説明

加熱調理器

【課題】被加熱物である米に紫外光を照射する工程を有し加熱調理後に高品位な被加熱物を提供する加熱調理器を提供すること。
【解決手段】被加熱物3を収容する容器4と、被加熱物3に紫外光を照射する光照射手段7と、容器4を加熱する加熱手段5と、容器4を覆うように配設された蓋2と、光照射手段7と加熱手段5を制御する制御手段10を備え、制御手段10は、被加熱物3の加熱調理前でかつ加熱用水を加える前に光照射手段7を動作させることにより、加熱前に被加熱物に紫外光を照射することができるものであり、少ない消費エネルギーで被加熱物の旨みを増加させる加熱調理器を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理後に高品位な被加熱物を提供する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は所定の温度に調整した温水浴中に玄米を浸漬し、紫外線照射下において所定時間保持することで、温水の殺菌と同時に玄米の発芽を促進する発芽玄米製造装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−215800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、玄米の浸漬水に紫外線を照射することで、異臭の原因となる水面付近のバクテリアの繁殖や発酵を防止することはできるが、紫外線が浸漬水に吸収されるため玄米の発芽を促進させる効果は少ない。また、玄米に直接紫外線を照射していないので玄米の食味を向上させるなどの作用は有していない。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被加熱物である米に紫外光を照射する工程を有し加熱調理後に高品位な被加熱物を提供する加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、被加熱物である米を収容する容器と、前記被加熱物に紫外光を照射する光照射手段と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を覆うように配設された蓋と、前記光照射手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記被加熱物の加熱調理前でかつ加熱用水を加える前に前記光照射手段を動作させる構成としたものである。
【0007】
これによって、少ない消費エネルギーで容易に被加熱物に含まれるタンパク質の結合が切断され、被加熱物の旨みを増加させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱調理器は、被加熱物に紫外光を照射することにより、旨みを増加させながら加熱調理することができるので被加熱物を高品位に加熱調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器の主要構成手段の動作の概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は被加熱物である米を収容する容器と、前記被加熱物に紫外光を照射する光照射手段と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を覆うように配設された蓋と、前記光照射手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記被加熱物の加熱調理前でかつ加熱用水を加える前に前記光照射手段を動作させることにより、少ない消費エネルギーで容易に被加熱物に含まれるタンパク質の結合が切断され、被加熱物の
旨みを増加させることができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、前記光照射手段を前記被加熱物の洗浄後に動作させることにより、紫外光が吸収され紫外光の効果が減少しない程度の水の存在下で紫外光を照射することができるので、被加熱物中のタンパク質の結合を切断しやすくし、さらに被加熱物の旨みを増加させることができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第2の発明の制御手段は、前記光照射手段を前記被加熱物が乾燥する前に動作を停止させ、前記加熱手段を動作させることにより、被加熱物が胴割れし粒が崩れて食感を低下させることを防ぐことができるので、被加熱物を高品位に加熱調理することができる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の被加熱物である米を収容する容器と、前記被加熱物に紫外光を照射する光照射手段と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を覆うように配設された蓋と、前記光照射手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記被加熱物の加熱用水の蒸発後に前記光照射手段を動作させることにより、被加熱物の旨みをより増加させることができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の概略構成図、図2は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の主要構成手段の動作の概略図を示すものである。
【0016】
図1および図2において、加熱調理器は、外郭を構成する外枠1の上面開口部を蓋2で開閉自在に覆っている。外枠1には米である被加熱物3を収容する容器4と、容器4を加熱する加熱手段5と、容器4の底面温度を測定する温度検知手段6とを備えている。加熱手段5は、誘導加熱コイルやシーズヒータなどから構成される。本実施の形態では、加熱手段5は容器4の底面側に配設された加熱手段5aと、容器4の外側面に配設された加熱手段5bから構成されている。温度検知手段6は、サーミスタや各種金属抵抗体、熱電対あるいは赤外線センサや光センサなどから構成され、容器4の底面と対向配設されている。
【0017】
光照射手段7は、例えばブラックライトや紫外線LEDなどから構成され、覆いを介して容器4内の被加熱物3に対して、300〜400nmの分光波長の光を照射する。覆いは透明かつ主に紫外線波長領域を透過する材質(たとえば、石英ガラス)で構成される。
【0018】
また、本実施の形態における加熱調理器は、加熱手段5、光照射手段7を制御する制御手段9、温度検知手段6の検知信号から容器4の状態変化を推定する演算手段10、加熱手段5や光照射手段7への通電時間や加熱開始からの経過時間を計測する時間計測手段11、使用者に所定時間が経過したことを報知する報知手段12などを備えている。
【0019】
報知手段12は、音(声)、光、振動、表示あるいはこれらの組み合わせなどを用いることができる。
【0020】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0021】
まず、加熱前に炊飯用の水を入れる前に光照射手段7を動作させる場合について説明す
る。容器4に被加熱物3である洗米後の米を入れ、蓋2を閉める。このとき、容器4には炊飯水は入れずに洗米後の水分が付着した米のみを入れておく。操作部(図示していない)から加熱開始の信号が制御手段9に送られると、制御手段9は光照射手段7の動作を開始し、紫外光を所定時間照射する。
【0022】
光照射手段7の動作時に炊飯水を入れておかない理由としては、水は紫外光を吸収するので効果が減少することによる。乾燥時の米は細胞壁の構造が強固であるため、紫外光を照射してもタンパク質の結合を切断できる効果は小さい。一方、吸水することで細胞が膨潤し、でんぷんの構造も変化しやすくなる。そのため、紫外光の照射時は適度な水分を必要とする。そこで、吸水や表面の付着水を利用できるように洗米後の米に照射するものである。
【0023】
通常の炊飯では、米を水と一緒に加熱炊飯することで米の細胞壁の組織を軟化させ酵素反応を利用したり、でんぷんの結合を切断し低分子化することで旨みを増加させる。しかし、水を加熱するエネルギーが必要で省エネには適していない。しかし、洗米後の米に紫外光を照射することで容易に旨みを増加させることができるため、使用エネルギーを減らすことができるものである。
【0024】
光照射手段7は容器4上方から紫外光を照射するため、被加熱物3の表面部は紫外光が照射されるが、容器4付近には届かない。そのため、照射ムラをなくすために被加熱物3を攪拌したり上下を入れ替えるなどの作業を併用することが好ましい。
【0025】
制御手段9は蓋2が閉じられたことをセンサ(図示していない)等で検知すると、光照射手段7の動作を開始する。紫外光の照射時間は、被加熱物3が乾燥する前に終了し加熱(炊飯)工程に移行する。洗米後の米が乾燥すると米粒にひび割れが発生し、米粒の崩れが発生し食味が低下するためである。
【0026】
なお、米の合数と乾燥するまでのおおよその時間の関係は記憶手段(図示していない)により一時的あるいは恒久的に記憶されており、それらの時間により照射時間が決定される。
【0027】
光照射手段7の動作開始後、時間計測手段11により所定時間が経過したことを計測すると、制御手段9は光照射手段7の動作を停止する。光照射手段7の動作が停止すると報知手段12により時間経過が使用者に報知される。使用者は紫外光の照射が終了すると蓋2を開け炊飯用の所定量の水を容器4に入れ、蓋2を閉め直し、炊飯を開始する。炊飯を開始すると制御手段9は加熱手段5に通電する。容器4は加熱手段5により加熱され、容器4に収容された米が炊飯される。
【0028】
次に、炊飯水の蒸発後に光照射手段7を動作させる場合について説明する。
【0029】
使用者が被加熱物3と炊飯用の水を容器4に入れ炊飯開始を選択すると、制御手段9は加熱手段5の通電を開始する。制御手段9は温度検知手段6の信号により加熱手段5の通電を制御する。加熱手段5に通電し温度検知手段6の検知温度が上昇を継続している間は被加熱物3と炊飯用の水は沸騰まで至っていないと判断する。温度検知手段6の検知温度が一定温度T(例えば100℃)を保持すると炊飯用の水が沸騰していると判断する。所定時間経過後、温度検知手段6の検知温度が再度上昇を開始すると、炊飯用の水が蒸発したと判断する。
【0030】
制御手段9は、温度検知手段6の検知温度が再度上昇した検知信号により、炊飯用の水が蒸発すると加熱手段5の入力電力を減少させ、光照射手段7の動作を開始する。容器4
中の炊飯用の水が蒸発しても、容器4中には余分な水分が残っているため、入力電力を抑えながら加熱手段5を動作させる必要がある。制御手段9は余分な水分を蒸発させる間、光照射手段7を同時に動作させることで、被加熱物3の旨みをさらに増加させることができる。
【0031】
以上のように、本実施の形態においては、被加熱物3の加熱前に光照射手段7を動作させることによりタンパク質の結合が切断され、被加熱物の旨みを増加させることができる。
【0032】
また、被加熱物3の炊飯用の水の蒸発後に光照射手段7を動作せることにより、被加熱物の旨みをさらに増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、光照射手段により少ない消費エネルギーで容易に被加熱物に含まれるタンパク質の結合が切断され、被加熱物の旨みを増加させることが可能となるので、圧力鍋やマイクロ波を用いた加熱調理器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 外枠
2 蓋
3 被加熱物
4 容器
5、5a、5b 加熱手段
6 温度検知手段
7 光照射手段
9 制御手段
10 演算手段
11 時間計測手段
12 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物である米を収容する容器と、前記被加熱物に紫外光を照射する光照射手段と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を覆うように配設された蓋と、前記光照射手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記被加熱物の加熱調理前でかつ加熱用水を加える前に前記光照射手段を動作させることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
制御手段は、前記光照射手段を前記被加熱物の洗浄後に動作させることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
制御手段は、前記光照射手段を前記被加熱物が乾燥する前に動作を停止させ、前記加熱手段を動作させることを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
被加熱物である米を収容する容器と、前記被加熱物に紫外光を照射する光照射手段と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を覆うように配設された蓋と、前記光照射手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記被加熱物の加熱用水の蒸発後に前記光照射手段を動作させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−78473(P2011−78473A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231287(P2009−231287)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】