説明

加飾用食用金属箔及びその製造方法

【課題】水分を含む食品や飲料の装飾用素材に適した、食用金属箔およびその製造方法を提供する。
【解決手段】食用金属箔の両面を無色もしくは有色の皮膜で被覆してなる、金属光輝性を示す加飾用食用金属箔であって、前記皮膜が、食用可能な樹脂を架橋させることによって形成された、水不溶性の透明または半透明の樹脂皮膜であることを特徴とする。樹脂としては、シェラック樹脂が好ましく、樹脂皮膜は、食用可能な着色色素を含んでいてもよい。前記加飾用食用金属箔は、食用可能な金属箔の両面に、シェラック樹脂を含むアルコール溶液を塗布する工程、及び加熱により、前記シェラック樹脂を架橋させて、前記金属箔の両面に熱硬化性の樹脂皮膜を形成する工程を含む方法等によって製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食物を加飾するための食用金属箔及びその製造方法に関する。より詳しくは、長期保存を求められる液体飲食物以外のほとんどの飲食物の加飾に適した、金属光輝性を示す食用金属箔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、調理された食材に対し、加飾、高級感の付与、または健康増進を目的として、金、銀等の貴金属が利用されて来たが、高価なため、1μm以下の薄膜で利用されることが多く、取り扱いに高度の技術が必要である。具体的には、金箔では通常、0.1μm、銀箔では、0.3μmと非常に薄く柔軟で、特に粉末での利用が困難であるという問題がある。
また、近年では、バリエーション豊かに食材を加飾するために、貴金属としての特徴、すなわち金属光輝性を保ちつつ、多彩な色合い有する食用貴金属箔やその粉末が求められている。
【0003】
このように、加飾目的での食用金属箔の需要の増加に伴い、食用金属箔について様々な考案がなされてきた。
例えば、特許文献1では、食用可能な金箔もしくは銀箔からなる文字、模様、絵柄等を、可食物に、箔押し印刷法を用いて形成することができる、箔押し材が開示されている。また、箔の着色についても開示されており、離型層と貴金属層との間、あるいは、接着層と、貴金属層との間の少なくとも一方に、可食性のインクを塗布して着色層を形成して、種々の色彩からなる箔押し印刷をすることが開示されている。
特許文献2では、食品と任意の形状・模様を持つ食用箔を混合するか、貼付けする方法で菓子・食品を美しく装飾する食用箔及びその使用法が開示されており、具体的には、離型性のあるベース、その上に任意の形状に形成した食用できる接着剤層、及びその食用接着剤層に接着した金属箔よりなる食用箔が記載されている。
特許文献3では、生菓子やチョコレートなどに振りかけて使用される食用装飾素材について、高級脂肪酸や油脂素材の浸透可能な層等を必要とせずに、様々な素材に振りかけ、接着させることが可能である装飾用素材が開示されており、具体的には、金属箔表面を、アラビアガム、キサンタンガム及び/又はジェランガムの一種又は二種を溶解してなる増粘多糖類水溶液で被覆し、その後乾燥し、乾燥した前記金属箔を粉砕機で粉砕するか、あるいは型で打ち抜く等の工程を行う方法が開示されている。
特許文献4では、可食性膜に金箔又は銀箔を積層させた飲食品用金銀箔において、この飲食品用金銀箔と食品との密着力を適性にすると共にブロッキングを防止することを課題とした食用金銀箔が開示されており、具体的には、プルラン等の可食性膜の片面を粗面にし、可食性膜の両面に金銀箔を貼着した食用金銀箔が開示されている。
特許文献5では、粒状食品の略全表面に満遍なく金属箔を被覆した金属箔被覆粒状食品を提供する方法が開示されている。また、これに着色を施すことも開示されており、具体的には、銀箔で被覆されたグラニュー糖に、赤色3号を添加したエタノールを噴霧して着色させる方法が開示されている。
特許文献6は、本願の出願人自身による出願であり、耐候性、耐摩耗性、耐溶剤性に優れ、且つ意匠性にも優れた光輝性銀箔及び銀粉末に関するものである。
【0004】
上記特許文献1および2に係る発明は、ベースから離型して使用する箔に関するものであり、金属箔や金属箔粉そのものの状態で取り扱えるものではない。特許文献3の方法で製造された金属箔粉や金属箔片は、増粘多糖類で被覆されているため、水分、アルコール類を含んだ食材に触れると皮膜が軟化、溶解、消失して、加飾性が不十分という問題がある。特許文献4は、可食性膜の両面に金属箔を貼り付けたものであり、2枚の金属箔が必要であり、さらに可食性膜の片面を粗面に形成する必要があるため、コストがかかるという問題がある。特許文献5は、金属箔被覆粒状食品を提供する方法であって、取り扱いに優れた金属箔や金属箔粉自体を提供するものではない。特許文献6の銀箔や銀粉末は、食用を目的として開発されたものではないため、食用に不向きであるという問題がある。
また、上記特許文献のいくつかには、着色に関する記述があるが、食品の加飾に使用された際に、着色色素のにじみ等が生じない食用の着色金属箔や箔粉については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−231756号公報
【特許文献2】特開平6−125719公報
【特許文献3】特開2008−109893号公報
【特許文献4】特開平9−28313号公報
【特許文献5】特開2007−89569号公報
【特許文献6】特許第4469793号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、金属箔または金属箔片や金属箔粉の状態で食品の加飾に使用することができ、水分を含む食品や、水、アルコールといった液体に添加した際も形状保持が可能で、且つ金属箔本来の光輝性を発揮することができる金属箔を提供することを課題とする。さらに本発明は、着色色素のにじみ出しが生じない着色金属箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、食用金属箔の両面を無色もしくは有色の皮膜で被覆し、さらに、前記皮膜として、食用可能な樹脂を架橋させることによって形成された、水不溶性の透明または半透明の樹脂皮膜を用いることによって、前記課題を解決することに成功し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、食用金属箔の両面を無色もしくは有色の皮膜で被覆してなる、金属光輝性を示す加飾用食用金属箔であって、前記皮膜が、食用可能な樹脂を架橋させることによって形成された、水不溶性の透明または半透明の樹脂皮膜であることを特徴とする。
【0009】
本発明の加飾用食用金属箔は、両面が皮膜で被覆されているため、皮膜がない場合と比べて、加工性に優れ、任意の形状に加工した際も、形状保持性に優れる。また、皮膜が透明もしくは半透明であるため、金属箔特有の光輝性が保たれ、金属箔本来の意匠性を利用出来る。さらに、この皮膜は食用可能な樹脂を架橋させることによって形成された、水不溶性の樹脂皮膜であるため、水分を含んだ食材や飲料に使用しても、保持材が軟化、溶解、消失する恐れがなく、加飾効果を維持できる。
【0010】
また、前記樹脂皮膜として、食用可能な着色色素を含む樹脂皮膜を使用すれば、任意の色彩に着色された金属箔を得ることができる。食用可能な着色色素は、水溶性かアルコール可溶性を示すものが多く、水に不溶の皮膜に含有させても、アルコールや水に接すると色素が溶出し、着色金属箔の周囲に色素がにじみだすが、本発明では樹脂の架橋構造により、色素の溶出を防ぐことができるため、色のにじみが抑制される。
【0011】
前記皮膜としては、シェラック樹脂を架橋させることによって形成された皮膜が好ましい。シェラック樹脂は、常温で容易にアルコール類に溶解し、加熱するとエステル化による架橋反応が進行、所謂、熱硬化性を示す性質を有し、このようにして得られた皮膜は加熱しても軟化しない。また、シェラック樹脂は、2価以上の金属塩、例えばカルシウム、マグネシウムの塩を添加すると、イオン結合による架橋構造を形成し、ゲル化して、水、アルコールに溶けなくなる性質を有する。
したがって、食用可能な金属箔の両面に、シェラック樹脂を含むアルコール溶液を塗布し、加熱により、シェラック樹脂を架橋させて、金属箔の両面に熱硬化性の樹脂皮膜を形成するか、又は、食用可能な金属箔の両面に、シェラック樹脂と2価以上の金属塩とを含むアルコール溶液を塗布し、溶液を乾燥することで、シェラック樹脂をイオン結合により架橋させて、金属箔の両面に樹脂皮膜を形成することにより、本発明に係る加飾用食用金属箔を製造することができる。なお、上記2つの方法を組合せてもよい。すなわち、シェラック樹脂と2価以上の金属塩とを含むアルコール溶液を塗布し、加熱乾燥または乾燥後に加熱して、エステル化による架橋と、イオン結合による架橋の両方を有する皮膜を形成してもよい。
【0012】
着色箔を製造する場合は、前記シェラック樹脂のアルコール溶液に着色色素を添加すればよい。
【0013】
前記加飾用食用金属箔を裁断または粉砕することによって得られた金属箔片または金属箔粉も、上述した効果を有するため、飲食物の加飾に好適である。
【0014】
前記金属箔としては、金、銀、白金からなる群から選択される貴金属箔が好ましく、これらの貴金属の純度が99.9%以上の箔が特に好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食用金属箔の欠点であった、食材への飾り付け、取り扱いの不便を改善することができ、金属特有の光輝性と高級感を持ち、且つ、任意の形状に加工しやすく、水分やアルコールを含む食品に使用した際も、優れた形状維持性を発揮する加飾用食用金属箔を得ることができる。また、任意の色彩に着色することができ、水分やアルコールを含む食品に使用した際も、色のにじみが生じにくく、食材への加飾性が高く、安定な意匠を保つ着色金属箔を得ることができる。したがって、食材の内部や飲料にも利用できる実用性に優れた金属箔を提供することができる。
更に、本発明では、構成材料全てを天然素材から選択することが可能であるため、安全な食用金属箔を提供することが出来る。
また、本発明によれば、従来、食材に適用しにくかった銀箔であっても、安定で豊富な色彩の食用箔として提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、食用又は食用可能として記載された材料は、食品安全基本法及び食品安全衛生法記載の食品並びに食品添加物であればよい。特に天然の材料が好ましいが、これに限定されない。
【0017】
本発明に係る食用金属箔とは、金、銀、白金等の光輝性金属の1種からなる箔、又はこれら2種以上からなる合金の箔、及びこれらに、食用の銅、アルミニウム、鉄等食品添加剤として認められている金属を添加してなる金属箔である。これらの金属を、古来から知られている定法の箔打ち手段により、厚み、5μm以下、好ましくは0.05μm〜1μmとした箔が好ましい。薄すぎると取り扱いに不便であり、且つ、金属光輝性が劣る。他方、厚すぎると高価であり、且つ、食感も良くない。尚、上記の打ち箔以外に、蒸着、スパタリング等により製膜された金属箔を用いてもよい。
【0018】
本発明に係る食用金属箔として、好ましい銀箔または白金箔は、純度99.9%以上の箔であり、純度99.99%以上の箔が特に好ましい。
本発明に係る食用金属箔として、実用的な合金箔は、表1−1に示す、金をベースとする合金箔及びこれらから銅成分を除去したものであるが、これに限定されるものではない。
尚、銅の一日の平均摂取及び排出量は2〜5mg程度で、40mg以上摂取すると肝臓や脳に蓄積され過剰症になるとされているので、銅成分を含まない箔がより好ましい。
銅を含まない合金として、例えば、表1−2に示す、金と銀の2成分からなる合金が挙げられる。これらは仲色、三歩色、水色、定色を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
なお、銅を含まない箔では、表1−1に示すような多彩な色は得られない。しかし、本発明では、箔表面を、着色色素を含む皮膜で被覆することにより、所望の色を有する着色箔を得ることができる。
一般に金属箔は、プラズモンと呼ばれる、金属独特の表面現象で、金箔表面は赤色に、銀箔表面は黄色(金色)に帯色する傾向があり、さらに、フリップフロップと呼ばれる現象(金属表面で角度をかえて見ると違う色に見える現象)により、色の表現、表示が困難である。本発明の食用金属箔では、理由は解明されていないが、透明樹脂皮膜の形成により、プラズモンが強調され、例えば銀では、金色に帯色しやすくなるが、逆にフリップフロップ性が抑制される傾向が認められ、金属箔色の調整が容易になる。
そのため、着色した樹脂皮膜により、金属箔を多彩な色に着色することが可能である。
【0021】
本発明に係る食用可能な樹脂として、天然材料である、シェラック、白シェラック、精製シェラック等のシェラック類が代表例として示される。
本発明に係る、水不溶性の樹脂皮膜は、食用可能な樹脂を架橋させることによって形成されたものであり、特に好ましいのは、熱硬化性樹脂皮膜である。この例として、シェラックを加熱してエステル化により架橋結合させてなる皮膜が挙げられる。
また、シェラックをカルシウム、マグネシウム等の2価の金属塩で処理することにより、シェラック中のカルボン酸をイオン結合で架橋させた皮膜を用いることもできる。
【0022】
本発明では、樹脂を架橋させて皮膜を形成することが重要である。一般に架橋構造を有する樹脂は、架橋密度により軟化点を示すこともあるが、溶剤に対し、膨潤するが溶解しない。したがって、水分を含む食品や飲料に添加しても消失せず、金属箔の形状を維持することができる。尚、軟化点が室温に近いと取り扱いが不自由であるため、本発明に係る皮膜の軟化点は60℃以上が好ましい。軟化点が高いほど、温かい食材に接した時、軟化せず、取り扱いが容易である。軟化点が100℃以上であれば、たいていの飲食物に使用できる。使用する樹脂がシェラック樹脂の場合、加熱硬化させれば熱硬化性となり、軟化点を示さないものが得られる。イオン架橋によって硬化させた場合も、架橋の程度を調節することにより、軟化点100℃以上の皮膜を形成することができる。
さらに、皮膜中に着色色素が含まれる場合、樹脂皮膜中の架橋構造は、着色色素を保持する役目を果たす。樹脂皮膜は、水に不溶なので、食材に接しても変化しないが、着色色素には水溶性色素が多い。したがって、樹脂皮膜が水不溶性というだけでは、水分を多く含む食材に接した際、水溶性色素がにじんで食材に色移りする。しかし、架橋結合が形成されている樹脂皮膜の場合、理由は解明されていないが、着色色素は金属箔の外縁から大きくにじみ出ず、金属箔の形状に捺染された状態にとどまる。このため、にじみ部分が少なく、また、箔の色も維持され、加飾用として非常に優れる。この現象は、架橋構造が、着色色素の水溶液成分を、スポンジ類似のゲル体として包接した状態で保持することによって、箔の外縁からの着色色素のはみ出しを抑制するためと推定される。
【0023】
本発明において特に好ましい樹脂であるシェラック(shellac)は、セラックとも呼ばれ、ラックカイガラムシと呼ばれる昆虫が分泌する物質を精製して得られる天然樹脂であり、食品衛生法や日本薬局方にも記載されている安全性の高い樹脂である。
シェラック樹脂の主成分は、ヒドロキシ脂肪酸(Aleuritic Acid)とセスキテルペン酸(Shellolic Acid)のエステルを基本単位構造とした分子量300〜3000程度の混合物である。
シェラックは所定の温度以上で加熱すると、高分子量の三次元架橋構造を形成して硬化する。加熱硬化により引き起こされる架橋反応は、シェラック分子内のカルボン酸と水酸基間のエステル反応及びカルボン酸同士の酸無水物結合の生成によると推定される。白シェラックは、140℃で5分〜180℃で1分、精製シェラックは、180℃で5分〜200℃で1分程度加熱することによって架橋反応を進行させることができる。
シェラックは加熱硬化する前は、常温で容易にアルコール類に溶解するため、シェラックのアルコール溶液、好ましくは食添グレードのエタノール溶液を、金属箔の両面に塗布し、上記条件で加熱することによって、金属箔の両面に熱硬化性の皮膜を形成させることができる。
【0024】
また、イオン結合性の架橋により水不溶性の皮膜を形成することも可能である。この場合は、2価以上の金属塩(例えば、リン酸カルシウム類、乳酸カルシウム類等)を含む水溶液又は含水アルコール溶液をシェラックのアルコール溶液に加え、金属箔の両面に塗布し、乾燥させることで、イオン架橋反応が進行し、皮膜が形成される。この反応は、常温乾燥で生じるが、乾燥時または乾燥後に加熱すると、エステル化による架橋反応も進行するため、皮膜の熱硬化性を更に向上させることができる。
カルシウム、マグネシウム等2価のアルカリ土類化合物の使用アルカリ当量は、樹脂中のカルボキシ当量の5〜30%が適量である。多量に加えるとアルコール樹脂溶液がゲル化するため、金属箔表面に塗布しにくくなる。少なすぎると架橋密度が小さく、色素保持効果が不足する。
尚、樹脂のカルボキシ当量(Eq.ac)とは、樹脂中に含まれるカルボキシル基一個に対する重量割合に相当し、酸価(AV,樹脂100gを中和するに必要なKOHのmg)から、下記の式I
(式I) Eq.ac = 56100/AV
で求められる。
【0025】
本発明に係る樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましいが、製膜性、着色樹脂液の粘度、乾燥性、樹脂皮膜の柔軟性や粉砕性等を調整するために、ロジン等の熱可塑性樹脂成分を併用しても良い。
天然樹脂の代表例であるロジンの主成分は、アビエチン酸(融点175℃)であり、ロジン単独ではアルコールに溶ける。該アルコール溶液に、乳酸カルシウムを加え、乾燥して製膜された樹脂皮膜は、イオン結合で2分子が結合してアルコールに難溶になるが、架橋構造を有しない。従って、ロジンのカルシウム変性物やロジンとグリセリンのエステル化物(エステルガム)は、水及びアルコール中での着色色素の保持力が劣る。したがって、ロジン単独では用いることができないが、特性の改善を図るために、上述したシェラック等の樹脂と併用して用いてもよい。
【0026】
本発明に係る皮膜は、金属の光輝性を損なわない程度の透明性を有するものであればよく、完全な透明のみならず半透明であってもよい。このような皮膜は、塗料および塗膜の分野において、いわゆるクリヤー塗膜もしくはカラークリヤー塗膜として認識されている。
【0027】
本発明に係る食用可能な着色色素とは、既存食品添加剤として認められている天然色素又は指定添加剤を意味する。天然色素がより好ましい。
天然色素として、例えば、ウコン色素、クチナシ黄色色素、ベニバナ黄色色素、カロテン色素、アナトー色素、トウガラシ色素、紅コウジ色素、コチニ―ル色素、ラック色素、クチナシ赤色素、ピートレッド、赤キャベツ色素、ブドウ果樹色素、ブドウ果皮色素、シソ色素、ベリー類色素、紫トウモロコシ色素、クロロフィル、クチナシ青色素、カカオ色素、イカスミ色素等が代表例として示され、これらは、好ましい形態として、粉末状、水、アルコール、含水アルコールの溶液又は分散液の1種又は2種以上の混合物として提供され、通常用いられている食用油、グリコール類等の分散剤、その他、分散助剤、酸化防止剤、更には酢酸エチル等の溶解助剤等、任意の食品添加剤を加えても良い。
指定添加剤として、食用赤色2号、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色40号、食用赤色40号アルミニウムレーキ、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用緑色3号、食用緑色3号アルミニウムレーキ、食用青色1号、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号、食用青色2号アルミニウムレーキ等の1種又は2種以上の色素の混合物を使用することができ、前述の天然色素と併用しても良い。
【0028】
樹脂皮膜が上記着色色素を含む場合、銀箔、白金箔に適用すると、着色された、光輝性金属箔が得られる。金箔に適用すると、フリップフロップ性により、金箔本来の色と、着色による色を帯び、干渉色が見る角度で多彩に変化するため、意匠性、加飾性の優れた食用箔が提供出来る。
【0029】
本発明に係る製造方法として、上述の樹脂のアルコール溶液を、金属箔表面に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。好ましい形態は、樹脂として熱硬化性樹脂を用い、乾燥時または乾燥後に加熱を行い、熱硬化性の皮膜を形成する方法である。
また、着色金属箔を形成する場合は、樹脂のアルコール溶液に、着色色素の粉末、あるいは着色色素のアルコール溶液、アルコール分散液、水溶液、水分散液から選択される着色剤溶液を添加し、溶解又は分散させることで、着色されたアルコール樹脂溶液とし、この溶液を、金属箔表面に塗布すればよい。
例えば、シェラックのアルコール溶液に、着色色素の粉末あるいは分散液を、ボールミル等の常用の分散手段で分散させてマスターバッチを調整し、適時、シェラック溶液に再分散して所望の着色シェラック溶液を得てもよい。
【0030】
金属箔の両面に樹脂皮膜を塗布する方法は、特に限定されないが、金属箔は非常に薄く破れやすいので、金属型枠に澱粉糊等食用可能な糊剤で貼り合わせ、浸漬塗布、乾燥(必要に応じて加熱)することで意匠性の優れた加飾用金属箔を得ることができる。
樹脂皮膜の厚みは、金属箔の種類、利用目的によって適宜調節すればよいが、通常、金属箔の厚みと同じ程度から100倍程度迄の0.1μm〜50μm程度、好ましくは、0.5μm〜10μmの範囲の厚みを金属箔の両面に設けることが好ましい。皮膜が薄すぎると、樹脂被覆の効果が得にくく、厚すぎると、食感や金属光輝性が悪くなる。
金属箔粉に加工して粉末として利用する場合は、皮膜の厚みを3μm以下にすると、金属光輝性の優れた加飾用金属箔粉が得られて好ましい。
【0031】
加熱により樹脂を硬化させる工程としては、通常利用される任意の加熱乾燥法が適用出来るが、熱風加熱乾燥方式が汎用されて便利である。更に、本発明では、金属箔に樹脂のアルコール溶液を塗布し、室温で乾燥させた後、誘導加熱(Induction Heating)装置で、後加熱硬化させても良い。尚、加熱温度は、雰囲気温度で設定できるが、赤外線放射温度計等で金属膜の表面温度を測定して補正するのが好ましい。
【0032】
又、樹脂のアルコール溶液に、食用可能な防腐剤、酸化防止剤、分散安定剤、消泡剤等の常用されている助剤を加えても良い。
金属箔に塗布する、樹脂のアルコール溶液における樹脂濃度は、樹脂の種類、金属箔の種類、着色目的、着色する食材等の利用目的によって異なるが、通常、シェラック樹脂の場合は、75重量%以下、好ましくは10〜50重量%である。樹脂の濃度が低すぎると、製膜性が乏しく、樹脂被覆効果が劣る。又、濃度が高すぎると、乾燥が早すぎ、均質な樹脂膜、平滑な樹脂膜が得にくく、又厚みの制御が困難となる。
【0033】
樹脂に着色色素を添加して、金属箔の両面を着色樹脂皮膜で被覆する場合、着色色素は、樹脂100部(重量部)に対し200部以下、好ましくは150部以下、より好ましくは100部〜20部の量で用いる。樹脂に対して着色色素が多すぎると、金属箔の光輝性が乏しくなり、意匠性が劣るとともに、樹脂皮膜が脆くなりやすく、剥がれの原因になりやすい。
逆に、低濃度領域には、下限が無く、着色効果に乏しい超微量であっても、プラズモン色の干渉に対しては有効である。十分な着色効果を得るためには、樹脂100部に対して着色色素を20部以上とすることが好ましい。
【0034】
本発明に係る金属箔は、通常、12cm角程度の正方形で得られる。本発明の加飾用金属箔は、箔そのままの形状でも使用できるが、飲食物の加飾には、通常、この金属箔を裁断または粉砕することによって得られた金属箔片(金属箔の小片)または金属箔粉を使用する。これらの金属箔片または金属箔粉も、上述した効果を有する。
金属箔片や金属箔粉の例として、上記金属箔を粗粉砕した切りまわし、篩等で粉砕、分級した粉末状の金属箔粉が挙げられ、切りまわし、金属粉では、色の異なる2種以上を混合することにより、意匠性、加飾性を高めることができる。
【0035】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、「%」および「部」は特に記載しない限り、「重量%」および「重量部」を意味する。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
透明白ラック(漂白した透明のシェラック樹脂:軟化点70℃、AV[酸価]68、
Eq.ac=825)の25%アルコール溶液(ラックグレース25E、日本シェラック工業株式会社製)100部に対し、ベニコウジ系赤色色素(モナスレッドLA、50%アルコール溶液、保土谷化学工業株式会社製)10部を攪拌下で添加し、混合して着色樹脂溶液を得た。当該着色樹脂溶液におけるシェラック樹脂の濃度は22.7%であり、着色色素の濃度は4.5%、シェラック樹脂と着色色素の固形分比(重量比)は100:20である。
次いで、金属製型枠(内のり120mm)に澱粉糊を塗布後、食用金箔(仲色:金/銀=90.90/9.09 厚さ:0.1μm)を貼着、乾燥させた後、前述の着色樹脂溶液に浸漬することにより、金属箔の表面に着色樹脂溶液を塗布した後、150℃で5分間、加熱硬化させて、両面が熱硬化性の赤色の透明樹脂皮膜で被覆された、厚み2μmの光輝性に優れた加飾用金属箔を得た。
【0037】
[実施例2]
ベニコウジ系赤色色素を添加しないアルコール溶液(すなわち、ラックグレース25Eのみ)を使用した以外は、実施例1と同じ工程により、厚み2μmの加飾用金属箔を得た。
【0038】
[比較例1,2]
加熱硬化を行わず、金属箔に塗布した樹脂溶液を室温で乾燥することによって、金属箔表面に皮膜を形成した以外は、実施例1、2と同じ工程により、厚み2μmの金属箔を得た。
【0039】
実施例1、2および比較例1、2によって製造した金属箔は、何れも原料の金属箔の仲色より赤味があった。
ベニコウジ系赤色色素を添加していない実施例2、比較例2の赤味は、金のプラズモン効果によるものと考えられ、実施例1、比較例1は、赤色色素の添加により、さらに赤味がかり、同じ金属箔から、色相の異なる赤色系金属箔が得られた。又、原料金属箔と比べて、粉砕及び手作業での取り扱いが容易であった。
【0040】
ただし、比較例1の金属箔は、実施例1の金属箔と異なり、室温で水に浸漬した際、赤色のにじみが観察された。製造した金属箔で実際に食品を加飾した場合の効果を調べるために、以下の実験を行った。
実施例1と比較例1の金属箔それぞれを星型に切り抜き、コーヒーゼリーの上にのせて冷蔵庫で保存した。1日後、実施例1の金属箔は、僅かに、星型の赤味がコーヒーゼリー表面に色移りしていたが、星形の外縁からのはみ出しは認められなかった。比較例1の金属箔は、星型の廻り約1mmに赤色のにじみが認められた。
赤色色素を含まない実施例2と比較例2の金属箔について同じ実験を行ったところ、実施例2の金属箔は1日後も何ら変化しなかったが、比較例2の金属箔は若干軟化し、形状に若干の崩れが見られた。
【0041】
色のにじみ、形状保持に関する効果の差は、加熱硬化させて形成したシェラック樹脂皮膜は架橋構造を有するが、室温で自然乾燥させて形成したシェラック樹脂皮膜は架橋構造を有さないことに起因すると考えられる。
【0042】
[実施例3]
実施例1のベニコウジ系赤色色素をクチナシ系青色色素(クリアーブルー7SF、80%アルコール溶液、保土谷化学工業株式会社)25部に変更して、着色樹脂溶液を調製し、仲色食用金箔を、水色食用金箔(金59.74/銀40.25 厚さ0.1μm)に変えた以外は、実施例1と同じ工程により、厚さ、2.2μmの光輝性に優れた食用金属箔を得た。
【0043】
得られた食用金属箔は正面から見ると光輝性の青色を呈したが、フリップフロップ性の効果で、箔を折り曲げたり、見る角度を変えると、水色食用金箔自体の金色が発現することがあり、多彩な色を示す金属箔が得られた。
【0044】
[比較例3]
加熱硬化を行わず、金属箔に塗布した樹脂溶液を室温乾燥することによって、金属箔表面に皮膜を形成した以外は、実施例3と同じ方法により、青色の食用金属箔を得た。
【0045】
実施例3、比較例3で製造した食用金属箔を各々、3mmの篩に通し、2〜4mmの切り落とし食用金箔片を得た。
これらの食用金箔片を爪楊枝を用いてシャンペングラスに各々数片入れた。その後、グラスに、シャンペンを注いだ。
実施例3の食用金属箔は、シャンデリアに映え、青色を主体とした多彩な光輝性を示し、3時間程度放置した後も変化がなかったが、比較例3の食用金属箔では、青色色素が溶出し、原料の水色食用金箔が露出し、加飾効果を著しく毀損した。
【0046】
[実施例4]
食用金属箔として食用銀箔(純度99.99%、厚み0.3μm)を用いた以外は、実施例3と同じ方法により、青色樹脂皮膜で両面が被覆された厚さ3μmの光輝性を示す青色の加飾用食用銀箔を得た。
【0047】
[実施例5]
食用金属箔として実施例4と同じ食用銀箔を用いた他は、実施例2と同じ方法により、無着色の樹脂皮膜で両面が被覆された食用銀箔を得た。得られた食用銀箔はプラズモンにより、僅かに金色を感じさせる光輝性を示した。
【0048】
[比較例4、5]
加熱硬化を行わず、銀箔に塗布した樹脂溶液を室温乾燥することによって、銀箔表面に皮膜を形成した以外は、実施例4、5と同じ方法により、食用銀箔を得た。
ただし、比較例4の銀箔は、実施例4の銀箔と異なり、室温で水に浸漬した際、青色のにじみが観察された。
実施例4と比較例4の銀箔それぞれを星型に切り抜き、シャンペンジェリーの上にのせて冷蔵庫で保存した。1日後、実施例4の銀箔は、僅かに、星型の青味がシャンペンジェリー表面に色移りしていたが、はみ出しは認められなかった。比較例4の銀箔は、星型の廻り約1mmに青色のにじみが認められた。
青色色素を含まない実施例5と比較例5の銀箔について同じ実験を行ったところ、実施例5の銀箔は1日後も何ら変化しなかったが、比較例5の銀箔は若干軟化し、形状に若干の崩れが見られた。
【0049】
[実施例6]
実施例1で作成した着色樹脂溶液110g(溶液中のシェラックの量:25g、カルボキシ当量0.03当量)に、10.4%乳酸カルシウム・5水和物(LACと示す;分子量308、アルカリ当量数154)の35%含水エタノール溶液を攪拌下、種々の割合で加え、以下、比較例1と同じ方法(室温乾燥)により、光輝性金属箔を得た。
このようにして得られた着色金属箔では、乳酸カルシウムのような金属塩を加えることにより、シェラック樹脂中にイオン結合による架橋構造が形成される。
なお、10.4%乳酸カルシウム含水エタノール溶液(100g中LAC、0.0675当量)15部(0.0101当量[樹脂中のカルボキシ当量の33%])より高濃度の溶液を用いた場合は、着色樹脂溶液が凝集、ゲル化して、再分散不能であった。
【0050】
得られた各種の金属箔について、実施例1同様の赤色色素の溶出試験を行ったところ、10.4%の乳酸カルシウム含水エタノール溶液1部(0.675ミリ当量[樹脂中のカルボキシ当量の2.2%])以下ではLACの添加効果は認められず、赤色色素の溶出を有意に抑制するためには、2.2部(0.0015当量[樹脂中のカルボキシ当量の5%)以上必要であった。
【0051】
[実施例7]
実施例6で調製した、乳酸カルシウムを添加した着色樹脂溶液について、実施例1同様、加熱硬化による皮膜形成を行ったところ、得られた金属箔は何れも耐水性に優れており、実施例1で製造した金属箔と同様、着色色素のにじみ出しを抑制した。
【0052】
[比較例6]
透明白ラックの25%アルコール溶液を、ロジン(酸価170、軟化点70℃)の25%エタノール溶液(100g中、ロジン25g、カルボキシ当量0.075当量)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、着色樹脂溶液を調製し、以下、実施例6と同様の方法(乳酸カルシウム添加・室温乾燥)により、光輝性金属箔を得た。
実施例6と同様に、10.4%乳酸カルシウム含水エタノール溶液(100g中LAC、0.0675当量)40部(0.027当量、樹脂中のカルボキシ当量の36%)より高濃度の含水エタノール溶液を用いた場合は、着色樹脂溶液が凝集、ゲル化して、再分散不能であった。
得られた金属箔は、何れも着色色素の耐水固定性が悪かった。これは、ロジンが、金属塩を加えても、架橋構造を形成する性質を有していないためと考えられる。
【0053】
[比較例7]
比較例6で調製した着色樹脂溶液(乳酸カルシウムを添加したロジン溶液)を塗布、室温乾燥させた金属箔を更に、150℃で5分間、加熱したが、着色色素の耐水固定性は改善されなかった。これは、ロジンが加熱しても、架橋構造を形成する性質を有さないためと考えられ、架橋構造の有意性が確認された。
【0054】
実施例1〜7および比較例1〜7の製造条件と特性を表2にまとめる。
【表2】

【0055】
[実施例8〜11および比較例8〜11]
食用銀箔(純度99.99%、厚み0.3μm)を用い、着色色素、シェラック濃度、加熱硬化条件を変化して食用金属箔を製造し、特性を調べた。製造条件と特性を表3に示す。なお、表3において、皮膜の厚みは、箔両面の皮膜の厚みの合計ではなく、箔片面の皮膜の厚みを示す。
【0056】
【表3】

【0057】
比較例8〜11は着色樹脂溶液を加熱せず、室温乾燥した以外は、実施例8〜11と同じ条件で製造したものである。また、表中の着色剤/樹脂は固形分比(重量比)である。
尚、耐水性、耐ワイン性、光輝性、加飾性は、以下に示す方法で評価した。
耐水性は、0.1gの試料を10mlのイオン交換水に浸漬した際、3時間以内で色素が溶出したものを耐水性「なし」、24時間以上変化しなかったものを耐水性「良好」と評価した。
耐ワイン性は、0.1gの試料を10mlの白ワインに浸漬した際、1時間以内で色素が溶出したものを耐ワイン性「なし」、24時間以上変化しなかったものを耐ワイン性「良好」と評価した。
光輝性は試料を目視した際の金属光輝性(銀箔特有の意匠性)、加飾性は試料を食材に加えた時の意匠性について評価した。
【0058】
[実施例12]
実施例8〜11の食用銀箔各々を、先ず50メッシュの篩を通過させたのち、100メッシュの篩残で篩分けすることにより、0.5〜2mmの光輝性の銀箔粉末を得た。
各々の粉末及び、任意に混合した混合粉末は優れた光輝性を示した。
【0059】
[比較例12]
比較例8〜11の食用銀箔を実施例12と同様の方法で篩処理した。比較例の銀箔を使用した場合、最初の50メッシュの篩処理でダマになりやすく、続く、100メッシュの篩処理でも分級出来ず、熱可塑性皮膜の欠点を示し、意匠性、加飾性が劣っていた。
【0060】
[実施例13]
定法の葛きりの製法に従い、市販の葛粉を水に溶かしてから加熱した段階で、実施例12で得られた各種の食用銀箔粉を添加、分散後、容器に流し込み冷却、固化した。
次いで、固化したゲルを熱湯にくぐらせ、透明な葛きりを得た。
これらの葛きりは、内部に光輝性の銀箔粉が散らばった外観を有し、意匠性に優れていた。また、この葛きりを、3日間冷蔵保存したが、食用銀箔粉の色の変化は認められなかった。
【0061】
[比較例13]
比較例12で得られた各種の銀箔粉を用いた以外は、実施例13と同じ方法で葛きりを製造した。比較例12の銀箔粉は、葛液の冷却、固化の段階から、色素のにじみが認められ、出来あがった葛きりは、全体に着色色素が広がり、意匠性が劣っていた。
【0062】
[実施例14]
実施例12で得られた各種の銀箔粉をワイングラスに少量入れ、白ワインを注いだ。注がれた白ワインは、銀箔粉により多彩な光輝性の雰囲気を醸し出し、3時間経過後も意匠性に変化は見られなかった。
【0063】
[比較例14]
比較例12で得られた各種の銀箔粉をワイングラスに少量入れ、白ワインを注いだ。しばらくすると、ワインに着色が見られ、シェラック皮膜が溶解し、原料銀箔粉がグラスの底に沈着し、加飾効果は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用金属箔の両面を無色もしくは有色の皮膜で被覆してなる、金属光輝性を示す加飾用食用金属箔であって、
前記皮膜が、食用可能な樹脂を架橋させることによって形成された、水不溶性の透明または半透明の樹脂皮膜であることを特徴とする、加飾用食用金属箔。
【請求項2】
前記樹脂皮膜が、食用可能な着色色素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の加飾用食用金属箔。
【請求項3】
前記樹脂皮膜が、シェラック樹脂を架橋させることによって形成された皮膜であることを特徴とする、請求項1または2に記載の加飾用食用金属箔。
【請求項4】
前記樹脂皮膜が、熱硬化性シェラック樹脂によって形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾用食用金属箔。
【請求項5】
前記金属箔が、金、銀および白金からなる群から選択される貴金属箔であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の加飾用食用金属箔。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加飾用食用金属箔を裁断または粉砕することによって得られたことを特徴とする、金属箔片または金属箔粉。
【請求項7】
金属光輝性を示す加飾用食用金属箔の製造方法であって、
食用可能な金属箔の両面に、シェラック樹脂を含むアルコール溶液を塗布する工程、及び
加熱により、前記シェラック樹脂を架橋させて、前記金属箔の両面に熱硬化性の樹脂皮膜を形成する工程
を含むことを特徴とする、加飾用食用金属箔の製造方法。
【請求項8】
金属光輝性を示す加飾用食用金属箔の製造方法であって、
食用可能な金属箔の両面に、シェラック樹脂と2価以上の金属塩とを含むアルコール溶液を塗布する工程、及び
前記溶液を乾燥することにより、前記シェラック樹脂を架橋させて、前記金属箔の両面に樹脂皮膜を形成する工程
を含むことを特徴とする、加飾用食用金属箔の製造方法。
【請求項9】
前記アルコール溶液が、さらに食用可能な着色色素を含むことを特徴とする、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記金属箔が、金、銀および白金からなる群から選択される貴金属箔であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−100570(P2012−100570A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250524(P2010−250524)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(591111721)有限会社山村製箔所 (2)
【Fターム(参考)】