加熱調理器
【課題】食品の加熱調理に係る効率の向上を図ることができる加熱調理器を提供すること。
【解決手段】加熱調理器1では、ヒータ29が加熱室20内を加熱し、スチーム供給ユニット40が加熱室20内にスチームを供給することによって、加熱室20内の食品を加熱調理する。ヒータ29による加熱室20内の加熱が開始されてから、加熱室20内の温度が100℃以下の所定温度において、制御部70が、スチーム供給ユニット40により、加熱室20内に所定量のスチームを供給する。加熱室20内の温度が100℃以下の所定温度にあるときには、加熱室20内の食品の加熱はあまり進んでおらず、食品とスチームとの温度差が比較的大きい。この場合において加熱室20内に所定量のスチームを供給することによって、加熱室20内の食品に対する加熱効果を高めることができる。
【解決手段】加熱調理器1では、ヒータ29が加熱室20内を加熱し、スチーム供給ユニット40が加熱室20内にスチームを供給することによって、加熱室20内の食品を加熱調理する。ヒータ29による加熱室20内の加熱が開始されてから、加熱室20内の温度が100℃以下の所定温度において、制御部70が、スチーム供給ユニット40により、加熱室20内に所定量のスチームを供給する。加熱室20内の温度が100℃以下の所定温度にあるときには、加熱室20内の食品の加熱はあまり進んでおらず、食品とスチームとの温度差が比較的大きい。この場合において加熱室20内に所定量のスチームを供給することによって、加熱室20内の食品に対する加熱効果を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器として、過熱蒸気によって食品を加熱調理する過熱蒸気調理装置が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載の過熱蒸気調理装置は、内部に調理室が形成された本体と、調理室内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生装置とを備えている。本体の前面部には、ドアが取り付けられていて、ドアを開くことによって、調理室に食品を入出することができる。
【0003】
調理室に食品を入れてからドアを閉じ、過熱蒸気調理装置の運転を開始すると、過熱蒸気発生装置が、過熱蒸気を発生させて調理室内に供給する。これにより、調理室の食品が加熱調理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−83735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱調理器では、調理時間を短縮するために、食品の加熱調理に係る効率の向上が常に望まれている。
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、食品の加熱調理に係る効率の向上を図ることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、被調理食品を収容するための加熱室と、前記加熱室内を加熱するためのヒータと、前記加熱室内にスチームを供給するためのスチーム供給ユニットとを備え、前記ヒータによる前記加熱室内の加熱が開始されてから、前記加熱室内の温度が100℃以下の所定温度において、前記スチーム供給ユニットにより、前記加熱室内に所定量のスチームを供給するスチーム供給制御手段を含むことを特徴とする、加熱調理器である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記所定温度は、70℃を含むことを特徴とする、請求項1記載の加熱調理器である。
請求項3記載の発明は、前記スチーム供給制御手段は、前記加熱室内の温度が100℃を超えて所定の目標温度に到達するまでの間に、少なくとも1回は、前記スチーム供給ユニットにより、前記加熱室内にスチームを供給することを特徴とする、請求項1または2記載の加熱調理器である。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記加熱室内で空気を循環させるためのファンと、前記スチーム供給ユニットがスチームを供給するのに連動させ、前記ファンを運転させる手段とを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の加熱調理器である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、加熱調理器では、ヒータが加熱室内を加熱し、スチーム供給ユニットが加熱室内にスチームを供給することによって、加熱室内の被調理食品を加熱調理することができる。
そして、ヒータによる加熱室内の加熱が開始されてから、加熱室内の温度が100℃以下の所定温度において、スチーム供給制御手段が、スチーム供給ユニットにより、加熱室内に所定量のスチームを供給する。加熱室内の温度が100℃以下の所定温度にあるときには、加熱室内の被調理食品の加熱はあまり進んでおらず、被調理食品とスチームとの温度差が比較的大きい。この場合において加熱室内に所定量のスチームを供給することによって、加熱室内の被調理食品に対する加熱効果を高めることができる。
【0010】
この結果、食品の加熱調理に係る効率の向上を図ることができる。
ここで、前記所定温度は、請求項2記載の発明によれば、70℃を含んでいる。
請求項3記載の発明によれば、スチーム供給制御手段は、加熱室内の温度が100℃を超えて所定の目標温度に到達するまでの間に、少なくとも1回は、スチーム供給ユニットにより、加熱室内にスチームを供給する。これにより、加熱室内の温度が目標温度に到達するまでの間に加熱室内の被調理食品が乾燥してしまうことを防止できる。
【0011】
つまり、加熱室内の温度が目標温度に到達するまでの間において、加熱室内の被調理食品を最適な状態で加熱調理することができる。
請求項4記載の発明によれば、スチーム供給ユニットがスチームを供給するのに連動して、ファンが運転されて加熱室内で空気を循環させる。つまり、ファンが常に運転されるわけではないので、スチームが加熱室から機外へ不必要に排出されることはない。そのため、加熱室内の被調理食品をスチームによって効率的に加熱調理することができる。また、スチーム供給ユニットがスチームを供給するのに連動してファンが運転されるので、スチームがスチーム供給ユニットに留まることはなく、スチーム供給ユニット自体がスチームによって過熱されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係る加熱調理器1の斜視図であって、開閉扉21を開いた状態を示している。
【図2】図2は、加熱調理器1の正面図であって、開閉扉21を取り除いた状態を示している。
【図3】図3は、加熱調理器1の左側断面図であって、開閉扉21を開いた状態を示している。
【図4】図4は、加熱調理器1の左側断面図であって、開閉扉21を閉じた状態を示している。
【図5】図5は、加熱調理器1の右側断面図であって、開閉扉21を閉じた状態を示している。
【図6】図6は、加熱調理器1の平断面図である。
【図7】図7は、加熱調理器1の正断面図である。
【図8】図8は、図7の要部拡大図である。
【図9】図9は、加熱調理器1の右側断面図であって、開閉扉21を取り除いた状態を示している。
【図10】図10は、図9の要部拡大図である。
【図11】図11は、スチーム供給ユニット40の側面図である。
【図12】図12は、スチーム供給ユニット40の正面図である。
【図13】図13は、スチーム供給ユニット40の背面図である。
【図14】図14は、スチーム供給ユニット40の分解斜視図である。
【図15】図15は、スチーム供給ユニット40の内部構造を示す背面図である。
【図16】図16は、加熱調理器1における加熱室20の下部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図17】図17は、加熱調理器1の背面側における要部の平断面図である。
【図18】図18は、加熱調理器1の制御回路ブロック図である。
【図19】図19は、加熱調理器1において行われる制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図20A】図20Aは、加熱調理器1において行われる加熱調理を説明するための図である。
【図20B】図20Bは、加熱調理器1において行われる加熱調理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態に係る加熱調理器1は、レンジ台やテーブル等の水平な支持面の上に置いて用いられる。
加熱調理器1は、板金を主材料とする直方体形状の筐体10を備えている。筐体10の内部には、同じく板金(好ましくはステンレススチールのような錆びにくい板金)により、加熱室20が設けられている。加熱室20は、筐体10の正面に向かって開口している直方体形状である。加熱室20の正面の開口20Aは、左右方向に長手の略矩形状である。開口20Aから食品(被調理食品)を投入して、加熱室20内に収容することができる。加熱室20は、その内部で食品の加熱調理を行う調理庫を構成している。
【0014】
筐体10の正面には、開閉扉21が設けられており、開閉扉21は、加熱室20の正面の開口20Aを開閉自在に覆う。開閉扉21は、加熱室20へ食品を入出する際に開閉される。
加熱室20は、正面から見て、筐体10において左寄りに配置されており、筐体10の正面において加熱室20の右隣の領域には、キー入力部11と表示部14とが設けられている。キー入力部11は、各種形状の操作スイッチ12およびダイヤル13を含んでいる。操作スイッチ12およびダイヤル13は、加熱調理器1における調理条件(目標加熱温度や調理時間)を設定したり、調理を開始したり、調理を中止したりするために操作される。表示部14は、液晶パネル等によって構成されている。
【0015】
筐体10の正面において、キー入力部11および表示部14より下の下端部には操作扉15が設けられている。操作扉15は、後述するスチーム供給ユニット40(図3参照)に水を供給する給水タンク(図示せず)を筐体10に対して着脱するために操作される。
開閉扉21について詳しく説明すると、開閉扉21は、加熱室20の開口20Aを覆い得る大きさを有する板状であり、その下端を支点として回動することで開閉可能である。開閉扉21は、水平に延びて開口20Aを前方へ開放する開位置(図1参照)と、垂直に延びて開口20Aを前側から塞ぐ閉位置(図4参照)との間で前後に約90°回動する。開閉扉21は、開位置にあるときには開いていて、閉位置にあるときには閉じている。
【0016】
開閉扉21において、回動中心とは反対側の自由端には、開閉扉21を開閉する際に把持されるハンドル22が設けられ、開閉扉21の中央には、耐熱ガラスをはめ込んだ覗き窓23が設けられている。開閉扉21が閉位置にある状態において、覗き窓23から加熱室20内を視認することができる。
加熱室20の左右側壁には、互いに向き合う形のラックガイド24がプレス成型で形成されている。ラックガイド24は、ステンレス鋼線からなるワイヤーラック25を水平に、かつ前後方向にスライド可能に支持する。開閉扉21の内面にはワイヤーラック25の前端を引っ掛けるフック26が形成されている。フック26は、開閉扉21を開くときはワイヤーラック25を加熱室20から前方へ引き出し、開閉扉21を閉じるときはワイヤーラック25を加熱室20の中に押し込む。
【0017】
図5を参照して、加熱調理器1は、加熱室20内に配置されたヒータ29と、加熱室20の背面側に配置されたスチーム供給ユニット40とを含んでいる。加熱室20における食品の加熱調理は、ヒータ29およびスチーム供給ユニット40によって行われる。最初に、ヒータ29による加熱の仕組みを説明する。
ヒータ29は、加熱室20内を加熱するものであり、上ヒータ30および下ヒータ31を含んでいる。
【0018】
ここで、加熱室20の内部において、ワイヤーラック25自身、またはその上に載置されるトレイ63等が、加熱室20の床面の上で食品を支持する食品支持部27を構成する。食品支持部27より上の位置に上ヒータ30が配置され、食品支持部27より下の位置に下ヒータ31が配置されている。
上ヒータ30は、石英ガラスの管の中に発熱線を入れた棒状のガラス管ヒータにより構成されている。上ヒータ30は、加熱室20の天井面の下に、当該天井面からやや距離を置いて水平に配置されている。上ヒータ30の軸線方向(長手方向)は、加熱室20の左右方向に沿っている(図7参照)。
【0019】
下ヒータ31は、金属管の中に発熱線を入れたシースヒータにより構成されている。下ヒータ31は、所定の形状に曲げられ、加熱室20の床面の上、かつ食品支持部27より下の位置に配置されている。
上ヒータ30および下ヒータ31が発生する熱は、輻射だけでなく、対流(コンベクション)によっても食品に伝えられる。そのため、筐体10と加熱室20との間においてキー入力部11(図1参照)の裏側にあたる空間には、図6に示すコンベクションファン32(ファン)が配置されている。
【0020】
コンベクションファン32は、遠心ファン33と、それを回転させるコンベクションモータ34とを含んでいる。ここで、加熱室20の右側壁の外面には、溶接等の手段でファンケーシング35が固定されている。ファンケーシング35は、左右に扁平なボックス状である。コンベクションモータ34は、その出力軸がファンケーシング35内で水平(左右)に延びた状態で、ファンケーシング35によって支持されている。遠心ファン33は、ファンケーシング35内でコンベクションモータ34の出力軸に取り付けられている。
【0021】
図4に示すように、加熱室20の右側壁には、ファンケーシング35の内部に連通する小孔が多数打ち抜かれている。小孔は数群の集合を形成している。第1の集合は、吸気口36を形成し、吸気口36は、遠心ファン33の真正面の位置に配置されている(図8参照)。吸気口36を囲むように小孔の集合が3群配置されている。これらの集合は、いずれも空気吹出口37であり、開閉扉21に近い側を前、それと反対の側を後とした場合、2つの空気吹出口37は、吸気口36を前後から挟む形で配置され、残りの空気吹出口37は、吸気口36の上に配置されている。
【0022】
上ヒータ30と吸気口36とは、上下に並ぶ位置(前後方向で同じ位置)に配置されている。また、吸気口36と、それを前後から挟む2つの空気吹出口37とでは、それぞれの下端の小孔が、遠心ファン33の回転中心とほぼ並ぶ高さに位置している。
加熱室20の右側壁の小孔の中で、吸気口36および空気吹出口37を構成しなかったものは、ファンケーシング35の内部空間の最下部に連通する貫通孔38となる。
【0023】
コンベクションファン32を駆動したときの空気の流れは後で説明する。上ヒータ30の発生熱量、または、上ヒータ30と下ヒータ31との合計発生熱量は、加熱調理器1をコンベクションオーブンとして機能させるに足る数値に設定されている。
続いてスチーム供給ユニット40による加熱の仕組みを説明する。ここで、スチーム供給ユニット40は、加熱室20の背面側壁の外側、詳しくは、加熱室20の背面側壁と筐体10の背面側壁との間に配置されている(図5参照)。スチーム供給ユニット40は、加熱室20内に蒸気(スチーム)を供給する。
【0024】
図14に示すように、スチーム供給ユニット40は、背面側が全面的に開口した金属製の正面側ケーシング41と、正面側ケーシング41の背面開口を閉ざす金属製の背面側ケーシング42と、スチームヒータ43とを含んでいる。正面側ケーシング41および背面側ケーシング42は、たとえば、アルミニウムで形成されている。
スチームヒータ43は、左右に長手の棒状であり、正面側ケーシング41の下部を左右に貫通している。正面側ケーシング41の正面上部には、図12に示すように、2つの蒸気噴出口44が横一列に並ぶ形で形成されている。スチーム供給ユニット40は、これらの蒸気噴出口44を加熱室20の内部に露出させ、加熱室20内にスチームを吹き込む(図5参照)。
【0025】
背面側ケーシング42には、図13に示すように、給水口45と温度検知装置取付部46とが形成されている。背面視において、給水口45は、背面側ケーシング42の右端近くに配置されており、温度検知装置取付部46は背面側ケーシング42の左端近くに配置されている。給水口45には、一端が給水タンク(図示せず)につながった給水パイプ(図示せず)の他端が接続されている。
【0026】
ここで、図17を参照して、筐体10の背面側壁には、横方向に間隔を隔てた複数の位置に膨出部16を有している。筐体10の背面側壁は、膨出部16において後側へ円弧状に膨出している。前述したレンジ台やテーブル等に加熱調理器1が載置された状態で加熱調理器1の背後に室内の壁等が存在する場合、膨出部16が室内の壁等に接触することによって、筐体10の背面側壁(膨出部16以外の部分)と室内の壁等との間に適切な隙間が確保される。これにより、筐体10の背面側壁が室内の壁等に密着することが防止される。
【0027】
そして、図17では、前述した給水パイプに、符号17が付されている。給水パイプ17は、たとえばシリコンチューブである。給水パイプ17は、筐体10の背面側壁の内側面に沿って延びていて、途中でいずれかの膨出部16内にはみ出ながら前側へ湾曲して、給水口45に接続されている。つまり、膨出部16によって給水パイプ17を湾曲させるスペースを比較的大きく確保することによって、給水パイプ17を大きく湾曲させて給水口45に接続することができる。これにより、給水パイプ17が小さく折れ曲って腰折れすることで給水パイプ17における水の流れが悪くなることを防止できる。
【0028】
特に、加熱調理器1全体の小型化を図る一方で、加熱室20を極力大きくしようとすると、どうしても、加熱室20の背面側壁と筐体10の背面側壁との間におけるスチーム供給ユニット40を配置するスペースが狭くなってしまう。しかし、そのような場合であっても、膨出部16内で給水パイプ17を大きく湾曲させることで、給水パイプ17における円滑な水の流れを確保している。また、給水パイプ17を湾曲させることができるから、この給水パイプ17は、比較的安価な通常の直線状のパイプであってよいので、比較的高価なL字状のパイプを給水パイプ17として使用せずに済む。
【0029】
正面側ケーシング41の内面には、図15に示す通り、蒸気噴出口44より少し下の位置に、3つのリブ47が形成されている。リブ47はいずれもほぼ水平に延びている。3つのリブ47のうち、2つのリブ47は、左右に間隔を隔てて配置されていて、残る1つのリブ47は、2つのリブ47にまたがる形で、これらの2つのリブ47から上方に間隔を隔てた位置に配置されている。これら3つのリブ47は、正面側ケーシング41の内部空間の底面(内底面41A)側の液体の水が蒸気噴出口44に到達するのを邪魔するラビリンス通路48を構成する。
【0030】
給水口45および温度検知装置取付部46は、下側2つのリブ47よりも下の位置にある(図14参照)。正面側ケーシング41の内底面41Aには、背面視で左に向かって下がる緩やかな傾斜がつけられている。
正面側ケーシング41と背面側ケーシング42は、合わせ目から水やスチームが漏れないよう、合わせ目にシリコン接着剤を塗布した上で、図示しないねじにより締め付け固定される(図11および図14参照)。
【0031】
図9に示すように、加熱室20の背面側壁には、正面から見て矩形状であって背面側へ窪む凹部50が、プレス成型で形成されている。スチーム供給ユニット40は、加熱室20の背面側壁における凹部50の外面に取り付けられており、蒸気噴出口44は、凹部50に形成された貫通孔(図示せず)から加熱室20内に突き出ている。
加熱室20の背面側壁には、凹部50の蒸気噴出口44の前面に前から対向する位置に、反射板51が設けられている。反射板51は、横長の金属板であり、蒸気噴出口44の前に、所定の間隔を隔てて立ち塞がっている。
【0032】
反射板51は、図3に示すように、左右方向から見て後側へ窪む扁平な略V字状の断面を有している。ここで、加熱室20の背面側壁の凹部50における前面と、反射板51との間には、蒸気通路52が形成されているが、左右方向から見て、蒸気通路52の前後の幅は、蒸気噴出口44より上の箇所よりも、蒸気噴出口44より下の箇所の方において広い。また、反射板51の上端は、前方に折り曲げられていて、蒸気噴出口44からのスチームを斜め上方に誘導するようになっている。
【0033】
凹部50の内側壁は、奥側(背面側)に向かってテーパ状にすぼんでいる。これにより、凹部50の上部内側壁は、蒸気噴出口44からのスチームを上ヒータ30の方向に誘導する斜面53となり、凹部50の下部内側壁は、蒸気噴出口44からのスチームを下ヒータ31の方向に誘導する斜面54となっている。
図9に示すように、加熱室20の開口20Aの周囲にパッキン60が取り付けられている。パッキン60は耐熱性を備えたゴムまたは合成樹脂からなり、図10に示す断面形状を有している。パッキン60は、一体成型されたピン61を有している。ピン61を筐体10の正面に形成された貫通孔10Aに押し込むことによって、パッキン60は、加熱室20の開口20Aを取り込んだ状態で筐体10に取り付けられている(図1参照)。パッキン60は、閉じた状態(前述した閉位置)の開閉扉21(図4参照)の内面に当たることによって、加熱室20の開口20Aの周囲と開閉扉21との間の気密性を保つ。パッキン60は、加熱室20の内部に向かって開いた断面形状を有していることから、加熱室20の内圧が高まるにつれ、開閉扉21により密着するようになっている(図10参照)。
【0034】
図3に示すように、加熱室20の床面の上、かつ、下ヒータ31の下という位置に、前方から受皿62が挿入されている。受皿62は、落下した食品の一部や、食品から滴り落ちる油脂や水分等を受け止める。
調理中や調理後に加熱室20の側壁が冷えると、加熱室20内の気体に含まれていた水分が結露する。結露した水滴を受け止めるのも受皿62の役目である。水滴が受皿62の外にこぼれないよう、加熱室20の側壁と受皿62との間には図16に示すような工夫が施されている。すなわち、加熱室20の側壁28は、それが背面側壁、左側壁、右側壁のいずれであってもよいが、受皿62の上に位置している。さらに、側壁28の下の角には、受皿62に向かって下向きに突き出す鋭角部28Aが形成されている。
【0035】
また、ワイヤーラック25には、図5に示すトレイ63が載置される。トレイ63は、食品支持部27を構成するものであり、ワイヤーラック25と共に、開閉扉21の開閉に連動して前後にスライドする(図3参照)。ワイヤーラック25の後端には、上方に向かって突き出すストッパ25Aが形成されている。ストッパ25Aは、トレイ63を背後から支え、トレイ63がワイヤーラック25に対しそれ以上後方へ相対移動しないようにする。
【0036】
次に、加熱調理器1の動作を説明する。まず、開閉扉21を開け、ワイヤーラック25と、その上に載置されたトレイ63を前方に引き出す(図3参照)。トレイ63の上に食品を載せ、開閉扉21を閉じる。開閉扉21が閉位置に到達すると、それまで後方に移動していたワイヤーラック25が停止する。
この際、トレイ63は慣性で後方に移動しようとするが、ストッパ25Aがトレイ63を背後から支えているので、ワイヤーラック25に対するトレイ63の後方への相対移動は生じない。これにより、トレイ63の後端と加熱室20の背面側壁との間に、スチームを通過させる間隙が確保される。
【0037】
加熱室20の中に食品を収納し終わった後、キー入力部11の操作スイッチ12やダイヤル13(図1参照)を操作して、調理に関する様々な設定を行う。設定完了後、キー入力部11を操作すれば、調理が開始される。
設定した調理内容が「蒸気調理(スチーム調理)」であった場合は、ポンプ(図示せず)が駆動され、給水タンク(図示せず)から給水パイプ17を介してスチーム供給ユニット40内に給水が行われるとともに、スチームヒータ43(図14参照)に対し通電が行われ、スチームの生成が開始される。この時、スチーム供給ユニット40内の水の水位は、リブ47よりも下に設定されている(図14参照)。
【0038】
水は、スチーム供給ユニット40の中で沸騰して飽和蒸気(スチーム)となり、蒸気噴出口44から噴出する。噴出したスチームは反射板51に当たり、反射板51の断面形状により、一部は上方に向かい、残部は下方に向かう(図5の太線矢印参照)。
スチームには、上昇する性質があるので、もしも反射板51が垂直な平板であったとすると、上方に向かうスチームの方が多くなる。しかしながら、前述したように、反射板51の断面形状により、蒸気通路52の前後の幅が、蒸気噴出口44より上の箇所よりも、蒸気噴出口44より下の箇所の方で広くなっているので、上方と下方にバランス良くスチームを分配することができる。すなわち反射板51は、自身の断面形状により、当たったスチームの一部を上ヒータ30に向かわせ、残部を下ヒータ31に向かわせるというスチーム分配機能を備えている。
【0039】
図5の太線矢印を参照して、反射板51で反射して上方に向かったスチームは、凹部50の上部の斜面53に当たり、上ヒータ30の方向に向きを変える。反射板51で反射して下方に向かったスチームは、凹部50の下部の斜面54に当たり、下ヒータ31の方向に向きを変える。この時点で上ヒータ30と下ヒータ31は、通電により発熱状態にあり、これらのヒータにスチーム(飽和蒸気)が吹き付けられることにより、スチームは過熱蒸気(過熱スチーム)となる。上下で発生した過熱蒸気が、トレイ63内の食品を包み込むことにより、食品は効率よく加熱される。
【0040】
前述したように上ヒータ30の軸線方向が加熱室20の左右方向に沿っていることから、上ヒータ30の長手方向は、加熱室20の背面側壁と平行である(図7参照)。この上ヒータ30に、加熱室20の背面側壁に横一列に並んだ蒸気噴出口44からのスチームが当たるから、上ヒータ30にスチームがムラなく当たり、スチーム(飽和蒸気)から過熱蒸気への転換が効率良く行われる。
【0041】
蒸気噴出口44の前に反射板51が存在するので、調理中または調理後において、蒸気噴出口44からスチームが噴出している間に開閉扉21が開けられても、使用者の方にスチームが噴出されることはない。
また、反射板51により上方と下方とにスチームを分配するものであるから、安価な構造で、スチームの分配を適切に行うことができる。スチームの分配を弁で行っていたりすると、スケールの堆積で弁の機能に障害が生じることがあるが、反射板51であれば、スケールが付着してもスチーム分配機能には影響がないから、メンテナンスが長期間不要である。
【0042】
図13を参照して、スチーム発生中、スチーム供給ユニット40には、前述した給水パイプ(図示せず)を介して給水口45から給水が行われる。この際、温度検知装置取付部46に取り付けられたスチームサーミスタ71(図18参照)がスチーム供給ユニット40の内部温度を監視する。そして、スチームサーミスタ71の検知した温度に基づき、スチームヒータ43のON/OFF制御が行われる。
【0043】
ここで、冷水が流入する給水口45と温度検知装置取付部46とが接近した位置にあると、スチームサーミスタ71はスチーム供給ユニット40の中で最も温度の低い部分の温度を測定することになり、スチームヒータ43のON時間の割合が多くなる。これにより、給水口45から離れた箇所の温度が上がりすぎ、正面側ケーシング41と背面側ケーシング42の合わせ目に塗布されている前述したシリコン接着剤の耐熱温度を超える場合がある。しかしながら本実施形態では、給水口45と温度検知装置取付部46とが横方向に離れた位置にあるので、スチームサーミスタ71は給水口45の冷水の影響を受けにくく、スチーム供給ユニット40を過度にONにすることがない。このため、シリコン接着剤は耐熱温度以下に保たれる。
【0044】
図15を参照して、正面側ケーシング41の内部空間の内底面41Aは、背面視で左に向かって下がるように傾斜している。そのため、給水口45から流入した冷水は、内底面41Aの傾斜に沿って背面視で左側に流れ、内底面41A全体にムラなく行き渡る。このため、スチームヒータ43の発生する熱が効率良く水に伝わる。
スチーム供給ユニット40の中の水は沸騰して躍り上がるので、そのままでは蒸気噴出口44から水滴が噴出する。しかしながら、本実施形態では、スチーム供給ユニット40の中の水の水面と蒸気噴出口44の間に、リブ47によるラビリンス通路48が設けられているので、スチームは蒸気噴出口44まで流れるものの、液体の水はリブ47に邪魔されて蒸気噴出口44まで到達しない。このため、蒸気噴出口44から水滴が飛び出して加熱室20内の食品に付着するといった事態は発生しない。
【0045】
リブ47の上面に水が多少飛び上がったとしても、それが速やかに下方の水面に戻るよう、下方のリブ47には正面側ケーシング41の中央方向に下がる傾斜がつけられており、上方のリブ47は、中央が高く両端が低い山形形状になっている。
図5を参照して、蒸気調理に用いられるスチームや、食品から発生する蒸気は、加熱室20の側壁に付着して冷却されると結露する。結露した水滴は、加熱室20の底面へ向かってに流れ落ちようとする。水滴には油脂等が含まれていることが多いので、それが加熱室20の底面に流れることをそのままにしておくと、加熱室20の内部が不潔になる。しかしながら、前述したように、図16に示すように、加熱室20の側壁28が受皿62の上に位置しているので、側壁28を伝って流下する水滴は受皿62に受け止められ、加熱室20の底面には流れない。受皿62は取り出して洗うことができるから、加熱室20の内部を清潔に保つことができる。
【0046】
特に、側壁28の下の角に鋭角部28Aを形成しておけば、側壁28を伝って流下する水滴を確実に受皿62に落下させることができる。
図4を参照して、結露が生じるのは加熱室20の内部に限らない。ファンケーシング35(図6参照)の内部にも生じる。加熱室20においてファンケーシング35を固定した右側壁には、ファンケーシング35の内部空間の最下部に連通する貫通孔38が形成されているから、ファンケーシング35に生じた水滴は貫通孔38を通って加熱室20の内部に流れ出し、受皿62に受けられる。そのため、ファンケーシング35の中に水が溜まることがない。従って、ファンケーシング35の中に溜まった水がファンケーシング35と加熱室20の右側壁との合わせ目から漏れ出して筐体10内の電装部品を濡らしたり、ファンケーシング35を腐食させたりすることがない。
【0047】
開閉扉21の内面にも結露が生じたり、油が付着したりする。パッキン60(図10参照)が開閉扉21側に設けられていると、開閉扉21を開閉した時にパッキン60の襞部分に水や油が垂れ落ち、不潔になる。本実施形態では、開閉扉21側でなく筐体10側にパッキン60を取り付けたので、上記のような不都合を避けることができる。
また、筐体10を構成する板金部材のうち、加熱室20の開口20A周囲を構成する部材と、加熱室20の内部を構成する部材とは、ビス締めやスポット溶接等の手法で接合されるが、それらの接合痕をパッキン60で隠すことができる(図9参照)。そのため、念入りな塗装を施したり、飾り部品を取り付けたりするというコスト高な手段で接合痕を隠す必要がなくなる。
【0048】
そして、蒸気調理が終了すれば、そのことが音声または表示部14(図1参照)の表示で報知される。これを受けてユーザは、開閉扉21を開け、調理済みの食品を取り出す。給水タンク(図示せず)の中の水が減っていれば補給し、次回の蒸気調理に備える。
このような蒸気調理では、過熱蒸気によって肉や魚から余分な油脂や塩分を取り除くことができるが、さらには、パン(米粉パン等)をふっくらと加熱することもできる。
【0049】
一方、設定した調理内容が「熱風調理(オーブン調理)」であった場合は、加熱室20内にスチームは供給されない。上ヒータ30および下ヒータ31に通電した状態で、コンベクションファン32を運転して、調理が進められる。
コンベクションファン32を運転すると、吸気口36から加熱室20内の空気が吸い込まれる。上ヒータ30とコンベクションファン32とは軸線方向が一致し、また、上ヒータ30は吸気口36と上下に並ぶ位置に配置されている。これにより、上ヒータ30で加熱された空気は真っ直ぐ吸気口36に吸い込まれる。その空気が空気吹出口37から吹き出されて加熱室20全体に回るから、上ヒータ30の直下とそれ以外の箇所との温度差が小さくなり、加熱室20内における加熱ムラを低減することができる。
【0050】
吸気口36を通って遠心ファン33に吸い込まれた空気は、遠心ファン33から放射方向に吐出される。その空気(加熱空気)は、図6において太線矢印で示すように、空気吹出口37から吹き出されて加熱室20の内部を隅々まで行き渡ってから吸気口36に戻る。つまり、遠心ファン33(コンベクションファン32)は、加熱室20内で空気を循環させる。
【0051】
ここで、吸気口36より前方にある空気吹出口37(図4参照)から吹き出される空気は、開閉扉21の覗き窓23の方に向かい、覗き窓23を掃くように流れるので、覗き窓23の結露や曇りを一掃することができる。
図4を参照して、前述したように、吸気口36を前後から挟む2つの空気吹出口37では、下端の小孔が遠心ファン33の回転中心とほぼ並ぶ高さに位置している。すなわち、空気吹出口37を構成する小孔は、遠心ファン33の回転中心よりも上側に多く配分されている。これにより、コンベクションファン32が吐出する空気は、主として加熱室20の上方に向かって多く吹き出されることになる。熱気は加熱室20の上部に溜まりやすいが、加熱室20の上方に向かって吹き出された空気によって加熱室20の上部の熱気を吹き飛ばし、加熱室20の下部へ送ることができるので、加熱室20内の熱気配分を上下方向で均等化することができる。熱風調理の場合のみならず、蒸気調理の際にもコンベクションファン32を運転することにより、同様の効果が得られる。
【0052】
熱風調理が終了すれば、そのことが音声または表示部14(図1参照)の表示で報知される。これを受けてユーザは、開閉扉21を開け、調理済みの食品を取り出す。
ここで、加熱室20の背面側壁の左上の隅には、加熱室20および筐体19の両方の背面側壁を貫通する排気口18が形成されており、熱風調理および蒸気調理のそれぞれにおいて、余分な熱風やスチームは、排気口18から機外に排出される(図2参照)。
【0053】
図18を参照して、加熱調理器1には、マイクロコンピュータ等で構成された制御部70(スチーム供給制御手段)が備えられている。制御部70は、加熱調理器1の動作を制御する。制御部70は、計時を行う計時部70Aと、必要な情報を記憶するメモリ部70Bとを含んでいる。
制御部70には、前述したスチーム供給ユニット40、上ヒータ30、下ヒータ31、コンベクションモータ34、表示部14、キー入力部11およびスチームサーミスタ71と、オーブンサーミスタ72とが電気的に接続されている。
【0054】
制御部70は、スチーム供給ユニット40のスチームヒータ43および前述したポンプ(図示せず)を駆動させてスチーム供給ユニット40をONにして(運転して)、スチームを発生させ、スチーム供給ユニット40により、スチームを加熱室20内に供給する。
制御部70は、上ヒータ30および下ヒータ31(ヒータ29)をONにして、加熱室20内を加熱する。
【0055】
制御部70は、コンベクションモータ34をONにして遠心ファン33を回転させる。つまり、制御部70は、コンベクションモータ34をONにすることでコンベクションファン32を運転させ、これにより、加熱室20内で空気を循環させる。
ここで、制御部70は、スチーム供給ユニット40がスチームを加熱室20内に供給するのに連動させ、コンベクションファン32を運転させる。具体的には、スチーム供給ユニット40がスチームを供給している蒸気調理中において、たとえば40秒間に4秒程度コンベクションファン32を運転させる。つまり、コンベクションファン32が常に運転されるわけではないので、スチームが排気口18(図2参照)を介して加熱室20から機外へ不必要に排出されることはない。そのため、加熱室20内の食品をスチームによって効率的に加熱調理することができる。
【0056】
また、スチーム供給ユニット40がスチームを供給するのに連動してコンベクションファン32が運転されるので、スチームがスチーム供給ユニット40に留まることはなく、スチーム供給ユニット40自体がスチームによって過熱されることを防止できる。これにより、スチーム供給ユニット40と加熱室20内との温度差が大きくなることを防止できる。
【0057】
オーブンサーミスタ72は、ファンケーシング35内に配置されている(図6参照)。ファンケーシング35内と加熱室20内とは、加熱室20の右側壁の小孔(吸気口36、空気吹出口37および貫通孔38)を介して連通しているので、オーブンサーミスタ72は、当該小孔を介して、調理中に加熱室20内の温度(雰囲気温度)を検出する。厳密には、オーブンサーミスタ72は、ファンケーシング35内の温度を検出していて、加熱室20内とファンケーシング35内とでは温度差があり、この温度差は、実験によって予め把握されて、メモリ部70Bに記憶されている。そして、オーブンサーミスタ72の検出結果(ファンケーシング35内の温度)に前記温度差を加えた値が、加熱室20内の実際の温度となる。つまり、オーブンサーミスタ72は、ファンケーシング35内の温度を検出することで、加熱室20内の温度を間接的に検出する。
【0058】
制御部70は、オーブンサーミスタ72の検出結果から、加熱室20内の温度(庫内温度)を把握する。そして、制御部70は、オーブンサーミスタ72の検出温度(つまり、庫内温度)に基づいて、上ヒータ30および下ヒータ31やスチーム供給ユニット40をON/OFFすることで、加熱調理のために加熱室20内の温度を制御する。
次に、図19を参照して、蒸気調理に関して制御部70が行う制御動作の一例を説明する。
【0059】
図19を参照して、制御部70は、ユーザによってキー入力部11(図1参照)が操作されたのに応じて、上ヒータ30および下ヒータ31をONにし、加熱室20の予熱を開始する。ここで、予熱開始に先立って、ユーザによるキー入力部11(操作スイッチ12やダイヤル13)の操作によって、庫内温度の設定温度Aや調理時間が設定される。設定温度Aは、食品を加熱する温度の目標値(目標温度)であり、100℃より高く、ここでは、200℃とされる。設定温度Aは、最大250℃まで設定できる。調理時間は、調理開始(予熱開始)から調理終了までの時間であり、計時部70A(図18参照)によって計時される。なお、庫内温度が設定温度Aに到達するまでに調理時間が経過すると、制御部70は、加熱調理器1の運転を停止する。
【0060】
そして、制御部70は、予熱を開始したのに応じて、オーブンサーミスタ72(図18参照)による庫内温度の検知を開始する(ステップS1)。
予熱により、庫内温度は次第に上昇していく。この際、制御部70は、オーブンサーミスタ72が所定のスチーム投入温度を検知したか否かを監視している(ステップS2)。つまり、制御部70は、庫内温度がスチーム投入温度に達したか否かを監視している。スチーム投入温度は、100℃以下の温度であり、この実施形態では、70℃である。
【0061】
オーブンサーミスタ72がスチーム投入温度を検知すると(ステップS2でYES)、制御部70は、スチーム供給ユニット40(図18参照)を運転させて加熱室20内に所定量のスチームを投入する(ステップS3)。つまり、制御部70は、上ヒータ30および下ヒータ31(ヒータ29)による加熱室20内の加熱が開始されてから、庫内温度が100℃以下の所定温度(スチーム投入温度)において、スチーム供給ユニット40により、加熱室20内に所定量のスチームを供給する。庫内温度が100℃以下のスチーム投入温度である予熱期間には、加熱室20内の食品の加熱はあまり進んでおらず、食品とスチームとの温度差が比較的大きい。特に、加熱室20内においてスチームは、上ヒータ30および下ヒータ31のいずれかを通ることで、前述した過熱蒸気になることから、食品とスチーム(過熱蒸気)との温度差は一層大きくなる。そのため、加熱室20内に所定量のスチームを供給することにより、食品とスチームとの温度差が大きくなるほど、大熱量を有するスチームが食品内に浸透することによって、加熱室20内の食品に対する加熱効果を高めることができる。この結果、食品の加熱調理に係る効率の向上を図ることができる。特に、過熱蒸気は食品内に吸い込まれやすいので、過熱蒸気は食品内に吸い込まれる代わりに、食品内部の油脂や塩分が食品の表面から滲み出て食品から取り除かれる。
【0062】
その後、制御部70は、オーブンサーミスタ72が第1温度Bを検知したか否かを監視する(ステップS4)。第1温度Bは、設定温度Aより低いものの、100℃より高く、ここでは、たとえば145℃程度とされる。ここでは、制御部70は、庫内温度がスチーム投入温度から第1温度Bまで上昇したか否かを監視している。
オーブンサーミスタ72が第1温度Bを検知すると(ステップS4でYES)、制御部70は、スチーム供給ユニット40を運転させて加熱室20内に所定量のスチームを投入する(ステップS5)。
【0063】
その後、制御部70は、オーブンサーミスタ72が第2温度Cを検知したか否かを監視する(ステップS6)。第2温度Cは、設定温度Aより低いものの、第1温度Bより高く、ここでは、たとえば170℃程度とされる。ここでは、制御部70は、庫内温度が第1温度Bから第2温度Cまで上昇したか否かを監視している。
オーブンサーミスタ72が第2温度Cを検知すると(ステップS6でYES)、制御部70は、スチーム供給ユニット40を運転して加熱室20内に所定量のスチームを投入する(ステップS7)。
【0064】
ステップS5およびS7において、制御部70は、庫内温度が100℃を超えて所定の目標温度(設定温度A)に到達するまでの間に、少なくとも1回は、スチーム供給ユニット40により、加熱室20内にスチームを供給している。これにより、庫内温度が目標温度に到達するまでの間に加熱室20内の食品が乾燥してしまうことを防止できる。つまり、庫内温度が目標温度に到達するまでの間において、加熱室20内の食品を最適な状態で加熱調理することができる。なお、庫内温度が100℃を超えて目標温度(設定温度A)に到達するまでの間において、スチーム供給ユニット40により加熱室20内にスチームを供給する回数は、2回以上の任意の回数であってよい。
【0065】
その後、制御部70は、オーブンサーミスタ72が設定温度Aを検知したか否かを監視する(ステップS8)。つまり、制御部70は、庫内温度が第2温度Cから設定温度Aまで上昇したか否かを監視する。
オーブンサーミスタ72が設定温度Aを検知すると(ステップS8でYES)、制御部70は、上ヒータ30および下ヒータ31のON/OFFとスチームヒータ43の運転とを制御することによって、庫内温度を設定温度Aに維持する(ステップS9)。
【0066】
そして、予め定められた調理時間が経過すると、制御部70は、加熱調理器1の運転を停止して、調理を終了する。
このように、ステップS3、S5およびS7において、庫内温度が目標温度に到達するまでの比較的早い段階(食品の温度が低い段階)から、スチームを加熱室20内の食品に供給している。そのため、庫内温度が目標温度に到達してから初めてスチームを加熱室20内の食品に供給する場合に比べて、食品の乾燥を抑えた効果的な加熱調理が可能となる。
【0067】
次に、図20Aおよび図20Bを参照して、図19における制御動作を具体的に説明する。
図20Aは、蒸気調理に関して、調理開始から調理終了までの調理時間を、第1ステージ、第2ステージ…というふうに複数のステージに区切り、次のステージへの移行条件を表にして示している。また、図20Aでは、各ステージにおいてスチーム供給ユニット40が運転されるか否かを示している。ここで、加熱調理中において、スチーム供給ユニット40が運転されている場合には、電力供給の都合等により、上ヒータ30および下ヒータ31の一方がOFFになっている。スチーム供給ユニット40が停止されている場合には、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになっている。
【0068】
図20Bは、縦軸を加熱室20内の温度(庫内温度)とし、横軸を時間とするグラフであって、調理開始から調理終了前までの間を示している。なお、説明の便宜上、縦軸および横軸のそれぞれのスケール(目盛間隔)を領域に応じて意図的に変えている。
加熱調理が開始されると、第1ステージとして、スチーム供給ユニット40が停止された状態で上ヒータ30および下ヒータ31がONになり、この状態が、庫内温度が70℃以上まで上昇するまで、最長で180秒間継続される。第1ステージは、前述した制御動作におけるスタートからステップS2のYESの直前までの期間に相当する(図19参照)。
【0069】
庫内温度が70℃まで上昇すると(前述したステップS2のYES)、第1ステージから第2ステージに移行し、スチーム供給ユニット40が、最短でも60秒間の所定時間だけ運転される。これにより、加熱室20内に所定量のスチームが投入される。第2ステージは、前述したステップS3に相当する(図19参照)。第2ステージでは、上ヒータ30および下ヒータ31の一方がOFFになっているので庫内温度はあまり上昇しないが(図20B参照)、加熱室20内の食品の温度は、庫内温度に比べて急激に上昇する。
【0070】
加熱室20内に所定量のスチームが投入されると、スチーム供給ユニット40が停止され、第2ステージから第3ステージに移行して、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになる。第3ステージは、庫内温度が前述した第1温度B以上まで上昇するまで継続される。ここでは、第1温度Bは、設定温度Aより55℃低い温度(A−55℃)である。第3ステージは、前述したステップS3の直後からステップS4のYESの直前までの期間に相当する(図19参照)。
【0071】
庫内温度が第1温度B(A−55℃)まで上昇すると(前述したステップS4のYES)、第3ステージから第4ステージに移行し、庫内温度が設定温度Aより45℃低い温度(A−45)℃以上まで上昇するまで、スチーム供給ユニット40が90秒間運転される。これにより、加熱室20内に所定量のスチームが投入される。第4ステージは、前述したステップS5に相当する(図19参照)。
【0072】
庫内温度がA−45℃まで上昇すると、スチーム供給ユニット40が停止され、第4ステージから第5ステージに移行して、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになる。第5ステージは、庫内温度が前述した第2温度C以上まで上昇するまで継続される。ここでは、第2温度Cは、設定温度Aより30℃低い温度(A−30℃)である。第5ステージは、前述したステップS5の直後からステップS6のYESの直前までの期間に相当する(図19参照)。
【0073】
庫内温度が第2温度C(A−30℃)まで上昇すると(前述したステップS6のYES)、第5ステージから第6ステージに移行し、庫内温度が設定温度Aより15℃低い温度(A−15℃)以上まで上昇するまで、スチーム供給ユニット40が最長で30秒間運転される。これにより、加熱室20内に所定量のスチームが投入される。第6ステージは、前述したステップS7に相当する(図19参照)。
【0074】
庫内温度がA−15℃まで上昇すると、スチーム供給ユニット40が停止され、第6ステージから第7ステージに移行して、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになる。第7ステージは、庫内温度が設定温度Aより1℃高い温度(A+1℃)以上まで上昇するまで最長で150秒間継続される。
詳しくは、第7ステージにおいて庫内温度が設定温度Aに到達すると(前述したステップS8でYES)、第7ステージを含む以降のステージでは、庫内温度を設定温度Aに維持するような処理(前述したステップS9)が行われるとともに、この処理とは別に、スチームを加熱室20内に投入する処理が行われる。加熱室20内に投入されたスチームが、過熱蒸気となって、加熱室20内の食品に対して、減塩等を伴う加熱をおこなう。
【0075】
具体的には、第7ステージにおいて庫内温度がA+1℃まで上昇すると、第7ステージから第8ステージに移行する。第8ステージでは、スチーム供給ユニット40が最短で40秒間運転され、加熱室20内に所定量のスチームが投入される。この間、前述したように、上ヒータ30および下ヒータ31の一方がOFFになっているので、庫内温度が低下する。
【0076】
そこで、加熱室20内に所定量のスチームが投入された後に、スチーム供給ユニット40が停止され、第8ステージから第9ステージに移行する。第9ステージでは、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになるので、庫内温度が上昇する。第9ステージは、庫内温度がA+1℃以上まで上昇するまで、最短で3秒間、最長で2分間継続される。
庫内温度がA+1℃まで上昇すると、第9ステージから第10ステージに移行する。第10ステージでは、たとえば、上ヒータ30および下ヒータ31の一方または両方がOFFされることで、庫内温度が下がる。第10ステージは、庫内温度が設定温度Aより1℃低い温度(A−1℃)を下回るまで、最短で35秒間、最長で180秒間継続され、その間、スチーム供給ユニット40は、最短で0秒間、最長で35秒間運転される。
【0077】
そして、予め設定された調理時間について、まだ残り時間がある場合、第9ステージおよび第10ステージが、第8ステージから第9ステージに移行したときから最長で35分間のリピート期間内、交互に繰り返される。
リピート期間経過後も調理時間に残りがある場合において、第10ステージで庫内温度がA−1℃を下回ると、第10ステージから第11ステージに移行する。第11ステージでは、スチーム供給ユニット40が停止される一方で、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになっており、この状態が、庫内温度がA+1℃以上まで上昇するまで、最短で3秒間、最長で5分間継続される。
【0078】
庫内温度がA+1℃まで上昇すると、第11ステージから第12ステージに移行する。第12ステージでは、たとえば、上ヒータ30および下ヒータ31の一方または両方がOFFされることで、庫内温度が下げられる。第12ステージは、庫内温度がA−1℃を下回るまで、最短で25秒間、最長で180秒間継続され、その間、スチーム供給ユニット40は、最短で0秒間、最長で5秒間運転される。
【0079】
そして、第11ステージおよび第12ステージが、第10ステージから第11ステージに移行したときから運転終了までの間、交互に繰り返される。
以上の結果、第8ステージから第12ステージでは、庫内温度が、設定温度Aに対して±2℃の微小範囲内で変動するように維持されている。つまり、庫内温度が、設定温度Aに維持されている。
【0080】
なお、運転終了後(調理時間経過後)、ユーザが開閉扉21を開いて加熱室20内の食品を見て、食品の焼き加減が甘いと判断すると、食品の加熱調理を延長することができる。その場合、ユーザが、開閉扉21を閉じてキー入力部11(図1参照)を所定手順で操作して、加熱調理の延長を選択する。これに応じて、制御部70は、第11ステージおよび第12ステージの処理を、ユーザによって設定された延長時間(最長20分間)だけ繰り返して、食品を設定温度Aで再び加熱調理する。
【0081】
また、熱風調理中において、ユーザがキー入力部11を所定手順で操作することによって、蒸気調理に切り替えることができる。その場合、制御部70は、第4ステージから処理を開始する。なお、この場合、庫内温度が既に、各ステージにおける次のステージへの移行条件温度を上回っていれば、途中のステージの処理は省略される。
また、庫内温度が、設定温度Aより20℃高い値まで上昇すると、過熱防止のため、制御部70は、上ヒータ30および下ヒータ31を強制的にOFFにし、スチーム供給ユニット40を強制的に停止する。
【0082】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 加熱調理器
20 加熱室
29 ヒータ
32 コンベクションファン
40 スチーム供給ユニット
70 制御部
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器として、過熱蒸気によって食品を加熱調理する過熱蒸気調理装置が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載の過熱蒸気調理装置は、内部に調理室が形成された本体と、調理室内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生装置とを備えている。本体の前面部には、ドアが取り付けられていて、ドアを開くことによって、調理室に食品を入出することができる。
【0003】
調理室に食品を入れてからドアを閉じ、過熱蒸気調理装置の運転を開始すると、過熱蒸気発生装置が、過熱蒸気を発生させて調理室内に供給する。これにより、調理室の食品が加熱調理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−83735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱調理器では、調理時間を短縮するために、食品の加熱調理に係る効率の向上が常に望まれている。
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、食品の加熱調理に係る効率の向上を図ることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、被調理食品を収容するための加熱室と、前記加熱室内を加熱するためのヒータと、前記加熱室内にスチームを供給するためのスチーム供給ユニットとを備え、前記ヒータによる前記加熱室内の加熱が開始されてから、前記加熱室内の温度が100℃以下の所定温度において、前記スチーム供給ユニットにより、前記加熱室内に所定量のスチームを供給するスチーム供給制御手段を含むことを特徴とする、加熱調理器である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記所定温度は、70℃を含むことを特徴とする、請求項1記載の加熱調理器である。
請求項3記載の発明は、前記スチーム供給制御手段は、前記加熱室内の温度が100℃を超えて所定の目標温度に到達するまでの間に、少なくとも1回は、前記スチーム供給ユニットにより、前記加熱室内にスチームを供給することを特徴とする、請求項1または2記載の加熱調理器である。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記加熱室内で空気を循環させるためのファンと、前記スチーム供給ユニットがスチームを供給するのに連動させ、前記ファンを運転させる手段とを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の加熱調理器である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、加熱調理器では、ヒータが加熱室内を加熱し、スチーム供給ユニットが加熱室内にスチームを供給することによって、加熱室内の被調理食品を加熱調理することができる。
そして、ヒータによる加熱室内の加熱が開始されてから、加熱室内の温度が100℃以下の所定温度において、スチーム供給制御手段が、スチーム供給ユニットにより、加熱室内に所定量のスチームを供給する。加熱室内の温度が100℃以下の所定温度にあるときには、加熱室内の被調理食品の加熱はあまり進んでおらず、被調理食品とスチームとの温度差が比較的大きい。この場合において加熱室内に所定量のスチームを供給することによって、加熱室内の被調理食品に対する加熱効果を高めることができる。
【0010】
この結果、食品の加熱調理に係る効率の向上を図ることができる。
ここで、前記所定温度は、請求項2記載の発明によれば、70℃を含んでいる。
請求項3記載の発明によれば、スチーム供給制御手段は、加熱室内の温度が100℃を超えて所定の目標温度に到達するまでの間に、少なくとも1回は、スチーム供給ユニットにより、加熱室内にスチームを供給する。これにより、加熱室内の温度が目標温度に到達するまでの間に加熱室内の被調理食品が乾燥してしまうことを防止できる。
【0011】
つまり、加熱室内の温度が目標温度に到達するまでの間において、加熱室内の被調理食品を最適な状態で加熱調理することができる。
請求項4記載の発明によれば、スチーム供給ユニットがスチームを供給するのに連動して、ファンが運転されて加熱室内で空気を循環させる。つまり、ファンが常に運転されるわけではないので、スチームが加熱室から機外へ不必要に排出されることはない。そのため、加熱室内の被調理食品をスチームによって効率的に加熱調理することができる。また、スチーム供給ユニットがスチームを供給するのに連動してファンが運転されるので、スチームがスチーム供給ユニットに留まることはなく、スチーム供給ユニット自体がスチームによって過熱されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係る加熱調理器1の斜視図であって、開閉扉21を開いた状態を示している。
【図2】図2は、加熱調理器1の正面図であって、開閉扉21を取り除いた状態を示している。
【図3】図3は、加熱調理器1の左側断面図であって、開閉扉21を開いた状態を示している。
【図4】図4は、加熱調理器1の左側断面図であって、開閉扉21を閉じた状態を示している。
【図5】図5は、加熱調理器1の右側断面図であって、開閉扉21を閉じた状態を示している。
【図6】図6は、加熱調理器1の平断面図である。
【図7】図7は、加熱調理器1の正断面図である。
【図8】図8は、図7の要部拡大図である。
【図9】図9は、加熱調理器1の右側断面図であって、開閉扉21を取り除いた状態を示している。
【図10】図10は、図9の要部拡大図である。
【図11】図11は、スチーム供給ユニット40の側面図である。
【図12】図12は、スチーム供給ユニット40の正面図である。
【図13】図13は、スチーム供給ユニット40の背面図である。
【図14】図14は、スチーム供給ユニット40の分解斜視図である。
【図15】図15は、スチーム供給ユニット40の内部構造を示す背面図である。
【図16】図16は、加熱調理器1における加熱室20の下部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図17】図17は、加熱調理器1の背面側における要部の平断面図である。
【図18】図18は、加熱調理器1の制御回路ブロック図である。
【図19】図19は、加熱調理器1において行われる制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図20A】図20Aは、加熱調理器1において行われる加熱調理を説明するための図である。
【図20B】図20Bは、加熱調理器1において行われる加熱調理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態に係る加熱調理器1は、レンジ台やテーブル等の水平な支持面の上に置いて用いられる。
加熱調理器1は、板金を主材料とする直方体形状の筐体10を備えている。筐体10の内部には、同じく板金(好ましくはステンレススチールのような錆びにくい板金)により、加熱室20が設けられている。加熱室20は、筐体10の正面に向かって開口している直方体形状である。加熱室20の正面の開口20Aは、左右方向に長手の略矩形状である。開口20Aから食品(被調理食品)を投入して、加熱室20内に収容することができる。加熱室20は、その内部で食品の加熱調理を行う調理庫を構成している。
【0014】
筐体10の正面には、開閉扉21が設けられており、開閉扉21は、加熱室20の正面の開口20Aを開閉自在に覆う。開閉扉21は、加熱室20へ食品を入出する際に開閉される。
加熱室20は、正面から見て、筐体10において左寄りに配置されており、筐体10の正面において加熱室20の右隣の領域には、キー入力部11と表示部14とが設けられている。キー入力部11は、各種形状の操作スイッチ12およびダイヤル13を含んでいる。操作スイッチ12およびダイヤル13は、加熱調理器1における調理条件(目標加熱温度や調理時間)を設定したり、調理を開始したり、調理を中止したりするために操作される。表示部14は、液晶パネル等によって構成されている。
【0015】
筐体10の正面において、キー入力部11および表示部14より下の下端部には操作扉15が設けられている。操作扉15は、後述するスチーム供給ユニット40(図3参照)に水を供給する給水タンク(図示せず)を筐体10に対して着脱するために操作される。
開閉扉21について詳しく説明すると、開閉扉21は、加熱室20の開口20Aを覆い得る大きさを有する板状であり、その下端を支点として回動することで開閉可能である。開閉扉21は、水平に延びて開口20Aを前方へ開放する開位置(図1参照)と、垂直に延びて開口20Aを前側から塞ぐ閉位置(図4参照)との間で前後に約90°回動する。開閉扉21は、開位置にあるときには開いていて、閉位置にあるときには閉じている。
【0016】
開閉扉21において、回動中心とは反対側の自由端には、開閉扉21を開閉する際に把持されるハンドル22が設けられ、開閉扉21の中央には、耐熱ガラスをはめ込んだ覗き窓23が設けられている。開閉扉21が閉位置にある状態において、覗き窓23から加熱室20内を視認することができる。
加熱室20の左右側壁には、互いに向き合う形のラックガイド24がプレス成型で形成されている。ラックガイド24は、ステンレス鋼線からなるワイヤーラック25を水平に、かつ前後方向にスライド可能に支持する。開閉扉21の内面にはワイヤーラック25の前端を引っ掛けるフック26が形成されている。フック26は、開閉扉21を開くときはワイヤーラック25を加熱室20から前方へ引き出し、開閉扉21を閉じるときはワイヤーラック25を加熱室20の中に押し込む。
【0017】
図5を参照して、加熱調理器1は、加熱室20内に配置されたヒータ29と、加熱室20の背面側に配置されたスチーム供給ユニット40とを含んでいる。加熱室20における食品の加熱調理は、ヒータ29およびスチーム供給ユニット40によって行われる。最初に、ヒータ29による加熱の仕組みを説明する。
ヒータ29は、加熱室20内を加熱するものであり、上ヒータ30および下ヒータ31を含んでいる。
【0018】
ここで、加熱室20の内部において、ワイヤーラック25自身、またはその上に載置されるトレイ63等が、加熱室20の床面の上で食品を支持する食品支持部27を構成する。食品支持部27より上の位置に上ヒータ30が配置され、食品支持部27より下の位置に下ヒータ31が配置されている。
上ヒータ30は、石英ガラスの管の中に発熱線を入れた棒状のガラス管ヒータにより構成されている。上ヒータ30は、加熱室20の天井面の下に、当該天井面からやや距離を置いて水平に配置されている。上ヒータ30の軸線方向(長手方向)は、加熱室20の左右方向に沿っている(図7参照)。
【0019】
下ヒータ31は、金属管の中に発熱線を入れたシースヒータにより構成されている。下ヒータ31は、所定の形状に曲げられ、加熱室20の床面の上、かつ食品支持部27より下の位置に配置されている。
上ヒータ30および下ヒータ31が発生する熱は、輻射だけでなく、対流(コンベクション)によっても食品に伝えられる。そのため、筐体10と加熱室20との間においてキー入力部11(図1参照)の裏側にあたる空間には、図6に示すコンベクションファン32(ファン)が配置されている。
【0020】
コンベクションファン32は、遠心ファン33と、それを回転させるコンベクションモータ34とを含んでいる。ここで、加熱室20の右側壁の外面には、溶接等の手段でファンケーシング35が固定されている。ファンケーシング35は、左右に扁平なボックス状である。コンベクションモータ34は、その出力軸がファンケーシング35内で水平(左右)に延びた状態で、ファンケーシング35によって支持されている。遠心ファン33は、ファンケーシング35内でコンベクションモータ34の出力軸に取り付けられている。
【0021】
図4に示すように、加熱室20の右側壁には、ファンケーシング35の内部に連通する小孔が多数打ち抜かれている。小孔は数群の集合を形成している。第1の集合は、吸気口36を形成し、吸気口36は、遠心ファン33の真正面の位置に配置されている(図8参照)。吸気口36を囲むように小孔の集合が3群配置されている。これらの集合は、いずれも空気吹出口37であり、開閉扉21に近い側を前、それと反対の側を後とした場合、2つの空気吹出口37は、吸気口36を前後から挟む形で配置され、残りの空気吹出口37は、吸気口36の上に配置されている。
【0022】
上ヒータ30と吸気口36とは、上下に並ぶ位置(前後方向で同じ位置)に配置されている。また、吸気口36と、それを前後から挟む2つの空気吹出口37とでは、それぞれの下端の小孔が、遠心ファン33の回転中心とほぼ並ぶ高さに位置している。
加熱室20の右側壁の小孔の中で、吸気口36および空気吹出口37を構成しなかったものは、ファンケーシング35の内部空間の最下部に連通する貫通孔38となる。
【0023】
コンベクションファン32を駆動したときの空気の流れは後で説明する。上ヒータ30の発生熱量、または、上ヒータ30と下ヒータ31との合計発生熱量は、加熱調理器1をコンベクションオーブンとして機能させるに足る数値に設定されている。
続いてスチーム供給ユニット40による加熱の仕組みを説明する。ここで、スチーム供給ユニット40は、加熱室20の背面側壁の外側、詳しくは、加熱室20の背面側壁と筐体10の背面側壁との間に配置されている(図5参照)。スチーム供給ユニット40は、加熱室20内に蒸気(スチーム)を供給する。
【0024】
図14に示すように、スチーム供給ユニット40は、背面側が全面的に開口した金属製の正面側ケーシング41と、正面側ケーシング41の背面開口を閉ざす金属製の背面側ケーシング42と、スチームヒータ43とを含んでいる。正面側ケーシング41および背面側ケーシング42は、たとえば、アルミニウムで形成されている。
スチームヒータ43は、左右に長手の棒状であり、正面側ケーシング41の下部を左右に貫通している。正面側ケーシング41の正面上部には、図12に示すように、2つの蒸気噴出口44が横一列に並ぶ形で形成されている。スチーム供給ユニット40は、これらの蒸気噴出口44を加熱室20の内部に露出させ、加熱室20内にスチームを吹き込む(図5参照)。
【0025】
背面側ケーシング42には、図13に示すように、給水口45と温度検知装置取付部46とが形成されている。背面視において、給水口45は、背面側ケーシング42の右端近くに配置されており、温度検知装置取付部46は背面側ケーシング42の左端近くに配置されている。給水口45には、一端が給水タンク(図示せず)につながった給水パイプ(図示せず)の他端が接続されている。
【0026】
ここで、図17を参照して、筐体10の背面側壁には、横方向に間隔を隔てた複数の位置に膨出部16を有している。筐体10の背面側壁は、膨出部16において後側へ円弧状に膨出している。前述したレンジ台やテーブル等に加熱調理器1が載置された状態で加熱調理器1の背後に室内の壁等が存在する場合、膨出部16が室内の壁等に接触することによって、筐体10の背面側壁(膨出部16以外の部分)と室内の壁等との間に適切な隙間が確保される。これにより、筐体10の背面側壁が室内の壁等に密着することが防止される。
【0027】
そして、図17では、前述した給水パイプに、符号17が付されている。給水パイプ17は、たとえばシリコンチューブである。給水パイプ17は、筐体10の背面側壁の内側面に沿って延びていて、途中でいずれかの膨出部16内にはみ出ながら前側へ湾曲して、給水口45に接続されている。つまり、膨出部16によって給水パイプ17を湾曲させるスペースを比較的大きく確保することによって、給水パイプ17を大きく湾曲させて給水口45に接続することができる。これにより、給水パイプ17が小さく折れ曲って腰折れすることで給水パイプ17における水の流れが悪くなることを防止できる。
【0028】
特に、加熱調理器1全体の小型化を図る一方で、加熱室20を極力大きくしようとすると、どうしても、加熱室20の背面側壁と筐体10の背面側壁との間におけるスチーム供給ユニット40を配置するスペースが狭くなってしまう。しかし、そのような場合であっても、膨出部16内で給水パイプ17を大きく湾曲させることで、給水パイプ17における円滑な水の流れを確保している。また、給水パイプ17を湾曲させることができるから、この給水パイプ17は、比較的安価な通常の直線状のパイプであってよいので、比較的高価なL字状のパイプを給水パイプ17として使用せずに済む。
【0029】
正面側ケーシング41の内面には、図15に示す通り、蒸気噴出口44より少し下の位置に、3つのリブ47が形成されている。リブ47はいずれもほぼ水平に延びている。3つのリブ47のうち、2つのリブ47は、左右に間隔を隔てて配置されていて、残る1つのリブ47は、2つのリブ47にまたがる形で、これらの2つのリブ47から上方に間隔を隔てた位置に配置されている。これら3つのリブ47は、正面側ケーシング41の内部空間の底面(内底面41A)側の液体の水が蒸気噴出口44に到達するのを邪魔するラビリンス通路48を構成する。
【0030】
給水口45および温度検知装置取付部46は、下側2つのリブ47よりも下の位置にある(図14参照)。正面側ケーシング41の内底面41Aには、背面視で左に向かって下がる緩やかな傾斜がつけられている。
正面側ケーシング41と背面側ケーシング42は、合わせ目から水やスチームが漏れないよう、合わせ目にシリコン接着剤を塗布した上で、図示しないねじにより締め付け固定される(図11および図14参照)。
【0031】
図9に示すように、加熱室20の背面側壁には、正面から見て矩形状であって背面側へ窪む凹部50が、プレス成型で形成されている。スチーム供給ユニット40は、加熱室20の背面側壁における凹部50の外面に取り付けられており、蒸気噴出口44は、凹部50に形成された貫通孔(図示せず)から加熱室20内に突き出ている。
加熱室20の背面側壁には、凹部50の蒸気噴出口44の前面に前から対向する位置に、反射板51が設けられている。反射板51は、横長の金属板であり、蒸気噴出口44の前に、所定の間隔を隔てて立ち塞がっている。
【0032】
反射板51は、図3に示すように、左右方向から見て後側へ窪む扁平な略V字状の断面を有している。ここで、加熱室20の背面側壁の凹部50における前面と、反射板51との間には、蒸気通路52が形成されているが、左右方向から見て、蒸気通路52の前後の幅は、蒸気噴出口44より上の箇所よりも、蒸気噴出口44より下の箇所の方において広い。また、反射板51の上端は、前方に折り曲げられていて、蒸気噴出口44からのスチームを斜め上方に誘導するようになっている。
【0033】
凹部50の内側壁は、奥側(背面側)に向かってテーパ状にすぼんでいる。これにより、凹部50の上部内側壁は、蒸気噴出口44からのスチームを上ヒータ30の方向に誘導する斜面53となり、凹部50の下部内側壁は、蒸気噴出口44からのスチームを下ヒータ31の方向に誘導する斜面54となっている。
図9に示すように、加熱室20の開口20Aの周囲にパッキン60が取り付けられている。パッキン60は耐熱性を備えたゴムまたは合成樹脂からなり、図10に示す断面形状を有している。パッキン60は、一体成型されたピン61を有している。ピン61を筐体10の正面に形成された貫通孔10Aに押し込むことによって、パッキン60は、加熱室20の開口20Aを取り込んだ状態で筐体10に取り付けられている(図1参照)。パッキン60は、閉じた状態(前述した閉位置)の開閉扉21(図4参照)の内面に当たることによって、加熱室20の開口20Aの周囲と開閉扉21との間の気密性を保つ。パッキン60は、加熱室20の内部に向かって開いた断面形状を有していることから、加熱室20の内圧が高まるにつれ、開閉扉21により密着するようになっている(図10参照)。
【0034】
図3に示すように、加熱室20の床面の上、かつ、下ヒータ31の下という位置に、前方から受皿62が挿入されている。受皿62は、落下した食品の一部や、食品から滴り落ちる油脂や水分等を受け止める。
調理中や調理後に加熱室20の側壁が冷えると、加熱室20内の気体に含まれていた水分が結露する。結露した水滴を受け止めるのも受皿62の役目である。水滴が受皿62の外にこぼれないよう、加熱室20の側壁と受皿62との間には図16に示すような工夫が施されている。すなわち、加熱室20の側壁28は、それが背面側壁、左側壁、右側壁のいずれであってもよいが、受皿62の上に位置している。さらに、側壁28の下の角には、受皿62に向かって下向きに突き出す鋭角部28Aが形成されている。
【0035】
また、ワイヤーラック25には、図5に示すトレイ63が載置される。トレイ63は、食品支持部27を構成するものであり、ワイヤーラック25と共に、開閉扉21の開閉に連動して前後にスライドする(図3参照)。ワイヤーラック25の後端には、上方に向かって突き出すストッパ25Aが形成されている。ストッパ25Aは、トレイ63を背後から支え、トレイ63がワイヤーラック25に対しそれ以上後方へ相対移動しないようにする。
【0036】
次に、加熱調理器1の動作を説明する。まず、開閉扉21を開け、ワイヤーラック25と、その上に載置されたトレイ63を前方に引き出す(図3参照)。トレイ63の上に食品を載せ、開閉扉21を閉じる。開閉扉21が閉位置に到達すると、それまで後方に移動していたワイヤーラック25が停止する。
この際、トレイ63は慣性で後方に移動しようとするが、ストッパ25Aがトレイ63を背後から支えているので、ワイヤーラック25に対するトレイ63の後方への相対移動は生じない。これにより、トレイ63の後端と加熱室20の背面側壁との間に、スチームを通過させる間隙が確保される。
【0037】
加熱室20の中に食品を収納し終わった後、キー入力部11の操作スイッチ12やダイヤル13(図1参照)を操作して、調理に関する様々な設定を行う。設定完了後、キー入力部11を操作すれば、調理が開始される。
設定した調理内容が「蒸気調理(スチーム調理)」であった場合は、ポンプ(図示せず)が駆動され、給水タンク(図示せず)から給水パイプ17を介してスチーム供給ユニット40内に給水が行われるとともに、スチームヒータ43(図14参照)に対し通電が行われ、スチームの生成が開始される。この時、スチーム供給ユニット40内の水の水位は、リブ47よりも下に設定されている(図14参照)。
【0038】
水は、スチーム供給ユニット40の中で沸騰して飽和蒸気(スチーム)となり、蒸気噴出口44から噴出する。噴出したスチームは反射板51に当たり、反射板51の断面形状により、一部は上方に向かい、残部は下方に向かう(図5の太線矢印参照)。
スチームには、上昇する性質があるので、もしも反射板51が垂直な平板であったとすると、上方に向かうスチームの方が多くなる。しかしながら、前述したように、反射板51の断面形状により、蒸気通路52の前後の幅が、蒸気噴出口44より上の箇所よりも、蒸気噴出口44より下の箇所の方で広くなっているので、上方と下方にバランス良くスチームを分配することができる。すなわち反射板51は、自身の断面形状により、当たったスチームの一部を上ヒータ30に向かわせ、残部を下ヒータ31に向かわせるというスチーム分配機能を備えている。
【0039】
図5の太線矢印を参照して、反射板51で反射して上方に向かったスチームは、凹部50の上部の斜面53に当たり、上ヒータ30の方向に向きを変える。反射板51で反射して下方に向かったスチームは、凹部50の下部の斜面54に当たり、下ヒータ31の方向に向きを変える。この時点で上ヒータ30と下ヒータ31は、通電により発熱状態にあり、これらのヒータにスチーム(飽和蒸気)が吹き付けられることにより、スチームは過熱蒸気(過熱スチーム)となる。上下で発生した過熱蒸気が、トレイ63内の食品を包み込むことにより、食品は効率よく加熱される。
【0040】
前述したように上ヒータ30の軸線方向が加熱室20の左右方向に沿っていることから、上ヒータ30の長手方向は、加熱室20の背面側壁と平行である(図7参照)。この上ヒータ30に、加熱室20の背面側壁に横一列に並んだ蒸気噴出口44からのスチームが当たるから、上ヒータ30にスチームがムラなく当たり、スチーム(飽和蒸気)から過熱蒸気への転換が効率良く行われる。
【0041】
蒸気噴出口44の前に反射板51が存在するので、調理中または調理後において、蒸気噴出口44からスチームが噴出している間に開閉扉21が開けられても、使用者の方にスチームが噴出されることはない。
また、反射板51により上方と下方とにスチームを分配するものであるから、安価な構造で、スチームの分配を適切に行うことができる。スチームの分配を弁で行っていたりすると、スケールの堆積で弁の機能に障害が生じることがあるが、反射板51であれば、スケールが付着してもスチーム分配機能には影響がないから、メンテナンスが長期間不要である。
【0042】
図13を参照して、スチーム発生中、スチーム供給ユニット40には、前述した給水パイプ(図示せず)を介して給水口45から給水が行われる。この際、温度検知装置取付部46に取り付けられたスチームサーミスタ71(図18参照)がスチーム供給ユニット40の内部温度を監視する。そして、スチームサーミスタ71の検知した温度に基づき、スチームヒータ43のON/OFF制御が行われる。
【0043】
ここで、冷水が流入する給水口45と温度検知装置取付部46とが接近した位置にあると、スチームサーミスタ71はスチーム供給ユニット40の中で最も温度の低い部分の温度を測定することになり、スチームヒータ43のON時間の割合が多くなる。これにより、給水口45から離れた箇所の温度が上がりすぎ、正面側ケーシング41と背面側ケーシング42の合わせ目に塗布されている前述したシリコン接着剤の耐熱温度を超える場合がある。しかしながら本実施形態では、給水口45と温度検知装置取付部46とが横方向に離れた位置にあるので、スチームサーミスタ71は給水口45の冷水の影響を受けにくく、スチーム供給ユニット40を過度にONにすることがない。このため、シリコン接着剤は耐熱温度以下に保たれる。
【0044】
図15を参照して、正面側ケーシング41の内部空間の内底面41Aは、背面視で左に向かって下がるように傾斜している。そのため、給水口45から流入した冷水は、内底面41Aの傾斜に沿って背面視で左側に流れ、内底面41A全体にムラなく行き渡る。このため、スチームヒータ43の発生する熱が効率良く水に伝わる。
スチーム供給ユニット40の中の水は沸騰して躍り上がるので、そのままでは蒸気噴出口44から水滴が噴出する。しかしながら、本実施形態では、スチーム供給ユニット40の中の水の水面と蒸気噴出口44の間に、リブ47によるラビリンス通路48が設けられているので、スチームは蒸気噴出口44まで流れるものの、液体の水はリブ47に邪魔されて蒸気噴出口44まで到達しない。このため、蒸気噴出口44から水滴が飛び出して加熱室20内の食品に付着するといった事態は発生しない。
【0045】
リブ47の上面に水が多少飛び上がったとしても、それが速やかに下方の水面に戻るよう、下方のリブ47には正面側ケーシング41の中央方向に下がる傾斜がつけられており、上方のリブ47は、中央が高く両端が低い山形形状になっている。
図5を参照して、蒸気調理に用いられるスチームや、食品から発生する蒸気は、加熱室20の側壁に付着して冷却されると結露する。結露した水滴は、加熱室20の底面へ向かってに流れ落ちようとする。水滴には油脂等が含まれていることが多いので、それが加熱室20の底面に流れることをそのままにしておくと、加熱室20の内部が不潔になる。しかしながら、前述したように、図16に示すように、加熱室20の側壁28が受皿62の上に位置しているので、側壁28を伝って流下する水滴は受皿62に受け止められ、加熱室20の底面には流れない。受皿62は取り出して洗うことができるから、加熱室20の内部を清潔に保つことができる。
【0046】
特に、側壁28の下の角に鋭角部28Aを形成しておけば、側壁28を伝って流下する水滴を確実に受皿62に落下させることができる。
図4を参照して、結露が生じるのは加熱室20の内部に限らない。ファンケーシング35(図6参照)の内部にも生じる。加熱室20においてファンケーシング35を固定した右側壁には、ファンケーシング35の内部空間の最下部に連通する貫通孔38が形成されているから、ファンケーシング35に生じた水滴は貫通孔38を通って加熱室20の内部に流れ出し、受皿62に受けられる。そのため、ファンケーシング35の中に水が溜まることがない。従って、ファンケーシング35の中に溜まった水がファンケーシング35と加熱室20の右側壁との合わせ目から漏れ出して筐体10内の電装部品を濡らしたり、ファンケーシング35を腐食させたりすることがない。
【0047】
開閉扉21の内面にも結露が生じたり、油が付着したりする。パッキン60(図10参照)が開閉扉21側に設けられていると、開閉扉21を開閉した時にパッキン60の襞部分に水や油が垂れ落ち、不潔になる。本実施形態では、開閉扉21側でなく筐体10側にパッキン60を取り付けたので、上記のような不都合を避けることができる。
また、筐体10を構成する板金部材のうち、加熱室20の開口20A周囲を構成する部材と、加熱室20の内部を構成する部材とは、ビス締めやスポット溶接等の手法で接合されるが、それらの接合痕をパッキン60で隠すことができる(図9参照)。そのため、念入りな塗装を施したり、飾り部品を取り付けたりするというコスト高な手段で接合痕を隠す必要がなくなる。
【0048】
そして、蒸気調理が終了すれば、そのことが音声または表示部14(図1参照)の表示で報知される。これを受けてユーザは、開閉扉21を開け、調理済みの食品を取り出す。給水タンク(図示せず)の中の水が減っていれば補給し、次回の蒸気調理に備える。
このような蒸気調理では、過熱蒸気によって肉や魚から余分な油脂や塩分を取り除くことができるが、さらには、パン(米粉パン等)をふっくらと加熱することもできる。
【0049】
一方、設定した調理内容が「熱風調理(オーブン調理)」であった場合は、加熱室20内にスチームは供給されない。上ヒータ30および下ヒータ31に通電した状態で、コンベクションファン32を運転して、調理が進められる。
コンベクションファン32を運転すると、吸気口36から加熱室20内の空気が吸い込まれる。上ヒータ30とコンベクションファン32とは軸線方向が一致し、また、上ヒータ30は吸気口36と上下に並ぶ位置に配置されている。これにより、上ヒータ30で加熱された空気は真っ直ぐ吸気口36に吸い込まれる。その空気が空気吹出口37から吹き出されて加熱室20全体に回るから、上ヒータ30の直下とそれ以外の箇所との温度差が小さくなり、加熱室20内における加熱ムラを低減することができる。
【0050】
吸気口36を通って遠心ファン33に吸い込まれた空気は、遠心ファン33から放射方向に吐出される。その空気(加熱空気)は、図6において太線矢印で示すように、空気吹出口37から吹き出されて加熱室20の内部を隅々まで行き渡ってから吸気口36に戻る。つまり、遠心ファン33(コンベクションファン32)は、加熱室20内で空気を循環させる。
【0051】
ここで、吸気口36より前方にある空気吹出口37(図4参照)から吹き出される空気は、開閉扉21の覗き窓23の方に向かい、覗き窓23を掃くように流れるので、覗き窓23の結露や曇りを一掃することができる。
図4を参照して、前述したように、吸気口36を前後から挟む2つの空気吹出口37では、下端の小孔が遠心ファン33の回転中心とほぼ並ぶ高さに位置している。すなわち、空気吹出口37を構成する小孔は、遠心ファン33の回転中心よりも上側に多く配分されている。これにより、コンベクションファン32が吐出する空気は、主として加熱室20の上方に向かって多く吹き出されることになる。熱気は加熱室20の上部に溜まりやすいが、加熱室20の上方に向かって吹き出された空気によって加熱室20の上部の熱気を吹き飛ばし、加熱室20の下部へ送ることができるので、加熱室20内の熱気配分を上下方向で均等化することができる。熱風調理の場合のみならず、蒸気調理の際にもコンベクションファン32を運転することにより、同様の効果が得られる。
【0052】
熱風調理が終了すれば、そのことが音声または表示部14(図1参照)の表示で報知される。これを受けてユーザは、開閉扉21を開け、調理済みの食品を取り出す。
ここで、加熱室20の背面側壁の左上の隅には、加熱室20および筐体19の両方の背面側壁を貫通する排気口18が形成されており、熱風調理および蒸気調理のそれぞれにおいて、余分な熱風やスチームは、排気口18から機外に排出される(図2参照)。
【0053】
図18を参照して、加熱調理器1には、マイクロコンピュータ等で構成された制御部70(スチーム供給制御手段)が備えられている。制御部70は、加熱調理器1の動作を制御する。制御部70は、計時を行う計時部70Aと、必要な情報を記憶するメモリ部70Bとを含んでいる。
制御部70には、前述したスチーム供給ユニット40、上ヒータ30、下ヒータ31、コンベクションモータ34、表示部14、キー入力部11およびスチームサーミスタ71と、オーブンサーミスタ72とが電気的に接続されている。
【0054】
制御部70は、スチーム供給ユニット40のスチームヒータ43および前述したポンプ(図示せず)を駆動させてスチーム供給ユニット40をONにして(運転して)、スチームを発生させ、スチーム供給ユニット40により、スチームを加熱室20内に供給する。
制御部70は、上ヒータ30および下ヒータ31(ヒータ29)をONにして、加熱室20内を加熱する。
【0055】
制御部70は、コンベクションモータ34をONにして遠心ファン33を回転させる。つまり、制御部70は、コンベクションモータ34をONにすることでコンベクションファン32を運転させ、これにより、加熱室20内で空気を循環させる。
ここで、制御部70は、スチーム供給ユニット40がスチームを加熱室20内に供給するのに連動させ、コンベクションファン32を運転させる。具体的には、スチーム供給ユニット40がスチームを供給している蒸気調理中において、たとえば40秒間に4秒程度コンベクションファン32を運転させる。つまり、コンベクションファン32が常に運転されるわけではないので、スチームが排気口18(図2参照)を介して加熱室20から機外へ不必要に排出されることはない。そのため、加熱室20内の食品をスチームによって効率的に加熱調理することができる。
【0056】
また、スチーム供給ユニット40がスチームを供給するのに連動してコンベクションファン32が運転されるので、スチームがスチーム供給ユニット40に留まることはなく、スチーム供給ユニット40自体がスチームによって過熱されることを防止できる。これにより、スチーム供給ユニット40と加熱室20内との温度差が大きくなることを防止できる。
【0057】
オーブンサーミスタ72は、ファンケーシング35内に配置されている(図6参照)。ファンケーシング35内と加熱室20内とは、加熱室20の右側壁の小孔(吸気口36、空気吹出口37および貫通孔38)を介して連通しているので、オーブンサーミスタ72は、当該小孔を介して、調理中に加熱室20内の温度(雰囲気温度)を検出する。厳密には、オーブンサーミスタ72は、ファンケーシング35内の温度を検出していて、加熱室20内とファンケーシング35内とでは温度差があり、この温度差は、実験によって予め把握されて、メモリ部70Bに記憶されている。そして、オーブンサーミスタ72の検出結果(ファンケーシング35内の温度)に前記温度差を加えた値が、加熱室20内の実際の温度となる。つまり、オーブンサーミスタ72は、ファンケーシング35内の温度を検出することで、加熱室20内の温度を間接的に検出する。
【0058】
制御部70は、オーブンサーミスタ72の検出結果から、加熱室20内の温度(庫内温度)を把握する。そして、制御部70は、オーブンサーミスタ72の検出温度(つまり、庫内温度)に基づいて、上ヒータ30および下ヒータ31やスチーム供給ユニット40をON/OFFすることで、加熱調理のために加熱室20内の温度を制御する。
次に、図19を参照して、蒸気調理に関して制御部70が行う制御動作の一例を説明する。
【0059】
図19を参照して、制御部70は、ユーザによってキー入力部11(図1参照)が操作されたのに応じて、上ヒータ30および下ヒータ31をONにし、加熱室20の予熱を開始する。ここで、予熱開始に先立って、ユーザによるキー入力部11(操作スイッチ12やダイヤル13)の操作によって、庫内温度の設定温度Aや調理時間が設定される。設定温度Aは、食品を加熱する温度の目標値(目標温度)であり、100℃より高く、ここでは、200℃とされる。設定温度Aは、最大250℃まで設定できる。調理時間は、調理開始(予熱開始)から調理終了までの時間であり、計時部70A(図18参照)によって計時される。なお、庫内温度が設定温度Aに到達するまでに調理時間が経過すると、制御部70は、加熱調理器1の運転を停止する。
【0060】
そして、制御部70は、予熱を開始したのに応じて、オーブンサーミスタ72(図18参照)による庫内温度の検知を開始する(ステップS1)。
予熱により、庫内温度は次第に上昇していく。この際、制御部70は、オーブンサーミスタ72が所定のスチーム投入温度を検知したか否かを監視している(ステップS2)。つまり、制御部70は、庫内温度がスチーム投入温度に達したか否かを監視している。スチーム投入温度は、100℃以下の温度であり、この実施形態では、70℃である。
【0061】
オーブンサーミスタ72がスチーム投入温度を検知すると(ステップS2でYES)、制御部70は、スチーム供給ユニット40(図18参照)を運転させて加熱室20内に所定量のスチームを投入する(ステップS3)。つまり、制御部70は、上ヒータ30および下ヒータ31(ヒータ29)による加熱室20内の加熱が開始されてから、庫内温度が100℃以下の所定温度(スチーム投入温度)において、スチーム供給ユニット40により、加熱室20内に所定量のスチームを供給する。庫内温度が100℃以下のスチーム投入温度である予熱期間には、加熱室20内の食品の加熱はあまり進んでおらず、食品とスチームとの温度差が比較的大きい。特に、加熱室20内においてスチームは、上ヒータ30および下ヒータ31のいずれかを通ることで、前述した過熱蒸気になることから、食品とスチーム(過熱蒸気)との温度差は一層大きくなる。そのため、加熱室20内に所定量のスチームを供給することにより、食品とスチームとの温度差が大きくなるほど、大熱量を有するスチームが食品内に浸透することによって、加熱室20内の食品に対する加熱効果を高めることができる。この結果、食品の加熱調理に係る効率の向上を図ることができる。特に、過熱蒸気は食品内に吸い込まれやすいので、過熱蒸気は食品内に吸い込まれる代わりに、食品内部の油脂や塩分が食品の表面から滲み出て食品から取り除かれる。
【0062】
その後、制御部70は、オーブンサーミスタ72が第1温度Bを検知したか否かを監視する(ステップS4)。第1温度Bは、設定温度Aより低いものの、100℃より高く、ここでは、たとえば145℃程度とされる。ここでは、制御部70は、庫内温度がスチーム投入温度から第1温度Bまで上昇したか否かを監視している。
オーブンサーミスタ72が第1温度Bを検知すると(ステップS4でYES)、制御部70は、スチーム供給ユニット40を運転させて加熱室20内に所定量のスチームを投入する(ステップS5)。
【0063】
その後、制御部70は、オーブンサーミスタ72が第2温度Cを検知したか否かを監視する(ステップS6)。第2温度Cは、設定温度Aより低いものの、第1温度Bより高く、ここでは、たとえば170℃程度とされる。ここでは、制御部70は、庫内温度が第1温度Bから第2温度Cまで上昇したか否かを監視している。
オーブンサーミスタ72が第2温度Cを検知すると(ステップS6でYES)、制御部70は、スチーム供給ユニット40を運転して加熱室20内に所定量のスチームを投入する(ステップS7)。
【0064】
ステップS5およびS7において、制御部70は、庫内温度が100℃を超えて所定の目標温度(設定温度A)に到達するまでの間に、少なくとも1回は、スチーム供給ユニット40により、加熱室20内にスチームを供給している。これにより、庫内温度が目標温度に到達するまでの間に加熱室20内の食品が乾燥してしまうことを防止できる。つまり、庫内温度が目標温度に到達するまでの間において、加熱室20内の食品を最適な状態で加熱調理することができる。なお、庫内温度が100℃を超えて目標温度(設定温度A)に到達するまでの間において、スチーム供給ユニット40により加熱室20内にスチームを供給する回数は、2回以上の任意の回数であってよい。
【0065】
その後、制御部70は、オーブンサーミスタ72が設定温度Aを検知したか否かを監視する(ステップS8)。つまり、制御部70は、庫内温度が第2温度Cから設定温度Aまで上昇したか否かを監視する。
オーブンサーミスタ72が設定温度Aを検知すると(ステップS8でYES)、制御部70は、上ヒータ30および下ヒータ31のON/OFFとスチームヒータ43の運転とを制御することによって、庫内温度を設定温度Aに維持する(ステップS9)。
【0066】
そして、予め定められた調理時間が経過すると、制御部70は、加熱調理器1の運転を停止して、調理を終了する。
このように、ステップS3、S5およびS7において、庫内温度が目標温度に到達するまでの比較的早い段階(食品の温度が低い段階)から、スチームを加熱室20内の食品に供給している。そのため、庫内温度が目標温度に到達してから初めてスチームを加熱室20内の食品に供給する場合に比べて、食品の乾燥を抑えた効果的な加熱調理が可能となる。
【0067】
次に、図20Aおよび図20Bを参照して、図19における制御動作を具体的に説明する。
図20Aは、蒸気調理に関して、調理開始から調理終了までの調理時間を、第1ステージ、第2ステージ…というふうに複数のステージに区切り、次のステージへの移行条件を表にして示している。また、図20Aでは、各ステージにおいてスチーム供給ユニット40が運転されるか否かを示している。ここで、加熱調理中において、スチーム供給ユニット40が運転されている場合には、電力供給の都合等により、上ヒータ30および下ヒータ31の一方がOFFになっている。スチーム供給ユニット40が停止されている場合には、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになっている。
【0068】
図20Bは、縦軸を加熱室20内の温度(庫内温度)とし、横軸を時間とするグラフであって、調理開始から調理終了前までの間を示している。なお、説明の便宜上、縦軸および横軸のそれぞれのスケール(目盛間隔)を領域に応じて意図的に変えている。
加熱調理が開始されると、第1ステージとして、スチーム供給ユニット40が停止された状態で上ヒータ30および下ヒータ31がONになり、この状態が、庫内温度が70℃以上まで上昇するまで、最長で180秒間継続される。第1ステージは、前述した制御動作におけるスタートからステップS2のYESの直前までの期間に相当する(図19参照)。
【0069】
庫内温度が70℃まで上昇すると(前述したステップS2のYES)、第1ステージから第2ステージに移行し、スチーム供給ユニット40が、最短でも60秒間の所定時間だけ運転される。これにより、加熱室20内に所定量のスチームが投入される。第2ステージは、前述したステップS3に相当する(図19参照)。第2ステージでは、上ヒータ30および下ヒータ31の一方がOFFになっているので庫内温度はあまり上昇しないが(図20B参照)、加熱室20内の食品の温度は、庫内温度に比べて急激に上昇する。
【0070】
加熱室20内に所定量のスチームが投入されると、スチーム供給ユニット40が停止され、第2ステージから第3ステージに移行して、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになる。第3ステージは、庫内温度が前述した第1温度B以上まで上昇するまで継続される。ここでは、第1温度Bは、設定温度Aより55℃低い温度(A−55℃)である。第3ステージは、前述したステップS3の直後からステップS4のYESの直前までの期間に相当する(図19参照)。
【0071】
庫内温度が第1温度B(A−55℃)まで上昇すると(前述したステップS4のYES)、第3ステージから第4ステージに移行し、庫内温度が設定温度Aより45℃低い温度(A−45)℃以上まで上昇するまで、スチーム供給ユニット40が90秒間運転される。これにより、加熱室20内に所定量のスチームが投入される。第4ステージは、前述したステップS5に相当する(図19参照)。
【0072】
庫内温度がA−45℃まで上昇すると、スチーム供給ユニット40が停止され、第4ステージから第5ステージに移行して、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになる。第5ステージは、庫内温度が前述した第2温度C以上まで上昇するまで継続される。ここでは、第2温度Cは、設定温度Aより30℃低い温度(A−30℃)である。第5ステージは、前述したステップS5の直後からステップS6のYESの直前までの期間に相当する(図19参照)。
【0073】
庫内温度が第2温度C(A−30℃)まで上昇すると(前述したステップS6のYES)、第5ステージから第6ステージに移行し、庫内温度が設定温度Aより15℃低い温度(A−15℃)以上まで上昇するまで、スチーム供給ユニット40が最長で30秒間運転される。これにより、加熱室20内に所定量のスチームが投入される。第6ステージは、前述したステップS7に相当する(図19参照)。
【0074】
庫内温度がA−15℃まで上昇すると、スチーム供給ユニット40が停止され、第6ステージから第7ステージに移行して、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになる。第7ステージは、庫内温度が設定温度Aより1℃高い温度(A+1℃)以上まで上昇するまで最長で150秒間継続される。
詳しくは、第7ステージにおいて庫内温度が設定温度Aに到達すると(前述したステップS8でYES)、第7ステージを含む以降のステージでは、庫内温度を設定温度Aに維持するような処理(前述したステップS9)が行われるとともに、この処理とは別に、スチームを加熱室20内に投入する処理が行われる。加熱室20内に投入されたスチームが、過熱蒸気となって、加熱室20内の食品に対して、減塩等を伴う加熱をおこなう。
【0075】
具体的には、第7ステージにおいて庫内温度がA+1℃まで上昇すると、第7ステージから第8ステージに移行する。第8ステージでは、スチーム供給ユニット40が最短で40秒間運転され、加熱室20内に所定量のスチームが投入される。この間、前述したように、上ヒータ30および下ヒータ31の一方がOFFになっているので、庫内温度が低下する。
【0076】
そこで、加熱室20内に所定量のスチームが投入された後に、スチーム供給ユニット40が停止され、第8ステージから第9ステージに移行する。第9ステージでは、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになるので、庫内温度が上昇する。第9ステージは、庫内温度がA+1℃以上まで上昇するまで、最短で3秒間、最長で2分間継続される。
庫内温度がA+1℃まで上昇すると、第9ステージから第10ステージに移行する。第10ステージでは、たとえば、上ヒータ30および下ヒータ31の一方または両方がOFFされることで、庫内温度が下がる。第10ステージは、庫内温度が設定温度Aより1℃低い温度(A−1℃)を下回るまで、最短で35秒間、最長で180秒間継続され、その間、スチーム供給ユニット40は、最短で0秒間、最長で35秒間運転される。
【0077】
そして、予め設定された調理時間について、まだ残り時間がある場合、第9ステージおよび第10ステージが、第8ステージから第9ステージに移行したときから最長で35分間のリピート期間内、交互に繰り返される。
リピート期間経過後も調理時間に残りがある場合において、第10ステージで庫内温度がA−1℃を下回ると、第10ステージから第11ステージに移行する。第11ステージでは、スチーム供給ユニット40が停止される一方で、上ヒータ30および下ヒータ31の両方がONになっており、この状態が、庫内温度がA+1℃以上まで上昇するまで、最短で3秒間、最長で5分間継続される。
【0078】
庫内温度がA+1℃まで上昇すると、第11ステージから第12ステージに移行する。第12ステージでは、たとえば、上ヒータ30および下ヒータ31の一方または両方がOFFされることで、庫内温度が下げられる。第12ステージは、庫内温度がA−1℃を下回るまで、最短で25秒間、最長で180秒間継続され、その間、スチーム供給ユニット40は、最短で0秒間、最長で5秒間運転される。
【0079】
そして、第11ステージおよび第12ステージが、第10ステージから第11ステージに移行したときから運転終了までの間、交互に繰り返される。
以上の結果、第8ステージから第12ステージでは、庫内温度が、設定温度Aに対して±2℃の微小範囲内で変動するように維持されている。つまり、庫内温度が、設定温度Aに維持されている。
【0080】
なお、運転終了後(調理時間経過後)、ユーザが開閉扉21を開いて加熱室20内の食品を見て、食品の焼き加減が甘いと判断すると、食品の加熱調理を延長することができる。その場合、ユーザが、開閉扉21を閉じてキー入力部11(図1参照)を所定手順で操作して、加熱調理の延長を選択する。これに応じて、制御部70は、第11ステージおよび第12ステージの処理を、ユーザによって設定された延長時間(最長20分間)だけ繰り返して、食品を設定温度Aで再び加熱調理する。
【0081】
また、熱風調理中において、ユーザがキー入力部11を所定手順で操作することによって、蒸気調理に切り替えることができる。その場合、制御部70は、第4ステージから処理を開始する。なお、この場合、庫内温度が既に、各ステージにおける次のステージへの移行条件温度を上回っていれば、途中のステージの処理は省略される。
また、庫内温度が、設定温度Aより20℃高い値まで上昇すると、過熱防止のため、制御部70は、上ヒータ30および下ヒータ31を強制的にOFFにし、スチーム供給ユニット40を強制的に停止する。
【0082】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 加熱調理器
20 加熱室
29 ヒータ
32 コンベクションファン
40 スチーム供給ユニット
70 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理食品を収容するための加熱室と、
前記加熱室内を加熱するためのヒータと、
前記加熱室内にスチームを供給するためのスチーム供給ユニットとを備え、
前記ヒータによる前記加熱室内の加熱が開始されてから、前記加熱室内の温度が100℃以下の所定温度において、前記スチーム供給ユニットにより、前記加熱室内に所定量のスチームを供給するスチーム供給制御手段を含むことを特徴とする、加熱調理器。
【請求項2】
前記所定温度は、70℃を含むことを特徴とする、請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記スチーム供給制御手段は、前記加熱室内の温度が100℃を超えて所定の目標温度に到達するまでの間に、少なくとも1回は、前記スチーム供給ユニットにより、前記加熱室内にスチームを供給することを特徴とする、請求項1または2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱室内で空気を循環させるためのファンと、
前記スチーム供給ユニットがスチームを供給するのに連動させ、前記ファンを運転させる手段とを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項1】
被調理食品を収容するための加熱室と、
前記加熱室内を加熱するためのヒータと、
前記加熱室内にスチームを供給するためのスチーム供給ユニットとを備え、
前記ヒータによる前記加熱室内の加熱が開始されてから、前記加熱室内の温度が100℃以下の所定温度において、前記スチーム供給ユニットにより、前記加熱室内に所定量のスチームを供給するスチーム供給制御手段を含むことを特徴とする、加熱調理器。
【請求項2】
前記所定温度は、70℃を含むことを特徴とする、請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記スチーム供給制御手段は、前記加熱室内の温度が100℃を超えて所定の目標温度に到達するまでの間に、少なくとも1回は、前記スチーム供給ユニットにより、前記加熱室内にスチームを供給することを特徴とする、請求項1または2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱室内で空気を循環させるためのファンと、
前記スチーム供給ユニットがスチームを供給するのに連動させ、前記ファンを運転させる手段とを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の加熱調理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【公開番号】特開2012−82997(P2012−82997A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227840(P2010−227840)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
[ Back to top ]