説明

加速粒子照射設備

【課題】所定の敷地に粒子加速器と照射装置とを効率良く設置することが可能である加速粒子照射設備を提供する。
【解決手段】複数階の階層構造からなる建屋6Dに設置された粒子線治療設備1Dにおいて、陽子ビームを生成するサイクロトロン2と、サイクロトロン2で生成された陽子ビームを照射すると共に、サイクロトロン2が設置された階層よりも上側の階層及び下側の階層の少なくとも一方に設置された複数の回転ガントリ7,8と、を備え、複数の回転ガントリ7,8は、水平方向にずれて設置されていると共に、それぞれサイクロトロン2が設置された階層とは異なる階層に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療用の回転ガントリなどの照射装置を備えた加速粒子照射設備に関する。
【背景技術】
【0002】
陽子ビームなどの加速粒子を患者に照射してがん治療を行う設備が知られている。この種の設備は、加速粒子を生成するサイクロトロン、患者に対して任意の方向から加速粒子を照射する回転自在の照射装置(回転ガントリ)及びサイクロトロンで生成された加速粒子を照射装置まで誘導する誘導ラインを備えている。回転ガントリには、患者が横たわる治療台と、患者に向けて加速粒子を照射する照射部と、誘導ラインによって誘導された加速粒子を照射部へ導入する導入ラインと、が設けられている。
【0003】
照射部は患者に対して回転自在な構成になっており、照射部への加速粒子の導入ラインの形態には種々の態様が知られている。例えば、特許文献1に記載の導入ライン(ビーム輸送機器7)は、まず、照射部(照射装置8)の回転中心となる回転軸線上に誘導ラインに連結される連結部を有し、さらに、回転軸線を通る平面上で略U字状に湾曲して照射部に連結されている。また、特許文献2に記載の導入ライン(delivery system 12)は、回転軸線上に誘導ラインに連結される連結部を有し、さらに、回転軸線の周方向側にねじれるように湾曲して照射部(nozzle32)に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−259058号公報
【特許文献2】米国特許第4917344号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の設備では、回転ガントリなどの照射装置とサイクロトロンとは同一のフロア(階層)に配置されるのが一般的であり、そのために施設の大型化を招来して広い敷地面積を要し、都市部などでの設置が困難だった。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、所定の敷地に粒子加速器と照射装置とを効率良く設置することが可能である加速粒子照射設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数階の階層構造からなる建物に設置された加速粒子照射設備において、加速粒子を生成する粒子加速器と、粒子加速器で生成された加速粒子を照射すると共に、粒子加速器が設置された階層よりも上側の階層及び下側の階層の少なくとも一方に設置された複数の照射装置と、を備え、複数の照射装置は、水平方向にずれて設置されていると共に、それぞれ粒子加速器が設置された階層とは異なる階層に設置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、粒子加速器と照射装置とを、建物の異なる階層にそれぞれ設置するので、敷地面積に応じて、例えば、粒子加速器の真上に照射装置を設置して敷地占有面積を極力減らすことも可能になり、その結果として、所定の敷地に粒子加速器と照射装置とを効率良く設置し易くなる。また、建物の高さを圧縮し易く、建物の高さがあまり高くとれない場合などに有効である。
【0009】
さらに、複数の前記照射装置は、それぞれ異なる階層に設置されていると共に、水平方向にずれて千鳥状に設置されていると好適である。この構成では、一の照射装置の真上に他の照射装置を設置するのではなく、水平方向にずらして設置できるようになるので、例えば、一の照射装置の最も背の高くなる部分を避けて他の照射装置を設置するような構成も可能になり、建物の高さを圧縮し易くなる。
【0010】
さらに、複数の照射装置は、同一の階層に設置されていてもよい。この構成によれば、建物の高さがあまり高くとれない場合などに有効である。
【0011】
さらに、複数の照射装置は、地上一階に設置されていると好適である。
【0012】
さらに、加速器で生成された加速粒子を照射装置まで誘導する誘導ラインを更に備え、誘導ラインは、加速器に連絡して水平方向に延在し、鉛直方向に向けて湾曲し、再び水平方向に向けて湾曲する取出経路と、取出経路から二方向に分岐して複数の照射装置のうち第1の照射装置及び第2の照射装置のそれぞれに連絡する第1の分岐経路及び第2の分岐経路とを有し、第1の分岐経路は、水平面上に配置されて前記第1の照射装置に接続されており、第2の分岐経路は、水平面上に配置されて第2の照射装置に接続されていると共に、取出経路から分岐して第1の分岐経路から分かれた分岐部と、第1の分岐経路よりも第2の照射装置から離れるように迂回して第1の分岐経路と交差する迂回交差部と、迂回交差部から第2の照射装置に接続される接続部とを有すると好適である。取出経路からの加速粒子を第2の照射装置に適切に導入する所定の軌道を形成するためには、第2の分岐経路としてある程度の距離(経路長)が必要である。第2の分岐経路の経路長を確保するために第1の照射装置と第2の照射装置とを離すのではなく、第2の分岐経路に迂回交差部を設けることで、第2の分岐経路の経路長を容易に確保でき、さらに、第2の分岐経路と第1の分岐経路とを交差させることでコンパクトにでき、従って、第1の照射装置と第2の照射装置との配置をできるだけ近づけることが可能になる。その結果として、第1の照射装置と第2の照射装置とを所定の敷地面積中に効率よく配置しやすくなる。
【0013】
また、複数の照射装置のうち、一部は、回転軸線周りに回転可能な回転部と、粒子加速器で生成された加速粒子を照射目標に向けて照射可能であると共に、回転部の回転に伴って照射向きが変化する照射部とを有する回転型照射装置であり、他部は、照射向きが固定された照射部を有する固定型照射装置であると好適である。回転型照射装置と固定型照射装置との使い分けが可能になり、患者に対する加速粒子の適切な照射に有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定の敷地に粒子加速器と照射装置とを効率良く設置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る粒子線治療設備の側断面図である。
【図2】ガントリ室を拡大して示す側断面図である。
【図3】本実施形態に係る回転ガントリを示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る回転ガントリを、回転軸線に沿って破断した状態を示す概略断面図である。
【図5】建屋の地上1階部分を示す粒子線治療設備の配置図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿って建屋を破断した状態を示す概略断面図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿って建屋を破断した状態を示す概略断面図である。
【図8】建屋の地下1階部分を示す粒子線治療設備の配置図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る粒子線治療設備の側断面図である。
【図10】第2実施形態に係る粒子線治療設備を回転ガントリの回転軸線に沿った方向から見た側断面図である。
【図11】第2実施形態に係る粒子線治療設備を回転ガントリの回転軸線に直交する方向から見た側断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る粒子線治療設備の側断面図である。
【図13】第3実施形態に係る粒子線治療設備を回転ガントリの回転軸線に沿った方向から見た側断面図である。
【図14】第3実施形態に係る粒子線治療設備を回転ガントリの回転軸線に直交する方向から見た側断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る粒子線治療設備の側断面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿って建物を破断した状態を示す断面図である。
【図17】本発明の第5実施形態に係る粒子線治療設備の側断面図である。
【図18】本発明の第6実施形態に係る粒子線治療設備の側断面図である。
【図19】図18のXIX−XIX線に沿って建物を破断した状態を示す断面図である。
【図20】図19のXX−XX線に沿って建物を破断した状態を示す断面図である。
【図21】第7実施形態に係る粒子線治療設備の側断面図である。
【図22】図21のXXII−XXII線に沿って建物を破断した状態を示す断面図である。
【図23】図22のXXIII−XXIII線に沿って建物を破断した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る加速粒子照射設備の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、加速粒子照射設備を粒子線治療設備とした場合について説明する。粒子線治療設備は、例えばがん治療に適用されるものであり、患者の体内の腫瘍(照射目標)に対して、陽子ビーム(加速粒子)を照射する装置である。
【0017】
図1に示されるように、粒子線治療設備1Aは、陽子ビームを生成するサイクロトロン(粒子加速器)2、患者に対して任意の方向から陽子ビームを照射する回転自在の回転ガントリ(照射装置)3、サイクロトロン2で生成された陽子ビームを回転ガントリ3まで誘導する誘導ライン4を備えている。また、粒子線治療設備1Aの各機器は、複数階の階層構造からなる建屋(建物)6Aの各部屋に設置されている。
【0018】
サイクロトロン2で生成された陽子ビームは、誘導ライン4によって形成された軌道を通り、回転ガントリ3まで誘導される。誘導ライン4には、陽子ビームを収束させるための四極電磁石41(図7参照)及び所定の軌道を形成するための偏向電磁石42が設けられている。
【0019】
サイクロトロン2は、内部でイオンを加速させる真空箱21、真空箱21内にイオンを供給するイオン源22を備えている。真空箱21は誘導ライン4に連絡している。
【0020】
図2〜図4に示されるように、回転ガントリ3は、患者が横たわる治療台31(図3参照)、治療台31を囲むように設けられた回転部30、回転部30の内側に配置され、治療台31上の患者に向けて陽子ビームを照射する照射部32、誘導ライン5によって誘導された陽子ビームを照射部32へ導入する導入ライン33を備えている。回転ガントリ3は、図示されていないモーターによって回転駆動され、図示されていないブレーキ装置によって回転が停止される。なお、以下の説明において、回転ガントリ3の正面とは、治療台31が設置されて患者の出入りが可能になるように回転部30が開放されている側の側面を意味し、背面とは、その裏側の側面を意味する。
【0021】
回転部30は、回転自在とされ、正面側から順に、第1円筒部34、コーン部35、第2円筒部36を備える。第1円筒部34、コーン部35、及び第2円筒部36は、同軸に配置され互いに固定されている。照射部32は、第1円筒部34の内面に配置され、第1円筒部34の軸心方向に向けられている。第1円筒部34の軸心(回転軸線)P近傍には、治療台31が配置される。第2円筒部36は、第1円筒部34より小径とされ、コーン部35は、第1円筒部34及び第2円筒部36を連結するように円錐状に形成されている。
【0022】
第1円筒部34の前端外周部には前リング39aが設置され、第1円筒部34の後端外周部には後リング39bが設置されている。第1円筒部34は、第1円筒部34の下方に配置されたローラ装置40(図2参照)によって、回転可能に支持されている。前リング39a及び後リング39bの外周面は、ローラ装置40と当接し、ローラ装置40によって回転力が付与される。
【0023】
導入ライン33は、回転ガントリ3の背面側で誘導ライン4に連結されている。導入ライン33は、45度の偏向電磁石を2セット備えると共に、135度の偏向電磁石を2セット備えている。導入ライン33は、誘導ライン4に連絡して径方向に延在する径方向導入ライン33aと、この径方向導入ライン33aの後段に連続し、周方向に延在する周方向導入ライン33bを有する。なお、導入ライン33には、陽子ビームの軌道に沿ってビーム輸送管(図示省略)が設けられている。
【0024】
径方向導入ライン33aは、第2円筒部36内の回転軸線P上で誘導ライン4に連絡する始端部から回転軸線Pに対して90度(45度×2回)湾曲して径方向に延在し、終端部が第1円筒部34の外部に張り出している経路部分である。また、周方向導入ライン33bは、径方向導入ライン33aの終端部に連絡する始端部から回転部30の周方向に135度湾曲して延在し、さらに、径方向の内側へ向けて135度湾曲して終端部が照射部32に連絡する経路部分である。
【0025】
周方向導入ライン33bは、第1円筒部34の外周面から外方に離間した位置で周方向に沿って配置されており、架台37によって支持されている。架台37は、第1円筒部34の外周面から径方向の外側に張り出すように形成されている。
【0026】
カウンタウェイト38は、回転軸線Pを挟んで周方向導入ライン33b及び架台37に対して対向配置されている。カウンタウェイト38は、第1円筒部34の外周面に固定され、径方向の外側に張り出すように設置されている。カウンタウェイト38を設置することで、導入ライン33及び架台37との間での重量バランスが確保されている。また、回転軸線Pからカウンタウェイト38の外縁までの長さは、回転軸線Pから導入ライン33の外縁までの長さより短いと建屋6Aを小型化することができる。
【0027】
また、本実施形態の回転ガントリ3は、回転軸線Pに沿った前後方向の長さLが、回転部30の最大外径(最大幅)よりも短い薄型に形成されている。前後方向の長さLとは、例えば、第1円筒部34の前端から、第2円筒部36の後端までの長さLである。回転部30の最大外径とは、回転軸線Pに直交する方向の最大外径であり、回転軸線Pから周方向導入ライン33bの外縁までの長さrに対応する部分(最大外径=半径r×2)である。なお、回転軸線Pからカウンタウェイト38の外縁までの長さに対応する部分が、最大外径となる構成でもよい。
【0028】
誘導ライン4(図1及び図7参照)は、陽子ビームが通過するビーム輸送管(図示省略)、陽子ビームを収束させて陽子ビームの形状を整える複数の四極電磁石41、陽子ビームの湾曲軌道を形成するために配置された複数の偏向電磁石42などを備えている。
【0029】
次に、図1及び図5〜図8を参照して、建屋6A及び建屋6A内での粒子線治療設備1Aの各機器の配置について説明する。建屋6Aは、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造の建築物であり、コンクリート製の放射線遮蔽壁によって、各部屋が区切られている。また、建屋6Aは、粒子線治療設備1Aの主要部を構成するサイクロトロン2、回転ガントリ3及び誘導ライン4が設置される主建物部(建物)61と、電源設備その他の設備が配置された各室や患者を受け入れるための部屋などが設けられた副建物部62と、を備えている。副建物部62は、地下三階及び地上一階の階層構造からなり、地下三階部分には冷却装置室R3が設けられ、地下二階部分には電源室R4などが設けられている。また、地下一階部分には、放射化物保管庫R5やスタッフ室R6などが設けられ、地上一階部分には、治療操作室R7、受付R8、ロッカー室R9、トイレR10、患者の待合室R11、ガントリ室R2へ入室するための通路R12などが設けられている。
【0030】
主建物部61は、地下一階及び地上一階の階層構造からなり、地下一階部分(最下層)に設けられたサイクロトロン室(加速器室)R1にはサイクロトロン2が設置されており、地上一階部分でサイクロトロン室R1の真上に設けられたガントリ室(照射装置室)R2には回転ガントリ3が設けられている。また、主建物部61には、サイクロトロン2と回転ガントリ3とを連絡する誘導ライン4が配置される連絡通路9が設けられている。
【0031】
サイクロトロン室R1は、平面視において略矩形状を成し、(放射線)遮蔽壁71(図8参照)によって囲まれている。サイクロトロン2は、サイクロトロン室R1の正面側(図8で示す上側)に配置され、サイクロトロン2で生成された陽子ビームは、サイクロトロン2の背面側から導出されている。また、サイクロトロン室R1の背面側には、上下方向に沿って形成された連絡通路9が連結されている。連絡通路9は、上下方向(鉛直方向)に沿って延在し、ガントリ室R2の背面側(図5で示す下側)に連絡している。
【0032】
誘導ライン4(図7参照)は、サイクロトロン2の真空箱21に連絡して水平方向に延在すると共に、鉛直上方に向けて略90度湾曲して連絡通路9内を通り、再び水平方向に向けて略90度湾曲して回転ガントリ3に連絡している。誘導ライン4の直線部分には、複数の四極電磁石41が配置されており、湾曲部分には45度の回転角度分だけ経路を変更させる偏向電磁石42が2セット配置されて、計略90度の湾曲を実現している。また、誘導ライン4は、二次元的、すなわち上下方向(鉛直方向)に沿って延在する仮想平面PL上に配置されている。その結果、誘導ライン4に案内される陽子ビームの収束及びカーブさせるための四極電磁石41及び偏向電磁石42の数を減らすことができる。
【0033】
ガントリ室R2は、サイクロトロン室R1の真上に設けられている。ガントリ室R2は、平面視において略矩形状に形成されており、放射線遮蔽壁81によって仕切られている。ガントリ室R2には、患者が出入りする入口床部87aと、入口床部87aよりも一段低くなっている低床部87cとが設けられている。回転ガントリ3は、治療台31を入口床部87a側に向けて低床部87cに設置されており、患者が治療台31まで到達しやすい構成になっている。また、ガントリ室R2の入口床部87a側の壁には、迷路構造の通路R12に連絡する出入口が形成されている。
【0034】
回転ガントリ3は、最大幅となる部分が、ガントリ室R2における回転ガントリ3の設置スペースの最大幅に沿うように配置されている。具体的には、回転ガントリ3は、略矩形状のガントリ室R2の対角線上に沿って配置されており、ガントリ室R2内のスペースを効率よく利用するための工夫が施されている。
【0035】
図1、図2,図6及び図7に示されるように、主建物部61の天井86には、回転ガントリ3の回転部30との干渉を避け、また部品を搬入する搬入口となる開口92が形成されている。この開口92は、天井86とは別素材のシールド部材93によって、ガントリ室R2(主建物部61)の外方から被覆されている。シールド部材93は、例えば、鉛製の遮蔽板93aを複数枚積層することで形成されている。なお、シールド部材93として、天井86と同じ素材であるコンクリート製の遮蔽板を積層してもよい。また、例えば、板状ではなく、ブロック体であるシールド部材としてもよい。
【0036】
また、シールド部材93は、別素材として重コンクリート製のものを適用してもよい。重コンクリート製のシールド部材93は、普通のコンクリート製のシールド部材93と比較して高価であるものの高い放射線遮蔽性を有するものである。例えば、重コンクリート製のシールド部材を使用した場合には、普通のコンクリート製のシールド部材を使用した場合と比較して、約2/3の厚さにすることができる。また、板状部品としてモジュール化されたシールド部材93を使用することで、施工を容易とすることができる。
【0037】
本実施形態に係る粒子線治療設備1Aでは、サイクロトロン2と回転ガントリ3とを、建屋6Aの異なる階層にそれぞれ設置しており、特にサイクロトロン2の真上に回転ガントリ3を設置しているので、敷地面積に応じて敷地占有面積を極力減らすことが可能になり、その結果として、所定の敷地にサイクロトロン2と回転ガントリ3とを効率良く設置し易くなる。
【0038】
なお、本実施形態では、地上一階部分に一台の回転ガントリ3を設置しているだけであるが、回転ガントリ3を増設する場合であっても、サイクロトロン2は建屋6Aの最下層に設置されているのでサイクロトロン2の移設は不要であり、既に回転ガントリ3が設置されている地上一階部分よりも上側に二階または三階を設け、このような上側の階層に回転ガントリ3を適宜に設置できるので回転ガントリ3の増設が容易である。なお、将来の増設も見越して、例えば、地下三階にサイクロトロン室R1を設け、地下二階にガントリ室R2を設ける一方で地下一階部分を空けておき、増設の際には、この地下一階部分に新たなガントリ室R2を設けて回転ガントリ3設置するようにすれば、重量物である回転ガントリ3の搬入及び設置作業の負担が低減される。
【0039】
また、本実施形態に係る照射装置は、回転軸線P周りに回転可能な回転部30と、サイクロトロン2で生成された陽子ビームを照射目標に向けて照射可能であると共に、回転部30の回転に伴って照射向きが変化する照射部32とを有する回転ガントリ3である。そして、回転ガントリ3は、回転軸線Pと直交する方向での最大外径(最大幅)よりも、回転軸線P方向の長さが短い薄型であるので、施設の小型化に有効であり、所定の敷地にサイクロトロン2と回転ガントリ3とを効率良く設置し易くなる。
(第2実施形態)
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係る粒子線治療設備(加速粒子照射設備)1Bについて、図9〜図11を参照して説明する。なお、本実施形態に係る粒子線治療設備1Bに関して、第1実施形態に係る粒子線治療設備1Aと同様の要素及び部材などについては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
本実施形態に係る建屋6Bは、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造の建築物であり、コンクリート製の放射線遮蔽壁によって、各部屋が区切られている。また、建屋6Bは、主建物部(建物)63と副建物部64とを備えている。副建物部64は、地下三階及び地上四階の階層構造からなり、各階には、冷却装置室R3、電源室R4、スタッフ室R6、放射化物保管室R5、治療操作室R7などが設けられている。
【0042】
主建物部63は、地下一階及び地上二階の階層構造からなり、地下一階部分(最下層)に設けられたサイクロトロン室(加速器室)R1にはサイクロトロン(粒子加速器)2が設置されており、地上一階部分でサイクロトロン室R1の真上に設けられた第1のガントリ室R13には第1の回転ガントリ7が設けられており、地上二階部分で第1のガントリ室R13の真上に設けられた第2のガントリ室R14には第2の回転ガントリ8が設けられている。また、主建物部63には、サイクロトロン2と第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8とを連絡する誘導ライン10が配置される連絡通路11が設けられている。なお、第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8は、第1の実施形態に係る回転ガントリ3と実質的に同様の構成からなるため、詳細説明は省略する。
【0043】
誘導ライン10は、サイクロトロン2の真空箱21に連絡して水平方向に延在すると共に、鉛直上方に向けて略90度湾曲して連絡通路11内を通る取出経路10aと、取出経路10aから分岐し、取出経路10aに対して水平方向に向けて略90度湾曲して第1の回転ガントリ7に連絡している第1の分岐経路10bと、取出経路10aから分岐し、取出経路10aに対して水平方向に向けて略90度湾曲して第2の回転ガントリ8に連絡している第2の分岐経路10cと、を備えている。
【0044】
誘導ライン10の直線部分には、複数の四極電磁石41が配置されており、湾曲部分には45度の回転角度分だけ経路を変更させる偏向電磁石42が2セット配置されて、計略90度の湾曲を実現している。また、誘導ライン10の取出経路10a、第1の分岐経路10b及び第2の分岐経路10cは、二次元的、すなわち上下方向(鉛直方向)に沿って延在する仮想平面PL(図10参照)上に配置されている。その結果、誘導ライン10に案内される陽子ビームの収束及びカーブさせるための四極電磁石41及び偏向電磁石42の数を減らすことができる。
【0045】
ここで陽子ビームの軌道の対称性は、二次元的に同一の仮想平面PL上であれば保持し易いが、三次元的にずれていれば保持するための調整が難しい。本実施形態に係る粒子線治療設備1Bでは、誘導ライン10の取出経路10aと複数の分岐経路10b,10cとが同一の仮想平面PL上であるため、陽子ビームの軌道の対称性を保持し易くなり、照射精度の向上に有効である。
【0046】
本実施形態に係る粒子線治療設備1Bによれば、第1の実施形態に係る粒子線治療設備1Aと同様に、所定の敷地にサイクロトロン2と第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8とを効率良く設置し易くなる。また、サイクロトロン2は、建屋6Bの最下層に設置されているので、回転ガントリ7,8の増設が容易である。
【0047】
さらに、粒子線治療設備1Bは複数の回転ガントリ7,8を備え、複数の回転ガントリ7,8は、主建物部63の異なる階層にそれぞれ設置されている。従って、敷地面積に応じて、上下方向に並ぶように複数の回転ガントリ7,8を設置することが可能になるので、所定の敷地に複数の回転ガントリ7,8を効率良く設置し易くなる。
(第3実施形態)
【0048】
次に、本発明の第3実施形態に係る粒子線治療設備(加速粒子照射設備)1Cについて、図12〜図14を参照して説明する。なお、本実施形態に係る粒子線治療設備1Cに関して、第1実施形態に係る粒子線治療設備1Aまたは第2実施形態に係る粒子線治療設備1Bと同様の要素及び部材などについては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る建屋6Cは、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造の建築物であり、コンクリート製の放射線遮蔽壁によって、各部屋が区切られている。また、建屋6Cは、主建物部65と副建物部64とを備えている。
【0050】
主建物部65は、地下一階及び地上二階の階層構造からなり、地下一階部分(最下層)に設けられたサイクロトロン室(加速器室)R1にはサイクロトロン(粒子加速器)2が設置されており、地上一階部分でサイクロトロン室R1の真上に設けられたガントリ室R15には回転ガントリ3が設けられており、地上二階部分でガントリ室R15の真上に設けられた固定照射室R16には、固定型照射装置12が設けられている。また、主建物部65には、サイクロトロン2と回転ガントリ3及び固定型照射装置12とを連絡する誘導ライン10が配置される連絡通路11が設けられている。
【0051】
固定型照射装置12は、患者が座る治療台12b、治療台12b上の患者に向けて陽子ビームを照射する照射部12a、誘導ライン10によって誘導された陽子ビームを照射部12aへ導入する導入ライン12cを備えている。固定型照射装置12は、上述の回転ガントリ3とは異なり、回転部30を備えていない。照射部12aは、所定位置に固定されており、患者の特定部位への陽子ビームの照射は、治療台12bの上下動または回転によって調整される。固定型照射装置12は、前立腺や眼球の疾患治療に用いられる。
【0052】
本実施形態に係る粒子線治療設備1Cでは、サイクロトロン2と回転ガントリ3及び固定型照射装置12とを、建屋6Cの異なる階層にそれぞれ設置しており、特にサイクロトロン2の真上または上方に回転ガントリ3または固定型照射装置12を設置しているので、敷地面積に応じて敷地占有面積を極力減らすことが可能になり、その結果として、所定の敷地にサイクロトロン2と回転ガントリ3及び固定型照射装置12とを効率良く設置し易くなる。また、サイクロトロン2は、建屋6Cの最下層に設置されているので、回転ガントリ3の増設が容易である。
【0053】
また、誘導ライン10の取出経路10a、第1の分岐経路10b及び第2の分岐経路10cは、二次元的、すなわち上下方向(鉛直方向)に沿って延在する仮想平面PL上に配置されている。その結果、誘導ライン10に案内される陽子ビームの収束及びカーブさせるための四極電磁石41及び偏向電磁石42の数を減らすことができる。さらに、取出経路10aと複数の分岐経路10b,10cとが同一の仮想平面PL上であるため、陽子ビームの軌道の対称性を保持し易くなり、照射精度の向上に有効である。
【0054】
さらに、粒子線治療設備1Cは二種類の照射装置、すなわち回転ガントリ3と固定型照射装置12とを備え、回転ガントリ3と固定型照射装置12とは、主建物部65の異なる階層にそれぞれ設置されている。従って、敷地面積に応じて、上下方向に並ぶように回転ガントリ3と固定型照射装置12とを設置することが可能になるので、所定の敷地に種類の異なる回転ガントリ3と固定型照射装置12とを効率良く設置し易くなる。
【0055】
さらに、粒子線治療設備1Cでは、回転型照射装置である回転ガントリ3と、照射向きが固定された照射部10aを有する固定型照射装置12とを有するので、回転ガントリ3と固定型照射装置12との使い分けが可能になり、患者に対する陽子ビームの適切な照射に有効である。
(第4実施形態)
【0056】
次に、本発明の第4実施形態に係る粒子線治療設備(加速粒子照射設備)1Dについて、図15及び図16を参照して説明する。なお、本実施形態に係る粒子線治療設備1Dに関して、第1〜第3実施形態に係る粒子線治療設備1A〜1Cと同様の要素及び部材などについては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施形態に係る建屋6Dは、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造の建築物であり、コンクリート製の放射線遮蔽壁によって、各部屋が区切られている。また、建屋6Dの主構造としては、地下一階及び地上二階の階層構造からなり、地下一階部分(最下層)に設けられたサイクロトロン室(加速器室)R1にはサイクロトロン(粒子加速器)2が設置されている。また、地上一階部分でサイクロトロン室R1の真上には第1のガントリ室R17が設けられており、第1のガントリ室R17には第1の回転ガントリ7が設置されている。また、地上二階部分で、第1のガントリ室R17の真上に対して水平方向にずれた位置には、第2のガントリ室R18が設けられており、第2のガントリ室R18には第2の回転ガントリ8が設けられている。
【0058】
また、建屋6Dには、サイクロトロン2と第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8とを連絡する誘導ライン13が配置される連絡通路14が設けられている。連絡通路(図16参照)14は建屋6Dの略中央に設けられている。誘導ライン13は、サイクロトロン2の真空箱21に連絡して水平方向に延在すると共に、鉛直上方に向けて略90度湾曲して連絡通路14内を通る取出経路13aと、取出経路13aから分岐し、取出経路13aに対して水平方向に向けて略90度湾曲して第1の回転ガントリ7に連絡している第1の分岐経路13bと、取出経路13aから分岐し、取出経路13aに対して水平方向に向けて略90度湾曲して第2の回転ガントリ8に連絡している第2の分岐経路13cと、を備えている。本実施形態に係る粒子線治療設備1Dでは、第1の回転ガントリ7の回転軸線Pを通る仮想の鉛直平面Paと第2の回転ガントリの回転軸線Pを通る仮想の鉛直平面Pbとが同一の平面とはなっておらず、そのために、第1の分岐経路13bと第2の分岐経路13cとは同一の仮想平面上には配置されていない。
【0059】
粒子線治療設備1Dでは、サイクロトロン2と第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8とを、建屋6Dの異なる階層にそれぞれ設置しており、敷地面積に応じて敷地占有面積を極力減らすことが可能になり、その結果として、所定の敷地にサイクロトロン2と回転ガントリ7,8とを効率良く設置し易くなる。また、サイクロトロン2は、建屋6Dの最下層に設置されているので、回転ガントリ7,8の増設が容易である。
【0060】
さらに、粒子線治療設備1Dでは、第1の回転ガントリ7と第2の回転ガントリ8とは、水平方向にずれて千鳥状に設置されているので、第1の回転ガントリ7の最も背の高くなる部分を避けて第2の回転ガントリ8を設置することができ、建屋6Dの高さを圧縮し易くなる。
【0061】
なお、粒子線治療設備1Dでは、サイクロトロン2の真上に第1の回転ガントリ7を配置しているが、第1の回転ガントリ7をサイクロトロン2の真上から水平方向にずらして配置し、第2の回転ガントリ8をサイクロトロン2の鉛直上方に配置するような千鳥状の配置でもよい。また、サイクロトロン2の中心を通る鉛直線を基準にして両方の回転ガントリ7,8が左右交互にずれたような千鳥状の配置でもよい。
(第5実施形態)
【0062】
次に、本発明の第5実施形態に係る粒子線治療設備(加速粒子照射設備)1Eについて、図17を参照して説明する。なお、本実施形態に係る粒子線治療設備1Eに関して、第1〜4実施形態に係る粒子線治療設備1A〜1Dと同様の要素及び部材などについては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
本実施形態に係る建屋6Eは、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造の建築物であり、コンクリート製の放射線遮蔽壁によって、各部屋が区切られている。また、建屋6Eは、地下一階及び地上二階の階層構造からなる。本実施形態に係る粒子線治療設備1Eでは、上述の各実施形態に比べて、第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8とサイクロトロン2との上下の配置が逆になっており、建屋6Eの地上二階部分(最上層)には、サイクロトロン(粒子加速器)2が設置されるサイクロトロン室(加速器室)R19が設けられており、地上一階部分には、第1の回転ガントリ7が設置される第1のガントリ室R20が設けられており、地下一階部分(最下層)には、第2の回転ガントリ8が設置される第2のガントリ室R21が設けられている。
【0064】
本実施形態に係る粒子線治療設備1Eでは、サイクロトロン2と第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8とを、建屋6Eの異なる階層にそれぞれ設置しており、敷地面積に応じて敷地占有面積を極力減らすことが可能になり、その結果として、所定の敷地にサイクロトロン2と第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8とを効率良く設置し易くなる。
(第6実施形態)
【0065】
次に、本発明の第6実施形態に係る粒子線治療設備(加速粒子照射設備)1Fについて、図18〜図20を参照して説明する。なお、本実施形態に係る粒子線治療設備1Fに関して、第1〜第5実施形態に係る粒子線治療設備1A〜1Eと同様の要素及び部材などについては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
本実施形態に係る建屋6Fは、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造の建築物であり、コンクリート製の放射線遮蔽壁によって、各部屋が区切られている。また、建屋6Fは、主建物部66と副建物部67とを備えている。副建物部67は、地下三階及び地上一階の階層構造からなり、各階には、冷却装置室R3、電源室R4、スタッフ室R5、放射化物保管室R6、治療操作室R7などが設けられている。
【0067】
主建物部66は、地下一階及び地上一階の階層構造からなり、地下一階部分(最下層)に設けられたサイクロトロン室(加速器室)R22にはサイクロトロン(粒子加速器)2が設置されている。地上一階部分には、第1のガントリ室R23と第2のガントリ室R24とが並んで設けられており、第1のガントリ室R23には第1の回転ガントリ7が設けられ、第2のガントリ室R24には第2の回転ガントリ8が設けられている。
【0068】
第1のガントリ室R23と第2のガントリ室R24とは、放射線遮蔽壁71を挟んで隣接している。第1のガントリ室R23は、略矩形状に形成されており、正面側には迷路構造からなる通路R12が形成されており、受付や患者の待合室などが設けられたスペースに連絡している。第1の回転ガントリ7は、正面が通路側を向いて略矩形状の第1のガントリ室R23の対角線に沿って配置されている。第2のガントリ室R24及び第2の回転ガントリ8は、放射線遮蔽壁71を挟んで第1のガントリ室R23及び第1の回転ガントリ7に対称な構造になっている。
【0069】
第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8の背面側には、陽子ビームの軌道を形成する誘導ライン16が通る連絡通路17が形成されている。誘導ライン16は、サイクロトロン2の真空箱21に連絡して水平方向に延在すると共に、鉛直上方に向けて略90度湾曲して連絡通路17内を通り、地上一階部分で水平方向に向けて略90度湾曲する取出経路16aと、取出経路16aから二方向に分岐して第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8のそれぞれに連絡している第1の分岐経路16bと第2の分岐経路16cと、を備えている。
【0070】
第1の分岐経路16bは、水平面上に配置されて第1の回転ガントリ7に接続されており、複数の四極電磁石41及び偏向電磁石42の配置によって、陽子ビームの収束及び所定の湾曲軌道の形成が図られている。第2の分岐経路16cは、第1の分岐経路16bと同一水平面上に配置されて第2の回転ガントリ8に接続されている。
【0071】
第2の分岐経路16cは、取出経路16aから分岐して第1の分岐経路16bから分かれた分岐部16dと、第1の分岐経路16bよりも第2の回転ガントリ8から離れるように迂回して第1の分岐経路16bと交差する迂回交差部16eと、迂回交差部16eから第2の回転ガントリ8に接続される接続部16fと、を有する。
【0072】
取出経路16aからの陽子ビームを第2の回転ガントリ8に適切に導入する所定の軌道を形成するためには、第2の分岐経路16cとして或る程度の距離(経路長)が必要である。本実施形態に係る粒子線治療設備1では、第2の分岐経路16cの経路長を確保するために第1の回転ガントリ7と第2の回転ガントリ8とを離すのではなく、第2の分岐経路16cに迂回交差部16eを設けることで、第2の分岐経路16cの経路長を容易に確保でき、さらに、第2の分岐経路16cと第1の分岐経路16bとを交差させることでコンパクトにでき、従って、第1の回転ガントリ7と第2の回転ガントリ8との配置をできるだけ近づけることが可能になる。その結果として、第1の回転ガントリ7と第2の回転ガントリ8とを所定の敷地面積中に効率よく配置し易くなる。
【0073】
本実施形態に係る粒子線治療設備1Fでは、サイクロトロン2と第1の回転ガントリ7及び第2の回転ガントリ8とを、建屋6Fの異なる階層にそれぞれ設置しており、敷地面積に応じて敷地占有面積を極力減らすことが可能になり、その結果として、所定の敷地にサイクロトロン2と回転ガントリ7,8とを効率良く設置し易くなる。さらに、サイクロトロン2は、建屋6Fの最下層に設置されているので回転ガントリ7,8などの照射装置の増設が容易である。
【0074】
また、本実施形態では、複数の回転ガントリ7,8は同一の階層、すなわち地上一階部分に設置されているため、建屋6Fの高さがあまり高くとれない場合などに有効である。
【0075】
さらに、誘導ライン16の第2の分岐経路16cは、第1の分岐経路16bよりも第2の回転ガントリ8から離れるように迂回して第1の分岐経路16bと交差する迂回交差部16eを有するので、第2の分岐経路16cの経路長を長くとりながら、第1の回転ガントリ7に隣接する第2の回転ガントリ8に容易に接続可能な構成を実現し易い。
【0076】
なお、上述の誘導ライン16の第1の分岐経路16b及び第2の分岐経路16cの構成を採用することで、サイクロトロン(粒子加速器)と複数の照射装置とを、建屋の同一の階層に全て設置する態様であっても、所定の敷地にサイクロトロン及び複数の照射装置を効率良く設置することができる。例えば、サイクロトロン2の真空箱21に接続する取出経路16aから分岐する第1の分岐経路16b及び第2の分岐経路16cを同一の階層に配置し、そして、第1の分岐経路16bは第1の回転ガントリ7に接続し、第2の分岐経路16cは第2の回転ガントリ8に接続する構成とする。この場合、第2の分岐経路16cは迂回交差部16eを有するので、第2の分岐経路16cの経路長を確保し易くなり、さらに、第2の分岐経路16cと第1の分岐経路16bとは交差するのでコンパクト化を容易に実現できる。
(第7実施形態)
【0077】
次に、本発明の第7実施形態に係る粒子線治療設備(加速粒子照射設備)1Gについて、図21〜図23を参照して説明する。なお、本実施形態に係る粒子線治療設備1Gに関して、第1〜第6実施形態に係る粒子線治療設備1A〜1Fと同様の要素及び部材などについては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0078】
本実施形態に係る建屋6Gは、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造の建築物であり、コンクリート製の放射線遮蔽壁によって、各部屋が区切られている。また、建屋6Gは、主建物部68と副建物部69とを備えている。副建物部69は、地下三階及び地上一階の階層構造からなり、各階には、冷却装置室R3、電源室R4、スタッフ室R5、放射化物保管室R6、治療操作室R7などが設けられている。
【0079】
主建物部68は、地下一階及び地上一階の階層構造からなり、地下一階部分(最下層)に設けられたサイクロトロン室(加速器室)R25にはサイクロトロン(粒子加速器)2が設置されている。地上一階部分には、ガントリ室R26と固定照射室R27とが並んで設けられており、ガントリ室R26には回転ガントリ3が設けられ、固定照射室R27には固定型照射装置12が設けられている。
【0080】
ガントリ室R26と固定照射室R27とは、放射線遮蔽壁72を挟んで隣接している。また、ガントリ室R26及び固定照射室R27に隣接して誘導ライン18が通る連絡通路19が形成されている。誘導ライン18は、サイクロトロン2の真空箱21に連絡して水平方向に延在すると共に、鉛直上方に向けて略90度湾曲して連絡通路19内を通り、地上一階部分で水平方向に向けて略90度湾曲する取出経路18aと、取出経路から二方向に分岐して回転ガントリ3及び固定型照射装置12のそれぞれに連絡している第1の分岐経路18bと第2の分岐経路18cと、を備えている。
【0081】
本実施形態に係る粒子線治療設備では、サイクロトロンと回転ガントリ及び固定型照射装置とを、建屋の異なる階層にそれぞれ設置しており、敷地面積に応じて敷地占有面積を極力減らすことが可能になり、その結果として、所定の敷地にサイクロトロンと回転ガントリ及び固定型照射装置とを効率良く設置し易くなる。さらに、サイクロトロンは、建屋の最下層に設置されているので回転ガントリなどの照射装置の増設が容易である。また、本実施形態では、回転ガントリと固定型照射装置との使い分けが可能になり、患者に対する陽子ビームの適切な照射に有効である。
【0082】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、複数の照射装置として複数の回転ガントリを設置した態様、回転ガントリと固定型照射装置とを設置した態様を説明したが、複数の固定型照射装置を備えた態様であっても良い。また、粒子加速器はサイクロトロンに限定されず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロンでも良い。また、粒子線(加速粒子)は陽子ビームに限定されず、炭素ビーム(重粒子ビーム)などでも良い。
【符号の説明】
【0083】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G…粒子線治療設備(加速粒子照射設備)、2…サイクロトロン(粒子加速器)、3,7,8…回転ガントリ(回転型照射装置)、4,10,13,16,18…誘導ライン、6A,6B,6C,6D,6E,6F,6G…建屋、10a…取出経路、10b,13b,16b,18b…第1の分岐経路、10c,13c,16c,18c…第2の分岐経路、12…固定型照射装置、12a…固定型照射装置の照射部、30…回転部、32…回転ガントリの照射部、P…回転軸線、PL…仮想平面、r×2…回転ガントリの最大幅、L…回転ガントリの回転軸線方向の長さ。


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階の階層構造からなる建物に設置された加速粒子照射設備において、
加速粒子を生成する粒子加速器と、
前記粒子加速器で生成された加速粒子を照射すると共に、前記粒子加速器が設置された階層よりも上側の階層及び下側の階層の少なくとも一方に設置された複数の照射装置と、を備え、
複数の前記照射装置は、水平方向にずれて設置されていると共に、それぞれ前記粒子加速器が設置された階層とは異なる階層に設置されていることを特徴とする加速粒子照射設備。
【請求項2】
複数の前記照射装置は、それぞれ異なる階層に設置されていると共に、水平方向にずれて千鳥状に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の加速粒子照射設備。
【請求項3】
複数の前記照射装置は、同一の階層に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の加速粒子照射設備。
【請求項4】
複数の前記照射装置は、地上一階に設置されていることを特徴とする請求項3に記載の加速粒子照射設備。
【請求項5】
前記加速器で生成された加速粒子を前記照射装置まで誘導する誘導ラインを更に備え、
誘導ラインは、前記加速器に連絡して水平方向に延在し、鉛直方向に向けて湾曲し、再び水平方向に向けて湾曲する取出経路と、前記取出経路から二方向に分岐して複数の前記照射装置のうち第1の照射装置及び第2の照射装置のそれぞれに連絡する第1の分岐経路及び第2の分岐経路とを有し、
前記第1の分岐経路は、水平面上に配置されて前記第1の照射装置に接続されており、
前記第2の分岐経路は、
水平面上に配置されて前記第2の照射装置に接続されていると共に、
前記取出経路から分岐して前記第1の分岐経路から分かれた分岐部と、前記第1の分岐経路よりも前記第2の照射装置から離れるように迂回して前記第1の分岐経路と交差する迂回交差部と、前記迂回交差部から前記第2の照射装置に接続される接続部とを有する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の加速粒子照射設備。
【請求項6】
複数の前記照射装置のうち、一部は、回転軸線周りに回転可能な回転部と、前記粒子加速器で生成された加速粒子を照射目標に向けて照射可能であると共に、前記回転部の回転に伴って照射向きが変化する照射部とを有する回転型照射装置であり、他部は、照射向きが固定された照射部を有する固定型照射装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加速粒子照射装置。

































【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−120861(P2012−120861A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30254(P2012−30254)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2010−52126(P2010−52126)の分割
【原出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】