説明

加熱調理器及び炊飯器

【課題】米粒をアルデンテの状態にし、米粒の周囲の炊飯液に溶け込んだデンプンによって形成されたとろみによって米粒表面を覆われた米飯、すなわちリゾットを簡単に美味しく調理することができる炊飯器等の加熱調理器を提供する。
【解決手段】リゾットの炊飯工程は、強火1工程(ステップS1)、強火2工程(ステップS2)及び弱火工程(ステップS3)によって構成されており、強火2工程は、加熱コイル3が過熱されない程度の大きさの電力をインバーター部22から間欠的に供給され、強い沸騰状態を維持することによって、被加熱物における米粒の表層部のデンプンの糊化をさらに進め、この強い沸騰状態によって被加熱部を対流させ、また、この対流によって糊化した米粒の表層部の一部が炊飯液に溶出してとろみを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭等で用いられる加熱調理器及び炊飯器に関し、特に、リゾットを調理する機能を有する加熱調理器及び炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭での加熱調理器等による調理方法が多様化し、例えば、炊飯器においては、生米を炊き干し法によって炊き上げたいわゆる「ごはん」のみならず、おかゆ、雑炊、又は、リゾット等を調理するものがあり、ごはん以外の調理を行うことへのニーズが高まっている。
このような、ごはん以外のものを調理する加熱調理器として、ごはんのみならず雑炊及びリゾット等も調理対象とし、焦げが発生しないように調理できるように鍋温度検知手段及び蓋温度検知手段を備えた電気炊飯器がある(特許文献1参照)。
また、ごはんを調理する機能に加え、残飯等を雑炊として調理するため雑炊炊飯の加熱工程を有する炊飯器がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−433号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2001−292895号公報(第7頁、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る電気炊飯器において示されるクッキングコースによって雑炊及びリゾットの調理が可能であると説明されているが、リゾットのような水分の多い被加熱物を調理する場合、図示されているように強火工程で被加熱物を沸騰させた後、全体を均一な温度にするための弱火工程に移行すると、米粒全体の吸水及び糊化が進むため、米粒に芯がわずかに残るいわゆるアルデンテの状態に米粒の硬さを調節することが困難であり、おじや又はおかゆのように米粒全体が軟らかくなってふやけた状態になり、リゾットとしては食感が悪くなってしまうという問題があった。
また、特許文献2に係る炊飯器においては、調理対象を雑炊としており、図示されている雑炊炊飯の加熱工程によって、リゾットを調理することはできないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、米粒をアルデンテの状態にし、米粒の周囲の炊飯液に溶け込んだデンプンによって形成されたとろみによって米粒表面を覆われた米飯、すなわちリゾットを簡単に美味しく調理することができる炊飯器等の加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、本体と、該本体に載置され、被加熱物が投入される鍋状容器と、該鍋状容器の開口部を覆う蓋と、前記本体内部、かつ、前記鍋状容器の下方に設けられ、前記鍋状容器及び該鍋状容器内の前記被加熱物を加熱する加熱手段と、前記鍋状容器内の前記被加熱物の沸騰状態を検知する沸騰検知手段と、前記加熱手段を駆動制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記加熱手段によって前記鍋状容器を加熱させ、前記被加熱物としてリゾットを調理する炊飯工程を実施し、該炊飯工程は、該炊飯工程の最初の工程であり、前記沸騰検知手段によって前記被加熱物の沸騰を検知し、前記被加熱物における米粒の表層部が糊化し、その糊化した前記表層部が前記米粒内部への吸水を抑制する強火1工程と、前記加熱手段により所定時間、前記被加熱物を加熱することによって、前記被加熱物の沸騰状態を維持し、前記米粒の表層部の糊化を進行させつつ、前記被加熱物に対流を発生させ、前記被加熱物における炊飯液に前記米粒の表層部からデンプンを溶出させて前記炊飯液にとろみを形成する強火2工程と、前記被加熱物が前記鍋状容器に焦げ付かない程度の前記強火1工程及び前記強火2工程よりも弱い加熱力で前記加熱手段により所定時間、前記被加熱物を加熱することによって、前記米粒をアルデンテの状態に仕上げる弱火工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る加熱調理器によれば、米粒の中心部への吸水を抑制してわずかに芯を残したアルデンテの状態にし、さらにその米粒の表層がふやけないようにリゾットして最適な硬さになるように加熱することで、簡単においしいリゾットを調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の内部回路構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る炊飯器に備えられている操作/表示部15の正面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る炊飯器によってリゾットを調理する場合の炊飯工程の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1に係る炊飯器における白米のリゾットの調理中の炊飯器の内部温度及び釜底温度の推移、並びに、加熱コイル3に印加する電力を示す図である。
【図6】白米と玄米との炊飯液に対するデンプンの溶出量を比較するグラフである。
【図7】本発明の実施の形態1に係る炊飯器における白米と玄米との混米のリゾットの調理中の炊飯器の内部温度及び釜底温度の推移、並びに、加熱コイル3に印加する電力を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る炊飯器における白米と発芽玄米との混米のリゾットの調理中の炊飯器の内部温度及び釜底温度の推移、並びに、加熱コイル3に印加する電力を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る炊飯器によってごはん及び炊きこみごはんを調理する場合の炊飯工程の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2に係る炊飯器に備えられている操作/表示部15の正面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る炊飯器によってリゾットを調理する場合における鍋状容器5への具材の投入状態を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る炊飯器における調理ソースを加えた白米リゾットの調理中の炊飯器の内部温度及び釜底温度の推移、並びに、加熱コイル3に印加する電力を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る炊飯器において流動性の低い調理コースを投入した場合及び流動性の高い調理ソースを投入した場合における、強火2工程及び弱火工程の加熱時間の合計とその加熱後の米粒の硬さの関係を示した図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る炊飯器によってリゾットを調理する場合の炊飯工程の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態4に係る炊飯器によってリゾットを調理する場合の炊飯工程、保温工程及び再加熱工程の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態5に係る誘導加熱調理器の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
(炊飯器の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の断面図である。
図1で示されるように、本体1には、容器カバー2が内装固着されている。その容器カバー2の外壁部には複数の誘導加熱用の加熱コイル3が設置されている。この加熱コイル3は、容器カバー2の底面の外壁部に設けられた第1加熱コイル3a、及び、容器カバー2の底面のコーナー部に設けられた第2加熱コイル3bによって構成されている。なお、上記のように加熱コイル3は、第1加熱コイル3a及び第2加熱コイル3bによって構成されるものとしたが、加熱コイルの数及びその配置はこれに限定されるものではない。この第1加熱コイル3a及び第2加熱コイル3bは、それぞれコイルがスパイラル状に旋回され直列に接続されている。
なお、加熱コイル3は、本発明の「加熱手段」に相当するものである。
【0010】
容器カバー2の底面中央部を貫通して形成された孔部に、鍋底温度センサー4が挿通して設けられており、圧縮バネ4aによって下方から支持されている。また、容器カバー2には、鍋状容器5が着脱自在に収納され、その底面中央部の外壁には、鍋底温度センサー4が接触しており、圧縮バネ4aによって上方に向かって付勢されている。また、容器カバー2の上方のフランジ部には、例えば、3箇所凸状に形成された支持部材6が備えられており、鍋状容器5のフランジ部5aが、この支持部材6によって係止されている。また、鍋状容器5の上面開口部を覆うように内蓋7が設置されており、この内蓋7をさらに上方から覆うように、内蓋7の上面周辺部に取り付けられた係止材8を介して外蓋9が設置されている。この外蓋9及び内蓋7は一体となって、本体1におけるヒンジ部(図示せず)を介して回動自在に支持され、自在に開閉が可能となっている。この開閉状態を検知するために、外蓋9の周縁部に近接する本体1の上端部には、外蓋開閉センサー10が設置されている。また、内蓋7上面には、蓋ヒーター11が、当接しており、この内蓋7及び外蓋9によって挟持されて支持されている。この蓋ヒーター11によって、内蓋7における結露を抑制する。また、内蓋7の周縁部には、蓋パッキン12が設置されており、鍋状容器5のフランジ部5aと接触して、鍋状容器5及び内蓋7によって形成される調理空間の気密性を確保する。
【0011】
内蓋7及び外蓋9を貫通して蒸気口13が設けられており、この蒸気口13は、少なくとも上記の調理空間における被加熱物等から発生する蒸気等を導入する蒸気通路孔13a、及び、この蒸気通路孔13aから導入された蒸気等を外部へ放出する蒸気放出孔13bを備えている。また、上記の調理空間の温度を検出する内部温度センサー14が、内蓋7に貫通して設置されている。以上のような構成を有する炊飯器の操作情報を後述する回路部16へ送信し、炊飯状態の表示等を行う操作/表示部15が、外蓋9の上面部に設置されている。さらに、少なくともこの操作/表示部15からの操作情報の受信、鍋底温度センサー4、外蓋開閉センサー10及び内部温度センサー14からの温度情報の受信、並びに、加熱コイル3の加熱制御を実施する回路部16が本体1の内底部に設置されている。
なお、鍋底温度センサー4、外蓋開閉センサー10及び内部温度センサー14は、それぞれ本発明の「鍋温度検知手段」、「蓋開閉検知手段」及び「沸騰検知手段」に相当するものである。
【0012】
(炊飯器の内部回路構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の内部回路構成を示す図である。
図2で示されるように、交流電源21は、加熱コイル3に高周波電力を供給するインバーター部22に接続されており交流電圧を供給する。このインバーター部22は、その内部で交流電源21から供給された交流電圧を直流電圧に変換して、制御部23にその直流電圧を供給している。また、インバーター部22は、その直流電圧から高周波電力を生成し、その高周波電力を加熱コイル3に供給する。この高周波電力を供給された加熱コイル3は、その上方に載置された鍋状容器5の底部において電磁誘導によって渦電流を誘起させ、その渦電流が流れることで発生するジュール熱によって鍋状容器5を誘導加熱する。また、制御部23は、鍋底温度センサー4及び内部温度センサー14に接続されており、これらから温度情報を受信する。また、制御部23は、外蓋開閉センサー10に接続されており、外蓋9の開閉のON/OFF情報を受信する。また、制御部23は、操作/表示部15に接続されており、その操作情報を受信、及び、表示情報の送信をする。そして、制御部23は、記憶部24に接続されており、この記憶部24は、例えば、外蓋開閉センサー10の開閉状態の情報その他の制御情報を記憶する。また、前述の回路部16は、少なくとも、インバーター部22、制御部23及び記憶部24によって構成されている。
なお、制御部23及び記憶部24は、それぞれ本発明の「制御手段」及び「記憶手段」に相当するものである。
【0013】
(操作/表示部15の構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器に備えられている操作/表示部15の正面図である。
図3で示されるように、操作/表示部15の略中央部には液晶表示板31が配置されており、その液晶表示板31の左側には、「白米」、「無洗米」、「発芽玄米」及び「玄米」のうちから米の種類を選択する米種選択スイッチ32、米の炊き方、すなわち、炊き上がりの米の硬さを「ふつう」、「かため」及び「やわらか」のうちから選択する硬さ選択スイッチ33、並びに、「ごはん」、「リゾット」、「おかゆ」及び「炊きこみ」のうちから調理メニューを選択するメニュー選択スイッチ34が設けられている。
なお、米種選択スイッチ32、硬さ選択スイッチ33及びメニュー選択スイッチは、それぞれ本発明の「米種選択操作手段」、「硬さ選択操作手段」及び「メニュー選択操作手段」に相当するものである。
【0014】
上記のスイッチのうち米種選択スイッチ32の操作によって、調理する米の種類を選択した際に、どの米が選択されているのかを表示する米種表示部35が、液晶表示板31の上部に設けられている。例えば、米種選択スイッチ32の操作によって「無洗米」が選択されている場合は、その「無洗米」の文字表示部が点灯する。また、硬さ選択スイッチ33の操作によって、炊き上がりの米の硬さを選択した際に、どの硬さが選択されているかを表示する硬さ表示部36が、液晶表示板31における米種表示部35の下部に設けられている。例えば、硬さ選択スイッチ33の操作によって「ふつう」が選択されている場合は、その「ふつう」の文字表示部が点灯する。そして、メニュー選択スイッチ34の操作によって、調理メニューを選択した際に、どの調理メニューが選択されているかを表示するメニュー表示部37が、液晶表示板31における硬さ表示部36の下部に設けられている。例えば、メニュー選択スイッチ34の操作によって「リゾット」が選択されている場合は、その「リゾット」の文字表示部が点灯し、また、「ごはん」が選択されている場合は、メニュー表示部37を構成するすべての文字表示部が消灯する。なお、「ごはん」が選択されていることを示す場合、メニュー表示部37に「ごはん」という文字表示部を設け、その文字表示部が点灯するように構成するものとしてもよい。さらに、液晶表示板31におけるメニュー表示部37の下部には、時間表示部38が設けられており、時刻、米の炊き上がりまでの残り時間、又は、炊き上がり後の保温経過時間等を表示する。
【0015】
この液晶表示板31の右側には、炊飯の開始及び後述する再加熱動作を開始する炊飯スイッチ39、炊き上がりの時刻の予約設定等を実施するための予約スイッチ40、並びに、時刻設定及び炊き上がりの予約時刻等を設定する時刻スイッチ41が設けられている。また、操作/表示部15の左上部には、炊飯動作の強制停止、及び、後述する保温動作を開始又は停止する切/保温スイッチ42が設けられている。
【0016】
なお、上記のような操作/表示部15を構成するスイッチ及び表示部等の配置は一例を示すものであり、これに限られるものではない。
また、米種表示部35、硬さ表示部36及びメニュー表示部37において、選択された項目を示すためにその対応する文字表示部が点灯する動作を説明したが、これに限られるものではなく、その文字表示部が点滅等の動作をするものとしてもよい。
【0017】
(白米のリゾットの調理動作)
図4は本発明の実施の形態1に係る炊飯器によってリゾットを調理する場合の炊飯工程の動作を示すフローチャートであり、図5はその炊飯器における白米のリゾットの調理中の炊飯器の内部温度及び釜底温度の推移、並びに、加熱コイル3に印加する電力を示す図である。以下、図4及び図5を参照しながら、白米のリゾット(以下、「白米リゾット」という)の調理動作について説明する。
【0018】
まず、ユーザーは、容器カバー2に収納された鍋状容器5の開口部を覆っている内蓋7、係止材8、外蓋9、蓋ヒーター11、蒸気口13、内部温度センサー14及び操作/表示部15が一体となった蓋(以下、単に「蓋」という)を開ける。ユーザーは、鍋状容器5内に被加熱物として白米(加熱を施していない生米)、水、具及び調味料等を投入する。なお、鍋状容器5は容器カバー2に着脱自在に収納されているので、ユーザーは、鍋状容器5を容器カバー2から取り出して、上記の被加熱物を投入し、そして、その被加熱物が投入された鍋状容器5を容器カバー2に収納するものとしてもよい。
【0019】
水の投入の際、ユーザーは、例えば、200ml計量カップを用いて、投入した米量に対する適量の水を計量し、鍋状容器5に投入する。このとき、鍋状容器5の内壁面に白米用、玄米用、発芽玄米用、おかゆ用及び炊きこみ用等の水位目盛りが表示されている場合、リゾット用の水位目盛りをさらに追加すると、鍋状容器5内に数多くの目盛りが表示されていることになり、ユーザーが合わせたい水位目盛りが分かりにくく、誤った水位目盛りで水量を調整してしまう可能性がある。また、リゾットは、白米及び水だけでなく、例えば、玉ねぎ等の具及び調味料等を投入して加熱されるものであるため、ユーザーが、鍋状容器5の内壁面の水位目盛りによって水位を合わせて水量を調整する場合、白米、具及び調味料等を入れた後に水位目盛りで水量を調整しようとすると、具及び調味料等の量によって加える水の量が変わってしまうことになり、リゾットの仕上がりにばらつきが生じてしまう。さらに、ユーザーが鍋状容器5内に具及び調味料等を投入する前に、鍋状容器5の内壁面に表示された水位目盛りによって水量を投入する場合、適量の水を投入することができるが、誤って鍋状容器5内に具及び調味料等を先に入れてしまった場合、わざわざ具及び調味料等を鍋状容器5から一旦取り出さなければならず手間もかかることになり、調味料によっては完全に取り出すことが困難となる場合もある。しかし、上記のように、ユーザーが計量カップを用いて水を計量することによって、鍋状容器5内に水位目盛りを備える必要がなく、水を鍋状容器5内に入れるタイミングは具及び調味料等を入れる前と後のいずれでもよく、水も計量しやすいため水量を正確に調整することができる。また、炊き干し法によって白米のごはんを炊飯する場合、米重量の1.5倍の量の水を投入して炊飯するが、白米リゾットの場合、米が吸水する水量、とろみとなる水量、及び、加熱中に蒸発する水量を合わせて米重量の2.5〜3.5倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することで美味しい白米リゾットを作ることができる。すなわち、米重量の0〜1.5倍量未満の水量では硬いごはんとなり、1.5〜2.5倍の水量未満であればとろみの量が十分でなく、そして、3.5倍の水量より多ければとろみがゆるく硬めのおかゆのようになってしまうため、米重量の2.5〜3.5倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することでリゾットとして好ましい状態となる。なお、鍋状容器5に投入する水のうち一部を白ワインに置換しても良く、この場合、白ワインを入れることによって風味を増すことができる。ただし、白ワインの量が多すぎると白ワインの香り(エタノール臭)が残り、白ワイン特有の酸味がリゾットに付与されてしまうため、白ワインに置換する量は加える水の量の30%以下とすることが好ましい。
【0020】
また、鍋状容器5に白米を投入する場合において、例えば、炊き干し法によって調理できる米の最大調理可能量が5.5合分である場合、後述する強火2工程及び弱火工程において鍋状容器5に粘性のある被加熱物の液体部(以下、「炊飯液」という)が多く入っている状態で沸騰を維持すると、炊飯液が鍋状容器5から溢れ、本体1から炊飯液が吹きこぼれてしまう可能性があるので、調理する米の量は1合分以下、すなわち、炊き干し法における米の最大調理可能量の大体1/5以下とすることが好ましい。このような米の量とすることで、吹きこぼれの発生を抑制することができる。
【0021】
次に、ユーザーは、上記のように鍋状容器5に白米、水、具及び調味料等の被加熱物を投入した後、蓋を閉める。そして、ユーザーは、操作/表示部15の米種選択スイッチ32を操作して「白米」を選択、硬さ選択スイッチ33を操作して「ふつう」を選択、及び、メニュー選択スイッチ34を操作して「リゾット」を選択し、炊飯スイッチ39を押下する。なお、硬さ選択スイッチ33が操作されずに、炊飯スイッチ39が押下された場合、リゾットのできあがりの硬さをデフォルトで「ふつう」に選択されたものとして炊飯工程が開始するものとしてもよい。この炊飯スイッチ39が押下されることによって炊飯工程が開始する。
【0022】
ユーザーによって操作/表示部15の炊飯スイッチ39が押下されると、その操作信号が制御部23に送信される。その操作信号を受信した制御部23は、インバーター部22に制御信号を送信する。インバーター部22は、その制御信号に従って、第1加熱コイル3a及び第2加熱コイル3bによって構成される加熱コイル3に高周波電力を供給する。高周波電力を供給された加熱コイル3は、高周波磁界を発生し、加熱コイル3が容器カバー2を介して磁気結合した鍋状容器5の加熱コイル3との対向面に渦電流を発生させる。この渦電流と鍋状容器5の持つ抵抗によってジュール熱が発生し、鍋状容器5における加熱コイル3の対向面が発熱して、鍋状容器5に投入された被加熱物が加熱される。
【0023】
次に、リゾットの炊飯工程について説明する。本実施の形態に係る白米リゾットの炊飯工程は、強火1工程(ステップS1)、強火2工程(ステップS2)及び弱火工程(ステップS3)によって構成されている。この炊飯工程において、鍋底温度センサー4によって検出された鍋状容器5の底面の温度(以下、「鍋底温度」という)、及び、内部温度センサー14によって検出された調理空間の温度(以下、「内部温度」という)の推移を図5(a)に示す。また、この炊飯工程において、インバーター部22によって加熱コイル3に供給される高周波電力(以下、単に「電力」という)のグラフを図5(b)に示す。まず、下記のステップS11及びステップS12によって構成される強火1工程(ステップS1)について説明する。
【0024】
(S11)
インバーター部22は、制御部23から制御信号を受信し、その制御信号に基づいて、加熱コイル3に高周波電力(以下、単に「電力」という)を供給し、加熱コイル3は鍋状容器5を誘導加熱して鍋状容器5に投入された被加熱物を加熱する。リゾットの炊飯工程においては、通常の炊き干し法によってごはんを炊く方法とは異なり、加熱前の浸漬及び加熱開始から沸騰までの吸水といったいわゆる予熱工程は必要ない。リゾットは、米粒中心部に適度な硬さを残した米飯であるため、中心部が過度に軟らかくならないようにするには、沸騰前に米粒全体を吸水させる必要はない。したがって、被加熱物の加熱が開始されたらできるだけ早く鍋状容器5内の炊飯液を沸騰させ、米と水の温度を上げることで、米粒の中心部が吸水する前に米粒の表層部だけを糊化させることができる。ここで、糊化とは、安定した構造をもつ生米のベータデンプンに水分と熱を加えることによって澱粉の結晶構造が崩れ、その間に水の分子が侵入して目の粗い網目構造のアルファデンプンに変化することをいう。糊化したデンプンは糊化していないデンプンよりも吸水可能な水分量が大きいため、中心部が十分に吸水する前に、米の表層部のデンプンが糊化すると、表層のデンプンが主に吸水することになり、中心部のデンプンへの吸水が進まないことから、糊化した表層のデンプンは、中心部への吸水を抑制する壁の働きをすることになり、リゾット特有の適度な硬さをもつ食感が形成される一因となる。したがって、図5(b)で示されるように、インバーター部22は、後述する弱火工程において供給される電力よりも大きい電力を加熱コイル3に連続して供給する。この加熱コイル3に供給される大きい電力によって、できるだけ早く鍋状容器5内の水が早く沸騰するように、鍋状容器5内の被加熱物への強い加熱が実施される。このとき、鍋底温度及び内部温度は、図5(a)で示されるように、鍋底温度が内部温度よりも速く温度上昇し、この強火1工程において100℃近傍まで上昇する。
【0025】
(S12)
次に、制御部23は、内部温度センサー14から内部温度t1を受信し、この内部温度t1が所定の沸騰検知温度tに達したか否か判定する。制御部23は、内部温度t1が沸騰検知温度tに達したと判定した場合、被加熱物が沸騰したと判断して強火1工程(ステップS1)を終了し、強火2工程(ステップS2)へ進む。
【0026】
以上のように、強火1工程は、できるだけ早く鍋状容器5内の炊飯液を沸騰させ、米粒の表層部のデンプンを糊化させ、米粒内部まで吸水が進むのを抑制するための糊化したデンプンの壁をその表層部に形成する。
【0027】
次に、下記のステップS21〜ステップS24によって構成される強火2工程(ステップS2)について説明する。
【0028】
(S21)
制御部23は、強火2工程が開始するのと同時に、強火2工程動作の経過時間aの計測を開始する。
【0029】
(S22)
次に、インバーター部22は、制御部23から制御信号を受信し、その制御信号に基づいて、図5(b)で示されるように、後述する弱火工程において供給される電力よりも大きい電力を加熱コイル3に間欠的に供給する。このように、加熱コイル3が連続的にではなく間欠的に電力が供給されることによって、加熱コイル3の消耗あるいは故障の発生を抑制することができる。インバーター部22によって加熱コイル3が過熱されない程度の大きさの電力が供給されて、鍋状容器5内の被加熱物が加熱されることによって、図5(a)で示されるように、鍋底温度及び内部温度は100℃近傍に維持され、被加熱物は強い沸騰状態を維持し、大きく対流する。本来、リゾットの調理において、鍋等に米及び水を入れてヘラ等で攪拌しながら加熱するものであり、攪拌することで適度に米粒の表層部が崩れて炊飯液にデンプンが溶出し、好ましいとろみが形成されるが、本実施の形態では、ヘラ等で攪拌するのではなく、被加熱物の沸騰による対流によって炊飯液にデンプンを溶出させ、好ましいとろみを形成する。また、被加熱物の強い沸騰状態を維持することで強火1工程で形成した米粒の表層部のデンプンの糊化をさらに進めることになり、糊化したデンプンの一部は炊飯液に溶出してとろみを形成し、一部は米粒に残り中心部への吸水を抑制する壁の働きをする。このように、被加熱物の沸騰による対流によってとろみが形成されることで、調理中に鍋等の近傍に調理者がつきっきりでリゾットをヘラで攪拌する必要がなく、簡便にリゾットを調理することができる。また、この被加熱物の沸騰による対流によって、被加熱部が均質に混ざり合って加熱具合のばらつきを抑制することができる。なお、上記のように強火2工程においてはインバーター部22は、加熱コイル3に対して電力を間欠的に供給する動作を説明したが、これに限られるものではなく、電力を連続的に供給するものとしてもよい。このような動作によって、間欠的な電力の供給よりも鍋状容器5内の被加熱物の対流動作を大きくすることができる。
【0030】
(S23)
強火2工程では、インバーター部22が後述する弱火工程よりも大きな電力を加熱コイル3に供給して被加熱物を加熱し、米粒の表層部の糊化及びとろみの形成が進むため、被加熱物が鍋状容器5の鍋底に焦げ付きやすく、また吹きこぼれやすい状態へと変化していく。このため、制御部23は、鍋底温度センサー4から鍋底温度(T1とする)を受信して、鍋底温度T1を監視している。すなわち、制御部23は、この鍋底温度T1が所定の焦げ付き防止温度Tに達したか否か判定する。制御部23が、鍋底温度T1が焦げ付き防止温度Tに達していないと判定した場合は、ステップS24へ進む。また、制御部23が、鍋底温度T1が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合は、鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付く直前であるものと判断し、ステップS5へ進む。
【0031】
(S24)
次に、制御部23は、強火2工程動作の経過時間aが所定時間A(例えば、6分〜8分)に達したか否か判定する。この所定時間Aについて、例えば、10分以上と設定すると、被加熱物が鍋状容器5に焦げ付いてしまう可能性が高く、5分以下とすると米粒の表層部の糊化が十分に進行せず内部への吸水が進行しすぎておかゆ又はおじやのような芯のない状態になってしまい、また、被加熱物の対流があまり起こらないのでとろみが十分に形成されない。制御部23が、経過時間aが所定時間Aに達していないと判定した場合は、ステップS23へ戻る。また、制御部23が、経過時間aが所定時間Aに達したと判定した場合は、強火2工程(ステップS2)を終了し、弱火工程(ステップS3)へ進む。
【0032】
以上のように、強火2工程は、加熱コイル3が過熱されない程度の大きさの電力をインバーター部22から間欠的に供給され、強い沸騰状態を維持することによって、被加熱物における米粒の表層部のデンプンの糊化をさらに進め、この強い沸騰状態によって被加熱部を対流させ、また、この対流によって糊化した米粒の表層部の一部が炊飯液に溶出してとろみを形成し、被加熱部が焦げ付く前に終了する。
【0033】
なお、図5(b)においては、強火1工程及び強火2工程におけるインバーター部22から加熱コイル3に供給される電力の大きさが同一のように記載されているが、これに限定されるものではなく、強火2工程においては、少なくとも後述する弱火工程における電力よりも大きい電力であり、強い沸騰状態が維持し、好ましいとろみが形成される程度の大きさであればよい。
【0034】
次に、下記のステップS31〜ステップS34によって構成される弱火工程(ステップS3)について説明する。
【0035】
(S31)
制御部23は、弱火工程が開始するのと同時に、弱火工程動作の経過時間bの計測を開始する。
【0036】
(S32)
強火2工程から弱火工程に移行した段階においては、被加熱物における米粒は食べるには硬すぎる状態であり、かつ、被加熱部が焦げ付きやすく吹きこぼれやすい状態になっている。したがって、インバーター部22は、制御部23から制御信号を受信し、その制御信号に基づいて、図5(b)で示されるように、強火1工程及び強火2工程において供給される電力よりも小さい電力を加熱コイル3に間欠的に供給する。このように、加熱コイル3が連続的にではなく間欠的に電力が供給されることによって、加熱コイル3の消耗あるいは故障の発生を抑制することができる。インバーター部22によって、強火1工程及び強火2工程において供給される電力よりも小さい電力が加熱コイル3に供給され、鍋状容器5内の被加熱物が加熱されることによって、図5(a)で示されるように、鍋底温度及び内部温度を100℃近傍に維持しながらも、鍋状容器5内の被加熱物の焦げ付き及び吹きこぼれを抑制することができる。ここで、例えば、インバーター部22による加熱コイル3への電力の供給を大幅に小さくして、弱い沸騰状態になるようにすると、米粒の芯がわずかに残るアルデンテの状態になるには時間がかかり過ぎるため、米粒の表層部の吸水が進み過ぎて、米粒がふやけてしまい、また、米粒の表層部からデンプンの溶出が進み過ぎて、とろみの粘度が高くなって雑炊又はおじや等のようなどろどろとしたリゾットになってしまう。したがって、インバーター部22によって、強火1工程及び強火2工程において供給される電力よりも小さい電力が加熱コイル3に供給し、鍋底温度及び内部温度を100℃近傍に維持することによって、雑炊又はおじや等のような状態になる前に米粒をアルデンテの状態にし、リゾットとして好ましい軟らかさにする。
【0037】
(S33)
弱火工程では、強火2工程において既に被加熱物は、とろみが形成されているため、被加熱物が鍋状容器5の底部に焦げ付きやすい。このため、強火2工程におけるステップS23と同様に、制御部23は、鍋底温度センサー4から鍋底温度(T2とする)を受信して、鍋底温度T2を監視している。すなわち、制御部23は、この鍋底温度T2が所定の焦げ付き防止温度Tに達したか否か判定する。制御部23が、鍋底温度T2が焦げ付き防止温度Tに達していないと判定した場合は、ステップS34へ進む。また、制御部23が、鍋底温度T2が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合は、鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付く直前であるものと判断し、ステップS5へ進む。
【0038】
(S34)
次に、制御部23は、弱火工程動作の経過時間bが所定時間Bに達したか否か判定する。制御部23が、経過時間bが所定時間Bに達していないと判定した場合は、ステップS33へ戻る。また、制御部23が、経過時間bが所定時間Bに達したと判定した場合は、弱火工程を終了し、ステップS4へ進む。
【0039】
以上のように、弱火工程は、加熱コイル3が強火1工程及び強火2工程における電力よりも小さい電力をインバーター部22から間欠的に供給され、鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付かず、かつ、吹きこぼれない程度の沸騰を維持することによって、被加熱物における米粒をアルデンテの状態にし、リゾットとして好ましい軟らかさにする。
なお、ステップS34で説明した弱火工程の加熱時間すなわち所定時間B及びステップS24で説明した強火2工程の加熱時間すなわち所定時間Aの合計時間A+Bは、20分以下とするのが好ましい。合計時間A+Bが、20分を超過すると、米粒内部への吸水が進行しすぎて、米粒をアルデンテの状態にすることができず、芯のないおかゆ又はおじやのような状態になってしまう。
【0040】
(S4)
弱火工程終了後、制御部23は、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて鍋状容器5の誘導加熱を終了させる。そして、制御部23は、リゾットの炊飯工程が終了したことをユーザーに知らせるため、報知手段(図示せず)にユーザーに対し報知させる。以上の動作によって、強火1工程、強火2工程及び弱火工程によって構成される炊飯工程が終了する。上記のように、報知手段によってユーザーに炊飯工程が終了したことが報知されることによって、鍋状容器5が有する余熱によって米粒がふやけてしまうことを抑制することができる。
【0041】
(S5)
制御部23が、ステップS23において鍋底温度T1が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合、又は、ステップS33において鍋底温度T2が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて被加熱物の加熱を停止し、報知手段にユーザーに対して鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付いている、又は、焦げ付いている可能性がある旨の報知をさせる。この場合、炊飯器におけるリゾットの炊飯動作の継続はできないが、例えば、フライパン等に被加熱物を移し、加水する等して加熱することによってリゾットとして完成させることもできる。
【0042】
なお、上記の動作においては、操作/表示部15の硬さ選択スイッチ33を操作してリゾットのできあがりの硬さについて「ふつう」を選択したが、例えば、これを「やわらか」を選択した場合は、次の動作とすればよい。硬さ選択スイッチ33の操作によって「ふつう」の代わりに「やわらか」を選択して炊飯スイッチ39を押下して炊飯工程を開始させ、強火1工程、強火2工程及び弱火工程の動作を実施させるのは前述のとおりである。ただし、弱火工程における被加熱物の加熱時間を「ふつう」を選択した場合よりも長くなるようにする。これによって、被加熱物における米粒に加えられる加熱量が増えるので「ふつう」を選択した場合よりも軟らかいリゾットを作ることができる。なお、弱火工程における加熱時間を長くすることに限られるものではなく、弱火工程における加熱時間は「ふつう」を選択した場合と同様とし、弱火工程の終了後、制御部23は、インバーター部22による加熱コイル3への電力供給を停止させ、鍋状容器5の余熱による加熱を所定時間(例えば、10分)実施して、「ふつう」を選択した場合よりも軟らかいリゾットを作るものとしてもよい。この場合、この所定時間経過後、制御部23は、報知手段にユーザーに対して報知させるものとすればよい。この動作によって、放置するだけで米粒の硬さの調節ができるため特別な構成が必要なく、余熱を利用することで省エネにつながる。また、報知手段がユーザーに鍋状容器5の余熱を利用した所定時間の加熱が終了したことを報知することによって、加熱のし過ぎによって米粒がふやけてしまうことを抑制することができる。
また、操作/表示部15の硬さ選択スイッチ33を操作してリゾットのできあがりの硬さについて「かため」を選択した場合は、次の動作とすればよい。硬さ選択スイッチ33の操作によって「ふつう」の代わりに「かため」を選択して炊飯スイッチ39を押下して炊飯工程を開始させ、強火1工程、強火2工程及び弱火工程の動作を実施させるのは前述のとおりである。ただし、弱火工程における被加熱物の加熱時間を「ふつう」を選択した場合よりも短くなるようにする。これによって、被加熱物における米粒に加えられる加熱量が減るので「ふつう」を選択した場合よりも硬いリゾットを作ることができる。
また、図4で示されるように、強火2工程におけるステップS23及び弱火工程におけるステップS33における焦げ付きを抑制するための閾値となる温度として、双方、焦げ付き防止温度Tとして共通にしているが、双方の工程において被加熱物の状態は異なるので、双方の工程に適した別々の値を焦げ付き防止温度として焦げ付きの判定が実施されるものとしてもよい。
そして、上記で説明した白米リゾットの炊飯工程は、強火1工程、強火2工程及び弱火工程の順番となっており、必ずしもこの順番に限定する必要はなく、例えば、強火1工程によって鍋状容器5内の被加熱物を沸騰させてから、弱火工程、強火2工程、そして、再び弱火工程という順番にしてもよい。ただし、このように順番が変わっても、白米リゾットの場合は、強火2工程及び弱火工程における加熱時間の合計時間は20分以下とするのが好ましく、また、強火1工程の直後は強い沸騰状態となっているので、鍋状容器5内で被加熱物が対流しやすい状態となっており、この強火1工程の直後に強火2工程を実施するのが好ましい。
【0043】
(白米と玄米との混米のリゾットの調理動作)
図6は白米と玄米との炊飯液に対するデンプンの溶出量を比較するグラフであり、図7は本発明の実施の形態1に係る炊飯器における白米と玄米との混米のリゾットの調理中の炊飯器の内部温度及び釜底温度の推移、並びに、加熱コイル3に印加する電力を示す図である。上記で説明した炊飯器は、白米リゾットだけでなく、白米と玄米との混米のリゾット(以下、「玄米リゾット」という)を作ることも可能である。以下、図6及び図7を参照しながら、玄米リゾットの調理動作について説明するが、前述の白米リゾットの調理動作と相違する点を中心に説明する。
【0044】
まず、ユーザーは、炊飯器の蓋を開け、米が玄米:白米=3:1の体積割合となるように量りとって、水、具及び調味料等と共に鍋状容器5内に投入する。ここで、1合分の米を計量するためのカップの多くは、1/4合、1/2合、3/4合及び1合の目盛りが刻まれたものであるため、玄米リゾットを、例えば、1合分調理する場合は、白米を1/4合分の目盛りに、そして、玄米を3/4合分の目盛りに合わせて計量すればよい。水の投入の際は、前述のように、ユーザーは、例えば、200ml計量カップを用いて、投入した米量に対する適量の水を計量し、鍋状容器5に投入する。このとき、玄米リゾットの場合は、後述するように白米リゾットの炊飯工程の弱火工程における加熱時間が長いため加熱中に蒸発する水量が、白米リゾットの場合よりも多くなる。そのため、玄米リゾットの場合、米が吸水する水量、とろみとなる水量、及び、加熱中に蒸発する水量を合わせて米重量の3〜4倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することで美味しい玄米リゾットを作ることができる。また、鍋状容器5に投入する米(白米及び玄米)の量は、前述の白米リゾットの調理動作において説明した米の量の制限に基づいて投入すればよい。次に、ユーザーは、上記のように鍋状容器5に白米と玄米との混米、水、具及び調味料等の被加熱物を投入した後、蓋を閉める。そして、ユーザーは、操作/表示部15の米種選択スイッチ32を操作して「玄米」を選択、硬さ選択スイッチ33を操作して「ふつう」を選択、及び、メニュー選択スイッチ34を操作して「リゾット」を選択し、炊飯スイッチ39を押下する。なお、硬さ選択スイッチ33が操作されずに、炊飯スイッチ39が押下された場合、リゾットのできあがりの硬さをデフォルトで「ふつう」に選択されたものとして炊飯工程が開始するものとしてもよい。この炊飯スイッチ39が押下されることによって炊飯工程が開始する。
【0045】
玄米リゾットの炊飯工程の流れは、図4で示されるフローチャートと同様である。ここで、図6で示されるように、玄米は、白米に比べて炊飯液へのデンプンの溶出量が少ない。したがって、玄米は炊飯液へのデンプンの溶出がほとんど進まず、炊飯液へのデンプンの溶出は十分でないので、玄米だけを用いてリゾットを作るとサラサラとしたリゾットとなり美味しくない。そこで、前述のように玄米に白米を加え、玄米:白米=3:1の体積割合となる混米とし、図4の弱火工程におけるステップS32の加熱時間を、図7で示されるように白米リゾットを炊飯する場合よりも長く設定するものとする。弱火工程において、このような動作とすることによって、デンプンが溶出しやすい白米を一部加えられているので、弱火工程におけるステップS32の加熱時間が長くなる分、白米はアルデンテの状態を通りすぎて、煮崩れしてくることでデンプンの溶出が進み、玄米から溶出するデンプン量が少ないのを補い、リゾットとして最適なとろみを形成する。また、玄米が最適な硬さとなるためには、白米の場合よりも長い加熱時間を要するが、弱火工程におけるステップS32の加熱時間を長く設定していることによって、玄米の硬さが最適になる。ここで、玄米リゾットを炊飯する際に、玄米:白米=3:1の体積割合となるようにすることで、米粒からのデンプンの溶出によるとろみの割合が好ましい状態になるが、玄米の割合が多すぎると、とろみが十分に形成されずサラサラした食感となり、玄米の割合が少なすぎると、とろみの量が多く、粘度が高くなって雑炊又はおじや等のようなどろどろとしたリゾットになってしまう。好ましい食感にするためには玄米と白米との混米のうち玄米の割合は75%〜80%の割合にするとよい。したがって、玄米と白米との混合比(体積比)は、玄米:白米=3:1ではなく、玄米:白米=4:1としてもよい。玄米には白米にはない栄養素が多く含まれ、健康に良く、この場合、玄米と白米との体積割合が玄米:白米=3:1のものよりも高いため、さらに健康に良いという効果がある。
【0046】
以上のような玄米リゾットの炊飯動作にように、玄米を用いてもリゾットを作ることができ、料理のバリエーションを増やすことができる。
また、玄米のみを用いてリゾットを作る場合は、お茶漬けのようなサラサラしたリゾットとなってしまって美味しくないが、玄米と白米との混米とすることによって、リゾットとして好ましいとろみを付与することができる。
そして、玄米と白米との混合比(体積比)を玄米:白米=3:1にする場合に、リゾット用の計量用カップをわざわざ用意する必要がなく、通常のごはんを炊くときに用いる1合カップを併用することができ、カップの目盛りに合わせて米を計量することによって計量ミスを防ぐことができる。
【0047】
(白米と発芽玄米との混米のリゾットの調理動作)
図8は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器における白米と発芽玄米との混米のリゾットの調理中の炊飯器の内部温度及び釜底温度の推移、並びに、加熱コイル3に印加する電力を示す図である。上記で説明した炊飯器は、白米リゾット及び玄米リゾットだけでなく、白米と発芽玄米との混米のリゾット(以下、「発芽玄米リゾット」という)を作ることも可能である。以下、図8を参照しながら、発芽玄米リゾットの調理動作について説明するが、前述の白米リゾットの調理動作と相違する点を中心に説明する。
【0048】
まず、ユーザーは、炊飯器の蓋を開け、米が発芽玄米:白米=3:1の体積割合となるように量りとって、水、具及び調味料等と共に鍋状容器5内に投入する。ここで、発芽玄米リゾットを、例えば、1合分調理する場合は、前述のように白米を1/4合分の目盛りに、そして、発芽玄米を3/4合分の目盛りに合わせて計量すればよい。水の投入の際は、前述のように、ユーザーは、例えば、200ml計量カップを用いて、投入した米量に対する適量の水を計量し、鍋状容器5に投入する。このとき、発芽玄米リゾットの場合は、後述するように白米リゾットの炊飯工程の弱火工程における加熱時間が長いものの、発芽玄米が吸水する水の量が少ない。そのため、発芽玄米リゾットの場合、米が吸水する水量、とろみとなる水量、及び、加熱中に蒸発する水量を合わせて米重量の2.5〜3.5倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することで美味しい発芽玄米リゾットを作ることができる。また、鍋状容器5に投入する米(白米及び発芽玄米)の量は、前述の白米リゾットの調理動作において説明した米の量の制限に基づいて投入すればよい。次に、ユーザーは、上記のように鍋状容器5に白米と発芽玄米との混米、水、具及び調味料等の被加熱物を投入した後、蓋を閉める。そして、ユーザーは、操作/表示部15の米種選択スイッチ32を操作して「発芽玄米」を選択、硬さ選択スイッチ33を操作して「ふつう」を選択、及び、メニュー選択スイッチ34を操作して「リゾット」を選択し、炊飯スイッチ39を押下する。なお、硬さ選択スイッチ33が操作されずに、炊飯スイッチ39が押下された場合、リゾットのできあがりの硬さをデフォルトで「ふつう」に選択されたものとして炊飯工程が開始するものとしてもよい。この炊飯スイッチ39が押下されることによって炊飯工程が開始する。
【0049】
発芽玄米リゾットの炊飯工程の流れは、図4で示されるフローチャートと同様である。ここで、発芽玄米は、玄米と同様に、白米に比べて炊飯液へのデンプンの溶出量が少ない。したがって、発芽玄米は炊飯液へのデンプンの溶出がほとんど進まず、炊飯液へのデンプンの溶出は十分でないので、発芽玄米だけを用いてリゾットを作るとサラサラとしたリゾットとなり美味しくない。また、発芽玄米は果皮が吸水を抑制するものの、発芽させた部分から吸水が進みやすく、吸水性については白米と玄米の中間に位置する性質をもつ。そこで、前述のように発芽玄米に白米を加え、発芽玄米:白米=3:1の体積割合となる混米とし、図4の弱火工程におけるステップS32の加熱時間を、図8で示されるように白米リゾットを炊飯する場合よりも長く、かつ、玄米リゾットを炊飯する場合よりも短く設定するものとする。弱火工程において、このような動作とすることによって、デンプンが溶出しやすい白米を一部加えられているので、弱火工程におけるステップS32の加熱時間が長くなる分、白米はアルデンテの状態を通りすぎて、煮崩れしてくることでデンプンの溶出が進み、発芽玄米から溶出するデンプン量が少ないのを補い、リゾットとして最適なとろみを形成する。また、発芽玄米が最適な硬さとなるためには、白米の場合よりも長く、玄米の場合よりは短い加熱時間を要するが、弱火工程におけるステップS32の加熱時間を白米リゾットの場合よりも長く、かつ、玄米リゾットの場合よりも短く設定していることによって、発芽玄米の硬さが最適になる。ここで、発芽玄米リゾットを炊飯する際に、発芽玄米:白米=3:1の体積割合となるようにすることで、米粒からのデンプンの溶出によるとろみの割合が好ましい状態になるが、発芽玄米の割合が多すぎると、とろみが十分に形成されずサラサラした食感となり、発芽玄米の割合が少なすぎると、とろみの量が多く、粘度が高くなって雑炊又はおじや等のようなどろどろとしたリゾットになってしまう。好ましい食感にするためには発芽玄米と白米との混米のうち発芽玄米の割合は75%〜80%の割合にするとよい。したがって、発芽玄米と白米との混合比(体積比)は、発芽玄米:白米=3:1ではなく、発芽玄米:白米=4:1としてもよい。発芽玄米には白米にはない栄養素が多く含まれ、健康に良く、この場合、発芽玄米と白米との体積割合が発芽玄米:白米=3:1のものよりも高いため、さらに健康に良いという効果がある。
【0050】
以上のような発芽玄米リゾットの炊飯動作のように、発芽玄米を用いてもリゾットを作ることができ、料理のバリエーションを増やすことができる。
また、発芽玄米のみを用いてリゾットを作る場合は、お茶漬けのようなサラサラしたリゾットとなってしまって美味しくないが、発芽玄米と白米との混米とすることによって、リゾットとして好ましいとろみを付与することができる。
そして、発芽玄米と白米との混合比(体積比)を発芽玄米:白米=3:1にする場合に、リゾット用の計量用カップをわざわざ用意する必要がなく、通常のごはんを炊くときに用いる1合カップを併用することができ、カップの目盛りに合わせて米を計量することによって計量ミスを防ぐことができる。
【0051】
(ごはん及び炊きこみの調理動作)
図9は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器によってごはん及び炊きこみごはんを調理する場合の炊飯工程の動作を示すフローチャートである。図9で示されるように、本実施の形態に係るごはん、おかゆ及び炊きこみごはんの炊飯工程は、通常の炊き干し法に基づく動作に対して、図4におけるステップS23、ステップS33及びステップS5によって実現されるような焦げ付き防止機能を付加したものである。ごはん及び具のない炊きこみごはんの場合、炊き干し法による炊飯工程において、通常、鍋状容器5に米が焦げ付いてしまうことは想定されないが、具材が混入した炊きこみごはん等の場合、炊き干し法による炊飯工程において焦げ付いてしまう可能性がある。図9は、このような焦げ付きを回避するために、炊き干し法による炊飯工程に焦げ付き防止機能を付加した動作を示すものである。以下、図9を参照しながら、ごはん、おかゆ及び炊きこみごはんの調理動作について説明する。
【0052】
まず、ユーザーは、炊飯器の蓋を開け、必要量の米を鍋状容器5内に投入する。次に、ユーザーは、ごはんを炊飯させる場合には、投入した米量に適した量の水を鍋状容器5内に投入する。また、ユーザーは、おかゆを炊飯させる場合には、必要な場合、具及び調味料等を鍋状容器5内に投入し、そして、ごはんの場合よりも多めの所定量の水を鍋状容器5内に投入する。また、ユーザーは、炊きこみごはんを炊飯させる場合には、具及び調味料等を鍋状容器5内に投入し、そして、ごはんの場合とほぼ同量の水を鍋状容器5内に投入する。水の投入の際には、前述のように、ユーザーは、例えば、200ml計量カップを用いて、鍋状容器5に投入すればよい。次に、ユーザーは、上記のように鍋状容器5に米、水、具及び調味料等の被加熱物を投入した後、蓋を閉める。そして、ユーザーは、操作/表示部15の米種選択スイッチ32を操作して「白米」を選択、硬さ選択スイッチ33を操作して「ふつう」を選択する。さらに、ユーザーは、おかゆを炊飯させる場合には、メニュー選択スイッチ34を操作して「おかゆ」を選択し、炊きこみごはんを炊飯させる場合には、メニュー選択スイッチ34を操作して「炊き込み」を選択し、また、通常のごはんを炊飯させる場合には、メニュー選択スイッチ34を操作してメニュー表示部37における文字表示部がすべて消灯するように操作して「ごはん」を選択し、炊飯スイッチ39を押下する。なお、硬さ選択スイッチ33が操作されずに、炊飯スイッチ39が押下された場合、炊飯物のできあがりの硬さをデフォルトで「ふつう」に選択されたものとして炊飯工程が開始するものとしてもよい。この炊飯スイッチ39が押下されることによって炊飯工程が開始する。
【0053】
次に、ごはん、おかゆ及び炊きこみの炊飯工程について説明する。本実施の形態に係るごはん、おかゆ及び炊きこみごはんの炊飯工程は、予熱工程(ステップS101)、沸騰工程(ステップS102)、ドライアップ工程(ステップS103)及び蒸らし工程(ステップS104)によって構成されている。まず、予熱工程(ステップS101)について説明する。
【0054】
(S101)
インバーター部22は、制御部23から制御信号を受信し、その制御信号に基づいて、加熱コイル3に電力を供給し、加熱コイル3は鍋状容器5を誘導加熱して鍋状容器5に投入された被加熱物を加熱する。このとき、制御部23は、内部温度センサー14から内部温度を受信し、この内部温度が所定温度(例えば、50℃)となるように、インバーター部22に制御信号を送信する。この予熱工程においては、米の糊化温度よりも低温の水に米を浸し、予め米に吸水させておくことで、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化させることができる。制御部23は、加熱を開始して所定時間経過後、予熱工程を終了させ、ステップS102へ進む。
【0055】
(S102)
次に、インバーター部22は、制御部23から制御信号を受信し、その制御信号に基づいて、予熱工程(ステップS101)において供給される電力よりも大きい電力を加熱コイル3に供給する。このとき、制御部23は、内部温度センサー14から内部温度を受信し、この内部温度が炊飯液の沸騰温度(100℃近傍)となるように、インバーター部22に制御信号を送信する。この沸騰工程においては、炊飯液が沸騰するまで加熱し、米の糊化を進行させる。制御部23は、内部温度が炊飯液の沸騰温度(100℃近傍)となったと判定した場合に、沸騰工程を終了させ、ステップS103へ進む。なお、被加熱物が沸騰させるための強い加熱量を得るために、制御部23は、インバーター部22に蓋ヒーター11による被加熱部の加熱を実施させるために電力を供給させる動作としてもよい。
【0056】
次に、下記のステップS1031〜ステップS1034によって構成されるドライアップ工程(ステップS103)について説明する。
【0057】
(S1031)
制御部23は、ドライアップ工程が開始するのと同時に、ドライアップ工程動作の経過時間eの計測を開始する。
【0058】
(S1032)
次に、制御部23は、内部温度センサー14から受信した内部温度が、炊飯液の沸騰温度に維持して炊飯液の水分を蒸発させ、かつ、本体1から炊飯液が吹きこぼれが生じないように、インバーター部22に制御信号を送信し、インバーター部22は、その制御信号に基づいた電力を加熱コイル3に供給する。なお、被加熱物が糊化を進めるためのある程度の強い加熱量を得るために、制御部23は、インバーター部22に蓋ヒーター11による被加熱部の加熱を実施させるために電力を供給させる動作としてもよい。このステップS1032においては、米の糊化が進み(例えば、米量の50%〜60%)、その糊化した米の表層部からデンプンが溶出して炊飯液の粘度も増加する。
【0059】
(S1033)
ステップS1032においては、米の表層部からのデンプンの溶出によって炊飯液の粘度も増加していることと、「おかゆ」又は「炊きこみ」が選択されている場合には具材も混入されているので、被加熱物が鍋状容器5の鍋底に焦げ付きやすい状態となっている。このため、制御部23は、鍋底温度センサー4から鍋底温度(T4とする)を受信して、鍋底温度T4を監視している。すなわち、制御部23は、この鍋底温度T4が所定の焦げ付き防止温度Tに達したか否か判定する。制御部23が、鍋底温度T4が焦げ付き防止温度Tに達していないと判定した場合は、ステップS1034へ進む。また、制御部23が、鍋底温度T4が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合は、鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付く直前であるものと判断し、ステップS106へ進む。
【0060】
(S1034)
次に、制御部23は、ドライアップ工程動作の経過時間eが所定時間Eに達したか否か判定する。制御部23が、経過時間eが所定時間Eに達していないと判定した場合は、ステップS1033へ戻る。また、制御部23が、経過時間eが所定時間Eに達したと判定した場合は、ドライアップ工程(ステップS103)を終了し、蒸らし工程(ステップS104)へ進む。
【0061】
以上のように、ドライアップ工程は、炊飯液の沸騰状態を維持して水を蒸発させ、米の糊化を全体の50%〜60%まで進行させる。
【0062】
次に、下記のステップS1041〜ステップS1044によって構成される蒸らし工程(ステップS104)について説明する。
【0063】
(S1041)
制御部23は、蒸らし工程が開始するのと同時に、蒸らし工程動作の経過時間fの計測を開始する。
【0064】
(S1042)
次に、制御部23は、内部温度センサー14から受信した内部温度が、炊飯液の沸騰温度の状態となるように維持し、かつ、米粒の水分分布を均一にして米の糊化が100%近傍となるように被加熱部への加熱を維持するように、インバーター部22に制御信号を送信し、インバーター部22は、その制御信号に基づいた電力を加熱コイル3に供給する。
【0065】
(S1043)
ステップS1042においては、米の糊化が100%近傍まで進んでおり、「おかゆ」又は「炊きこみ」が選択されている場合には具材も混入されているので、被加熱物が鍋状容器5の鍋底に焦げ付きやすい状態となっている。このため、制御部23は、鍋底温度センサー4から鍋底温度(T5とする)を受信して、鍋底温度T5を監視している。すなわち、制御部23は、この鍋底温度T5が所定の焦げ付き防止温度Tに達したか否か判定する。制御部23が、鍋底温度T5が焦げ付き防止温度Tに達していないと判定した場合は、ステップS1044へ進む。また、制御部23が、鍋底温度T5が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合は、鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付く直前であるものと判断し、ステップS106へ進む。
【0066】
(S1044)
次に、制御部23は、蒸らし工程動作の経過時間fが所定時間Fに達したか否か判定する。制御部23が、経過時間fが所定時間Fに達していないと判定した場合は、ステップS1043へ戻る。また、制御部23が、経過時間fが所定時間Fに達したと判定した場合は、蒸らし工程(ステップS104)を終了し、ステップS105へ進む。
【0067】
以上のように、蒸らし工程は、内部温度を炊飯液の沸騰温度の状態となるように維持し、かつ、米粒の水分分布を均一にして米の糊化を100%近傍にまで進行させる。
【0068】
(S105)
蒸らし工程終了後、制御部23は、炊飯工程が終了したことをユーザーに知らせるため、報知手段(図示せず)にユーザーに対し報知させる。以上の動作によって、予熱工程、沸騰工程、ドライアップ工程及び蒸らし工程によって構成される炊飯工程が終了する。
【0069】
(S106)
制御部23が、ステップS1033において鍋底温度T4が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合、又は、ステップS1043において鍋底温度T5が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて被加熱物の加熱を停止し、報知手段にユーザーに対して鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付いている、又は、焦げ付いている可能性がある旨の報知をさせる。
【0070】
なお、図9で示されるように、ドライアップ工程におけるステップS1033及び蒸らし工程におけるステップS1043における焦げ付きを抑制するための閾値となる温度として、双方、焦げ付き防止温度Tとして共通にしているが、双方の工程において被加熱物の状態は異なるので、双方の工程に適した別々の値を焦げ付き防止温度として焦げ付きの判定が実施されるものとしてもよい。
また、ごはん又は具材のないおかゆ等のように、鍋状容器5の鍋底に焦げ付きが通常想定されないとする場合、ドライアップ工程におけるステップS1033、蒸らし工程におけるステップS1043及び加熱停止をするステップS106に係る焦げ付き防止機能は備えない構成としてもよい。
【0071】
(実施の形態1の効果)
以上のような構成及びリゾットの炊飯工程動作のように、強火1工程において、できるだけ早く鍋状容器5の炊飯液を沸騰させて米粒の表層部を糊化させ、米粒内部まで吸水が進むのを抑制し、強火2工程において、強い沸騰を維持することによって米粒の表層部の糊化をさらに進め、この強い沸騰状態によって被加熱部を対流させ、さらに、この対流によって糊化した米粒の表層部の一部が炊飯液に溶出してとろみを形成し、弱火工程において、鍋状容器5内の被加熱部を焦げ付かせず、かつ、吹きこぼれない程度の沸騰を維持することによって、被加熱物における米粒をアルデンテの状態にし、リゾットとして好ましい軟らかさにすることができ、簡単に美味しいリゾットを調理することができる。
また、強火2工程においては、被加熱物の沸騰による対流によってとろみが形成されることで、調理中に鍋等の近傍に調理者がつきっきりでリゾットをヘラで攪拌する必要がなく、簡便にリゾットを調理することができる。
また、強火2工程における被加熱物の沸騰による対流によって、被加熱部が均質に混ざり合って加熱具合のばらつきを抑制することができる。
また、強火2工程及び弱火工程において加熱コイル3が連続的にではなく間欠的に電力が供給されることによって、加熱コイル3の消耗あるいは故障の発生を抑制することができる。
また、白米リゾットの調理において、米が吸水する水量、とろみとなる水量、及び、加熱中に蒸発する水量を合わせて米重量の2.5〜3.5倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することで美味しい白米リゾットを作ることができる。
また、玄米リゾットの調理において、米が吸水する水量、とろみとなる水量、及び、加熱中に蒸発する水量を合わせて米重量の3〜4倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することで美味しい玄米リゾットを作ることができる。
また、玄米のみを用いてリゾットを作る場合は、お茶漬けのようなサラサラしたリゾットとなってしまって美味しくないが、玄米と白米との混米とすることによって、リゾットとして好ましいとろみを付与することができる。
また、玄米を用いてもリゾットを作ることができ、料理のバリエーションを増やすことができる。
また、発芽玄米リゾットの調理において、米が吸水する水量、とろみとなる水量、及び、加熱中に蒸発する水量を合わせて米重量の2.5〜3.5倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することで美味しい発芽玄米リゾットを作ることができる。
また、発芽玄米のみを用いてリゾットを作る場合は、お茶漬けのようなサラサラしたリゾットとなってしまって美味しくないが、発芽玄米と白米との混米とすることによって、リゾットとして好ましいとろみを付与することができる。
また、発芽玄米を用いてもリゾットを作ることができ、料理のバリエーションを増やすことができる。
また、以上のようなリゾットの炊飯工程において、調理する米の量を炊き干し法によって調理できる米の最大調理可能量の大体1/5以下とすることによって、吹きこぼれの発生を抑制することができる。
また、ユーザーが計量カップを用いて水を計量することによって、鍋状容器5内に水位目盛りを備える必要がなく、水を鍋状容器5内に入れるタイミングは具及び調味料等を入れる前と後のいずれでもよく、水も計量しやすいため水量を正確に調整することができる。
また、玄米又は発芽玄米と白米との混合比(体積比)を3:1又は4:1とする場合に、リゾット用の計量用カップをわざわざ用意する必要がなく、通常のごはんを炊くときに用いる1合カップを併用することができ、カップの目盛りに合わせて米を計量することによって計量ミスを防ぐことができる。
また、報知手段によってユーザーに炊飯工程が終了したことが報知されることによって、鍋状容器5が有する余熱によって米粒がふやけてしまうことを抑制することができる。
そして、リゾットの炊飯工程、及び、炊き干し法によるごはん、おかゆ及び炊きこみの炊飯工程において、焦げ付き防止機能を備えたことにより、被加熱部の鍋状容器5への焦げ付きを抑制し、食感のよい美味しいリゾット、ごはん、おかゆ及び炊きこみごはんを調理することができる。
【0072】
実施の形態2.
(操作/表示部15の構成)
図10は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器に備えられている操作/表示部15の正面図である。以下、本実施の形態においては、前述の実施の形態1に係る炊飯器と相違する構成及び動作を中心に説明する。
図10で示されるように、操作/表示部15の略中央部には液晶表示板31が配置されており、その液晶表示板31の左側には、「白米」、「無洗米」、「発芽玄米」及び「玄米」のうちから米の種類を選択する米種選択スイッチ32、米の炊き方、すなわち、炊き上がりの米の硬さを「ふつう」、「かため」及び「やわらか」のうちから選択する硬さ選択スイッチ33、並びに、「ごはん」、「リゾット・コンソメ」、「リゾット・トマト」、「リゾット・クリーム」、「おかゆ」及び「炊きこみ」のうちから調理メニューを選択するメニュー選択スイッチ34が設けられている。
【0073】
上記のスイッチのうちメニュー選択スイッチ34の操作によって、調理メニューを選択した際に、どの調理メニューが選択されているかを表示するメニュー表示部37aが、液晶表示板31における硬さ表示部36の下部に設けられている。例えば、メニュー選択スイッチ34の操作によって「リゾット・トマト」が選択されている場合は、その「リゾット」及び「トマト」の文字表示部が点灯し、また、「ごはん」が選択されている場合は、メニュー表示部37を構成するすべての文字表示部が消灯する。なお、「ごはん」が選択されていることを示す場合、メニュー表示部37に「ごはん」という文字表示部を設け、その文字表示部が点灯するように構成するものとしてもよい。また、操作/表示部15におけるその他の構成は実施の形態1に係る操作/表示部15と同様である。
【0074】
(調理ソースを加えたリゾットの調理動作)
図11は本発明の実施の形態2に係る炊飯器によってリゾットを調理する場合における鍋状容器5への具材の投入状態を示す図であり、図12は本発明の実施の形態2に係る炊飯器における調理ソースを加えた白米リゾットの調理中の炊飯器の内部温度及び釜底温度の推移、並びに、加熱コイル3に印加する電力を示す図である。以下、図11及び図12を参照しながら、調理ソースを加えた白米リゾットの調理動作について説明するが、前述の実施の形態1に係る白米リゾットの調理動作と相違する点を中心に説明する。
【0075】
まず、ユーザーは、炊飯器の蓋を開け、図11で示されるように、鍋状容器5内に被加熱物として白米51及び水52を投入する。なお、鍋状容器5は容器カバー2に着脱自在に収納されているので、ユーザーは、鍋状容器5を容器カバー2から取り出して、上記の被加熱物を投入し、そして、その被加熱物が投入された鍋状容器5を容器カバー2に収納するものとしてもよい。
【0076】
水の投入の際、ユーザーは、例えば、200ml計量カップを用いて、投入した米量に対する適量の水を計量し、鍋状容器5に投入する。また、炊き干し法によって白米のごはんを炊飯する場合、米重量の1.5倍の量の水を投入して炊飯するが、本実施の形態に係るリゾットの場合、米が吸水する水量、とろみとなる水量、及び、加熱中に蒸発する水量を合わせて米重量の2.5〜3.5倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することで美味しい白米リゾットを作ることができる。すなわち、米重量の0〜1.5倍量未満の水量では硬いごはんとなり、1.5〜2.5倍の水量未満であればとろみの量が十分でなく、そして、3.5倍の水量より多ければとろみがゆるく硬めのおかゆのようになってしまうため、米重量の2.5〜3.5倍の量の水を鍋状容器5に投入して加熱することでリゾットとして好ましい状態となる。
【0077】
次に、ユーザーは、図11で示されるように、白米51及び水52が投入された鍋状容器5に、調理ソース53としてクリームソースを投入した後、蓋を閉める。そして、ユーザーは、操作/表示部15の米種選択スイッチ32を操作して「白米」を選択、硬さ選択スイッチ33を操作して「ふつう」を選択、及び、メニュー選択スイッチ34を操作して「リゾット・クリーム」を選択し、炊飯スイッチ39を押下する。なお、硬さ選択スイッチ33が操作されずに、炊飯スイッチ39が押下された場合、リゾットのできあがりの硬さをデフォルトで「ふつう」に選択されたものとして炊飯工程が開始するものとしてもよい。この炊飯スイッチ39が押下されることによって炊飯工程が開始する。
【0078】
炊飯スイッチ39を押下することによって開始される炊飯工程は、実施の形態1において説明した図4で示されるフローチャートと同様である。ただし、本実施の形態においては、白米等の米のみだけではなく、調理ソース53が投入されているので、水52と混合された調理ソース53等で構成される炊飯液の流動性は低くなり、沸騰状態において対流がしにくく、また、米粒へ火が通りにくくなる。このとき、図4で示されるような、強い沸騰を維持し、米粒の表層部の澱粉の糊化を進め、被加熱物を対流させてとろみを形成する強火2工程の加熱時間を、実施の形態1で説明した通常の白米リゾットを炊飯する場合の強火2工程の加熱時間と同一の時間とすると、鍋状容器5に焦げ付いてしまう可能性がある。また、被加熱物における米粒をアルデンテの状態にし、リゾットとして好ましい軟らかさにする弱火工程の加熱時間を、実施の形態1で説明した通常の白米リゾットを炊飯する場合の弱火工程の加熱時間と同一の時間とすると、米粒に十分に火が通らず好ましい軟らかさにすることができない。したがって、図12で示されるように、強火2工程の加熱時間を、図4で示された実施の形態1に係る白米リゾットの炊飯工程における強火2工程の加熱時間よりも短くし、弱火工程の加熱時間を、実施の形態1に係る白米リゾットの炊飯工程における弱火工程の加熱時間よりも長く設定して調理する。
【0079】
なお、調理ソース53としてはトマトソース又はクリームソースを投入しているので、他のコンソメソースと比較して流動性は低いので、調理ソース53として、コンソメソースを選択して鍋状容器5に投入した場合は、前述したようにトマトソース又はクリームソースを鍋状容器5に投入した場合と比較して、強火2工程の時間を長くし、弱火工程の時間を短く設定するものとすればよい。
また、上記のように調理ソース53を鍋状容器5に投入し場合、その炊飯工程における強火2工程の加熱時間を、実施の形態1に係る白米リゾットの炊飯工程における強火2工程よりも短く、そして、弱火工程の加熱時間を、同白米リゾットの炊飯工程における弱火工程よりも長くするものとしたが、これに限られるものではなく、強火2工程の加熱時間のみを調整、又は、弱火工程の加熱時間のみを調整するものとしてもよい。
【0080】
図13は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器において白米リゾットを調理する場合において、流動性の低い調理コースを投入した場合(図13(a))及び流動性の高い調理ソースを投入した場合(図13(b))の強火2工程及び弱火工程の加熱時間の合計とその加熱後の米粒の硬さとの関係を示した図である。
図13(a)で示されるように、鍋状容器5に流動性の低い調理ソース53(例えば、トマトソース又はクリームソース)を投入した場合、強火2工程及び弱火工程の加熱時間の合計時間が、10分〜18分程度で十分に米粒に火が通り、加熱後の米粒の硬さが適当なものとなる。一方、図13(b)で示されるように、鍋状容器5に流動性の高い調理ソース53(例えば、コンソメソース)を投入した場合、流動性が低い調理ソース53よりも火が通りやすいので、強火2工程及び弱火工程の加熱時間の合計時間が、6分〜14分程度で加熱後の米粒の硬さが適当なものとなる。以上のように、前述のように操作/表示部15においてリゾットの調理ソース53を選択することができる場合には、被加熱物の沸騰検知後、すなわち、強火1工程終了後の強火2工程及び弱火工程の加熱時間の合計時間を調整すればよい。
【0081】
なお、前述のように操作/表示部15においてリゾットの調理ソース53を選択することができず、調理ソースが加えられるか否かのみを選択することができる場合で、調理ソースが加えられると選択されている場合、図13で示されるような流動性が低い調理ソース53を投入した場合及び流動性が高い調理ソース53を投入した場合の双方がリゾットとして適当な硬さとなる加熱時間、すなわち、強火2工程及び弱火工程の加熱時間の合計時間が、10分〜14分程度なるように設定すればよい。この場合、調理ソースが加えられるか否かのみを選択する手段は、本発明の「メニュー有無選択操作手段」に相当するものである。
【0082】
(実施の形態2の効果)
以上のような構成及びリゾットの炊飯工程動作のように、鍋状容器5に調理ソース53を投入することで、様々な味付けのリゾットを美味しく調理することができる。
また、白米及び水を投入後に、調理ソース53を投入することによって、調理ソース53が直接、鍋状容器5の底部に接することを回避することができ、加熱中の焦げ付きを抑制することができる。
【0083】
なお、上記の説明では投入する米として白米のみを使用した場合を説明したが、これに限られるものではなく、玄米と白米との混米、又は、発芽玄米と白米との混米を使用してもよい。この場合、白米のみを使用したリゾットを炊飯する場合よりも弱火工程を長く設定するものとすればよい。
【0084】
実施の形態3.
(白米のリゾットの調理動作)
図14は、本発明の実施の形態3に係る炊飯器によってリゾットを調理する場合の炊飯工程の動作を示すフローチャートである。以下、本実施の形態においては、前述の実施の形態1及び実施の形態2に係る炊飯器と相違する動作を中心に説明する。ここで、本実施の形態に係る炊飯器の構成は、実施の形態1に係る炊飯器の構成、又は、実施の形態2に係る炊飯器と同一であるものとする。以下、図14を参照しながら、実施の形態1に係る図4において説明した白米リゾットの調理動作と相違する点を中心に説明し、説明のないステップの動作については実施の形態1と同一であるものとする。
【0085】
まず、ステップS21〜ステップS29によって構成される強火2工程(ステップS2)について説明する。
【0086】
(S23)
強火2工程では、インバーター部22が弱火工程よりも大きな電力を加熱コイル3に供給して被加熱物を加熱し、米粒の表層部の糊化及びとろみの形成が進むため、被加熱物が鍋状容器5の鍋底に焦げ付きやすく、また吹きこぼれやすい状態へと変化していく。このため、制御部23は、鍋底温度センサー4から鍋底温度(T1とする)を受信して、鍋底温度T1を監視している。すなわち、制御部23は、この鍋底温度T1が所定の焦げ付き防止温度Tに達したか否か判定する。制御部23が、鍋底温度T1が焦げ付き防止温度Tに達していないと判定した場合は、ステップS24へ進む。また、制御部23が、鍋底温度T1が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合は、鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付く直前であるものと判断し、ステップS25へ進む。
【0087】
(S25)
制御部23は、強火2工程動作の経過時間aの計測を一時停止する。
【0088】
(S26)
制御部23は、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて鍋状容器5の誘導加熱を一時停止する。また、制御部23は、報知手段にユーザーに対して焦げ付き防止のために加熱を一時停止したことを報知させる。
【0089】
(S27)
報知手段によって報知を受けたユーザーは、炊飯器の蓋を開け、鍋状容器5の被加熱物の状態を確認し、特に鍋状容器5の底部について焦げ付いていないか確認し、被加熱物をかき混ぜる等して被加熱物の混合状態を均質にして再び蓋を閉める。このとき、外蓋開閉センサー10は、ユーザーによって蓋が開けられたか検出し、さらに、ユーザーによって蓋が閉められたかを検出し、制御部23は、その双方の検出情報を外蓋開閉センサー10から受信する。また、制御部23は、その検出情報を記憶部24に記憶させる。そして、ユーザーは、炊飯スイッチ39を押下する。
なお、ここでの炊飯スイッチ39は、本発明の「加熱再開操作手段」に相当するものである。
【0090】
(S28)
制御部23は、ユーザーによって炊飯スイッチ39が押下されたことを検出すると、ステップS27においてユーザーによって炊飯器の蓋が開けられたか否か、及び、閉められたか否かについて記憶部24に記憶されている検出情報に基づいて判定する。この判定の結果、制御部23が、ユーザーによって蓋が一度開けられており、かつ、その後、閉められていると判定した場合、ステップS29へ進む。一方、制御部23が、ユーザーによって蓋が開けられていない、又は、蓋が開けられた状態のままであると判定した場合は、ステップS26へ戻る。なお、ステップS27において、制御部23は、外蓋開閉センサー10によって検出されたユーザーによって蓋が開けられたか否か、及び、その後ユーザーによって蓋が閉められたか否かの情報を記憶部24に記憶させている動作としているが、これに限られるものではなく、制御部23は、外蓋開閉センサー10によって検出されたユーザーによって蓋が開けられたか否かのみの情報を記憶部24に記憶し、その後、蓋が閉められているか否かは、炊飯スイッチ39が押下されたタイミングで外蓋開閉センサー10の検出情報から判定するものとしてもよい。
【0091】
(S29)
制御部23は、強火2工程動作の経過時間aの計測を再開し、ステップS22へ戻る。
【0092】
まず、ステップS31〜ステップS39によって構成される弱火工程(ステップS3)について説明する。
【0093】
(S33)
弱火工程では、強火2工程において既に被加熱物は、とろみが形成されているため、被加熱物が鍋状容器5の底部に焦げ付きやすい。このため、制御部23は、鍋底温度センサー4から鍋底温度T2を受信して、鍋底温度T2を監視している。すなわち、制御部23は、この鍋底温度T2が所定の焦げ付き防止温度Tに達したか否か判定する。制御部23が、鍋底温度T2が焦げ付き防止温度Tに達していないと判定した場合は、ステップS34へ進む。また、制御部23が、鍋底温度T2が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合は、鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付く直前であるものと判断し、ステップS35へ進む。
【0094】
(S35)
制御部23は、弱火工程動作の経過時間bの計測を一時停止する。
【0095】
(S36)
制御部23は、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて鍋状容器5の誘導加熱を一時停止する。また、制御部23は、報知手段にユーザーに対して焦げ付き防止のために加熱を一時停止したことを報知させる。
【0096】
(S37)
報知手段によって報知を受けたユーザーは、炊飯器の蓋を開け、鍋状容器5の被加熱物の状態を確認し、特に鍋状容器5の底部について焦げ付いていないか確認し、被加熱物をかき混ぜる等して被加熱物の混合状態を均質にして再び蓋を閉める。このとき、外蓋開閉センサー10は、ユーザーによって蓋が開けられたか検出し、さらに、ユーザーによって蓋が閉められたかを検出し、制御部23は、その双方の検出情報を外蓋開閉センサー10から受信する。また、制御部23は、その検出情報を記憶部24に記憶させる。そして、ユーザーは、炊飯スイッチ39を押下する。
なお、ここでの炊飯スイッチ39は、本発明の「加熱再開操作手段」に相当するものである。
【0097】
(S38)
制御部23は、ユーザーによって炊飯スイッチ39が押下されたことを検出すると、ステップS27においてユーザーによって炊飯器の蓋が開けられたか否か、及び、閉められたか否かについて記憶部24に記憶されている検出情報に基づいて判定する。この判定の結果、制御部23が、ユーザーによって蓋が一度開けられており、かつ、その後、閉められていると判定した場合、ステップS39へ進む。一方、制御部23が、ユーザーによって蓋が開けられていない、又は、蓋が開けられた状態のままであると判定した場合は、ステップS36へ戻る。なお、ステップS37において、制御部23は、外蓋開閉センサー10によって検出されたユーザーによって蓋が開けられたか否か、及び、その後ユーザーによって蓋が閉められたか否かの情報を記憶部24に記憶させている動作としているが、これに限られるものではなく、制御部23は、外蓋開閉センサー10によって検出されたユーザーによって蓋が開けられたか否かのみの情報を記憶部24に記憶し、その後、蓋が閉められているか否かは、炊飯スイッチ39が押下されたタイミングで外蓋開閉センサー10の検出情報から判定するものとしてもよい。
【0098】
(S39)
制御部23は、弱火工程動作の経過時間bの計測を再開し、ステップS32へ戻る。
【0099】
なお、実施の形態1における図4のフローチャートにおけるステップS5の動作は、本実施の形態に係る図14におけるステップS26及びステップS36によって動作が代替されており、本実施の形態においてはステップS5の動作はない。
【0100】
(実施の形態3の効果)
以上の動作によって、リゾットの炊飯工程において、焦げ付き防止機能を備えたことにより、被加熱部の鍋状容器5への焦げ付きを抑制すると共に、鍋底温度センサー4によって焦げ付く直前の状態を検知し、制御部23が一時加熱を停止することによって、ユーザーに鍋状容器5内の被加熱物をかき混ぜるタイミングを与えることによって、リゾットの調理を継続させることができるので、焦げ付きを抑制し、使い勝手のよい炊飯器を得ることができる。
【0101】
なお、上記の動作においては、白米リゾットを調理する場合の動作を説明したが、これに限られるものではなく、玄米リゾット及び発芽玄米リゾットについての炊飯動作にも適用できるのは言うまでもない。
また、上記のように、図14で示されるリゾットの炊飯工程について説明したが、本実施の形態に係る焦げ付き防止機能、及び、ユーザーによるかき混ぜ後の再加熱機能は、実施の形態1の図9で示されるごはん、おかゆ及び炊きこみごはんの炊飯工程にも適用できるのは言うまでもない。
【0102】
実施の形態4.
(白米のリゾットの調理動作)
図15は、本発明の実施の形態4に係る炊飯器によってリゾットを調理する場合の炊飯工程、保温工程及び再加熱工程の動作を示すフローチャートである。以下、本実施の形態においては、前述の実施の形態1及び実施の形態2に係る炊飯器と相違する動作を中心に説明する。ここで、本実施の形態に係る炊飯器の構成は、実施の形態1に係る炊飯器の構成、又は、実施の形態2に係る炊飯器と同一であるものとする。
以下、図15を参照しながら、本実施の形態に係るリゾットの実施の形態1に係る図4において説明した白米リゾットの調理動作と相違する点を中心に説明し、説明のないステップの動作については実施の形態1と同一であるものとする。
【0103】
実施の形態1における図4で示されるステップS4の終了後、本実施の形態においては、保温工程(ステップS6)へ進む。次に、ステップS61〜ステップS66によって構成される保温工程(ステップS6)について説明する。
【0104】
(S61)
制御部23は、保温工程が開始するのと同時に、保温工程動作の保温経過時間の計測を開始する。このとき、制御部23は、計測している保温経過時間を操作/表示部15における時間表示部38に表示させる。
【0105】
(S62)
次に、インバーター部22、制御部23からの制御信号を受信し、その制御新号に基づいて、炊飯動作のための電力よりも小さい保温用の電力を加熱コイル3に供給する。なお、鍋状容器5内の被加熱物の保温用としては、加熱コイル3のみの使用に限定されるものではなく、蓋ヒーター11を加熱コイル3の代用としてもよく、又は、双方を併用するものとしてもよい。
【0106】
(S63)
ステップS1〜ステップS4によるリゾットの炊飯工程後、ユーザーが、そのリゾットが硬くて食感が悪いと判断した場合等で、そのリゾットを炊飯器によって再度加熱してリゾットを軟らかくしたい場合等、炊飯スイッチ39を再加熱工程を実施させるために押下する。このとき、ユーザーが炊飯スイッチ39を押下しない場合は、ステップS65へ進み、再加熱工程を実施させるために炊飯スイッチ39を押下した場合は、ステップS64へ進む。
なお、ここでの炊飯スイッチ39は、本発明の「再加熱操作手段」に相当するものである。
【0107】
(S64)
制御部23は、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて鍋状容器5に対する保温用の加熱を一時停止する。さらに、制御部23は、保温工程動作の保温経過時間の計測を一時停止して、保温工程(ステップS6)を終了し、再加熱工程(ステップS7)へ進む。
【0108】
(S65)
ユーザーは、長時間に及ぶ鍋状容器5内の被加熱物の保温によって、被加熱物の酸化等による腐食が進み、その被加熱物を廃棄したい場合等に、切/保温スイッチ42を押下する。
【0109】
(S66)
制御部23は、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて鍋状容器5に対する保温用の加熱を停止する。さらに、制御部23は、保温工程動作の保温経過時間の計測を停止して、保温工程(ステップS6)を終了する。
【0110】
次に、下記のステップS71〜ステップS75によって構成される再加熱工程(ステップS7)について説明する。
【0111】
(S71)
制御部23は、再加熱工程が開始するのと同時に、再加熱工程動作の経過時間dの計測を開始する。
【0112】
(S72)
インバーター部22は、制御部23から制御信号を受信し、その制御信号に基づいて、強火1工程及び強火2工程において供給される電力よりも小さい弱火工程における同様の電力を加熱コイル3に供給する。
【0113】
(S73)
この再加熱工程においては、ステップS1〜ステップS4によって構成される炊飯工程が既に終了しているため、被加熱物はとろみが形成されている可能性が高く、その場合被加熱物が鍋状容器5の底部に焦げ付きやすい。このため、制御部23は、鍋底温度センサー4から鍋底温度(T3とする)を受信して、鍋底温度T3を監視している。すなわち、制御部23は、この鍋底温度T3が所定の焦げ付き防止温度Tに達したか否か判定する。制御部23が、鍋底温度T3が焦げ付き防止温度Tに達していないと判定した場合は、ステップS74へ進む。また、制御部23が、鍋底温度T3が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合は、鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付く直前であるものと判断し、ステップS76へ進む。
【0114】
(S74)
次に、制御部23は、再加熱工程動作の経過時間dが所定時間Dに達したか否か判定する。制御部23が、経過時間dが所定時間Dに達していないと判定した場合は、ステップS73へ戻る。また、制御部23が、経過時間dが所定時間Dに達したと判定した場合は、ステップS75へ進む。
【0115】
(S75)
制御部23は、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて鍋状容器5の誘導加熱を終了させる。そして、制御部23は、リゾットの再加熱工程が終了したことをユーザーに知らせるため、報知手段にユーザーに対し報知させて、ステップS6(保温工程)へ戻る。以上の動作によって、再加熱工程が終了する。上記のように、報知手段によってユーザーに炊飯工程が終了したことが報知されることによって、鍋状容器5が有する余熱によって米粒がふやけてしまうことを抑制することができる。
【0116】
(S76)
制御部23が、ステップS73において鍋底温度T3が焦げ付き防止温度Tに達したと判定した場合、インバーター部22に加熱コイル3への電力の供給を停止させて被加熱物の加熱を停止し、報知手段にユーザーに対して鍋状容器5内の被加熱物が焦げ付いている、又は、焦げ付いている可能性がある旨の報知をさせる。
【0117】
(実施の形態4の効果)
以上の動作によって、リゾットの炊飯工程後において、ユーザーが、そのリゾットが硬くて食感が悪いと判断した場合等に、炊飯器によって再度加熱してリゾットを軟らかくして食感よくして美味しいリゾットを調理することができるので、使い勝手のよい炊飯器を得ることができる。
また、リゾットの炊飯工程の後に、保温工程を設けたことによって、炊飯工程後の被加熱物を冷ますことなく、美味しい状態のリゾットを維持することができる。
【0118】
なお、図15で示されるように、ステップS73における焦げ付きを抑制するための閾値となる温度として、図4に係る強火2工程におけるステップS23及び弱火工程におけるステップS33における焦げ付き防止温度Tと同様にしているが、強火2工程及び弱火工程と再加熱工程とにおいて被加熱物の状態は異なるので、双方の工程に適した別々の値を焦げ付き防止温度として焦げ付きの判定が実施されるものとしてもよい。
また、図15で示されるステップS4後の保温工程(ステップS6)及び再加熱工程(ステップS7)は、実施の形態1の図9で示される炊き干し法によるごはん、おかゆ及び炊き込みの炊飯工程の後に適用してもよく、また、実施の形態3の図14で示されるリゾットの炊飯工程の後に適用してもよい。
さらに、上記の動作においては、保温工程(ステップS6)のステップS63における再加熱工程(ステップS7)を実施させるためにユーザーが炊飯スイッチ39を押下する動作としているが、これに限られるものではなく、操作/表示部15に炊飯スイッチ39とは別に再加熱用のボタンを設ける構成とし、ユーザーが再加熱工程を実施させる場合、その再加熱用のボタンを押下する動作としてもよい。
【0119】
実施の形態5.
(誘導加熱調理器の全体構成)
図16は、本発明の実施の形態5に係る誘導加熱調理器の全体構成図である。
図16で示されるように、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、被加熱物を投入する鍋101が、透明で赤外線を透過しセラミックス等で構成された天板103に載置されている。この鍋101の開口部は、蓋102で覆われており、蓋102には、被加熱部から蒸発する水蒸気等を外部に放出するための蒸気口(図示せず)が設けられている。また、天板103の下方には、鍋101に対向する位置に加熱コイル104が設けられており、その加熱コイル104は、加熱コイル104に高周波電力に供給するインバーター部105に接続されている。また、鍋101の底面から放射される赤外線を検知する赤外線検出手段106が、加熱コイル104の中央、かつ、天板103の下面に設置されている。この赤外線検出手段106は、温度検知手段107に接続されており、鍋101の底面から放射される赤外線情報を、温度検知手段107に出力する。この温度検知手段107は沸騰検知手段108に接続されており、この沸騰検知手段108は、温度検知手段107によって赤外線検出手段106から受信した赤外線情報に基づいて算出した鍋101の鍋底温度を受信し、鍋101内の被加熱物が沸騰しているか否かを検知する。また、インバーター部105は、制御部109に接続されており、制御部109から制御新号を受信し、その制御新号に基づいて、加熱コイル104に高周波電力を供給する。また、温度検知手段107及び沸騰検知手段108は、制御部109に接続されており、温度検知手段107は鍋底温度情報を、そして、沸騰検知手段108は沸騰検知情報を、制御部109に出力する。そして、制御部109には、操作/表示部110が接続されており、この操作/表示部110は、以上のような構成を有する誘導加熱調理器の操作情報を制御部109へ送信し、また、誘導加熱調理器の調理状態の表示等を行う。さらに、操作/表示部110は、実施の形態1における図3又は実施の形態2における図10で示される操作/表示部15と同様の構成となっている。
なお、加熱コイル104及び制御部109は、それぞれ本発明の「加熱手段」及び「制御手段」に相当するものである。また、赤外線検出手段106及び温度検知手段107は、本発明の「鍋温度検知手段」に相当するものである。
【0120】
なお、操作/表示部110の各操作スイッチ及び表示部の構成は、図3又は図10で示される操作/表示部15と同一である必要はなく、また、例えば、切/保温スイッチ42は、通常の誘導加熱調理器に備えられているような点火スイッチ等に置換される構成としてもよい。
【0121】
(リゾットの調理動作)
本実施の形態に係る誘導加熱調理器におけるリゾットの炊飯工程動作は、実施の形態1又は実施の形態2において説明した炊飯工程動作、すなわち、図4で示されるフローチャートと同様の炊飯工程によって実施される。以下に、実施の形態1又は実施の形態2(以下、「実施の形態1等」という)に係る炊飯器を構成する部品と本実施の形態に係る誘導加熱調理器を構成する部品との対応、及び、その炊飯工程動作を補足的に説明する。
【0122】
実施の形態1等における鍋状容器5及びその開口部を覆う蓋は、本実施の形態において、それぞれ鍋101及び蓋102に相当する。
【0123】
また、実施の形態1等における加熱コイル3、インバーター部22及び制御部23は、本実施の形態において、それぞれ加熱コイル104、インバーター部105及び制御部109に相当する。このインバーター部105は、制御部109からの受信する制御信号に基づいて、白米リゾットの炊飯工程においては図5(b)、玄米リゾットの炊飯工程においては図7(b)及び発芽玄米リゾットの炊飯工程においては図8(b)で示されるような電力を加熱コイル104に供給し、鍋101を介してその内部の被加熱物を加熱する。
【0124】
また、実施の形態1等における操作/表示部15は、本実施の形態においては、前述したように操作/表示部110に相当し、ユーザーは、操作/表示部110を操作して、米種、米の硬さ又はメニューを選択する。
【0125】
また、実施の形態1等における内部温度センサー14は、本実施の形態において、赤外線検出手段106、温度検知手段107及び沸騰検知手段108に相当する。この赤外線検出手段106、温度検知手段107及び沸騰検知手段108は、図4で示される強火1工程のステップS12において鍋101内の被加熱物の沸騰を検知し、その沸騰検知情報を制御部109に出力して、制御部109は、強火2工程に移行させる。
【0126】
また、実施の形態1等における鍋底温度センサー4は、本実施の形態において、赤外線検出手段106及び温度検知手段107に相当する。図4で示される強火2工程のステップS23及び弱火工程のステップS33において、この赤外線検出手段106及び温度検知手段107は鍋底温度T1を検出し、制御部109はその鍋底温度T1が焦げ付き防止温度Tに達したか否かを判定する。
【0127】
(実施の形態5の効果)
以上の構成及び動作によって、実施の形態1等に係る炊飯器と同様の効果を得ることができる誘導加熱調理器を得ることができる。
【0128】
なお、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、上記のような図4で示されるリゾットの炊飯工程に限定されるものではなく、実施の形態3に係る炊飯器のように、図14で示される焦げ付き防止機能を備えたリゾットの炊飯工程を実施するものとしてもよい。このとき、図14のステップS28及びステップS38における蓋の開閉記憶の確認動作については、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、蓋102によって鍋101の開口部が閉じられているか否かを検出する手段を備えていないので、これらのステップをスキップする動作とすればよい。なお、この蓋102によって鍋101が閉じられているか否かを検出する手段を備えてもよく、この場合、その蓋102による開閉を記憶する記憶手段を備えるものとし、その記憶手段は、制御部109に接続される構成とすればよい。この場合、蓋102によって鍋101が閉じられているか否かを検出する手段は、本発明の「蓋開閉検知手段」に相当するものである。
また、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、上記のような図4及び図14で示されるリゾットの炊飯工程に限定されるものではなく、実施の形態4に係る炊飯器のように、図15で示される保温工程及び再加熱工程を有する炊飯工程を実施するものとしてもよい。
さらに、実施の形態1〜実施の形態4においては炊飯器、そして、実施の形態5においては誘導加熱調理機が、リゾットの炊飯工程、焦げ付き防止機能、又は、保温工程及び再加熱工程を備えるものとしたが、その他の加熱調理機、例えば、ホットプレート及び電子レンジ等にも同様の機能を適用することもできる。
【符号の説明】
【0129】
1 本体、2 容器カバー、3 加熱コイル、3a 第1加熱コイル、3b 第2加熱コイル、4 鍋底温度センサー、4a 圧縮バネ、5 鍋状容器、5a フランジ部、6 支持部材、7 内蓋、8 係止材、9 外蓋、10 外蓋開閉センサー、11 蓋ヒーター、12 蓋パッキン、13 蒸気口、13a 蒸気通路孔、13b 蒸気放出孔、14 内部温度センサー、15 操作/表示部、16 回路部、21 交流電源、22 インバーター部、23 制御部、24 記憶部、31 液晶表示板、32 米種選択スイッチ、33 硬さ選択スイッチ、34 メニュー選択スイッチ、35 米種表示部、36 硬さ表示部、37、37a メニュー表示部、38 時間表示部、39 炊飯スイッチ、40 予約スイッチ、41 時刻スイッチ、42 切/保温スイッチ、51 白米、52 水、53 調理ソース、101 鍋、102 蓋、103 天板、104 加熱コイル、105 インバーター部、106 赤外線検出部、107 温度検知手段、108 沸騰検知手段、109 制御部、110 操作/表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
該本体に載置され、被加熱物が投入される鍋状容器と、
該鍋状容器の開口部を覆う蓋と、
前記本体内部、かつ、前記鍋状容器の下方に設けられ、前記鍋状容器及び該鍋状容器内の前記被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記鍋状容器内の前記被加熱物の沸騰状態を検知する沸騰検知手段と、
前記加熱手段を駆動制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記加熱手段によって前記鍋状容器を加熱させ、
前記被加熱物としてリゾットを調理する炊飯工程を実施し、
該炊飯工程は、
前記沸騰検知手段によって前記被加熱物の沸騰を検知し、前記被加熱物における米粒の表層部が糊化し、その糊化した前記表層部が前記米粒内部への吸水を抑制する強火1工程と、
前記加熱手段により所定時間、前記被加熱物を加熱することによって、前記被加熱物の沸騰状態を維持し、前記米粒の表層部の糊化を進行させつつ、前記被加熱物に対流を発生させ、前記被加熱物における炊飯液に前記米粒の表層部からデンプンを溶出させて前記炊飯液にとろみを形成する強火2工程と、
前記被加熱物が前記鍋状容器に焦げ付かない程度の前記強火1工程及び前記強火2工程よりも弱い加熱力で前記加熱手段により所定時間、前記被加熱物を加熱することによって、前記米粒をアルデンテの状態に仕上げる弱火工程と、
を有する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記鍋状容器の鍋底の温度を検知する鍋温度検知手段を備え、
前記鍋状容器内の前記被加熱物の状態等を報知する報知手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記強火2工程及び前記弱火工程のうち少なくとも一方において、前記加熱手段による前記被加熱物の加熱中に、前記鍋温度検知手段によって検知された温度が、前記被加熱物が前記鍋状容器に焦げ付きを抑制するための閾値となる所定の焦げ付き防止温度に達した場合、前記加熱手段に加熱動作を停止させ、前記報知手段にその旨を報知させる
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
加熱再開操作手段を備え、
前記制御手段は、前記強火2工程及び前記弱火工程のうち少なくとも一方において、前記加熱手段に加熱動作を停止させた後、前記加熱再開操作手段が操作された場合、前記加熱手段に加熱動作を再開させる
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記蓋が前記鍋状容器の前記開口部を覆っているか否かを検知する蓋開閉検知手段と、
該蓋開閉検知手段によって検知された前記蓋の開閉状態等を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記加熱再開操作手段が操作されたことを確認した場合、前記蓋の開閉状態の情報を前記記憶手段から取得し、
該記憶手段から取得した前記蓋の開閉状態の情報が、前記加熱再開操作手段が操作されたことを確認した後に、前記蓋が一度開けられ、その後、前記蓋が閉じられたという条件を満たすことを示す場合、前記加熱手段に加熱動作を再開させ、
該記憶手段から取得した前記蓋の開閉状態の情報が、前記条件を満たさないことを示す場合、前記加熱手段に加熱動作を再開させず、前記報知手段にその旨を報知させる
ことを特徴とする請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記炊飯工程は、前記強火1工程の前に、米の糊化温度よりも低温の水に該米を浸し、該米に吸水させる予熱工程を有さない
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記制御手段は、前記炊飯工程について、前記強火1工程、前記強火2工程、そして、前記弱火工程の順序で実施する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記強火2工程において、前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間は、6分〜8分の範囲である
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記制御手段は、前記強火2工程において、前記加熱手段を間欠的に駆動させる
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記強火2工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間と、前記弱火工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間との合計時間は、20分以下である
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記制御手段は、前記弱火工程において、前記鍋温度検知手段によって検知される前記鍋底の温度を100℃近傍となるように維持し、前記鍋状容器内の前記被加熱物の沸騰状態を維持するように前記加熱手段に前記被加熱物を加熱させる
ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項11】
炊飯する米の種類を選択する米種選択操作手段を備え、
前記制御手段は、前記米種選択操作手段によって選択された前記米の種類によって、前記弱火工程において、前記加熱手段により前記被加熱物を加熱させる前記所定時間を調節する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記炊飯工程後の米の硬さを選択する硬さ選択操作手段を備え、
前記制御手段は、前記硬さ選択操作手段によって選択された前記炊飯工程後の米の硬さによって、前記弱火工程において、前記加熱手段により前記被加熱物を加熱させる前記所定時間を調節する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記炊飯工程後の米の硬さを選択する硬さ選択操作手段を備え、
前記制御手段は、前記硬さ選択操作手段によって選択された前記炊飯工程後の米の硬さによって、前記弱火工程の最後に、前記加熱手段を駆動させない状態にする時間を調整する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記被加熱物に加える調理ソースを選択するメニュー選択操作手段を備え、
前記制御手段は、前記メニュー選択操作手段によって選択された前記調理ソースによって、前記強火2工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間と、前記弱火工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間との合計時間を調節する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項15】
前記制御手段は、
前記メニュー選択操作手段によって流動性が低い前記調理ソースが選択された場合、前記強火2工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間を短く、前記弱火工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間を長くなるように調節し、
前記メニュー選択操作手段によって流動性が高い前記調理ソースが選択された場合、前記強火2工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間を長く、前記弱火工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間を短くなるように調節する
ことを特徴とする請求項14記載の加熱調理器。
【請求項16】
前記制御手段は、
前記メニュー選択操作手段によって流動性が低い前記調理ソースが選択された場合、前記強火2工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間と、前記弱火工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間との合計時間が、10分〜18分の範囲となるように調節する
前記メニュー選択操作手段によって流動性が高い前記調理ソースが選択された場合、前記強火2工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間と、前記弱火工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間との合計時間が、6分〜14分の範囲となるように調節する
ことを特徴とする請求項15記載の加熱調理器。
【請求項17】
前記被加熱物に調理ソースを加えるか否かを選択するメニュー有無選択操作手段を備え、
前記制御手段は、前記メニュー有無選択操作手段によって、調理ソースを加えることが選択された場合、前記強火2工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間と、前記弱火工程において前記被加熱物が前記加熱手段によって加熱される前記所定時間との合計時間が、10分〜14分の範囲になるように調節する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項18】
前記制御手段は、前記リゾットを調理する前記炊飯工程を実施した後、前記鍋状容器内の前記被加熱物を前記加熱手段によって保温させる保温工程を実施する
ことを特徴とする請求項2〜請求項17のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項19】
再加熱操作手段を備え、
前記制御手段は、
前記保温工程の実施中に、前記再加熱操作手段が操作されたことを確認した場合、前記加熱手段に保温動作を停止させ、
前記加熱手段に、前記弱火工程における加熱動作の加熱力と同等の加熱力によって、所定時間、前記鍋状容器内の前記被加熱物を再加熱させる再加熱工程を実施する
ことを特徴とする請求項18記載の加熱調理器。
【請求項20】
前記制御手段は、前記再加熱工程において、前記加熱手段による前記被加熱物の再加熱中に、前記鍋温度検知手段によって検知された温度が、前記焦げ付き防止温度に達した場合、前記加熱手段に加熱動作を停止させ、前記報知手段にその旨を報知させる
ことを特徴とする請求項19記載の加熱調理器。
【請求項21】
前記制御手段によって前記炊飯工程が実施されることによって調理される前記リゾットが、玄米又は発芽玄米、及び、白米が混ぜ合わされたものである場合、前記玄米又は前記発芽玄米と前記白米との体積割合は、3:1又は4:1である
ことを特徴とする請求項1〜請求項20のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項22】
前記制御手段によって前記炊飯工程が実施されることによって調理される前記リゾットが、白米、又は、発芽玄米及び白米が混ぜ合わされたものである場合、前記炊飯工程の実施前に前記鍋状容器に投入される水の量は、前記白米、又は、前記発芽玄米及び前記白米が混ぜ合わされたものの重量の2.5倍〜3.5倍であり、前記リゾットが、玄米及び白米が混ぜ合わされたものである場合、前記炊飯工程の実施前に前記鍋状容器に投入される水の量は、前記玄米及び前記白米が混ぜ合わされたものの重量の3倍〜4倍である
ことを特徴とする請求項1〜請求項21のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項23】
前記制御手段によって前記炊飯工程が実施される前に前記鍋状容器に投入される水は、計量カップによって投入される
ことを特徴とする請求項1〜請求項22のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項24】
前記制御手段によって前記炊飯工程が実施される前に前記鍋状容器に投入される前記被加熱物が、該被加熱物に加える調理ソースが流動性の低い調理ソースの場合は、前記鍋状容器内に米粒及び水を投入した後、前記調理ソースを前記米粒の上に載置してかき混ぜずにそのままの状態で前記炊飯工程を実施するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項23のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項25】
請求項2〜請求項24のいずれかに記載の加熱調理器において、
前記本体は、前記鍋状容器が収納され、
前記蓋は、前記本体の一端に回動自在に支持された
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項26】
前記制御手段は、前記被加熱物としてごはん及び炊きこみごはん等を調理する炊き干し式炊飯工程を実施し、
該炊き干し式炊飯工程は、
米の糊化温度よりも低温の水に該米を浸し、該米に吸水させる予熱工程と、
前記被加熱物を沸騰するまで加熱させる沸騰工程と、
前記被加熱物の沸騰状態を維持して水を蒸発させ、前記米の糊化を進行させるドライアップ工程と、
前記鍋状容器内を前記被加熱物の沸騰温度の状態となるように維持し、前記米の水分分布を均一にして前記米の糊化を100%近傍にまで進行させる蒸らし工程と、
を有する
ことを特徴とする請求項25記載の炊飯器。
【請求項27】
前記制御手段は、前記ドライアップ工程及び前記蒸らし工程のうち少なくとも一方において、前記加熱手段による前記被加熱物の加熱中に、前記鍋温度検知手段によって検知された温度が、前記被加熱物が前記鍋状容器に焦げ付きを抑制するための閾値となる所定の焦げ付き防止温度に達した場合、前記加熱手段に加熱動作を停止させ、前記報知手段にその旨を報知させる
ことを特徴とする請求項26記載の炊飯器。
【請求項28】
前記炊飯工程における前記リゾットの調理可能な米の量は、前記炊き干し式炊飯工程における米の最大調理可能量の1/5以下とする
ことを特徴とする請求項25〜請求項27のいずれかに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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