説明

加速度センサ内蔵パレット

【課題】加速度センサにより作業中にかかる物理的ストレスを数値で把握し、加速度センサに記憶されたデータに基づいて破損事故等を履歴によって分析して対処することができる加速度センサ内蔵パレットを提供する。
【解決手段】加速度センサ内蔵パレット1は、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られるものである。パレットを構成する中空二重壁構造体2は、中空部となる間隔をおいて対向する一方の壁である上面壁4と他方の壁である下面壁5および側面壁6からなる。中空二重壁構造体2は平面視が方形状であり、その上面壁4の対角線が互いに交わる中央位置に、加速度センサ11を内蔵させる凹部12を形成してある。凹部12には複数の凸部13を形成してあって加速度センサ11を不動状態に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被運搬物や被搬送物を積載してフォークリフトにより運搬車両への積み変え作業をすることができるようにするためのパレットであって、被運搬物や被運搬物の物理的衝撃等によるストレスを数値で把握し、輸送中の破損事故を履歴によって分析可能とする加速度センサ内蔵パレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パレットは木製、金属製あるいは樹脂製など種々であるが、そのうち熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造の樹脂製パレットは、特開2003−170941号公報または実開平6−3834号公報に記載されているものが知られている。
また、測定対象物に対して加速度センサを取り付ける構成に関しては特開2010−127707号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−170941号公報
【特許文献2】実開平6−3834号公報
【特許文献3】特開2010−127707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1に記載されている樹脂製パレットは、上部形成部分と下部形成部分とを合わせて一体化したものであり、また、特許文献2に記載されている樹脂パレットも、パレットを成す2枚の中空成形体を対向させて互いに溶着一体化したものである。
【0005】
被運搬物や被搬送物をパレットに積載して運搬したり積み換える等の作業にあたっては、振動や衝撃等、被運搬物や被搬送物に対して種々の物理的ストレスを及ぼすおそれがあり、特に高価な物や精密機器のような被運搬物や被搬送物については作業中にかかる物理的ストレスを数値で把握し、破損事故等を履歴によって分析して適切に対処することが、近時強く要請されるに至っている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、被運搬物や被搬送物を積載するパレットに加速度センサを内蔵させる凹部を設けて、内蔵させる加速度センサをその周囲に隙間を設けて複数の凸部間に不動状態に保持するようにして、加速度センサにより作業中にかかる物理的ストレスを数値で把握し、加速度センサに記憶されたデータに基づいて破損事故等を履歴によって分析して適正に対処することができる加速度センサ内蔵パレットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の加速度センサ内蔵パレットは、加速度センサを内蔵したパレットであって、物品を載置するパレットは、上面壁、下面壁およびフォークリフトの爪を挿入可能な開口を有する側面壁からなり、前記上面または前記側面に対して開放された凹部を有し、前記凹部は内蔵させる加速度センサの外形寸法より開口幅が広くかつその開口幅を部分的に狭くする複数の凸部を形成してなり、前記凹部に内蔵させる加速度センサをその周囲に隙間を設けて複数の凸部間に不動状態に保持することを特徴とするものである。
【0008】
そして、本発明による加速度センサ内蔵パレットにあっては、パレットが、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造体で加速度センサを内蔵させる凹部を形成してあること、またパレットを構成する中空二重壁構造体が平面視が矩形であり、その上面壁の対角線が互いに交わる中央位置に、加速度センサを内蔵させる凹部を形成してあることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被運搬物や被搬送物を積載するパレットに加速度センサを内蔵させる凹部を設けて、内蔵させる加速度センサをその周囲に隙間を設けて複数の凸部間に不動状態に嵌合するようにして、加速度センサにより作業中にかかる物理的ストレスを数値で把握し、加速度センサに記憶されたデータに基づいて破損事故等を履歴によって分析して適正に対処することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る加速度センサ内蔵パレットの全体斜視図である。
【図2】同上全体平面図である。
【図3】同上加速度センサを取り外した態様を示す全体斜視図および部分拡大斜視図である。
【図4】同上要部拡大断面図である。
【図5】パレットに加速度センサ内蔵させる態様の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る加速度センサ内蔵パレット1は、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造体2からなるものである。この中空二重壁構造体2は平面視が方形状で、中空部3となる間隔をおいて対向する一方の壁である上面壁4と他方の壁である下面壁5およびその両壁の周端を一体につなぐ側面壁6を有している。前記側面壁6には、ブロー成形時において中空二重壁構造体2の一方の半体および他方の半体の互いの溶着面となるパーティングライン7が形成されるとともに、前記パーティングライン7に沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条8を形成してある。
側面壁6には、その各四面にフォークリフトの爪(フォーク)を挿入するためのフォーク挿入孔9が形成されている。周囲壁6のパーティングライン7は、ブロー成形時に型締めされた部分に形成されてバリ(図示せず)を生じるので、パーティングライン7に沿って互いの溶着面積を拡大するように外方に向けた凸条8はバリを所要の突出長さ分を残して切除することにより形成される。
中空二重壁構造体2には、上面壁4および下面壁5を一体につなぐリブ10を複数形成してある。このリブ10は上面壁4側および下面壁5側からそれぞれ中空部3の方向に突出させて互いに溶着一体化しているが、上面壁4側または下面壁5側からそれぞれ突出させて対向する壁と溶着一体化した態様とすることもできる。
【0012】
中空二重壁構造体2の上面壁4には、図2に示すように、上面壁4の対角線a,bが互いに交わる中央位置に、加速度センサ(Gセンサと略称することもある)11を内蔵させる凹部12が形成されており、凹部12はその中心位置と上面壁4の対角線a,bが互いに交わる中央位置とを一致させて設けてある。
凹部12は、内蔵させる加速度センサ11の外形寸法より開口幅が広くかつその開口幅を部分的に狭くする複数の凸部13を形成してある。このため、凹部12には加速度センサ11をその周囲に隙間14を設けて複数の凸部13間において当接させることにより不動状態にかつ、着脱自在に保持される。また、凹部12の開口側周囲には凹段部15が形成されており、この凹段部15には蓋板16がその四隅部をビス17止めして、加速度センサ11を内蔵させた凹部12を蓋板16で閉じるものとする。なお、蓋板16は加速度センサ11の内蔵状態の視認を可能とうえで透明ないしは半透明であることが望ましい。
凹部12に内蔵させた加速度センサ11は、中空二重壁構造体2の方形状と各辺が平行となるように中空二重壁構造体2の中央部に位置するので、加速度センサ11はパレットの横軸X、縦軸Yおよび垂直軸Zの三方向と加速度センサ11のX,Y,Zとを一致させて内蔵することができる。このため、パレットを介して受けることのある被運搬物や被搬送物の物理的ストレスをその方向とともに高い精度で検出することができる。なお、加速度センサ11に記憶されたデータは、パレットから加速度センサ11を取り外して検知装置により収集するものとする。
【0013】
図示した一実施の形態において、パレットを構成する中空二重壁構造体2の平均肉厚は2〜8mm、中空部3の高さは90〜200mm、パーティングライン7に沿って形成される凸条8の突出幅は1.0〜7.0mm、凸条8の厚さは1.0〜5.0mmである。凸条8はバリを所要の突出長さ分を残して切除したままの形状でもよいが、外観を考慮すれば突出方向にやや先細りの形状にしたり丸みを帯びた形状にするのが好ましい。
【0014】
本発明に係る加速度センサ内蔵パレット1を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタート樹脂、ポリブチレンテレフタート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂あるいはこれらのブレンド物など、剛性にすぐれたブロー成形可能な熱可塑性樹脂である。
【0015】
本発明に係る加速度センサ内蔵パレット1は、図示の一実施の形態のようにパレットを構成する中空二重壁構造体2の上面壁4に加速度センサ11を内蔵させるもののほか、中空二重壁構造体2の側面壁6に開口する凹部に内蔵させるものとすることができる。また、パレットは樹脂製のほか木製であることも可能である。パレットを構成する中空二重壁構造体2は方形状のほか矩形状であってもよい。
【符号の説明】
【0016】
1 加速度センサ内蔵パレット
2 中空二重壁構造体
3 中空部
4 上面壁
5 下面壁
6 側面壁
7 パーティングライン
8 凸条
9 フォーク挿入孔
10 リブ
11 加速度センサ
12 凹部
13 凸部
14 隙間
15 凹段部
16 蓋板
17 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサを内蔵したパレットであって、
物品を載置するパレットは、上面壁、下面壁およびフォークリフトの爪を挿入可能な開口を有する側面壁からなり、
前記上面または前記側面に対して開放された凹部を有し、
前記凹部は内蔵させる加速度センサの外形寸法より開口幅が広くかつその開口幅を部分的に狭くする複数の凸部を形成してなり、
前記凹部に内蔵させる加速度センサをその周囲に隙間を設けて複数の凸部間に不動状態に保持する
ことを特徴とする加速度センサ内蔵パレット。
【請求項2】
パレットは、熱可塑性樹脂をブロー成形して得られる中空二重壁構造体で加速度センサを内蔵させる凹部を形成してあることを特徴とする請求項1記載の加速度センサ内蔵パレット。
【請求項3】
パレットを構成する中空二重壁構造体は平面視が矩形であり、その上面壁の対角線が互いに交わる中央位置に、加速度センサを内蔵させる凹部を形成してあることを特徴とする請求項2記載の加速度センサ内蔵パレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−188154(P2012−188154A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54869(P2011−54869)
【出願日】平成23年3月12日(2011.3.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成22年9月14日〜17日 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 社団法人日本能率協会主催の「国際物流総合展 2010」に出品
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】