説明

加飾シートおよび加飾シートと一体化した成形品

【課題】 着色部分のパターンによらず、成形樹脂との接着性が良好な加飾シートを提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂からなる基材シートに印刷によって着色層を形成した加飾シートにおいて、基材シートの全面もしくは基材シートの少なくとも着色層が形成されていない領域に、着色層形成用インキとワニス組成が共通の透明インキからなる透明層が形成され、着色層が形成された側の最外層には接着層が形成された加飾シートおよびそれによって成形樹脂と一体化した成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂の表面にあらかじめ印刷した印刷材と成形時に一体化する加飾シート、および加飾シートの製造に使用するインキ、および加飾シートと一体化した射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂成形品の表面を装飾する方法として、あらかじめインキによって印刷した合成樹脂シートあるいはフィルム等の印刷材(以下、加飾シートとも称す)を成形金型内に装着して、金型内に合成樹脂を射出して加飾シートを合成樹脂と一体化する合成樹脂の成形方法(以下、フィルムインサート成形法とも称す)が知られている。
【0003】
この方法は、成形物の表面に印刷によって直接、着色あるいは図柄等を形成することが困難な形状の成形物であっても加飾を施すことができるという特徴を有している。さらに、加飾シートに形成した印刷層を合成樹脂成形品と加飾シートの基材のシートもしくはフィルムとの間に保持して相互に密着させることができるので成形物の表面への印刷方法に比べて、耐擦傷性に優れるとともに、経年変化を生じにくいという利点も有しており、携帯電話、パソコン等の小型の電子機器のみではなく各種の電気製品、自動車部品等をはじめとした各種の機器の表面への装飾に利用されている。
【0004】
従来、フィルムインサート成形法においては、印刷によって着色層を形成する場合には、加飾層を形成するシート、着色層形成用インキ、および成形用に充填する合成樹脂との相互の接着性を高めるために、各種の提案が行われている。
例えば、熱可塑性樹脂シート上に印刷によって着色層を形成した後に、2層以上のアンカー層を設け、特定の組成の接着層を設けてポリプロピレン樹脂との接着性を高めることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、フィルムインサート成形法によって製造される成形品には多様な製品があり、凹凸形状のもの、加飾層が連続していないもの等もある。
このような成形品では、単に加飾シートの基材と着色層との接着性、あるいは着色層と成形用の樹脂との接着性を考慮したのみでは充分では無いことがあった。 例えば、成形用樹脂の色と加飾層の両者で意匠性を高めた加飾フィルムの場合には、着色層が形成されていない領域が数多く存在し、着色層が存在しない部分では加飾フィルムと成形用樹脂との接着性が不充分となり、形状によっては浮き上がる等の問題を生じることがあった。
【特許文献1】特開2003−285404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、加飾シートに形成される印刷像の形状、あるいは成形品の形状等にかかわらず加飾シートと成形用樹脂との接着強度が大きく、剥離等が生じず、また耐候性も良好な加飾シート、および加飾シートを使用した成形品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、熱可塑性樹脂からなる基材シートに印刷によって着色層を形成した加飾シートにおいて、基材シートの全面もしくは基材シートの少なくとも着色層が形成されていない領域に、着色層形成用インキとワニス組成が共通の透明インキからなる透明層が形成され、基材シートの着色層が形成された側の最外層には接着層が形成された加飾シートによって解決することができる。
また、透明層が基材シート面にベタ状に形成された後に、着色層が形成されたものである前記の加飾シートである。
透明層は、基材シートに着色層が形成された後に、少なくとも着色層が存在しない部分に形成されたものである前記の加飾シートである。
基材シートが、ポリカーボネートである前記の加飾シートである。
基材シートが、着色層との易接着性処理もしくは易接着層の形成を行った熱可塑性樹脂からなる前記の加飾シートである。
【0008】
また、加飾シートをフィルムインサートモールディングによって合成樹脂と一体化した成形品において、熱可塑性樹脂からなる基材シートの全面もしくは基材シートの少なくとも着色層が形成されていない領域に、着色層形成用インキとワニス組成が共通の透明インキからなる透明層が形成され、着色層が形成された側の最外層には接着層を形成した加飾シートが、接着層を介して合成樹脂と一体化したものである成形品である。
また、加飾シートは、透明層が基材シート面にベタ状に形成された後に、着色層が形成されたものである前記の成形品である。
加飾シートは、透明層が基材シートに着色層が形成された後に、少なくとも着色層が存在しない部分に形成されたものである前記の成形品である。
基材シートが、ポリカーボネートであり、一体化される合成樹脂がポリプロピレンまたはポリアミドの少なくともいずれか1種を含む前記の成形品である。
基材シートが、易接着層が形成されたポリプロピレンであり、一体化される合成樹脂がポリプロピレンまたはポリアミドの少なくともいずれか1種を含む前記の成形品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加飾シートは、基材シートに着色層が形成されていない部分に、着色層の形成に使用された着色インキとワニス成分が共通である透明インキ層が形成されているので、着色層の形成部であるか否にかかわらず、表面は接着性に対して一様な接着性を有している。したがって、本発明の加飾シートによって、着色層の面積、図柄、あるいは加飾シート表面の形状等に依存せずに、合成樹脂と一体化した成形品との接着性が良好な成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、印刷によって加飾層を形成した加飾シートを使用してフィルムインサート成形によって形成した成形品において、着色層の形成に使用するインキとして、基材シートおよび接着層と接着性が良好な特性を有するものを用いた場合にも、基材シートと接着層との接着性が影響を及ぼし、加飾シートと一体化される合成樹脂との剥離強度が、加飾層に形成された印刷パターン形状、大きさ等によって影響を受け、特に印刷インキによって着色層が形成されていない部分は成形品との剥離強度が不十分なものとなる点に着目したものである。
【0011】
そして、このような問題を着色層が形成されていない部分には、着色層の印刷に使用したインキとワニス成分が共通の透明インキによって透明層を形成することによって加飾シートと合成樹脂との剥離強度を高めることが可能であることを見いだしたものである。
【0012】
加飾シート上に画像を印刷によって形成する印刷インキは、加飾シートの基材として一般に使用されているポリカーボネート、表面処理ポリエステルシート等との接着性が良好なワニスと色材を配合して製造されており、例えば、ポリエステルポリオール系の樹脂から製造したワニスに所定の色材を配合して製造されている。
【0013】
フィルムインサート成形においては、印刷によって着色層を形成した後には、そのまま、あるいは更に接着層を形成した後に、加飾シートを金型に装着してポリカーボネート等の合成樹脂を射出して成形体が製造されている。
【0014】
着色層を形成する印刷インキは、基材シートとの接着性を考慮してワニスが選択されている。また、成形樹脂と着色層との接着性考慮して、着色層と合成樹脂との接着性を高めるために、着色層上に配置される接着層としては両者との接着性が良好なものが選択されている。
【0015】
しかしながら、基材シート、着色層用インキ、接着層、および成形に使用する合成樹脂のそれぞれの材料の選択においては、基材シートと成形に使用する合成樹脂との接着性、あるいは基材シートと接着層との接着性に関しては十分に考慮されることはなかった。
このため、基材シートの全面に加飾層が形成されていない場合には、加飾シートと成形に使用する合成樹脂との接着性が不充分なものとなり、充分な剥離強度を有する成形品が得られないことがあった。
【0016】
本発明においては、加飾シートと成形した合成樹脂との接着性を高めるために、基材シートに印刷によって着色層を形成する前に着色層を形成する印刷インキとワニス成分が共通の透明インキによって透明インキ層を形成するか、あるいは着色層を印刷インキによって形成した後に、着色層が形成されていない部分あるいは、着色層を形成した側の全面に透明インキによって透明層を印刷することができる。
【0017】
また、着色層と透明層の形成の順序は、透明層を先に作製した後に着色層を形成したもの、あるいは着色層を形成した後に透明層を形成したもののいずれであっても良い。基材シート上に着色層が形成されていない領域が存在している場合でも、基材シートの着色層と着色層が形成されていない部分の両者と成形用合成樹脂との剥離強度を基材シート上に着色層が形成されていない領域が存在している場合でも、基材シートの着色層が形成されている領域と、着色層が形成されていない部分の両者と接着層との接着性、および接着層と成形用合成樹脂との剥離強度の両者を高めることができる。
また、本発明において、「全面に形成」は、印刷において基材の周囲に不可避的に生じる印刷しろや、成形品には不要な周囲の部分を除いた部分のすべてに形成することを意味する。
【0018】
また、本発明において、ワニス成分が共通であるとは、両者のワニス成分を構成する樹脂および溶剤が同種、もしくは同一の特性を有するものであって、相互に大きな親和性を有することを意味しており、両者のワニスの構成成分の種類、含有量において完全に一致していることを意味するものではなく、配合比等が多少異なっていたり、あるいは色材以外の成分においても相違点を有している場合であっても両者が高度の親和性を有していることを意味している。
【0019】
すなわち、色材を混合した着色層の形成用の印刷インキにあっては、透明インキに比べて色材のみではなく、より多くの成分が混合されることがあるが、そのような場合も、ワニス成分を構成する樹脂成分および溶剤として共通の成分を含有している場合には、ワニス成分が共通であると称する。
【0020】
本発明の加飾シートおよび加飾シートを一体化した成形体を図面を参照して説明する。
図1は、第1の加飾シートおよび加飾シートと一体化した第1の成形体を説明する図であり、断面図である。
第1の加飾シートは、図1(A)で示すように基材シート1上に、スクリーン印刷等の方法によって着色層2を形成した後に、図1(B)で示すように基材シート1上の着色層2が形成されていない部分に、着色層2を形成したインキとワニス成分が共通な透明インキ層3を形成し、更に図1(C)で示すように着色層2及び透明インキ層3上に接着層4を形成して、第1の加飾シート51を作製することができる。
そして、図1(D)で示すように第1の加飾シート51と成形用合成樹脂6を射出成形によって一体化した第1の成形体71を作製することができる。
【0021】
第1の加飾シートは、成形用合成樹脂と接触する面の全面が接着層と接しており、更に接着層の全面は、着色層、または着色層を構成するインキとワニス成分が共通である透明インキ層と接しているために、着色層が形成された部分、着色層が形成されていない部分のいずれの部分も、基材シートおよび接着層との間で良好な接着力を得ることができる。
したがって、第1の加飾シートをインサート成形等によって樹脂と一体化して成形体を作製した場合には、加飾シートの接着性が良好な成形体を得ることが可能となる。
【0022】
図2は、第2の加飾シート及び加飾シートと一体化した第2の成形体を説明する図であり、断面図である。
第2の加飾シートは、図2(A)で示すように基材シート1上に、スクリーン印刷等の方法によって、着色層の形成用インキとワニス成分が共通なベタ状の透明インキ層3を形成した後に、図2(B)で示すように、透明インキ層3上に所定のパターンで着色層2を形成したものである。
次いで、図2(C)に示すように、透明インキ層および着色層の全面に接着層4を形成して第2の加飾シート52としたものである。
そして、図2(D)で示すように、第2の加飾シート52と成形用合成樹脂6を射出成形によって一体化した第2の成形体72を作製することができる。
【0023】
第2の加飾シートは、基材シートの加飾層を形成する面にあらかじめ透明インキ層をベタ状に形成した後に、着色層を形成したものである。したがって、基材シートは、着色層の形成部位の有無にかかわらず着色層を構成するワニス成分を含有した透明インキ層と接触しているので、その後に形成する接着層との間で良好な接着性を有する加飾シートが得られる。
その結果、第2の加飾シートをインサート成形等によって樹脂と一体化して成形体を作製した場合には、加飾シートの接着性が良好な成形体を得ることが可能となる。
【0024】
図3は、第3の加飾シート及び加飾シートと一体化した第3の成形体を説明する図であり、断面図である。
第3の加飾シートは、図3(A)で示すように基材シート1上に、スクリーン印刷等の方法によって着色層2を形成した後に、図3(B)で示すように基材シート1上の着色層2が形成されていない部分、および着色層2が形成された部分の両者に、着色層2を形成したインキとワニス成分が共通である透明インキ層3を形成した後に、図3(C)で示すように接着層4を形成して、第3の加飾シート53を作製したものである。
そして、図3(D)で示すように成形樹脂6を射出成形によって一体化することによって第3の成形体73を作製することができる。
【0025】
本発明において、加飾シートの基材には、三次元形状に加工可能な熱可塑性シートを用いることができる。
これらの基材シートは、着色層の形成用インキとの接着性を高めるために、その表面に物理的あるいは化学的な処理を行って易接着表面を形成したもの、あるいはその表面に易接着層を塗布装置あるいは印刷機によって形成したものであってもよい。
具体的には、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリカーボネート−ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、A−PET(アモルファスポリエチレンテレフタレート)、ポリアクリロニトリル系樹脂、あるいはこれらの表面に易接着性処理を施したもの、易接着層を形成したものを挙げることができる。
【0026】
また、熱可塑性シートは、厚さが50〜5000μmとすることが好ましく、50μmより薄いと三次元形状に加工する際の延伸に追従できず破れや皺が発生するおそれがある。一方、5000μmより厚いと成形金型の屈曲部に追従できない場合が生じ、精度の高い加飾成形品を製造することが困難である。
これらのなかでも、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル系樹脂からなるシートが好ましい。
【0027】
またポリカーボネート系樹脂との接着性が良好な着色層用インキ及び透明層用インキをポリプロピレン製シートに適用する場合には、ポリプレピレン製シートの表面にアクリルポリオール系樹脂を含有した組成物によって易接着層を形成したものが好ましい。
具体的には、アクリルポリオール系樹脂からなる易接着層形成用組成物としては、帝国インキ製POS−000メジウムを挙げることができる。
【0028】
また、着色層、あるいは透明インキ層の形成に使用するインキのワニス成分としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、オレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等の樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を水、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤に分散、溶解したものを用いることができる。
【0029】
また、これらの樹脂とともにイソシアネート系、アミン系等の硬化剤を含有したものであっても良い。
具体的には、硬化剤としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4−4’ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等を挙げることができる。
なかでも、ポリエステルポリオール系樹脂と硬化剤としてイソシアネートを含有するものが好ましい。
【0030】
本発明の目的に使用することが可能なインキとしては、ポリエステルポリオール系樹脂と溶剤を用いた帝国インキ製造製のIPXインキシリーズの各色のインキを着色層の形成用のインキおよび透明インキとして用いることができる。
【0031】
また、本発明の加飾シートには、接着層を有している。接着層は、着色層、あるいは透明インキ層と成形品を形成する合成樹脂との接着性を高める層であって、ポリオレフィン樹脂等から形成することができ、スクリーン印刷等の方法により形成することができる。
具体的には、エチレンと無水マレイン酸の共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1 種を含有するインキから形成することができる。
このような接着層を用いることによって、ポリプロピレン、ポリアミド等を射出成形した場合にも充分な剥離強度を備えた成形品を製造することが可能となる。
【0032】
エチレンと無水マレイン酸の共重合体としては、エチレンと無水マレイン酸の二元共重合体、エチレンと無水マレイン酸とその他の単量体との多元共重合体が挙げられる。
また、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸を付加させて変性したものが挙げられ、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びエチレン− 酢酸ビニル共重合体が挙げられる。無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂及び無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましく、マレイン酸変性率0.3〜10%である分子量10,000〜150,000のポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0033】
接着層としては具体的には、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂と溶剤からなる帝国インキ製造株式会社製のIMBインキシリーズを挙げることができる。
以下に実施例、比較例を示し、本発明を説明する。
【実施例1】
【0034】
(着色インキの調製)
ポリエステルポリオール樹脂(重量平均分子量20,000)35重量部、芳香族炭化水素系溶剤(ソルベッソ100)25重量部、カーボンブラック14重量部、芳香族炭化水素系溶剤(ソルベッソ150)25重量部、シリコーン系消泡剤1重量部、NCO当量16.5のイソシアネート10重量部を加えて均一混合して着色インキを調製した。
【0035】
(透明インキの調製)
着色インキの調製において、カーボンブラックを混合しない点を除いて、同様にして透明インキを調製した。
(接着層用インキの調製)
マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(マレイン酸変性度:5.0%、平均分子量:10万)10重量部、シリカ粉末(個数平均粒子径:1.0μm)10重量部、芳香族炭化水素系溶剤(ソルベッソ100)40重量部、シクロヘキサノン40重量部、シリコーン系消泡剤1重量部を混合して、接着層用インキを調製した。
【0036】
第1の加飾シート1の作製
縦210mm、横297mm、厚さ0.5mmのポリカーボネート基材(筒中プラスチックス製ポリカエースEC−100)に、250メッシュのスクリーン版を使用して、図4に、着色層2のパターンを平面図で示すように、基材シート1に縦30mm、横50mmの大きさで着色層2を縦横それぞれ30mm間隔で、横方向に3列、縦方向に4段の配置で、基材の周囲の着色層を形成していない部分の幅が均等となるように形成し、乾燥機において60℃60分間乾燥して膜厚6μmの着色層を形成した。
【0037】
次いで、着色層が形成されていない部分に、先に調製した透明インキを250メッシュのスクリーン版によって印刷した後に乾燥機において60℃60分間乾燥して膜厚6μmの透明インキ層を形成した。
【0038】
更に、着色層および透明インキ層上に先に調製した接着層用インキを、150メッシュのスクリーン版によって印刷した後に、乾燥機において60℃で60分間の乾燥を行って、膜厚10μmの接着層を形成した第1の加飾シート試料1を作製した。
【0039】
第1の成形体試料1の作製
得られた第1の加飾シート試料1を射出成形機の金型に装着して、成形用合成樹脂としてポリプロピレン(三井化学製プライムポリプロJ707G メルトフローレート30g/10分)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、成形用合成樹脂と第1の加飾シート試料1とを一体化した第1の成形体試料1を作製した。
【0040】
剥離試験
作製した第1の成形体試料1から縦15mm、横50mmの試験片を作製し、射出成形樹脂層と加飾シートの180度剥離試験をJIS−K6854−2の接着剤−剥離接着強さ試験方法にて行い、その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0041】
第2の加飾シート2の作製
縦210mm、横297mm、厚さ0.5mmのポリカーボネート基材(筒中プラスチックス製ポリカエースEC−100)に、先に調製した透明インキを250メッシュのスクリーン版によって印刷しろを残してベタ状に印刷した後に乾燥機において60℃60分間乾燥して膜厚6μmの透明インキ層を形成した。
次いで、図4に、着色層2のパターンを平面図で示すように、基材シートに縦30mm、横50mmの大きさで着色層2を縦横それぞれ30mm間隔で、横方向に3列、縦方向に4段の配置で、基材の周囲の着色層を形成していない部分の幅が均等となるように形成し、乾燥機において60℃60分間乾燥して膜厚6μmの着色層を形成した。
【0042】
更に、透明インキ層上に先に調製した接着層用インキを、150メッシュのスクリーン版によって印刷した後に、乾燥機において60℃で60分間の乾燥を行って、膜厚10μmの接着層を形成した第2の加飾シート試料2を作製した。
【0043】
成形体試料2の作製
得られた第2の加飾シート試料2を射出成形機の金型に装着して、成形用合成樹脂としてポリプロピレン(三井化学製プライムポリプロJ707G メルトフローレート30g/10分)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、成形用合成樹脂と第2の加飾シート試料2とを一体化した成形体試料2を作製した。
剥離試験
作製した成形体試料2を実施例1に記載の剥離試験方法によって剥離試験を行い、その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0044】
第3の加飾シート3の作製
縦210mm、横297mm、厚さ0.5mmのポリカーボネート基材(筒中プラスチックス製ポリカエースEC−100)に、250メッシュのスクリーン版を使用して、図4に、着色層2のパターンを平面図で示すように、基材シート1に縦30mm、横50mmの大きさで着色層2を縦横それぞれ30mm間隔で、横方向に3列、縦方向に4段の配置で、基材の周囲の着色層を形成していない部分の幅が均等となるように形成し、乾燥機において60℃60分間乾燥して膜厚6μmの着色層を形成した。
【0045】
次いで、着色層が形成された部分および着色層が形成された部分の全面に、周囲の印刷しろを残して先に調製した透明インキを250メッシュのスクリーン版によって印刷した後に乾燥機において60℃60分間乾燥し、着色層上の膜厚6μmの透明インキ層を形成した。
【0046】
更に、透明インキ層上に先に調製した接着層用インキを、150メッシュのスクリーン版によって印刷した後に、乾燥機において60℃で60分間の乾燥を行って、膜厚10μmの接着層を形成した第3の加飾シート試料3を作製した。
【0047】
成形体試料3の作製
得られた第3の加飾シート試料3を射出成形機の金型に装着して、成形用合成樹脂としてポリプロピレン(三井化学製プライムポリプロJ707G メルトフローレート30g/10分)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、成形用合成樹脂と第3の加飾シート試料3とを一体化した成形体試料3を作製した。
【0048】
剥離試験
作製した成形体試料3から縦15mm、横50mmの試験片を作製し、射出成形樹脂層と加飾シートの180度剥離試験をJIS−K6854−2の接着剤−剥離接着強さ試験方法にて行い、その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0049】
第4の加飾シート4の作製
基材シートとして厚さ0.3mmのポリプロピレンシート(出光ユニテック者製 ピャアレイ)を用い、アクリルポリオール樹脂35重量部、芳香族炭化水素系溶剤(ソルベッソ150)50重量部、シリコーン系消泡剤1重量部、NCO等量16.5のイソシアネート10重量部を加えて均一混合した組成物を、250メッシュのスクリーン版を使用して全面に印刷し、乾燥機において60℃60分間乾燥して膜厚6μmの易接着層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして第4の加飾シート試料4を作製した。
【0050】
成形体試料4の作製
得られた第4の加飾シート試料4を射出成形機の金型に装着して、成形用合成樹脂としてポリプロピレン(三井化学製プライムポリプロJ707G メルトフローレート30g/10分)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、成形用合成樹脂と第4の加飾シート試料4とを一体化した成形体試料4を作製し、実施例1と同様にして剥離試験を行い、その結果を表1に示す。
【実施例5】
【0051】
実施例1と同様に作製した第1の加飾シート1を、射出成形機の金型に装着して、成形用合成樹脂としてポリアミド(東レ製 アラミン CM1007)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形して成形体試料5を得た。
【0052】
作製した成形体試料5を実施例1の剥離試験方法と同様に剥離試験を行い、その結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
基材シートに着色層を形成した後に、着色層を形成した部分及び着色層を形成していない部分の両者に接着層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして着色層からの厚さが10μmの厚みの接着層を形成し、比較試料1の加飾シートを作製した。
得られた比較試料1の加飾シートを使用して、実施例1と同様にして比較成形体試料1を作製し、実施例1と同様にして剥離試験を行いその結果を表1に示す。
【0054】
比較例2
基材シート上に厚さ10μmの接着層を形成した点を除いて、実施例1と同様にして比較試料2の加飾シートを作製した。
得られた比較試料2の加飾シートを使用して、実施例1と同様にして比較成形体試料2を作製し、実施例1と同様にして剥離試験を行いその結果を表1に示す。
【0055】
表1
┌───┬────┬────┬────┬────┬────┬────┬────┐
│ │実施例1│実施例2│実施例3│実施例4│実施例5│比較例1│比較例2│
├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤
│剥離 │ 2.4 │ 2.2 │ 2.4 │ 2.0 │2.0 │0.5 │ 0.1 │
│強度 │kN/m│kN/m│kN/m│kN/m│kN/m│kN/m│kN/m│
└───┴────┴────┴────┴────┴────┴────┴────┘
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の加飾シートは、基材シートに着色層が形成されていない部分には、着色層とワニス成分が共通な透明インキ層が形成されており、これらの層上に更に接着層を形成した後に、加飾シートと合成樹脂を一体化した場合には、合成樹脂との接着性が、着色層の形成部の大きさ、図柄、あるいは加飾シート表面の形状等に依存しないので、合成樹脂との接着性が良好な加飾シートおよびそれによって剥離強度が大きな成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、第1の加飾シートおよび加飾シートと一体化した第1の成形体を説明する図であり、断面図である。
【図2】図2は、第2の加飾シートおよび加飾シートと一体化した第2の成形体を説明する図であり、断面図である。
【図3】図3は、第3の加飾シートおよび加飾シートと一体化した第3の成形体を説明する図であり、断面図である。
【図4】図4に、着色層のパターンを説明する平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…基材シート、2…着色層、3…透明インキ層、4…接着層、51…第1の加飾シート、52…第2の加飾シート、53…第3の加飾シート、6…成形用合成樹脂、71…第1の成形体、72…第2の成形体、73…第3の成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる基材シートに印刷によって着色層を形成した加飾シートにおいて、基材シートの全面もしくは基材シートの少なくとも着色層が形成されていない領域に、着色層形成用インキとワニス組成が共通の透明インキからなる透明層が形成され、基材シートの着色層が形成された側の最外層には接着層が形成されたことを特徴とする加飾シート。
【請求項2】
透明層が基材シート面にベタ状に形成された後に、着色層が形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の加飾シート。
【請求項3】
透明層は、基材シートに着色層が形成された後に、少なくとも着色層が存在しない部分に形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の加飾シート。
【請求項4】
基材シートが、ポリカーボネートであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の加飾シート。
【請求項5】
基材シートが、着色層との易接着性処理もしくは易接着層の形成を行った熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の加飾シート。
【請求項6】
加飾シートをフィルムインサートモールディングによって合成樹脂と一体化した成形品において、熱可塑性樹脂からなる基材シートの全面、もしくは基材シートの少なくとも着色層が形成されていない領域に、着色層形成用インキとワニス組成が共通の透明インキからなる透明層が形成され、基材シートの着色層が形成された側の最外層には接着層を形成した加飾シートが、接着層を介して合成樹脂と一体化したものであることを特徴とする成形品。
【請求項7】
加飾シートは、透明層が基材シート面にベタ状に形成された後に、着色層が形成されたものであることを特徴とする請求項6記載の成形品。
【請求項8】
加飾シートは、透明層が基材シートに着色層が形成された後に、少なくとも着色層が存在しない部分に形成されたものであることを特徴とする請求項6記載の成形品。
【請求項9】
基材シートが、ポリカーボネートであり、一体化される合成樹脂がポリプロピレンまたはポリアミドの少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項記載の成形品。
【請求項10】
基材シートが、易接着層が形成されたポリプロピレンであり、一体化される合成樹脂がポリプロピレンまたはポリアミドの少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項記載の成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−307831(P2007−307831A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140458(P2006−140458)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(591017250)帝国インキ製造株式会社 (15)
【復代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
【Fターム(参考)】