説明

加熱調理器用ヒーターカバー及び加熱調理器

【課題】加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、油汚れを容易に洗浄し得る加熱調理器用ヒーターカバー及びそれを備える加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器用ヒーターカバー14は、加熱調理器1の加熱体11の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーである。加熱調理器用ヒーターカバー14は、複数の平面部14a、14bと、複数の平面部14a、14bを接続している屈曲部14cとを有する。複数の平面部14a、14bのうち、隣り合う平面部14a、14bのなす角の大きさθが80°〜100°の範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器用ヒーターカバー及びそれを備える加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、図5に示す加熱調理器100が記載されている。図5に示すように、加熱調理器100は、被加熱物を載置するための架台101を備えている。架台101の下方には、複数の加熱体102が配置されている。架台101と複数の加熱体102との間には、透明な耐熱性ガラス板103が配置されている。この耐熱性ガラス板103は、湾曲状に形成されている。この耐熱性ガラス板103により加熱体102の上方が覆われている。このため、例えば、加熱体102は、架台101に載置され、加熱された被加熱物からの飛散物から遮蔽されている。よって、被加熱体からの飛散物による加熱体102の損傷や、加熱体102の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0003】
また、加熱調理器100の駆動中においては、耐熱性ガラス板103が高温になっているため、被加熱物から飛散した油脂は、耐熱性ガラス板103の表面で固化することなく、耐熱性ガラス板103の表面を伝って受け皿104に流れ落ちる。従って、油脂を飛散させるような被加熱物を加熱した場合であっても、耐熱性ガラス板103には、油脂が付着しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−165550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、加熱調理器100では、耐熱性ガラス板103の表面に油脂等が付着しにくい。しかしながら、加熱調理器100においても、耐熱性ガラス板103の表面に油脂等が付着することを完全に防止することはできない。このため、油脂を飛散させる被加熱物の加熱を繰り返すことによって耐熱性ガラス板103の表面に油脂等が堆積していき、加熱効率が低下するといった問題や、衛生上の問題が生じる。このため、耐熱性ガラス板103の表面を定期的に洗浄する必要がある。
【0006】
しかしながら、加熱調理器100では、耐熱性ガラス板103が湾曲状に形成されているため、耐熱性ガラス板103の表面に付着した油脂等を洗浄により確実に除去することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、油汚れを容易に洗浄し得る加熱調理器用ヒーターカバー及びそれを備える加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーである。本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、複数の平面部と、複数の平面部を接続している屈曲部とを有する。複数の平面部のうち、隣り合う平面部のなす角の大きさが80°〜100°の範囲内にある。このように、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、複数の平面部を有する。このため、例えば、ヒーターカバーの全体が湾曲状に形成されている場合とは異なり、スポンジやたわしなどの洗浄治具をヒーターカバーに強く押し当てやすい。従って、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーの表面に油脂などが付着したとしても、付着した油脂を容易に洗浄除去することができる。
【0009】
なお、油汚れの洗浄容易性をより高める観点からは、ヒーターカバーに占める屈曲部の割合が少なく、平面部の割合が多い方が好ましい。具体的には、屈曲部の曲率半径は、平面部の幅の0.01倍〜0.25倍程度であることが好ましい。
【0010】
また、隣り合う平面部のなす角の大きさが大きすぎるとヒーターカバーに飛散した油脂が流れ落ちにくくなり、付着しやすくなる。それに対して本発明では、隣り合う平面部のなす角の大きさが100°以下とされているため、ヒーターカバーに飛散した油脂が流れ落ちやすく、ヒーターカバーに油脂が付着しにくい。
【0011】
一方、隣り合う平面部のなす角の大きさが小さすぎると、平面部間の距離が短くなり、ヒーターカバーの下方に加熱体を近接して配置することができなくなる。このため、加熱調理器が大型化する。それに対して、本発明では、隣り合う平面部のなす角の大きさが80°以上とされているため、加熱体をヒーターカバーに近接して配置することができる。従って、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーを用いることにより、加熱調理器を小型化し得る。
【0012】
本発明において、加熱調理器用ヒーターカバーは、結晶化ガラス板からなることが好ましい。結晶化ガラス板は、高い耐熱性を有し、加熱体の熱の透過性が高く、さらに結晶化ガラス板には油脂が付着しにくい。従って、結晶化ガラス板を用いることにより、高い耐熱性を有し、油汚れが生じ難く、さらに、加熱効率の高い加熱調理器を実現し得る加熱調理器用ヒーターカバーを実現することができる。
【0013】
結晶化ガラス板は、β−スポジュメン固溶体またはβ−石英固溶体を80質量%以上含有するものであってもよい。なかでも、例えば、結晶化ガラス板が不透明であることが求められる場合は、β−スポジュメン固溶体を80質量%以上含有する結晶化ガラス板を用いることが好ましい。一方、結晶化ガラス板が透明であることが求められる場合は、β−石英固溶体を80質量%以上含有する結晶化ガラス板を用いることが好ましい。
【0014】
また、結晶化ガラス板は、熱膨張係数の絶対値が小さなものであることが好ましい。熱膨張係数の絶対値が小さな結晶化ガラス板を用いることにより、加熱調理器用ヒーターカバーの熱的耐久性を向上できるためである。具体的には、結晶化ガラス板の30℃〜750℃における平均線熱膨張係数が−10〜+30×10−7/℃の範囲内にあることが好ましい。
【0015】
本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、厚みばらつきの少ないものであることが好ましい。具体的には、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーの最小厚みが2.7mm以上であり、最大厚みが4.3mm以下であることが好ましい。加熱調理器用ヒーターカバーの厚みばらつきを少なくすることにより、加熱調理器用ヒーターカバーの機械的耐久性を向上することができ、洗浄中における破損を抑制することができるためである。
【0016】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物が載置される載置台と、載置台の下方に配置された加熱体と、載置台の下方において、加熱体の上方を覆うように配置されたヒーターカバーとを備えている。ヒーターカバーは、複数の平面部と、複数の平面部を接続している屈曲部とを有し、複数の平面部のうち、隣り合う平面部のなす角の大きさが80°〜100°の範囲内にある。すなわち、本発明に係る加熱調理器において、ヒーターカバーは、上記本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーにより構成されている。
【0017】
上述のように、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、付着した油脂を容易に洗浄除去することができるものである。従って、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーを備える本発明に係る加熱調理器は、メンテナンス性に優れている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、油汚れを容易に洗浄し得る加熱調理器用ヒーターカバー及びそれを備える加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る加熱調理器の略図的側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る加熱調理器の略図的平面図である。
【図3】図2の線III−IIIにおける略図的断面図である。
【図4】図3のIV部分を拡大した略図的断面図である。
【図5】特許文献1に記載の加熱調理器の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1及び図2に示す加熱調理器1を例に挙げて説明する。但し、加熱調理器1は、単なる例示である。本発明に係る加熱調理は、加熱調理器1に何ら限定されない。
【0021】
図1〜図3に示すように加熱調理器1は、ケーシング10を備えている。図2及び図3に示すように、ケーシング10には、上方に向かって開口する内部空間10aが形成されている。なお、ケーシング10の材質は、耐熱性を有するものである限りにおいて特に限定されない。ケーシング10は、例えば、アルミニウムなどの金属や、ステンレスなどの合金により形成することができる。
【0022】
図1〜図3に示すように、ケーシング10の頂部には、例えば食品などの被加熱物が載置される載置台12が配置されている。載置台12は、被加熱物を載置できる形状を有するものである限り特に限定されない。本実施形態の加熱調理器1は、鶏肉や牛肉などが刺された串を被加熱物とするものであるため、載置台12は、串の両端部を懸架できるように、額縁状に形成されている。
【0023】
図3に示すように、内部空間10aにおいて、載置台12の下方には、複数の加熱体11が配置されている。図2に示すように、本実施形態では、加熱体11は、細長形状に形成されており、y方向に沿って配置されている。複数の加熱体11は、x方向に沿って配列されている。
【0024】
なお、加熱体11は、被加熱物を加熱できるものである限りにおいて特に限定されない。加熱体11は、例えば、ガスバーナー等の火炎を発生させるものであってもよいし、電熱線などにより構成されていてもよいし、赤外線を放射する赤外線放射器により構成されていてもよい。また、加熱体11は、例えば炭などの燃料により構成されていてもよい。
【0025】
図3に示すように、内部空間10aにおいて、加熱体11の下方には、受け皿13が配置されている。被加熱物から飛散した油脂などの飛散物は、受け皿13に流れ落ちる。受け皿13は、清掃容易性の観点から、ケーシング10に対して着脱可能になっている。
【0026】
一方、内部空間10aにおいて、載置台12の下方には、加熱体11の上方を覆うように複数のヒーターカバー14が配置されている。このヒーターカバー14は、被加熱物からの飛散物から加熱体11を保護し、加熱体11の損傷や、加熱体11への飛散物の付着を防止するための部材である。
【0027】
図4に示すように、ヒーターカバー14は、複数の平面部14a、14bと、複数の平面部14a、14bを接続している屈曲部14cとを有する。ヒーターカバー14は、上方に向かって凸状となるように配置されている。
【0028】
例えば、図5に示すように、ヒーターカバーとしての耐熱性ガラス板103が全体として湾曲状に形成されている場合は、油汚れを除去するために、スポンジやたわしなどの洗浄治具で耐熱性ガラス板103の表面を擦ろうとしても、洗浄治具に加えた力が分散してしまい、洗浄治具と耐熱性ガラス板103との間に大きな摩擦力を発生させ難い。このため、耐熱性ガラス板103の洗浄は、困難である。
【0029】
それに対して、本実施形態におけるヒーターカバー14は、複数の平面部14a、14bを有している。このため、洗浄治具に加えた力が分散されにくく、洗浄治具とヒーターカバー14との間に大きな摩擦力を発生させやすい。従って、本実施形態のヒーターカバー14は、油汚れの洗浄が容易である。従って、本実施形態の加熱調理器1は、メンテナンス性に優れている。
【0030】
特に、本実施形態では、屈曲部14cの曲率半径が平面部14a、14bの幅の0.01倍〜0.25倍程度とされている。このため、ヒーターカバー14における平面部14a、14bの占める割合が高いため、油汚れの洗浄をより容易に行うことができ、より高いメンテナンス性が実現されている。
【0031】
また、本実施形態では、隣り合う平面部14a、14bのなす角の大きさθは、80°〜100°の範囲内とされている。
【0032】
例えば、角度θが大きすぎると、ヒーターカバー14に飛散した油脂が流れ落ちにくくなり、油脂が付着しやすくなる。それに対して、本実施形態では、角度θが100°以下とされているため、ヒーターカバー14に飛散した油脂が流れ落ちやすく、ヒーターカバー14に油脂が付着しにくい。
【0033】
一方、角度θが小さすぎると、平面部14a、14b間の距離が短くなり、ヒーターカバー14の下方に加熱体11を近接して配置することができなくなる。このため、加熱調理器1が大型化してしまう。それに対して、本実施形態では、角度θが80°以上とされている。このため、ヒーターカバー14と加熱体11とをz方向に近接して配置することができる。よって、加熱調理器1のz方向寸法を小さくすることができる。
【0034】
本実施形態では、ヒーターカバー14は、β−スポジュメン固溶体またはβ−石英固溶体を80質量%以上含有する結晶化ガラス板からなる。このため、ヒーターカバー14は、高い耐熱性を有し、加熱体の熱の透過性が高く、さらにヒーターカバー14には油脂が付着しにくい。
【0035】
また、ヒーターカバー14を構成している結晶化ガラス板の30℃〜750℃における平均線熱膨張係数が−10〜+30×10−7/℃の範囲内にある。このため、ヒーターカバー14は、高い熱的耐久性を有している。
【0036】
本実施形態において、ヒーターカバー14の厚みtの最小値は、2.7mm以上であり、最大値は、4.3mm以下である。このため、ヒーターカバー14は、高い耐久性を有している。従って、洗浄中にヒーターカバー14が破損し難い。
【0037】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0038】
(実施例1)
主結晶がβ−スポジュメン固溶体であり、β−スポジュメン固溶体結晶の含有率が95質量%であり、厚みが4.0mmで30mm×30mmの結晶化ガラス平板を加熱プレスすることにより、中央部を90°に屈曲させることにより、角度θが90°である実施例1に係るヒーターカバーを作製した。
【0039】
(実施例2)
角度θを100°としたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2に係るヒーターカバーを作製した。
【0040】
(比較例)
角度θを110°としたこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例に係るヒーターカバーを作製した。
【0041】
(評価)
実施例1,2及び比較例のそれぞれにおいて、作製したヒーターカバー上に5mm角の牛脂を置き、300℃で3分間加熱した後、ヒーターカバーを冷却した。この作業を10回繰り返し行った後、ヒーターカバーの表面に牛脂が付着しているか否かを目視観察した。
【0042】
その結果、実施例1,2では牛脂の付着は観察されなかったが、比較例では、牛脂の付着が観察された。この結果から、角度θを100°以下とすることによりヒーターカバーの表面に油脂が付着することを効果的に抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0043】
1…加熱調理器
10…ケーシング
10a…内部空間
11…加熱体
12…載置台
13…受け皿
14…ヒーターカバー
14a、14b…平面部
14c…屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、
複数の平面部と、前記複数の平面部を接続している屈曲部とを有し、前記複数の平面部のうち、隣り合う平面部のなす角の大きさが80°〜100°の範囲内にある、加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項2】
結晶化ガラス板からなる、請求項1に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項3】
前記結晶化ガラス板は、β−スポジュメン固溶体またはβ−石英固溶体を80質量%以上含有し、前記結晶化ガラス板の30℃〜750℃における平均線熱膨張係数が−10〜+30×10−7/℃の範囲内にある、請求項1または2に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項4】
最小厚みが2.7mm以上であり、最大厚みが4.3mm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項5】
被加熱物が載置される載置台と、
前記載置台の下方に配置された加熱体と、
前記載置台の下方において、前記加熱体の上方を覆うように配置されたヒーターカバーと、
を備え、
前記ヒーターカバーは、複数の平面部と、前記複数の平面部を接続している屈曲部とを有し、前記複数の平面部のうち、隣り合う平面部のなす角の大きさが80°〜100°の範囲内にある、加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−257095(P2011−257095A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133524(P2010−133524)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】