説明

加熱調理装置

【課題】グリル庫内において高温で焼き付けられた油汚れを良好に洗浄することができる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】加熱手段Kを備えたグリル庫40が設けられた加熱調理装置において、加熱手段Kの加熱作動を制御する制御手段が設けられ、制御手段が、油脂に対してアルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮する常温より高い温度に洗浄対象面を加熱すべく加熱手段Kを加熱作動させるように構成され、加熱手段Kにて加熱された洗浄対象面に対してアルカリ系洗剤を噴出する洗剤噴出手段60と、洗浄対象面に対して洗浄水を噴出する洗浄水噴出手段70とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段を備えたグリル庫が設けられた加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガステーブルなどの加熱調理装置には、従来から魚等の調理対象物を加熱調理するグリルを備えたものが多く利用されている。
このようなグリルにおいては、例えば秋刀魚等の脂質の多い魚等を調理することにより、加熱された油滴がグリル庫内に飛散することがある。飛散した油滴のうち、グリル庫内に加熱手段として備える上面バーナや側面バーナに付着したものは、燃焼するために油汚れとして付着することは少ないが、グリル庫の両側面等バーナ以外の部分に付着したものは、高温の燃焼ガスによって焼き付けられる状態となるため、油汚れとして固着する(こびりつく)状態となることがある。
【0003】
このような油汚れを清掃するために、従来、グリル庫内の洗浄対象面に水蒸気を噴き付けて油汚れを膨潤させ、拭き取り清掃し易い状態とする水蒸気噴出手段を設けたコンロが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−302122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高温で焼き付けられた油汚れは、上記特許文献1に示されるような水蒸気の噴き付けのみでは膨潤しない場合があり、良好に清掃できない虞があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、グリル庫内において高温で焼き付けられた油汚れを良好に清掃することができる加熱調理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る加熱調理装置の第1特徴構成は、加熱手段を備えたグリル庫が設けられたものであって、前記加熱手段の加熱作動を制御する制御手段が設けられ、前記制御手段が油脂に対してアルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮する常温より高い温度に前記洗浄対象面を加熱すべく前記加熱手段を加熱作動させるように構成され、 前記加熱手段にて加熱された前記洗浄対象面に対して前記アルカリ系洗剤を噴出する洗剤噴出手段と、前記洗浄対象面に対して洗浄水を噴出する洗浄水噴出手段とが設けられている点にある。
【0008】
すなわち、加熱手段にて油脂に対してアルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮する常温より高い温度(例えば65℃以上)に加熱された洗浄対象面に対して、洗剤噴出手段がアルカリ系洗剤を噴出するものであるから、洗浄対象面に焼き付いた油汚れを溶解して落とし易くすることができる。また、そのように油汚れが溶解して落とし易くなった洗浄対象面に対して、洗浄水噴出手段が洗浄水を噴出するものであるから、溶解した油汚れを洗い流すことができる。
【0009】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、グリル庫内において高温で焼き付けられた油汚れを良好に清掃することが可能な加熱調理装置を提供できる。
【0010】
本発明に係る加熱調理装置の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記洗剤噴出手段及び前記洗浄水噴出手段の作動を制御可能に構成され、且つ、前記洗浄対象面を所定温度に維持すべく前記加熱手段を作動させる加熱処理と、前記洗剤噴出手段から前記洗浄対象面に向けて前記アルカリ系洗剤を噴出する洗剤噴出処理とを行い、所定時間経過後に、前記洗浄水噴出手段から前記洗浄対象面に向けて前記洗浄水を噴出する洗浄水噴出処理を行う庫内洗浄処理を実行自在に構成されている点にある。
【0011】
すなわち、制御手段が、洗浄対象面を所定温度に維持すべく前記加熱手段を作動させる加熱処理と、洗剤噴出手段から洗浄対象面に向けてアルカリ系洗剤を噴出する洗剤噴出処理とを行った後、所定時間の経過を待って洗浄水噴出手段から洗浄対象面に向けて洗浄水を噴出する洗浄水噴出処理を行うことになる。
したがって、洗浄対象面をアルカリ系洗剤がその能力を発揮可能な温度(例えば65℃以上)に維持した状態でアルカリ系洗剤を洗浄対象面に噴出し、所定時間(例えば10〜60秒の時間範囲、具体的には洗浄対象面の温度が65℃のとき60秒)の間その状態にて待機することとなって、洗浄対象面に固着した油汚れを適切に溶解し、落とし易くすることができる。
そして、そのように落とし易くなった油汚れに対して、洗浄水噴出手段からの洗浄水を噴出することになるから、溶解した油汚れを洗い流すことがより適切に行えるものとなる。
【0012】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、グリル庫内において高温で焼き付けられた油汚れをより良好に清掃することが可能な加熱調理装置を提供できる。
【0013】
本発明に係る加熱調理装置の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記庫内洗浄処理を2回以上の所定回数繰り返して実行するように構成されている
【0014】
すなわち、庫内洗浄処理を2回以上の所定回数繰り返して実行するものであるから、庫内洗浄処理を1回のみ行う場合に較べて、グリル庫内において焼き付けられた油汚れを的確に洗浄することができる。
【0015】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第2特徴構成による作用効果に加えて、グリル庫内において焼き付けられた油汚れを的確に洗浄することができる。
【0016】
本発明に係る加熱調理装置の第4特徴構成は、上記第2又は第3特徴構成のいずれかに加えて、前記洗浄対象面の裏面側に、前記加熱手段によって与えられた熱を蓄熱し、前記加熱手段の停止後に前記洗浄対象面を加温する蓄熱手段が設けられている点にある。
【0017】
すなわち、洗浄対象面の裏面側に設けられた蓄熱手段に加熱手段によって与えられた熱が蓄熱され、加熱手段の停止後に蓄熱手段によって洗浄対象面を加温するものであるから、洗剤噴出処理の実行時には加熱手段を作動させないことになり、噴出された洗剤の洗浄能力を適正に発揮することができるものとなる。
説明を加えると、例えば、洗剤噴出処理の実行時に加熱手段として燃焼バーナを燃焼させた場合、燃焼ガスの流動によって洗浄対象面に均一に洗剤を噴出できない虞があり、しかも、燃焼バーナの燃焼ガスは高温であるため、噴出された洗剤が燃焼ガスと接触すると蒸発したり高熱によって変質又は分解したりして、正常な洗浄能力を発揮できない虞がある。
【0018】
これに対して、第4特徴構成によれば、加熱手段の停止後に、蓄熱手段が加熱手段によって与えられた熱によって洗浄対象面を加温するものとなるから、洗剤噴出処理の実行時には加熱手段を作動させることなく洗浄対象面をアルカリ系洗剤がその能力を発揮可能な温度に維持することが可能となり、噴出された洗剤の洗浄能力を適正に発揮することができる。
【0019】
要するに、本発明の第4特徴構成によれば、上記第2又は第3特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、噴出された洗剤の洗浄能力を適正に発揮することが可能となる。
【0020】
本発明に係る加熱調理装置の第5特徴構成は、上記第2〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記グリル庫の後端部に、燃焼排ガス等の排気をグリル庫外に排出する排気口が設けられ、前記グリル庫の後端壁に、開状態と閉状態とに切換え自在で且つ開状態において前記排気口を閉塞し閉状態において前記排気口を開放する後端開閉蓋が設けられ、前記後端開閉蓋の背面側に、前記後端開閉蓋の開状態において前記グリル庫内に臨む状態となる前記洗剤噴出手段としての洗剤噴出ノズルが設けられ、前記洗剤噴出ノズルが、洗剤の噴出方向を変更自在に構成され、
前記制御手段が、前記洗剤噴出処理の実行時において、前記後端開閉蓋を開状態に切換え、且つ、前記洗浄対象面に洗剤を均一に噴出すべく前記洗剤の噴出方向を変更させる状態で前記洗剤噴出ノズルから洗剤を噴出させるように構成されている点にある。
【0021】
すなわち、洗剤噴出処理の実行時においては、後端開閉蓋を開状態に切換えることによって排気口が閉塞されるとともに洗剤噴出ノズルがグリル庫内に臨む状態となり、洗剤の噴出方向を変更させる状態で洗剤噴出ノズルから洗剤を噴出することになるので、噴出されるアルカリ系洗剤が排気口からグリル庫外に排出されないようにしつつ、洗浄対象面に洗剤を均一に噴出することができるものとなり、洗浄対象面を隈なく均一に洗浄することができるものとなる。
【0022】
要するに、本発明の第5特徴構成によれば、上記第2〜第4特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、洗浄対象面を隈なく均一に洗浄することができる。
【0023】
本発明に係る加熱調理装置の第6特徴構成は、上記第5特徴構成に加えて、前記後端開閉蓋の背面側に、前記後端開閉蓋の開状態において前記グリル庫内に臨む状態となる前記洗浄水噴出手段としての洗浄水噴出ノズルが設けられ、前記洗浄水噴出ノズルが、洗浄水の噴出方向を変更自在に構成され、
前記制御手段が、前記洗浄水噴出処理の実行時において、前記後端開閉蓋を開状態に切換え、且つ、前記洗浄対象面に洗浄水を均一に噴出すべく前記洗浄水の噴出方向を変更させる状態で前記洗浄水噴出ノズルから洗浄水を噴出させるように構成されている点にある。
【0024】
すなわち、洗浄水噴出処理の実行時においては、後端開閉蓋を開状態に切換えることによって排気口が閉塞されるとともに洗浄水噴出ノズルがグリル庫内に臨む状態となり、洗浄水の噴出方向を変更させる状態で洗浄水噴出ノズルから洗浄水を噴出することになるので、噴出される洗浄水剤が排気口からグリル庫外に排出されないようにしつつ、洗浄対象面に洗浄水を均一に噴出することができるものとなり、洗浄対象面を隈なく均一に洗浄することができるものとなる。
【0025】
要するに、本発明の第6特徴構成によれば、上記第5特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、洗浄対象面を隈なく均一に洗浄することができる。
【0026】
本発明に係る加熱調理装置の第7特徴構成は、上記第6特徴構成に加えて、前記前記洗剤噴出手段と前記洗浄水噴出手段とが同一の噴出ノズルにて共用されている点にある。
【0027】
すなわち、洗剤噴出手段と洗浄水噴出手段とが同一の噴出ノズルにて共用されるものであるから、洗剤噴出手段と洗浄水噴出手段とを個別に設ける場合に較べて、部品点数を削減することができて、コストの低減が可能となる。
【0028】
要するに、本発明の第7特徴構成によれば、上記第6特徴構成による作用効果に加えて、部品点数を削減することができて、コストの低減が可能な加熱調理装置を提供できる。
【0029】
本発明に係る加熱調理装置の第8特徴構成は、上記第2〜第7特徴構成のいずれかに加えて、前記洗剤噴出処理の実行後に前記洗浄水噴出処理を実行するまでの所定時間が、10〜60秒の時間範囲に設定されている点にある。
【0030】
すなわち、洗剤噴出処理において洗浄対象面に噴出されたアルカリ系洗剤が、洗浄対象面に焼き付いた油汚れに対して洗浄作用を発揮するに十分な所定時間として10〜60秒の時間範囲(具体的には洗浄対象面の温度が65℃のとき60秒)を経過した後に洗浄水噴出処理を実行することになるので、グリル庫内において焼き付けられた油汚れをより適正に洗浄することが可能となる。
【0031】
要するに、本発明の第8特徴構成によれば、上記第2〜第7特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、グリル庫内において焼き付けられた油汚れをより適正に洗浄することができる。
【0032】
本発明に係る加熱調理装置の第9特徴構成は、上記第1〜第8特徴構成のいずれかに加えて、前記加熱手段が、前記グリル庫内の左右の両側壁面に設けられた凹部に引退して配設されて調理対象物の下面側を加熱する側面バーナを備えて構成され、前記左右の両側壁面の凹部を覆う閉状態と前記左右の両側壁面の凹部の上端部から前記グリル庫内方に向けて起立する開状態とに切換え自在な側壁開閉蓋が設けられ、
前記制御手段が、前記加熱処理の実行時には前記側面バーナからの燃焼排ガスを前記グリル庫内に流動させるべく前記側壁開閉蓋を開状態とし、且つ、前記洗剤噴出処理及び前記洗浄水噴出処理の実行時には前記側壁開閉蓋を閉状態とするように構成されている点にある。
【0033】
すなわち、側面バーナがグリル庫内の左右の両側壁面に設けられた凹部に引退して配設され、加熱処理の実行時には側壁開閉蓋を開状態として側面バーナからの燃焼排ガスをグリル庫内に流動させるものであるから、洗浄対象面を適切に加熱することができるものとなる。また、加熱調理時には、この側壁開閉蓋によって燃焼ガスがグリル庫内中央側に流動されるものとなって、加熱対象物を適切に加熱することができる。
さらに、洗剤噴出処理及び洗浄水噴出処理の実行時には、側壁開閉蓋を閉状態とすることによって、両側壁面及び側壁開閉蓋が凹凸のない平面状となり、アルカリ系洗剤及び洗浄水を均一に噴出することが適切に行えるものとなる。
したがって、洗浄対象面の加熱及び洗浄対象面へのアルカリ系洗剤及び洗浄水の噴出が適切に行えるものとなり、グリル庫内において焼き付けられた油汚れをより適正に洗浄することが可能となる。
【0034】
要するに、本発明の第9特徴構成によれば、上記第1〜第8特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、グリル庫内において焼き付けられた油汚れをより適正に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ガステーブルの全体斜視図
【図2】グリル本体を離脱させた状態におけるガステーブルの正面図
【図3】グリル庫の構成を説明する正面断面図
【図4】加熱処理を示す図
【図5】洗剤噴出処理又は洗浄水噴出処理を示す図
【図6】洗剤噴出処理を示すグリル庫斜視図
【図7】洗浄水噴出処理を示すグリル庫斜視図
【図8】(a)ノズルホルダの左右動を実現する機構を説明する図、(b)ノズルホルダの上下動を実現する機構を説明する図
【図9】制御手段の構成を表すブロック図
【図10】制御手段による庫内洗浄処理を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る加熱調理装置について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る加熱調理装置の一例としてのガステーブルAの斜視図である。ガステーブルAの天板10には、大火力バーナを備えたコンロ11、標準火力バーナを備えたコンロ12、及び小火力バーナを備えたコンロ13が設けられている。また、図2等に示すように、ガステーブルAの本体内部には、加熱手段Kとして上面バーナB1と側面バーナB2とを備えた両面加熱式のグリルGが設けられている。天板10における前面板30に対向する側部(背面側の端部)には、グリルGのグリル庫40にて発生する燃焼ガスをガステーブルA外部に排出する排気口14が設けられている。
【0037】
以降、このガステーブルAにおいては、図1に示すように、前面板30と平行な方向であるガステーブルAの横幅方向をX方向、平面視において前面板30と直交する方向であるガステーブルAの前後方向をY方向、そして、X方向及びY方向に直交するガステーブルAの高さ方向をZ方向と称する。Z方向は単に高さ方向と称することもある。また、特にY方向においては、前面板30側を前面側、前面板30に対向する側を背面側と称し、X方向においては、中央に向かう方向を中央側、両側部に向かう方向を外方側と称することとする。
【0038】
図1及び図2に示すように、前面板30には、コンロ11、12、13、及びグリルGの夫々に対応して、それらにおける加熱手段Kの点火及び消火や火力調節を指令する加熱状態調節スイッチ100a、100b、100c、及び100dが設けられている。そして、マイクロコンピュータを備えて各種の制御を実行するように構成された制御装置H(制御手段の一例)が、上記加熱状態調節スイッチ100a、100b、100c、及び100dにて指令された指令状態に基づいて、上記夫々の加熱手段Kの加熱状態を制御するように構成されている。
また、前面板30には、後述する洗浄処理を指令する洗浄スイッチ101が設けられている。
【0039】
前面板30におけるX方向中央寄りに位置して、グリル庫40に連通する開口部45が設けられている。グリル本体Mが、この開口部45を介してグリル庫40からの引出し又は挿入操作が自在に構成されている。
グリル本体Mは、開口部45を閉塞する蓋部20とその蓋部20の前面側に取付けられる取手部21を備えて、取手部21を把持してグリル庫40に出し入れすることができるようになっている。また、蓋部20の裏面側(Y方向背面側)には、グリル皿24を載置する載置支持部26が固定状態で取付けられている。そして、グリル皿24が取り外し自在に載置支持部26に載置支持されるように構成されている。さらに、グリル皿24には、焼網23が取り外し自在に載置支持されるように構成されている。
【0040】
また、このガステーブルA本体における開口部45のX方向両側部の下方には、図2に示すように、摺動手段格納室50に連通する開口部55が設けられている。摺動手段格納室50は、ガステーブルA本体と一体に取付けられるガステーブル側摺動レール51と、グリル本体Mの蓋部20に固着されるグリル本体側摺動レール52とを内部に収納するように構成されている。そして、ガステーブル側摺動レール51とグリル本体側摺動レール52とは、先端にベアリングボール54を外方側から支持する膨出部を備えるコ字状に形成され、且つ、その開口部が互いに対向する状態で設けられている。そして、ガステーブル側摺動レール51とグリル本体側摺動レール52とは、ベアリングボール54を内方側から支持する内方支持部材53との間にベアリングボール54を介在させる状態で、長手方向(Y方向)に相対移動可能に構成されている。つまり、ガステーブルA本体と一体に取付けられるガステーブル側摺動レール51に沿って、グリル本体MがガステーブルAに対して出し入れ自在に構成されている。
【0041】
前面板30の左端側の一部には、洗剤タンク61が、その前面板30から分離可能となる状態で装着されている。この洗剤タンク61は、アルカリ系洗剤の原液又はそのアルカリ系洗剤の所定の濃度を有する希釈液を貯留するように構成されている。
【0042】
図2及び図3に示すように、グリル庫40は、正面視においてX方向左右両側に備えられる側壁面41、下面に備えられる底板42、及び上面側に備えられる上面板43によって囲まれて形成されている。また、図4及び図5に示すように、Y方向背面側は後端壁44にて閉塞され、且つ、その後端壁44の一部には、グリル庫40の後端部に設けられて燃焼排ガス等の排気をグリル庫40外に排出する排気口14に連通する排気口連通部40hが設けられている。
【0043】
図2乃至図7に示すように、グリル庫40における底板42は、グリル庫40内において、凹凸のない平板状の部材として構成されている。また、底板42のY方向前方側には排水管42Dが設けられている。
上面板43は、正面視においてZ方向上方に突出する台形状に形成され、最上面部分に燃焼バーナとしての上面バーナB1が設けられている。この上面バーナB1は、下方に向けて、すなわちグリル庫40内方に向けて燃焼ガスを噴出するように構成されている。
【0044】
グリル庫40のX方向左右に設けられる両側壁面41は、鉛直方向に立設される平板状の部材にて構成され、その側壁面41の高さ方向(Z方向)における中央よりも下方に、Y方向に沿って凹部41pが設けられている。左右の両側壁面41において、凹部41pには、燃焼バーナとしての側面バーナB2が側壁面41よりもグリル庫40の外方側に向かって引退する状態で設けられている。
【0045】
また、左右の両側壁面の凹部41pの上端部分には、左右夫々の凹部41pを覆う閉状態と、左右の両側壁面の凹部41pの上端部からグリル庫内方に向けて起立する開状態とに切換え自在な側壁開閉蓋41Fが設けられている。そして、左右夫々の側面バーナB2は、側壁開閉蓋41Fが開状態であるときに、左右夫々の側壁面41における凹部41pから、グリル庫40の内方側に向けて燃焼ガスを噴出するように構成されている。側面バーナB2から噴出された燃焼ガスは、側壁開閉蓋41Fに案内されてグリル庫40のX方向中央側に流動され、グリル本体の焼網に載置された調理対象物を下面側から加熱調理するようになっている。
尚、図示しないが、側壁開閉蓋41Fは側壁開閉蓋駆動機構Q1によって開閉されるように構成される。
【0046】
図4に示すように、上記上面バーナB1及び左右の両側面バーナB2からグリル庫40内に噴出された燃焼ガスは、排気口連通部40hから排気口14に排出されるように構成されている。
【0047】
また、図4及び図5に示すように、グリル庫40のY方向背面側である後端壁44には、上端に左右方向(X方向)を揺動支点とするヒンジを備え、開状態と閉状態とに切換え自在で且つ開状態において排気口14を閉塞し閉状態において排気口14を開放する後端開閉蓋44Fが設けられている。
【0048】
後端開閉蓋44Fの背面側には、その後端開閉蓋44Fの開状態においてグリル庫40内に臨む状態となる洗剤噴出手段としての洗剤噴出ノズル60と、同様に後端開閉蓋40Fの開状態においてグリル庫40内に臨む状態となる洗浄水噴出手段としての洗浄水噴出ノズル70とが取付けられたノズルホルダNが設けられている。
【0049】
図6及び図7に示すように、給水路71が、一端側を上水道等の給水源に接続される状態で設けられ、その給水路71には、給水の水流によるエゼクタ効果によって洗剤供給路62を介して洗剤タンク61から供給されるアルカリ系洗剤を吸引し、混合・希釈する混合部67が設けられている。洗剤供給路62には洗剤供給弁63が設けられて、洗剤を供給する供給状態と供給しない供給停止状態とに切換え可能となっている。また、給水路71における混合部67よりも上流側には給水供給弁72が設けられて、給水を供給する供給状態と供給しない供給停止状態とに切換え可能となっている。給水路71における混合部67の下流側には、流路を洗剤噴出ノズル60に接続される管路65側に切換える洗剤噴出状態と、流路を洗浄水噴出ノズル70に接続される管路75側に切換える洗浄水噴出状態とに切換え自在な切換弁80が設けられている。
つまり、給水供給弁72及び洗剤供給弁63を供給状態とし、切換弁80を管路65側に切換えることによって、洗剤噴出ノズル60から上水によって希釈された洗剤が噴霧状態で噴出されることとなる(図6において各弁の開状態を白抜きで、閉状態を黒塗りで示す)。また、給水供給弁72を供給状態とし、洗剤供給弁63を供給停止状態とし、切換弁80を管路65側に切換えることによって、洗浄水噴出ノズル70から洗浄水としての上水が噴霧状態で噴出されることとなる(図7において各弁の開状態を白抜きで、閉状態を黒塗りで示す)。尚、以降洗剤噴出ノズル60と洗浄水噴出ノズル70とをまとめて噴出ノズルと称することがある。
【0050】
図8に示すように、ノズルホルダNは、ノズルホルダ支持体N1の上端に取付けられ、ノズルホルダ支持体N1の下端側には、ガステーブルAの前後方向(Y方向)に沿って2本の摺動レールN2が備えられている。そして、ノズルホルダ支持体N1は、下端で摺動レールN2と係合して前後方向に摺動移動可能に構成されている。
図6及び図7に示すように、ノズルホルダ支持体N1の上端部で且つノズルホルダNよりも上方には、片持ち状に前方に突出する当接部材N10が設けられている。そして、この当接部材N10の先端部が、後端開閉蓋44Fに背面側から当接し、ノズルホルダ支持体N1が摺動レールN2に沿って後方に移動しているときには後端開閉蓋44Fが閉状態となり、ノズルホルダ支持体N1が摺動レールN2に沿って前方に移動しているときには後端開閉蓋44Fが当接部材N10にて押し上げられて開状態となるように構成されている。
尚、図示しないが、ノズルホルダ支持体N1は後端開閉蓋駆動機構Q2によって摺動レールN2に沿って前後に摺動移動されるように駆動される。
【0051】
ノズルホルダNは、上下動用モータM1と左右動用モータM2とによって、上下及び左右に揺動可能に構成されている。
詳しくは、図8(a)に示すように、回転軸が上下方向(Z方向)に沿う左右動用モータM2の回転軸から径方向に離間する位置にクランクピンが設けられた円板が取付けられ、そのクランクピンと後端にて係合する揺動部材N3によって、左右動用モータM2の回転運動が左右の往復運動に変換されるようになっている。そして、ノズルホルダNの下端の台座部N8には揺動支点となる上下軸ヒンジが設けられ、且つ、その上下軸ヒンジよりも上記左右動用モータM2寄りに設けられる係合部に揺動部材N3の前端部が係合されて、ノズルホルダNが左右に揺動(首振り運動)され、噴出ノズルによる洗剤又は洗浄水の噴出方向を左右に変更自在に構成されている。
【0052】
また、図8(b)に示すように、回転軸が左右方向(X方向)に沿う上下動用モータM1の回転軸にクランクピンが設けられた円板が取付けられ、そのクランクピンと下端側で係合する揺動部材N4によって、上下動用モータM1の回転運動を前後方向(Y方向)の往復運動に変換するようになっている。揺動部材N4の上端側は、前後往復部材N5に係合され、上下動用モータM1の回転運動が前後の往復運動に変換されるようになっている。ノズルホルダNの下端と台座部N8の間には、その前端部分で水平方向を揺動軸とする蝶番N7が設けられ、且つ、バネによってノズルホルダNがY方向後端側(すなわち、噴出ノズルが上方を向く状態)に付勢されている。そして、前後往復部材N5が前面側に移動して、前後往復部材N5前端がノズルホルダNをY方向の前面側に押し込んだときに、ノズルホルダNが下方を向き、前後往復部材N5が背面側に移動すると、ノズルホルダNはバネの付勢力によって上方を向くように構成されている。つまり、噴出ノズルによる洗剤又は洗浄水の噴出方向を上下に変更自在に構成されている。
【0053】
このようにして、ノズルホルダNは上下及び左右の首振り運動を行うことになり、ノズルホルダNに保持されている洗剤噴出ノズル60と洗浄水噴出ノズル70とが、洗浄対象面に対して洗剤又は洗浄水を均一に噴出すべくその噴出方向を上下及び左右に変更することになる。
【0054】
また、洗浄対象面である左右の両側壁面41及び上面板43における上面バーナB1の設置箇所以外の部分の裏面側には、加熱手段Kとしての上面バーナB1及び側面バーナB2によって与えられた熱を蓄熱し、前記加熱手段Kの停止後に前記洗浄対象面を加温する蓄熱手段としての蓄熱材Cが設けられている。この蓄熱材Cは、顕熱蓄熱材としての厚手の鋼板(SUS304)にて構成されている。
【0055】
制御装置Hは、図9に示すように、加熱状態調節スイッチ100a、100b、100c、及び100dによる指令、及び、各コンロの温度を検出するサーミスタSからの情報に基づき、元ガス開閉弁V0の開閉、並びに、上面バーナ用ガス流量制御弁V1及び側面バーナ用ガス流量制御弁V2の開度を制御して、上面バーナB1及び側面バーナB2の燃焼を制御する。なお、本実施形態のガステーブルAには、加熱状態調節スイッチ100a、100b、100c、及び100dの他に、揚物や煮物等の自動調理メニューを設定する自動調理メニュー選択スイッチも備えられているが、ここでは説明を省略する。
【0056】
また、制御装置Hは、側壁開閉蓋駆動機構Q1、後端開閉蓋駆動機構Q2、洗剤供給弁63、給水供給弁72、切換弁80、並びに、上下動用モータM1及び左右動用モータM2を制御することによって、洗剤噴出手段及び洗浄水噴出手段の作動を制御可能に構成されている。
【0057】
具体的には、制御装置Hは、側壁開閉蓋駆動機構Q1に指令して、側面バーナB2からの燃焼排ガスをグリル庫40内に流動させるべく側壁開閉蓋41Fを開状態に切換え、後端開閉蓋駆動機構Q2に指令して後端開閉蓋44Fを閉状態に切換え、元ガス開閉弁V0を開操作し、並びに、上面バーナ用ガス流量制御弁V1及び側面バーナ用ガス流量制御弁V2の開度を制御し、油脂(油汚れ)に対してアルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮する常温より高い温度に洗浄対象面を加熱すべく、所定時間(例えば1分間)上面バーナB1及び側面バーナB2を加熱作動させてグリル庫40内を加熱する加熱処理を実行する。
【0058】
また、制御装置Hは、側壁開閉蓋駆動機構Q1に指令して側壁開閉蓋41Fを閉状態に切換え、後端開閉蓋駆動機構Q2に指令して後端開閉蓋44Fを開状態に切換え、給水供給弁72、洗剤供給弁63を供給状態に切換え、切換弁80を管路65側に切換え、さらに上下動用モータM1、左右動用モータM2を駆動してノズルホルダの向きを上下及び左右に変更させる状態で、加熱手段Kにて加熱された洗浄対象面に対して、洗剤噴出ノズル60から一定時間(例えば5秒間)洗剤を噴霧状態で噴出する洗剤噴出処理を実行する。
【0059】
さらに、制御装置Hは、側壁開閉蓋駆動機構Q1に指令して側壁開閉蓋41Fを閉状態に切換え、後端開閉蓋駆動機構Q2に指令して後端開閉蓋44Fを開状態に切換えた状態で、給水供給弁72を供給状態に切換え、洗剤供給弁63を供給停止状態に切換え、切換弁80を管路65側に切換え、さらに上下動用モータM1、左右動用モータM2を駆動してノズルホルダの向きを上下及び左右に変更させる状態で、アルカリ系洗剤が噴霧された洗浄対象面に対して、洗浄水噴出ノズル70から一定時間(例えば10秒間)洗浄水を噴霧状態で噴出する洗浄水噴出処理を実行する。
【0060】
次に、制御手段としての制御装置Hが実行する制御について、図10のフローチャートに基づいて説明する。
制御装置Hは、洗浄スイッチ101が押下されたと判別すると(#1)、回数フラグJを0に初期化する初期化処理を実行する(#2)。
そして、引き続き、グリル庫40内を加熱する加熱処理を実行する(#3)。この加熱処理によって、洗浄対象面の裏面側に備えられる蓄熱手段に熱が蓄えられる。
【0061】
加熱処理開が終了すると、制御装置Hは、側壁開閉蓋駆動機構Q1に指令して側壁開閉蓋41Fを閉操作し、さらに、後端開閉蓋駆動機構Q2に指令して後端開閉蓋44Fを開操作する(#4)。
【0062】
続いて、制御装置Hは、洗剤噴出処理を実行し(#5)、洗剤噴出処理の実行後、所定時間として30秒が経過したと判別すると、洗浄水噴出処理を実行する(#6、#7)。
【0063】
洗浄水噴出処理の実行が終了すると、制御装置Hは、回数フラグJに1を加算(インクリメント)し(#8)、続いてI=3になったか否かを判別する(#9)。Iが3未満であると判別されるとステップ#3に戻るように制御され、Iが3になったと判別されると、続いて、側壁開閉蓋駆動機構Q1に指令して側壁開閉蓋41Fを開操作し、さらに、後端開閉蓋駆動機構Q2に指令して後端開閉蓋44Fを閉操作する終了処理を実行する(#10)。
つまり、制御装置Hは、洗浄対象面を所定温度に維持すべく加熱手段Kを作動させる加熱処理と、洗剤噴出ノズル60から浄対象面に向けアルカリ系洗剤を噴出する洗剤噴出処理とを行い、所定時間(10〜60秒の時間範囲(具体的には洗浄対象面の温度が65℃のとき60秒))経過後に、洗浄水噴出ノズル70から洗浄対象面に向けて洗浄水を噴出する洗浄水噴出処理を行う庫内洗浄処理を、所定回数として3回繰り返して実行するように構成されている。
【0064】
これまで説明してきたガステーブルAの使用に際しては、洗浄対象面温度が100℃に近い場合には洗浄水が蒸発してしまうため、加熱温度は極力低い温度とすることが望ましく、また、コストを低減するために、洗剤濃度は希薄にすることが望ましい。したがって、洗剤濃度が5%となるように希釈し、油脂(油汚れ)に対してアルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮する温度として、グリル庫40内の洗浄対象面の温度を65℃以上90℃以下の温度範囲(好ましくは65℃程度)に加熱する。その状態において、アルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮できる時間として60秒を経過した後に洗浄水噴出処理を実行する。このようにして、本発明の目的である油汚れの洗浄が良好に実行できる。
【0065】
〔アルカリ系洗剤について〕
上記実施形態におけるアルカリ系洗剤としては、アルカリ剤として水酸化カリウムと 水酸化ナトリウムを含み、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩とポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含み、その他溶剤、安定化剤、金属イオン封鎖剤、及び水を含むもの(例えば、株式会社ニイタカ製「ニューケミクール」(登録商標))を用いたが、同様の効力を発揮しうるアルカリ系洗剤であれば、上記の洗剤に限定されるものではない。
【0066】
〔試験について〕
続いて、本発明の根拠として、洗浄対象面の加熱温度とアルカリ系洗剤の洗剤濃度との関係の傾向を確認するために行った試験について説明する。
試験は、以下の手順で行った。
(1)試料片の作成
平板状のステンレス(SUS304)片(8cm×6cm、厚さ1mm)を、表面温度を室温から350℃の範囲で制御可能な汎用の電気ヒータの表面にアルミテープで貼り付け、そのステンレス片の面部に植物性油脂(キャノーラ油)を塗布して電気ヒータにより250℃加熱で約30分間加熱する。これにより、グリル庫40内に焼き付いた油汚れと同様の状態を再現する。
(2)試料片の加熱
上記試料片を上記電気ヒータにて加熱する。このときの加熱温度は、後述する6つの試験加熱温度のパターンに従う。
(3)洗剤の噴き付け
加熱した試料片の面部に、水で希釈したアルカリ系洗剤(ニューケミクール(登録商標))約1.3mlをスプレーにて吹き付け、その状態で30秒放置する。尚、吹き付ける水及びアルカリ系洗剤は常温(供給される水及び洗剤を加熱しないもの)とする。
(4)洗浄水の噴き付け
上記(3)にて30秒放置後、試料片の面部に約1.3mlの水を3回に分けてスプレーにて吹き付ける。尚、吹き付ける水は常温(供給される水を加熱しないもの)とする。
【0067】
上記手順(1)〜(4)に示す試験を、アルカリ系洗剤の希釈濃度として体積%で100%、50%、25%、10%、5%の5つの場合、且つ、試料片の加熱温度として120℃、100℃、80℃、60℃、40℃、25℃の6つの場合の計30パターンについて行った。
【0068】
この試験によって得た結果をまとめた表が下記に示す表1である。表中において、「加熱温度」は試料片の加熱温度を表し、洗剤濃度は、洗剤の希釈濃度を示すものであって水にて希釈する場合の体積%を表す。また、表中の「○」は油汚れが良好に洗浄できたこと(目視にて汚れが落ちたことを確認できたこと)を、表中の「×」は油汚れが良好に洗浄できなかったこと(目視にて汚れが落ちたことを確認できなかったこと)を表す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1に示す試験結果より、洗浄対象面を加熱することによって、アルカリ系洗剤の洗剤濃度を希薄にしても油汚れが良好に洗浄できるという傾向が判明した。
尚、上記試験は、本発明の根拠として、洗浄対象面を加熱して希釈したアルカリ系洗剤を噴出することで、洗浄対象面に焼き付いた油汚れが良好に洗浄できることを確認するために行ったものであり、本発明のパラメータを限定するものではない。
また、上記実施形態にて説明した洗浄対象面の温度、洗剤濃度、及び、洗浄対象面に焼き付いた油汚れに対して洗浄作用を発揮するに十分な所定時間は、夫々上記した数値に限定されるものではなく、洗浄対象面を良好に洗浄することが可能な範囲内において調整が可能である。
【0071】
〔別実施形態〕
次に、本発明の別実施形態について説明する。
(イ)上記実施形態では、加熱手段として燃焼バーナ(上面バーナB1及び側面バーナB2)を用いる構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、グリル庫40内の洗浄対象面を加熱する電気ヒータを、洗浄対象面の裏面側に備える構成としてもよい。
【0072】
(ロ)上記実施形態では、洗剤噴出手段としての洗剤噴出ノズル60と洗浄水噴出手段としての洗浄水噴出ノズル70との夫々をノズルホルダNに保持させるようにして設ける構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、洗剤噴出手段と洗浄水噴出手段とが同一の噴出ノズルにて共用されるように構成してもよい。このように構成すれば、ノズルを複数備える必要がないため、製造コストの低減、及び、設置スペースの削減が実現できる。
尚、このように構成する場合、管路65側と管路75側とを切換える切換弁80を設ける必要がなくなる。つまり、洗剤を噴出する場合には給水供給弁72及び洗剤供給弁63を供給状態とし、洗浄水を噴出する場合には、洗剤供給弁63を供給停止状態として給水供給弁72を供給状態とすればよい。
【0073】
(ハ)上記実施形態では、ノズルホルダNが上下及び左右の首振り運動を行うことによって、洗剤噴出ノズル60又は洗浄水噴出ノズル70が、洗剤又は洗浄水の噴出方向を上下及び左右に変更自在に構成されるものとしたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、洗剤噴出ノズル又は洗浄水噴出ノズルとして、洗浄対象面に均一に洗剤又は洗浄水を噴出すべく複数の方向に向けた複数のノズルを備え、それらから洗剤または洗浄水を噴出する構成としてもよい。尚、この場合においても、それら複数のノズルにおいて洗剤噴出ノズルと洗浄水噴出ノズルとを夫々別のノズルとして構成してもよいし、洗剤噴出ノズルと洗浄水噴出ノズルとを共用させる構成としてもよい。
【0074】
(ニ)上記実施形態では、制御手段が庫内洗浄処理を3回繰り返し実行する構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば1回又は2回、或いは4回以上の任意の回数とすることも可能である。また、汚れの具合に応じて、ガステーブルの利用者が任意にその回数を設定できる回数設定手段を設けて、庫内洗浄処理を設定された回数繰り返して実行するように構成してもよい。
【0075】
(ホ)上記実施形態においては、洗剤噴出処理の実行後に洗浄水噴出処理を実行するまでの時間を10〜60秒の時間範囲としたが、このような構成に限定されるものではなく、10秒未満の任意の時間、或いは60秒を超える任意の時間に設定することも可能である。また、例えば、洗浄対象面の油汚れの度合いにより自動又は手動で設定するように構成してもよい。
【0076】
(へ)上記実施形態においては、グリル庫40内の左右の両側壁面41に設けられた凹部41pに引退して配設されて調理対象物の下面側を加熱する側面バーナB2を備えるように構成したが、側面バーナB2が左右の両側壁面41から突出して設けられるように構成してもよい。また、側面バーナB2を備えないグリルGに適用することも可能である。尚、これらの場合、側壁開閉蓋41Fを設けない構成とすることとなる。
【0077】
(ト)上記実施形態では、グリル庫40内を加熱する加熱処理を実行する時間を1分間とするようにしたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば1分未満又は1分を超える任意の時間に設定することも可能である。また、グリル庫40内の洗浄対象面の温度を検出するサーミスタや熱電対等の温度検出手段を設け、この温度検出手段での検出温度が所定の温度(例えば70℃等)になるまで加熱手段Kによる加熱を継続するように構成してもよい。
【0078】
(チ)上記実施形態では、給水路71を、一端側を上水道等の給水源に接続される状態で設け、洗剤タンク61から供給されるアルカリ系洗剤を混合部67にて給水の水流によるエゼクタ効果によって吸引するように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、洗剤タンク61から給水路71に向けてアルカリ系洗剤を供給する洗剤ポンプを設けてもよい。このように構成すれば、給水路71を介して供給される給水の流速に影響されること無く、アルカリ系洗剤を任意の濃度に希釈することができるものとなる。
【0079】
(リ)上記実施形態では、蓄熱材Cを顕熱蓄熱材としての厚手の鋼板(SUS304)にて構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、厚手のセラミックス板等を用いてもよい。また、キシリトール等の潜熱蓄熱材を厚手の板状に形成したものを蓄熱材Cとして使用することもできる。その他、加熱手段Kの停止後に洗浄対象面を加温することが可能なものであれば、各種の材質が利用可能である。
【0080】
(ヌ)上記実施形態では、洗剤噴出ノズル60又は洗浄水噴出ノズル70から、洗剤又は洗浄水を噴霧状態で噴出するように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、直射状または一定範囲に拡散する状態に噴出するように構成してもよい。このような場合であっても、洗剤噴出ノズル60又は洗浄水噴出ノズル70は洗剤又は洗浄水の噴出方向を変更可能であるから、洗浄対象面に対して洗剤又は洗浄水を均一に噴出することができるものとなる。
【0081】
(ル)上記実施形態では、本発明をガステーブルAに適用した場合を説明したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば電気加熱式の加熱調理装置に適用することも可能である。この場合、別実施形態(イ)における電気ヒータは、調理対象物加熱用の電気ヒータと共用することができる。
【0082】
(ヲ)上記実施形態では、油脂(油汚れ)に対してアルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮する温度として、グリル庫40内の洗浄対象面の温度を65℃以上90℃以下の温度範囲(好ましくは65℃程度)に加熱することとしたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、グリル庫40内の洗浄対象面の温度を65℃未満としたり、90℃超の温度としてもよい。この場合は、アルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮するように、その希釈濃度を調整することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、グリル庫内において高温で焼き付けられた油汚れを良好に洗浄することができる加熱調理装置を提供することに好適に利用できるものである。
【符号の説明】
【0084】
14 排気口
40 グリル庫
40F 後端開閉蓋
41 側壁面
41F 側壁開閉蓋
41p 凹部
44 後端壁
44F 後端開閉蓋
60 洗剤噴出手段
70 洗浄水噴出手段
H 制御手段
K 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を備えたグリル庫が設けられた加熱調理装置であって、
前記加熱手段の加熱作動を制御する制御手段が設けられ、
前記制御手段が、油脂に対してアルカリ系洗剤が洗浄作用を発揮する常温より高い温度に前記洗浄対象面を加熱すべく前記加熱手段を加熱作動させるように構成され、
前記加熱手段にて加熱された前記洗浄対象面に対して前記アルカリ系洗剤を噴出する洗剤噴出手段と、前記洗浄対象面に対して洗浄水を噴出する洗浄水噴出手段とが設けられている加熱調理装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記洗剤噴出手段及び前記洗浄水噴出手段の作動を制御可能に構成され、且つ、前記洗浄対象面を所定温度に維持すべく前記加熱手段を作動させる加熱処理と、前記洗剤噴出手段から前記洗浄対象面に向けて前記アルカリ系洗剤を噴出する洗剤噴出処理とを行い、所定時間経過後に、前記洗浄水噴出手段から前記洗浄対象面に向けて前記洗浄水を噴出する洗浄水噴出処理を行う庫内洗浄処理を実行自在に構成された請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記庫内洗浄処理を2回以上の所定回数繰り返して実行するように構成されている請求項2記載の加熱調理装置。
【請求項4】
前記洗浄対象面の裏面側に、前記加熱手段によって与えられた熱を蓄熱し、前記加熱手段の停止後に前記洗浄対象面を加温する蓄熱手段が設けられた請求項2又は3のいずれか1項記載の加熱調理装置。
【請求項5】
前記グリル庫の後端部に、燃焼排ガス等の排気をグリル庫外に排出する排気口が設けられ、
前記グリル庫の後端壁に、開状態と閉状態とに切換え自在で且つ開状態において前記排気口を閉塞し閉状態において前記排気口を開放する後端開閉蓋が設けられ、
前記後端開閉蓋の背面側に、前記後端開閉蓋の開状態において前記グリル庫内に臨む状態となる前記洗剤噴出手段としての洗剤噴出ノズルが設けられ、
前記洗剤噴出ノズルが、洗剤の噴出方向を変更自在に構成され、
前記制御手段が、前記洗剤噴出処理の実行時において、前記後端開閉蓋を開状態に切換え、且つ、前記洗浄対象面に洗剤を均一に噴出すべく前記洗剤の噴出方向を変更させる状態で前記洗剤噴出ノズルから洗剤を噴出させるように構成されている請求項2〜4のいずれか1項記載の加熱調理装置。
【請求項6】
前記後端開閉蓋の背面側に、前記後端開閉蓋の開状態において前記グリル庫内に臨む状態となる前記洗浄水噴出手段としての洗浄水噴出ノズルが設けられ、
前記洗浄水噴出ノズルが、洗浄水の噴出方向を変更自在に構成され、
前記制御手段が、前記洗浄水噴出処理の実行時において、前記後端開閉蓋を開状態に切換え、且つ、前記洗浄対象面に洗浄水を均一に噴出すべく前記洗浄水の噴出方向を変更させる状態で前記洗浄水噴出ノズルから洗浄水を噴出させるように構成されている請求項5記載の加熱調理装置。
【請求項7】
前記前記洗剤噴出手段と前記洗浄水噴出手段とが同一の噴出ノズルにて共用されている請求項6記載の加熱調理装置。
【請求項8】
前記洗剤噴出処理の実行後に前記洗浄水噴出処理を実行するまでの所定時間が、10〜60秒の時間範囲に設定されている請求項2〜7のいずれか1項記載の加熱調理装置。
【請求項9】
前記加熱手段が、前記グリル庫内の左右の両側壁面に設けられた凹部に引退して配設されて調理対象物の下面側を加熱する側面バーナを備えて構成され、
前記左右の両側壁面の凹部を覆う閉状態と前記左右の両側壁面の凹部の上端部から前記グリル庫内方に向けて起立する開状態とに切換え自在な側壁開閉蓋が設けられ、
前記制御手段が、前記加熱処理の実行時には前記側面バーナからの燃焼排ガスを前記グリル庫内に流動させるべく前記側壁開閉蓋を開状態とし、且つ、前記洗剤噴出処理及び前記洗浄水噴出処理の実行時には前記側壁開閉蓋を閉状態とするように構成されている請求項2〜8のいずれか1項記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−211716(P2012−211716A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76549(P2011−76549)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】