説明

加飾樹脂成形品及びその製造方法

【課題】曲面形状部分にまで着色模様と凹凸模様が同調した意匠を付与するとともに、凹凸感のある優れた外観を付与する。
【解決手段】一方面30に紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクからなる凸部2が形成されることで当該一方面に着色模様と凹凸模様が同調した意匠が設けられた樹脂シート3と、該樹脂シートの他方面31に合成樹脂の射出成形により積層一体化された樹脂射出成形体4とを備えた加飾樹脂成形品1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸感のある外観が付与された加飾樹脂成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂成形品の表面に凹凸感のある外観を付与するために、射出成形型のキャビティ面に凹凸を設けておいて、射出成形品の表面に凹凸模様を賦形する手法が知られている。しかしながら、この手法では、成形品の平面部には凹凸模様を付与することができるものの、曲面形状部分を含む側面部では凹凸模様を賦形することが困難である。これは、成形型から成形品を抜く際に、成形品の側面に凹凸があると成形型から抜きにくく、作業性に問題が生じるためである。
【0003】
一方、合成樹脂成形品の表面を加飾する方法の一つとして、予め加飾された樹脂シートを成形型内に配置し、成形型内に合成樹脂を射出することにより、加飾された樹脂シートと合成樹脂からなる樹脂射出成形体とを一体化する方法(シートインサート成形)が知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、紫外線硬化型着色インキで加飾されたシートを用い、加飾層である着色インク層を内側に向けて金型にセットし、該加飾層側に樹脂射出成形体を積層一体化したインサート成形品が開示されている。また、下記特許文献2には、樹脂シートの裏面側に紫外線硬化型インクのインクジェット印刷により加飾層を施し、その上にバインダー層を設けた上で、該バインダー層側に樹脂射出成形体を積層一体化した加飾方法が開示されている。このように、従来、加飾された樹脂シートをインサート成形する場合、樹脂シートはその加飾層側を射出樹脂側に向けて金型に配置した状態で、射出成形することにより、加飾層が樹脂シートの内側に設けられるのが一般的である。
【0005】
そのため、上記従来のシートインサート成形による加飾樹脂成形品では、加飾層による意匠が樹脂シートを介して外部に表されるので、樹脂シートの透過度等の影響を受けてしまう。上記特許文献のように加飾層が単なる着色模様からなる場合には、このような樹脂シートを介して外部に表される意匠であっても、外観上それほど問題にはならないかも知れない。しかしながら、着色模様と凹凸模様が同調した意匠を設けた樹脂シートの場合には、凹凸感が樹脂シートを介して外部に表されにくく、上記意匠の優れた凹凸感を十分に発現させることができない。
【0006】
下記特許文献3には、透明な樹脂シートの一方面に、凹凸模様を有する紫外線硬化型樹脂層を積層し、得られた積層シートに樹脂射出成形体を積層一体化することが開示されている。上記積層シートは、凹版ロールによって凹凸模様を一方面に持つシート状の紫外線硬化型樹脂層を形成するものであり、着色模様と凹凸模様が同調したものではない。しかも、積層シートの凹凸模様面を射出樹脂側に向けて、樹脂射出成形体を積層一体化するものである。そのため、凹凸感が積層シートを介して外部に表されにくく、外観の凹凸感に劣る。
【0007】
なお、下記特許文献4には、アクリル樹脂フィルムに加飾層である印刷層と接着剤層を順次積層した加飾シートに対し、上記アクリル樹脂フィルムの加飾層とは反対側の表面にエンボス加工による凹凸模様を設けた上で、前記接着剤層側に樹脂射出成形体を積層一体化することが開示されている。この文献では、得られた加飾樹脂成形品の表面側に凹凸模様が形成されるが、該凹凸模様はエンボス加工によるものであって着色模様と同調したものではなく、また、あくまで加飾層である印刷層側に樹脂射出成形体を積層一体化するものであり、上記従来技術の範疇に属するものである。下記特許文献5にも、微細凹凸層を加飾樹脂成形品の表面に形成する点が開示されているが、この文献でも加飾層である図柄層は表面側の凹凸模様と同調したものではなく、また加飾層側に樹脂射出成形体を積層一体化するものである。
【0008】
下記特許文献6には、樹脂シートの一方面に紫外線硬化型樹脂からなる表面保護層を設けて、加熱圧により該表面保護層に凹凸模様を賦形した上で紫外線により表面保護層を硬化させ、また、樹脂シートの他方面に凹凸模様と同調する図柄模様を持つ加飾層を設け、該加飾層側に樹脂射出成形体を積層一体化することが開示されている。しかしながら、この文献は、樹脂シートの一方面と他方面との間で、微小凹凸模様が設けられた領域と加飾層とが重ならないように同調させるものである。そのため、樹脂シートの一方面に着色された凸部を設けることで、当該一方面に着色模様と凹凸模様が同調した意匠を設けるものではない。また、この文献は、上記特許文献4,5と同様、あくまで加飾層側に樹脂射出成形体を積層一体化するものであり、上記従来技術の範疇に属するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−145573号公報
【特許文献2】特開2008−272946号公報
【特許文献3】特開平07−032548号公報
【特許文献4】特開2008−105415号公報
【特許文献5】特開2004−276416号公報
【特許文献6】特開2004−042409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、樹脂成形品の曲面形状部分にまで着色模様と凹凸模様が同調した意匠を付与することができるとともに、凹凸感のある優れた外観を付与することができる加飾樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る加飾樹脂成形品は、一方面に紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクからなる凸部が形成されることで当該一方面に着色模様と凹凸模様が同調した意匠が設けられた樹脂シートと、前記樹脂シートの他方面に合成樹脂の射出成形により積層一体化された樹脂射出成形体とを備えてなるものである。
【0012】
本発明の第2の態様に係る加飾樹脂成形品の製造方法は、樹脂シートの一方面に紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクからなる凸部を形成することにより当該一方面に着色模様と凹凸模様が同調した意匠を設け、前記意匠が設けられた樹脂シートを射出成形型内に配置し、前記射出成形型内で合成樹脂を前記樹脂シートの他方面側から射出することにより当該他方面に樹脂射出成形体を積層一体化するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂シートの一方面に紫外線硬化型樹脂からなる着色された凸部を形成することにより着色模様と凹凸模様が同調した意匠を設けておき、シートインサート成形により該意匠が設けられた側とは反対側の面に樹脂射出成形体を積層一体化する。そのため、射出成形時における凸部の変形を抑えることができ、樹脂成形品が曲面形状部分を有する場合であっても該曲面形状部分にまで着色模様と凹凸模様が同調した意匠を付与することができる。また、該意匠が樹脂シートよりも表面側に存在することにより、該意匠は樹脂シートを介さずに外部に表されるので、樹脂シートの透過度等の影響を受けることなく、凹凸感に優れた外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る加飾樹脂成形品の断面図
【図2】同加飾樹脂成形品の断面模式図
【図3】実施形態に係る加飾された樹脂シートの各製造段階における断面模式図
【図4】同加飾樹脂成形品の製造工程を模式的に示す工程図
【図5】他の実施形態に係る加飾樹脂成形品の断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1,2に示すように、一実施形態に係る加飾樹脂成形品(1)は、一方面(30)に紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクからなる凸部(2)が形成されることで当該一方面に着色模様と凹凸模様が同調した意匠が設けられた樹脂シート(3)と、該樹脂シート(3)の他方面(31)に合成樹脂の射出成形により積層一体化された樹脂射出成形体(4)とを備えてなる。この例では、更に、樹脂シート(3)と凸部(2)との間にベース層(5)が設けられ、また、凸部(2)上にはトップ層(6)が設けられている。
【0017】
上記樹脂シート(3)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などの各種熱可塑性樹脂からなる単層フィルム又は複層フィルムを用いることができる。樹脂シート(3)の厚みは、特に限定されないが、0.2〜1.0mm程度であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.7mmである。
【0018】
樹脂シート(3)の一方面(30)には、紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクからなる凸部(2)が形成されている。このような着色された凸部(2)が形成されることにより、凸部(2)が設けられていない部分との間で色彩が異なることに起因して着色模様が形成されるとともに、典型的には、上記凸部(2)を凸とし該凸部(2)が設けられていない部分を凹とする凹凸模様が形成され、しかも、該着色模様と凹凸模様が同調(「符合」ないし「連動」と称することもできる。)した意匠が上記一方面(30)に設けられる。この例では、樹脂シート(3)の一方面(30)に、凸部(2)とは異なる色に着色されたベース層(5)が設けられ、該ベース層(5)上に凸部(2)が形成されているので、該凸部(2)が設けられていないベース層(5)の表面を凹とし凸部(2)を凸とする凹凸模様が着色模様と同調させて設けられている。
【0019】
凸部(2)は、通常は樹脂シート(3)の一方面(30)に複数設けられることにより、凹凸模様を形成するが、筋状の凸部(2)を互いに連結させることにより、全体として1つの凸部(2)で凹凸模様を形成することもできる。すなわち、凸部(2)の平面形状としては、円形や楕円形、長円形でも、四角形や三角形の多角形でも、直線状や波形状などの線状の形状でもよく、特に限定されない。意匠効果を高めるためには、凸部(2)は、樹脂シート(3)の一方面(30)の全体にわたって分布するように配設されていることが好ましい。また、凸部(2)は、視覚的に感じ取ることができる凹凸模様を形成するように設けられており、そのため、凸部(2)の平面視での幅(円形に近い形状であればその直径)が0.2mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.4mm以上である。逆に大きすぎると、凹凸模様が粗くなり意匠性が低下するおそれがあるので、緻密で、凹凸感に優れた意匠表現という観点からは、凸部(2)の平面視での幅は、10mm以下であることが好ましく、より好ましくは4mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下であるが、緻密性が求められない限りは、それ以上、例えば20mm程度であっても構わない。
【0020】
凸部(2)の高さは、特に限定するものではないが、加飾樹脂成形品(1)に優れた凹凸感を付与するため、20〜200μmであることが好ましく、より好ましくは40〜150μmであり、更に好ましくは60〜120μmである。ここで、凸部(2)の高さは、凸部(2)を形成するベース面からの高さであり、ベース層(5)を有する本実施形態の場合、ベース層(5)の表面から凸部(2)の頂点までの高さである。
【0021】
凸部(2)を形成するインクとしては、紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクが用いられる。このように紫外線硬化型樹脂を主体とするインクを用いることにより、樹脂シート(3)の一方面(30)に付与されたインクを、凸形状を保ったまま瞬時に硬化させて凸部(2)を形成することができ、また、インサート成形により樹脂射出成形体(4)を射出成形する際の凸部(2)の変形を抑えることができる。
【0022】
上記紫外線硬化型樹脂としては、公知の種々の紫外線硬化型樹脂を用いることができるが、それらの中でも、曲面追従性を考慮し、折り曲げても割れにくい特性を持つもの、伸びやすいもの、硬化後に肉やせがないもの、との特徴を持つ紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。具体的には、アクリル官能基を有する紫外線硬化型樹脂が挙げられる。
【0023】
紫外線硬化型樹脂は、基本的に、反応性モノマー、反応性オリゴマーおよび光重合開始剤から構成される。
【0024】
ここで、オリゴマーとは、モノマーが2〜数十程度結合した重合体をいう。オリゴマーを用いるのは、モノマー単独では、得られる硬化物の硬度や接着性が劣り、十分な耐久性を得ることができないからである。また、反応性とは、分子中に反応性の官能基を有することをいう。反応性の官能基として、一般には、アクリル官能基、エポキシ官能基などが挙げられるが、前記の通り、本発明においては、アクリル官能基を有するものが好ましく用いられる。汎用性が高く、多種多様の硬化樹脂を得ることができるという点でも、アクリル系のものが好ましい。紫外線が照射されることにより、光重合開始剤がラジカルになり、これが反応性モノマーおよび反応性オリゴマーの官能基を活性化して、次々に鎖状に結合してポリマー(アクリル樹脂)へと転換する。
【0025】
反応性モノマーは、粘度調整のための希釈剤として用いられる。反応性モノマーとしては、1〜6官能のアクリレートが挙げられ、特に限定するものではないが、なかでも、強靭性、柔軟性に優れる点で、2官能アクリレートが好ましい。2官能アクリレートとして、具体的には、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(1000)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(700)ジアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレートなどが挙げられる。さらに、これらに、リン、フッ素、エトキシ基、プロポキシ基、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトンなどで変性させたものであることができる。これらはそれぞれ単独で用いても2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0026】
反応性モノマーは、硬化後の表面粘着性を低くするために、ガラス転移点Tgは20℃以上であることが好ましい。なお、本明細書においてガラス転移点は、示差走差熱量計(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、商品名「DSC−3100」)を用いて、昇温速度:5℃/分、測定温度範囲:−150〜300℃の条件で測定した値である。
【0027】
また、インクジェット印刷による場合、インク液滴の吐出性を考慮して、反応性モノマーの25℃での粘度は30mPa・s以下であることが好ましい。なお、本明細書において粘度は、回転粘度計(東機産業株式会社製、商品名「TVB−20LT」)を用いて、ローター:Lローター、回転数:60rpm、レンジ:2.5M(測定粘度範囲:〜25.00mPa・s)の条件で測定した値である。
【0028】
反応性モノマーは、インク(紫外線硬化型樹脂と色材を含む)中に55〜90重量%含まれることが好ましい。インクジェット印刷による場合、反応性モノマーは、良好な吐出性を維持するために55重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。硬化に必要な他の薬剤を配合するため、90重量%以下であることが好ましく、75重量%以下であることがより好ましい。
【0029】
反応性オリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレートなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上ブレンドして用いてもよい。なかでも、接着性が優れるという理由から、ウレタンアクリレートが好ましい。
【0030】
反応性オリゴマーのガラス転移点Tgは、硬化後の表面追従性を得るために、−10〜40℃であることが好ましく、0〜30℃であることがより好ましい。
【0031】
反応性オリゴマーは、形成される凸部の耐摩耗性、柔軟性および密着性を高く維持するため、インク中に5〜40重量%含まれることが好ましく、20〜35重量%であることがより好ましく、20〜25重量%であることが更に好ましい。
【0032】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アミノケトン類、チタノセン類、ビスイミダゾール類、ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキサイド類などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上ブレンドして用いてもよい。なかでも、高反応性であり、難黄変性である点で、ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキサイド類が好ましい。光重合開始剤の開始反応を促進させるためには、添加剤として増感剤を用いるとよい。
【0033】
光重合開始剤は、重合が十分になされること、硬化率、硬化速度およびコストを考慮して、インク中に1〜10重量%含まれることが好ましく、3〜9重量%であることがより好ましい。
【0034】
上記色材は、凸部(2)による凹凸模様と同調した着色模様を形成するためにインクに添加されるものであり、顔料や染料などを使用することができる。耐候性や耐光性が求められる場合には、顔料を使用することが好ましく、鮮明性が求められる場合には、染料を使用することが好ましい。
【0035】
顔料は、有機、無機を問わず使用することができる。
【0036】
有機顔料としては、例えば、ニトロソ類、染付レーキ類、アゾレーキ類、不溶性アゾ類、モノアゾ類、ジスアゾ類、縮合アゾ類、ベンゾイミダゾロン類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、アゾメチン類、ピロロピロール類などが挙げられる。
【0037】
無機顔料としては、例えば、酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉類などが挙げられる。
【0038】
また、染料としては、例えば、アゾ類、アントラキノン類、インジゴイド類、フタロシアニン類、カルボニウム類、キノンイミン類、メチン類、キサンテン類、ニトロ類、ニトロソ類などを発色団または色原体とする、油溶性染料、分散染料、酸性染料、反応性染料、カチオン染料、直接染料などが挙げられる。
【0039】
上記インク中の色材の含有量は、十分な着色を得ること、また、インクジェット印刷による場合のインクの吐出性およびコストを考慮して0.01〜10重量%であることが好ましく、0.01〜4重量%であることがより好ましい。
【0040】
なお、上記凸部(2)による意匠を形成する際には、基本的には紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクを用いるが、かかる有色のインクとともに無色のインクを併用しても構わない。例えば、フルカラー印刷の場合、通常、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのインクが用いられるが、更に必要に応じて無色のインクを含む様々な色のインクを用いてもよい。
【0041】
上記インクには、その他必要に応じて、光重合開始剤の開始反応を促進させるための増感剤や、そのほか分散剤、熱安定剤、熱ラジカル重合禁止剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、浸透剤などの添加剤を添加してもよい。
【0042】
上記樹脂射出成形体(4)を形成する合成樹脂としては、例えば、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)などのスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂(PC)、アクリル系樹脂などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0043】
合成樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、フィラー、加水分解抑制剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤等など、通常用いられる添加剤を添加してもよい。
【0044】
上記ベース層(5)は、意匠を構成する凸部(2)の樹脂シート(3)への密着性向上という点から好ましく設けられる樹脂層であり、凸部(2)との間で色彩の異なる着色層を形成して着色模様を鮮明にする上でも有利である。ベース層(5)は、樹脂シート(3)と凸部(2)との間に設けられる樹脂層の総称をいい、少なくとも1層の樹脂層からなるが、同一または異なる組成の2層以上の樹脂層からなることができる。ベース層(5)は、樹脂シート(3)の一方面(30)の全面を一定膜厚で被覆するように設けられることが好ましく、その厚みは0.1〜300μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μmである。
【0045】
ベース層(5)を構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂などが挙げられ、特には、密着性の観点から、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0046】
ベース層(5)は、所望の着色模様を形成するために、上記凸部(2)とは異なる色に着色されていることが好ましい。着色するために添加される色材としては、耐候性や耐光性の点から、顔料を使用することが好ましい。顔料は、有機、無機を問わず使用することができる。
【0047】
ベース層(5)の形成に用いられる塗料は、塗装装置に適した動粘性を持たせるために、前記樹脂を各種有機溶剤で希釈して使用することができる。また、必要に応じて架橋剤、増粘剤、沈降防止剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、硬化触媒、防眩剤、レベリング剤、平滑剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0048】
上記トップ層(6)は、図2に示すように、凸部(2)及びベース層(5)の上を覆って、樹脂シート(3)の一方面(30)側を全体にわたって被覆するように設けられる任意の透明層である。トップ層(6)は、凸部(2)上に形成される透明な樹脂層の総称をいい、少なくとも1層の樹脂層からなるが、同一または異なる組成の2層以上の樹脂層からなることができる。トップ層(6)は、この例では、その表面が樹脂シート(3)の一方面(30)に沿う平坦面に形成されている。このようなフラットなトップ層(6)を設けることにより、トップ層(6)を通して凹凸模様を視覚的に感知することができ、意匠価値を高めることができる。トップ層(6)の厚みは、特に限定されないが、凸部(2)の頂点からトップ層(6)の表面までの厚みで100〜1000μmであることが好ましい。
【0049】
トップ層(6)は、透明な樹脂からなるものであり、無色透明であることが好ましいが、上記凸部(2)による凹凸感が損なわれない限り、着色透明でもよい。トップ層(6)を構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上ブレンドして用いてもよい。なかでも、耐擦過性、透明性に優れるとともに、肉厚な皮膜を形成できるという理由から、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂を使用することが好ましく、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂がより好ましい。
【0050】
トップ層(6)を着色するための色材としては、耐候性や耐光性の点から顔料を使用することが好ましく、有機、無機を問わず使用することができる。
【0051】
また、トップ層(6)の形成に用いられる塗料は、前記樹脂を各種有機溶剤で希釈して使用することができ、必要に応じて各種の添加剤を添加してもよい。
【0052】
本実施形態に係る加飾樹脂成形品(1)は、図1に示すように、上面部(10)と、その周縁部に設けられた側面部(11)と、上面部(10)と側面部(11)の間に介設された角部である曲面形状部分(12)とを備えてなり、上記凸部(2)、ベース層(5)及びトップ層(6)によって構成される加飾層を外表面側に向けて形成されている。曲面形状部分(12)は、断面の曲率半径(R)が1〜100mmである外側に凸円弧状の曲面形状を持つ部分であり、平面状の上面部(10)と側面部(11)との間を連結している。本実施形態では、このような曲率半径(R)の小さい角部である曲面形状部分(12)にまで上記の着色模様と凹凸模様が同調した意匠が設けられていることを特徴とする。すなわち、平面部を主体とする上面部(10)と側面部(11)の表面はもちろんのこと、該曲面形状部分(12)でも、上記樹脂シート(3)の一方面(30)に設けられた凸部(2)が消失せずに、当該凸部(2)による着色模様と凹凸模様が同調した意匠が形成されている。ここで、曲面形状部分(12)の曲率半径(R)が1mm未満では、シートインサート成形時における凸部(2)の消失を抑えることが難しく、着色模様と凹凸模様が同調した意匠が得られないおそれがある。上記曲面形状部分(12)の曲率半径(R)は、2mm以上であることがより好ましい。なお、該曲率半径(R)は、加飾樹脂成形品(1)の製品表面での曲率半径を意味する。
【0053】
本実施形態の加飾樹脂成形品(1)を製造するに際しては、まず、図3(a)に示す樹脂シート(3)の一方面(30)に対して塗料を塗装することにより、図3(b)に示すように、当該一方面にベース層(5)を設ける。該塗料の塗装方法は、特に限定されず、スプレーなどの公知慣用の方法を採用することができる。塗装膜厚は、塗料の固形濃度やベース層(5)の設計膜厚などにより適宜に設定すればよい。塗装後の樹脂シート(3)は、例えば5〜60分間の風乾後、50〜100℃で20分間〜6時間、加熱硬化を行うことが好ましい。なお、1回の塗装で形成可能なベース層の厚みは200μm程度以下である。したがって、肉厚なベース層を形成する場合には、重ね塗り、すなわち、塗装から風乾までを複数回繰り返し、最後に、加熱硬化を行うことにより、所望の厚みを有するベース層を形成する。
【0054】
次いで、上記の紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクを用いて、図3(c)に示すように、ベース層(5)の表面に凸部(2)を形成する。凸部(2)の付与方法としては、凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷などを用いることもできるが、版型を必要とせず、緻密な意匠表現及び立体模様の形成が可能な点で、インクジェット印刷が好ましい。インクジェット印刷の方式は特に限定されず、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式などの連続方式、ステムメ方式、パルスジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電吸引方式などのオン・デマンド方式などを採用することができる。
【0055】
図4(a)に示すように、凸部(2)は、インクジェットプリンター(7)を用いて、上記インクの液滴を樹脂シート(3)の一方面(30)、この例ではベース層(5)の表面に複数着弾させ、その後直ちに紫外線を照射して硬化させることにより形成することができ、かかる着弾と硬化を複数回繰り返すことにより形成してもよい。このようなインクの付与は、凸部(2)を形成したい位置を、画像処理ソフトウェアを用いて任意に設定することができ、例えば、デジタルデータを元に、液滴重量、インク付与量などのインク付与条件、紫外線硬化条件およびインク付与箇所を自由に制御することができる。
【0056】
このように凸部(2)による凹凸模様は、紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクの堆積量を制御することにより形成することができる。該インクの堆積量を凹凸模様が形成できる範囲内で制御するためには、吐出時の粘度が9mPa・s以上のインクを用いることが好ましく、またインクを付与すると同時に紫外線照射により硬化させることが好ましい。また、該凸部(2)による着色模様は、上記のようにインク中に添加された色材によるものであり、また、色材濃度やインクの堆積量を制御することによって、所望の着色を行うことができる。
【0057】
また、紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクの25℃での表面張力は、様々なベース層に対応することを考慮して20〜40dyne/cmであることが好ましく、22〜35dyne/cmであることがより好ましい。濡れ性を抑制して画像の滲みを防止し、プリントヘッドへのインクの供給を容易にするという理由から、表面張力は20dyne/cm以上であることが好ましい。また、濡れ性が低下するとインクがはじかれ画像がスジ状になるため、それを防止するために表面張力は40dyne/cm以下であることが好ましい。なお、本明細書において表面張力は、自動表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名「CBVP−A3」)を用いて、プレート法により測定した値である。
【0058】
インクジェット印刷時に紫外線硬化型樹脂を直ちに硬化させるために、インクジェットプリンター(7)には図示しないが紫外線照射装置としての紫外線ランプが組み込まれている。紫外線の照射条件としては、特に限定されないが、150〜550mJ/cmであることが好ましい。
【0059】
このようにして凸部(2)による着色模様と凹凸模様が同調した意匠を設けた樹脂シート(3)を作製した後、シートインサート成形を行って樹脂射出成形体(4)を積層一体化する。成形体が複雑な形状である場合には、シートインサート成形に先立って、上記意匠を設けた樹脂シート(3)を予備成形することが好ましい。予備成形とは、シートインサート成形にて成形する前に、あらかじめ最終品に近い形状に樹脂シートを成形することをいう。予備成形を行うことにより、シートインサート成形時に、凸部(2)の紫外線硬化型樹脂が受ける負荷を軽減させ、凹凸模様を構成する凸部(2)の破断を防止することができる。
【0060】
予備成形の方法としては、安価で、かつ、短時間での成形が可能な真空成形が好ましい。真空成形とは、樹脂シートに熱をかけることで軟化させた後、凹凸形状の型に押さえつけ、型と樹脂シート間の空気を吸引して真空に近い状態を作り出すことによって、型に樹脂シートを密着させて、所望の形状を賦形する成形方法である。
【0061】
予備成形された樹脂シート(3)は、図4(b)及び(c)に示すように、射出成形型(8)内にセットされる。図示するように、樹脂シート(3)は、意匠を構成する凸部(2)が設けられた上記一方面(30)側を射出成形型(8)のキャビティ面(80)に向け、反対側の他方面(31)を射出樹脂側に向けた状態で、射出成形型(8)内に配置される。そして、ゲート部(81)を通じて溶融した合成樹脂をキャビティ内に射出することにより、上記他方面(31)側に合成樹脂が射出されて、当該他方面(31)に樹脂射出成形体(4)が積層一体化される。射出後、冷却して、合成樹脂が硬化した後に、図4(d)に示すように型開きして、成形品を取り出す。上記のように曲面形状部分(12)でも着色模様と凹凸模様が同調した意匠を形成するために、射出成形時の温度と圧力を制御することが好ましい。特に限定するものではないが、射出する合成樹脂の温度は、200〜300℃であることが好ましく、また、合成樹脂の射出圧は100〜200MPaであることが好ましい。
【0062】
本実施形態では、上記のように表面にトップ層(6)が設けられているが、かかるトップ層(6)は、例えば、金型内塗装により形成することができる。金型内塗装技術は、成形型(金型)内にあらかじめ塗料を塗布しておき、その成形型で樹脂成形を行う方法(「プリモールドコート法」と呼ばれる)と、樹脂成形を行った後に成形型内に塗料を注入し、成形品表面を塗装する方法(「インモールドコーティング法」と呼ばれる)の2つに大別される。後者はさらに、樹脂成形を行った成形型内に高圧で塗料を注入する方法(高圧法)と、樹脂成形を行った成形型をわずかに開き、低圧で塗料を注入し、その後再度成形型を閉じて成形品表面を塗装する方法(低圧法)に分けられる。金型内塗装では、塗装層の表面は成形型のキャビティ面によって成形されるので、キャビティ面に沿う鏡面状の表面を有する塗装層が得られる。本発明においては、かかる金型内塗装技術を、シートインサート成形と組み合わせることが可能である。なかでも、低圧インモールドコーティング法は、圧力による凹凸の消失を抑制することができるため好ましい。低圧インモールドコーティング法の1つとして、近年、実用化されたインプレスト成形法は、熱可塑性樹脂への適用を可能した点で、注目を集めている。
【0063】
なお、トップ層(6)を形成する方法としては、金型内塗装に限定されるものではなく、例えばスプレー塗装により形成することもできる。金型内塗装、特にインモールドコーティング法において、上記曲面形状部分(12)への塗装が制限される場合には、スプレー塗装によりトップ層(6)を形成してもよく、その場合、重ね塗りを行うことでトップ層(6)をフラットな表面に仕上げることもできる。このとき、塗装膜厚は、塗料の固形濃度やトップ層(6)の設計膜厚などにより適宜に設定される。乾燥条件は、ベース層の場合と同様である。
【0064】
以上よりなる本実施形態によれば、紫外線硬化型樹脂からなる凸部(2)により着色模様と凹凸模様が同調した意匠が設けられた樹脂シート(3)を用いて、シートインサート成形により上記意匠とは反対側の面(31)に樹脂射出成形体(4)を積層一体化する。そのため、射出成形時における凸部(2)の変形を抑えることができ、加飾樹脂成形品(1)の曲面形状部分(12)にも着色模様と凹凸模様が同調した意匠を付与することができる。また、該意匠が樹脂シート(3)よりも製品の表面側に存在することにより、該意匠は樹脂シート(3)を介さずに外部に表される。そのため、樹脂シート(3)の透過度等の影響を受けることなく、凹凸感に優れた外観を得ることができる。更に、凸部(2)上に透明なトップ層(6)を設けることにより、トップ層(6)を通して凹凸模様を視覚的に感知することができ、意匠価値を高めることができる。
【0065】
図5は、他の実施形態に係る加飾樹脂成形品(15)を示したものである。この例では、トップ層(6)は、その表面が凸部(2)による凹凸模様に沿う凹凸面状に形成されている。このような凹凸模様に沿ったトップ層(6)を設けることにより、質感を変化させることができ、異素材感のある外観を付与することができる。かかる凹凸模様に沿ったトップ層(6)は、例えば、上記射出成形後の成形品表面に、スプレー塗装を行うことにより形成することができる。
【0066】
上記実施形態では、シートインサート成形時または成形後にトップ層(6)を形成する場合について説明したが、本発明においては、シートインサート成形に先立ってトップ層(6)を予め形成しておいてもよい。すなわち、トップ層(6)まで形成した樹脂シート(3)を用いて、シートインサート成形する態様も本発明に含まれる。その場合、トップ層(6)は、その表面をフラットに形成してもよく、あるいは凹凸面状に形成してもよい。このように予めトップ層(6)を形成しておくことにより、インサート成形時にトップ層(6)がキャビティ面に当接することになり、凸部(2)が直接キャビティ面に当接することがなくなるので、凸部(2)の変形をより確実に抑えることができる。
【0067】
本発明に係る加飾樹脂成形品の用途としては、特に限定されず、例えば、家電製品や通信機器などの各種電化製品の筺体を構成するものとして、また自動車などの車両の内装部品として用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。
【0069】
[実施例1]
〔ベース層形成用塗料の作製〕
顔料母液の作製
1)商品名「BPZ 6340」;20重量部
(東洋アルミ株式会社製、アルミペースト)
2)商品名「アクリディックWXU−880」;50重量部
(DIC株式会社製、アクリル樹脂)
3)商品名「アクリディックWXU−616」;70重量部
(DIC株式会社製、アクリル樹脂)
4)メチルイソブチルケトン;12.5重量部
5)キシレン;12.5重量部
上記材料をミキサーにて混合した後、ビーズミルにて3時間分散させることにより、顔料母液を作製した。
【0070】
ベース層形成用塗料の作製
1)上記作製した顔料母液;100重量部
2)メチルイソブチルケトン;25重量部
3)キシレン;25重量部
4)酢酸ブチル;25重量部
5)トルエン;25重量部
6)商品名「バーノックDN−980」;10重量部
(DIC株式会社製、架橋剤、ポリイソシアネートプレポリマー)
上記材料のうち1〜5をミキサーにて全体が均一になるまで混合した後、材料6を加えてさらに混合し、次いで、ろ過して不純物を除去することにより、ベース層形成用塗料を作製した。
【0071】
〔ベース層の形成〕
樹脂シートとして、縦17cm×横30cmで厚み0.5mmのポリカーボネートフィルム(帝人化成株式会社製、商品名「パンライトシートPC−1151」)を用意し、その表面をイソプロパノールで洗浄後、風乾した。次いで、上記作製したベース層形成用塗料を、スプレーガン(アネスト岩田株式会社製、商品名「W−101」)を用いて、乾燥膜厚が15μm(乾燥膜重量が0.002g/cm)となるよう塗装した後、10分間風乾し、さらに、70℃で30分間熱風乾燥することにより、ベース層を形成した。
【0072】
〔インクの作製〕
顔料母液の作製
1)商品名「Hostaperm Blue P−BFS」;15重量部
(BASF社製、銅フタロシアニン顔料)
2)商品名「SOLSPERSE32000」;7.5重量部
(日本ルーブリゾール株式会社製、分散剤)
3)商品名「SR9003」;77.5重量部
(サートマージャパン株式会社製、反応性モノマー、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、Tg:32℃、25℃での粘度:15mPa・s)
上記材料をミキサーにて混合することにより、顔料母液を作製した。
【0073】
インクの作製
1)上記作製した顔料母液;13.3重量部
2)商品名「CN981」;22.6重量部
(サートマージャパン株式会社製、反応性オリゴマー、脂肪族ウレタンアクリレート、Tg:22℃)
3)商品名「VEEA」;56重量部
(株式会社日本触媒製、反応性モノマー、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、25℃での粘度:8mPa・s)
4)商品名「Irgacure 184」;5.0重量部
(BASF社製、光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
5)商品名「Irgacure 819」;3.0重量部
(BASF社製、光重合開始剤、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド)
6)商品名「IRAGASTAB UV10」;0.1重量部
(BASF社製、熱ラジカル重合禁止剤、トリメチロールプロパントリアクリレート)
上記材料をミキサーにて混合した後、ビーズミルにて3時間分散させ、次いで、ろ過して不純物を除去することにより、インクを作製した。得られたインクの吐出時(50℃)の粘度は11mPa・sであり、25℃での表面張力は25dyne/cmであった。
【0074】
〔凸部の形成〕
ベース層を形成したポリカーボネートフィルムの表面に、シリアル型インクジェットプリンターを用いて、上記作製したインクを付与した後、直ちに、紫外線ランプを用いて紫外線を照射し、インクを硬化させる、という操作を繰り返して、意匠性のある凸部を形成した。条件は以下の通りであった。
【0075】
評価模様
図柄:2mm間隔の市松柄
凸部の平面視での幅:2mm
凸部の高さ:90μm
凸部の占める面積率:50%
【0076】
印刷条件
ヘッド加熱温度:57℃
ノズル径:70μm
印加電圧:50V
パルス幅:15μs
駆動周波数:4.5kHz
ヨコ方向の解像度:360dpi
タテ方向の解像度:720dpi
繰り返し印刷回数:4回
インク1液滴の重量:110pg
インク総付与量:100g/m
【0077】
紫外線照射条件
ランプ種類:メタルハイドランプ
ランプの出力:120W/cm
照射時間:1秒
照射回数:20回
照射距離:5mm
このときの積算光量は、225mJ/cmであった。
【0078】
〔型抜き〕
意匠が設けられたポリカーボネートフィルムを射出成形型にセットするために必要な部位と不必要な部位を分ける型抜きを行なった。すなわち、トムソン刃でできた型枠をポリカーボネートフィルムの意匠側にあてがい、プレス機(株式会社イイノ製、商品名「IOC−20」)を用いて型抜きを行った。
【0079】
〔インサート成形〕
型抜きしたポリカーボネートフィルムを、射出成形機(宇部興産機械株式会社製、商品名「MD450S−IV」)を用いて、インサート成形により、樹脂射出成形体と一体化した。すなわち、型抜きしたポリカーボネートフィルムを、意匠側がキャビティ面に向く状態で、射出成形型にセットし、以下に記す条件にて合成樹脂をキャビティ内に射出した後、冷却し、硬化後に成形品を取り出した。なお、射出成形型としては、曲率半径が2mm、3mm及び5mmの曲面形状部分を持つ加飾樹脂成形品が成形されるものを用いた。
成形条件
合成樹脂:PC/ABS樹脂(日本エイアンドエル株式会社製、商品名「PAX−1420」)
スクリュー内温度:260℃
コア温度:40℃
キャビティ温度:40℃
射出時の圧力:125MPa
【0080】
得られた成形品は、着色模様と凹凸模様が同調した凹凸感に優れた意匠を有し、且つ、曲面形状部分においても、凸部の変形がなく、平面部と同様に優れた外観のものであった。
【0081】
[実施例2]
〔トップ層形成用塗料の作製〕
1)商品名「プラグラス#8000 TC−307」;100重量部
(大日本塗料株式会社製、アクリル・ウレタン樹脂塗料)
2)商品名「TXIB」;1重量部
(イーストマンケミカルジャパン社製、硬化剤用希釈剤、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジイソブチレート)
3)商品名「パーカドックス16」;1重量部
(化薬アクゾ株式会社製、硬化剤、ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネ−ト、4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキサノール)
上記材料のうち2、3を自転・公転方式ミキサーにて真空で撹拌・脱泡した後、材料1を加えてさらに撹拌・脱泡することにより、トップ層形成用塗料を作製した。
【0082】
〔トップ層の形成〕
実施例1と同様に、ベース層および凸部を形成し、型抜きしたポリカーボネートフィルムを、インサート成形により樹脂射出成形体と一体化した後、成形型内に、上記作製したトップ層形成用塗料を注入し、金型内塗装(インプレスト成形)により、膜厚(凸部の頂面からトップ層の表面までの厚み)が600μmのトップ層を形成した後、成形品を取り出した。塗装条件は以下の通りであった。
塗装条件
型開量:600μm
保持時間:150秒
コア温度:30℃
キャビティ温度:75℃
【0083】
得られた成形品は、着色模様と凹凸模様が同調した凹凸感に優れた意匠を有し、且つ、曲面形状部分においても、凸部の変形がなく、平面部と同様に優れた外観のものであった。また、トップ層を設けたことで、フラットな表面を有し、意匠に奥行きを感じるものであった。
【0084】
[実施例3]
〔トップ層形成用塗料の作製〕
A液の作製
1)商品名「ソルレスクリヤーNDP−300 UT」;50重量部
(浜二ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂塗料)
2)商品名「ソルレスうすめ液、No.1000」;5重量部
(浜二ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂用希釈剤)
3)商品名「パーメックN」;2.8重量部
(日本油脂株式会社製、ポリエステル樹脂用硬化剤)
上記材料をヘラにて混合することにより、57.8重量部のA液を作製した。
【0085】
B液の作製
1)商品名「ソルレスクリヤーNDP−300 UT」;50重量部
(浜二ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂塗料)
2)商品名「ソルレスうすめ液、No.1000」;5重量部
(浜二ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂用希釈剤)
3)オクチル酸コバルト;1重量部
上記材料をヘラにて混合することにより、56重量部のB液を作製した。
【0086】
上記作製したA液とB液をヘラにて混合することにより、トップ層形成用塗料を作製した。
【0087】
〔トップ層の形成〕
実施例1で得られた成形品に対し、上記作製したトップ層形成用塗料を、スプレーガン(アネスト岩田株式会社製、商品名「W−200」)を用いて、表面がフラットで、最終的な乾燥膜厚(凸部の頂面からトップ層の表面までの厚み)が600μm(乾燥膜重量が0.16g/cm)となるように、塗装、風乾(20分間)を3回繰り返し、さらに、60℃で120分間熱風乾燥することにより、トップ層を形成した。
【0088】
得られた成形品は、フラットな表面を有し、意匠に奥行きを感じるものであった。
【0089】
[実施例4]
実施例1で得られた成形品に対し、実施例3で作製したトップ層形成用塗料を、スプレーガン(アネスト岩田株式会社製、商品名「W−200」)を用いて、表面が凹凸面状で、乾燥膜厚が30μm(乾燥膜重量が0.008g/cm)となるように塗装した後、20分間風乾し、さらに、60℃で120分間熱風乾燥することにより、トップ層を形成した。
【0090】
得られた成形品は、凹凸を有しながらも実施例1と比べて艶のある質感に変化させることができ、異素材感のある外観が付与されていた。
【0091】
[実施例5]
〔トップ層形成用塗料の作製〕
1)商品名「UVハードクリヤーVCH6051 TXF」;100重量部
(浜二ペイント株式会社製、アクリル系紫外線硬化型塗料)
2)商品名「TXシンナーNo.13」 20重量部
(浜二ペイント株式会社製、ウレタンシンナー)
上記材料をヘラにて混合することにより、トップ層形成用塗料を作製した。
【0092】
〔トップ層の形成〕
実施例1と同様に、ベース層および凸部を形成したポリカーボネートフィルムの表面に、上記作製したトップ層形成用塗料を、スプレーガン(アネスト岩田株式会社製、商品名「W−101」)を用いて、表面がフラットで、乾燥膜厚(凸部の頂面からトップ層の表面までの厚み)が150μm(乾燥膜重量が0.04g/cm)となるように塗装した後、20分間風乾し、さらに50℃で20分間熱風乾燥した。次いで、177mJ/cmの積算光量で紫外線を照射し、塗料を硬化させることにより、トップ層を形成した。しかる後に、実施例1と同様に、型抜きし、トップ層をキャビティ面に向けた状態でインサート成形を行った。
【0093】
得られた成形品は、着色模様と凹凸模様が同調した凹凸感に優れた意匠を有し、且つ、曲面形状部分においても、凸部の変形がなく、平面部と同様に優れた外観のものであった。また、トップ層を事前に設けたことにより、実施例2と比べて明瞭な凹凸感を有するものであった。
【0094】
[比較例1]
ポリカーボネートフィルムの意匠側を、コア面に向けて射出成形型にセットした以外は、実施例1と同様の方法にして、成形品を得た。
得られた成形品は、全体として凹凸感があまり感じられない、外観の劣ったものであった。
【符号の説明】
【0095】
1…加飾樹脂成形品、2…凸部、3…樹脂シート、4…樹脂射出成形体、5…ベース層、6…トップ層、7…インクジェットプリンター、8…射出成形型、12…曲面形状部分、30…一方面、31…他方面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面に紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクからなる凸部が形成されることで当該一方面に着色模様と凹凸模様が同調した意匠が設けられた樹脂シートと、前記樹脂シートの他方面に合成樹脂の射出成形により積層一体化された樹脂射出成形体と、
を備えてなる加飾樹脂成形品。
【請求項2】
前記樹脂射出成形体は、前記樹脂シートが積層一体化された表面側に曲面形状部分を有し、前記曲面形状部分において前記樹脂シートの前記一方面に前記着色模様と凹凸模様が同調した意匠が設けられたことを特徴とする請求項1記載の加飾樹脂成形品。
【請求項3】
前記樹脂シートの前記一方面に前記凸部とは異なる色に着色されたベース層が設けられ、前記ベース層上に前記凸部が形成されることで、前記ベース層の表面を凹とし前記凸部を凸とする前記凹凸模様が前記着色模様と同調させて設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の加飾樹脂成形品。
【請求項4】
前記凸部上に前記一方面を被覆する透明な樹脂からなるトップ層が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾樹脂成形品。
【請求項5】
前記トップ層の表面が前記樹脂シートの前記一方面に沿う平坦面に形成されたことを特徴とする請求項4記載の加飾樹脂成形品。
【請求項6】
前記トップ層の表面が前記凹凸模様に沿う凹凸面状に形成されたことを特徴とする請求項4記載の加飾樹脂成形品。
【請求項7】
前記凸部がインクジェット印刷により形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の加飾樹脂成形品。
【請求項8】
樹脂シートの一方面に紫外線硬化型樹脂と色材を含むインクからなる複数の凸部を形成することにより当該一方面に着色模様と凹凸模様が同調した意匠を設け、
前記意匠が設けられた樹脂シートを射出成形型内に配置し、前記射出成形型内で合成樹脂を前記樹脂シートの他方面側から射出することにより当該他方面に樹脂射出成形体を積層一体化する
ことを特徴とする加飾樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−153107(P2012−153107A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16593(P2011−16593)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】