説明

加飾二重壁容器

【課題】 本発明は、二重壁を有する容器において、この二重壁構造を利用してモアレ模様により今までにない3次元的な視覚効果を創出するための構成を創出することを技術的課題とするものである。
【解決手段】 内容物を収納する中容器と、この中容器の少なくとも胴部を外装する透明性若しくは半透明性の合成樹脂製の外装体により二重壁を形成し、基材フィルムに透明性若しくは半透明性の印刷層により凸状に規則性を有するパターンをそれぞれ形成した2枚の加飾フィルムAと加飾フィルムBのうち、一方の加飾フィルムAを中容器あるいは外装体の周面、若しくは二重壁部分に形成される間隙に配設し、他方の加飾フィルムBを二重壁部分に形成される間隙に移動可能に配設し、加飾フィルムAと加飾フィルムBが相対的に移動可能に構成し、両加飾フィルムのパターン間による光の干渉効果により、モアレ状の3次元的な視覚効果が現出する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収納する中容器と、この中容器を外装する外装体で二重壁を形成すると共に、この二重壁部分を利用して加飾した加飾性二重壁容器に関するものである。

【背景技術】
【0002】
化粧料を容器に収納した製品では、使用する容器に今までにない加飾性を現出させて他社製品との差別化が図られている。
たとえば特許文献1には、特に高級化粧液等に使用する外容器と中容器からなる合成樹脂製の二重容器に関する記載があるが、このように二重容器とすることにより一重容器では得られない加飾性を付与することができる。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−59357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、二重壁を有する容器において、この二重壁構造を利用してモアレ模様により今までにない3次元的な視覚効果を創出するための構成を創出することを技術的課題とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決する手段の内、本発明の主たる構成は、
内容物を収納する中容器と、この中容器の少なくとも胴部を外装する透明性若しくは半透明性の合成樹脂製の外装体により二重壁を形成し、
基材フィルムに透明性若しくは半透明性の印刷層により凸状に規則性を有するパターンをそれぞれ形成した2枚の加飾フィルムAと加飾フィルムBのうち、
一方の加飾フィルムAを中容器あるいは外装体の周面、若しくは二重壁部分に形成される間隙に配設し、他方の加飾フィルムBを二重壁部分に形成される間隙に移動可能に配設し、
加飾フィルムAと加飾フィルムBが相対的に移動可能に構成し、両加飾フィルムのパターン間による光の干渉効果により、モアレ状の3次元的な視覚効果が現出する構成とする、と云うものである。
【0006】
ここで、上記構成における透明性若しくは半透明性の合成樹脂製の外装体と、
透明性若しくは半透明性の印刷層は、有色透明性若しくは有色半透明性のものが含まれる。
また、外装体は用途に応じて有底筒状の外容器状、あるいは底部のない筒状とすることができる。
また、加飾フィルムAは中容器の外周面、外装体の外周面あるいは内周面、二重壁部分の間隙に沿うように、さまざまな態様で配設することができる。
【0007】
そして、上記構成によれば、加飾フィルムBを二重壁部分に形成される間隙を利用して移動可能に配設することにより、加飾フィルムAと加飾フィルムBを相対的に移動可能に構成することができ、両加飾フィルムに形成されている印刷インク層による凸状に形成された規則性を有するパターンによるモアレ状の3次元的な視覚効果を変化に富んだダイナミックなものとすることができる。
【0008】
ここで、加飾フィルムAと加飾フィルムBには、それぞれ印刷面と印刷していない面があるが、両加飾フィルムの印刷面が対向するように重ねることもできるし、印刷面と印刷していない面が対向するように重ねることもでき、現出するモアレ状の視覚効果を考慮して選択することができる。
また、たとえば加飾フィルムAを外装体の内周面に内接状に配設する場合にも、印刷面を内接させることもできるし、印刷してない面を内接させることもできる。
また、両加飾フィルムを接触するように重ねることもできるし、隙間を設けて重ねることもできる。
【0009】
また、加飾フィルムに使用する基材フィルムの厚さは、加飾フィルムAでは中容器や外装体へ配設するための巻回性、加飾フィルムBでは二重壁部分の間隙における形態保持性や移動性を考慮して適宜決めることができるが、一般的には30ミクロン〜300ミクロンの範囲とすることが好ましい。
30ミクロン未満では面剛性が不足して、巻回性や形状保持性が十分でなくなるし、逆に300ミクロンを超えると面剛性が大きくなりすぎて巻回しにくくなり、また移動性が損なわれる。
【0010】
本発明の他の構成は、上記主たる構成に加えて、スクリーン印刷による印刷層により規則性を有するパターンを形成する、と云うものである。
【0011】
基材フィルムに透明性若しくは半透明性の印刷層により凸状に規則性を有するパターンを形成する方法としては、上記構成にあるようにスクリーン印刷による方法、あるいは印刷層をベタ状に印刷形成し、このベタ状の印刷層を規則的なパターンを刻設した版で押圧する等の方法がある。
ここで、スクリーン印刷方法によれば繊細な凸状の規則的なパターンをクリアに、高精度に形成できることができ、モアレ模様を高品位に現出させることができる。さらに、スクリーン印刷によれば印刷層を厚盛状に形成することができるので、モアレ状、さらにはレンズ状の視覚効果を効果的に現出させることができる。
【0012】
本発明のさらに他の構成は、加飾フィルムAをインサート材としたインサート成形により、この加飾フィルムAを外装体の内周面に巻回状に配設する、と云うものである。
【0013】
上記構成は、加飾フィルムAの配設態様に係る具体例であり、当該構成によれば、インサート成形により後加工によることなく、外装体の成形と同時に外装体の内周面の所定の位置に高精度で、加飾フィルムAをしっかりと固定することができる。
【0014】
本発明のさらに他の構成は、上端開口部に注出用のポンプを配設して使用するもので、中容器は円筒状の胴部の開口下端から胴部内に軸心方向に沿って密摺動可能に摺動底蓋を嵌装したものであり、
加飾フィルムBを連結片を介して、中容器の下端下方を経て摺動底蓋に連結し、内容液の注出に伴う摺動底蓋の上方変位に伴い、加飾フィルムBが二重壁部分に形成される間隙内で下方に変位する構成とする、と云うものである。
【0015】
上記構成は、上述した本願の主たる構成の作用効果を利用したポンプ付き注出容器に係るものであり、内容液の注出に伴い加飾フィルムBが二重壁間に形成される間隙内で下方に変位し、この変位に伴いモアレ模様のダイナミックな変化を現出させることができ、今までにない加飾効果を有するポンプ付き注出容器を提供することができる。

【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有するものにあっては、
加飾フィルムBを二重壁間に形成される間隙を利用して移動可能に配設することにより、加飾フィルムAと加飾フィルムBが相対的に移動可能に構成することができ、両加飾フィルムに形成されている印刷層による凸状に形成された規則性を有するパターンによるモアレ状の3次元的な視覚効果を変化に富んだダイナミックなものとすることができ、今までにない加飾効果を有する二重容器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の加飾二重壁容器の第1実施例であるポンプ付き注出容器の(a)は部分的に縦断して示す側面図、(b)は二重壁部分の拡大縦断面図である。
【図2】図1の加飾二重壁容器に使用する加飾フィルムA、Bの(a)は拡大平面図、(b)は層構造示す断面図である。
【図3】図1の加飾二重壁容器に使用する加飾フィルムBの全体形状を示す平面図である。
【図4】図1の加飾二重壁容器において、内容液の注出が進行した際の状態を示す、(a)は部分的に縦断して示す側面図、(b)は二重壁部分の拡大縦断面図である。
【図5】本発明の加飾二重壁容器の第2実施例である他のポンプ付き注出容器の部分的に縦断して示す側面図である。
【図6】図5の加飾二重壁容器を倒立姿勢とした際の状態を部分的に縦断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の加飾二重壁容器の第1実施例であるポンプ付き注出容器を説明するためのものであり、(a)は部分的に縦断して示す側面図、(b)は二重壁部分の拡大縦断面図である。
また、図2(a)はこの加飾二重壁容器に使用する加飾フィルムA、Bの拡大平面図、(b)は層構造示す断面図、図3は加飾フィルムBの全体的な形状を示す平面図、そして図4は内容液の注出が進行した際の状態を示す(a)は部分的に縦断して示す側面図、(b)は二重壁部分の拡大縦断面図である。
【0019】
このポンプ付き注出容器は上端部にノズルヘッド32、下端部にシリンダ33を配設した手動押下げ式のポンプ31を組付きキャップ35により外装体11と共に二重壁を構成する中容器1の口筒部2に螺合により組付け固定したものである。
【0020】
二重壁を構成する中容器1と外装体11のうち、中容器1は合成樹脂製で、円筒状の胴部4の上端部に肩部3を介して口筒部2を起立設したもので、胴部4の下端は開口端となっている。そして、この胴部4内に軸心方向に沿って密摺動可能に低密度ポリエチレン等の比較的軟質な合成樹脂製の摺動底蓋6を嵌装している。
また、胴部4の下端部には底カバー9を嵌合している。
【0021】
一方、外装体11は有底筒状の透明性の合成樹脂製で、円筒状の胴部14の下端部に底部15を連設したものであり、中容器1と外装体11による二重壁部分には間隙Gが形成されている。
【0022】
そして、この加飾二重容器には加飾フィルムA21と加飾フィルムB22の2つの加飾フィルムが配設されている。
両加飾フィルムはいずれも、透明なポリエチレンテレフタレート樹脂製の延伸フィルムである基材フィルム23の表面に、スクリーン印刷による厚盛状の透明なドット状の印刷層24を、図2(a)、(b)に示されるように、ドットを一定の間隔で並べるようにして、凸状に規則性を有するパターンを形成している。
なお、基材フィルム23としてはポリエチレンテレフタレート樹脂製の延伸フィルムの他にもポリプロピレン樹脂製のフィルム等を使用することができる。
また、本実施例において加飾フィルムA21と加飾フィルムB22には、30〜300ミクロン程度の厚さの基材フィルム23を用い、印刷層24によるパターンは両者同一で、ドットの径は0.2〜2mm、突出高さは0.05〜0.5mmの範囲とした。
【0023】
また、加飾フィルムA21は平坦矩形状であるが、加飾フィルムBの全体形状は、図3に示されるように本体である平坦矩形状部分に細長いリボン状の連結片27を連結した形状としている。
【0024】
加飾フィルムA21はインサート成形により外装体11の胴部14の内周面の全高さ、全周に亘って熱溶着状に接着固定されている。
平坦矩形状の加飾フィルムA21をインサート材として円筒状に巻回して金型内にセットした状態で、外装体11の射出成形と同時に外装体11の胴部14の内周面にしっかりと固定することができる。
【0025】
一方、加飾フィルムB22は平坦矩形状部分を円筒状に巻回した状態で、二重壁部分の間隙G内の上端部近傍(図1中、クロスハッチングで示した領域)に挿入状に配設されている。
ここで、細長いリボン状の連結片27の下端部は間隙Gを下降し、中容器1の下端を迂回し、底カバー9の一部に形成されている欠部9kを経て、摺動底蓋6に垂下設されている固定片6aに形成されているスリットに挟持状に固定されており、これにより加飾フィルムB22と摺動底蓋6が連結される。
【0026】
上記のように、透明な印刷層24により規則性を有するパターンが形成された加飾フィルムA21と加飾フィルムB22を配設することにより、モアレ状の3次元的な視覚効果を透明な外装材11を透して現出させることができる。
そして、本実施例のポンプ付き注出容器では、さらに、ノズルヘッド32を押下げて内容液を注出すると、中容器1内が減圧状態となり内容液が減少した分、摺動底蓋6が上昇変位し、この上昇変位に伴って、連結片27を介して摺動底蓋6に連結されている加飾フィルムBが間隙Gを下方に変位するので(図4(a)、(b)参照)、この変位によりモアレ模様のダイナミックな変化を現出させることができる。
【0027】
本実施例における加飾フィルムA21と加飾フィルムB22の組み合わせでは、主として多数の水玉が整列したようなモアレ模様が現出されるが、加飾フィルムA21に対して、加飾フィルムB22が下降変位するに従って、水玉の大きさが大きくなったり小さくなったりダイナミックに変化する。
【0028】
次に、図5、6は本発明の加飾二重壁容器の第2実施例である他のポンプ付き注出容器を説明するためのものであり、図5は部分的に縦断して示す側面図、図6は倒立姿勢とした際の状態を部分的に縦断して示す側面図である。
【0029】
この第2実施例のポンプ付き注出容器の構成は、加飾フィルムB22の配設態様を除いて、第1実施例のポンプ付き注出容器の構成と略同様な構成を有する。
本実施例では矩形状の加飾フィルムB22を、円筒状に巻回した状態で二重壁部分の間隙G内に挿入状に配設しており、重力の方向に沿って間隙G内を上下動するような構成としている。
【0030】
従って、図5のような正立状態では、加飾フィルムB22は、間隙Gの下端部に位置し、正立状態から図6のような倒立状態とすると、加飾フィルムB22は重力により間隙Gの上端部に移動するため、この移動に伴ってモアレ模様のダイナミックな変化を現出させることができる。
【0031】
以上、実施例に沿って本願発明の実施の形態とその作用効果について説明したが、本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。
たとえば、上記実施例では二重壁容器としてポンプ付き注出容器を例示して説明したが、本発明の作用効果は、ポンプ付き注出容器に限らず、中容器と外装体から構成される二重壁を有する容器一般において発揮されるものである。
また、二重容器の形状は円筒状の他にも、楕円筒状、角形筒状とすることができる。
【0032】
また、上記実施例の加飾フィルムA、Bでは、印刷層24により多数のドットにより同じ規則性を有するパターンを形成するものとしたが、勿論、ドットに限定されるものではないし、加飾フィルムA、Bを異なるパターンとすることもできる。
また、上記実施例では加飾フィルムAをインサート成形により外装体11の内周面に接着固定する構成としたが、巻回して筒状にした加飾フィルムAを間隙Gに挿入し、その弾力を利用し外装体の内周面に内接するように配設することもできる。
さらに前述したように加飾フィルムAの配設態様は多様であり、たとえばシュリンクフィルムとして外装体の外周面に密着巻回状に配設することも可能である。
また、上記実施例では加飾フィルムBを円筒状にして間隙Gに挿入するようにしたが、たとえば半周分だけ、1/4周分にする等加飾目的に合わせてその配設範囲を自由に選択することができる。

【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本発明の加飾二重壁容器は二重壁部分の間隙を利用してモアレ状の3次元的な視覚効果を変化に富んだダイナミックなものにすることができ、今までにない加飾効果により化粧料等の容器として幅広い利用展開が期待される。

【符号の説明】
【0034】
1 ;中容器
2 ;口筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
6 ;摺動底蓋
6a;固定片
9 ;底カバー
9k;欠部
11;外装体
14;胴部
15;底部
21;加飾フィルムA
22;加飾フィルムB
23;基材フィルム
24;印刷層
27;連結片
31;ポンプ
32;ノズルヘッド
33;シリンダ
35;組付きキャップ
G ;間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収納する中容器(1)と、該中容器(1)の少なくとも胴部(4)を外装する透明性若しくは半透明性の合成樹脂製の外装体(11)により二重壁を形成し、基材フィルム(23)に透明性若しくは半透明性の印刷層(24)により凸状に規則性を有するパターンをそれぞれ形成した2枚の加飾フィルムA(21)と加飾フィルムB(22)のうち、一方の加飾フィルムA(21)を中容器(1)あるいは外装体(11)の周面、若しくは二重壁部分に形成される間隙(G)に配設し、他方の加飾フィルムB(22)を前記間隙(G)に移動可能に配設し、前記加飾フィルムA(21)と加飾フィルムB(22)が相対的に移動可能に構成し、両加飾フィルムのパターン間による光の干渉効果により、モアレ状の3次元的な視覚効果が現出する構成としたことを特徴とする加飾二重容器。
【請求項2】
スクリーン印刷による印刷層(24)により規則性を有するパターンを形成した請求項1記載の加飾二重容器。
【請求項3】
加飾フィルムA(21)をインサート材としたインサート成形により、該加飾フィルムA(21)を外装体(11)の内周面に巻回状に配設した請求項1または2記載の加飾二重容器。
【請求項4】
上端開口部に注出用のポンプ(31)を配設して使用するもので、中容器(1)は円筒状の胴部(4)の開口下端から該胴部(4)内に軸心方向に沿って密摺動可能に摺動底蓋(6)を嵌装したものであり、加飾フィルムB(22)を連結片(27)を介して、中容器(1)の下端下方を経て前記摺動底蓋(6)に連結し、内容液の注出に伴う摺動底蓋(6)の上方変位に伴い、前記加飾フィルムB(22)が二重壁部分に形成される間隙(G)内で下方に変位する構成とした請求項1、2または3記載の加飾二重容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−260598(P2010−260598A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111634(P2009−111634)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】