説明

加飾合成樹脂成形品

【課題】 本発明は、成形品に形成された凹凸状の図柄を、より立体的で高品位な視覚効果で現出させることができる加飾のための構成を創出することを課題とする。
【解決手段】 透明性を有する合成樹脂製の基材の裏面の所定領域に、オンデマンド印刷機能を有する印刷機により印刷塗膜を形成し、この印刷塗膜の形成部と非形成部により凹凸状の図柄を形成し、さらに基材の裏面側に反射面を有する加飾層若しくは加飾部材を印刷塗膜の形成部と非形成部を含む領域に積重状に配設する、あるいは透明性を有する合成樹脂製の基材の裏面の所定領域に平坦部と、周辺に該平坦部を残して彫刻状に形成された刻設凹部により図柄を形成し、所定領域の、刻設凹部を除いた平坦部にオンデマンド印刷機により印刷塗膜を形成して第1の加飾層とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凹凸状の図柄を形成した加飾合成樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料用向けの製品分野では、パッケージングにより高級感や差別化したアイキャッチ効果を付与するための加飾方法が求められている。
このような加飾方法の一つとして、成形品の表面にホットスタンプ法を用いて箔膜を形成し、金属光沢を有する図案が立体的に現出するような視覚効果を付与する加飾方法がある。また厚肉印刷などにより成形品表面に文字や図柄などを浮かび上がらせ、容器を高級感のある外観に仕上げる加飾方法もある。
【特許文献1】特開2001−058463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のホットスタンプ法や厚肉印刷では、立体的な視覚効果が不十分である点や、高品位な質感と云う面でまだ不満足な点がある。
【0004】
本発明は、成形品に形成された凹凸状の図柄を、より立体的で高品位な視覚効果で現出させることができる加飾のための構成を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の加飾合成樹脂成形品に係る第1の主たる構成は、
透明性を有する合成樹脂製の基材の裏面の所定領域に、オンデマンド印刷機能を有する印刷機により印刷塗膜を形成すること、
この印刷塗膜の形成部と非形成部により凹凸状の図柄を形成すること、
さらに基材の裏面側に反射面としての機能を有する加飾層若しくは加飾部材を印刷塗膜の形成部と非形成部を含む領域に積重状に配設すること、と云うものである。
【0006】
上記構成において、オンデマンド印刷機能を有する印刷機(以下、オンデマンド印刷機と記す。)とはインクジェット印刷機、昇華型印刷機、熱転写型印刷等の、予めコンピューターに記憶させたパターンに沿って被印刷物に印刷塗膜を形成することが可能な印刷機を指す。
このような印刷機によれば、合成樹脂製の基材の裏面に高い精度で位置合わせをしながら所定位置に印刷塗膜を繊細な形状を高品位に形成することができる。
また、印刷塗膜は単色は勿論のことフルカラーとすることもできる。
また、印刷版等の製作の必要もないので、加飾目的に応じて容易に多種多様のパターンに印刷塗膜を形成することができる。
【0007】
そして、さらに基材の裏面側に、形成部と非形成部を含む領域に積重状に配設した加飾層若しくは加飾部材による反射面により、光が反射され、透明性を有する基材の光学的効果も相俟って、形成部と非形成部による凹凸状の図柄に金属光沢を付加して、彫深く、立体的に現出させることができる。
ここで、上記したオンデマンド印刷機では、高精度に複数回に亘って重ね印刷が可能であり、このような重ね印刷により印刷塗膜を肉厚することにより、さらに図柄を彫深く、立体的に現出させることができる。
【0008】
本発明の他の構成は、上記第1の主たる構成に加えて、印刷塗膜の形成部に透明性を有する透明性加飾層を積層する、と云うものである。
【0009】
上記構成により、印刷塗膜の形成部に透明性加飾層を積層することより、すなわち、印刷塗膜と反射面としての機能を有する加飾層若しくは加飾部材(以下、反射面としての機能を有する加飾層と加飾部材を総称して反射性層と記す場合がある。)との間に透明性加飾層を積層することにより、透明な基材と透明性加飾層の光学的な作用が相俟って、より立体的な視覚効果を現出させることが可能となる。
【0010】
本発明のさらに他の構成は、上記第1の主たる構成に加えて、印刷塗膜の形成部と非形成部を含む所定領域に透明性の加飾層を積層する、と云うものである。
【0011】
上記構成により、反射性層が透明性加飾層を介して印刷塗膜の形成部と非形成部に積層、あるいは積重するので、透明な基材と透明性加飾層の光学的な作用が相俟って、印刷塗膜の形成部と非形成部による凹凸状の図柄をより立体的に現出させることが可能となる。
また、透明性加飾層を有色透明性とすることにより、凹凸状の図柄にさらに色合の変化を加味させることが可能となる。
【0012】
本発明のさらに他の構成は、印刷塗膜の形成部と非形成部を含む領域に、蒸着膜により、反射面としての機能を有する加飾層を形成する、と云うものである。
【0013】
上記構成は、反射面を蒸着膜で構成するものであり、この加飾層は真空蒸着法により形成することができる。
そして真空蒸着法によれば、印刷塗膜の形成部と非形成部による凹凸に沿って、反射面を積重させることができ、より高品位に凹凸感を現出させることが可能となる。
【0014】
本発明のさらに他の構成は、反射面としての機能を有する加飾部材を用い、基材の裏面側に反射面を積重状に配設する、と云うものである。
なお、上記構成で、加飾部材の基材の裏面側への積重態様は、加飾部材を印刷塗膜や、透明性加飾層や、基材裏面に密着させた態様に限定されず、印刷塗膜や、透明性加飾層や、基材裏面との間に隙間を形成した態様とすることもできる。
【0015】
また、加飾部材は金属板片、金属薄膜片、表面に蒸着膜等の金属薄膜を形成した合成樹脂成形品等、さまざまな態様で用意することができる。
また、反射面は鏡面状に光を完全に反射させるものだけでなく、一部の光を通過する半反射性とすることもできる。
また反射面は、所定領域全域に積重させることも部分的に積重させることもでき、基材に密着状に積重することもでき、さらなる光学的効果を期待して少し隙間を空けて積重することも可能である。
【0016】
本発明の加飾合成樹脂成形品に係る第2の主たる構成は、
透明性を有する合成樹脂製の基材の裏面の所定領域に、平坦部と、周辺に該平坦部を残して彫刻状に形成された刻設凹部により図柄を形成すること、
所定領域の、刻設凹部を除いた平坦部にオンデマンド印刷機により印刷塗膜を形成して第1の加飾層とすること、
にある。
【0017】
平坦部と刻設凹部により形成される彫刻様の図柄と、刻設凹部を除いた平坦部にだけに選択的に形成される印刷塗膜からなる第1の加飾層により、透明性を有する基材の光学的な効果も相俟って、図柄を彫深く、立体的に現出させることができる。
【0018】
ここで、オンデマンド印刷機によれば繊細な形状も、高い精度で位置合わせをしながら印刷塗膜を形成することができ、平坦部と刻設凹部により形成される彫刻様の図柄が細かくて精細な場合にも刻設凹部を除く平坦部だけに図柄に沿ってずれることなく高い精度で第1の加飾層を形成することができ、立体的な視覚効果を高品位に現出させることができる。
【0019】
本発明の他の構成は、上記第2の主たる構成に加えて、
第1の加飾層に重ねて、平坦部と刻設凹部を含む領域に、この平坦部と刻設凹部に係る凹凸形状に沿って塗膜と蒸着膜から選ばれる少なくとも一層の膜からなる第2の加飾層を積層形成する、と云うものである。
【0020】
上記構成によれば、印刷塗膜からなる第1の加飾層と第2の加飾層を積層した平坦部と、第2の加飾層だけを積層した刻設凹部で図柄を形成することになるが、これらの積層態様の違いにより平坦部と刻設凹部の色合い、着色濃度、金属光沢、表面性状に係る質感を変化させて、彫刻様の図柄に繊細に陰影を付与したり、金属光沢を微妙に変化させることが可能となり、透明な基材の光学的効果が相俟って、さらに図柄をより彫深く、より立体的に現出させることができると共に、色合い、着色濃度、金属光沢あるいは質感を繊細に変化させて高品位な加飾を実現することができる。
【0021】
ここで、第2の加飾層は塗膜と蒸着膜とから選ばれる少なくとも1層の膜からなるものであり、単一の膜で形成する他にも、たとえば透明な着色塗膜+蒸着膜というように複数の膜で形成することも選択でき、平坦部と刻設凹部の加飾の違いをさまざまな態様で設定することが可能となる。
また、第1の加飾層と第2の加飾層を同色系の塗膜で形成して平坦部と刻設凹部の着色濃度を微妙に変化させることもできる。
【0022】
なお、第2の加飾層の塗膜は、第1の加飾層と同様にオンデマンド印刷機能を有する印刷機により形成することもできるが、平坦部と刻設凹部を含む領域に形成するものであるので、通常の塗装方法で形成することができる。
また、蒸着膜は真空蒸着法等の方法で形成することができる。
【0023】
本発明のさらに他の構成は、上記第2の主たる構成に加えて、反射面を有する加飾部材を用い、基材の裏面側に反射面を積重状に配設する、と云うものである。
【0024】
上記構成によれば、基材の裏面側に積重状に配設した加飾部材の反射面からの反射光による光学的効果により、図柄をより立体的に、また複雑に現出させることができる。
なお、上記構成で、加飾部材の基材の裏面側への積重態様は、加飾部材を平坦部に形成された第1の加飾層あるいは第2の加飾層に密着させた態様に限定されず、第1の加飾層あるいは第2の加飾層との間に隙間を形成した態様とすることもできる。
【0025】
また、加飾部材は金属板片、金属薄膜片、表面に蒸着膜等の金属薄膜を形成した合成樹脂成形品等、さまざまな態様で用意することができる。
また、反射面は鏡面状に光を完全に反射させるものだけでなく、一部の光を通過する半反射性とすることもできる。
また反射面は、所定領域全域に積重させることも部分的に積重させることもできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の加飾合成樹脂成形品は上記のような構成であり、以下に示す効果を奏する。
第1の主たる構成を有するものにあっては、印刷塗膜の形成部と非形成部による凹凸状の図柄と、加飾層若しくは加飾部材による反射面からの光の反射と、透明性を有する基材の光学的な作用効果が相俟って、この図柄を、金属光沢を付加して、彫深く、立体的に現出させることができる。
【0027】
また、この印刷塗膜はオンデマンド印刷機により形成されたものであり、基材の裏面の所定位置に、繊細な形状も高い精度で位置合わせをしながら印刷塗膜を形成することができ、フルカラーとすることもでき、重ね印刷により塗膜を肉厚することができ、多種多様パターンに容易に対応することができ、上記立体的な視覚効果と相俟って高品位で多様な加飾性を付与することができる。
【0028】
さらに、反射性層と、印刷塗膜の形成部あるいは形成部と非形成部の双方との間に透明性加飾層を有するものにあっては、透明な基材と透明性加飾層の光学的な作用が相俟って、印刷塗膜の形成部と非形成部による凹凸状の図柄をより立体的に現出させることができる。
【0029】
第2の主たる構成を有するものにあっては、平坦部と刻設凹部により形成される彫刻様の図柄と、刻設凹部を除いた平坦部にだけに選択的に形成されるオンデマンド印刷機による印刷塗膜からなる第1の加飾層により、透明な基材の光学的効果も相俟って、図柄をより彫深く立体的に現出させることができる。
【0030】
また、オンデマンド印刷機によれば繊細な形状も高い精度で位置合わせをしながら印刷塗膜を形成することができ、平坦部と刻設凹部により形成される彫刻様の図柄が細かくて精細な場合にも刻設凹部を除く平坦部だけに図柄に沿ってずれることなく高い精度で第1の加飾層を形成することができ、立体的な視覚効果を高品位に現出させることができる。
【0031】
さらに第2の加飾層を形成するものにあっては、図柄を、より彫深く、より立体的に現出させることができると共に、色合い、着色濃度、金属光沢あるいは質感を繊細に変化させて高品位な加飾を実現することができる。
【0032】
また、基材の裏面側に反射面を配設するものにあっては、この反射面からの反射光による光学的効果により、図柄をより立体的に、また複雑に現出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1、2には本発明の加飾合成樹脂成形品の第1実施例である化粧料用容器1を示す。この化粧料用容器1は合成樹脂成形品で、容器本体2と蓋体3をヒンジ結合した構成である。蓋体3は透明な合成樹脂製であり、裏面に文字「ABC」を図案化した図柄5が形成されており、透明な基材11を通して表側からこの図柄5を見えるようにしている。
【0034】
図3に蓋体3の図柄5近傍の断面図を示す。この蓋体3では透明な基材11の裏面にオンデマンド印刷機として代表的なインクジェット印刷機により印刷塗膜30が形成され、この印刷塗膜30の形成部14と非形成部15により「ABC」と云う図柄5が形成されている。
【0035】
そして、上記、形成部14と非形成部15を含む所定領域全体に、凹凸形状に沿って真空蒸着法による蒸着膜32が積層し、加飾層20が形成され反射面としての機能を発揮する。
そして、蓋体3を表側から見ると、周辺が金属光沢を有する中で、図柄5である「ABC」の部分だけが着色しており、透明な基材11による光の屈折効果も相俟って、この着色した図柄5である文字「ABC」が浮かび上がっているような立体的な視覚効果が発揮される。
【0036】
次に、図4は本発明の加飾合成樹脂成形品の第2実施例を示すものであり、コンパクト容器の蓋体3の上面図である。図4に示されるように、黒色の印刷塗膜30の形成部14と非形成部15により亀の甲羅状の図案を現出させたものである。
【0037】
図5は図4中のB−B線に沿って示す縦断面図である。この蓋体3では無色透明な基材11の裏面にインクジェット印刷機により黒色の印刷塗膜30が形成され、この印刷塗膜30の形成部14と非形成部15による凹凸に沿って塗装により無色の透明性加飾層23を形成し、さらにこの透明性加飾層23の凹凸に沿って形成部14と非形成部15を含む所定領域全体に真空蒸着法により蒸着膜32を積層し、この蒸着膜32により反射面としての機能を有する加飾層20を形成するようにしている。
【0038】
そして、この第2実施例の蓋体3を表側から見ると、無色透明な基材11を透して、黒色である印刷塗膜30の形成部14と、金属光沢を有する非形成部15からなる図柄が現出されるが、オンデマンド印刷による印刷塗膜30により細線を使った繊細な図柄が高精度に形成されると共に、形成部14と非形成部15による僅かな凹凸が、透明な基材11と透明性加飾層23による光の屈折効果が相俟って、強調され、金属光沢が付加された繊細な図柄が浮かび上がっているような3次元的な視覚効果が現出し、高品位で、今までにない独特な加飾効果が発揮されている。
ここで、オンデマンド印刷によれば、印刷塗膜30を高い精度で多数回重ねて印刷して厚肉状に形成することができ、繊細な図柄をより立体的に現出させることができる。またさらには、図柄に沿って高精度に印刷塗膜30の印刷回数を変えることもでき、高品位に微妙にその高さが変化する凹凸感を現出させることもできる。
【0039】
なお、上記実施例では、印刷塗膜30を黒色とし、透明性加飾層23を無色透明とし、モノトーンな色合いを現出させるようにしたが、勿論、印刷塗膜30や透明性加飾層23を有色にして、様々な色合の図柄とすることもでる。
また、透明性加飾層23を半透明性としてもよく、また違った光学的効果を現出させることができる。
【0040】
次に、図6は本発明の加飾合成樹脂成形品の他の加飾態様を示す縦断面図である。この例は図5に示される加飾態様と同様に、黒色の印刷塗膜30の形成部14と非形成部15により凹凸状の図案を現出させるものであるが、この例では透明性加飾層23を印刷塗膜30だけに積層し、そして蒸着膜32の替わりに、基材11の裏面側に反射面を有する薄板状の加飾部材25を積重した点が異なる。
この加飾部材25は透明な合成樹脂製のシート25aの片面に蒸着膜25bを積層して反射面としたものである。
【0041】
次に、図7は、本発明の加飾合成樹脂成形品のさらに他の加飾態様を示す縦断面図である。この例は裏面の所定領域に、平坦部12と、周辺にこの平坦部12を残して彫刻状に形成された刻設凹部13により図柄を形成した透明な基材11を使用するものであり、裏面の所定領域の刻設凹部13を除く平坦部12には印刷塗膜30による第1の加飾層21が形成され、さらにこの第1の加飾層21に積層して、平坦部12と刻設凹部13を含む全領域に、この平坦部12と刻設凹部13による凹凸に沿って、蒸着膜32による第2の加飾層22が積層している。
【0042】
ここで、一例として第1の加飾層21を透明有色系の印刷塗膜30により形成すると、基材11を表側から見た場合、第2の加飾層22を形成する蒸着膜32により刻設凹部13を含めた全体から金属光沢が現出する中で、有色の金属光沢を有する刻設凹部13部分が浮かび上がっているような立体的な視覚効果が発揮される。
【0043】
また、第1の加飾層21を形成する印刷塗膜30はオンデマンド印刷機によるものであり、図柄が繊細な場合にも刻設凹部13との境界に沿ってずれることなく、平坦部12だけに高い精度で第1の加飾層21を形成することができる。
【0044】
なお、第2の加飾層22は塗膜であっても蒸着膜であってもよいし、加飾目的に応じて、さらに蒸着膜+塗膜のように膜を積層したもので形成することもできる。また、第1の加飾層21と第2の加飾層22を同色系の塗膜で形成して平坦部12と刻設凹部13の着色濃度を微妙に変化させることもできる。
【0045】
次に、図8は本発明の加飾合成樹脂成形品のさらに他の加飾態様を示す縦断面図であり、透明な合成樹脂製の基材11の裏面の刻設凹部13を除く平坦部12に、オンデマンド印刷機による印刷塗膜30により第1の加飾層21を形成したものである。
この例は、図7の加飾層の構成が第1の加飾層21と第2の加飾層22を組合わせたものに対して、第1の加飾層21だけから構成されるものではあるが、平坦部12と刻設凹部13により形成される彫刻様の図柄と、平坦部にだけに選択的に形成される印刷塗膜30により、透明性を有する基材11の光学的な効果も相俟って、彫刻様の図柄を彫深く、より立体的に現出させることができる。
【0046】
次に、図9(a)、(b)は本発明の加飾合成樹脂成形品のさらに他の加飾態様を示す縦断面図であり、図8の加飾態様に加えて、基材11の裏面側に反射面を有する薄板状の加飾部材25を積重した例である。
この加飾部材25は透明な合成樹脂製のシート25aの片面に蒸着膜25bを積層して反射面としたものであり、この反射面からの反射光による光学的効果が相俟って、図柄をより立体的に現出させることができる。
【0047】
図9(a)の例ではシート加飾部材25を蒸着膜25bが下になるようにして、第1の加飾層21に密着状にして基材11に積重し、反射面と第1の加飾層21との間にシート25aによる透明な隙間を形成し、さらなる光学的効果が発揮されるようにしている。
また、図9(b)は加飾部材25を蒸着膜25bが上になるようにして、加飾部材25自体を、基材11との間に隙間26を形成した状態で積重した例である。
勿論、図6(a)、(b)においてシート25aと蒸着膜25bの上下位置は逆にすることもできる。
【0048】
ここで、反射面を有する加飾部材25の構成あるいはその積重態様は上記実施例に限定されずさまざまなバリエーションの中から選択することができる。
たとえば、加飾部材は金属板片、金属薄膜片、表面に真空蒸着やホットスタンプによる金属薄膜層を形成した合成樹脂成形品等、さまざまな態様で用意することができる。
また反射面は、鏡面状に光を完全に反射させるものだけでなく一部の光を通過する半反射性とすることもでき、所定領域全域に積重させることも部分的に積重させることもできる。
【0049】
以上、本発明の加飾合成樹脂成形品について、その実施の形態を実施例に沿って説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
たとえば、図柄は図1の文字「ABC」や、図4に示すような幾何学模様のようなものに限るものではなく、さまざまな形状の図案や、模様とすることができる。また基材となる成形品は半透明性のものでも使用することができる。
【0050】
また、前述したように、第2の加飾層や加飾部材は加飾目的や成形品の形状に合わせてさまざまな構成のものを選択でき、印刷塗膜の形成部と非形成部、あるいは平坦部と刻設凹部の、色合い、光沢、質感の変化を多くのバリエーションの中から選択することができる。

【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明の加飾合成樹脂成形品は透明な基材の裏面に、オンデマンド印刷機の機能を利用して形成した印刷塗膜を利用し、さらに積重した加飾層や加飾部材、あるいは基材の裏面に形成した彫刻様の図柄と組み合わせて、立体的で高品位な質感を有する視覚効果を現出させるものであり、化粧料用容器等の分野での幅広い展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の加飾合成樹脂成形品の第1実施例である化粧料用容器の斜視図である。
【図2】図1の化粧料用容器の蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図3】図1中のA−A線に沿って示す蓋体の図柄近傍の縦断面図である。
【図4】本発明の加飾合成樹脂成形品の第2実施例である化粧料用容器の蓋体の上面図である。
【図5】図4の蓋体の、B−B線に沿って示す縦断面図である。
【図6】本発明の加飾合成樹脂成形品の他の加飾態様を示す縦断面図である。
【図7】本発明の加飾合成樹脂成形品のさらに他の加飾態様を示す縦断面図である。
【図8】本発明の加飾合成樹脂成形品のさらに他の加飾態様を示す縦断面図である。
【図9】(a)、(b)はそれぞれ本発明の加飾合成樹脂成形品のさらに他の加飾態様を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ;化粧料用容器
2 ;容器本体
3 ;蓋体
5 ;図柄
11;基材
12;平坦部
13;刻設凹部
14;(印刷塗膜の)形成部
15;(印刷塗膜の)非形成部
20;加飾層
21;第1の加飾層
22;第2の加飾層
23;透明性加飾層
25;加飾部材
25a;シート
25b;蒸着膜
26;隙間
30;印刷塗膜
32;蒸着膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する合成樹脂製の基材(11)の裏面の所定領域に、オンデマンド印刷機能を有する印刷機による印刷塗膜(30)を形成し、該印刷塗膜(30)の形成部(14)と非形成部(15)により凹凸状の図柄を形成し、さらに基材(11)の裏面側に反射面としての機能を有する加飾層(20)若しくは加飾部材(25)を前記形成部(14)と非形成部(15)を含む領域に積重状に配設したことを特徴とする加飾合成樹脂成形品。
【請求項2】
印刷塗膜(30)の形成部(14)に透明性加飾層(23)を積層した請求項1記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項3】
印刷塗膜(30)の形成部(14)と非形成部(15)を含む所定領域に透明加製飾層(23)を積層した請求項1または2記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項4】
印刷塗膜(30)の形成部(14)と非形成部(15)を含む領域に、蒸着膜(32)により、反射面としての機能を有する加飾層(20)を形成した請求項1、2または3記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項5】
反射面としての機能を有する加飾部材(25)を用い、基材(11)の裏面側に前記反射面を積重状に配設したことを特徴とする請求項1、2または3記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項6】
透明性を有する合成樹脂製の基材(11)の裏面の所定領域に、平坦部(12)と、周辺に該平坦部(12)を残して彫刻状に形成された刻設凹部(13)により図柄を形成し、前記所定領域の、刻設凹部(13)を除いた平坦部(12)にオンデマンド印刷機能を有する印刷機による印刷塗膜(30)を形成して第1の加飾層(21)としたことを特徴とする加飾合成樹脂成形品。
【請求項7】
第1の加飾層(21)に重ねて、平坦部(12)と刻設凹部(13)を含む領域に、該平坦部(12)と刻設凹部(13)に係る凹凸形状に沿って塗膜と蒸着膜から選ばれる少なくとも一層の膜からなる第2の加飾層(22)を積層形成した請求項6記載の加飾合成樹脂成形品。
【請求項8】
反射面を有する加飾部材(25)を用い、基材(11)の裏面側に前記反射面を積重状に配設した請求項6または7記載の加飾合成樹脂成形品。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−172998(P2009−172998A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142781(P2008−142781)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】