説明

加齢に伴う過活動膀胱治療薬

【課題】加齢に伴う過活動膀胱治療薬の提供。
【解決手段】コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物又はその薬理学的に許容できる塩を含有する、加齢に伴う過活動膀胱の治療薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢に伴う過活動膀胱治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
過活動膀胱は、国際尿禁制学会(ICS)で認められた新しい疾患であり、尿意切迫感を主症状とし、頻尿を伴うこともあり、時には尿失禁を引き起こすことがある。泌尿器科医が尿意切迫、頻尿、尿失禁といった過活動膀胱の治療に使用できる薬剤は、現在のところ抗コリン剤(抗ムスカリン剤)に限られている。しかし抗コリン剤はアセチルコリン(ACh)を介する膀胱収縮を抑制する一方、共通する副作用として口内乾燥感(唾液分泌障害)や便秘を伴う。それは、唾液腺にも消化管にも膀胱と共通のムスカリン受容体サブタイプ(M3)が存在するためである。したがって、消化管通過障害(イレウスなど)を有する患者には抗コリン剤を投与することはできない。
【0003】
また、前立腺肥大症などの下部尿路通過障害を有する患者の5〜7割に過活動膀胱を認めるが、抗コリン剤の投与により排出障害の増悪をきたすことがある。さらに、抗コリン剤が中枢へ移行して、脳の高次機能(認知、学習、情緒、記憶、睡眠)を障害する可能性も指摘されている。このような観点から新しいメカニズムに基づいた薬剤が待望されている。
【0004】
過活動膀胱は、加齢とともに増加するといわれている。加齢とともに体力や様々な臓器の機能の低下を生じるが、同様に膀胱の機能も加齢とともに低下していく。例えば、加齢に伴う中枢神経系のアセチルコリン(ACh)神経機能の低下(ACh遊離低下、ムスカリン受容体の数の減少、ACh関連酵素の機能低下など)が報告されている。そして、本発明者らはこれまで、このACh神経機能の低下が、高齢者にみられる排尿反射亢進、すなわち過活動膀胱とどのように関連しているのかについて検討してきた。その結果、前脳基底核より大脳皮質に投射するACh系が排尿反射中枢に対し抑制性に投射し、この投射系がムスカリンM1受容体遮断剤であるpirenzepineにより拮抗されることから、過活動膀胱はムスカリンM1受容体を介するものであると考えられた(非特許文献1)。また、脳血管障害により過活動膀胱となっているラットあるいはヒトに、脳内ACh放出を促進させるアニラセタムを投与すると排尿反射の抑制がみられること(非特許文献2及び3)により、脳内ACh系の賦活は過活動膀胱を改善させる可能性が示唆されている。
【0005】
一方、下部尿路障害の治療薬として、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物がいくつか報告されている。下部尿路疾患は、排尿障害と蓄尿障害などに分けられるが、前者の治療薬の一つに、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する非カルバメート系アミン化合物が報告されている(特許文献1)。しかしながら、後者について、すなわち尿意切迫感、頻尿、尿失禁等の過活動膀胱に関与する蓄尿障害については、開示も示唆もなされていない。
【0006】
塩酸ドネペジルは、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することにより脳内のアセチルコリンの量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活する物質である。この物質は、アルツハイマー型老年性痴呆、アルツハイマー病の治療薬として広く用いられている(特許文献2)。しかしながら、この中枢作用性のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤である塩酸ドネペジルが、加齢に伴う尿意切迫感、頻尿、尿失禁等の過活動膀胱に関与する蓄尿障害に対する効果を有するかについては確認されていなかった。
【特許文献1】国際公開第00/18391号パンフレット
【特許文献2】特許第2578475号公報
【非特許文献1】Yokoyama O, Ootsuka N, Komatsu K, Kodama K, Yotsuyanagi S, Niikura S, Nagasaka Y, Nakada Y, Kanie S, Namiki M: Forebrain muscarinic control of micturition reflex in rats. Neuropharmocology 41:629-638, 2001
【非特許文献2】Nakada Y, Yokoyama O, Kamatsu K, Kodama K, Yotsuyanagi S, Niikura S, Nagasaka Y and Namiki M: Effects of aniracetam on bladder overactivity in rats with cerebral infarction. J Pharmacol Exp Ther 293: 921-928, 2000
【非特許文献3】横山 修:排尿障害・基礎研究から臨床へ、日本泌尿器科学会誌91: 140, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、尿意切迫感、頻尿、尿失禁などの症状を有する加齢に伴う過活動膀胱に関与する蓄尿障害の治療に有効な薬剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、脳内でアセチルコリンエステラーゼを阻害し、脳内アセチルコリン(ACh)を増加させる塩酸ドネペジルをラットに投与すると、3週及び10週齢のラットに比べ10月齢のラットでは塩酸ドネペジル投与による排尿反射の抑制が顕著であることを見出した。この結果は塩酸ドネペジルが脳内ACh系を賦活し、加齢に伴う過活動膀胱を改善させた可能性を示唆するものであり、本発明者は以上の知見に基づいて本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物を含有する、加齢に伴う過活動膀胱の治療薬。
【0009】

前記化合物としては、下記一般式で表される環状アミン誘導体を例示することができる。
【0010】
【化19】

〔式中、
Jは(a)置換若しくは無置換の次に示す基;(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基又は(7)フリル基、
(b)フェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式
【0011】
【化20】

(c)環状アミド化合物から誘導される一価の基、
(d)低級アルキル基、又は
(e)式 R1−CH=CH−(式中、R1は水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する)
で示される基を意味する。
【0012】
【化21】

(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、
【0013】
【化22】

水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、
【0014】
【化23】

で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。
【0015】
Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。
【0016】
【化24】

Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。
【0017】
qは1〜3の整数を意味する。
【0018】
【化25】

特に、上記のJが置換若しくは無置換の(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基及び(7)フリル基からなる群から選択された一つの基であってもよく、さらに、上記のJが環状アミド化合物から誘導される一価の基であってもよい。
【0019】
また、前記コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物としては、下記一般式で表される環状アミン誘導体であってもよい。
【0020】
【化26】

〔式中、
1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式
【0021】
【化27】

【0022】
【化28】

(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、
【0023】
【化29】

水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、
【0024】
【化30】

で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。
【0025】
Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。
【0026】
【化31】

Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。
【0027】
qは1〜3の整数を意味する。
【0028】
【化32】

特に、Bが式
【0029】
【化33】

水素原子又はメチル基を意味する。〕で示される基、式−CH=CH−(CH)−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、Rは水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基であってもよい。
【0030】
さらにまた、前記コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物としては、下記一般式で表される環状アミン誘導体であってもよい。
【0031】
【化34】

〔式中、
1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式
【0032】
【化35】

【0033】
【化36】

水素原子又はメチル基を意味する。〕で示される基、式−CH=CH−(CH)−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、Rは水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基を意味する。
【0034】
Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。〕
特に、上記Kが置換若しくは無置換のアリールアルキル基又はフェニル基であってもよく、上記Jはインダノニルから誘導される一価の基及び二価の基、インデニル並びにインダンジオニルからなる群から選択される一つの基であってもよい。また、J1としては、置換基として炭素数1〜6の低級アルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を有してもよいインダノニル基を例示することができる。
【0035】
上記環状アミン誘導体は、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−メチレンジオキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−ニトロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−シクロヘキシルメチル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−フルオロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−(3−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)プロピル)ピペリジン、1−ベンジル−4−((5−イソプロポキシ−6−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)プロペニルピペリジン、及び1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1,3−インダンジオン)−2−イル)プロペニルピペリジンからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよく、又は1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジンであってもよい。本発明においては、コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物は、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン・塩酸塩であることが好ましい。
【0036】

上記アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物は、ガランタミン、タクリン、フィゾスチグミン又はリバスチグミンであってもよい。
(2)本発明のコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物またはその薬理学的に許容できる塩の有効量を患者に投与することを特徴とする、加齢に伴う過活動膀胱の治療法。
(3)候補物質を非ヒト哺乳動物に投与し、候補物質の存在下及び非存在下における加齢に伴う過活動膀胱の表現型の変化を検出又は測定することを特徴とする、加齢に伴う過活動膀胱を抑制する物質のスクリーニング方法。
【0037】
本発明のスクリーニング方法において、候補物質としては、例えばコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物が挙げられる。ここで、加齢に伴う過活動膀胱の表現型の変化は、
膀胱容量、膀胱収縮圧及び残尿量からなる群から選択される少なくとも一つを指標とするものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、コリンエステラーゼ(ChE)阻害作用を有する化合物またはその薬理学的に許容できる塩を有効成分とする加齢に伴う過活動膀胱の治療薬が提供される。本発明の過活動膀胱治療薬は、加齢に伴う過活動膀胱に関与する蓄尿障害に対する新たな治療薬として有用である。本発明の化合物、例えば塩酸ドネペジルには既存の過活動膀胱治療薬に伴う口内乾燥感、便秘、尿排出障害などの副作用がない。また投薬対象となる患者の多くは高齢者であるが、塩酸ドネペジルは脳高次機能障害を心配する必要もなく安心して投与ができるため、画期的な加齢に伴う過活動膀胱の治療薬となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。
【0040】
なお、本明細書において引用した文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
【0041】
本発明は、コリンエステラーゼ(ChE)阻害剤が、アセチルコリンの分解を抑制し、シナプス間隙のアセチルコリンの濃度を高めることで、加齢に伴う過活動膀胱を改善するという機序を見出すことにより完成されたものである。
【0042】
従って、本発明は、アセチルコリンの分解を抑制してアセチルコリンの濃度を高める作用を有する化合物、すなわちコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする加齢に伴う過活動膀胱の治療薬及び治療方法を提供するものである。
1.コリンエステラーゼ(ChE)阻害作用を有する化合物
本発明において、加齢に伴う過活動膀胱を治療するための有効成分として、ChE阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物を含有する。本発明におけるChE阻害作用を有する化合物とは、ChE阻害作用、すなわちChEの活性を可逆的に又は不可逆的に阻害する物質を意味する。本発明において、ChEにはアセチルコリンエステラーゼ(AChE)(EC3.1.1.7)、ブチリルコリンエステラーゼなどが含まれる。本発明のChE阻害作用を有する化合物の好ましい特徴としては、ブチリルコリンエステラーゼに対してよりもAChEに対して高い選択性を有していること、中枢性に作用すること、血液脳関門を通過する能力を有していること、治療に際して必要とされる用量においては重篤の副作用を生じさせることはないことなどを挙げることができる。
【0043】
本発明において加齢に伴う過活動膀胱の治療薬として使用するための好ましい化合物には、ChE、特にAChE阻害作用を有する化合物であり、当該化合物には以下に記述されるようなChE阻害作用を有する化合物の薬理学的に許容できる塩、それらの溶媒和物、それらのプロドラッグが含まれる。
(1)コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物
本発明において、ChE阻害作用を有する化合物としては、ドネペジル(donepezil)(アリセプト(ARICEPT)(登録商標))、ガランタミン(レミニール(Reminyl)(登録商標))、タクリン(Tacrine)(コグネックス(Cognex)(登録商標))、リバスチグミン(エクセロン(Exelon)(登録商標))、ジフロシロン(zifrosilone)(米国特許第5693668号明細書)、フィゾスチグミン(physostigmine)(シナプトン(Synapton))(Neurobiology of Aging 26 (2005) 939-946)、イピダクリン(ipidacrine)(米国特許第4550113号明細書)、キロスチグミン(quilostigmine)、メトリフォネート(Metrifonate)(プロメム(Promem))(米国特許第4950658号明細書)、エプタスチグミン、ベルナクリン、トルセリン(tolserine)、シムセリン(cymserine)(米国特許第6410747号明細書)、メスチノン、イコペジル(icopezil)(米国特許第5750542号明細書)、TAK−147(J.Med. Chem., 37(15), 2292-2299, 1994、日本国特許第2650537号公報、米国特許第5273974号明細書)、フペルジンA(huperzine A)(Drugs Fut. , 24, 647-663, 1999)、スタコフィリン(stacofylline)(米国特許第4599338号明細書)、チアトルセリン(thiatolserine)、ネオスチグミン(Neostigmine)、エセロリン(eseroline)若しくはチアシムセリン(thiacymserine)、8−[3−[1−[(3−フルオロフェニル)メチル]−4−ピペリジニル]−1−オキソプロピル]−1,2,5,6−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン(特許第3512786号公報)、フェンセリン又はZT−1などが挙げられる。あるいは前記化合物の誘導体または前記化合物のプロドラッグであってもよい。さらに、前記化合物、前記誘導体または前記プロドラッグの薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物などもChE阻害作用を有する化合物の好ましい態様として含まれる。さらには、ChE阻害作用を有する化合物には、国際公開第00/18391号パンフレットに記載されたChE阻害作用を有する化合物などが挙げられる。
【0044】
ガランタミンおよびその誘導体は、米国特許第4663318号明細書、国際公開第88/08708号パンフレット、国際公開第97/03987号パンフレット、米国特許第6316439号明細書、米国特許第6323195号明細書、米国特許第6323196号明細書などに記載されている。タクリンおよびその誘導体は、米国特許第4631286号明細書、米国特許第4695573号明細書、米国特許第4754050号明細書、国際公開第88/02256号パンフレット、米国特許第4835275号明細書、米国特許第4839364号明細書、米国特許第4999430号明細書、国際公開第WO97/21681号パンフレットなどに記載されている。フィゾスチグミン及びその誘導体は、米国特許第5077289号明細書、米国特許第5177101号明細書、米国特許5302721号明細書、特開平5−306286号公報、米国特許第7166824号明細書、欧州特許第298202号明細書、国際公開第98/27096号パンフレット、J. Pharm. Exp. Therap., 249 (1),194〜202, 1989などに記載されている。リバスチグミンおよびその誘導体は、欧州特許第193926号明細書、国際公開第98/26775号パンフレット、国際公開第98/27055号パンフレットなどに記載されている。
【0045】
ここで、「プロドラッグ」とは、バイオアベイラビリティ(bioavailability)の改善や副作用の軽減等を目的として、「薬剤の活性本体」(プロドラッグに対応する「薬剤」を意味する)を不活性な物質に化学修飾したものを意味し、吸収後、体内では活性本体へ代謝され、作用を発現する薬剤のことである。従って、「プロドラッグ」という用語は、対応する「薬剤」よりも固有活性(intrinsic activity)は低いが、生物学的な系に投与されると、自発的な化学反応又は酵素触媒反応又は代謝反応の結果、その「薬剤」物質を生成する任意の化合物を指す。当該プロドラッグとしては、上記例示した化合物又は下記の一般式で表される化合物のアミノ基、水酸基、カルボキシル基などがアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化、炭酸化、エステル化、アミド化又はウレタン化された化合物などの種々のプロドラッグを例示することができる。但し、例示した群は包括的なものではなく、典型的なものに過ぎず、当業者は他の既知の各種プロドラッグを公知の方法によって上記例示した化合物又は下記一般式で示される化合物から調製することができる。上記例示した化合物又は下記の一般式で表される化合物からなるプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。
(2)環状アミン誘導体

本発明において、ChE阻害作用、特にAChE阻害作用を有する化合物のさらに好適な例としては、次の一般式(I)で表される環状アミン誘導体、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物が挙げられる。本発明において、ChE阻害作用を有する化合物は、好ましくは1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル〕メチルピペリジン(ドネペジル)及びその薬理学的に許容できる塩並びにそれらの溶媒和物であり、特に好ましくは1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル〕メチルピペリジン・塩酸塩(塩酸ドネペジル)、すなわちアリセプト(ARICEPT)(登録商標)である。
<一般式(I)について>
一般式(I)
【0046】
【化37】

〔式中、Jは以下のグループ(a)〜(e)に示される基を意味する。
【0047】
(a)置換若しくは無置換の次に示す基;
(1)フェニル基、
(2)ピリジル基、
(3)ピラジル基、
(4)キノリル基、
(5)シクロヘキシル基、
(6)キノキサリル基又は
(7)フリル基、
(b)フェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;
(1)インダニル、
(2)インダノニル、
(3)インデニル、
(4)インデノニル、
(5)インダンジオニル、
(6)テトラロニル、
(7)ベンズスベロニル、
(8)インダノリル、
(9)式
【0048】
【化38】

(c)環状アミド化合物から誘導される一価の基、
(d)低級アルキル基、又は
(e)式 R−CH=CH−(式中、Rは水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する)
【0049】
【化39】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、
【0050】
【化40】

水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、
【0051】
【化41】

で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。
【0052】
Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。
【0053】
【化42】

Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。
【0054】
qは1〜3の整数を意味する。
【0055】
【化43】

本明細書において、「低級アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基:sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基(アミル基)、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基などを意味する。これらのうち好ましい基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などを挙げることができ、最も好ましいものはメチル基である。「低級アルキル基」は、本発明の化合物(I)における上記の定義において、例えばJ,K,R3,R4の定義中に記載されている。
【0056】
本明細書において、「低級アルコキシ基」とは、メトキシ基、エトキシ基など、上記の低級アルキル基に対応する低級アルコキシ基を意味する。
【0057】
本明細書において、「低級アルコキシカルボニル基」とは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブチロキシカルボニル基など、前記低級アルコキシ基に対応する低級アルコキシカルボニル基を意味する。
【0058】
本明細書において、「シクロアルキル基」とは、炭素数4〜10の環状のアルキル基であり、例えば、限定するわけではないが、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0059】
<Jについて>
Jにおける(a)グループ「置換もしくは無置換の次に示す基;(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基又は(7)フリル基」という定義において、置換基としては、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜6の低級アルキル基;
メトキシ基、エトキシ基など上記の低級アルキル基に対応する低級アルコキシ基;
ニトロ基;
塩素、臭素、フッ素などのハロゲン;
カルボキシル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブチロキシカルボニル基など、上記の低級アルコキシ基に対応する低級アルコキシカルボニル基;
アミノ基;
モノ低級アルキルアミノ基;
ジ低級アルキルアミノ基;
カルバモイル基;
アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、バレリルアミノ基、ピバロイルアミノ基など、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基;
シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基;
メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基などの低級アルキルアミノカルボニル基;
メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基など前記に定義した低級アルキル基に対応する低級アルキルカルボニルオキシ基;
トリフルオロメチル基などに代表されるハロゲン化低級アルキル基;
水酸基;
ホルミル基;
エトキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの低級アルコキシ低級アルキル基
などを挙げることができる。上記の置換基の説明において、「低級アルキル基」、「低級アルコキシ基」とは、前記の定義から派生する基をすべて含むものとする。(a)グループの(1)〜(7)の基は、同一又は異なる1〜3個の上記の置換基で置換されていてもよい。
【0060】
さらにフェニル基の場合は、次の場合も置換されたフェニル基に含まれるものとする。すなわち、
【0061】
【化44】

Eは炭素原子又は窒素原子を意味する。)。
【0062】
Dはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜6の低級アルキル基;
メトキシ基、エトキシ基など上記の低級アルキル基に対応する低級アルコキシ基;
ニトロ基;
塩素、臭素、フッ素などのハロゲン;
カルボキシル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブチロキシカルボニル基など、上記の低級アルコキシ基に対応する低級アルコキシカルボニル基;
アミノ基;
モノ低級アルキルアミノ基;
ジ低級アルキルアミノ基;
カルバモイル基;
アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、バレリルアミノ基、ピバロイルアミノ基など、炭素数1〜6の脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されるアシルアミノ基;
シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基;
メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基などの低級アルキルアミノカルボニル基;
メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基など前記に定義した低級アルキル基に対応する低級アルキルカルボニルオキシ基;
トリフルオロメチル基などに代表されるハロゲン化低級アルキル基;
水酸基;
ホルミル基;
エトキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの低級アルコキシ低級アルキル基
などを挙げることができる。上記の置換基の説明において、「低級アルキル基」、「低級アルコキシ基」とは、前記の定義から派生する基をすべて含むものとする。

これらのうち、フェニル基に好ましい置換基としては、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン化低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基、水酸基、低級アルコキシ低級アルキル基、ハロゲン、ベンゾイル基、ベンジルスルホニル基などを挙げることができ、置換基は同一又は相異なって2つ以上でもよい。
【0063】
ピリジル基の置換基に好ましい基としては、低級アルキル基、アミノ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0064】
ピラジル基の置換基に好ましい基としては、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シクロアルキルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0065】
また、Jとしてのピリジル基は、2−ピリジル基、3−ピリジル基又は4−ピリジル基が望ましく、ピラジル基は2−ピラジル基が望ましく、キノリル基は2−キノリル基又は3−キノリル基が望ましく、キノキサリル基は2−キノキサリル基又は3−キノキサリル基が望ましく、フリル基は2−フリル基が望ましい。
【0066】
Jの定義において、(b)グループに記載されている(1)〜(9) から誘導される一価又は二価の基について、その代表例を示せば以下のとおりである。
【0067】
【化45】

【0068】
【化46】

上記一連の式において、tは0又は1〜4の整数を意味し、フェニル基が0又は1〜4個の同一又は相異なるSで示した基で置換されることを示す。Sは同一又は相異なる前記したJ(a)グループの定義における置換基のうち1つ又は水素原子を意味するが、好ましくは水素原子(無置換)、低級アルキル基又は低級アルコキシ基をあげることができる。さらに、フェニル環の隣りあう炭素間でメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などのアルキレンジオキシ基で置換されていてもよい。
【0069】
これらのうち、好ましい場合は、無置換若しくはメトキシ基、イソプロポキシ基が1〜3個置換されている場合、メチレンジオキシ基が置換されている場合であり、最も好ましい場合は、無置換若しくはメトキシ基が1〜3個置換されている場合である。
【0070】
なお、上記のインダノリデニルはJ(b)の定義におけるフェニル基が置換されていてもよい二価の基の例である。すなわちJ(b)の(2)のインダノニルから誘導される代表的な二価の基である。
【0071】
Jの定義において、(c)グループの環状アミド化合物から誘導される一価の基とは、例えばキナゾロン、テトラハイドロイソキノリン−オン、テトラハイドロベンゾジアゼピン−オン、ヘキサハイドロベンツアゾシン−オンなどを挙げることができるが、構造式中に環状アミドが存在すればよく、これらのみに限定されない。
【0072】
環状アミドには、単環もしくは縮合ヘテロ環から誘導されるものがありうるが、縮合ヘテロ環としては、フェニル環との縮合ヘテロ環が好ましい。この場合、フェニル環は炭素数1〜6の低級アルキル基、好ましくはメチル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、好ましくはメトキシ基あるいはハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0073】
好ましい例を挙げれば次の通りである。
【0074】
【化47】

【0075】
【化48】

上記の式中で、式(i),(l)におけるYは水素原子又は低級アルキル基を意味し、式(k)におけるVは水素原子又は低級アルコキシ基を意味し、式(m),(n)におけるW,Wは、それぞれ独立して同一又は異なって水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基を、Wは水素原子又は低級アルキル基を意味する。式(j)におけるUは、水素原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を意味する。
【0076】
なお、式(j),(l)において、右側の環は7員環であり、式(k)において右側の環は8員環である。
【0077】
Jの定義において、(d)グループ「低級アルキル基」は、前記した通りである。
【0078】
Jの上記の定義のうち好ましいものは、(a)グループに含まれる基、(b)グループに含まれる基、(c)グループに含まれる基であり、最も好ましいものは、(b)グループに含まれる、フェニル環が置換されてもよいインダノン(インダノニル)から誘導される一価の基、(c)グループの環状アミド化合物から誘導される一価の基である。
【0079】
<Bについて>
【0080】
【化49】

が水素原子である場合は式−(CH−で表され、さらにアルキレン鎖のいずれかの炭素原子に1つ又はそれ以上のメチル基が結合していてもよいことを意味する。この場合、好ましくはnは1〜3である。
【0081】
Bにおいて、「ジアルキルアミノアルキルカルボニル基」は、例えば、N,N-ジメチルアミノアルキルカルボニル基、N,N-ジエチルアミノアルキルカルボニル基、N,N-ジイソプロピルアミノアルキルカルボニル基、N-メチル-N-エチルアミノアルキルカルボニル基を挙げることができる。

また、Bの一連の基において、基内にアミド基を有する場合も好ましい基の一つである。
【0082】
さらに好ましい基としては、式−CH=CH−(CH)−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、Rは水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基又は式−S−で示される基をあげることができる。
【0083】
<T、Q、qについて>
【0084】
【化50】

<K、結合について>
Kの定義における「置換又は無置換のフェニル基」、「置換もしくは無置換の(フェニル基が置換されてもよい)アリールアルキル基」において、置換基は前記のJの定義において(a)グループの(1)〜(7)において定義されたものと同一のものである。好ましくは、無置換であるか、又は、ニトロ基、メチルなどの低級アルキル基、もしくはフッ素などのハロゲンで置換されてもよい。
【0085】
アリールアルキル基とは、フェニル環が上記の置換基で置換されるか、無置換のベンジル基、フェネチル基などを意味する。
【0086】
ピリジルメチル基とは具体的には、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、4−ピリジルメチル基などを挙げることができる。
【0087】
Kについては、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、置換されてもよいシクロアルキル基が最も好ましい。
【0088】
好ましいアリールアルキル基は、具体的には例えばベンジル基、フェネチル基などをいい、これらはフェニル基が炭素数1〜6の低級アルコキシ基、炭素数1〜6の低級アルキル基、水酸基などで置換されていてもよい。
【0089】
【化51】

二重結合である場合の例をあげれば、上記で述べたフェニル環が置換されてもよいインダノンから誘導される二価の基の場合、すなわちインダノリデニル基である場合をあげることができる。
<化合物群(A)について>
これらの定義を総合して特に好ましい化合物群をあげれば次の一般式で表される化合物群(A)をあげることができる。
【0090】
【化52】

〔式中、Jはフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;
(1)インダニル、
(2)インダノニル、
(3)インデニル、
(4)インデノニル、
(5)インダンジオニル、
(6)テトラロニル、
(7)ベンズスベロニル、
(8)インダノリル、
次式(9)
【0091】
【化53】

で表される環状アミン、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物。
【0092】
上記のJの定義中、最も好ましい基としては、フェニル基が置換されていてもよいインダノニル基、インダンジオニル基、インダノリデニル基をあげることができる。また、この場合、フェニル基は置換されていないか、同一又は相異なる水酸基、ハロゲン、低級アルコキシ基で置換されているか、フェニル環の隣り合う炭素間でアルキレンジオキシ基で置換されている場合が最も好ましい。低級アルコキシ基とは、炭素数1〜6の例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基などをいい、1〜4置換をとりうるが、2置換の場合が好ましい。最も好ましい場合はメトキシ基が2置換となっている場合である。
<化合物群(B)について>
式(A)に含まれる化合物の中でさらに好ましい化合物群としては、次の一般式(B)で表される化合物群をあげることができる。
【0093】
【化54】

〔式中、Jは前記と同様の意味を有する。
【0094】
【化55】

水素原子又はメチル基を意味する。)で示される基、式−CH=CH−(CH)−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、Rは水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基を意味する。Bは、好ましくは式−(CH)−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味する。Rは水素原子又はメチル基を意味する)で示される基であり、より好ましくはn=1、Rは水素原子の−CH−、又はn=3、Rは水素原子の−CH−CH−CH−である。また、Bは、好ましくは式−CH=CH−(CH)−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、Rは水素原子又はメチル基を意味する)で示される基であり、より好ましくはn=1、Rは水素原子の−CH=CH−CH−である。
【0095】
【化56】

<化合物群(C)について>
式(B)に含まれる化合物群の中でさらに好ましい化合物群としては、次の一般式(C)で表される化合物群をあげることができる。
【0096】
【化57】


【0097】
【化58】

<化合物群(D)について>
式(C)に含まれる化合物群の中でさらに好ましい化合物群としては、次の一般式(D)で表される化合物群をあげることができる。
【0098】
【化59】

(式中、Jはフェニル基が置換されてもよいインダノニルから誘導される一価又は二価の基(例えば、インダノニル、インダノリデニル基)、インデニル及びインダンジオニル基から選択された基を意味する。より好ましくは、Jが置換基として炭素数1〜6の低級アルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を有してもよいインダノニル基を意味する。
【0099】

は置換若しくは無置換のフェニル基、置換されてもよいアリールアルキル基、置換されてもよいシンナミル基、置換されてもよいシクロアルキル基を意味する。
【0100】
【化60】

さらに、一般式(I)で表される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容できる塩の特に好ましい化合物群(ChE阻害作用を有する化合物群)をあげれば次のとおりである。
【0101】
1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、
1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)メチルピペリジン、
1−ベンジル−4−((5−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、
1−ベンジル−4−((5,6−メチレンジオキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、
1−(m−ニトロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、
1−シクロヘキシルメチル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、
1−(m−フルオロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、
1−ベンジル−4−(3−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)プロピル)ピペリジン、
1−ベンジル−4−((5−イソプロポキシ−6−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、
1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)プロペニル)ピペリジン、及び

1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1,3−インダンジオン)−2−イル)プロペニルピペリジンであり、より好ましくは、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジンである。
【0102】

(3)製造方法
本発明において用いるChE阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物は、公知の方法で製造することができ、前記一般式(I)で表される環状アミン誘導体(例えば、塩酸ドネペジル)は、その代表的な例として、特開平1−79151号公報、日本国特許2578475号公報、日本国特許2733203号公報、日本国特許3078244号公報又は米国特許第4895841号公報などに開示されている方法により容易に製造することができる。また、塩酸ドネペジルは、細粒剤などの製剤としても入手できる。
【0103】
ガランタミン及びその誘導体は、米国特許第4663318号明細書、国際公開第88/08708号パンフレット、国際公開第97/03987号パンフレット、米国特許第6316439号明細書、米国特許第6323195号明細書、米国特許第6323196号明細書などに開示されている方法により容易に製造することができる。
【0104】
タクリン及びその誘導体は、米国特許第4631286号明細書、米国特許第4695573号明細書、米国特許第4754050号明細書、国際公開第88/02256号パンフレット、米国特許第4835275号明細書、米国特許第4839364号明細書、米国特許第4999430号明細書、国際公開第WO97/21681号パンフレットなどに開示されている方法により容易に製造することができる。
【0105】
フィゾスチグミン及びその誘導体は、米国特許第5077289号明細書、米国特許第5177101号明細書、米国特許5302721号明細書、特開平5−306286号公報、米国特許第7166824号明細書、欧州特許第298202号明細書、国際公開第98/27096号パンフレット、J. Pharm. Exp. Therap., 249 (1),194〜202, 1989などに開示されている方法により容易に製造することができる。
【0106】
リバスチグミン及びその誘導体は、欧州特許第193926号明細書、国際公開第98/26775号パンフレット、国際公開第98/27055号パンフレットなどに開示されている方法により容易に製造することができる。
【0107】
これらの化合物のうち商業上入手可能なものは、化学メーカー等から容易に入手することができる。
【0108】
本発明において、薬理学的に許容できる塩とは、例えば塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、燐酸塩などの無機酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。
【0109】
また、置換基の選択によっては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩、アンモニウム塩などを形成する場合もある。
【0110】
本発明において、過活動膀胱治療のための有効成分であるChE阻害作用を有する化合物、又はその薬理学的に許容できる塩(例えば、塩酸ドネペジル)は、無水物であってもよく、水和物などの溶媒和物を形成していてもよい。本発明において、溶媒和物とは薬理学的に許容できる溶媒和物が好ましい。薬理学的に許容できる溶媒和物は、水和物、非水和物のいずれであってもよいが、水和物が好ましい。溶媒は水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを使用することができる。また、例えば、上記ドネペジルには結晶多型が存在することもあるがこれに限定されず、いずれかの結晶形が単一であってもよいし、結晶形混合物であってもよい。
【0111】
なお、本発明において上記化合物は、置換基の種類によっては不斉炭素を有し、光学異性体が存在しうるが、これらは本発明の範囲に属することはいうまでもない。
【0112】
具体的な例を一つ述べれば、Jがインダノン骨格を有する場合、不斉炭素を有するので幾何異性体、光学異性体、ジアステレオマーなどが存在しうるが、何れも本発明の範囲に含まれる。
2.加齢に伴う過活動膀胱の治療薬
本発明において、加齢に伴う過活動膀胱の治療薬とは、ヒト又はヒト以外の生物、例えばウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、イヌ、ウサギなどの非ヒト哺乳動物由来膀胱の加齢に伴って低下した膀胱容量を増加する作用を有する薬剤を意味する。本発明の治療薬は、コリンエステラーゼ(ChE)(アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を含む)を阻害することで、脳内のCh神経系を賦活し、尿意切迫感、頻尿、尿失禁等の過活動膀胱を改善する。このことは、本発明の治療薬は、加齢に伴う機能低下として、Ch作動性神経活動の低下、好ましくは中枢性のコリン作動性神経活動の低下、あるいは、ACh合成酵素であるコリンアセチルトランスフェラーゼの中枢神経での活性低下に伴って生じる過活動膀胱と膀胱容量の低下の改善に有効であることを意味する。従って、本発明の治療薬は、加齢に伴ってCh作動性神経の活動が低下した患者、例えば老人(高齢者)、アルツハイマー病患者、パーキンソン病患者などの過活動膀胱の治療に有効に用いることができる。また、本発明の治療薬は、排尿収縮期圧には影響を与えず、残尿感を伴わないことが望ましい。また、本発明の治療薬は、加齢に伴う尿意切迫感、頻尿、尿失禁等の治療薬または改善薬と称することも可能である。
【0113】
前記ChE阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物は、膀胱容量を増加する作用を有する。また、本発明の治療薬の有効成分として有用である。
【0114】
従って、本発明は、前記のChE阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物の有効量を患者に投与することを特徴とする加齢に伴う過活動膀胱の治療方法も提供する。
【0115】
「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病及び/又は症状を完全に又は部分的に防止する点では予防的であり、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響の部分的又は完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、患者哺乳動物、特にヒトの疾病の任意の治療を意味し、上記一般的治療の意味も包含する。「治療」には、例えば以下の(a)〜(c)の事項を含む:
(a)疾病又は症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病又は症状が起こることを予防すること;
(b)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止又は遅延すること;
(c)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病又は症状の後退、消失、又は症状の進行の逆転を引き起こすこと。
【0116】
ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物は、ヒト又は非ヒト哺乳動物に、種々の形態、経口又は非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物は、単独で用いることも可能であるが、投与経路に応じて慣用される方法により医薬用担体を用いて適当な剤形に製剤化することが可能である。
【0117】
好ましい剤形としては、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤等による経口剤、吸入剤、坐剤、注射剤(点滴剤を含む)、軟膏剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤、パップ剤、ローション剤、リポソーム剤等による非経口剤が挙げられる。
【0118】
これらの製剤の製剤化に用いる担体には、例えば通常用いられる溶剤、賦形剤、コーティング剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、懸濁化剤、粘稠剤、無痛化剤、等張化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。使用可能な無毒性のこれらの成分としては、例えば大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えばミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えばセトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えばグルコース、ショ糖等の糖;例えば無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機塩;精製水等が挙げられる。
【0119】
賦形剤としては、例えば乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックコポリマー、メグルミン等が、崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が、ぞれぞれ用いられる。上記の成分は、その塩又はその溶媒和物であってもよい。
【0120】
例えば経口製剤は、ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物に賦形剤、さらに必要に応じて例えば結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等を加えた後、常法により例えば散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤等とする。
【0121】
錠剤・顆粒剤の場合には、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、ヒドロキシプロピルメチルフタレート、セルロースアセテートフタレート、白糖、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、リン酸カルシウムのようなコーティング剤を用い、周知の方法でコーティングしてもよい。
【0122】
シロップ剤製造に用いられる担体の具体例としては、白糖、ブドウ糖、果糖のような甘味剤、アラビアゴム、トラガント、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、結晶セルロース、ビーガムのような懸濁化剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80のような分散剤が挙げられる。シロップ剤製造にあたっては、必要に応じて矯味剤、芳香剤、保存剤、溶解補助剤、安定化剤等を添加することができる。また、用時溶解又は懸濁するドライシロップの形であってもよい。
【0123】
注射剤は、通常、例えば、ChE阻害作用を有する化合物の塩を注射用蒸留水に溶解して調製するが、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、安定化剤等を添加し、常法により製剤化することができる。
【0124】
注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合などにより行えばよい。また、注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。すなわち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解して使用することができる。
【0125】
外用剤の場合は、特に製法が限定されず、常法により製造することができる。使用する基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能であり、例えば動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、精製水等の原料が挙げられ、必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐防黴剤、着色料、香料等を添加することができる。吸入剤は、吸入による投与のために、ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物は、注入器、噴霧器もしくは加圧パック又はエアロゾルスプレーを送達する他の都合のよい様式から送達することができる。加圧パックは、適当な噴射剤を含むことができる。また、吸入による投与のために、ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物は、乾燥粉末組成物の形又は液体スプレーの形態で投与することもできる。貼布剤として経皮吸収により投与する場合には、塩を形成しない、いわゆるフリー体を選択することが好ましい。表皮への局所投与のために、ChE阻害作用を有する化合物は軟膏、クリームもしくはローションとして、又は経皮パッチのための活性成分として製剤化することができる。軟膏及びクリームは、例えば、水性又は油性基剤に適当な増粘及び/又はゲル化剤を加えて製剤化することができる。ローションは水性又は油性基剤を用いて製剤化することができ、また一般には1つ又は複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は着色剤を含むこともできる。ChE阻害作用を有する化合物はイオン浸透療法によって投与することもできる。
【0126】
さらに、必要に応じて血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分を配合することもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。
【0127】
本発明の方法に使用される過活動膀胱治療薬は、通常、活性成分としてChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物を0.5重量%以上、好ましくは10〜70重量%の割合で含有することができる。
【0128】
ChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物を前記治療に使用する場合は、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
【0129】
経口投与におけるChE阻害作用を有する化合物もしくはその塩又はそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグもしくはその塩又はそれらの溶媒和物の投与量は、例えば投与経路、疾患の種類、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、塩の種類、疾患の具体的な種類、薬物動態及び毒物学的特徴などの薬理学的知見、薬物送達系が用いられるかどうか、ならびに他の薬物の組合せの一部として投与されるかどうかを含む様々な因子に従って選択されるため変動するが、当業者であれば適宜設定することができる。例えば、成人(60 kg)1人あたり、約0.001〜1000mg/日、好ましくは約0.01〜500mg/日、より好ましくは約0.1〜300mg/日であり、1回又は数回に分けて投与することができる。小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。実際に用いられる投与法は、大幅に変動することもあり、本明細書に記載の好ましい投与法から逸脱してもよい。例えば、塩酸ドネペジルの場合は、成人(体重60kg)あたり、好ましくは約0.1〜300mg/日であり、より好ましくは約0.1〜100mg/日であり、さらに好ましくは約1.0〜50mg/日である。塩酸ドネペジルの好ましい態様において、商品名アリセプト錠(エーザイ株式会社)として市販されている5mg錠又は10mg錠の塩酸ドネペジル、商品名アリセプト細粒(エーザイ株式会社)の塩酸ドネペジルを投与することができる。例えば、錠剤は1日に1回から約4回で投与することができる。好ましい態様において、1日に1回、商品名アリセプト錠(エーザイ株式会社)の5mg錠又は10mg錠を1錠投与する。当業者であれば、塩酸ドネペジルが小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性があり、好ましい態様において、小児には塩酸ドネペジルを約0.5〜10mg/日、好ましくは約1.0〜3mg/日で投与することができる。また、タクリンの場合は、成人(体重60kg)あたり、約0.1〜300mg/日であり、好ましくは約40〜120mg/日で、リバスチグミンの場合は、成人(体重60kg)あたり、約0.1〜300mg/日であり、好ましくは約3〜12mg/日で、ガランタミンの場合は、成人(体重60kg)あたり、約0.1〜300mg/日であり、好ましくは約16〜32mg/日、フィゾスチグミンの場合は、成人(体重60kg)あたり、約0.1〜300mg/日であり、好ましくは約0.6〜24 mg/日で投与することが好ましい。それぞれ、小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。
【0130】
非経口投与において、貼布剤の場合、好ましい投与量としては、成人(60 kg)1人あたり、約5〜50mg/日であり、さらに好ましくは約10〜20mg/日である。また、注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水などの薬理学的に許容できる担体中に0.1μg/ml担体〜10mg/ml担体の濃度となるように溶解又は懸濁することにより製造することができる。このようにして製造された注射剤の投与量は、処置を必要とする患者に対し、成人(60 kg)1人あたり、約0.01〜50mg/日であり、好ましくは約0.01〜5.0mg/日であり、さらに好ましくは約0.1〜1.0mg/日であり、一日あたり1〜3回に分けて投与することができる。小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。
【0131】
3.加齢に伴う過活動膀胱を抑制する物質、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物のスクリーニング方法
また、本発明は、加齢に伴う過活動膀胱を抑制する物質、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物のスクリーニング方法を提供するものである。
【0132】
本発明のスクリーニング方法は、その候補となる物質を、非ヒト哺乳動物に投与して、前記候補物質の存在下及び非存在下における加齢に伴う過活動膀胱の表現型変化を検出又は測定することを含むものである。
【0133】
ここで「存在下」とは、候補物質が非ヒト動物に投与されている状態を意味し、「非存在下」とは、候補物質が非ヒト動物に投与されていない状態を意味する。従って、スクリーニングに際しては、候補物質を投与した非ヒト動物群の個体と候補物質を投与していない対照の非ヒト動物群の個体とを比較して、表現型を検出又は測定することができる。あるいは、同一個体において候補物質を投与する前の表現型と、候補物質を投与した後の表現型とを比較してもよい。
【0134】
本発明のスクリーニング方法において、候補物質はChE(AChEを含む)阻害作用を有する物質、例えば前記ChE阻害作用を有する化合物、抗ChE抗体、ChEに対するsiRNA、shRNAなどを含む。当該物質は、その塩又はそれらの溶媒和物であってもよい。ChE阻害作用を有する化合物は、前記の記載を参照することで製造、入手することができる。抗ChE抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれを使用することもでき、当業者であれば、例えばChEを感作抗原として当該抗体を作製することができる。ChE遺伝子に対するsiRNA、shRNAなどは、ChE遺伝子の発現を抑制することのできる核酸であればよく、当業者であればsiRNA 、shRNAなどの配列を適宜設計し、製造することができる(Elbashir, S.M., et. al., Genes Dev., 15, 188-200, 2001)。
非ヒト哺乳動物に候補化合物を投与する場合、経口又は非経口的に行うことができる。
【0135】
加齢に伴う過活動膀胱の表現型変化は、膀胱容量、膀胱収縮圧及び残尿量
の少なくとも一つを指標とすることができる。以下の(a)〜(c)のうち少なくとも1つに該当する場合には、当該物質は加齢に伴う過活動膀胱を抑制する作用を有すると判断することができる。
【0136】
(a) 膀胱容量を増大する
(b) 膀胱収縮圧を低下させない
(c) 残尿を増やさない

加齢に伴う過活動膀胱の表現型の変化を検出又は測定するためには膀胱内圧を測定する、好ましくは覚醒下の非ヒト哺乳動物の膀胱内圧を測定する。
本発明は、上記方法に使用するための加齢に伴う過活動膀胱を抑制する作用を有する物質、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物をスクリーニングするためのスクリーニングキットも提供する。本発明のスクリーニングキットには、加齢に伴う過活動膀胱の表現型変化を測定するために必要なものが含まれる。表現型変化の測定時に使用される試薬類は、全身麻酔剤(例えば、ハロタン)、生理食塩水が好適に用いられる。このほかに、本発明のスクリーニングキットには、キットの取扱説明書、チューブ、フラスコなどが含まれていてもよい。

以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本実施例により本発明は限定されるものではない。
【実施例1】
【0137】
塩酸ドネペジルの製造
(a)1−ベンジル−4−ピペリジンカルバルデヒドの合成
【0138】
【化61】

メトキシメチレントリフェニルホスホニウムクロライド26.0gを無水エーテル200mlに懸濁させ、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液を室温にて滴下した。室温にて30分間撹拌した後、0℃に冷却し、1−ベンジル−4−ピペリドン14.35gの無水エーテル30ml溶液を加えた。室温にて3時間撹拌した後、不溶物を濾別し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をエーテルに溶解し、1N塩酸にて抽出した。さらに水酸化ナトリウム水溶液でpH12とした後、塩化メチレンにて抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製し、油状物質5.50g(収率33%)を得た。
【0139】
次に、得られた油状物質をメタノール40mlに溶解し、1N塩酸40mlを加えた。反応溶液を3時間加熱還流した後、減圧濃縮し、残渣を水に溶解した。その後、溶解液を水酸化ナトリウム水溶液でpH12とし、塩化メチレンにて抽出した。飽和食塩水で抽出液を洗浄後、硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製し、1−ベンジル−4−ピペリジンカルバルデヒド2.77g(収率54%)を油状物質として得た。
【0140】
得られた化合物の構造をNMRで確認した。
・分子式;C1317NO・1H−NMR(CDCl3)δ;
1.40〜2.40(7H,m)、2.78(2H,dt)、3.45(2H,s)、7.20(5H,s)、9.51(1H,d)

(b)1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル〕メチルピペリジン・塩酸塩(下記式)の合成
【0141】
【化62】

この反応はアルゴン雰囲気下で行った。
【0142】
無水THF 10ml中にジイソプロピルアミン2.05mlを加え、さらに0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液9.12mlを加えた。0℃にて10分撹拌した後、−78℃まで冷却し、5,6−ジメトキシ−1−インダノン2.55gの無水THF30ml溶液とヘキサメチルホスホルアミド2.31mlとを加えた。−78℃にて15分撹拌した後、(a)で得た1−ベンジル−4−ピペリジンカルバルデヒド2.70gの無水THF 30ml溶液を加えた。室温まで徐々に昇温し、さらに室温にて2時間撹拌した後、1%塩化アンモニウム水溶液を加えて、有機層を分離した。続いて、水層を酢酸エチルにて抽出し、先に分離した有機層と合わせた後、さらに飽和食塩水にて洗浄した。溶液を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム(塩化メチレン:メタノール=500:1〜100:1)にて精製した。溶出液を減圧濃縮した後、残渣を塩化メチレンに溶解し、10%塩酸−酢酸エチル溶液を加え、さらに減圧濃縮して結晶を得た。これを塩化メチレン−IPEから再結晶化し、次の物性を有する1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル〕メチルピペリジン・塩酸塩3.40g(収率62%)を得た。
・融点(℃);237〜238(分解)
・元素分析値;C2427NO3・HClとして、C H N理論値(%):69.64 6.82 3.38、実測値(%):69.51 6.78 3.30

(c)1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル〕メチルピペリジン・塩酸塩
【0143】
【化63】

(b)で得た1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル〕メチルピペリジン0.40gをTHF 16mlに溶解し、10%パラジウム−炭素0.04gを加えた。室温常圧にて6時間水素添加した後、触媒を濾別し、濾液を減圧濃縮した。この残渣をシリカゲルカラム(塩化メチレン:メタノール=50:1)にて精製し、溶出液を減圧濃縮した。その後、残渣を塩化メチレンに溶解し、10%塩酸−酢酸エチル溶液を加え、さらに減圧濃縮して結晶を得た。これをエタノール−IPEから再結晶化し、次の物性を有する1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル〕メチルピペリジン・塩酸塩(塩酸ドネペジル)0.36g(収率82%)を得た。
・融点(℃);211〜212(分解)
・元素分析値;C2429NO3・HClとして C H N 理論値(%):69.30 7.27 3.37、実測値(%):69.33 7.15 3.22

【実施例2】
【0144】
加齢ラットを用いた実験
3週齢、10週齢、および10月齢の雌性Wistarラットに膀胱瘻を作製し、塩酸ドネペジル5×10-5mg/mlを静脈内投与した後、膀胱内圧測定による膀胱容量の測定を行った。
【0145】
結果を図1に示す。その結果、10週齢のラット、10月齢のラットでは塩酸ドネペジルの投与により膀胱容量の増加が認められた。特に10月齢のラットでは、中枢性コリンエステラーゼ阻害剤である塩酸ドネペジルによって60%の膀胱容量の増大が示された(図1)。
【実施例3】
【0146】
ヒトでは加齢による脳内アセチルコリン系の機能低下を示唆する報告がある。
【0147】
また加齢に伴うアセチルコリン系の低下は下部尿路機能障害が出現する可能性が示唆されている。
【0148】
そこで本実施例では、加齢ラットを用い、中枢性のコリンエステラーゼ阻害剤である塩酸ドネペジルを投与して膀胱機能の変化を検討した。
<材料と方法>
8週齢、12ヶ月齢、24ヶ月齢のS-D雌性ラットを用いた。
【0149】
1.5% ハロタン麻酔下で膀胱瘻を作成し、ボールマンケージに拘束固定後、覚醒下で膀胱内圧を測定した。その後、塩酸ドネペジルを5×10-5mg/kgの投与量で経静脈的に投与し膀胱内圧を測定した 。
【0150】
使用したラットは以下の通りである。
【0151】
8週齢5匹 平均体重172g
12ヶ月齢4匹 平均体重350g
24ヶ月齢4匹 平均体重430g
<結果>
図2は、12ヶ月齢500gのラットに塩酸ドネペジルを投与したときの膀胱内圧曲線の変化を示す例である。塩酸ドネペジル投与によって、膀胱容量は132%増加した。

図3は、塩酸ドネペジルによる膀胱容量の変化率を示す。この変化率は、8週齢、12ヶ月齢、24ヶ月齢のラットにおいてそれぞれ、-6.4%、40.3%、93%であり、24ヶ月齢ラットでは8週齢ラットと比べ、有意に膀胱容量は増加した(p=0.0139)。
【0152】
図4は、排尿収縮期圧の変化率
を示す。排尿収縮期圧では8週齢、12ヶ月齢及び24ヶ月齢ラットの3群間に有意な差は認められなかった。
以上をまとめると、8週齢、12ヶ月齢及び24ヶ月齢のラットに対し塩酸ドネペジルを投与した結果、高齢になるにつれその膀胱容量の変化率は増大した。24ヶ月齢のラットでは8週齢のラットに比べ変化率が有意に増大した。従って、加齢ラットにおいても脳内のアセチルコリン系の抑制性投射が減弱し、そのため脳選択的にACh系を賦活する塩酸ドネペジルを投与することで膀胱容量が増大したと考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】3週齢、10週齢及び10月齢のラット膀胱容量に対する塩酸ドネペジルの効果を示す図である。
【図2】塩酸ドネペジルを脳室内投与したときの膀胱内圧曲線の変化を示す図である。
【図3】膀胱容量の変化率を示す図である。
【図4】排尿収縮期圧の変化率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物を含有する、加齢に伴う過活動膀胱の治療薬。
【請求項2】
コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、下記一般式で表される環状アミン誘導体である、請求項1記載の治療薬。
【化1】

〔式中、
Jは(a)置換若しくは無置換の次に示す基;(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基又は(7)フリル基、
(b)フェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式
【化2】

(c)環状アミド化合物から誘導される一価の基、
(d)低級アルキル基、又は
(e)式 R1−CH=CH−(式中、R1は水素原子又は低級アルコキシカルボニル基を意味する)
で示される基を意味する。
【化3】

(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、
【化4】

水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、
【化5】

で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。
Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。
【化6】

Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。
qは1〜3の整数を意味する。
【化7】

【請求項3】
Jが置換若しくは無置換の(1)フェニル基、(2)ピリジル基、(3)ピラジル基、(4)キノリル基、(5)シクロヘキシル基、(6)キノキサリル基及び(7)フリル基からなる群から選択された一つの基である、請求項2記載の治療薬。
【請求項4】
Jが環状アミド化合物から誘導される一価の基である、請求項2記載の治療薬。
【請求項5】
コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、下記一般式で表される環状アミン誘導体である、請求項1記載の治療薬。
【化8】

〔式中、
1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式
【化9】

【化10】

(式中、R3は水素原子、低級アルキル基、アシル基、低級アルキルスルホニル基、置換されてもよいフェニル基又はベンジル基を意味する)で示される基、
【化11】

水素原子又はメチル基を意味する。}、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基、式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基、
【化12】

で示される基、式−NH−で示される基、式−O−で示される基、式−S−で示される基、ジアルキルアミノアルキルカルボニル基又は低級アルコキシカルボニル基を意味する。
Tは窒素原子又は炭素原子を意味する。
【化13】

Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。
qは1〜3の整数を意味する。
【化14】

【請求項6】
Bが式
【化15】

水素原子又はメチル基を意味する。〕で示される基、式−CH=CH−(CH)−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、Rは水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基である、請求項5記載の治療薬。
【請求項7】
コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、下記一般式で表される環状アミン誘導体である、請求項1記載の治療薬。
【化16】

〔式中、
1はフェニル基が置換されていてもよい次の群から選択された基から誘導される一価又は二価の基;(1)インダニル、(2)インダノニル、(3)インデニル、(4)インデノニル、(5)インダンジオニル、(6)テトラロニル、(7)ベンズスベロニル、(8)インダノリル、(9)式
【化17】

【化18】

水素原子又はメチル基を意味する。〕で示される基、式−CH=CH−(CH)−(式中、nは0又は1〜10の整数を意味し、Rは水素原子又はメチル基を意味する)で示される基、式=(CH−CH=CH)b−(式中、bは1〜3の整数を意味する)で示される基、式=CH−(CH2c−(式中、cは0又は1〜9の整数を意味する)で示される基又は式=(CH−CH)d=(式中、dは0又は1〜5の整数を意味する)で示される基を意味する。
Kは水素原子、置換若しくは無置換のフェニル基、フェニル基が置換されてもよいアリールアルキル基、フェニル基が置換されてもよいシンナミル基、低級アルキル基、ピリジルメチル基、シクロアルキルアルキル基、アダマンタンメチル基、フリルメチル基、置換されてもよいシクロアルキル基、低級アルコキシカルボニル基又はアシル基を意味する。〕
【請求項8】
Kが置換若しくは無置換のアリールアルキル基又はフェニル基である、請求項7記載の治療薬。
【請求項9】
1がインダノニルから誘導される一価の基及び二価の基、インデニル並びにインダンジオニルからなる群から選択される一つの基である、請求項7又は8記載の治療薬。
【請求項10】
1が置換基として炭素数1〜6の低級アルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を有してもよいインダノニル基である、請求項7又は8記載の治療薬。
【請求項11】

環状アミン誘導体が、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−メチレンジオキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−ニトロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−シクロヘキシルメチル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−フルオロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−(3−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)プロピル)ピペリジン、1−ベンジル−4−((5−イソプロポキシ−6−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)プロペニルピペリジン、及び1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1,3−インダンジオン)−2−イル)プロペニルピペリジンからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項2記載の治療薬。
【請求項12】
環状アミン誘導体が、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジンである、請求項2記載の治療薬。
【請求項13】
コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン・塩酸塩である、請求項1記載の治療薬。
【請求項14】
コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、ガランタミン、タクリン、フィゾスチグミン又はリバスチグミンである、請求項1記載の治療薬。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項記載のコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物の有効量を加齢に伴う過活動膀胱患者に投与することを特徴とする、加齢に伴う過活動膀胱の治療法。
【請求項16】
コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物を非ヒト哺乳動物に投与し、当該化合物、その薬理学的に許容できる塩又はそれらの溶媒和物の存在下及び非存在下における膀胱容量、膀胱収縮圧及び残尿量からなる群から選択される少なくとも一つの変化を検出又は測定することを特徴とする、加齢に伴う過活動膀胱を抑制する物質のスクリーニング方法。
【請求項17】
コリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物が、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する化合物、その薬理学的に許容できる塩、又はそれらの溶媒和物である、請求項16記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−77006(P2006−77006A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235436(P2005−235436)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月10日 社団法人日本泌尿器科学会発行の「日本泌尿器科学会雑誌 MARCH2005 VOL.96 NO.2総会特集号」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年4月12日 日本泌尿器科学会主催の「第92回 日本泌尿器科学会総会 サテライトシンポジウム7」において文書をもって発表
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】