説明

加熱調理器用ヒーターカバー及び加熱調理器

【課題】加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、油汚れが付着しにくい加熱調理器用ヒーターカバー及びそれを備える加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器用ヒーターカバー14は、加熱調理器1の加熱体11の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーである。加熱調理器用ヒーターカバー14は、黒色の結晶化ガラス板からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器用ヒーターカバー及びそれを備える加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、加熱体の上方を覆う透明耐熱カバーを備える加熱調理器が開示されている。特許文献1には、この透明耐熱カバーを上方に向かって凸状である湾曲状に形成することにより、上方から垂れ落ちる油等が、透明耐熱カバーの表面に留まることなく、下方へ垂れ流れやすくなるため、透明耐熱カバーに油汚れが付着し難くなる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−213595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明耐熱カバーを上方に向かって凸状である湾曲状に形成した場合であっても、透明耐熱カバーの表面に油脂等が付着することを十分に防止することはできないという問題がある。
【0005】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、油汚れが付着しにくい加熱調理器用ヒーターカバー及びそれを備える加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、黒色の結晶化ガラス板からなる。このため、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、加熱体からの熱を吸収しやすい。よって、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、加熱調理器に組み込まれて使用される際に、加熱体からの熱をうけて高温になる。よって、加熱調理器用ヒーターカバーの上に油脂が落ちても、固化し難く、流れ落ちる。従って、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーには、油汚れが付着しにくい。
【0007】
但し、加熱調理器用ヒーターカバーの遮熱性が高すぎると加熱調理器の加熱効率が低くなりすぎる場合がある。このため、結晶化ガラス板の波長1500nmにおける透過率は、73%〜87%の範囲内にあることが好ましい。
【0008】
本発明において、黒色の結晶化ガラス板の種類は、特に限定されない。黒色の結晶化ガラス板は、例えば、チタン及びバナジウムを含むことにより黒色となっているものであってもよい。
【0009】
具体的には、結晶化ガラス板は、例えば、質量%で、SiO;60〜72%、Al;14〜28%、P;0〜3%、LiO;2.5〜5.5%、NaO;0.1〜1%、KO;0〜1%、MgO;0.1〜3%、CaO;0〜3%、BaO;0〜5%、ZnO;0.1〜3%、TiO;0.5〜6%、ZrO;0.5〜5%、V;0.03〜0.5%、SnO;0〜2%、As;0〜1.5%及びSb;0〜1.5%を含み、陰イオンとしてClイオンを0〜1質量%さらに含むものであることが好ましい。
【0010】
また、結晶化ガラス板は、β−石英固溶体を80質量%以上含有するものであることが好ましい。
【0011】
本発明において、結晶化ガラス板は、湾曲状に形成されていることが好ましい。この場合、加熱調理器用ヒーターカバーの上に落ちた油脂が流れ落ちやすくなり、油汚れがさらに付着しにくくなるためである。
【0012】
結晶化ガラス板は、例えば、凹状の表面の曲率半径が40mm〜44mmであり、幅が78mm〜86mmであるものであることが好ましい。
【0013】
また、結晶化ガラス板は、熱膨張係数の絶対値が小さなものであることが好ましい。熱膨張係数の絶対値が小さな結晶化ガラス板を用いることにより、加熱調理器用ヒーターカバーの熱的耐久性を向上できるためである。具体的には、結晶化ガラス板の30℃〜750℃における平均線熱膨張係数が−10〜+30×10−7/℃の範囲内にあることが好ましい。
【0014】
本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーは、厚みばらつきの少ないものであることが好ましい。具体的には、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーの最小厚みが2.7mm以上であり、最大厚みが4.3mm以下であることが好ましい。加熱調理器用ヒーターカバーの厚みばらつきを少なくすることにより、加熱調理器用ヒーターカバーの機械的耐久性を向上することができ、洗浄中における破損を抑制することができるためである。
【0015】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物が載置される載置台と、載置台の下方に配置された加熱体と、載置台の下方において、加熱体の上方を覆うように配置されたヒーターカバーとを備えている。ヒーターカバーは、黒色の結晶化ガラス板からなる。すなわち、本発明に係る加熱調理器において、ヒーターカバーは、上記本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーにより構成されている。
【0016】
上述のように、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーには、油汚れが付着しにくい。従って、本発明に係る加熱調理器用ヒーターカバーを備える本発明に係る加熱調理器は、メンテナンス性に優れている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、油汚れが付着しにくい加熱調理器用ヒーターカバー及びそれを備える加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る加熱調理器の略図的側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る加熱調理器の略図的平面図である。
【図3】図2の線III−IIIにおける略図的断面図である。
【図4】図3のIV部分を拡大した略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1及び図2に示す加熱調理器1を例に挙げて説明する。但し、加熱調理器1は、単なる例示である。本発明に係る加熱調理は、加熱調理器1に何ら限定されない。
【0020】
図1〜図3に示すように加熱調理器1は、ケーシング10を備えている。図2及び図3に示すように、ケーシング10には、上方に向かって開口する内部空間10aが形成されている。なお、ケーシング10の材質は、耐熱性を有するものである限りにおいて特に限定されない。ケーシング10は、例えば、アルミニウムなどの金属や、ステンレスなどの合金により形成することができる。
【0021】
図1〜図3に示すように、ケーシング10の頂部には、例えば食品などの被加熱物が載置される載置台12が配置されている。載置台12は、被加熱物を載置できる形状を有するものである限り特に限定されない。本実施形態の加熱調理器1は、鶏肉や牛肉などが刺された串を被加熱物とするものであるため、載置台12は、串の両端部を懸架できるように、額縁状に形成されている。
【0022】
図3に示すように、内部空間10aにおいて、載置台12の下方には、複数の加熱体11が配置されている。図2に示すように、本実施形態では、加熱体11は、細長形状に形成されており、y方向に沿って配置されている。複数の加熱体11は、x方向に沿って配列されている。
【0023】
なお、加熱体11は、被加熱物を加熱できるものである限りにおいて特に限定されない。加熱体11は、例えば、ガスバーナー等の火炎を発生させるものであってもよいし、電熱線などにより構成されていてもよいし、赤外線を放射する赤外線放射器により構成されていてもよい。また、加熱体11は、例えば炭などの燃料により構成されていてもよい。
【0024】
図3に示すように、内部空間10aにおいて、加熱体11の下方には、受け皿13が配置されている。被加熱物から飛散した油脂などの飛散物は、受け皿13に流れ落ちる。受け皿13は、清掃容易性の観点から、ケーシング10に対して着脱可能になっている。
【0025】
一方、内部空間10aにおいて、載置台12の下方には、加熱体11の上方を覆うように複数のヒーターカバー14が配置されている。このヒーターカバー14は、被加熱物からの飛散物から加熱体11を保護し、加熱体11の損傷や、加熱体11への飛散物の付着を防止するための部材である。
【0026】
本実施形態では、ヒーターカバー14は、黒色の結晶化ガラス板からなる。このため、ヒーターカバー14は、加熱体11からの熱を吸収しやすい。よって、ヒーターカバー14は、加熱調理器1の駆動時において、加熱体11からの熱をうけて高温になる。よって、ヒーターカバー14の上に油脂が落ちても、固化し難く、流れ落ちる。従って、ヒーターカバー14には、油汚れが付着しにくい。
【0027】
但し、ヒーターカバー14の遮熱性が高すぎると加熱調理器1の加熱効率が低くなりすぎる場合がある。このため、ヒーターカバー14の波長1500nmにおける透過率は、73%〜87%の範囲内にあることが好ましい。
【0028】
黒色の結晶化ガラス板からなるヒーターカバー14は、例えば、チタン及びバナジウムを含むことにより黒色となっているものであってもよい。具体的には、ヒーターカバー14は、例えば、質量%で、SiO;60〜72%、Al;14〜28%、P;0〜3%、LiO;2.5〜5.5%、NaO;0.1〜1%、KO;0〜1%、MgO;0.1〜3%、CaO;0〜3%、BaO;0〜5%、ZnO;0.1〜3%、TiO;0.5〜6%、ZrO;0.5〜5%、V;0.03〜0.5%、SnO;0〜2%、As;0〜1.5%及びSb;0〜1.5%を含み、陰イオンとしてClイオンを0〜1質量%さらに含むものであることが好ましい。
【0029】
また、ヒーターカバー14は、β−石英固溶体を80質量%以上含有するものであることが好ましい。
【0030】
ヒーターカバー14の形状は、被加熱物からの飛散物から加熱体11を保護できるようなものであれば特に限定されないが、湾曲状に形成されていることが好ましい。この場合、図3に示すように、上方に向かって凸状となるようにヒーターカバー14を配置することにより、の上に落ちた油脂が流れ落ちやすくなり、ヒーターカバー14に油汚れがさらに付着しにくくなるためである。
【0031】
ヒーターカバー14は、例えば、凹状の表面の曲率半径が40mm〜44mmであり、幅が78mm〜86mmであるものであることが好ましい。
【0032】
また、ヒーターカバー14を構成している結晶化ガラス板の30℃〜750℃における平均線熱膨張係数が−10〜+30×10−7/℃の範囲内にある。このため、ヒーターカバー14は、高い熱的耐久性を有している。
【0033】
本実施形態において、ヒーターカバー14の厚みtの最小値は、2.7mm以上であり、最大値は、4.3mm以下である。このため、ヒーターカバー14は、高い耐久性を有している。従って、洗浄中にヒーターカバー14が破損し難い。
【0034】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0035】
(実施例1〜7及び比較例)
まず、下記の表1に記載の組成となるようにガラス原料を混合して白金ルツボに投入し、電気炉を用いて1650℃において20時間溶融した。次に、溶融ガラスをキャストし、ローラーを用いて4mmの厚さに成形した後、700℃に設定したアニール炉を用いて室温まで冷却して板状の結晶性ガラスを作製した。次に、780℃で3時間加熱した後、870℃で1時間保持することにより、上記板状の結晶性ガラスを結晶化させ、厚み3.96mmの結晶化ガラス板を作製した。
【0036】
実施例1〜7及び比較例のそれぞれで作製した結晶化ガラス板を目視観察したところ、比較例に係る結晶化ガラス板は、ほぼ無色透明であったが、実施例1〜7に係る結晶化ガラス板は、黒色であった。
【0037】
次に、実施例1〜7及び比較例のそれぞれで作製した結晶化ガラス板の波長650nm及び1500nmのそれぞれにおける光透過率を測定した。測定結果を下記の表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
次に、実施例1〜7及び比較例のそれぞれで作製した結晶化ガラス板をラジアントヒーターを用いて同様の条件で30分加熱したときの結晶化ガラス板の表面温度を接触温度計を用いて測定した。その結果、実施例1〜7のいずれにおいても、比較例よりも表面温度が高かった。
【符号の説明】
【0040】
1…加熱調理器
10…ケーシング
10a…内部空間
11…加熱体
12…載置台
13…受け皿
14…ヒーターカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器の加熱体の上方に配置される加熱調理器用ヒーターカバーであって、
黒色の結晶化ガラス板からなる、加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項2】
前記結晶化ガラス板の波長1500nmにおける透過率が73%〜87%の範囲内である、請求項1に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項3】
前記結晶化ガラスは、チタン及びバナジウムを含む、請求項1または2に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項4】
前記結晶化ガラス板は、質量%で、SiO;60〜72%、Al;14〜28%、P;0〜3%、LiO;2.5〜5.5%、NaO;0.1〜1%、KO;0〜1%、MgO;0.1〜3%、CaO;0〜3%、BaO;0〜5%、ZnO;0.1〜3%、TiO;0.5〜6%、ZrO;0.5〜5%、V;0.03〜0.5%、SnO;0〜2%、As;0〜1.5%及びSb;0〜1.5%を含み、陰イオンとしてClイオンを0〜1質量%さらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項5】
前記結晶化ガラス板は、湾曲状に形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項6】
前記結晶化ガラス板の両表面のうち、凹状の表面の曲率半径が40mm〜44mmであり、幅が78mm〜86mmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項7】
前記結晶化ガラス板は、β−石英固溶体を80質量%以上含有し、前記結晶化ガラス板の30℃〜750℃における平均線熱膨張係数が−10〜+30×10−7/℃の範囲内にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項8】
最小厚みが2.7mm以上であり、最大厚みが4.3mm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の加熱調理器用ヒーターカバー。
【請求項9】
被加熱物が載置される載置台と、
前記載置台の下方に配置された加熱体と、
前記載置台の下方において、前記加熱体の上方を覆うように配置されたヒーターカバーと、
を備え、
前記ヒーターカバーは、黒色の結晶化ガラス板からなる、加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2449(P2012−2449A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138942(P2010−138942)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】