説明

加飾方法

【課題】内装壁面に光輝感がある加飾方法の提供である。
【解決手段】建築用仕上塗材の下地に、1粒当たり3以上劈開面を有する骨材を含む透明或いは半透明の結合樹脂組成物を鏝にて塗り付けで仕上げること、また前記骨材が0.5〜2.0mmである砥粒であること、建築用仕上塗材の下地が粒径0.3〜1.0mmの骨材を含むこととする壁の加飾方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に光輝性加飾を付与する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築用仕上塗材は、ローラー、コテ、吹きつけ、刷毛等の施工器具と配合を組み合わせることにより様々な模様が形成できる。また塗材として雲母等の鱗片状物資を配合し、岩石の劈開面を模したものとか、金箔等で加飾したものはあるものの、例えばダイヤモンド様な光輝性を付与したものはまだない。
【0003】
鱗片状の光輝性を有し、下地層とのなじみが良く調和のとれた落ち着きのある島状模様が形成出来、全体として重厚さ落ち着きのある耐久性の良好な装飾材の形成方法並びに島状模様の形成に好適な塗材として、基材又は施工面に、合成樹脂エマルジョンと骨材とを含有する第1の塗材を吹付けて下地層を形成し、その乾燥前又は後に、その表面の面積の20〜80%を覆うような割合で、粒径0.1〜3mmの骨材100重量部、樹脂固形分にして15〜60重量部の合成樹脂エマルジョン、骨材の重量に対して5〜50重量%の雲薄片を含有ししており、雲母薄片の60重量%以上が非人工着色雲母薄片である第2の塗材をほぼ島状模様に塗布し、その上をスポンジローラーで押圧してから乾燥する方法が開示されている。(特許文献1)
【0004】
塗工作業性に優れ、仕上がり外観の良好な塗材とその仕上げ方法として、ベース塗料に平均粒子系0.3〜0.5mmと平均粒子径1.0〜2.0mmのガラスビーズを配合して調整されている塗材並びに塗材を上塗りとする方法が開示されている。(特許文献2)
【0005】
立体的な形状を有するとともに、微妙な色彩の変化を有する砂岩調の仕上面を、少ない工程で、施工者の技量に左右されず、簡便に形成することができる方法として、(1)基材に対して、骨材及び結合剤を含有する塗材を塗付することにより、骨材による微視的な凹凸を有する基層を被塗面全面に形成させ、(2)該基層の乾燥前に、上記(1)と同一または同種異色の塗材を基層面の一部に塗付することにより、巨視的な凹凸を有する模様層を形成させ、(3)該模様層の乾燥前に、水及び/または溶剤を含む刷毛を用いて、該模様層表面、及び基層面の一部を撫でることにより、骨材による微視的な凹凸を平坦化させ、(4)層全体を乾燥させる方法が開示されている。(特許文献3)
【0006】
塗料用シンナー等の有機溶剤を使用せずに、水性塗材によって形成される化粧面の平坦化処理を行うことができる方法として、被塗面に対し水性塗材を塗付する第一の工程、該水性塗材の乾燥段階において、押圧具を用いて塗膜表面を平坦化する第二の工程において、該水性塗材として、合成樹脂エマルジョンを固形分で100重量部、撥水剤を固形分で1〜100重量部、平均粒子径0.1〜200μmの無機質粉粒体を100〜2000重量部含有する水性塗材を使用し、第二の工程において、押圧具と塗膜表面との間に水を介在させることが開示されている。(特許文献4)
【0007】
壁面すなわち垂直面に、意匠材料(鱗片状物質或いは金属箔片物質)を、部分的にも、壁全体に均質に点在させる或いは局所的には大小錯雑であるが壁全体に均質にまた意匠材料の占める比率も任意に変えられる塗装方法及び塗材として、粘度が2〜25Pa・s、TI値が2.2〜2.7である結合用塗料と鱗片状物質或いは金属箔片物質からなる意匠用塗料で、鱗片状物質或いは金属箔片物質が撹拌により分散されたもので、この意匠用塗料をゴム鏝で塗布する意匠性賦与方法が開示されている。(特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−135471号公報
【特許文献2】特開2001−106979号公報
【特許文献3】特開2003−211077号公報
【特許文献4】特開2004−249268号公報
【特許文献5】特開2007−262294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、壁面に光輝感がある加飾方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、建築用仕上塗材の下地に、1粒当たり3以上劈開面を有する骨材を含む透明或いは半透明の結合樹脂組成物を鏝にて塗り付けで仕上げる加飾方法で、光輝感を有する壁を施工できる。
【0011】
請求項2の発明は、前記骨材が粒径0.5〜2.0mmである砥粒であることを特徴とする請求項1の加飾方法で、光輝性が高い壁を施工できる。
【0012】
請求項3の発明は、建築用仕上塗材の下地が粒径0.3〜1.0mmの骨材を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の加飾方法で、プライマー工程なく、密着性を上げられ、また、結合樹脂組成物の塗付性が良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加飾方法は、粒子感の高い光輝感が得られる壁が得られるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】試験体の評価の説明図で、観察角度45°のグラフである。座標0、0から近いところから光学的な粒子性、粒状性をグレード化する0〜19曲線がある。X軸S_aは反射光の面積、Y軸S_iは反射光の強さで、表1のデータの実施例1〜4をプロット(符号1〜4)してある。
【図2】図1と同じであるが、観察角度が15°のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
建築用仕上塗材はJIS A6909に規定され、「この規格は、セメント、合成樹脂などの結合材、顔料、骨材などを主原料とし、主として建築物の内外壁又は天井を,吹付け、ローラー塗り、こて塗りなどによって立体的な造形性をもつ模様に仕上げる建築用仕上塗材について規定する。」とされている。このうち本発明は内装の店補等の壁に応用される。本発明は壁面を最もみられる大凡正面に相対する場合に光輝感が最も得られる方法で、劈開面を1粒当たり3以上の骨材を含む、透明性がある結合樹脂を建築用仕上塗材の下地上に鏝で塗り付けることにより、光輝性の高い仕上げ方法となることを鋭意検討の結果至ったものである。
【0016】
劈開面とは骨材の原料粉砕の過程で、結晶の特定方向への割れやすく、その面が形成されたもので、雲母等の鱗片ではこの劈開面が1粒当たり2となり、この場合扁平であるため、粒子同士の重なり合いが生じ、光学的な粒子性、粒状性(以下、粒状性、粒子性は光学的なものとする。)が劣る。この粒状性が目立つこととなる。光輝性が高いものとなる。
本発明の1粒当たり3以上劈開面を有する骨材とは扁平でないことであり、鏝で塗り付けると延ばすことができることができるものである。この骨材には天然石として、ガーネット、方解石、長石、石英、ダイアモンド等がある。また、この劈開性を活かし、砥粒としての適性として破砕性があり、絶えず新しい研削部位が形成されるものである。砥粒としては天然ではコランダム、エメリー、ガーネット、ケイ石、スピネル、ダイヤモンド等、人造として溶融アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素、人造ダイヤモンド等があり、粒径0.5mm〜2.0mmが粒子性が得られ、好ましい光輝性が得られる。さらに好ましくは酸化硅素質原料と炭素材とを電気抵抗炉で反応させたインゴットを粉砕整粒したもので、黒色の炭化珪素結晶からなるブラックシリコンカーバイドがさらに光輝感を高めることができる。
【0017】
本発明の結合樹脂組成物は合成樹脂エマルジョンに、増粘剤、表面外観、濡れ性、ピンホール解消等目的の界面活性剤等の添加剤で構成され、骨材の劈開面での反射光の減衰を低く抑えるため、透明が好ましい。但し、意匠上着色半透明とする場合は透明顔料或いは染料で着色しても良い。(本願では着色したものを半透明という。)下地壁面への密着性、耐光性、耐侯性、耐汚染性、防塵性等で配合が決定する。好ましくはアクリル樹脂系エマルジョンが適す。樹脂固形分は5〜20重量%が好ましく、この結合樹脂組成物に上記骨材を200〜600重量%配合したものが好ましい。この組成であれば、光輝性が得られ、また鏝作業性も得ることができる。
【0018】
合成樹脂エマルジョンには、アクリル樹脂エマルジョンやアクリルウレタン樹脂エマルジョン、シリコンアクリルエマルジョン等を使用することができる。合成樹脂エマルジョンは耐候性や密着性の点で、アクリル樹脂エマルジョンやアクリルウレタン樹脂エマルジョン、シリコンアクリルエマルジョンが好ましい。
【0019】
上記骨材のうち、75重量%未満を他の骨材で置き換えることもできる。例えば下地の建築用仕上塗材の色調を活かす場合はガラスビーズや、ガラスカレット等の透明性のものを使用する。同色で光輝感を調整する場合や色調コントラストを付ける場合は着色硅砂、硅砂等を使用できる。これらの粒径は0.3〜1.5mmが好ましく、劈開面を有する骨材より、粒径が小さいものを用いる。
【0020】
本発明の結合樹脂組成物の下地は特に限定はないが、下地の色調、模様等を活かす場合はJIS A6909に規定される建築用仕上塗材の合成樹脂エマルジョン系仕上塗材に粒径0.3〜1.0mmの骨材を40重量%〜60重量%混合することにより本発明の結合樹脂組成物をプライマーを使うことなく密着の問題なく、塗付性も良く使用できる。
【0021】
本発明の結合樹脂組成物の塗付は下地の凹凸により異なるが平滑に仕上げられた下地であれば2.0〜3.0kg/m鏝により延ばして塗り付ける。鏝は摩耗による夾雑物の変色要因を排除するため合成樹脂製の鏝を用いることが好ましい。前記影響のない場合はステンレス製の鏝でも良い。また、平滑性が欠けている場合はゴム鏝を使うことができる。
【0022】
以下、実施例及び比較例を記す。
【実施例1】
【0023】
石膏ボードにアイカジョリパッドJQ−200(アイカ工業(株)、商品名、不燃アクリル樹脂系仕上げ塗材)100重量部に粒径0.9mmの寒水石を50重量部配合し、水にて粘度を調整し、約1.2kg/m金鏝で平滑に仕上げ乾燥したものを下地とし、JC−50(アイカ工業(株)、商品名、アクリル樹脂系上塗り材、透明固形分約15%ペースト状)100重量部に砥粒としてブラックシリコンカーバイド(粒径約1.0〜1.5mm)を500重量部配合し、塗付粘度調整に30重量部の水を加えたものを前記下地にプラスチック鏝にて2.5kg/m塗付乾燥し実施例1の試験体とした。
【実施例2】
【0024】
実施例1のブラックシリコンカーバイド500重量部を375重量部とし、黒硅砂(6号、7号混合品 平均粒径0.3mm、黒着色硅砂)を125重量部とした以外実施例1と同じく行い実施例2の試験体とした。
【実施例3】
【0025】
実施例1のブラックシリコンカーバイド500重量部を250重量部とし、黒硅砂)を250重量部とした以外実施例1と同じく行い実施例3の試験体とした。
【実施例4】
【0026】
実施例1のブラックシリコンカーバイド500重量部を125重量部とし、黒硅砂を375重量部とした以外実施例1と同じく行い実施例4の試験体とした。
【0027】
比較例1
実施例1のブラックシリコンカーバイド500重量部をセルベン((株)井上化鉱、瀬戸セラミ−(株)の登録商標、白色陶器スクラップ粉砕分級品粒径0.4〜1.7mm)とした以外実施例1と同じく行い比較例1の試験体とした。
【0028】
実施例・比較例の結果を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の計測はBYK−mac 6340(東洋精機製多角度色彩計)で計測した。効果パラメーターとしてスパークル(光輝感)、グレイネス(粒子感)、フロップ値が計測できる。照射角度は45°で 観測角度は表中Angle、S_Gはその測定条件での粒子性、 S_iは強さ、S_aは面積、diffuseは拡散光での測定、Gはグレイネス(粒子感)である。
評価は総合して効果が得られるものを○とした。
【符号の説明】
【0031】
1 実施例1の試験体
2 実施例2の試験体
3 実施例3の試験体
4 実施例4の試験体
5 グレード0の曲線
6 グレード5の曲線
7 グレード10の曲線
8 グレード15の曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用仕上塗材の下地に、1粒当たり3以上劈開面を有する骨材を含む透明或いは半透明の結合樹脂組成物を鏝にて塗り付けで仕上げることを特徴とする壁加飾方法。
【請求項2】
前記骨材が粒径0.5〜2.0mmである砥粒であることを特徴とする請求項1の加飾方法。
【請求項3】
建築用仕上塗材の下地が粒径0.3〜1.0mmの骨材を含んで仕上げられていることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の加飾方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−184910(P2011−184910A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50037(P2010−50037)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】