説明

加熱調理食品生地製造方法及び生地製造装置

【課題】穀物粒から製粉工程を経ることなく加熱調理食品生地を製造するにあたって、効率良く加熱調理食品生地を製造する方法を提供する。
【解決手段】加熱調理食品生地製造方法は、穀物粒に吸液させる吸液工程#10と、吸液した前記穀物粒と液体とを含む混合物の中で粉砕ブレードを回転させて前記穀物粒を粉砕する粉砕工程#20と、粉砕された前記穀物粒と前記液体とを含む混合物からなる生地原料を練りブレードで生地に練り上げる練り工程#30と、を含み、吸液工程#10中に、前記穀物粒が浸漬されている液体を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパン生地等の加熱調理して食べられる加熱調理食品生地の製造方法に関する。また、本発明は、加熱調理食品生地製造方法が適用される生地製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物を食物として摂取する場合、粒のまま調理して食べる(粒食)こともあれば、粉に碾いた上で調理して食べる(粉食)こともある。粉食の場合、粉と水を混ぜて捏ね、一つにつながった「生地」と呼ばれるものにしてから加熱調理するのが一般的である。生地には、調味材料(食塩、砂糖、鶏卵、バター、ショートニング等)を混ぜることもあれば、また、ドライイースト、生イースト、天然酵母、糀、ベーキングパウダーなどの発泡誘起材料を混ぜることもある。
【0003】
このようにして調製した生地は、目的とする食品が得られるように丸めたり、延ばしたり、ちぎったり、細く切ったりして形を整えられる。そして、形が整えられた生地は、場合によっては発酵工程や乾燥工程を経てから、焼く(パン、ケーキ、ピザ等)、揚げる(ドーナツ、揚げパン等)、蒸す(饅頭、蒸しパン等)、茹でる(うどん、そば、スパゲティ等)、炒め焼きする(焼きそば、餃子等)、煮る(すいとん、ほうとう等)などの手法で加熱調理される。
【0004】
加熱調理食品生地の製造方法の一例を特許文献1に見ることができる。特許文献1はパン生地の製造方法に係るものであり、生米を乳酸発酵させて粉砕した機能性デンプン液を、パン生地の中種混捏時若しくは直捏法による混捏攪拌時に加水の一部代替えとして添加してパン生地の調製を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−51754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、加熱調理食品生地を製造する場合、これまでは穀物粉を入手するところから始めなければならなかった。この点、本出願人らは鋭意研究の末、粒の形で手元にある穀物(典型的なものとして、例えば米粒が挙げられる)を利用することにより、製粉という手間をかけずに加熱調理食品生地を製造する方法を発明した。なお、これについては先に特許出願(特願2008−201506)を行っている。
【0007】
ここで、先に特許出願した加熱調理食品生地製造方法の一例を紹介する。該製造方法には、所定量の穀物粒と所定量の液体を混合状態で静置して穀物粒に液体を含ませる工程(吸液工程)と、吸液工程を経た穀物粒と液体との混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する工程(粉砕工程)と、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料を練りブレードで生地に練り上げる工程(練り工程)と、が含まれる。
【0008】
上記製造方法において、粉砕工程の前に行う吸液工程は必ずしも必要ではない。しかし、本出願人らの研究により、吸液工程を経てから穀物粒を粉砕した方が穀物粒に液体が浸み込んだ状態で粉砕を行えるので、穀物粒を芯まで容易に粉砕しやすいことがわかっており、吸液工程を行うのが好ましい。しかしながら、穀物粒に吸液させるにはある程度の時間が必要となるために、吸液工程を行う場合には加熱調理食品生地を製造するために要する時間が長くなるといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、穀物粒から製粉工程を経ることなく加熱調理食品生地を製造するにあたって、効率良く加熱調理食品生地を製造する方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような加熱調理食品生地製造方法が適用される生地製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の加熱調理食品生地製造方法は、穀物粒に吸液させる吸液工程と、吸液した前記穀物粒と液体とを含む混合物の中で粉砕ブレードを回転させて前記穀物粒を粉砕する粉砕工程と、粉砕された前記穀物粒と前記液体とを含む混合物からなる生地原料を練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を含み、前記吸液工程中に、前記穀物粒が浸漬されている液体を加熱することを特徴としている。
【0011】
なお、本明細書では、練り工程の開始時点のものを「生地原料」と呼称し、練りが進行して目的とする生地の状態に近づいたものは、半完成状態であっても「生地」と呼称することとしている。
【0012】
本構成によれば、粉砕工程で粉砕した穀物粒と液体とを含む混合物を生地原料として生地を練り上げる構成であるために、製粉という手間をかけずに加熱調理食品生地を得ることができる。そして、粉砕工程中に穀物粒が浸漬されている液体を加熱する構成であるために、穀物粒への吸液速度を向上でき、吸液工程に要する時間を短縮することができる。すなわち、本構成は、穀物粒から製粉工程を経ることなく加熱調理食品生地を製造するにあたって、効率良く加熱調理食品生地を製造する方法を提供するものである。
【0013】
上記構成の加熱調理食品生地製造方法において、前記吸液工程においては、前記穀物粒が浸漬されている液体を加熱後に冷却処理することとしてもよい。
【0014】
本構成によれば、吸液工程において一旦上げた液体の温度を冷却処理によって下げた状態で粉砕工程に移行することができる。このため、粉砕工程時に発生する熱によって、粉砕工程で得られるペースト(粉砕された穀物粒と液体とを含む混合物)の温度が過度に上昇するのを避けられる。例えば、穀物粒として米粒を用いる場合、過度に温度が上昇する(例えば60℃超)と米の糊化により粉砕時の負荷が上昇するが、本構成によればこのような事態を避けられる。
【0015】
上記構成の加熱調理食品生地製造方法において、前記穀物粒が浸漬されている液体を加熱して第1の温度まで温めた後、前記第1の温度を維持する温度制御が所定の時間行われ、その後、前記冷却処理により前記穀物粒が浸漬されている液体の温度を前記第1の温度より低い第2の温度へと下げることとしてもよい。
【0016】
本構成によれば、穀物粒を浸漬している液体の温度を第1の温度まで加熱して、その後、その温度で所定の時間維持するようになっている。このために、穀物粒を浸漬している液体の温度が過度に上昇することを避けられ、吸液工程において、上述した米の糊化が起こり難くできる。また、第1の温度による吸液を安定して行えるために、生地の出来上がりの品質について安定したものとできる。
【0017】
上記構成の加熱調理食品生地製造方法において、前記練り工程では、生地温度を一定の温度に維持するように温度制御が行われ、前記第2の温度は前記一定の温度より低いこととしてもよい。
【0018】
本構成によれば、粉砕工程が開始される時の液体の温度が、練り工程で一定の温度となるように制御される温度よりも低い。このために、粉砕工程で発生する熱を利用して前記一定の温度にペースト温度を高めた上で練り工程へと移行することが可能である。このために、粉砕工程後における冷却処理を不要とできる等、効率良く生地の製造を進めることが可能である。なお、練り工程で生地温度が一定となるような制御は、例えばパン生地を製造する場合に行われる。これは、イーストを活発に働かせることを意図するものである。
【0019】
上記構成の加熱調理食品生地製造方法において、前記粉砕工程は、粉砕により得られるペーストの温度が前記一定の温度となった時点で終了されることとしてもよい。
【0020】
本構成によれば、上述のように粉砕工程後における冷却処理を不要とできる等、効率良く生地の製造を進めることが可能である。
【0021】
上記構成の加熱調理食品生地製造方法において、前記吸液工程においては、前記穀物粒が浸漬されている液体が加熱により第1の温度まで温められ、その後、前記第1の温度を維持する温度制御が所定の時間行われることとしてもよい。
【0022】
本構成によれば、穀物粒を浸漬している液体の温度を第1の温度まで加熱して、その後、その温度で所定の時間維持するようになっている。このために、穀物粒を浸漬している液体の温度が過度に上昇するのを避けられ、吸液工程において、上述した米の糊化が起こり難くできる。また、第1の温度による吸液を安定して行えるために、生地の出来上がりの品質について安定したものとできる。そして、本構成の場合、吸液工程では液体の冷却を行わずに粉砕工程を行う構成とすることも可能である。この場合、粉砕工程におけるペーストの過度の温度上昇を避けるために、粉砕工程中に冷却処理を行うのが好ましい。
【0023】
上記構成の加熱調理食品生地製造方法において、前記粉砕工程における前記粉砕ブレードの回転は間欠回転であることとしてもよい。
【0024】
本構成によれば、粉砕ブレードの回転・停止を繰り返すことによって穀物粒を効果的に容器内で対流させることができ、粉砕効率を向上することができる。
【0025】
上記構成の加熱調理食品生地製造方法において、前記粉砕工程終了後に、前記生地原料にグルテンが投入されることとしてもよい。
【0026】
本構成は、例えば穀物粒として米粒を用いた場合のように、穀物粒からグルテンを得られないような場合に特に有効であり、これによって所望の弾力を備えた生地を製造することができる。
【0027】
上記構成の加熱調理食品生地製造方法において、前記粉砕工程終了後に、前記生地原料に調味材料が投入されることとしてもよい。
【0028】
本構成によれば、生地を加熱調理して食用に供する際の食味を向上させることができる。
【0029】
また、本発明は、上記構成の加熱調理食品生地製造方法が適用される生地製造装置であることを特徴としている。
【0030】
本構成によれば、穀物粒から製粉工程を経ることなく加熱調理食品生地を製造するにあたって、効率良く加熱調理食品生地を製造できる生地製造装置を提供できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、穀物粒から製粉工程を経ることなく加熱調理食品生地を製造するにあたって、効率良く加熱調理食品生地を製造することができ、穀物粒の調理の可能性を広げられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態の加熱調理食品生地製造方法の全体フローチャート
【図2】本実施形態の加熱調理食品生地製造方法の流れを示す模式的なグラフ
【図3】本実施形態の加熱調理食品生地製造方法に含まれる吸液工程の詳細を示すフローチャート
【図4】本実施形態の加熱調理食品生地製造方法に含まれる粉砕工程の詳細を示すフローチャート
【図5】本実施形態の加熱調理食品生地製造方法に含まれる練り工程の詳細を示すフローチャート
【図6】本実施形態の加熱調理食品生地製造方法が適用される生地製造装置の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の加熱調理食品生地製造方法及び生地製造装置の実施形態について、図1〜図6を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、加熱調理食品生地の一例としてパン生地の場合を挙げて説明する。また、本明細書に登場する具体的な時間や温度等はあくまでも例示であり、発明の内容を限定するものではない。
【0034】
図1は、本実施形態の加熱調理食品生地製造方法の全体フローチャートである。図2は、本実施形態の加熱調理食品生地製造方法の流れを示す模式的なグラフである。図3は、本実施形態の加熱調理食品生地製造方法に含まれる吸液工程の詳細を示すフローチャートである。図4は、本実施形態の加熱調理食品生地製造方法に含まれる粉砕工程の詳細を示すフローチャートである。図5は、本実施形態の加熱調理食品生地製造方法に含まれる練り工程の詳細を示すフローチャートである。図6は、本実施形態の加熱調理食品生地製造方法が適用される生地製造装置の一例を示す断面図である。
【0035】
図1及び図2に示すように、本実施形態の加熱調理食品生地製造方法には、吸液工程#10と、粉砕工程#20と、練り工程#30とが含まれ、この順に工程が進められる。以下、各工程の詳細について説明する。
【0036】
まず、図3にフローチャートが示される吸液工程#10について説明する。この吸液工程#10は、穀物粒に液体を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程#20において、穀物粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0037】
ステップ#11では穀物粒(米粒が最も入手しやすいが、それ以外の穀物、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆などの粒も利用可能である)を計量し、所定量を容器に入れる。ステップ#12では液体を計量し、所定量を容器に入れる。液体として一般的なものは水であるが、だし汁のような味成分を有する液体でもよく、果汁でもよい。また、アルコールを含有するものであってもよい。なお、ステップ#11とステップ#12とは順序が入れ替わっても構わない。本実施形態では、穀物粒として米粒、液体として水を用いることとしている。
【0038】
ステップ#13では、容器に入れた穀物粒と液体との混合物を静置後、液温を上げるべく加熱手段を用いて液体の加熱を開始する。また、加熱開始と同時に温度検出手段を用いて液温の測定も開始する。液温を上げる理由は、穀物粒が液体を吸液する速度を高めるためである。また、温度の測定は吸液工程#10を適切な温度で行うためであり、この点は後述する。
【0039】
なお、加熱手段については容器に入った液体の温度を上げられる手段であればよく、その構成は特に限定されるものではない。例えば、電熱線や温水等を用いる手段であって、液体を容器ごと温めるような構成のもでもよい。また、温度検出手段についても液温を測定できればよく、その構成は特に限定されるものではない。液温は、液体の温度を直接測ることによって得る構成でもよいし、容器温度を測定して間接的に得る構成等でもよい。
【0040】
ステップ#14では、上記温度検出手段によって検出される液温が50℃(第1の温度)に達したか否かをチェックする。なお、ここでいう液温50℃には、50℃ぴったりの場合だけでなく、50℃から多少ずれた温度も含んで構わない(これと同様のことは、以下に述べる温度全てに当てはまる)。液温が50℃に達するとステップ#15に進む。ステップ#15では、液温を50℃に維持(キープ)するように温度制御を開始すると共に、時間測定を開始する。
【0041】
なお、液温を50℃に制御するにあたっては、例えば電熱線等からなる加熱手段によって与えられる熱量の調整を行えばよい。また、場合によっては加熱手段に加えて、例えば冷水管等からなる冷却手段も併せて用いて温度制御を行ってもよい。
【0042】
ここで、液温を50℃まで加熱し、その後液温を50℃で維持する理由について述べておく。一般的には、穀物粒の吸液速度は、常温よりも高い温度である方が速い。一方、例えば穀物粒として本実施形態のように米粒を用いた場合には、例えば液温が60℃を超えると米の糊化が始まる。この糊化が始まると、米粒の中心まで液体(水)を含み難くなると共に、その後に行われる粉砕工程#20で、粉砕ブレードに加わる負荷が大きくなるといった問題が発生する。
【0043】
そこで、なるべく効率良く吸液が行われる温度であって、更に米の糊化の影響を受け難い温度とすることを狙って、液温50℃(あくまでも一例である)を選択している。また、液温を50℃に維持することとしているのは、米の糊化を生じることなく効率良く吸液できる温度を安定して再現するためである。
【0044】
ステップ#16では、ステップ#15で時間測定を開始してから所定の時間が経過したか否かをチェックする。この所定の時間は、キープする液温(本実施形態では50℃)によって変更される時間であり、その最適な時間は例えば実験等によって求められる。本実施形態では、この所定の時間は例えば15分とされる。所定の時間が経過するとステップ#17へと進む。
【0045】
ステップ#17では、容器内の液体の温度を低下させるべく、冷却手段によって冷却を開始する。ここで用いられる冷却手段は、容器に入った液体の温度を下げられる構成のものであればよく、その構成は特に限定されるものではない。例えば、容器に巻かれた冷却管に冷却水を流すような構成のものでもよいし、また、氷水に容器が浸されるような構成のもの等でもよい。
【0046】
ステップ#18では、冷却処理によって液温が10℃(第2の温度)まで下げられたか否かをチェックする。冷却処理によって液温が10℃まで下げられた時点で吸液工程#10を終了する。
【0047】
ここで、液温を10℃まで冷却する理由について述べておく。まず、加熱によって上げた液温を下げるのは次のような理由による。粉砕工程#20では、後述のように粉砕ブレードを高速回転して穀物粒を粉砕するが、この場合、粉砕時の摩擦等によって熱が発生する。このため、液温が高いまま粉砕工程を開始すると、粉砕中に穀物粒と液体の混合物の温度が上昇して上述の糊化が始まる可能性がある。このため、このような糊化が始まる温度への到達を避けるべく液温を下げることにしている。
【0048】
また、冷却時の液温の狙いを10℃とするのは次のような理由による。後述のように練り工程#30では生地温度が一定の温度(本実施形態では28℃)となるように温度制御を行う(図2参照)。このため、冷却によって上記一定の温度(例えば28℃)より十分低い温度(10℃)とし、粉砕工程#20で発生する熱を利用しながら上記一定の温度を得る構成とするのが好ましい。このような構成とした場合、例えば粉砕工程#20後に更に冷却処理を行うことを省略可能であり、温度管理が容易となる。なお、10℃より低くなると、粉砕工程#20における穀物粒の粉砕効率が低下する傾向にあるために、本実施形態では10℃まで下げることとしている。
【0049】
以上に説明した吸液工程#20において、初期段階で粉砕ブレードを回転させ、その後も断続的に粉砕ブレードを回転させるようにしてもよい。このようにすると、穀物粒の表面に傷をつけることができ、穀物粒の吸液効率を高められる。
【0050】
次に、図4にフローチャートが示される粉砕工程#20について説明する。この粉砕工程#20は、穀物粒をペースト化する工程である。ステップ#21では吸液工程#10で吸液した穀物粒と液体とを容器に入れる。なお、吸液工程#10で使用した容器と同じ容器を使用する場合には、このステップ#21を省略して、吸液工程#10の終了後、次に説明するステップ#22へと進んでもよい。また、場合によっては、この段階で容器に例えば調味材料等の添加物を加えてもよい。
【0051】
ステップ#22では、穀物粒と液体とを含む混合物(この混合物は穀物粒と液体のみの混合物である場合も含み、本実施形態ではこの形態である)の中で粉砕ブレードの回転を開始し、それと共に時間測定を開始する。穀物粒に液体が浸み込んだ状態で粉砕が行われるから、穀物粒を芯まで容易に粉砕することができる。
【0052】
ステップ#23では、粉砕ブレードの回転時間が1分を経過したか否かをチェックする。粉砕ブレードの回転時間が1分を経過したら、ステップ#24に進んで粉砕ブレードの回転を停止する。ステップ#25では、粉砕された混合物(ペースト)の温度が28℃に達したか否かをチェックする。ペースト温度が28℃に達している場合には、粉砕工程#20を終了する。
【0053】
一方、ペースト温度が28℃に達していない場合には、ステップ#26に進んで粉砕ブレードの回転停止から3分が経過した否かをチェックする。回転停止から3分が経過している場合にはステップ#27に進んで粉砕ブレードの回転を再開し、ステップ#23に戻る。ペースト温度が28℃に達するまで、ステップ#23〜#27が繰り返される。
【0054】
粉砕ブレードの回転制御について、図2を参照しながら説明する。図2に示すように、粉砕ブレードは、回転(ON)と停止(OFF)とを繰り返し行う間欠回転とされる。本実施形態では、1分間回転して3分間停止という間欠回転が行われる。そして、この間欠回転を繰り返しながら、ペースト温度が28℃となった時点で粉砕工程#20を終了するのである。
【0055】
ペースト温度28℃で粉砕工程#20を終了する構成とすると、練り工程#30の初期において冷却手段による冷却が不要であり、温度管理が容易である。なお、ペースト温度28℃となった時点で穀物粒の粉砕が不十分とならないように、粉砕ブレードの回転数等について調整しておく必要がある。
【0056】
また、上述の粉砕ブレードの回転制御方法はあくまでも一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。また、粉砕工程における粉砕ブレードの回転について、必ず間欠回転としなければならないという訳ではない。ただ、間欠回転とした方が、穀物粒を効果的に容器内で対流させることができて粉砕効率を向上できるので好ましい。
【0057】
次に、図5にフローチャートが示される練り工程#30について説明する。この練り工程#30は、生地原料を練りブレードで生地に練り上げる工程である。ここで、生地原料とは、粉砕工程#20で粉砕された穀物粒(粉砕穀物粒)と液体とを含む混合物のことで、ペースト状のものである。上述のように、練り工程の開始時点のものを「生地原料」と呼称し、練りが進行して目的とする生地の状態に近づいたものは、半完成状態であっても「生地」と呼称することとしている。
【0058】
ステップ#31では生地原料を容器に入れる。なお、粉砕工程#20で使用した容器と同じ容器を使用する場合には、このステップ#31を省略して、粉砕工程#20の終了後、次に説明するステップ#32へと進んでもよい。ステップ#32では生地原料に所定量のグルテンを投入する。この際、必要に応じ、食塩、砂糖、ショートニングといった調味材料も投入する。本実施形態では、上記調味材料についても投入することとしている。
【0059】
ステップ#33では温度制御を開始する。パン生地の製造時には練り工程#30の途中でイーストを投入する。イーストは適切な温度でないとその働きが低下するために、活発に働く温度に調整する必要がある。この温度として一般に30度前後が良いとされており、本実施形態では生地温度を28℃に調整してイーストを活発に働かせることとしている。このため、パン生地の温度が28℃で維持されるように温度制御を行う。
【0060】
この温度制御は、例えば、容器を冷やすための冷却手段と、容器を温めるための加熱手段とを用いて、所望の温度(例えば28℃)で一定となるように制御することとしてもよい。この際の温度測定の方法は、生地(初期段階においては生地原料)の温度を直接測定することとしてもよいし、容器を介して間接的に測定することとしてもよい。ここで、冷却手段としては、例えば水や氷を用いるものやペルチエ素子を用いるもの等が挙げられる。加熱手段としては、例えば電熱線を用いるものや温水を用いるもの等が挙げられる。
【0061】
なお、本実施形態における温度制御は、練り上げによる温度上昇を抑制するという意味合いが強く、基本的には、冷却手段による冷却がメインである。
【0062】
ステップ#34では、生地原料の中で練りブレードの回転を開始し、更に練りの開始からの時間を測定するための時間測定が開始される。このステップ#34は、本実施形態では図2に示すようにステップ#33の温度制御開始とほぼ同時に実行される。練りブレードの回転により、生地原料が一つにつながり、所定の弾力を備えた生地へと練り上がっていく。
【0063】
なお、練りブレードの回転方法は特に限定されるものではないが、図2に示すように本実施形態では前半は間欠回転とし、後半は連続回転としている。図5に示すフローチャートでは、練りブレードの間欠回転に関する詳細は省略した記載となっている。
【0064】
ステップ#35では、練りの開始から所定の時間が経過したか否かをチェックする。所定の時間が経過している場合にはステップ#36に進む。ステップ#36では、練り上げ中の生地の温度(生地温度)が28℃であるか否かをチェックする。本実施形態はパン生地の製造方法であるため、発泡誘起材料としてドライイーストや生イーストなどのイーストを投入する。上述のように、イーストは活発に働く温度範囲が限られているために、イーストを投入する前に生地温度を確認する趣旨である。生地温度が28℃で維持されている場合にはステップ#37に進み、そうでない場合には温度が28℃となるまで待つ。
【0065】
ステップ#37では、生地温度が28℃となった生地にイースト(この場合はドライイースト)を投入する。ステップ#38ではドライイーストを投入してからどれだけ時間が経過したかをチェックする。所定の時間が経過したらステップ#39へ進んで練りブレードの回転が終了する。この時点で、一つにつながり、所要の弾力を備えた生地が完成する。
【0066】
完成した生地(パン生地)は発酵工程を経て加熱調理される。また、完成した生地を冷蔵したり冷凍したりして保存し、時間をずらして加熱調理してもよい。また、冷蔵保存や冷凍保存の処理を施した各段階の生地を商品として流通させることもできる。
【0067】
上記の各工程は、工程毎に別個の器具を使って遂行することもできるし、複数の工程で器具を共用することもできる。工程毎に別個の器具を使うことについては、吸液工程#10ではボウル、バケツ、たらい等を使い、粉砕工程#20ではミキサーを使い、練り工程#30以降は自動製パン器を使う、といった例を挙げることができる。
【0068】
吸液工程、粉砕工程及び練り工程の全てで共用される器具の構成例を図6に示す。図6の生地製造装置100は、電動機111及び制御部112(例えばマイクロコンピュータを搭載した基板)を内蔵した本体110の上に、容器120を着脱自在に取り付ける形になっている。容器120はカップ形状であって、上面開口は蓋121で密封される。容器120の底部中央には粉砕と練りに共用されるブレード122が配置されている。
【0069】
ブレード122は電動機111の軸にカップリング123で連結し、電動機111によって回転せしめられる。容器120の外周を取り巻くのは加熱手段124と冷却手段125である。加熱手段124は、例えば電熱ヒータやIHヒータ等で構成することができ、冷却手段125は、例えば冷水管やペルチエ素子等で構成することができる。容器120は熱伝導の良好な金属で形成するのが好ましい。本体110には容器120の温度を測定する温度センサ113が設けられている。
【0070】
穀物粒からパン用の生地を製造するときは、生地製造装置100を次のように用いる。蓋121を外し、容器120の中に所定量の穀物粒と所定量の液体とを入れた後、再び蓋121を嵌め込んで、まず吸液工程#10を実行する。この吸液工程#10では加熱手段124を用いて、液温が第1の温度(例えば50℃)となるまで加熱する。その後、加熱手段124や冷却手段125を用いて前記第1の温度(例えば50℃)を所定の時間(例えば15分)維持する(一定温度に制御)。所定の時間経過後、冷却手段124によって第2の温度(例えば10℃)まで冷却し、第2の温度に冷却されたら吸液工程#10を終了する。
【0071】
この吸液工程#10においては、温度センサ113によって検出される温度に基づいて、制御部112が自動的に温度制御を行ってもよい。また、吸液工程#10の終了ついて、例えばブザー音等の報知音によってユーザに知らしめる構成等としてもよい。また、この吸液工程#10において、制御部112による制御によってブレード122を断続的に回転させて穀物粒の表面に傷をつけるようにしてもよい。
【0072】
粉砕工程#20に入ったらブレード122を高速回転(間欠回転であってよい)させ、穀物粒を粉砕する。これにより、粉砕穀物粒と液体との混合物からなる生地原料が形成される。なお、粉砕工程#20のスタートは、吸液工程の終了後にスタートボタンを押すことによって始まるようにしてもよい。また、吸液工程#10の終了は温度センサ113によって検出される温度で判断できるので、吸液工程#10の終了後に自動的に粉砕工程#20が始まるようにしてもよい。
【0073】
粉砕工程#20の終了は、ペースト温度が所定の温度(例えば28℃)に達した時点で終了する。この粉砕工程#20の終了については、温度センサ113によって検出される温度に基づいて判断できるので、制御部112によって自動的に粉砕工程#20を終了する構成としてもよい。また、粉砕工程#20の終了について、例えばブザー音等の報知音によってユーザに知らしめる構成等としてもよい。
【0074】
粉砕工程#20が終了した時点で、加熱手段124と冷却手段125を温度センサ113の検出温度に基づいて適宜機能させて、生地温度が所望の温度(例えば28℃)で一定となるように温度制御を開始する。この温度制御の開始は例えば、温度制御開始用のボタンを設けて開始することとしてもよいし、自動的に開始されることとしてもよい。
【0075】
また、粉砕工程#20が終了した時点で、蓋121を開け、所定量のグルテンと、必要に応じ所定量の調味材料を生地原料に投入する。
【0076】
この後、蓋121を閉じて練り工程#30を開始する。練り工程#30ではブレード122を低速回転させ、生地原料及びそれに投入されたグルテンや調味材料を捏ねて一つにつながった生地を練り上げる。練り工程#30が開始されてから所定の時間が経過した時点で蓋121を開けて生地に所定量の発泡誘起材料(例えばドライイースト)を投入する。なお、所望の時間が経過したことをブザー音等の報知音でユーザに知らせる構成としてもよい。
【0077】
発泡誘起材料を投入したら蓋121を閉め、ブレード122を低速回転させて生地と発泡誘起材料とを混練して生地を完成させる。生地の完成は、混練開始からのトータル時間で管理しているために、トータル時間が所定の時間が経過した時点で練り工程#30を終了する。なお、練り工程#30の終了は、混練開始からのトータル時間が所定の時間が経過した時点で自動的に終了する構成としてもよい。また、練り工程#30の終了をブザー等の報知音で知らせる構成等としてもよい。
【0078】
生地が完成したら、生地を容器120から取り出して、あるいは生地を容器120に入れたままで、生地の発泡が進むのを待つ。所望の発泡を得られたら生地をパン焼き装置に入れ、パンを焼く。
【0079】
このように、同一の容器120内で吸液工程#10から練り工程#30まで進行させることにより、ある工程から他の工程に移行する際に内容物を別の容器に移し替える必要がなく、時間を短縮できる。また、穀物粒や生地原料の一部が前の工程で使用した容器の内面に残り、少しずつ目減りするという問題もなくなる。
【0080】
なお、上記生地製造装置100において、粉砕工程#20と練り工程#30でブレード122の回転方向を変え、粉砕工程#20ではブレード122の片側の鋭いエッジが穀物粒に当たり、練り工程#30ではブレード122の他側の尖っていない端面が生地原料を押す、といった構成にしてもよい。
【0081】
以上、本発明の実施態様につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0082】
例えば、以上に示した実施形態では、吸液工程#10で冷却処理を行う構成とした。しかし、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、吸液工程では冷却処理を行わず、粉砕工程で冷却処理を行いながら粉砕工程を行うようにしてもよい。この場合、冷却処理として容器を外部から冷やす方法でもよいが、別の方法として、吸液工程が終わった時点で一旦容器内の液体を捨て、氷(これは、少なくともその一部が容器内で溶けて液体となる)、氷水、或いは冷水等を容器に入れるという方法を採用してもよい。
【0083】
また、以上に示した実施形態では、粉砕工程#20はイーストを投入する温度(例えば28℃)となるまで行われることとした。しかし、この構成に限定されず、イーストを投入する温度を超えた温度で終了することとしてもよいし、イーストを投入する温度より低い温度で終了することとしてもよい。
【0084】
また、以上に示した実施形態では、パン生地の製造にあたって生地原料にグルテンを投入する構成とした。しかし、グルテンを投入しない構成としても構わない。この場合は、例えば、グルテンの代わりに増粘安定剤(例えばグアガム)を投入する等してもよい。
【0085】
その他、以上に示した実施形態では、加熱調理食品生地がパン生地である場合を例に挙げて説明したが、本発明の適用範囲はパン生地に限定される趣旨ではなく、加熱調理食品生地に広く適用可能である。例えば、生地の種類により、次のような粉砕、練り工程が実行され、その前に行われる吸液工程中に、穀物粒が浸漬されている液体に熱を加えることにより、効率良く加熱調理食品生地を製造できる。
【0086】
<ケーキ生地>
パン生地と同じくらいの液体の割合で粉砕工程#20を実行する。生地原料に卵、砂糖、ベーキングパウダーなどを投入し、練り工程#30を実行する。これにより、柔らかいペースト状の生地が得られる。
【0087】
<うどん生地>
粉砕工程#20の後、生地原料に塩を投入して練り工程#30を実行する。これにより、パン生地よりも硬く、弾力のある生地が得られる。
【0088】
<パスタ生地>
粉砕工程#20の後、生地原料に塩と油を投入して練り工程#30を実行する。これにより、パン生地よりも硬く、弾力のある生地が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、加熱調理食品の生地を製造する際に広く適用でき、例えばパン生地の製造に好適である。
【符号の説明】
【0090】
#10 吸液工程
#20 粉砕工程
#30 練り工程
100 生地製造装置
120 容器
122 ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粒に吸液させる吸液工程と、
吸液した前記穀物粒と液体とを含む混合物の中で粉砕ブレードを回転させて前記穀物粒を粉砕する粉砕工程と、
粉砕された前記穀物粒と前記液体とを含む混合物からなる生地原料を練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を含み、
前記吸液工程中に、前記穀物粒が浸漬されている液体を加熱することを特徴とする加熱調理食品生地製造方法。
【請求項2】
前記吸液工程においては、前記穀物粒が浸漬されている液体を加熱後に冷却処理することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理食品生地製造方法。
【請求項3】
前記吸液工程においては、前記穀物粒が浸漬されている液体を加熱して第1の温度まで温めた後、前記第1の温度を維持する温度制御が所定の時間行われ、その後、前記冷却処理により前記穀物粒が浸漬されている液体の温度を前記第1の温度より低い第2の温度へと下げることを特徴とする請求項2に記載の加熱調理食品生地製造方法。
【請求項4】
前記練り工程では、生地温度を一定の温度に維持するように温度制御が行われ、
前記第2の温度は前記一定の温度より低いことを特徴とする請求項3に記載の加熱調理食品生地製造方法。
【請求項5】
前記粉砕工程は、粉砕により得られるペーストの温度が前記一定の温度となった時点で終了されることを特徴とする請求項4に記載の加熱調理食品生地製造方法。
【請求項6】
前記吸液工程においては、前記穀物粒が浸漬されている液体が加熱により第1の温度まで温められ、その後、前記第1の温度を維持する温度制御が所定の時間行われることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理食品生地製造方法。
【請求項7】
前記粉砕工程における前記粉砕ブレードの回転は間欠回転であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の加熱調理食品生地製造方法。
【請求項8】
前記粉砕工程終了後に、前記生地原料にグルテンが投入されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の加熱調理食品生地製造方法。
【請求項9】
前記粉砕工程終了後に、前記生地原料に調味材料が投入されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の加熱調理食品生地製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の加熱調理食品生地製造方法が適用される生地製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−246405(P2010−246405A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96004(P2009−96004)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】