説明

加硫活性剤

架橋性の不飽和鎖ポリマー基材を含む混合物の加硫活性剤としての下記分子式(I)の化合物の使用。
([RNR(NR)n](n+1)+)y (n+1)Xy− (I)
(式中のXはアニオン性原子またはアニオン性基、R、R及びRは同一または異なってもよく、それぞれmが1〜3の範囲であるC2m+1またはCHCHCH若しくはCHCHCH、R、R及びRは同一または異なってもよく、それぞれCHCHCHまたはCHCHCH、nは0または1、yは、nが1の場合1であり;yは、nが0の場合1または2、Rは、nが0の場合C15−C22の脂肪族基であり;nが1の場合C−C16の脂肪族基、nが0の場合、R、R、R及びRの少なくとも一つは二重結合を含む)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の結果を達成するため、ゴム混合物の加硫には加硫活性剤及び加硫促進剤を含む特別な添加剤が必要となる。
【0003】
高速加硫を必要とするいくつかの工業的用途においては、非常に効率の良いブースター促進剤が使用される。
【0004】
これらの内の幾つかは、近年健康上の理由により非難の的となっている。
【0005】
脂肪酸はまた、通常加硫活性剤として用いられ、加硫プロセスの活性化に効果的であるが、グリーン混合物の密着性の低下をもたらす場合がある。実際に、脂肪酸は酸化亜鉛との反応により混合物の表面に移行しがちな亜鉛塩を不所望な副生物として生成し、それゆえグリーン混合物の密着性が低下する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、高速加硫を確実にすると同時に、脂肪酸の使用を制限するように考案された新規な加硫活性剤システムの必要性を感じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、架橋性の不飽和鎖ポリマー基材を含む混合物の加硫活性剤として下記の分子式(I):
([RNR(NR)n](n+1)+)y (n+1)Xy− (I)
(式中のXはアニオン性原子またはアニオン性基であり、
、R及びRは、同一または異なってもよく、それぞれmが1〜3の範囲であるC2m+1またはCHCHCH若しくはCHCHCHであり、
、R及びRは、同一または異なってもよく、それぞれCHCHCHまたはCHCHCHであり、
nは、0または1であり、
yは、nが1の場合1であり;yは、nが0の場合1または2であり、
は、nが0の場合C15−C22脂肪族基であり;nが1の場合C−C16の脂肪族基であり、
nが0の場合、R、R、R及びRの少なくとも一つは二重結合を含む)の化合物の使用に関する。
【0008】
、R及びRは、好ましくはCHCHCHであり、またより好ましくはnは1であり、Rは飽和脂肪族基である。
【0009】
は二重結合を含み、またnは0であるのが好ましい。
【0010】
加硫活性剤は、
[(CHN(CHCHCH(CHCH
[(CHCHCHN(CH15CH
[(CH)(CHCHCHN(CH15CH
[(CHCHCH)(CHN(CH15CH;e
[(CHCHCHN(CH12N(CHCHCH 2X
を含む群の分子式を有するのが好ましい。
【0011】
はIまたはBrであるのが好ましい。
【0012】
好ましくは、0.01〜10phrの加硫活性剤を混合物に用いる。
【0013】
本発明はまた、分子式(I)の化合物を加硫活性剤として含むことを特徴とする架橋性の不飽和鎖ポリマー基材を含む混合物に関する。
【0014】
本発明はまた、分子式(I)の化合物を加硫活性剤として含む混合物から製造したことを特徴とするゴム製品に関する。
【0015】
本発明はまた、分子式(I)の化合物を加硫活性剤として含む混合物から製造した少なくとも一つのゴム部材を備えることを特徴とするタイヤに関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施例は、単に本発明のより明確な理解のための非限定的な例である。
【実施例】
【0017】
以下の実施例では、本発明に係る加硫助剤のクラスに異なる5つの化合物(a,b,c,d,e)を用いた。
【0018】
5つの加硫活性剤は以下の通りである;
・分子式[(CHN(CHCHCH(CHCHの化合物(a)
・分子式[(CHCHCHN(CH15CH Brの化合物(b)
・分子式[(CH)(CHCHCHN(CH15CHの化合物(c)
・分子式[(CHCHCH)(CHN(CH15CHの化合物(d)
・分子式[(CHCHCHN(CH12N(CHCHCH 2Brの化合物(e)
【0019】
ほんの一例として、TBBS及びDPG促進剤を用いて上記加硫活性剤を下記のようにして試験した。
【0020】
(TBBS混合物)
本発明に係る上記5つの加硫活性剤(a、b、c、d、e)のうち1つをそれぞれ含む10種の混合物(A、A、B、B、C、C、D、D、E、E)を調製した。より具体的には、上記5種の加硫活性剤(a、b、c、d、e)を2つの異なる濃度で用いた。
【0021】
表1は、上記混合物の組成をphrで示す。
【0022】
【表1】

【0023】
本発明に係る加硫活性剤を含む混合物の利点を正確に評価するために、表1の混合物の加硫活性剤とは対照的に、活性剤として脂肪酸を含むコントロール混合物(MCTBBS)を調製した。
【0024】
表2は、コントロール混合物の組成をphrで示す。
【0025】
【表2】

【0026】
(DPG混合物)
本発明に係る加硫活性剤(c)及び(e)を含む4種の混合物(C、C、E、E)をそれぞれ調製した。以下に示すように、加硫活性剤(c)及び(e)を脂肪酸の存在下及び不在下の両方において試験した。
【0027】
本発明に係る加硫活性剤を含む混合物の利点を正確に評価するために、加硫活性剤を含まず、活性剤としてDPG及び脂肪酸のみを含むコントロール混合物(MCDPG)を調製した。
【0028】
表3は、混合物C、C、E及びE並びにコントロール混合物MCDPGの組成をphrで示す。
【0029】
【表3】

【0030】
(試験)
上記組成の混合物を種々の温度で試験加硫した。より具体的には、各混合物の流動度特性をISO標準6502により試験した。
【0031】
表4は、TBBS混合物の流動度特性の結果を示す。加硫試験は、145℃、160℃、175℃及び195℃の温度で行った。MH及びMLの値をdNMで表し、T‘10及びT’90を分で表す。
【0032】
【表4】

【0033】
表5は、DPG混合物の流動度特性の結果を示す。加硫試験は160℃の温度で行った。
【0034】
設定条件で加硫が生じなかったことから、コントロール混合物MCDPGの結果を表5には示さない。
【0035】
【表5】

【0036】
上記結果が明らかに示すように、本発明に係る加硫活性剤は、これとともに用いる加硫促進剤の有効性に驚くほど顕著な増加を提供する。これは、生産という観点並びにゴム工業で広く使用され、いくつかが健康保護機関により現在調査中であるブースター促進剤の有効な代替品として大きな利点を構成する。
【0037】
本発明に係る加硫活性剤はまた、驚くべきことに混合物中に脂肪酸を活性剤として用いることを制限し、これは混合物の表面に移行する塩で引き起されるグリーンラバーの密着性の問題を解決する利点を有する。実際、亜鉛塩が酸化亜鉛と反応する脂肪酸の不所望な副生物として形成される。
【0038】
当業者に明らかなように、本発明を用いて、高速加硫させたゴム製品の製造に関する産業、特にかつ好ましくはタイヤ産業において利益をもたらすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性の不飽和鎖ポリマー基材を含む混合物の加硫活性剤として下記の分子式(I):
([RNR(NR)n](n+1)+)y (n+1)Xy− (I)
(式中のXはアニオン性原子またはアニオン性基であり、
、R及びRは、同一または異なってもよく、それぞれmが1〜3の範囲であるC2m+1またはCHCHCH若しくはCHCHCHであり、
、R及びRは、同一または異なってもよく、それぞれCHCHCHまたはCHCHCHであり、
nは、0または1であり、
yは、nが1の場合1であり;yは、nが0の場合1または2であり、
は、nが0の場合C15−C22の脂肪族基であり;nが1の場合C−C16の脂肪族基であり、
nが0の場合、R、R、R及びRの少なくとも一つは二重結合を含む)の化合物の使用。
【請求項2】
前記R、R及びRがCHCHCHであることを特徴とする請求項1に記載の分子式(I)の化合物の使用。
【請求項3】
前記nは1であり、Rは飽和脂肪族基であることを特徴とする請求項2に記載の分子式(I)の化合物の使用。
【請求項4】
前記Rが二重結合を含み、nは0であることを特徴とする請求項1に記載の分子式(I)の化合物の使用。
【請求項5】
前記分子式(I)の化合物は、
[(CHN(CHCHCH(CHCH
[(CHCHCHN(CH15CH
[(CH)(CHCHCHN(CH15CH
[(CHCHCH)(CHN(CH15CH;e
[(CHCHCHN(CH12N(CHCHCH 2X
を含む群の分子式を有することを特徴とする請求項1に記載の分子式(I)の化合物の使用。
【請求項6】
前記XがIまたはBrであることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の分子式(I)の化合物の使用。
【請求項7】
加硫活性剤として請求項1〜6のいずれか一項に記載の分子式(I)の化合物を含むことを特徴とする架橋性の不飽和鎖ポリマー基材を含む混合物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の加硫助剤を0.01〜10phr含むことを特徴とする請求項7に記載の混合物。
【請求項9】
請求項7または8に記載の混合物から製造したことを特徴とするゴム製品。
【請求項10】
請求項7または8に記載の混合物から製造した少なくとも一つのゴム部材を備えることを特徴とするタイヤ。

【公表番号】特表2013−507476(P2013−507476A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532677(P2012−532677)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002546
【国際公開番号】WO2011/042799
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】