重ね合わせた状態で、前記端部と前記他端部とを挟持する挟持部で構成される請求項1に記載の加熱調理器具。
【請求項7】
挟持部が、マイクロ波透過材料で構成される請求項6に記載の加熱調理器具。
【請求項8】
キュリー温度が200〜300℃の範囲の金属酸化物よりなるフェライト粉末が、鉄、マンガン、亜鉛の複合金属酸化物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱調理器具。
【請求項9】
フェライト粉末のキュリー温度以上の耐熱性を有するバインダーが、架橋されたシリコーンゴムを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱調理器具。
【請求項10】
マイクロ波発熱シートが、非粘着性材料を含有して構成される請求項1〜9のいずれかに一項に記載の加熱調理器具。
【請求項11】
非粘着性材料が、フッ素樹脂を含む請求項10に記載の加熱調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−106753(P2013−106753A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253489(P2011−253489)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】