説明

加飾フィルムおよびその製造方法

【課題】 粒子配列体を安定に保持するとともに、ブラッグ回折による構造色を最大限発揮させるように、粒子配列体と保形材との屈折率を適正に合わせたことで、良好な遊色効果を発揮する加飾フィルムを得ること。
【解決手段】 基材フィルムと、該基材フィルム上に位置する、複数のシリカ粒子が規則配列してなる粒子配列体と、該粒子配列体の内部に充填されるとともに該粒子配列体を被覆している保形材とを有する加飾フィルムであって、前記シリカ粒子の屈折率をnA(A=1.35〜1.55)とし、前記保形材の屈折率をnBとしたとき、nAとnBとの差(|nA−nB|)が0.02以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加飾フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オパールのようにサブミクロンオーダーのシリカ粒子が規則配列した粒子配列体に対して、可視光がブラッグ反射を起こすことで、角度によって様々な色を呈する現象を遊色効果と呼んでいる。
【0003】
この遊色効果は、粒子配列体中に様々な結晶構造を有するために生じる。
【0004】
このような粒子配列体は、例えばシリカ粒子の固−液分散系サスペンジョンを塗膜し乾燥させることによって得られ、自然光もしくは白色光の照射下で鮮明な有彩色を発色させることが開示されている(下記、特許文献1参照)。
【0005】
また各種支持体上に粒子配列体を作製する方法や、支持体ごと破砕した粉砕フィルムを含有する組成物の提案もされており、例えば、支持体上に粘着剤を塗布し、その上に粒子分散液を塗布、乾燥したフィルムを作製すること、さらにそれを破砕して、別の樹脂中に入れて塗膜を作製することが開示されている(下記、特許文献2参照)。
【0006】
また亀裂を有するオパール素材の裏面側をシートに貼着し、表面側を透光性樹脂で被覆した装飾部材が開示されている(下記、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−060654号公報
【特許文献2】特開2008−246846号公報
【特許文献3】実開平5−37114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献1記載の粒子配列体では、特定波長のみにおける遊色効果しか得られなかった。
【0009】
また特許文献2記載の塗膜では、乾燥させただけのものであるため、大きな外力が働くと結晶構造が崩れて、遊色効果を示さなくなる。
【0010】
また特許文献3の装飾部材では、オパール素材をスライスする際に崩れてしまい、フィルム状の薄いものを作れない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述のような問題点を解決するために、本発明の加飾フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルム上に位置する、複数のシリカ粒子が規則配列してなる粒子配列体と、該粒子配列体の内部に充填されるとともに該粒子配列体を被覆している保形材とを有する加飾フィルムであって、前記シリカ粒子の屈折率をnA(A=1.35〜1.55)とし、前記保形材の屈折率をnBとしたとき、nAとnBとの差(|nA−nB|)が0.02以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の加飾フィルムの製造方法は、基材フィルム上に、複数のシリカ粒子を含む分散液を塗布して前記シリカ粒子を沈殿させることで該シリカ粒子が規則配列してなる粒子配列体を形成する工程と、該粒子配列体の内部に保形材を充填するとともに、前記粒子配列体の表面を前記保形材で被覆して、該保形材を乾燥させる工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加飾フィルムによれば、粒子配列体を安定に保持するとともに、シリカ粒子と保形材との屈折率を適正に合わせて界面反射を低減し、遊色効果を視認し易くする。
【0014】
また本発明の加飾フィルムの製造方法によれば、基材フィルム上の粒子配列体に保形材を浸透させて、乾燥、硬化させることにより、スライス等の加工性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る加飾フィルムの断面の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る保形材を塗布する前の加飾フィルムの表面をSEM観察した図面代用写真である。
【図3】本発明の一実施形態に係る粒子配列体上に保形材を形成した加飾フィルムの表面をSEM観察した図面代用写真である。
【図4】本発明の一実施形態に係る加飾フィルムを変角測色計で測色したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
<加飾フィルム>
本実施形態は、基材フィルムと、基材フィルム上に位置する、複数のシリカ粒子が規則配列してなる粒子配列体と、粒子配列体の内部に充填されるとともに粒子配列体を被覆している保形材とを有する加飾フィルムであって、シリカ粒子の屈折率をnA(A=1.35〜1.55)とし、保形材の屈折率をnBとしたとき、nAとnBとの差(|nA−nB|)が0.02以下である。
【0018】
図1には、基材フィルム1上に粒子配列体4が形成され、粒子配列体4上およびシリカ粒子間空域4bに保形材3を配置した加飾フィルム10の断面を示す。
【0019】
また図2には、基材フィルム1上に形成した粒子配列体4の表面を示す。
【0020】
また図3には、基材フィルム1上に粒子配列体4に保形材3を配置した表面を示す。
【0021】
保形材3が複数のシリカ粒子4aを包含することによって、シリカ粒子4aと保形材3との界面における反射を低減して、複数のシリカ粒子4aによる遊色効果を視認し易くすることができる。
【0022】
保形材3は、粒子配列体4を包含するように形成したものであり、保形材3を設ける際に粒子配列体4の粒子間空域4bに樹脂を浸透させて固定する。
【0023】
これによって、粒子間の結合を強化して加飾フィルム10の強度を保持できる。
【0024】
ここで粒子配列体4には格子欠陥があってもよいが、好ましくは最密充填構造または面心立法構造の粒子配列体4とすることによって、ブラッグ反射を顕著にすることができる。
【0025】
さらに本実施形態は、保形材がセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種からなり、基材フィルムがポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂およびポリカーボネ―ト系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種からなり、基材フィルムの屈折率をnCとしたとき、nAとnCとの差(|nA−nC|)が0.05以下である。
【0026】
これにより、基材フィルム1側については耐久性、保形材3については柔軟性を向上させるとともに、さらには基材フィルム1側からの視認性も確保することができる。
【0027】
保形材3の材質としては、樹脂分子鎖の長さ等を制御することで、屈折率を制御することができることが好ましい。
【0028】
さらに本実施形態は、基材フィルムの厚さが5〜50μmであり、シリカ粒子の平均粒子径が0.01〜10μmであり、粒子配列体の厚さが0.2〜20μmであり、保形材を含めた厚さが0.4〜30μmである。
【0029】
これにより、加飾フィルム10全体での耐久性、柔軟性を維持するとともに、加飾フィルム10内での光の干渉を抑えてブラッグ回折による遊色効果を最大限に発揮させる。
【0030】
シリカ粒子径を選択することによって色調を変えることができ、シリカ粒子径が0.01〜10μmであれば、光の波長とシリカ粒子径が近いため、シリカ粒子4aの規則配列によるブラッグ反射が効率的に起こり、所望の構造色を得ることができる。
【0031】
さらにシリカ粒子4aの平均粒子径は0.01〜2μmで、球状かつ単分散であることが好ましく、特にシリカ粒子径が0.05〜0.5μmであれば、近紫外〜可視〜近赤外域で構造色を呈するものが得られるとともに、可視域の光散乱による粒子配列体4の白濁を低減する。
【0032】
基材フィルムの厚さは、基材フィルム1側からの視認性も確保することができる点で、5〜50μmが好ましい。
【0033】
粒子配列体4の厚さは0.3〜20μmが、遊色効果を維持するとともに、保形材3で粒子配列体4を固定して界面剥離を低減できる点で好ましい。
【0034】
保形材3の厚さは、粒子配列体4の厚さよりも厚いことを前提として、乾燥状態で0.4μm〜30μmが好ましく、粒子配列体4を十分保護できるとともに、平滑性を維持して、延伸時のクラックを低減できる。より好ましくは、保形材3の厚さが安定しやすい1μm〜10μmが好ましい。
【0035】
また、粒子配列体4に用いるシリカ粒子4aの粒子径の変動係数が10%未満であれば、粒子配列体4を効率的に形成できる。
【0036】
さらに本実施形態は、保形材が、カーボンブラック、酸化鉄赤(弁柄)、フタロシアニンブルー、コバルトグリーン、コバルトブルーおよびクロムイエロー(黄鉛)からなる群より選択される少なくとも1種の色材を含む。
【0037】
これにより、色剤が可視光を吸収して反射色を変化させ、加飾フィルム10の全体的な色相を調整することができる。
【0038】
これらの色剤の平均粒子径は0.01〜1μmであることが好ましい。
【0039】
ここで金属フレーク等の輝度性の高い顔料等を含むものは、裏面反射が強くなり、粒子配列体4の構造色と打ち消しあってしまうため、好ましくない。
【0040】
このように本発明の加飾フィルムは、例えば熱プレス法および成形同時絵付け法、インモールド法などによって樹脂成形品や金属、木材、紙製品、ガラスなどに遊色性のパターンを加飾した加飾フィルムを提供するものであり、良好な遊色効果を発揮させるとともに、かつ結晶構造の保形性を確保する。
【0041】
<製造方法>
本実施形態は、基材フィルム上に、複数のシリカ粒子を含む分散液を塗布して前記シリカ粒子を沈殿させることで該シリカ粒子が規則配列してなる粒子配列体を形成する工程と、該粒子配列体の内部に保形材を充填するとともに、前記粒子配列体の表面を前記保形材で被覆して、該保形材を乾燥させる工程とを有する。
【0042】
これにより、後加工時の加工性が向上してフィルムを薄くすることができる。
【0043】
粒子配列体4、保形材3の形成方法は、グラビア印刷、シルク印刷、オフセット印刷、リップコーター、リバースコーター、グラビアコーターなどによる塗工が可能である。
【0044】
必要に応じて基材フィルム1と粒子配列体4の間に剥離層や保護層を設けることも可能である。
【0045】
なお、加飾フィルム10には、転写箔のほか、化粧シート、インサートフィルムなども含まれる。例えば転写箔の場合、基材フィルム1/離型層/剥離層/図柄層/保形材3/接着層からなる場合、粒子配列体4が図柄層またはその一部となる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
まず、粒子配列体4の厚さ、保形材3の種類、厚さ、基材フィルム1の種類、厚さ、シリカ粒子径を固定して、シリカ粒子4aの屈折率nAと保形材3の屈折率nBとを変更した試料について、遊色効果と耐久性を評価した結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
<試料作製>
シリカ粒子4a中における炭素含有量および窒素含有量を適時調節することで、屈折率nAを1.3〜1.6で変化させた。
【0049】
保形材3中における高屈折率フィラーおよび低屈折率フィラーの含有量を適時調整することで、屈折率nBを1.26〜1.64で変化させた。
【0050】
粒子配列体4の厚さ10μm、保形材3の種類はエポキシ樹脂、保形材3の厚さは15μm、基材フィルム1の種類はポリエステル系樹脂、基材フィルム1の厚さは25μm、シリカ粒子径は1μmに固定した。
【0051】
<評価方法>
遊色効果は目視観察により、特許文献3に記載のオパール素材と比較して、優れているものは○、特に優れているものは◎、同等以下であれば×とした。
【0052】
耐久性は、基材フィルム1の反対側の面を不織布で擦り、剥がれ具合を目視観察して、特許文献3に記載のオパール素材と比較して、優れているものは○、特に優れているものは◎、同等以下であれば×とした。
【0053】
<評価結果>
比較例である試料1〜5では、屈折率nAが低いので屈折率nBの値に依らず遊色効果が悪かった。
【0054】
試料6〜10では、比較例である試料6、10が屈折率nAと屈折率nBとの差が大きいため遊色効果が悪かったが、実施例である試料7〜9では良好であった。
【0055】
試料11〜15では、比較例である試料11、15が屈折率nAと屈折率nBとの差が大きいため遊色効果が悪かったが、実施例である試料12〜14では良好であった。
【0056】
試料16〜20では、比較例である試料16、20が屈折率nAと屈折率nBとの差が大きいため遊色効果が悪かったが、実施例である試料17〜19では良好であった。
【0057】
比較例である試料21〜25では、屈折率nAが高いので屈折率nBの値に依らず遊色効果が悪かった。
【0058】
なお、耐久性については試料1〜25いずれも優れた結果を示した。
【0059】
このように、保形材3が粒子配列体4を包含することによって、シリカ粒子4aと保形材3とでの界面反射を低減して、遊色効果を視認し易くすることがわかった。
【0060】
(実施例2)
次に、シリカ粒子4aの屈折率nAと保形材3の屈折率nBを固定して、粒子配列体4の厚さ、保形材3の種類、厚さ、基材フィルム1の種類、厚さ、シリカ粒子径の条件を変更した試料について、遊色効果と耐久性を評価した結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
<試料作製>
シリカ粒子4aの屈折率nAを1.45、保形材3の屈折率nBを1.45で固定した。
【0063】
粒子配列体4の厚さ(0.1〜30μm)、保形材3の種類、保形材3の厚さ(0.3〜40μm)、基材フィルム1の種類、基材フィルム1の厚さ(3〜60μm)、シリカ粒子径(0.005〜20μm)を変更した。
【0064】
<評価方法>
評価方法は、実施例1と同様に行なった。
【0065】
<評価結果>
比較例である試料26は、保形材3がないので耐久性が悪かった。
【0066】
実施例である試料27〜31では、粒子配列体4の厚さを変更し、特に試料28〜30では粒子配列体4の厚さが0.2〜20μmであり、遊色効果を呈する十分な厚さと、耐久性を維持する十分な薄さとを両立することができた。
【0067】
実施例である試料32〜36では、保形材3の種類を変更し、各保形材3で遊色効果と耐久性とを両立することができた。
【0068】
実施例である試料37〜41では、保形材3の厚さを変更し、特に試料38〜40では保形材3の厚さが0.4〜30μmであり、遊色効果を呈する十分な薄さと、耐久性を維持する十分な厚さとを両立できた。
【0069】
実施例である試料42〜44では、基材フィルム1の種類を変更し、各基材フィルム1で遊色効果と耐久性とを両立することができた。
【0070】
実施例である試料45〜49では基材フィルム1の厚さを変更し、特に試料46〜48では基材フィルム1の厚さが5〜50μmであり、基材フィルム1側における遊色効果を呈する十分な薄さと、基材フィルム1側における耐久性を維持する十分な厚さとを両立することができた。
【0071】
実施例である試料50〜54では、シリカ粒子径を変更し、特に試料51〜53ではシリカ粒子径が0.1〜10μmであり、遊色効果と耐久性とを両立することができた。
【0072】
このように、実施例27〜54では、基材フィルム1全体での耐久性、柔軟性を維持するとともに、基材フィルム1内での光の干渉を抑えてブラッグ回折による遊色効果を最大限に発揮させることがわかった。
【0073】
(実施例3)
次に、シリカ粒子4aの屈折率nAと保形材3の屈折率nBを固定して、基材フィルム1の屈折率nCを変更した試料について表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
<試料作製>
実施例である試料55〜59では、屈折率nAを1.45、屈折率nBを1.45、粒
子配列体4の厚さを10μm、保形材3の種類、保形材3の厚さを15μm、基材フィルム1の種類、基材フィルム1の厚さを25μm、シリカ粒子径を1μmで固定して、屈折率Cを基材フィルム1中における高屈折率フィラーおよび低屈折率フィラーの含有量を適時調整することで変更した。
【0076】
<評価方法>
評価方法は、実施例1と同様に行なった。
【0077】
<評価結果>
実施例である試料55〜59では、基材フィルム1側での耐久性、保形材側での柔軟性を向上させるとともに、さらには基材フィルム1側からの視認性も確保することができた。
【0078】
特に、試料56〜58では、屈折率nCが1.4〜1.5であり、優れた遊色効果を呈した。
【0079】
(実施例4)
次に、遊色効果の評価をLabの値で評価した場合について説明する。
【0080】
<試料作製>
実施例として試料60では、厚さ25μmのPETフィルムを基材フィルム1とし、処理面に離型層、粒子径0.270μmの球状シリカ粒子4aからなる粒子配列体4(5μm)、エチルセルロースの保形材3(10μm)を順に塗布、乾燥することによって形成し、加飾フィルム10を得た。
【0081】
実施例として試料61では、厚さ25μmのPETフィルムを基材フィルム1とし、処理面に離型層、粒子径0.225μmの球状シリカ粒子4aからなる粒子配列体4(5μm)、エチルセルロースの保形材3(10μm)を順に塗布、乾燥することによって形成し、加飾フィルム10を得た。
【0082】
実施例として試料62では、厚さ25μmのPETフィルムを基材フィルム1とし、処理面に離型層、粒子径0.270μmの球状シリカ粒子4aからなる粒子配列体4(5μm)、カーボンブラックで黒色着色をしたアクリル−シリコン樹脂の保形材3(10μm)を順に塗布、乾燥することによって形成し、加飾フィルム10を得た。
【0083】
実施例として試料63では、厚さ25μmのPETフィルムを基材フィルム1とし、処理面に離型層、粒子径0.270μmの球状シリカ粒子4aからなる粒子配列体4(5μm)、カーボンブラック、アルミフレークで銀色着色をしたアクリル−シリコン樹脂の保形材3(10μm)を順に塗布、乾燥することによって形成し、加飾フィルム10を得た。
【0084】
比較例として試料64では、厚さ25μmのPETフィルムを基材フィルム1とし、処理面に離型層、粒子径0.270μmの球状シリカ粒子4aからなる粒子配列体4(10μm)を塗布、乾燥することによって形成し、加飾フィルム10を得た。
【0085】
<評価方法>
実施例1〜実施例4、比較例1について、変角測色計(カラーテクノシステム)を用いて、入射角を30°、光源をD65、視野角を10°、測定角度を−85°〜+85°で測定した結果を図4に示す。
【0086】
<評価結果>
図4より、実施例である試料60〜63は、測定する角度によって異なる色を呈し、遊色効果を有する加飾フィルム10としての機能が確認できる。
【0087】
ここでL、a、bの各値としては、L値を30以上、角度によるa値の変化量△aを20以上、角度によるb値の変化量△bを20以上とすることが遊色効果を顕著にできる点で好ましいことがわかった。
【0088】
一方、比較例である試料64も遊色効果を示したが、不織布でこすると保形材3がないため、粒子配列体4が崩れてしまった。
【0089】
また例示していないが、保形材3にカーボンブラック、酸化鉄赤(弁柄)、フタロシアニンブルー、コバルトグリーン、コバルトブルーおよびクロムイエロー(黄鉛)をそれぞれ色材として添加した場合、可視光を吸収して基材フィルム1の全体的な色相を調整することができた。
【0090】
特に、色剤の粒子径は0.01〜1μmであることが、色相を向上させることができる点で好ましいことがわかった。
【符号の説明】
【0091】
1:基板フィルム
3:保形材
4:粒子配列体
4a:シリカ粒子
4b:シリカ粒子間空域
10:加飾フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
該基材フィルム上に位置する、複数のシリカ粒子が規則配列してなる粒子配列体と、
該粒子配列体の内部に充填されるとともに該粒子配列体を被覆している保形材とを有する加飾フィルムであって、
前記シリカ粒子の屈折率をnA(A=1.35〜1.55)とし、前記保形材の屈折率をnBとしたとき、nAとnBとの差(|nA−nB|)が0.02以下である加飾フィルム。
【請求項2】
前記保形材がセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種からなり、
前記基材フィルムがポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂およびポリカーボネ―ト系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種からなり、
前記基材フィルムの屈折率をnCとしたとき、
前記nAとnCとの差(|nA−nC|)が0.05以下である請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムの厚さが5〜50μmであり、前記シリカ粒子の平均粒子径が0.01〜10μmであり、前記粒子配列体の厚さが0.2〜20μmであり、前記保形材が前記粒子配列体を被覆している厚さが0.4〜30μmである請求項1または2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記保形材が、カーボンブラック、酸化鉄赤(弁柄)、フタロシアニンブルー、コバルトグリーン、コバルトブルーおよびクロムイエロー(黄鉛)からなる群より選択される少なくとも1種の色材を含む請求項1〜3のいずれかに記載の加飾フィルム。
【請求項5】
基材フィルム上に、複数のシリカ粒子を含む分散液を塗布して前記シリカ粒子を沈殿させることで該シリカ粒子が規則配列してなる粒子配列体を形成する工程と、
該粒子配列体の内部に保形材を充填するとともに、前記粒子配列体の表面を前記保形材で被覆して、該保形材を乾燥させる工程とを有する加飾フィルムの製造方法。


【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71421(P2013−71421A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214230(P2011−214230)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】