説明

加飾シート

【課題】延伸成形性を有し、成形後の外観不良が生じないとともに、十分な耐擦傷性や耐磨耗性を備え、さらに、表面に汚れが付着し難いという耐汚染性も良好な加飾シートを提供する。
【解決手段】基材シート11と、該基材シート11上に配置された樹脂層15と、該樹脂層15の外面を被覆する表面コート層16とを少なくとも有し、表面コート層16は、フッ素系成分および/またはシリコーン系成分を含有する樹脂成分から形成された加飾シート10。樹脂成分としては、メタクリル樹脂にフッ素系成分および/またはシリコーン系成分が添加された樹脂組成物が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内外装などに使用される加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンソールパネル、センタークラスタ、スイッチベースなどの自動車内装部品や、バンパー、サイドマットガード、ホイールキャップ、モールなどの自動車外装部品には、木目調、メタリック調などの意匠層を備えた加飾シートと、樹脂成形体とが一体化した多層成形体が広く使用されている。
このような用途に用いられる加飾シートとしては、例えば特許文献1に記載されているように、アクリル系樹脂からなる透明または半透明の表面フィルム層を最外層に備えた金属調の加飾シートが知られている。
【0003】
ところが、このような構成の加飾シートは、延伸成形性に優れ、真空成形、インサート成形などによる深絞りの成形体の製造にも適しているものの、表面フィルム層がアクリル系樹脂からなるため、シート表面の耐磨耗性が不十分であるという問題があった。そのため、例えば、自動車外装部品の表面にこの加飾シートを使用し、そして、この自動車外装部品を具備した自動車を自動洗車機で洗車した場合には、自動洗車機の洗浄ブラシにより、自動車外装部品の表面に容易に擦り傷がついてしまうという問題があった。
そこで、表面フィルム層に電離放射線硬化性樹脂を配合することで、加飾シート表面の耐擦傷性や耐磨耗性を向上させようとする方法が検討されている(例えば特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−262557号公報
【特許文献2】特開2003−181869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表面フィルム層に電離放射線硬化性樹脂を配合すると、耐擦傷性や耐磨耗性は向上したとしても、加飾シートの延伸成形性が低下して成形時の形状追従性が不足するため、クラックが発生し、外観不良が生じやすいという問題があった。また、電離放射線硬化性樹脂の配合は、表面フィルム層の透明性、耐候性、表面平滑性などの他の特性に悪影響を与えるという新たな不都合を引き起こした。表面フィルム層の表面平滑性が劣ると、加飾シートは艶消し調になってしまい、鏡面調の加飾シートを製造することはできなくなる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、延伸成形性を有し、成形後の外観不良が生じないとともに、十分な耐擦傷性や耐磨耗性を備え、さらに、表面に汚れが付着し難いという耐汚染性も良好な加飾シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、加飾シートの最外層に、フッ素系成分および/またはシリコーン系成分を含有する樹脂成分からなる表面コート層を設けることによって、新たな不都合を引き起こすことなく、上記課題を解決できることに想到し、本発明を完成するに至った。
本発明の加飾シートは、基材シートと、該基材シート上に配置された樹脂層と、該樹脂層の外面を被覆する表面コート層とを少なくとも有する加飾シートであって、前記表面コート層は、フッ素系成分および/またはシリコーン系成分を含有する樹脂成分から形成されたことを特徴とする。
前記樹脂成分は、メタクリル樹脂にフッ素系成分および/またはシリコーン系成分が添加された樹脂組成物であることが好ましい。
前記メタクリル樹脂は、分子量が20万以上であることが好ましい。
前記樹脂層が透明性を備えるとともに、前記基材シートと前記樹脂層との間に意匠層が配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、延伸成形性を有し、成形後の外観不良が生じないとともに、十分な耐擦傷性や耐磨耗性を備え、耐汚染性も良好な加飾シートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一例である金属調の意匠性を備えた加飾シート10である。この加飾シート10においては、基材シート11の片面上に、第1の接着剤層12を介して、透明な意匠層保持フィルム13aの片面に金属調の意匠層13bが形成された意匠フィルム13が積層している。また、この意匠フィルム13の上には、第2の接着剤層14を介して、アクリル系樹脂などからなる透明性を備えた樹脂層15が積層している。そして、この樹脂層15上には、樹脂層15の外面を被覆する表面コート層16が形成され、この表面コート層16が加飾シート10の最外層となっている。
【0009】
基材シート11の材質には特に制限はなく、ABS系樹脂、PC系樹脂、PC系樹脂とABS系樹脂との混合樹脂、PVC樹脂、PS系樹脂、PE系樹脂やPP系樹脂などのポリオレフィン系樹脂およびそのエラストマー樹脂、ポリエステル系樹脂などが使用でき、加飾シート10の用途などに応じて適宜決定できる。また、複数種の樹脂の積層シートを使用してもよい。基材シート11の厚さも適宜設定できるが、成形時の延伸成形性を考慮した場合、0.05〜1.00mmが好ましく、より好ましくは0.10〜0.80mmである。
【0010】
意匠フィルム13は、加飾シート10に意匠性を付与するものであって、第1の接着剤層12を介して基材シート11上に積層している。この例の意匠フィルム13は、透明な意匠層保持フィルム13aと、その片面にアルミニウム、スズ、インジウムなどの金属が蒸着して形成された意匠層13bとからなっている。また、意匠フィルム13は、その意匠層13b側が第1の接着剤層12を介して基材シート11と接するように配置されている。
意匠層保持フィルム13aの材質としては、透明性に優れるとともに、鮮明な意匠層13bを形成しやすいことからPET樹脂が好ましく、その厚さは、加飾シート10の延伸成形性の点から12〜100μmが好ましい。PET樹脂以外には、その他のポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、PVC樹脂、フッ素系樹脂など他の樹脂シートも使用できるし、複数種の樹脂の積層シートを使用してもよい。
なお、意匠層保持フィルム13aの片面を物理的に引っ掻いてから金属蒸着で意匠層13bを形成することで、意匠フィルム13をヘアライン調のものにしてもよいし、意匠層保持フィルム13aの片面をサンドブラストしてから金属蒸着で意匠層13bを形成することで、意匠フィルム13をマット調のものにしてもよい。
【0011】
第1の接着剤層12としては、アクリル系、酢酸ビニル系、ウレタン系、アクリル−ウレタン系、アイオノマー系などの各種粘着剤または接着剤が塗布されたものや、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、PE系樹脂、マレイン酸変性オレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂などの熱融着可能な熱可塑性樹脂からなるフィルムやシートから形成されたものが挙げられる。第1の接着剤層12の厚みには特に制限はないが、5〜20μmが好ましい。
【0012】
樹脂層15は、加飾シート10に耐候性、硬度などの特性を付与するものであって、この例では、耐候性、硬度が良好であるとともに透明性を備えたアクリル系樹脂のシートが使用され、第2の接着剤層14を介して意匠フィルム13に積層している。樹脂層15がこのように透明性を備えていると、意匠フィルム13に形成された意匠層13bを加飾シート10の最外層側から視認でき好適である。なお、樹脂層15の透明性は、意匠層13が加飾シート10の最外層側から視認可能であればよく、いわゆる半透明であってもよい。樹脂層15の厚みには特に制限はないが、50〜150μmが好ましい。
第2の接着剤層14は、第1の接着剤層12について例示したものの中から適宜選択でき、厚みも第1の接着剤層12と同程度に設定すればよい。
【0013】
表面コート層16は、樹脂層15の外面を被覆することにより、加飾シート10の表面に耐擦傷性、耐磨耗性、耐汚染性を付与するものであって、フッ素系成分および/またはシリコーン系成分を含有する樹脂成分から形成されている。
このような樹脂成分としては、フッ素系成分またはシリコーン系成分の少なくとも一方を含むものであれば特に制限はないが、マトリクス樹脂にフッ素系成分および/またはシリコーン系成分が添加された樹脂組成物が好ましいものとして挙げられる。
【0014】
マトリクス樹脂としては、可撓性に優れ、樹脂層15への密着性に優れた被膜を形成できる熱可塑性樹脂が好ましく、例えばメタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート)が好ましい。また、その際、メタクリル樹脂の分子量が20万以上であると、耐熱性、耐薬品性、表面硬度により優れた被膜を形成でき好ましい。このようにマトリクス樹脂にメタクリル樹脂を使用すると、樹脂層15が特にアクリル系樹脂からなる場合に、表面コート層16と樹脂層15との密着性も良好となる。
【0015】
マトリクス樹脂は、メタクリル樹脂を主成分(50質量%以上)とすることが好ましく、50質量%以下の範囲で他の樹脂を併用してもよい。このような他の樹脂としては、(メタ)アクリレート単量体やその他の不飽和単量体のうちの1種以上から構成される(共)重合体が挙げられる。
(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、その他の不飽和単量体としては、エチレン、スチレン、プロピレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、マレイン酸、コハク酸などのエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0016】
フッ素系成分としては、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基などの疎水性基と、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、エチレンオキシド基などの親水性基とを有する化合物、例えば、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステル、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミドなどが好ましく使用できる。また、パーフルオロアルキル基と親油性基(疎水性基)とを含有するオリゴマーも好ましく使用できる。
【0017】
シリコーン系成分としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイルが使用できる。また、側鎖、末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルや、ポリシロキサンの側鎖の一部や少なくとも一方の末端に有機基を導入し、変性したものが挙げられる。このような有機基による変性としては、アミノ変性、エポキシ変性、メタクリル変性、アルコキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メルカプト変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性などがある。
【0018】
また、マトリクス樹脂に添加するフッ素系成分およびシリコーン系成分としては、マトリクス樹脂と相溶性のある樹脂(幹ポリマー)に対して、フッ素系またはシリコーン系の高分子量モノマーをグラフト重合させたグラフト重合体も好ましく使用できる。このようなグラフト重合体をフッ素系成分および/またはシリコーン系成分としてマトリクス樹脂に添加すると、高分子量モノマーが幹ポリマーにグラフト重合しているために、これがブリードアウトしたり、コーティング液中で分離して白濁したりする傾向が抑制される。また、このようにグラフト重合体の形態でマトリクス樹脂に添加することにより、高分子量モノマーの使用量が少なくても十分な効果が得られるため、これらを多量に使用することによる表面コート層16の機械的性能低下のおそれも回避できる。
【0019】
ここで、マトリクス樹脂がメタクリル樹脂である場合には、グラフト重合体の幹ポリマーとしても、相溶性の点から、メタクリル樹脂をはじめとしたアクリル系樹脂を使用することが好ましい。また、幹ポリマーにグラフト重合させる高分子量モノマーとしては、重合可能な官能基を持ち、他のモノマーと容易にグラフト重合体を形成できるものであれば制限はないが、例えば、片末端に重合性反応基を有するジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。これを幹ポリマーであるメタクリル樹脂にグラフト重合したグラフト重合体をマトリクス樹脂であるメタクリル樹脂に添加し、表面コート層16を形成すると、表面コート層16は、選択的にシリコーンが配列したシリコーン層からなる表層と、その内側のメタクリル樹脂層からなる層状構造になると考えられる。そのため、このようなグラフト重合体を使用することによって、シリコーン系成分が効果的に作用して、グラフト重合体ではないシリコーン系成分をメタクリル樹脂に混合した場合と同等以上の耐擦傷性、耐磨耗性、耐汚染性が発現すると考えられる。また、グラフト重合体を合成する際には、要求される各種物性に応じて、シリコーン含有量、モノマー構成、分子量を適宜設定できる。
【0020】
表面コート層16は、樹脂成分を溶媒に加えて調製されたコーティング液を樹脂層15の外面に塗装することにより形成できる。溶媒としては、例えば、トルエンなどの芳香族系溶媒、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン系溶媒などを使用できる。 なお、表面コート層16は、樹脂層15を構成するシートの外面にあらかじめ塗装しておいてもよいし、表面コート層16以外の各層を積層、一体化してから、コーティング液を塗装してもよい。また、表面コート層16の厚みには特に制限はないが、十分な耐擦傷性、耐磨耗性、耐汚染性が得られる点から、2〜20μmが好ましい。
【0021】
樹脂組成物におけるマトリクス樹脂とフッ素系成分および/またはシリコーン系成分との比率には特に制限はないが、マトリクス樹脂100質量部に対して、フッ素系成分および/またはシリコーン系成分が0.1〜5質量部の範囲であることが好ましい。このような範囲であると、表面コート層16の可撓性が優れ、成形性が良好であるとともに、十分な耐擦傷性、耐磨耗性、耐汚染性が発現する。また、フッ素系成分が過剰となり、コーティング液がゲル化して塗工性が低下するなどの問題や、シリコーン系成分が過剰となってブリードアウトするなどの問題も抑制できる。このようにフッ素系成分および/またはシリコーン系成分の添加がマトリクス樹脂に対して比較的少量でも十分な効果が得られるのは、コーティング液を樹脂層15の外面に塗装し、乾燥すると、フッ素系成分および/またはシリコーン系成分がその表層に偏在するためと考えられる。
【0022】
また、表面コート層16を形成する樹脂成分には、意匠性に影響を及ぼさない範囲であれば、必要に応じてシリカ粒子を配合して、耐擦傷性をより向上させてもよい。
【0023】
このような加飾シート10は、その最外層に、フッ素系成分および/またはシリコーン系成分を含有する樹脂成分からなる表面コート層16が設けられているため、十分な耐擦傷性や耐磨耗性を備え、耐汚染性にも優れる。また、このような表面コート層16を設けることによって、延伸成形性に悪影響を及ぼす電離放射線硬化性樹脂を使用しなくても高い耐擦傷性や耐磨耗性が得られるため、電離放射線硬化性樹脂を使用して延伸成形性が低下することによる成形後の外観不良といった問題が生じない。よって、このような加飾シート10は、コンソールパネル、センタークラスタ、スイッチベースなどの自動車内装部品や、バンパー、サイドマットガード、ホイールキャップ、モールなどの自動車外装部品の他、建材、家電など種々の用途に好適に使用できるが、これらのなかでも特に、汚れや自動洗車機の洗浄ブラシなどによる摺り傷が懸念され、また、より優れた外観も求められる自動車外装部品への使用に適している。
【0024】
なお、図1の加飾シート10においては、透明な意匠層保持フィルム13aの片面に、金属蒸着による意匠層13bを備えた意匠フィルム13が使用されているが、意匠フィルムの構成には特に制限はなく、各種印刷法で形成された絵柄などを意匠層として備えた意匠フィルムも使用できる。または、転写法により、絵柄のみが加飾シートに転写され、意匠層保持フィルムを備えていない構成でもよい。さらに加飾シートの用途によっては、必ずしも意匠フィルムを備えていなくてもよい。このような具体例としては、樹脂層が特定の色に着色されたカラーシート用途としての加飾シートなどを例示できる。
また、加飾シートは、基材シートと、この基材シート上に配置された樹脂層と、この樹脂層の外面を被覆する表面コート層とを少なくとも有していればよく、例えば押出ラミネート法、共押出法などを採用することにより、第1および第2の接着剤層12、14を備えない構成であってもよいし、反対に、図示以外のさらに他の層を必要に応じて有した構成であってもよい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。
[実施例1]
基材シート11の片面上に、ドライラミネート用のウレタン系接着剤(三井武田ケミカル社製、A−543/A−3)を塗布して、厚み10μmの第1の接着剤層12を形成した。ついで、この第1の接着剤層12の上に、意匠層13bと意匠層保持フィルム13aとからなる意匠フィルム13をその意匠層13b側が第1の接着剤層12に接するように重ね、2本のニップロールにて圧接し、40℃、72時間エージングすることで、基材シート11と意匠フィルム13とを接着した。ついで、意匠フィルム13の意匠層保持フィルム13a上に、ドライラミネート用のウレタン系接着剤(三井武田ケミカル社製、A−310/A−3)を塗布して、厚み10μmの第2の接着剤層14を形成した。そして、この第2の接着剤層14の上に、あらかじめ表面コート層16が片面に形成されたアクリル系樹脂シートを表面コート層16側が最外層となるように重ね、2本のニップロールにて圧接し、40℃、72時間エージングすることで、樹脂層15と表面コート層16とを形成し、図1の構成の加飾シート10を得た。そして、下記に示す各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0026】
なお、基材シート11、意匠フィルム13、アクリル系樹脂シートとしては以下のものを使用した。
(1)基材シート11:信越ポリマー製オレフィンシート(S200BPE)、厚み0.36mm
(2)意匠フィルム13:PET樹脂からなる厚み25μmの意匠層保持フィルム13aの片面に、アルミニウム蒸着による金属調の意匠層13bを備えたもの。
(3)アクリル系樹脂シート:住友化学工業社製アクリル樹脂シート(S001)、厚み125μm
【0027】
表面コート層16を形成するためのコーティング液としては、トルエンとMIBKとを8:2の質量比で混合した溶媒中に、20質量%の根上工業社製メタクリル樹脂(ハイパールM−4003、分子量650000〜1000000)と、0.2質量%の大日本インキ工業社製フッ素系樹脂(F−482、パーフルオロアルキル基と親油性基(疎水性基)とを含有するオリゴマー)とを含有するものを使用した。そして、これをアクリル系樹脂シートの片面に塗布し、溶媒を乾燥させ、厚み10μmの表面コート層16を形成した。
【0028】
[評価]
以下の評価を行った。なお、ヘイズの測定には、村上色彩技術研究所製HR−100を使用した。
(1)延伸成形性
加飾シートを160℃、延伸率200%の条件で延伸した際の加飾シートのクラックの有無を目視で確認した。クラックが認められない場合を○、認められた場合を×として、表1に示した。
(2)鉛筆硬度試験
JIS K5400に準拠して、荷重1kgの条件で鉛筆硬度試験を行った。
(3)落砂試験
ASTM D673−70に準拠して実施した。
(4)磨耗試験
JIS K7204に準拠して、CS−10F、500g、100回の条件で磨耗試験を行い、その前後のヘイズの変化率を測定した。
(5)耐汚染性
水に対する接触角とn−ドデカンに対する接触角にて評価した。接触角の数値が大きいほど、付着力が小さく、耐汚染性に優れていることを示している。測定は、CA−D接触角測定器(協和界面科学社製)を用いた。
(6)塗膜密着性
JIS K5400に準拠した碁盤目試験を実施し、表面コート層の密着性を評価した。
【0029】
[実施例2]
表面コート層16を形成するためのコーティング液として、トルエンとMIBKとを8:2の質量比で混合した溶媒中に、20質量%の根上工業社製メタクリル樹脂(ハイパールM−4003、分子量650000〜1000000)と、0.5質量%の信越化学工業社製シリコーン系樹脂(X−22−2426、片末端メタクリル変性シリコーン)とを含有するものを使用した以外は、実施例1と同様にして加飾シート10を製造し、評価した。
【0030】
[実施例3]
表面コート層16を形成するためのコーティング液として、トルエンとMIBKとを8:2の質量比で混合した溶媒中に、20質量%の根上工業社製メタクリル樹脂(ハイパールM−4003、分子量650000〜1000000)と、0.2質量%の日本油脂社製シリコーン系樹脂(モディパーFS720)とを含有するものを使用した以外は、実施例1と同様にして加飾シート10を製造し、評価した。
【0031】
[比較例1]
表面コート層を設けない以外は実施例1と同様にして加飾シートを製造し、評価した。
【0032】
[比較例2]
表面コート層を形成するためのコーティング液として、トルエンとMIBKとを8:2の質量比で混合した溶媒中に、20質量%の根上工業社製メタクリル樹脂(ハイパールM−4003、分子量650000〜1000000)のみを含有するものを使用した以外は実施例1と同様にして加飾シートを製造し、評価した。
【0033】
[比較例3]
表面コート層として、日本精化社製の熱硬化性樹脂NSC−2319からなる被膜を形成した以外は、実施例1と同様の構成の加飾シートを製造し、評価した。
【0034】
[比較例4]
表面コート層として、日本精化社製の紫外線硬化性樹脂NSC−2020からなる被膜を形成した以外は、実施例1と同様の構成の加飾シートを製造し、評価した。
【0035】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の加飾シートの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 加飾シート
11 基材シート
15 樹脂層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シート上に配置された樹脂層と、該樹脂層の外面を被覆する表面コート層とを少なくとも有する加飾シートであって、
前記表面コート層は、フッ素系成分および/またはシリコーン系成分を含有する樹脂成分から形成されたことを特徴とする加飾シート。
【請求項2】
前記樹脂成分は、メタクリル樹脂にフッ素系成分および/またはシリコーン系成分が添加された樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記メタクリル樹脂は分子量が20万以上であることを特徴とする請求項2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記樹脂層が透明性を備えるとともに、前記基材シートと前記樹脂層との間に意匠層が配されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の加飾シート。


【図1】
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【公開番号】特開2007−320112(P2007−320112A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151503(P2006−151503)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】