説明

加齢性黄斑変性の診断および治療

加齢性黄斑変性の診断および治療のための方法、組成物ならびにキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府援助)
本発明は、認可第R01EY15771号の下、国立衛生研究所からの政府支援によってなされた。米国政府は本発明において権利を有する。
【0002】
(関連出願)
本願は、2006年7月26日に出願された米国特許仮出願第60/833,497号、および2007年3月22日に出願された第60/919,409号の恩恵を受ける。これらの参照される特許仮出願の教示は、その全体において本明細書中に参照によって援用される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
加齢性黄斑変性(AMD)は、米国において、および先進諸国に渡って、高齢者の視力消失および失明の主な原因である。加齢性黄斑変性は遺伝的および環境的要因に関連する複雑な病理を有する。AMDは大きく、乾燥型(非血管新生)または湿潤型(血管新生)のいずれかに分類される。乾燥型がより一般的であり、AMD患者のおよそ85〜90%を占めており、通常は失明には至らない。乾燥型AMDの主な臨床的症候は、網膜色素上皮(RPE)およびブルーフ膜の間の不明確な縁を有する軟性のドルーゼン(細胞外タンパク質沈着)の存在である。これらのドルーゼンの蓄積は、中央地図状萎縮(CGA)に関連し、視界の中央にかすみを生じる。約10%のAMD患者は、新規の血管が形成され、網膜の下部が壊れる(コロイド状血管新生[CNV])湿潤型形態である。この漏出により周辺網膜組織に永久的な障害が生じ、視野の中央がゆがんで破壊される。ある個体は湿潤型AMDをより積極的に発症し、一方でその他の個体はゆっくりとした進行性の乾燥型を有するのはなぜであるかはよく理解されていない。
【発明の概要】
【0004】
(発明の概要)
本発明は、加齢性黄斑変性を発症するリスクを有する個体を同定するかまたは同定を補助する、ならびに加齢性黄斑変性を診断するかまたは診断を補助する(加齢性黄斑変性に苦しむ個体を同定するかまたは同定を補助する)ことに有用な、加齢性黄斑変性の発症に相関するヒト遺伝子のバリエーションの同定に関する。方法および組成物も、加齢性黄斑変性の状態(例えば、進行または逆転)をモニターすることに有用である。本発明の方法および組成物は、様々な人種および民族性の個体を同定するかまたは同定を補助することに有用であり、特定の態様において、加齢性黄斑変性に苦しむか発症するリスクのある白人またはアジア人の個体を同定または同定を補助するために行われる。本発明はまた、加齢性黄斑変性に苦しむか発症するリスクを有する個体を同定するかまたは同定を補助する方法、加齢性黄斑変性を診断するかまたは診断を補助する(加齢性黄斑変性に苦しむ/加齢性黄斑変性を有する個体を同定する)方法;該方法に有用なポリヌクレオチド(例えば、プローブ、プライマー);プローブまたはプライマーを含む診断キット;加齢性黄斑変性のリスクを有するかまたは加齢性黄斑変性に苦しむ個体の治療方法ならびに加齢性黄斑変性のリスクを有するかまたは加齢性黄斑変性に苦しむ個体の治療に有用な組成物に関する。
【0005】
一態様において、本発明は個体由来の試料中のヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子の検出に特異的なポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは核酸分子である。特定の態様において、これらのポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域におけるバリエーション(例えば、HTRA1プロモーターのバリエーション)にハイブリダイズするDNAプローブであり得る。例えば、該プローブはrs11200638として同定される一塩基多形に対応するバリエーションを同定するものである。これらのプローブは、約8ヌクレオチド〜約500ヌクレオチドであり得、特定の態様において約10ヌクレオチド〜約250ヌクレオチドである。特定の態様において、ポリヌクレオチドプローブは、約20ヌクレオチド(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)である。他の態様において、ポリヌクレオチドプローブは、約50〜約100ヌクレオチド(例えば、45、50、55、60、65、75、85、または100ヌクレオチド)である。これらのプローブは、1つ以上の非天然ヌクレオチド、または放射性、蛍光もしくは化学的に標識されたヌクレオチドを含む修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0006】
別の態様において、ポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーション(例えばHTRA1プロモーターのバリエーション)に隣接する領域にハイブリダイズするプライマーである。特定の態様において、これらのプライマーはヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションのすぐ隣にハイブリダイズする。特定の態様において、プライマーは、rs11200638として同定される一塩基多形に対応する、本明細書に記載のバリエーションなどのHTRA1プロモーターのバリエーションに隣接するものにハイブリダイズする。また、本発明は、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関する、ヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域(例えば、HTRA1プロモーター)のバリエーションを検出するポリヌクレオチドプライマーのペアを提供し、第一のポリヌクレオチドプライマーはバリエーションの片側にハイブリダイズし、第二のポリヌクレオチドプライマーはバリエーションのもう片方にハイブリダイズする。ポリヌクレオチドプライマーのペアは、rs11200638として同定される一塩基多形に対応するバリエーションなどの、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域(例えば、プロモーター領域)のバリエーションを含むDNAの領域にハイブリダイズする。プライマーのペアは、バリエーションの近位にハイブリダイズしたプライマーの末端が約20〜約10,000ヌクレオチド離れているようにハイブリダイズし得る。例えば、ハイブリダイゼーションは、バリエーションの近位にハイブリダイズしたプライマーの末端がバリエーションから10、25、50、100、250、1000、5000、または10,000ヌクレオチドまでであるように生じ得る。いくつかの態様において、プライマーはDNAプライマーである。該プライマーは約8ヌクレオチド〜約500ヌクレオチドであり得る。具体的な態様において、プライマーは約10ヌクレオチド〜約250ヌクレオチドであり得る。特定の態様において、ポリヌクレオチドプライマーは、約20ヌクレオチド(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)である。他の態様において、ポリヌクレオチドプライマーは約50〜約100ヌクレオチド(例えば、45、50、55、60、65、75、85、または100ヌクレオチド)である。これらのプライマーは、1つ以上の非天然ヌクレオチド、または放射性、蛍光もしくは化学的に標識されたヌクレオチドを含む修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0007】
一態様において、本発明は、個体から得られた試料が、ノンコーディング領域(例えば、プロモーター)のバリエーションなどの加齢性黄斑変性に相関するバリアントHTRA1を含むかどうかを決定する工程を含む、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する個体を同定するかまたは同定を補助する方法に関する。具体的な態様において、プロモーターのバリエーションは、rs11200638として同定される一塩基多形に対応する。本発明の方法は、HTRA1バリアントが存在するかどうかを決定する工程に加えて、評価される個体において加齢性黄斑変性の発症に相関する1つ以上のさらなるバリアントが存在するかどうかを決定する工程を含み得る。HTRA1バリアント以外の検出され得るさらなるバリアントとしては、限定されないが、CFHタンパク質をコードする核酸(DNA、RNA)のバリエーション(例えば、CFHタンパク質の402位でヒスチジンをコードするバリエーション);タンパク質LOC387715の69位でアラニン以外のアミノ酸残基(例えば、該位置でのセリン)をコードするバリエーション;およびrs10490924として同定される一塩基多形に対応するバリエーションが挙げられる。これらのバリアントの一部または全部、ならびに加齢性黄斑変性の発症に相関するその他のものが、評価される個体由来の試料で決定および/または定量され得る。
【0008】
さらなる態様において、本発明は個体(ヒト)における加齢性黄斑変性の状態をモニタリングする方法に関する。該方法は、例えば、加齢性黄斑変性が個体において進行している(より進んだ段階または後期段階に達している)かどうかの評価に有用である。これは、例えば、個体が享受する治療の効果/有効性の評価に有用である。本発明の方法は、例えば、AMDの後退(部分的または完全な緩和)が生じたかどうかを示し得る際に、治療が効果的であることを示すことを補助し得る。該方法は、個体においてAMDが進行した(悪化した)かどうかを評価するためにも使用され得る。この態様は、例えば、本明細書に記載のノンコーディング領域のバリエーションを含むバリアントHTRA1遺伝子が個体から得られた試料中に存在する程度を評価することで実施され得る。バリアントHTRA1が治療後に(治療前よりも)低い程度で試料中に存在する場合、これはAMDの後退を示し、治療が効果的であったことを示す。
【0009】
一態様において、本発明は、個体から得られた試料中の、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するノンコーディング領域(例えば、プロモーター)のバリエーションを含むバリアントHTRA1遺伝子などのバリアントHTRA1遺伝子を検出する方法に関する。該方法は、(a)個体(ヒト)から得られた試料と、ストリンジェントな条件下で、野生型HTRA1遺伝子の対応する領域ではなくヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域中のバリエーションにハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを混合する工程;および(b)ハイブリダイゼーションが生じるかどうかを決定する工程であって、ハイブリダイゼーションの発生は、加齢性黄斑変性の発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子が試料中に存在することを示す工程を含む。具体的な態様において、ポリヌクレオチドプローブは、ストリンジェントな条件下で、野生型HTRA1プロモーターにではなくHTRA1プロモーターのバリエーション(rs11200638として同定される一塩基多形に対応するバリエーションなど)にハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションが生じる場合に、AMDに相関するバリエーションを含むHTRA1プロモーターが試料中に存在することが示される。
【0010】
別の態様において、本発明は、個体(ヒト)から得られた試料中の、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子を検出する方法に関し、該方法は、(a)個体(試料)から得られた試料と、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションにハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを混合して、混合物(combination)(試験混合物)を生成する工程;(b)工程(a)で生成された混合物をストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で維持する工程;および(c)試験混合物中で生じるハイブリダイゼーションと対照中のハイブリダイゼーションを比較する工程を含む。対照は、ポリヌクレオチドプローブ(対照プローブ)がヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションとは結合しない(例えば、HTRA1プロモーターのバリエーションとは結合しない)か、または野生型HTRA1遺伝子のみと結合する以外は、上記の(a)および(b)と同じである。対照に使用される試料は(a)で使用される試料と同じ種類である。試料と対照プローブを混合して生成される混合物を対照混合物という。試験混合物と対照混合物は同様に処理される(実質的に同じ条件に供される)。対照混合物ではなく、試験混合物におけるハイブリダイゼーションの発生は、加齢性黄斑変性と相関するバリアントHTRA1遺伝子が試料中に存在することを示す。例えば、AMDの発症に相関するHTRA1プロモーターのバリエーションにハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを含む試験混合物中のハイブリダイゼーションは、バリエーションがHTRA1プロモーター中に存在するバリアント遺伝子が試料中に存在することを示す。具体的な態様において、ハイブリダイゼーションの程度は工程(c)で測定される。具体的な態様において、HTRA1プロモーター中のバリエーションは、rs11200638として同定される一塩基多形に対応するバリエーションである。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、個体(試料)から得られた試料中の、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリアントHTRA1を検出する方法に関し、該方法は、(a)試料の第一の部分と、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションにハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを混合する工程;(b)試料の第二の部分と、ストリンジェントな条件下で野生型HTRA1遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを混合する工程;および(c)ハイブリダイゼーションが生じるかどうかを決定する工程であって、第二の部分ではなく第一の部分におけるハイブリダイゼーションの発生は、加齢性黄斑変性の発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子が試料中に存在することを示す工程を含む。具体的な態様において、バリアントHTRA1遺伝子は、rs11200638として同定される一塩基多形に対応するバリエーションなどのHTRA1プロモーターのバリエーションを含む。
【0012】
具体的な態様において、上述の方法に使用されるポリヌクレオチドプローブはDNAプローブである。具体的な態様において、ポリヌクレオチドプローブは約8ヌクレオチド〜約500ヌクレオチドである。
【0013】
特定の態様において、記載される方法は、さらに、試料と、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおける加齢黄斑変性の発症に相関するHTRA1バリアント(HTRA1プロモーターのバリエーションを含むバリアントなど)以外の遺伝子中のバリエーションにハイブリダイズする第二のプローブを混合する工程を含む。例えば、第二のプローブは、加齢性黄斑変性に相関するCFHタンパク質のバリエーションをコードするDNAのバリエーションを検出する。具体的な態様において、第二のプローブはCFHタンパク質の402位でヒスチジンをコードするバリエーションを検出する。別の態様において、第二のプローブは、69位でセリンをコードするバリエーションなどの、タンパク質LOC387715の69位でアラニン以外のアミノ酸残基をコードするバリエーションを検出する。さらに別の態様において、第二のプローブは、rs10490924として同定される一塩基多形に対応するバリエーションを検出する。これらのバリアントの一部または全部、ならびに加齢性黄斑変性の発症に相関する他のものは、評価される個体由来の試料中のHTRA1のバリアントと組み合わせて決定および/または定量され得る。
【0014】
別の態様において、本発明は、個体から得られた試料中の、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子(例えば、ヒトHTRA1プロモーターのバリエーションなどのノンコーディング領域中のバリエーション)を検出する方法に関し、該方法は、(a)試料とポリヌクレオチドプライマーのペアを混合する工程であって、第一のポリヌクレオチドプライマーがヒトにおけるヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点から-512位の片側にハイブリダイズし、第二のポリヌクレオチドプライマーがヒトにおけるHTRA1遺伝子の推定転写開始点から-512位の別の片側にハイブリダイズする工程;(b)試料中のDNAを増幅して、増幅されたDNAを生成する工程;(c)増幅されたDNAの配列を決定する工程;および(d)DNA中でHTRA1遺伝子のプロモーター領域の野生型配列のバリエーションを検出する工程であって、増幅されたDNA中のバリエーションの検出は、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子が試料中に存在することを示す工程を含む。DNAは、当業者に公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法を使用して増幅することができる。
【0015】
記載された方法の具体的な態様において、HTRA1バリアント以外の、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関する遺伝子のバリエーションのいずれかの側にハイブリダイズする第二の組のプライマーが使用される。例えば、第二のプローブは、加齢性黄斑変性に相関するCFHタンパク質のバリエーションをコードするDNA中のバリエーションを検出する。具体的な態様において、第二の組のプライマーによって検出されるバリエーションは、SNP rs1061170に対応するCFHタンパク質の402位でヒスチジンをコードするバリエーションである。別の態様において、第二の組のプライマーによって検出されるバリエーションは、タンパク質LOC387715の69位でセリンなど、69位でアラニン以外のアミノ酸残基をコードするバリエーションである。さらに別の態様において、第二の組のプライマーにより検出されるバリエーションは、rs10490924として同定される一塩基多形に対応するバリエーションである。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する個体を同定するかまたは同定を補助する方法に関し、該方法はヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子の存在について、個体から得られた試料をアッセイする工程を含み、試料中のバリアントHTRA1遺伝子の存在は、個体が加齢性黄斑変性を有するかまたは発症するリスクを有することを示す。具体的な態様において、かかる同定方法または同定を補助するかかる方法は、加齢性黄斑変性の発症に相関するHTRA1プロモーターのバリエーションなどのHTRA1のノンコーディング領域のバリエーションの存在について、個体から得られた試料をアッセイする工程を含む。かかるバリエーション(例えば、ヒトHTRA1遺伝子のプロモーターの推定転写開始点から-512位での一塩基多形[G→A]などのHTRA1、プロモーターのバリエーション)の存在は、個体が加齢性黄斑変性を有するかまたは発症するリスクを有することを示す。
【0017】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する個体を同定するかまたは同定を補助する方法に関し、(a)個体から得られた試料と、ストリンジェントな条件下で、野生型HTRA1遺伝子の対応する領域ではなくヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーション(例えば、HTRA1プロモーターのバリエーション)にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを混合する工程;および(b)ハイブリダイゼーションが生じるかどうかを決定する工程であって、ハイブリダイゼーションの発生は、個体が加齢性黄斑変性を発症するリスクを有することを示す工程を含む。具体的な態様において、HTRA1プロモーターのバリエーションは、rs11200638として同定される一塩基多形に対応する。
【0018】
上述の方法の具体的な態様において、ストリンジェントな条件下でHTRA1バリアント以外のヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリエーションにハイブリダイズする第二のプローブが使用される。例えば、第二のプローブはCFHタンパク質をコードするDNAのバリエーションを検出する。具体的な態様において、第二のプローブにより検出されるバリエーションは、SNP rs1061170に対応するCFHタンパク質の402位でヒスチジンをコードするバリエーションである。別の態様において、第二のプローブにより検出されるバリエーションは、タンパク質LOC387715の69位でセリンなど、69位でアラニン以外のアミノ酸残基をコードするバリエーションである。さらに別の態様において、第二のプローブにより検出されるバリエーションは、rs10490924として同定される一塩基多形に対応するバリエーションである。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する個体を同定するかまたは同定を補助する方法に関し、(a)個体からDNAを得る工程;(b)ヒトにおけるHTRA1遺伝子の推定転写開始点から-512の位置でヌクレオチドを含むDNAの領域の配列を決定する工程;および(c)HTRA1遺伝子のプロモーター領域の野生型配列のバリエーションがDNA中に存在するかどうかを決定する工程であって、DNA中にバリエーションが存在する場合に、個体が加齢性黄斑変性を有するかまたは発症するリスクを有する工程を含む。
【0020】
具体的な態様において、上述の方法は、さらに、HTRA1バリアント以外の、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関する第二のバリアントの配列を決定する工程を含む。例えば第二のバリアントは、ヒトにおける加齢性黄斑変性に相関するCFHタンパク質をコードするDNAのバリエーションであり得る。
【0021】
具体的な態様において、第二のバリエーションは、SNP rs1061170に対応するCFHタンパク質の402位でヒスチジンをコードするバリエーションである。別の態様において、第二のバリエーションは、タンパク質LOC387715の69位でセリンなど、69位でアラニン以外のアミノ酸残基をコードするバリエーションである。さらに別の態様において、第二のバリエーションは、rs10490924として同定される一塩基多形に対応するバリエーションである。
【0022】
本発明の診断方法は、SNP rs1120063として同定されるヒトHTRA1遺伝子のバリエーションを検出する工程に加えて、SNP rs1061170として同定されるヒトCFH遺伝子のバリエーションまたはSNP rs10490924として同定されるヒト遺伝子の座LOC387715のバリエーションなどのAMDを発症するリスクに相関するさらなるバリエーションを検出する工程を含み得る。かかる診断試験は、該試験から得られた情報、および患者の習慣に関する知識(例えば、喫煙および肥満など潜在的に付加的な危険因子)に基づくAMDの重症度(進行の程度)の予測を可能にし得る。
【0023】
別の態様において、本発明は、個体由来の試料中のバリアントHTRA1遺伝子(例えば、HTRA1プロモーターのバリエーションなどのノンコーディング領域中のバリエーションを有するバリアント遺伝子)を検出するための診断キットに関する。該診断キットは、(a)ストリンジェントな条件下で、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーション(HTRA1プロモーターのバリエーションなど)にハイブリダイズする少なくとも1つのポリヌクレオチドプローブが設置された、少なくとも1つの容器;および(b)試料中のバリアントHTRA1遺伝子の検出における診断キットの使用のための標識および/または指示書を含む。
【0024】
具体的な態様において、上述のキットは、さらに、ストリンジェントな条件下で、HTRA1バリアント以外の、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリエーションにハイブリダイズする、少なくとも1つのさらなるプローブ(第二プローブ)を含む。例えば、該バリアントはCFHタンパク質をコードするDNAのバリエーションであり得る。具体的な態様において、第二のプローブにより検出されるバリエーションは、SNP rs1061170に対応するCFHタンパク質の402位でヒスチジンをコードするバリエーションである。別の態様において、第二のプローブにより検出されるバリエーションは、タンパク質LOC387715の69位でセリンなど、69位でアラニン以外のアミノ酸残基をコードするバリエーションである。さらに別の態様において、第二のプローブにより検出されるバリエーションは、rs10490924として同定される一塩基多形に対応するバリエーションである。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、(a)ストリンジェントな条件下で、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの一面に隣接する領域(例えば、HTRA1プロモーターのバリエーションを有するバリアント遺伝子)にハイブリダイズする少なくとも1つのポリヌクレオチドプライマーが設置された少なくとも1つの容器;および(b)試料中のHTRA1の検出における診断キットの使用のための標識および/または指示書を含む、個体由来の試料中のバリアントHTRA1遺伝子(例えば、HTRA1プロモーターのバリエーションなどのノンコーディング領域にバリエーションを有するバリアント遺伝子)を検出するための診断キットである。
【0026】
具体的な態様において、上述のキットはさらに、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの他の面にハイブリダイズする、少なくとも第二のポリヌクレオチドプライマーを含む。
【0027】
別の具体的な態様において、上述のキットはさらに、HTRA1バリアント以外のヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するバリエーションのいずれかの面にハイブリダイズする第二の組のプライマーを含む。
【0028】
具体的な態様において、第二の組のプライマーにより検出されるバリエーションは、SNP rs1061170に対応する、CFHタンパク質の402位でヒスチジンをコードするバリエーションである。別の態様において、第二の組のプライマーにより検出されるバリエーションは、LOC387715タンパク質の69位でセリンなど、69位でアラニン以外のアミノ酸残基をコードするバリエーションである。さらに別の態様において、第二の組のプライマーにより検出されるバリエーションは、rs10490924として同定される一塩基多形に対応するバリエーションである。
【0029】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する個体被検体を治療するための組成物に関し、該組成物は(a)有効量のHTRA1活性のインヒビターおよび(b)薬学的に許容され得る担体を含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する被検体を治療するための組成物に関し、該組成物は、(a)HTRA1遺伝子またはmRNAにハイブリダイズするアンチセンス配列を含む核酸分子;および(b)薬学的に許容され得る担体を含む。具体的な態様において、アンチセンス配列のHTRA1遺伝子へのハイブリダイゼーションにより、HTRA1遺伝子からRNAが転写される程度が減少する。アンチセンス配列のHTRA1 mRNAへのハイブリダイゼーションにより、HTRA1 mRNAから翻訳されるタンパク質の量が減少するか、および/またはHTRA1 mRNAのスプライシングが変更される。具体的な態様において、本発明は、インビボ安定性、細胞膜を通過する輸送、またはHTRA1遺伝子またはmRNAへのハイブリダイゼーションを増強する、1つ以上の修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む核酸分子を提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する被検体を治療するための組成物を提供し、該組成物は、(a)HTRA1遺伝子またはmRNAにハイブリダイズするsiRNAもしくはmiRNA配列を含む核酸分子またはその前駆体、および(b)薬学的に許容され得る担体を含む。
【0032】
siRNAまたはmiRNA配列のHTRA1遺伝子へのハイブリダイゼーションにより、HTRA1遺伝子からRNAが転写される程度が減少される。siRNAまたはmiRNA配列のHTRA1 mRNAへのハイブリダイゼーションにより、HTRA1 mRNAから翻訳されるタンパク質の量が減少するか、および/またはHTRA1 mRNAのスプライシングが変更される。
【0033】
具体的な態様において、本発明は、インビボ安定性、細胞膜を通過する輸送、またはHTRA1遺伝子もしくはmRNAへのハイブリダイゼーションを増強する、1つ以上の修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む核酸分子に関する。
【0034】
別の態様において、本発明は加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する被検体を治療するための組成物に関し、該組成物は、(a)HTRA1ポリペプチドに結合するアプタマー;および(b)薬学的に許容され得る担体を含む。アプタマーのHTRA1ポリペプチドへの結合によりHTRA1ポリペプチドの活性が減少される。
【0035】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する被検体を治療するための組成物に関し、該組成物は(a)HTRA1ポリペプチドに結合する小分子;および(b)薬学的に許容され得る担体を含む。小分子のHTRA1ポリペプチドへの結合により、HTRA1ポリペプチドの活性が減少される。
【0036】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する被検体を治療するための組成物に関し、該組成物は(a)HTRA1ポリペプチドに結合する抗体;および(b)薬学的に許容され得る担体を含む。抗体のHTRA1ポリペプチドへの結合により、HTRA1ポリペプチドの活性が減少される。
【0037】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する被検体を治療するための組成物に関し、該組成物は(a)野生型HTRA1ポリペプチドと競合するHTRA1ポリペプチドのドミナントネガティブバリアント;および(b)薬学的に許容され得る担体を含む。HTRA1ポリペプチドへの抗体の結合により、HTRA1ポリペプチドの活性が減少される。
【0038】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する被検体を治療するための組成物に関し、該組成物は少なくとも、以下の(a)HTRA1遺伝子のプロモーターに結合する転写因子のレベルを改変する薬剤;および(b)薬学的に許容され得る担体を含む。
【0039】
具体的な態様において、該薬剤は、(a)過剰発現ベクター、アンチセンスRNA、siRNA、miRNA、アプタマー、小分子、または転写因子に対する抗体であるか、または(b)転写因子のドミナントネガティブバリアントである。例えば、過剰発現ベクター、アンチセンスRNA、siRNA、miRNA、アプタマー、小分子、または抗体は転写因子SRFもしくはAP2αに関し、ドミナントネガティブバリアントは、例えばSRFもしくはAP2αのドミナントネガティブバリアントである。
【0040】
別の態様において、本発明は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する被検体を治療するための組成物に関し、該組成物は(a)HTRA1ポリペプチドの分泌を阻害する薬剤;および(b)薬学的に許容され得る単体を含む。
【0041】
具体的な態様において、HTRA1の分泌を阻害する薬剤は、分泌に関して野生型HTRA1と競合するHTRA1ポリペプチドのドミナントネガティブバリアントである。別の具体的な態様において、該薬剤はアプタマー、小分子、またはHTRA1ポリペプチドに対する抗体である。
【0042】
別の態様において、本発明は加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有する個体(ヒト)の治療方法であり、本明細書に記載の任意の組成物の有効量が個体に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、染色体10q26上の4配偶子領域の遺伝子、およびマイクロアレイにより遺伝子型が決定され(+)、配列決定により同定された(|)SNPの位置を示す模式図である。SNP rs10490924は“8”と記され、rs11200638はアスタリスクで記される。
【図2】図2A〜Bは、HeLaS3細胞から調製されたChIP DNAの定量的PCR(qPCR)により得られた結果を示すグラフである:図2A、AP-2α(実線)図2B、SRF(実線)、および(図2Aおよび2B)正常ウサギ免疫グロブリンG(破線)は分析された免疫沈降を示す。正対照および負対照のプロモーターも試験した。log(ΔRn)(y軸)はPCRサイクル数(x軸)に対してプロットされる。参照PCR反応)に対して計算された転写のΔΔCt値倍数増加が括弧内に示される。
【図3】図3は、HTRA1プロモーター配列のコンピューター解析を示す。HTRA1プロモーターのヒトおよびマウスのオーソロガス配列;保存されたヌクレオチドを*でマークする。
【図4】図4Aは、442 AMD症例および309対照を使用した10qAMD領域での15のSNPについての相関解析のlog P値(y軸)を示すプロットである(表2も参照)。rs10490924(◆)およびrs11200638(△)SNPに関して、相関は大量の試料サイズに由来した(581AMD症例)。 図4Bは、AA遺伝子型の3人のAMD患者およびGG遺伝子型の3人の正常個体由来の血液リンパ球中のHTRA1 RNAレベルのリアルタイムRT-PCR半定量解析により得られた結果を示す棒グラフである。発現レベルの統計学的有意差は、独立試料t検定(SPSSバージョン13.0)を使用して調べた。AA:GG(P=0.02)。エラーバーは平均の95.0%信頼区間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(発明の詳細な説明)
HTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションがAMDに関連するという発見は、加齢性黄斑変性に苦しむかまたは発症するリスクを有するような個体の診断および治療に有用である。個体におけるHTRA1遺伝子の遺伝子組成の決定は、初期段階または個体がAMDの症候を見せる前であったとしてもAMDの診断または治療の基礎として有用である。さらに、HTRA1の遺伝子型を決定するための診断試験により、AMDについての環境リスク(例えば、喫煙、肥満)を最小限にするように個体がその行動を改変することが可能になり得る。本発明は、AMDの発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子の同定に関し、AMDを発症するリスクを有する個体の同定もしくは同定の補助およびAMDの診断または診断の補助に有用である。本発明はまた、AMDを発症するリスクを有する個体を同定するかまたは同定を補助する方法、AMDの診断または診断の補助方法、AMDの状態(例えば、進行、逆転)のモニタリング方法、該方法に有用なポリヌクレオチド(例えば、プローブ、プライマー)、プローブまたはプライマーを含む診断キット、AMDのリスクを有するかまたは苦しむ個体の治療方法、ならびにAMDのリスクを有するかまたは苦しむ個体の治療に有用な組成物に関する。
【0045】
発明者らは、ヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域中の共通のバリエーションがAMDに強く関連することを示している。本発明は、ヒトにおける加齢性黄斑変性の発症に相関するかかるバリエーションの検出のための方法および組成物に関する。
【0046】
HtrA(高温要求性物質)は、最初に、熱ショックタンパク質として大腸菌で同定され、その後微生物、植物および動物において偏在的に存在することが見出された。ヒトHTRA1は、セリンプロテアーゼのHtrAファミリーの一員である。その構造的特徴としては、高度に保存されたトリプシン様セリンプロテアーゼドメインおよびインシュリン様成長因子結合タンパク質ドメインおよびKaza1型セリンプロテアーゼインヒビターモチーフが挙げられる。
【0047】
ヒトHTRA1遺伝子発現のダウンレギュレーションが、特定の癌(卵巣癌、メラノーマ)で観察され、これらの腫瘍の悪性進行および転移に密接に関連している。一方で腫瘍でのHTRA1の過剰発現によっては、腫瘍細胞の増殖および移動が抑制され、HTRA1は特定の癌において腫瘍抑制特性を有することが示唆されている。腫瘍組織とは対照的に、HTRA1発現は、デュシェーヌ型筋ジストロフィーの骨格筋および変形性関節症の関節の軟骨においてアップレギュレートされ、この疾患の発症に寄与し得る。
【0048】
本明細書に記載の、AMDに強く関連するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションは、rs11200638として同定される一塩基多形に対応するバリエーションである。該バリエーションはヒトHTRA1遺伝子のプロモーター領域の一塩基多形(G→A)である。ヒト染色体10上のヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点に対して-512位でのノンコーディング制御領域に位置する一塩基多形は、加齢性黄斑変性(AMD)を発症するリスクに関連する。この一塩基多形(SNP)はrs11200638として同定される。本明細書に開示されるこの関連に基づき、個体由来の種々の試料において常套的かつ再現可能に実施することが可能な診断試験を用いて、個体がAMDを発症するリスクを有するかどうかを決定することが可能である。診断試験を使用して試料中にHTRA1バリアントが検出される場合、この発見を使用して、個体がAMDを発症するリスクを有するかどうか決定することができ、その他のデータに基づいてAMD診断を補助またはAMD診断を確認することができる。
【0049】
プロモーター領域は、タンパク質配列に翻訳されないノンコーディングセクションである遺伝子の制御領域である。特定の細胞内転写因子は、遺伝子のプロモーター領域に結合して、その転写活性に影響を及ぼし得る。rs11200638として同定された一塩基多形は推定転写開始点に対して-512位に位置する。
【0050】
特定の状況の下で、例えばプロモーター配列中にある転写因子結合部位の対応する転写因子についての親和性を変えることで、プロモーター領域中の多形は転写因子がプロモーターに結合する能力を変更し得る。
【0051】
プロモーターへの転写因子の結合の変更は、プロモーターの活性、例えばプロモーターの転写活性に影響を及ぼし得、遺伝子の転写速度に影響し得る。高速の転写は、より多くの対応するタンパク質が作製されることをもたらし得る。低速の転写は、より少ない量の対応するタンパク質が作製されることをもたらし得る。タンパク質レベルの変化は多くの生物学的プロセスに影響し得、潜在的に弱体化した効果を有し得る。
【0052】
用語「G→A」は、本明細書で使用する場合、ゲノム中の特定の位置で野生型GからバリアントAへの一ヌクレオチド塩基の変化を意味する。かかる変化は、当該技術分野において「一塩基多形」または(1つ以上の)SNPとして知られている。かかる変化は一方または両方の対立遺伝子に影響し得、これはヘテロまたはホモの様式で生じ得る。「G→A」の変化は、本明細書で使用する場合、本明細書において単純化のために単にG→Aとだけ言及したとしても、可能性のある両方の遺伝子型;ヘテロG→A変化およびホモGG→AA変化を含むことが理解されよう。
【0053】
HTRA1遺伝子はcDNAまたはゲノム形態の遺伝子であり得、プロモーター配列など上流および下流の制御配列を含み得る。HTRA1ポリペプチドは、完全長または断片の所望の活性または機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達等)が保持されているならば、完全長コーディング配列またはコーディング配列の任意の一部によってコードされ得る。HTRA1遺伝子は、遺伝子が完全長mRNAの長さに対応するように、両末端が約1〜2kb離れて、5’および3’の両末端に、コーディング領域に隣接して位置する配列をさらに含み得る。コーディング領域の5’に位置する配列でmRNA上に存在する配列を5'非翻訳配列という。コーディング領域の3’または下流に位置する配列でmRNA上に存在する配列を3'非翻訳配列という。
【0054】
本発明の全体的な理解を提供するために、ここで、AMDを発症するリスクを有する個体を同定するかまたは同定を補助するため、ならびにAMDを診断するかまたは診断を補助するための組成物および方法を含む、特定の例示的な態様が記載される。しかしながら、本明細書に記載される組成物および方法は扱われている応用について適切なように適合および改変され得ること、ならびに本明細書に記載される組成物および方法は他の適切な応用に使用され得ること、ならびにこのような他の追加および変更は本発明の範囲から逸脱しないことが当業者には理解されよう。
【0055】
HTRA1ポリヌクレオチドプローブおよびプライマー
特定の態様において、本発明は、AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域中のバリエーションを特異的に検出する単離および/または組み換えポリヌクレオチドに関する。HTRA1プロモーター中のバリエーションなどは、rs11200638として同定される一塩基多形である。本発明のポリヌクレオチドプローブは、特異的な様式でHTRA1遺伝子中のかかるバリエーション(目的のバリエーションともいう)にハイブリダイズし、典型的に、該バリエーションの配列に完全または部分的に相補的である配列を有する。ポリヌクレオチドプローブはまた、目的のバリエーションの片側または両側の配列にハイブリダイズし得、目的のバリエーションの片側または両側のフランキング配列にハイブリダイズし得る。本発明のポリヌクレオチドプローブは、プローブの中心にバリエーションが配置されるように、またはプローブの末端位置などの別の位置にバリエーションが配置されるように標的DNAのセグメントにハイブリダイズし得る。
【0056】
一態様において、本発明のポリヌクレオチドプローブは、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおけるAMDの発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子またはその一部もしくは対立遺伝子バリアントを含む核酸分子にハイブリダイズする。例えば、ポリヌクレオチドプローブは、ヒトにおけるAMDの発症に相関するHTRA1プロモーターのバリエーションにハイブリダイズする 具体的な例において、バリエーションは、ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点に対する-512位がG以外であるヌクレオチド塩基である。本発明のポリヌクレオチドプローブは、ストリンジェントな条件下で、HTRA1遺伝子の核酸分子(例えば、DNA)、またはその対立遺伝子バリアントにハイブリダイズし、該核酸分子は、SNP rs11200638として同定されるバリエーションなどの、ヒトにおけるAMDの発症に相関するバリエーションを含む。
【0057】
特定の態様において、本発明のポリヌクレオチドプローブは対立遺伝子特異的プローブである。多形の解析のための対立遺伝子特異的プローブの設計および使用は、例えば、Saiki et al., Nature 324:163-166 (1986);Dattagupta, 欧州特許第235726号;およびSaiki WO 89/11548に記載される。対立遺伝子特異的プローブは、1個体由来の標的DNAのセグメントにハイブリダイズし、2つの個体由来のそれぞれのセグメントとは異なる多形形態またはバリエーションが存在するために、別の個体由来の対応するセグメントにはハイブリダイズしないように設計され得る。対立遺伝子間のハイブリダイゼーション強度に有意な差が存在するように、ハイブリダイゼーション条件は充分にストリンジェントであるべきである。いくつかの態様において、プローブは対立遺伝子の一方にのみハイブリダイズする。
【0058】
個体がAMDに罹患し易くなるHTRA1遺伝子の種々のバリエーションは、本明細書に記載の方法およびポリヌクレオチドによって検出することができる。具体的な態様において、AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のバリエーションは、HTRA1遺伝子のノンコーディング領域中のバリエーションである。より具体的に、該バリエーションは、ヒトHTRA1遺伝子のプロモーターの推定転写開始点から-512位の一塩基多形(G→A)である。この多形はrs11200638として同定される。上述の-512位以外での多形は、本明細書に記載の方法およびポリヌクレオチドを使用してヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域中、特にプロモーター配列中で検出することができる。
【0059】
別の態様において、コーディング領域、エクソン、エクソン-イントロン境界、シグナルペプチド、5’非翻訳領域、プロモーター領域、エンハンサー配列、3’非翻訳領域またはイントロンのAMDに関連する任意の塩基多形が検出され得る。これらの多形としては、限定されないが、HTRA1遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を変更し、選択的スプライシング産物を生成し、切断産物を生成し、不完全ストップコドンを導入し、潜在的なエクソンを導入し、程度または発現をより大きくまたはより小さく変更し、HTRA1発現の組織特異性を変更し、HTRA1にコードされるタンパク質の三次構造に変化を導入し、HTRA1により発現されたタンパク質の結合親和性もしくは特異性の変化を導入するかあるいはHTRA1にコードされるタンパク質の機能を変更する変化が挙げられる。
【0060】
目的のポリヌクレオチドはさらに、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのバリアントであるポリヌクレオチドを含むことが理解されるが、ただし該バリアントポリヌクレオチドは、AMDの発症に相関するHTRA1プロモーター中のバリエーション(例えば、推定転写開始点またはヒトHTRA1遺伝子から-512位の変化をコードするバリエーション)などのHTRA1遺伝子のノンコーディング領域中のバリエーションを特異的に検出する能力を維持している。バリアントポリヌクレオチドは、例えば1つ以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失により異なる配列を含み得る。
【0061】
特定の態様において、単離されたポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおけるAMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションにハイブリダイズするプローブである。一態様において、該プローブは、ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点から-512位の一塩基多形(G→A)であり、rs11200638として同定されるバリエーションにハイブリダイズする。本明細書で使用する場合、用語「ハイブリダイゼーション」は相補的な核酸の対結合について使用される。用語「特異的に検出」は、ポリヌクレオチドについて使用する場合、当該分野で一般的に理解されるように、ポリヌクレオチドが目的の核酸と目的でないその他の核酸の間で選択的であることを意図する。かかるポリヌクレオチドは、特定の種類の生物試料中で目的の核酸配列の存在を検出するために最小限で有用であるように、目的の核酸の配列と目的でない核酸の配列を区別し得る。用語「プローブ」は目的の核酸にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドのことをいう。該ポリヌクレオチドは精製制限消化で天然に存在してもよく、または合成、組み換えもしくは核酸増幅(例えば、PCR増幅)によりされてもよい。
【0062】
核酸分子を用いたハイブリダイゼーション実験をどのように実施するかは当該技術分野で周知である。当業者は、本発明に必要なハイブリダイゼーション条件に精通しており、DNAハイブリダイゼーションが促進される適切でストリンジェントな条件が変更され得ることを容易に理解しよう。かかるハイブリダイゼーション条件は、標準的な教本、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (2001);およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al編, John Wiley & Sons (1992)に参照される。バリアントHTRA1遺伝子、またはバリアントHTRA1遺伝子の一領域にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドが本発明の方法において特に有用である。ストリンジェントな条件下では、バリアントHTRA1遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドは野生型HTRA1遺伝子にはハイブリダイズしない。
【0063】
当業者が容易に理解し得るように、核酸ハイブリダイゼーションは、塩濃度、温度、有機溶媒、塩基組成、相補鎖の長さ、およびハイブリダイズする核酸間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数などの条件により影響を受ける。ストリンジェントな温度条件としては、一般的に30℃よりも高い温度が挙げられるか、または37℃もしくは45℃より高い温度であり得る。ストリンジェンシーは温度に伴って上昇する。例えば、45℃よりも高い温度は高ストリンジェント条件である。ストリンジェントな塩条件は、通常1000mM未満であるか、または500mMもしくは200mM未満であり得る。例えば、6.0x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で、約45℃のハイブリダイゼーション、続いて2.0x SSC、50℃の洗浄を実施することができる。例えば、洗浄工程における塩濃度は、約2.0x SSCで50℃の低ストリンジェンシー〜約0.2x SSCで50℃の高ストリンジェンシーから選択することができる。また、洗浄工程の温度は、室温、約22℃の低ストリンジェンシー条件から約65℃の高ストリンジェンシー条件まで上げることができる。温度および塩の両方を変えてもよいか、または温度もしくは塩濃度を一定にして他方の変数を変えてもよい。バリアントHTRA1遺伝子、またはバリアントHTRA1遺伝子の一領域に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドが本発明の方法において特に有用である。しかしながら、適切なストリンジェンシー条件は、本発明において、DNAハイブリダイゼーションを促進するために変更し得ることが理解されよう。特定の態様において、本発明のポリヌクレオチドは、バリアントHTRA1遺伝子またはバリアントHTRA1遺伝子の一領域に、高ストリンジェント条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントな条件下では、HTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、野生型HTRA1遺伝子にはハイブリダイズしない。一態様において、本発明は、6.0x SSCで室温の低ストリンジェント条件下でハイブリダイズし、その後2.0x SSC、室温で洗浄される核酸を提供する。しかしながら、パラメーターの組合せは、任意の単一のパラメーターの基準よりもかなり重要である。例えば、Wetmur and Davidson, 1968参照。プローブ配列はまた、特定の条件下で二重鎖DNAに特異的にハイブリダイズし、三重鎖またはより高次のDNA複合体を形成し得る。かかるプローブの調製および適切なハイブリダイゼーション条件は当該技術分野に周知である。本明細書に開示される生合成構築物をコードするDNAを得るための方法は、従来の自動化オリゴヌクレオチド合成機で生成された合成オリゴヌクレオチドの集合による。
【0064】
本発明のポリヌクレオチドプローブまたはプライマーは、酵素(例えば、ELISAおよび酵素系組織化学アッセイ)、蛍光、放射性、化学的、および発光系を含むが限定されない種々の検出系で検出可能なように標識され得る。本発明のポリヌクレオチドプローブまたはプライマーは、さらに、標識(例えば、蛍光標識)の近位に配置される場合、クエンチャー部分を含み得、該クエンチャー部分は標識のシグナルをほとんどまたは全く生じない。標識の検出は、直接的または間接的(例えば、ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジン結合を介して)な手段により実行され得る。本発明は何らかの特定の検出系または標識に限定されることを意図しない。
【0065】
別の態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおけるAMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションに隣接、その上流もしくは下流にハイブリダイズするプライマーである。単離されたポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおけるAMDの発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子の全部または一部を含む核酸分子にハイブリダイズし得る。あるいは、単離されたポリヌクレオチドプライマーは、ストリンジェントな条件下で、ヒトにおけるAMDの発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子の少なくとも50個の連続したヌクレオチドを含む核酸分子にハイブリダイズし得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドプライマーは、rs11200638として同定される、ヒトHTRA1遺伝子のプロモーターの推定転写開始点から-512位で変化をコードするヒトHTRA1遺伝子の隣接、その上流もしくは下流の領域にハイブリダイズし得る。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「プライマー」は、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が生じる条件下におかれた場合(例えば、ヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどの誘導剤、適切な温度、pH、および電解質濃度の存在下で)、核酸合成の開始点として機能し得るポリヌクレオチドのことをいう。あるいは、プライマーは、二本のつながれていない核酸のライゲーションが生じる条件下におかれた場合(例えば近位核酸、DNAリガーゼなどの誘導剤および適切な温度、pH、および電解質濃度の存在下で)に近位核酸と連結し得る。本発明のポリヌクレオチドプライマーは、精製制限消化により天然に存在し得るか、または合成により生成され得る。好ましくは、プライマーは最大増幅効率に関して一本鎖であるが、その代わりに二本鎖でもあり得る。二本鎖である場合、プライマーは使用される前にまず処理されて、二本鎖が分離される。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源および方法の使用などの多くの要因に依存する。特定の態様において、本発明のポリヌクレオチドプライマーは少なくとも10ヌクレオチド長であり、ヒトにおけるAMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの一方またはもう一方にハイブリダイズする。目的のポリヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオチド置換、付加または欠失などの改変を含み得るが、ただしそれらは同じ程度の特異性でその標的のバリアントHTRA1遺伝子にハイブリダイズする。
【0067】
一態様において、本発明は、SNP rs11200638として同定されるバリエーションなどの、ヒトにおけるAMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションを特異的に検出する一組のプライマーを提供する。このような場合において、第一のプライマーはバリエーションの上流にハイブリダイズし、第二のプライマーはバリエーションの下流にハイブリダイズする。プライマーの一つはAMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションを含むDNAの領域の一方の鎖にハイブリダイズし、第二のプライマーはヒトにおけるAMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションを含むDNAの領域の相補鎖にハイブリダイズすることが理解されよう。本明細書で使用する場合、用語「DNAの領域」は染色体以下の長さのDNAのことをいう。
【0068】
別の態様において、本発明は、ヒトにおけるAMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションに重なる標的DNAの部位にハイブリダイズする対立遺伝子特異的プライマーを提供する。本発明の対立遺伝子特異的プライマーは、プライマーが完全な相補性を示す対立遺伝子形態の増幅のみを誘導する。このプライマーは、例えば、遠位でハイブリダイズする第二のプライマーと組み合わせて使用してもよい。従って、増幅は二本のプライマーから開始して、ヒトにおけるAMDの発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子の存在を示す検出可能な産物を生じる。
【0069】
3. 検出アッセイ
特定の態様において、本発明は、SNP rs11200638として同定されるバリエーションのような、加齢性黄斑変性の発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションを検出するために有用なポリヌクレオチドに関する。好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、例えば加齢性黄斑変性の発症に相関するHTRA1遺伝子のプロモーター領域などのノンコーディング領域のバリエーションを含むDNAの領域にハイブリダイズし得る。
【0070】
本発明のポリヌクレオチドは、AMDの発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの検出を可能にする任意のアッセイにおいて使用され得る。かかる方法は、例えば、DNA配列決定、ハイブリダイゼーション、ライゲーションまたはプライマー伸長法を含み得る。さらに、これらの方法の任意の組合せを本発明に使用してもよい。
【0071】
一態様において、AMDの発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの存在は、DNA配列決定により検出および/または決定される。DNA配列決定は、ジデオキシ鎖終結技術およびゲル電気泳動などの標準的な方法、または熱配列決定(pyrosequencing)などの他の方法により実行され得る(Biotage AB, Uppsala, Sweden)。例えば、ジデオキシ鎖終結によるDNA配列決定は、標識されていないプライマーおよび標識(例えば、蛍光または放射性)ターミネーターを使用して実施され得る。あるいは、配列決定は、標識プライマーおよび標識されていないターミネーターを使用して実施され得る。試料中のDNAの核酸配列を野生型DNAの核酸配列を比較して、AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションが存在するかどうか同定し得る。
【0072】
別の態様において、AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの存在は、ハイブリダイゼーションによって検出および/または決定される。一態様において、ポリヌクレオチドプローブは、AMDに相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域およびフランキングヌクレオチドのバリエーションにハイブリダイズするが、野生型HTRA1遺伝子にはハイブリダイズしない。ポリヌクレオチドプローブは、蛍光、放射性、または化学的に標識されて、ハイブリダイゼーションの検出を容易にするヌクレオチドを含み得る。ハイブリダイゼーションは、ノーザンブロット、サザンブロット、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)などの当該技術分野に公知の標準的な方法、またはDNAアレイまたはマイクロアレイなどの固体支持体上に固定したポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより実施および検出され得る。本明細書で使用する場合、用語「DNAアレイ」および「マイクロアレイ」とは、順番に配列されたハイブリダイズ可能アレイエレメントのことをいう。好ましくは、基質表面に固定された少なくとも1つ以上の異なるアレイエレメントが存在するように、アレイエレメントを配列する。それぞれのアレイエレメント由来のハイブリダイゼーションシグナルは個々に区別可能である。好ましい態様において、本発明はcDNAまたはその他の種類の核酸アレイエレメントによっても使用され得るが、アレイエレメントはポリヌクレオチドを含む。
【0073】
具体的な態様において、ポリヌクレオチドプローブを使用して、FISHによりゲノムDNAにハイブリダイズさせる。FISHは、例えば、中期の細胞において、ゲノムDNAの欠失を検出するために使用され得る。ゲノムDNAは変性されて、DNA二重らせん構造中で相補的な鎖に分離される。次いで、本発明のポリヌクレオチドプローブを変性したゲノムDNAに添加する。AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションが存在する場合、プローブはゲノムDNAにハイブリダイズする。次いで、シグナルの有無について蛍光顕微鏡により、プローブシグナル(例えば、蛍光)を検出し得る。従って、シグナルの非存在は、AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの非存在を示す。かかるバリエーションの例は、ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点に対して-512位でAG以外のヌクレオチド塩基である。別の具体的な態様において、標識されたポリヌクレオチドプローブをDNAアレイ上に固定したポリヌクレオチドに供する。例えば、洗浄後にDNAアレイ上に残っている標識されたプローブの強度を測定することで、ハイブリダイゼーションを検出し得る。本発明のポリヌクレオチドはまた、市販のアッセイ、例えばTaqmanアッセイ(Applied Biosystems, Foster City, CA)にも使用し得る。
【0074】
別の態様において、AMDの発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの存在は、DNAポリメラーゼによりプライマー伸長により検出および/または決定される。一態様において、本発明のポリヌクレオチドプライマーは、バリエーションのすぐ近隣にハイブリダイズする。標識ジデオキシヌクレオチドターミネーターを使用した一回の塩基配列決定反応を用いてバリエーションを検出し得る。バリエーションが存在すると標識ターミネーターの取り込みが生じ、バリエーションが存在しないとターミネーターの取り込みを生じない。別の態様において、本発明のポリヌクレオチドプライマーは、AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションにハイブリダイズする。プライマーまたはその一部は野生型HTRA1遺伝子にはハイブリダイズしない。バリエーションが存在するとプライマーの伸長が生じるが、バリエーションが存在しないとプライマーの伸長は生じない。プライマーおよび/またはヌクレオチドは、さらに、蛍光、放射性または化学的プローブを含み得る。プライマー伸長により標識されたプライマーは、蛍光、放射性または化学的標識を検出するための、ゲル電気泳動、質量分析、または任意のその他の方法などの伸長産物の強度を測定することにより検出され得る。
【0075】
別の態様において、AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの存在は、ライゲーションにより検出および/または決定され得る。一態様において、本発明のポリヌクレオチドプライマーは、SNP rs11200638として同定されるバリエーションなど、AMDの発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションにハイブリダイズする。プライマーまたはその一部は野生型HTRA1遺伝子にはハイブリダイズしない。第一のプライマーのすぐ近隣のHTRA1遺伝子の領域にハイブリダイズする第二のポリヌクレオチドも提供される。ポリヌクレオチドプライマーの一方または両方は、蛍光、放射性、または化学的に標識され得る。2つのポリヌクレオチドプライマーのライゲーションは、AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションが存在する場合に、DNAリガーゼの存在下で生じる。ライゲーションは、ゲル電気泳動、質量分析により、または蛍光、放射性もしくは化学的標識の強度の測定により検出し得る。
【0076】
別の態様において、AMDの発症に相関するヒトHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの存在は、一塩基伸長(SBE)により検出および/または決定される。例えば、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により、付加された塩基の標識とプライマーの標識の間に結合した蛍光標識プライマーを使用し得る。通常、Chenら(PNAS 94:10756-61 (1997)、本明細書中に参照により援用)により記載されるような方法は、5’末端が5-カルボキシフルオレセイン(FAM)で標識された位置特異的ポリヌクレオチドプライマーを使用する。この標識されたプライマーは、3’末端が目的の多形部位に隣接するように設計される。標識されたプライマーはこの位置にハイブリダイズし、標識されたプライマーの一塩基伸長は、デオキシリボヌクレオチドが存在しない以外は、色素-ターミネーター配列決定様式で蛍光標識されたジデオキシリボヌクレオチド(ddNTP)により実施される。標識されたプライマーの波長での励起に応答した添加されたddNTPの蛍光の増加を使用して、添加されたヌクレオチドの同一性を推測する。
【0077】
AMDの発症に相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの検出方法には、該バリエーションを含むDNAの領域の増幅が含まれ得る。任意の増幅方法が使用され得る。1つの具体的な態様において、バリエーションを含むDNAの領域はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅される。PCRは、Mullis(例えば、本明細書において参照により援用される米国特許第4,683,195号、4,683,202号および4,965,188号を参照のこと)により最初に記載されたが、これには、クローニングまたは精製を必要とせずにゲノムDNAの混合物中でDNAの領域の濃度を増加させる方法が記載される。核酸の増幅には他のPCR法を用いてもよく、例えば、限定されないが、RT-PCR、定量的PCR、リアルタイムPCR、高速増幅多形DNA解析、cDNA末端の高速増幅(RACE)、またはローリングサークル増幅が挙げられる。例えば、本発明のポリヌクレオチドプライマーと、HTRA1遺伝子を含むDNA混合物(または本発明のポリヌクレオチドプライマーにより増幅され得る任意のポリヌクレオチド配列)を混合する。該混合物は熱サイクル反応に必要な増幅試薬(例えば、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、バッファー等)も含む。標準的なPCR法に従って、HTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションを含むDNAの領域を増幅するために、混合物を、一連の、変性、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼ伸長工程にかける。かかるバリエーションの例は、ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点に対する-512位でのG以外のヌクレオチド塩基の存在である。増幅されたDNAの領域の長さは、それぞれのプライマーの相対的な位置により決定されるので、この長さは制御可能なパラメーターである。例えば、バリエーションの近位のプライマーの末端が1〜10,000塩基対(例えば、10塩基対(bp)50bp、200bp、500bp、1,000bp、2,500bp、5,000bp、または10,000bp)離れるように、プライマーのハイブリダイゼーションは生じ得る。
【0078】
増幅されたDNAの増幅および検出には当業者に公知の標準的な装置が使用される。例えば、核酸増幅、特にPCRを実行するために、例えば、Johnson et al,米国特許第5,038,852号(コンピューター制御サーマルサイクラー);Wittwer et al, Nucleic Acids Research, 17:4353-4357 (1989)(キャピラリーチューブPCR);Hallsby, 米国特許第5,187,084号(空気ベース温度制御);Garner et al, Biotechniques, 14:112-115 (1993)(864ウェルプレートのハイスループットPCR);Wilding et al, 国際出願PCT/US93/04039(マイクロマシン構造のPCR);Schnipelsky et al, 欧州特許出願第90301061.9(公開番号第0381501 A2号)(使い捨て単回使用PCR装置)等の種々の装置が開発されている。特定の態様において、本明細書に記載される発明ではリアルタイムPCRまたはTaqmanアッセイなどの当該技術分野に公知の他の方法が使用される。
【0079】
特定の態様において、ヒトにおけるAMDの発症に相関するバリアントHTRA1遺伝子は、Orita et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 86, 2766-2770 (1989) に記載されるような一本鎖PCR産物の電気泳動による移動度の変化により塩基の違いを同定する一本鎖コンホメーション多形解析を使用して検出され得る。増幅されたPCR産物は上述のように生成可能であり、加熱またはその他の方法で変性して一本鎖増幅産物を形成する。一本鎖の核酸は再度折りたたまれ得るかまたは部分的に塩基配列に従って二次構造を形成し得る。一本鎖増幅産物の異なる電気泳動移動度は、標的配列の対立遺伝子間の塩基配列の差に関連し得る。
【0080】
一態様において、増幅されたDNAを、本明細書に記載されるDNA塩基配列決定などの検出方法の1つと組み合わせて解析する。あるいは、増幅されたDNAは、標識プローブを用いたハイブリダイゼーション、DNAアレイもしくはマイクロアレイへのハイブリダイゼーション、ビオチン化プライマーの取り込みおよびその後のアビジン酵素コンジュゲートの検出、またはdCTPもしくはdATPなどの32P標識デオキシヌクレオチド三リン酸の増幅セグメントへの取り込みにより解析され得る。具体的な態様において、増幅されたDNAは、電気泳動またはクロマトグラフィーによる増幅されたDNAの長さの決定により解析される。例えば、増幅されたDNAはゲル電気泳動により解析される。ゲル電気泳動の方法は当該技術分野に周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al編, John Wiley & Sons: 1992を参照のこと。増幅されたDNAは、例えば蛍光もしくは放射性手段により、またはDNA間に挿入される他の色素もしくはマーカーを用いて可視化し得る。DNAはまた、ゲル電気泳動後、ニトロセルロース膜などの固体支持体に転写されて、サザンブロッティングに供され得る。一態様において、DNAをエチジウムブロミドに曝露し、紫外光の下で可視化する。
【0081】
4. SRF、AP2α、HTRA1およびCFHポリペプチドをコードする治療用核酸
特定の態様において、本発明は、本明細書に開示される機能バリアントを含む、SRF、AP2α、HTRA1およびCFHポリペプチドをコードする単離および/または組み換え核酸を提供する。特定の態様において、機能バリアントとしては、SRF、AP2α、HTRA1およびCFHのドミナントネガティブバリアントが挙げられる。当業者は、特定の機能に関して野生型ポリペプチドと競合するポリペプチドであるドミナントネガティブバリアントを理解しよう。ドミナントネガティブバリアントの有用性およびドミナントネガティブバリアントの生成の概念が当該技術分野に周知であり、長期間に渡り多くの文献に適用されており(例えば、Mendenhall M, PNAS, 85:4426-4430 (1988);Haruki N, Cancer Res. 65:3555-3561 (2005))、いくつかのドミナントネガティブタンパク質が商業的に産生されている(例えば、Cytoskeleton)。一態様において、ドミナントネガティブバリアントにより競合される機能はHTRA1遺伝子プロモーターへの結合である(例えば、転写因子SRFまたはAP2αについて)。別の態様において、ドミナントネガティブバリアントにより競合される機能はHTRA1またはCFHの酵素活性である。さらに別の態様において、ドミナントネガティブバリアントにより競合される機能はHTRA1またはCFHを分泌する能力である(例えば、タンパク質分泌を阻害するドミナントネガティブバリアントについてはMao Y, J. Bacteriol., 181:7235-7242 (1999)を参照)。治療的に有用なその他のCFHのバリアントおよびその一般的な特徴は、特許出願WO/2006/062716に記載される。
【0082】
血清応答因子(SRF)は、転写因子のMADボックスファミリーに属する偏在的に発現されるタンパク質である。生物プロセスのSRFが媒介する範囲は、血液生成、筋発生および胚発生を含み、転移性腫瘍進行にも重要な役割を果たし得る。DNAに直接結合することによりまたは補因子との結合を介してSRFは遺伝子転写を制御する(Mora-Garcia P, Stem cells, 2003; 21:123-130)。
【0083】
AP-2は、誘導性のウイルスおよび細胞エンハンサーエレメントと相互作用して選択された遺伝子の転写を制御する配列特異的DNA結合タンパク質である。AP-2因子は、正確な目、顔、体壁、四肢および神経管の発生を含む広範囲の重要な生物学的機能に関する遺伝子に結合し活性化する。AP-2にはAP-2α、βおよびγの3種類のアイソフォームがある。AP-2αは、水晶体胞の初期形態形成に必要な唯一のAP-2タンパク質である。これはダイマーとしてDNAに結合し、AP-2ファミリーの他のメンバーとホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成し得る。
【0084】
目的の核酸は一本鎖または二本鎖であり得る。かかる核酸はDNAまたはRNA分子であり得る。これらの核酸は、例えばSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドの作製方法に使用され得るかまたは直接的な治療剤として使用され得る(例えば、遺伝子治療アプローチにおいて)。
【0085】
特定の態様において、本発明は、SRF、AP2α、HTRA1およびCFHの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一である単離または組み換え核酸配列を提供する。SRF、AP2α、HTRA1およびCFHについての配列およびSRF、AP2α、HTRA1およびCFHについての配列のバリアントに相補的な核酸配列も本発明の範囲内にあるということを当業者は理解しよう。さらなる態様において、本発明の核酸配列は単離、組換えであり得、および/またはヘテロヌクレオチド配列と融合され得るかまたはDNAライブラリー中に存在し得る。
【0086】
他の態様において、本発明の核酸はまた、ストリンジェントな条件下でSRF、AP2α、HTRA1およびCFHの配列、SRF、AP2α、HTRA1およびCFHの配列の相補配列、またはそれらの断片内に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸も含む。上述のように、DNAハイブリダイゼーションを容易にする適切なストリンジェンシー条件は変化し得ることを、当業者は容易に理解しよう。例えば、6.0x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃でハイブリダイゼーションを行い、その後2.0x SSC、50℃で洗浄し得る。例えば、洗浄工程の塩濃度は、約2.0x SSC、50℃の低ストリンジェンシー〜約0.2x SSC、50℃の高ストリンジェンシーから選択することができる。また、洗浄工程の温度は室温約22℃での低ストリンジェンシー条件から約65℃での高ストリンジェンシー条件まで上げることができる。温度および塩の両方を変えてもよいか、または温度もしくは塩濃度を一定にして、もう一方の変数を変えてもよい。一態様において、本発明は、6x SSC、室温の低ストリンジェンシー条件でハイブリダイズし、その後2x SSC、室温で洗浄する核酸を提供する。
【0087】
SRF、AP2α、HTRA1およびCFHの野生型核酸とは異なる単離された核酸も、遺伝子コードの重複のために本発明の範囲内にある。例えば、複数のアミノ酸は1つより多くの三つ組みにより指定される。同一のアミノ酸またはシノニム(例えば、CAUおよびCACはヒスチジンについてのシノニムである)を特定するコドンは、タンパク質のアミノ酸配列に影響しない「サイレント」バリエーションを生じ得る。しかし、目的のタンパク質のアミノ酸配列に変化を生じさせるDNA配列多形が哺乳動物細胞中には存在することが予想される。天然の対立遺伝子バリエーションのために、特定のタンパク質をコードする核酸の1つ以上のヌクレオチドのこれらのバリエーション(ヌクレオチド中の約3〜5%まで)が所定の種の個体間に存在し得ることを当業者は理解しよう。一部および全てのかかるヌクレオチドバリエーションおよび得られるアミノ酸多形が本発明の範囲内にある。
【0088】
本発明の核酸およびポリペプチドは、標準的な組換え法を用いて生成され得る。例えば、本発明の組換え核酸は、発現構築物中で1つ以上の制御ヌクレオチド配列に操作可能に連結され得る。一般的に、制御ヌクレオチド配列は、発現に使用される宿主細胞に適切である。種々の宿主細胞の技術分野において、多くの種類の適切な発現ベクターおよび適切な制御配列が公知である。通常、前記1つ以上の制御ヌクレオチド配列としては、限定されないが、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および終結配列、転写開始配列および終結配列、ならびにエンハンサー配列またはアクチベーター配列が挙げられ得る。当該技術分野に公知の、構成性または誘導性のプロモーターが本発明に企図される。プロモーターは、1つより多くのプロモーターの因子に結合する天然に存在するプロモーター、または融合プロモーターであり得る。プラスミドなどのエピソームを用いて発現構築物を細胞中に存在させ得るか、または発現構築物を染色体に挿入し得る。発現ベクターはまた、形質転換宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含み得る。選択マーカー遺伝子は当該技術分野に周知であり、使用される宿主細胞により異なる。
【0089】
本発明の特定の態様において、SRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター中に目的の核酸を提供し、少なくとも1つの制御配列に操作可能に連結する。制御配列は当該技術分野において認識され、SRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドの発現を誘導するように選択される。従って、用語、制御配列としては、プロモーター、エンハンサー、終結配列、好ましいリボソーム結合部位配列、好ましいmRNAリーダー配列、好ましいタンパク質プロセシング配列、タンパク質分泌のための好ましいシグナル配列、およびその他の発現調節因子が挙げられる。制御配列の例は、Goeddel;Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Academic Press, San Diego, CA (1990) に記載される。例えば、操作可能に連結された場合にDNA配列の発現を調節する種々の発現調節配列のいずれかを、ポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクター中に使用し得る。かかる有用な発現調節配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルス初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACまたはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼにより発現が誘導されるT7プロモーター、λファージの主要オペレーター領域およびプロモーター領域、fdコートタンパク質の調節領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたはその他の糖分解酵素のプロモーター、酸ホスファターゼ、例えばPho5のプロモーター、酵母α交配因子のプロモーター、バキュロウイルス系のポリへドロンプロモーターおよび原核もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を調節することが知られているその他の配列、ならびにそれらの種々の組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現されることが望まれるタンパク質の種類などの因子に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を調節する能力およびベクターにコードされる抗生物質マーカーなどの任意のその他のタンパク質の発現も考慮されるべきである。
【0090】
本発明の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子、またはその一部を、原核細胞、真核細胞(酵母、トリ、昆虫または哺乳動物)、またはその両方のいずれかの発現に適切なベクターに連結することにより生成され得る。組換えポリペプチドの生成のための発現ビヒクルとしてはプラスミドまたは他のベクターが挙げられる。例えば、適切なベクターとしては、大腸菌などの原核細胞中の発現用のpBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミドおよびpUC由来プラスミドなどの種類のプラスミドが挙げられる。
【0091】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中のベクターの増殖を容易にするための原核細胞配列、および真核細胞中で発現される1つ以上の真核生物転写ユニットの両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neoおよびpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核細胞および真核細胞の両方における複製および薬剤耐性選択を容易にする、pBR322などの細菌プラスミド由来の配列で修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV-1)、またはエプスタイン-バールウイルス(pHEBo、pREP-由来およびp205)などのウイルスの誘導体は、真核細胞におけるタンパク質の一過的な発現に使用することができる。(レトロウイルスを含む)他のウイルス性発現システムの例は、遺伝子治療送達システムの以下の記載に見ることができる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換に使用される種々の方法は当該技術分野に周知である。原核生物および真核生物の両方についての他の適切な発現系、ならびに一般的な組換え法については、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (2001) を参照のこと。いくつかの例において、バキュロウイルス発現系を使用して組換えポリペプチドを発現することが望ましい。かかるバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、およびpBlueBac由来ベクター(β-gal含有pBlueBac IIIなど)が挙げられる。
【0092】
一態様において、Pcmv-Scriptベクター(Stratagene, La Jolla, Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)およびpCI-neoベクター(Promega, Madison, Wisc)などのベクターは、目的のSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドのCHO細胞中での産生のために設計される。他の態様において、ベクターは、原核宿主細胞(例えば、大腸菌およびB. subtilis)、真核宿主細胞、例えば酵母細胞、昆虫細胞、ミエローマ細胞、3T3繊維芽細胞、サル腎臓またはCOS細胞、ミンク肺上皮細胞、ヒト包皮線維芽細胞、ヒトグリア芽細胞腫細胞および奇形腫細胞などにおける目的のSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドの産生のために設計される。あるいは、遺伝子は、ウサギ網状赤血球溶解物系などの細胞非含有系において発現され得る。
【0093】
明確なように、目的の遺伝子構築物は、目的のSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドを、培養により増殖された細胞中で発現する、例えば精製についての融合タンパク質、バリアントタンパク質を含むタンパク質を産生するために使用され得る。
【0094】
本発明はまた、1つ以上の目的のSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドについてのコーディング配列を含む組換え遺伝子でトランスフェクトした宿主細胞にも関する。該宿主細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれかであり得る。例えば、本発明のSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドは、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用して)、酵母または哺乳動物細胞中で発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0095】
従って、本発明はさらに、目的のSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドを産生する方法に関する。例えばSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドをコードする発現ベクターで形質転換された宿主細胞は、SRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドの発現が生じるのに適切な条件下で培養され得る。SRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドは分泌されてもよく、SRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドを含む細胞およびメディウムの混合物から単離されてもよい。あるいは、ポリペプチドは細胞質内または膜画分中に保持されてもよく、細胞を回収して溶解し、タンパク質を単離してもよい。細胞培養物は、宿主細胞、メディウムおよびその他の副産物を含む。細胞培養に適切なメディウムは当該技術分野に周知である。イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、限外ろ過、電気泳動、およびポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を用いた免疫親和性精製などの、タンパク質の精製について当該技術分野に公知の技術を使用して、細胞培養メディウム、宿主細胞またはその両方からポリペプチドを単離し得る。特定の態様において、SRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドは、SRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドの精製を容易にするドメインを含む融合タンパク質である。
【0096】
別の態様において、組換えSRF、AP2α、HTRA1またはCFHポリペプチドの所望の部位のN末端にポリ(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列などの精製リーダー配列をコードする融合遺伝子により、Ni2+金属樹脂を使用した親和性クロマトグラフィーによる発現融合タンパク質の精製が可能になり得る。次いで、精製リーダー配列をエンテロキナーゼで処理して除去し、精製ポリペプチドを得る(例えば、Hochuli et al., (1987) J. Chromatography 411:177;およびJanknecht et al., PNAS USA 88:8972を参照)。
【0097】
融合遺伝子を作製する技術は周知である。本質的に、種々のポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の結合は、ライゲーションのために平滑末端または突出末端、適切な末端を生じるための制限酵素消化、適当な結合性末端の穴埋め、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理および酵素ライゲーションを使用した従来技術に従って実施される。別の態様において、自動DNA合成機などの従来技術により、融合遺伝子を合成することができる。あるいは、アニーリングしてキメラ遺伝子配列を生じ得る2本の連続した遺伝子断片間の相補的な突出を生じるアンカープライマーを使用して、遺伝子断片のPCR増幅を実行することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al編, John Wiley & Sons: 1992を参照)。
【0098】
5. 他の治療様相
アンチセンスポリヌクレオチド
特定の態様において、本発明は、HTRA1遺伝子の発現阻害のためのアンチセンス機構を通じて機能するアンチセンス配列を含むポリヌクレオチドを提供する。アンチセンス技術は、遺伝子発現を制御するために広く利用されている(Buskirk et al., Chem Biol 11, 1157-63 (2004);およびWeiss et al., Cell Mol Life Sci 55, 334-58 (1999))。本明細書で使用される場合、「アンチセンス」技術とは、例えば、立体阻害、選択的スプライシングもしくは転写産物の切断の誘導または他の酵素による不活性化などの転写および/または翻訳の阻害によりタンパク質の発現を阻害するように、細胞条件下で、1つ以上の標的タンパク質をコードする目的の標的核酸(mRNAおよび/またはゲノムDNA)と特異的にハイブリダイズ(例えば、結合)する分子もしくはその誘導体の投与またはインサイチュ生成のことをいう。結合は、通常の塩基対相補性によって、または、例えば、DNA二本鎖への結合の場合には、二重らせんの主要な溝における特異的な相互作用によって生じ得る。一般的に、「アンチセンス」技術とは、当該技術分野において一般的に使用される技術の範囲のことをいい、核酸配列への特異的な結合に基づく任意の治療を含む。
【0099】
本発明のアンチセンス配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、細胞中で転写された場合に、標的核酸の少なくとも1つの特有の部分に相補的な核酸配列を生成する発現プラスミドの成分として送達され得る。あるいは、アンチセンス配列を含むポリヌクレオチドは、標的細胞の外部で生成することができ、標的細胞に導入された場合に標的核酸とのハイブリダイズにより、発現の阻害を生じる。本発明のポリヌクレオチドは、内因性ヌクレアーゼ、例えばエクソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに対して耐性であるように修飾され得るので、インビボで安定である。本発明のポリヌクレオチドの使用についての核酸分子の例は、DNAのホスホルアミデート、ホスホチオエートおよびメチルホスホネートアナログである(米国特許第5,176,996号;5,264,564号;および5,256,775号も参照)。アンチセンス技術に有用なポリヌクレオチドの構築についての一般的なアプローチは、例えば、van der Krol et al. (1988) Biotechniques 6:958-976;およびStein et al. (1988) Cancer Res 48:2659-2668に概説されている。
【0100】
アンチセンスアプローチは、HTRA1遺伝子をコードする標的核酸に相補的であるポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)の設計を含む。アンチセンスポリヌクレオチドはmRNA転写産物に結合し、目的のタンパク質の翻訳を阻害し得る。絶対的な相補性は好ましいが必ずしも必要ではない。従って、二本鎖アンチセンスポリヌクレオチドの場合、二本鎖DNAの一本鎖が試験され得るか、または三重鎖形成がアッセイされ得る。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度およびアンチセンス配列の長さに依存する。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長いほど、含まれ得る標的核酸との塩基ミスマッチの数は多くなるが、さらに安定な二本鎖(または、三重鎖の場合もあり得る)を形成する。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を測定するための標準的な方法を使用することで、許容可能なミスマッチの程度を確認し得る。
【0101】
mRNA標的の5’末端、例えばAUG開始コドンまでおよびAUG開始コドンを含む5’非翻訳配列に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドは、mRNAの翻訳の阻害に最も効果的に働くはずである。しかしながら、最近、mRNAの3’非翻訳配列に相補的な配列も同様に、mRNAの翻訳の阻害に効果的であることが示されている(Wagner, R. 1994. Nature 372:333)。従って、バリアントHTRA1遺伝子の5’もしくは3’の非翻訳、ノンコーディング領域のいずれかに相補的なアンチセンスポリヌクレオチドが、バリアントHTRA1 mRNAの翻訳を阻害するためのアンチセンスアプローチに使用可能である。mRNAの5’非翻訳領域に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補鎖を含むはずである。mRNAコーディング領域に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドは効果が低い翻訳のインヒビターであるが、これも本発明に従って使用することができる。mRNAの5’、3’またはコーディング領域のいずれにハイブリダイズするように設計されたとしても、アンチセンスポリヌクレオチドは少なくとも6ヌクレオチド長であり、好ましくは約100ヌクレオチド長未満、より好ましくは約50、25、17または10ヌクレオチド長未満である。
【0102】
標的配列の選択に関係なく、インビトロ試験ではまずアンチセンスポリヌクレオチドがHTRA1遺伝子の発現を阻害する能力の定量を行うことが好ましい。これらの試験では、アンチセンス遺伝子阻害とアンチセンスポリヌクレオチドの非特異的生物学的効果を区別する対照が利用されることが好ましい。これらの試験では、標的RNAまたはタンパク質のレベルと内部対照RNAまたはタンパク質のレベルを比較することも好ましい。さらに、アンチセンスポリヌクレオチドを使用して得られた結果を、対照アンチセンスポリヌクレオチドを使用して得られた結果と比較することが想定される。対照アンチセンスポリヌクレオチドは試験アンチセンスポリヌクレオチドとほぼ同じ長さであること、および対照アンチセンスポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と目的のアンチセンス配列が標的配列との特異的ハイブリダイゼーションを阻害するために必要とされる以上に異ならないことが好ましい。
【0103】
アンチセンスポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチドは、DNAもしくはRNAまたはそれらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾型で、一本鎖または二本鎖であり得る。本発明のポリヌクレオチドは、塩基部分、糖部分またはリン酸主鎖で、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーション等を向上するように修飾され得る。本発明のポリヌクレオチドは、ペプチド(例えば、宿主細胞受容体の標的化のため)、または細胞膜(例えば、Letsinger et al., 1989, Proc Natl Acad Sci. USA 86:6553-6556;Lemaitre et al., 1987, Proc Natl Acad Sci USA 84:648-652;1988年12月15日に公開されたPCT公開公報WO 88/09810を参照)または血液脳関門(例えば1988年4月25日に公開されたPCT公開公報WO 89/10134を参照)通過輸送を容易にするための薬剤、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤(例えば、Krol et al., 1988, BioTechniques 6:958-976を参照)またはインターカレート剤(例えば、Zon, Pharm. Res. 5:539-549 (1988) を参照)などの他のさらなる基を含み得る。このために、本発明のポリヌクレオチドは、別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性架橋化剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤等と組み合わされ得る。
【0104】
アンチセンスポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチドは、限定されないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシトリエチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルケオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル;β-D-マンノシルケオシン、5-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンを含む群から選択される少なくとも1つの修飾塩基部分を含み得る。
【0105】
本発明のポリヌクレオチドはまた、限定されないが、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソースを含む群から選択される少なくとも1つの修飾糖部分を含み得る。
【0106】
本発明のポリヌクレオチドは、中性のペプチド様主鎖を含み得る。かかる分子はペプチド核酸(PNA)オリゴマーと称され、例えば、Perry-O'Keefe et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:14670およびEglom et al. (1993) Nature 365:566に記載される。PNAオリゴマーの1つの利点は、DNAが中性主鎖であるために、メディウムのイオン強度とは実質的に独立して相補的なDNAに結合する能力である。さらに別の態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタールまたはそれらのアナログからなる群から選択される少なくとも1つの修飾リン酸主鎖を含む。
【0107】
さらなる態様において、アンチセンスポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチドはアノマーオリゴヌクレオチドである。アノマーオリゴヌクレオチドは、通常のユニットとは相容れない、鎖が互いに平行する相補的なRNAとの特異的な二本鎖ハイブリッドを形成する(Gautier et al., 1987, Nucl. Acids Res. 15:6625-6641)。オリゴヌクレオチドは2'-O-メチルリボヌクレオチド(Inoue et al., 1987, Nucl. Acids Res. 15:6131-6148)、またはキメラRNA-DNAアナログである(Inoue et al., 1987, FEBS Lett. 215:327-330)。
【0108】
アンチセンスポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチドは、例えば自動DNA合成機(Biosearch、Applied Biosystems等から市販されるものなど)を使用した、当該技術分野に公知の標準的な方法により合成され得る。例としては、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Stein et al. Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988)) の方法により合成され得、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは孔制御ガラスポリマー支持体を使用して調製され得る(Sarin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7448-7451 (1988))。
【0109】
mRNA配列のコーディング領域に相補的なアンチセンス配列を使用することができるが、転写された非翻訳領域および開始メチオニンを含む領域に相補的な配列が最も好ましい。
【0110】
アンチセンスポリヌクレオチドは、インビボで標的遺伝子を発現する細胞に送達され得る。細胞に核酸を送達するために多くの方法が開発されている;例えば、アンチセンスポリヌクレオチドは組織部位に直接注入され得るか、または所望の細胞を標的とするように設計された修飾核酸(例えば、標的細胞表面上に発現された受容体もしくは抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結されたアンチセンスポリヌクレオチド)は全身に投与され得る。
【0111】
しかしながら、場合によっては、HTRA1遺伝子またはmRNAの活性を減衰するのに充分なアンチセンスポリヌクレオチドの細胞内濃度を達成することは困難であり得る。従って、別のアプローチでは、アンチセンスポリヌクレオチドが強力なpol IIIまたはpol IIプロモーターの調節下に置かれる組換えDNA構築物が利用される。患者の標的細胞にトランスフェクトするためのかかる構築物の使用により、HTRA1遺伝子またはmRNAと相補的な塩基対を形成する充分な量のアンチセンスポリヌクレオチドの転写が生じ、それによりHTRA1タンパク質の活性が減衰される。例えば、細胞に取り込まれ、HTRA1遺伝子またはmRNAを標的とするアンチセンスポリヌクレオチドの転写を誘導するように、ベクターをインビボで導入し得る。所望のアンチセンスポリヌクレオチドを生成するように転写することができるならば、かかるベクターはエピソーム状であり続け得るか、または染色体に取り込まれ得る。かかるベクターは、当該技術分野で標準的な組換えDNA技術法により構築することができる。ベクターは、プラスミド、ウイルス、または当該技術分野で公知のその他のものであり得、哺乳動物細胞での複製および発現に使用され得る。プロモーターは、アンチセンスポリヌクレオチドをコードする配列に操作可能に連結され得る。アンチセンスポリヌクレオチドをコードする配列の発現は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞において機能するように当該技術分野において公知の任意のプロモーターによりなされ得る。かかるプロモーターは誘導性または構成性であり得る。かかるプロモーターとしては、限定されないが:SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon, Nature 290:304-310 (1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’長鎖末端リピートに含まれるプロモーター(Yamamoto et al., Cell 22:787-797 (1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1441-1445 (1981))、メタロチオニン遺伝子の制御配列(Brinster et al, Nature 296:3942 (1982))等が挙げられる。任意の種類のプラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを使用して、組織部位に直接導入され得る組換えDNA構築物を調製することができる。あるいは、所望の組織に選択的に感染するウイルスベクターを使用することができ、この場合別の経路(例えば、全身)で投与が達成され得る。
【0112】
RNAi構築物-siRNAおよびmiRNA
RNA干渉(RNAi)とは、二本鎖(ds)RNA依存型遺伝子特異的転写後サイレンシングを示す現象である。哺乳動物細胞の実験操作にこの現象を利用した最初の試みは、長鎖dsRNA分子に応答して活性化される、膨大で非特異的な抗ウイルス防御機構によって失敗した(Gil et al. Apoptosis 2000, 5:107-114)。21ヌクレオチドRNAの合成二重鎖が、哺乳動物細胞において、包括的な抗ウイルス防御機構を引き起こすことなく遺伝子特異的RNAiを仲介し得たという証明により、この分野は大きく進歩した(Elbashir et al. Nature 2001, 411:494-498;Caplen et al. Proc Natl Acad Sci 2001, 98:9742-9747)。結果的に、小分子干渉RNA(siRNA)およびマイクロRNA(miRNA)は遺伝子機能を詳細に分析するための強力な手段となった。小分子RNAの化学合成は、有望な結果をもたらす1つの道である。細胞中でかかるsiRNAを生成し得るDNA系ベクターの開発は多くのグループによって研究されている。いくつかのグループは、最近この目標を達成し、一般的に、細胞中で効率的に処理されてsiRNAを形成するショートヘアピン(sh)RNAの転写を含む、同様の戦略を公開した(Paddison et al. PNAS 2002, 99:1443-1448;Paddison et al. Genes & Dev 2002, 16:948-958;Sui et al. PNAS 2002, 8:5515-5520;およびBrummelkamp et al. Science 2002, 296:550-553)。これらの報告には、無数の内因性および外因性に発現させた遺伝子を特異的に標的とし得るsiRNAを作製する方法が記載される。
【0113】
従って、本発明は、RNAiまたはmiRNA機構により作用してHTRA1遺伝子の発現を減衰するRNAi配列を含むポリヌクレオチドを提供する。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、HTRA1遺伝子の発現を減衰または阻害するmiRNAまたはsiRNA配列を含み得る。一態様において、miRNAまたはsiRNA配列は約19ヌクレオチド〜約75ヌクレオチド長であるか、または好ましくは約25塩基対〜35塩基対長である。特定の態様において、ポリヌクレオチドは、RNAse酵素(例えば、DroshaおよびDicer)により処理され得るヘアピンループまたはステムループである。
【0114】
RNAi構築物は、細胞の生理的条件下でHTRA1遺伝子のmRNA転写産物の少なくとも一部のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。二本鎖RNAは、RNAiを仲介する能力を有する、天然のRNAと充分に同様のもののみを必要とする。標的配列とRNAi構築物配列の間の許容される塩基ミスマッチの数は、5塩基対中1以下、または10塩基対中1以下、または20塩基対中1以下、または50塩基対中1以下である。RNAi構築物がHTRA1遺伝子を特異的に標的化できることがまず重要である。siRNA二本鎖の中央部のミスマッチが最も決定的であり、標的RNAの切断が実質的に阻害され得る。対照的に、標的RNAに相補的なsiRNA鎖3’末端のヌクレオチドは標的認識の特異性に大きくは寄与しない。
【0115】
配列同一性は、当該技術分野に公知である配列比較およびアライメントアルゴリズム(Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991、およびその中に引用される参考文献を参照)、および例えば、デフォルトパラメーターを用いたBESTFITソフトウェアプログラム中で実行されるようなSmith-Watermanアルゴリズム(例えば、University of Wisconsin Genetic Computing Group)による塩基配列間の相違の割合を計算することで最適化され得る。阻害性RNAと標的遺伝子の一部の間で、90%より高い配列同一性、またはほぼ100%の配列同一性が好ましい。あるいは、RNAの二本鎖領域は、標的遺伝子転写産物の一部とハイブリダイズし得る(例えば、12〜16時間の400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃のハイブリダイゼーション;続いて洗浄)ヌクレオチド配列として機能的に規定され得る。
【0116】
RNAi配列を含むポリヌクレオチドの生成は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを生成するための方法のいずれかにより実行することができる。例えば、RNAi配列を含むポリヌクレオチドは、化学合成法または組換え核酸技術により生成することができる。処理済細胞中の内因性RNAポリメラーゼはインビボの転写を仲介し得るか、またはクローニングされたRNAポリメラーゼはインビトロの転写に使用することができる。野生型もしくはアンチセンスポリヌクレオチド、またはRNAi機構により標的遺伝子活性を制御するポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチドは、例えば細胞内ヌクレアーゼに対する感受性を低減するため、生物学的利用能を向上させるため、調製特性を向上させるため、および/またはその他の薬理動態的特性を変化させるために、リン酸-糖主鎖またはヌクレオシドのいずれかの修飾を含み得る。例えば、少なくとも1つの窒素または硫黄へテロ原子を含むように、天然のRNAのホスホジエステル結合を修飾してもよい。RNA構造中の修飾は、dsRNAに対する通常の応答を回避しながら、特異的な遺伝子阻害を可能にするように調整され得る。同様に、塩基を修飾して、アデノシンデアミナーゼの活性を阻害し得る。本発明のポリヌクレオチドは、酵素的に、または部分的/全体的に有機合成により生成され得、修飾された任意のリボヌクレオチドをインビトロ酵素または有機合成により導入し得る。
【0117】
RNA分子の化学的修飾方法はRNAi構築物の修飾に適用され得る(例えば、Heidenreich et al. (1997) Nucleic Acids Res, 25:776-780;Wilson et al. (1994) J Mol Recog 7:89-98;Chen et al. (1995) Nucleic Acids Res 23:2661-2668;Hirschbein et al. (1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7:55-61を参照)。単に例示するために、RNAi構築物の主鎖をホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホジチオエート、キメラメチルホスホネート-ホスホジエステル、ペプチド核酸、5-プロピニル-ピリミジン含有オリゴマーまたは糖修飾(例えば、2’-置換リボヌクレオシド、a-配置)で修飾し得る。
【0118】
二本鎖構造は、一本自己相補性RNA鎖または二本相補性RNA鎖により形成し得る。RNA二本鎖形成は、細胞内または細胞外のいずれかで開始され得る。RNAは、細胞当たり少なくとも1コピーの送達が可能な量で導入され得る。高用量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500または1000コピー)の二本鎖物質はより効果的な阻害を生じ得るが、具体的な適用には低用量も有用であり得る。RNAの二本鎖領域に対応する核酸配列を遺伝子阻害の標的とするように、阻害は配列特異的である。
【0119】
特定の態様において、目的のRNAi構築物は「siRNA」である。これらの核酸は、約19〜35ヌクレオチド長であり、さらにより好ましくは、例えば、より長い二本鎖RNAのヌクレアーゼ「ダイシング(dicing)」により生成される断片の長さに相当するように21〜23ヌクレオチド長である。siRNAは、ヌクレアーゼ複合体と会合して特異的配列と対形成することで該複合体を標的mRNAに誘導することが理解される。結果的に、標的mRNAがタンパク質複合体中のヌクレアーゼにより分解されるか、または翻訳が阻害される。特定の態様において、21〜23ヌクレオチドsiRNA分子は3’ヒドロキシル基を含む。
【0120】
他の態様において、目的のRNAi構築物は、「miRNA」である。マイクロRNA(miRNA)は、相同性のmRNAとの相互作用による遺伝子発現の転写後制御に関する小分子ノンコーディングRNAである。miRNAは、タンパク質コーディング遺伝子由来の標的mRNAの相補部位に結合することで遺伝子の発現を調節する。miRNAはsiRNAと同様である。miRNAは、より大きな二本鎖前駆体分子から核酸分解性切断によりプロセッシングされる。これらの前駆体分子は、しばしば約70ヌクレオチド長のヘアピン構造であり、25以上のヌクレオチドがヘアピン中で塩基対をなす。(siRNAプロセッシングでも使用され得る)RNAseIII様酵素のDroshaおよびDicerはmiRNA前駆体を切断してmiRNAを生成する。プロセッシングされたmiRNAは一本鎖で、RISCまたはmiRNPと呼ばれるタンパク質複合体中に組み込まれる。このRNA-タンパク質複合体は相補的なmRNAを標的とする。miRNAは翻訳を阻害するか、または標的mRNAの切断を誘導する(Brennecke et al., Genome Biology 4:228 (2003);Kim et al., Mol. Cells 19:1-15 (2005)。
【0121】
特定の態様において、miRNAおよびsiRNA構築物は、より長い二本鎖RNAのプロセッシング、例えば酵素DicerまたはDroshaの存在下でプロセッシングされて生成され得る。DicerおよびDroshaは、dsRNAを特異的に切断するRNAseIII様ヌクレアーゼである。Dicerは、ヘリカーゼドメインおよび二重RNAseIIIモチーフを含む特徴的な構造を有する。Dicerはまた、下等な真核生物のRNAiに遺伝的に連結するRDE1/QDE2/ARGONAUTEファミリーに対して相同な領域を含む。実際、Dicerの活性化または過剰発現は、多くの場合において、非感覚器官細胞以外、例えば培養真核細胞、または培養中の哺乳動物(非卵母細胞)または生物個体において、RNA干渉を引き起こすのに充分であり得る。Dicerおよびその他のRNAi酵素を使用する方法および組成物は、米国特許出願公開公報2004/0086884号に記載される。
【0122】
一態様において、ショウジョウバエのインビトロ系を使用する。この態様において、RNAi配列またはRNAi前駆体を含むポリヌクレオチドをショウジョウバエの胚由来の可溶性抽出物と混合して、混合物を生成する。dsRNAがプロセッシングされて約21〜約23ヌクレオチドのRNA分子になる条件下で混合物を維持する。
【0123】
miRNAおよびsiRNA分子は、当業者に公知の多くの技術を用いて精製され得る。例えば、ゲル電気泳動を使用してかかる分子を精製し得る。あるいは、非変性カラムクロマトグラフィーなどの非変性法を使用して、siRNAおよびmiRNA分子を精製し得る。また、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール濃度勾配遠心分離、抗体を用いた親和性精製を使用してsiRNAおよびmiRNAを精製し得る。
【0124】
特定の態様において、エフェクタードメインの少なくとも1つのsiRNA配列は、約1〜約6ヌクレオチド長、または2〜4ヌクレオチド長の3’突出を有する。他の態様において、3’突出は1〜3ヌクレオチド長である。特定の態様において、一本の鎖は3’突出を有し、もう一方の鎖は平滑末端であり得るかまたは突出を有する。突出の長さは、それぞれの鎖で同じであってもよいし異なってもよい。siRNA配列の安定性をさらに高めるために、3’突出を分解に対して安定化し得る。一態様において、RNAは、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含むことで安定化する。あるいは、修飾アナログによるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば2’-デオキシチミジンによるウリジンヌクレオチドの3’突出の置換が許容され、RNAiの効果に影響を及ぼさない。2’ヒドロキシルが存在しないことで、組織培養メディウム中の突出のヌクレアーゼ耐性が有意に高められ、インビボで有用であり得る。
【0125】
特定の態様において、RNAi配列またはRNAi前駆体を含む本発明のポリヌクレオチドは、ヘアピン構造の形態である(ヘアピンRNAと称される)。ヘアピンRNAは外因的に合成され得るか、またはインビボでのRNAポリメラーゼIIIプロモーターからの転写により形成され得る。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングについてのかかるヘアピンRNAの作製および使用の例は、例えば(Paddison et al., Genes Dev, 2002, 16:948-58;McCaffrey et al., Nature, 2002, 418:38-9;McManus et al., RNA 2002, 8:842-50;Yu et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2002, 99:6047-52)に記載される。好ましくは、かかるヘアピンRNAは細胞内または動物内で作製されて、所望の遺伝子の連続的で安定な抑制を確実にする。miRNAおよびsiRNAが細胞内でヘアピンRNAのプロセッシングにより産生され得るということは当該技術分野で公知である。
【0126】
さらに他の態様において、プラスミドを使用して、転写産物などの二本鎖RNAを送達する。コーディング配列が転写された後で、相補的なRNA転写産物は塩基対を形成し、二本鎖RNAを形成する。
【0127】
HTRA1を特異的に標的とするいくつかのRNAi構築物が市販されている(例えば、InvitrogenのStealth Select RNAi)。
【0128】
アプタマーおよび小分子
本発明はまた、HTRA1ポリペプチドに特異的に結合してHTRA1ポリペプチドの活性を制御する治療用アプタマーを提供する。「アプタマー」は、高い親和性および特異性で特定の分子に結合し得るRNAまたはDNAなどの核酸分子であり得る(Ellington et al., Nature 346, 818-22 (1990);およびTuerk et al., Science 249, 505-10 (1990))。アプタマーは、標的分子の結合についてのインビトロ選択により、最も一般的に得られている。例えば、HTRA1ポリペプチドに特異的に結合するアプタマーは、ポリヌクレオチドのプール由来のHTRA1ポリペプチドへの結合についてのインビトロ選択により得ることができる。しかしながら、アプタマーのインビボ選択も可能である。アプタマーは、環境中で目的の標的分子と複合体を形成し得る特異的結合領域を有するが、同じ環境下では他の物質は核酸とは複合体を形成しない。結合の特異性は、該環境下の他の物質または一般的に関係のない分子に対するアプタマーの解離定数と比較して、アプタマーのそのリガンド(例えば、HTRA1ポリペプチド)に対する比較解離定数(Kd)に関して規定される。リガンド(例えば、HTRA1ポリペプチド)は、関係のない物質よりも高い親和性でアプタマーと結合するものである。典型的に、リガンドについてのアプタマーのKdは、アプタマーと関係のない物質または環境中に共存する物質のKdよりも少なくとも約10倍低い。さらにより好ましくは、Kdは少なくとも約50倍低く、より好ましくは少なくとも約100倍低く、最も好ましくは少なくとも約200倍低い。典型的に、アプタマーは、約10〜約300ヌクレオチド長である。より一般的には、アプタマーは、約30〜約100ヌクレオチド長である。
【0129】
目的の標的に特異的なアプタマーの選択方法は当該技術分野に公知である。例えば、有機分子、ヌクレオチド、アミノ酸、ポリペプチド、細胞表面の標的特徴、イオン、金属、塩、多糖は全て、それぞれのリガンドに特異的に結合し得るアプタマーの単離に適切であることが示されている。例えば、ヘキスト33258などの有機色素は、インビトロアプタマー選択の標的リガンドとして首尾よく使用されている(Werstuck and Green, Science 282:296-298 (1998))。ドーパミン、テオフィリン、スルホローダミンB、およびセロビオースなどのその他の小有機分子もアプタマーの単離のリガンドとして使用されている。カナマイシンA、リビドマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンB、バイオマイシン、クロランフェニコールおよびストレプトマイシンなどの抗生物質についてのアプタマーも単離されている。小分子を認識するアプタマーの概説については(Famulok, Science 9:324-9 (1999))を参照のこと。
【0130】
本発明のアプタマーは全体的にRNAから構成され得る。しかしながら、本発明の他の態様において、アプタマーは代わりに全体的にDNA、または部分的にDNA、または部分的にその他のヌクレオチドアナログから構成され得る。インビボ翻訳を特異的に阻害するためにはRNAアプタマーが好ましい。かかるRNAアプタマーは、好ましくは、RNAアプタマーに転写されるDNAとして細胞内に導入される。あるいは、RNAアプタマー自体を細胞に導入することができる。
【0131】
典型的に、アプタマーは、SELEXとして知られている公知のインビボまたはインビトロ(最も典型的にはインビトロ)選択技術を使用して、特定のリガンドに結合するように開発される(Ellington et al., Nature 346, 818-22 (1990);およびTuerk et al., Science 249, 505-10 (1990))。アプタマーの作製方法はまた、例えば(米国特許第5,582,981号、PCT公開公報WO 00/20040、米国特許第5,270,163号、Lorsch and Szostak, Biochemistry, 33:973 (1994)、Mannironi et al., Biochemistry 36:9726 (1997)、Blind, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 96:3606-3610 (1999)、Huizenga and Szostak, Biochemistry, 34:656-665 (1995)、PCT公開公報WO 99/54506、WO 99/27133、WO 97/42317および米国特許第5,756,291号)にも記載されている。
【0132】
一般的に、ほとんどの基本的形態において、アプタマーの同定についてのインビトロ選択技術は、第1に、ランダム化または突然変異誘発される少なくともいくつかの領域を含む所望の長さのDNA分子の大きなプールを調製する工程を含む。例えば、アプタマー選択のための一般的なオリゴヌクレオチドプールは、PCRプライマーの結合に有用な規定配列の約15〜25ヌクレオチド長の領域が両末端に配置された、20〜100ランダム化ヌクレオチドの領域を含み得る。選択された核酸配列の忠実かつ効率的な増幅を可能にする任意の手段を使用することができるが、オリゴヌクレオチドプールは標準的なPCR技術を使用して増幅される。次いで、DNAプールをインビトロ転写して、RNA転写産物を生成する。次いで、別の分子(例えば、タンパク質、または任意の標的分子)に特異的に結合する核酸の能力に基づいて、核酸の選択を可能にする任意のプロトコールを使用してもよいが、RNA転写産物を親和性クロマトグラフィーに供し得る。親和性クロマトグラフィーの場合には、最も典型的に、転写産物をカラムに通すか、または標的リガンドが固定されている磁気ビーズ等に接触させる。結合しない配列を洗い流しながら、リガンドに結合するプール中のRNA分子をカラムまたはビーズ上に保持する。次いで、リガンドに結合するRNA分子を逆転写して、再度PCRにより増幅する(通常、溶出後)。その後、選択されたプールの配列を同じ種類の選択にもう1回供する。典型的に、プール配列を全部で約3〜10回反復して選択手順に供する。次いで、cDNAを増幅してクローニングし、標準的な手順を使用して配列を決定し、標的リガンドに対してアプタマーとして機能し得るRNA分子の配列を同定する。一旦アプタマーの配列が上手く同定されると、突然変異誘発アプタマー配列を含むオリゴヌクレオチドのプールから始める選択をさらに数回実施することで、アプタマーをさらに最適化し得る。本発明の使用に関して、好ましくは、正常な生理的条件を模倣した塩濃度および温度の存在下で結合するリガンドについて、アプタマーを選択する。
【0133】
どのような種類の構造が所望のリガンドに結合するかに関しての従来の知識が完全に欠乏してはいるが、インビトロ選択プロセスの特有の性質のために所望のリガンドに結合する適切なアプタマーの単離が可能である。
【0134】
アプタマーおよび結合するリガンドの結合定数は、好ましくは、リガンドがアプタマーに結合するように機能し、リガンドの投与の際に得られたリガンドの濃度で所望の効果を有するものである。インビボでの使用について、例えば、結合定数は、血清またはその他の組織中で達成され得るリガンドの濃度未満で結合が良好に生じるものであるべきである。好ましくは、インビボでの使用に必要なリガンドの濃度はまた、生物上で望ましくない効果を有し得るものよりも低い。
【0135】
本発明はまた、HTRA1ポリペプチドに特異的に結合してHTRA1ポリペプチドの活性を阻害する小分子および抗体を提供する。別の態様において、HTRA1ポリペプチドに特異的に結合する小分子および抗体は、産生細胞からのHTRA1ポリペプチドの分泌を阻害する(抗体結合および小胞の架橋による立体阻害の議論について、Poage R, J Neurophysiol, 82:50-59 (1999)を参照)。小分子の例としては、限定されないが、薬物、代謝産物、中間体、補因子、遷移状態アナログ、イオン、金属、毒素ならびに天然および合成ポリマー(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖、糖タンパク、ホルモン、受容体ならびに細胞壁および細胞膜などの細胞表面物質)が挙げられる。HTRA1活性のインヒビター、NVP-LBG976は、Novartis、Baselから入手可能である(Grau S, PNAS, (2005) 102: 6021-6026も参照)。
【0136】
抗体
本発明の別の局面は抗体に関する。一態様において、HTRA1ポリペプチドと特異的に反応する抗体がHTRA1ポリペプチドの存在を検出するためまたはHTRA1ポリペプチドの活性を阻害するために使用され得る。例えば、HTRA1ペプチド由来の免疫原の使用によって、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体が標準プロトコールによって作製され得る(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, HarlowおよびLane編(Cold Spring Harbor Press: 1988)を参照)。マウス、ハムスターまたはウサギなどの哺乳動物が、HTRA1ペプチド、抗体応答を誘発し得る抗原断片または融合タンパク質の免疫原形態で免疫され得る。特定の態様において、接種されたマウスは内因性HTRA1を発現しないので、さもなければ抗自己抗体として排除される抗体の単離が容易になる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与する技術としては、担体へのコンジュゲーションまたは当該技術分野で周知の他の技術が挙げられる。HTRA1ペプチドの免疫原性部分は補助剤の存在で投与され得る。免疫化の進行は血漿または血清における抗体価の検出によってモニターされ得る。標準ELISAまたは他の免疫アッセイが抗原としての免疫原と共に使用され、抗体のレベルを評価し得る。
【0137】
HTRA1ポリペプチドの抗原性調製物で動物を免疫した後に、抗血清が得られ得、所望される場合、ポリクローナル抗体が血清から単離され得る。モノクローナル抗体を作製するために、抗体産生細胞(リンパ球)が免疫化動物から回収され得、標準体細胞融合手順によって骨髄細胞などの不死化細胞と融合され得、ハイブリドーマ細胞を生じ得る。かかる技術は当該技術分野で周知であり、例えば、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilsteinが最初に開発した、(1975) Nature, 256: 495-497)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら, (1983) Immunology Today, 4: 72)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら, (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. pp. 77-96)が挙げられる。ハイブリドーマ細胞はHTRA1ポリペプチドと特異的に反応する抗体の生成について免疫化学的にスクリーニングされ得、モノクローナル抗体がかかるハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離され得る。
【0138】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、HTRA1ポリペプチドと特異的に反応するその断片を含むことを意図する。抗体は従来の技術を用いて断片化され得、断片は抗体全体の上記と同じ方法で有用性についてスクリーニングされ得る。例えば、F(ab)2断片は抗体をペプシンで処理して作製され得る。Fab断片を作製するために、得られたF(ab)2断片はジスルフィド架橋を還元するように処理され得る。本発明の抗体は二特異的、単鎖、ならびに抗体の少なくとも1つのCDR領域が付与されたHTRA1ポリペプチドに対する親和性を有するキメラおよびヒト化分子を含むことがさらに意図される。好ましい態様において、抗体は、抗体に結合され、かつ検出され得る標識をさらに含む(例えば、標識は放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子であり得る)。
【0139】
特定の態様において、本発明の抗体はモノクロ−ナル抗体であり、特定の態様において、本発明はHTRA1ポリペプチドに特異的に結合する新規抗体を作製する方法を利用可能にする。例えば、HTRA1ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を作製する方法は検出可能な免疫応答を刺激するほど有効な量のHTRA1ポリペプチドを含む免疫原組成物をマウスに投与する工程、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓由来細胞)を得る工程および抗体産生細胞と骨髄細胞とを融合して抗体産生ハイブリドーマを得る工程、ならびにHTRA1ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するために抗体産生ハイブリドーマを試験する工程を含み得る。ハイブリドーマを得たら、ハイブリドーマは、任意にハイブリドーマ由来細胞がHTRA1ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件において、細胞培養で増殖され得る。モノクローナル抗体は細胞培養物から精製され得る。
【0140】
HTRA1に反応する抗体は市販されており(例えば、Imgenex製)、また、例えば、PCT国際特許出願第WO 00/08134号に記載されている。
【0141】
抗体を参照して使用される用語「特異的に反応する」は、当該技術分野で一般的に理解されるように、抗体が目的の抗原(例えば、HTRA1ポリペプチド)と目的でない他の抗原との間で十分に選択的であること、抗体が最少で特定の種類の生物学的試料中の目的の抗原の存在を検出するために有用であることを意味することを意図する。治療用途などの抗体を使用する特定の方法において、高い程度の結合の特異性が望ましくあり得る。モノクローナル抗体は一般的に所望の抗原と交差反応性ポリペプチドを有効に区別する高い傾向(ポリクローナル抗体と比較して)を有する。抗体-抗原相互作用の特異性に影響を及ぼす1つの特徴は、抗原に対する抗体の親和性である。望ましい特異性は種々の範囲の親和性で到達され得るが、一般的に好ましい抗体は約10-6、10-7、10-8、10-9以下の親和性(解離定数)を有する。
【0142】
また、望ましい抗体を同定するために抗体のスクリーニングに使用される技術は得られた抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体が溶液中の抗原の結合に使用される場合、溶液の結合を試験することが望ましくあり得る。特に望ましい抗体を同定するために、抗体と抗原の相互作用の試験には種々の技術が利用可能である。かかる技術としてはELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、BIAcore結合アッセイ、BIAcore AB, Uppsala, Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International, Inc., Gaithersburg, Marylandの常磁性ビーズ系)、ウエスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学が挙げられる。
【0143】
特定の態様において、本発明はまた、本明細書に記載され、HTRA1およびそのバリアントに特異的なアンチセンスポリヌクレオチド、RNAi構築物、アプタマー、低分子、または抗体戦略がこれら前記戦略のいずれかまたは全てと組み合され得る治療様式、具体的にHTRA1と組み合わせたSRF、AP2αまたはCFHについて設計され得る治療様式を提供する。RNAi構築物、抗体および低分子が入手可能であり、例えばSRF(Invitrogen)およびAP2α(OriGene Technologies)のRNAi構築物および米国特許第20040109848号に記載されるオリゴヌクレオチドが入手可能である。SRFおよびAP2αに対する抗体がAbcamから入手可能である。SRFのための利用可能なインヒビターは例えば、(Taylor A, Mol. Cell. Biochem. 169:61-72 (1997))に記載されるディスタマイシンA(distamycin A)である。CFHに対する抗体はUSBiologicalsから入手可能であり、siRNA構築物はOriGeneおよびSigmaから入手可能である。
【0144】
6.医薬組成物
AMDを患う被験体を治療するための本明細書に記載される方法および組成物が、AMDを発症するリスクがあると診断または予測された個体の予防治療に使用され得る。この場合において、AMDまたは相関症状の発症を遅延する、遅くするまたは妨げるほど十分な量および用量で組成物が投与される。あるいは、本明細書に記載される方法および組成物が、AMDを患う個体の治療処置に使用され得る。この場合において、組成物が、全体的にまたは部分的に状態の進行を遅延するまたは遅らせるほど十分な量および用量あるいは障害の排除点まで状態を逆転するほど十分な量および用量で投与される。AMDを発症するリスクがあると診断または予測された被験体を治療するための組成物の有効量は、被験体を治療するまたは障害自体を治療するほど十分な量の用量または量であることが理解される。
【0145】
特定の態様において、本発明の化合物が薬学的に許容され得る担体と共に製剤化される。例えば、SRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチドまたはSRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチドもしくは例えば、ドミナントネガティブバリアントのようなそのバリアントをコードする核酸分子が単独でまたは医薬製剤(治療組成物)の成分として投与され得る。また、SRF、AP2αまたはHTRA1ポリペプチドは、CFHポリペプチドまたはCFHポリペプチド、もしくはそのバリアントをコードする核酸分子と組み合わせて投与され得る。主題の化合物がヒト医薬で使用される任意の都合の良い方法における投与のために製剤化され得る。
【0146】
特定の態様において、本発明の治療方法は局所的、全身的または局在的に組成物を投与する工程を含む。特定の態様において、組成物がAMDに罹患している眼またはAMDに罹患するリスクがある眼に局在投与される。例えば、本発明の治療組成物は例えば、注射(例えば、静脈内、皮下もしくは筋肉内)、吸入または通気(口もしくは鼻のいずれかを介して)または経口、口腔、舌下、経皮、鼻、または非経口投与による投与のために製剤化され得る。別の特定の態様において、例えば、治療組成物の標的注射による局所投与は、網膜色素上皮(RPE)とブルーフ膜との間の領域などのAMDに罹患した眼の領域にさらに限定され得る。本明細書に記載される組成物は移植またはデバイスの一部として製剤化され得る。投与される場合、本発明の使用のための治療組成物は発熱原非含有生理学的に許容され得る形態である。さらに、組成物は、眼の細胞などの標的細胞が存在する部位への送達のために、粘性形態でカプセル化または注射され得る。技術および製剤は一般的にRemington's Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, PAに見ることができる。SRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチドまたはSRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチド、もしくはそのバリアントをコードする核酸分子に加えて、治療に有用な薬剤が上記組成物のいずれかに任意に含まれ得る。さらに、代替的または追加的に、治療に有用な薬剤が、本発明の方法に従ってSRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチドまたはSRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチド、もしくはそのバリアントをコードする核酸分子と同時にまたは連続的に投与され得る。また、CFHポリペプチドまたはCFHポリペプチドもしくはそのバリアントをコードする核酸分子を含む混合物が企図される。
【0147】
特定の態様において、本発明の組成物が、例えば、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(風味基剤、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントを使用する)、粉末、顆粒の形態で、または水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水液体エマルションとして、またはエリキシルもしくはシロップとして、またはパスティール(不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアラビアゴムを使用する)としておよび/または洗口剤等として経口投与され得、それぞれは活性成分として所定の量の薬剤を含む。薬剤はまた、ボーラス、練り薬またはペーストとして投与され得る。
【0148】
経口投与の固体投与形態(カプセル、錠剤、丸薬、ドラジェ、粉末、顆粒等)において、本発明の1つ以上の治療化合物が、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つ以上の薬学的に許容され得る担体、および/または以下の:(1)充填剤または増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴムなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天-寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸および炭酸ナトリウム;(5)溶液保持剤、例えば、パラフィン;(6)吸着促進剤、例えば、4級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど;(8)吸着剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土;(9)潤沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物;ならびに(10)着色剤のいずれかと混合され得る。また、カプセル、錠剤および丸薬の場合において、医薬組成物は緩衝剤を含み得る。同様の種類の固体組成物がまた、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコ−ル等のような賦形剤を用いた軟化および硬化充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用され得る。
【0149】
経口投与の液体投与形態としては薬学的に許容され得るエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性成分の他に、液体投与形態は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよび脂肪酸エステルのソルビタンおよびそれらの混合物を含み得る。不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、補助剤、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、風味剤、着色剤、香料および保存剤を含み得る。
【0150】
懸濁液は、活性化合物の他に、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天-寒天およびトラガカントならびにそれらの混合物を含み得る。
【0151】
本明細書に開示される特定の組成物は皮膚または粘膜のいずれかに局所投与され得る。局所製剤は皮膚または角質層浸透促進剤として有効であることが公知の1つ以上の広く多様な薬剤をさらに含み得る。これらの例は2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシドおよびアゾンである。さらなる薬剤は製剤が化粧的に許容され得るようにするためにさらに含まれ得る。これらの例は脂肪、ワックス、油、色素、香水、保存剤、安定剤および表面活性剤である。当該技術分野で公知のものなどのケラチン分解剤がまた、含まれ得る。例はサリチル酸および硫黄である。
【0152】
局所または経皮投与の投与形態としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、貼付剤および吸入物が挙げられる。活性化合物は無菌条件下で薬学的に許容され得る担体および必要とされ得る任意の保存剤、バッファまたはプロペラントと混合され得る。軟膏、ペースト、クリームおよびゲルが、本発明の主題の化合物(例えば、SRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチドをコードする単離もしくは組み換え生成核酸分子または単離もしくは組換え生成SRF、AP2、HTRA1ポリペプチドもしくはドミナントネガティブバリアント等のそのバリアント)の他に、賦形剤、例えば、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび亜鉛酸化物またはそれらの混合物を含み得る。
【0153】
粉末およびスプレーは、主題の化合物に加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物を含み得る。スプレーは通例のプロペラント、例えば、クロロフルオロ炭化水素ならびに揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタンおよびプロパンをさらに含み得る。
【0154】
投薬養生法は個体について例えば、本発明の主題の化合物(例えば、SRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチドをコードする単離もしくは組み換え生成核酸分子または単離もしくは組換え生成SRF、AP2、HTRA1ポリペプチド、もしくはドミナントネガティブバリアントのようなそのバリアント)の作用を改変する様々な要因、AMDの重篤度または段階、投与経路、ならびに年齢、体重および体格などの個体に特有の特徴を考慮して決定されることが理解される。当業者は被験体を治療するために必要な用量を決定することができる。一態様において、用量は約1.0ng/被験体体重kg〜約100mg/被験体体重kgの範囲であり得る。組成物に基づいて、用量が連続的にまたは一定間隔で送達され得る。例えば、1回以上の別々の場合で送達され得る。特定の組成物の複数投与の所望される時間間隔は、当業者が過度の実験をせずに決定され得る。例えば、化合物は時間毎、日毎、週毎、月毎、年毎(例えば、徐放性形態で)または一回の送達として送達され得る。
【0155】
特定の態様において、非経口投与に適切な医薬組成物は、抗酸化剤、バッファ、細菌静止剤、意図されるレシピエントの血液で製剤を等張にする溶質または懸濁剤または増量剤を含み得る1つ以上の薬学的に許容され得る滅菌等張水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液、またはエマルション、または使用直前に滅菌注射用溶液または分散液に再構成され得る滅菌粉末と組み合わせたSRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチドまたはSRF、AP2αもしくはHTRA1ポリペプチド、もしくはドミナントネガティブバリアントなどのそのバリアントをコードする核酸分子を含み得る。本発明の医薬組成物に使用され得る適切な水性担体および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびその適切な混合物、植物性油、例えばオリーブ油、ならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング物質の使用、分散液の場合に必要な粒子径の維持、および表面活性剤の使用によって維持され得る。
【0156】
また、本発明の組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含み得る。微生物の活動の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどの様々な抗細菌剤および抗真菌剤の含入によって確実にされ得る。また、例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張性薬剤を組成物に含むことが望ましくあり得る。また、注射用医薬形態の吸収の延長はモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延する薬剤の含入によってもたらされ得る。
【0157】
特定の態様において、本発明はまた、HTRA1ポリペプチド、またはドミナントネガティブバリアント等のそのバリアントのインビボ生成の遺伝子治療を提供する。かかる治療は制御不全のHTRA1遺伝子発現を示す細胞または組織にHTRA1ポリヌクレオチド配列を導入してその治療効果を達成する。HTRA1ポリヌクレオチド配列の送達はキメラウイルスのような組換え発現ベクターまたはコロイダル分散系を用いて達成され得る。また、標的とされたリポソームはHTRA1ポリヌクレオチド配列の治療送達に使用され得る。また、遺伝子治療はSRFまたはAP2αポリペプチド、もしくはドミナントネガティブバリアントのようなそのバリアントのインビボ生成を提供するために使用され得る。かかる治療はSRFまたはAP2αポリヌクレオチド配列を制御不全のHTRA1遺伝子発現を示す細胞または組織に導入することによってその治療効果を達成する。特定の態様において、本発明は、HTRA1、SRF、またはAP2αを提供する治療と共に、正常CFH機能を欠損する細胞にCFHポリペプチドをさらに提供する組み合わせ遺伝子治療を提供する。
【0158】
本明細書に教示される遺伝子治療に利用され得る様々なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、へルペスウイルス、ワクシニア、またはレトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げられる。レトロウイルスベクターはマウスまたは鳥類レトロウイルスの派生物であり得る。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例としては、限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられる。多くのさらなるレトロウイルスベクターは複数の遺伝子を組み込み得る。全てのこれらのベクターは、形質転換した細胞が同定および作製され得るように、選択可能なマーカーの遺伝子を移送または組み込み得る。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質と結合することによって標的特異的になり得る。好ましいターゲッティングは抗体を用いることによって達成される。当業者は、HTRA、SRF、AP2α、またはCFHポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にするために特異的なポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノムに挿入され得るかまたはウイルスエンベロープに結合され得ることを理解する。好ましい一態様において、ベクターは眼の細胞または組織を標的とする。
【0159】
あるいは、組織培養細胞は、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって、レトロウイルス構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドで直接トランスフェクトされ得る。これらの細胞は次に、目的の遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトされる。得られた細胞は培養培地にレトロウイルスベクターを放出する。
【0160】
HTRA、SRF、AP2αまたはCFHポリヌクレオチドのための別の標的送達系はコロイダル分散系である。コロイダル分散系としては、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフィア、ビーズならびに水中油エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベース系が挙げられる。本発明の好ましいコロイダル系はリポソームである。リポソームはインビトロおよびインビボ送達ビヒクルとして有用な人工膜小胞である。RNA、DNAおよび完全なビリオンが水性内部内にカプセル化され得、生物学的に活性な形態で細胞に送達され得る(例えば、Fraley, et al., Trends Biochem. Sci., 6:77, 1981参照)。リポソームビヒクルを用いた効率的な遺伝子移行の方法は当該技術分野で公知であり、例えば、Mannino, et al., Biotechniques, 6:682, 1988を参照。リポソームの組成は通常、ステロイド、特にコレステロールと組み合わせた、リン脂質の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質がまた、使用され得る。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0161】
リポソーム作製に有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシド等のホスファチジル化合物が挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。リポソームのターゲッティングはまた、例えば、器官特異性、細胞特異性および細胞小器官特異性に基づいて可能であり、当該技術分野で公知である。
【0162】
さらに、医薬調製物は本質的に許容され得る希釈剤中の遺伝子送達系からなり得るか、または遺伝子送達ビヒクルが包埋される徐放マトリックスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達系が組み換え細胞、例えばレトロウイルスパッケージからインタクトなままで作製され得る場合に、医薬調製物は遺伝子送達系を作製し得る1つ以上の細胞を含み得る。後者の場合、ウイルスパッケージ細胞の導入方法は例えば、再充填可能または生物分解デバイスによって提供され得る。様々な徐放ポリマーデバイスが、タンパク質性生物医薬等の薬物の制御送達について近年インビボで開発および試験されており、ポリマー組成物および形態の操作によってウイルス粒子の放出に適合され得る。生物分解性および非分解性ポリマーの両方等の様々な生物適合性ポリマー(ハイドロゲルなど)は、特定の標的部位に移植される細胞によるウイルス粒子の持続放出用移植片を形成するために使用され得る。本発明のかかる態様は、ポリマーデバイスに組み込まれた精製外因性ウイルスの送達に使用され得るか、またはポリマーデバイス中のカプセル化された細胞によって生成されるウイルス粒子の送達に使用され得る。
【0163】
当業者は被験体を治療するために必要な量を決定することができる。投薬養生法は、個体について、例えば、本発明の主題の化合物の作用を変更する種々の要素、AMDの重症度または段階、投与経路、ならびに年齢、体重および体格などの個体に特有の特徴を考慮して決定されることが理解される。当業者は、被験体を治療するために必要な投与量を決定し得る。一態様において、投与量は、約1.0ng/被験体体重kg〜約100mg/被験体体重kgの範囲であり得る。用量は、連続的または一定間隔で送達され得る。例えば、1回以上の独立した場合で送達される。特定の組成物の複数投与の所望の時間間隔は、当業者により、過度の実験なしに決定され得る。例えば、化合物は、時間毎、日毎、週間毎、月毎、年毎(例えば、徐放形態で)または1回の送達として送達され得る。本明細書で使用されるように、用語「被験体」は、AMDに罹患し得る任意の個体の動物を意味する。被験体としては、限定されないが、ヒト、霊長類、ウマ、トリ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、フェレットおよびウサギが挙げられる。好ましい態様において、被験体はヒトである。
【0164】
本明細書に記載の方法に使用される試料は、目、耳、鼻、歯、舌、表皮、上皮、血液、涙、唾液、粘液、尿路、尿、筋肉、軟骨、皮膚、または任意の他の組織由来の細胞、または充分なDNAもしくはRNAが得られ得る体液を含み得る。
【0165】
試料は、存在するDNAまたはRNAが本明細書に記載される方法のアッセイに利用可能になるように十分に処理されるべきである。例えば、試料は、試料由来のDNAが増幅、または別のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションに利用可能であるように処理され得る。処理される試料は利用可能なDNAまたはRNAが他の細胞物質から精製されない粗溶解物であり得る。あるいは、試料は天然供給源に存在する1つ以上の侠雑物から利用可能なDNAまたはRNAを単離するために処理され得る。試料は、DNAまたはRNAが本明細書に記載される方法のアッセイに利用可能になる当該技術分野で公知の任意の手段によって処理され得る。試料の処理方法としては、限定されず、細胞および細胞溶解物を溶解および/または精製する機械、化学、または分子手段が挙げられ得る。処理方法としては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を用いるイムノ親和性精製が挙げられ得る。
【0166】
8.キット
また、治療目的のためのキットまたは個体由来の試料中のバリアントHTRA1遺伝子の検出のためのキットなどのキットが本明細書に提供される。一態様において、キットはヒトのAMDの発症と相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブの予め計量された用量を配置した少なくとも1つの容器を含む。別の態様において、キットは、ヒトのAMDの発症と相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの一方に隣接する領域にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプライマーの予め計量された用量を配置した少なくとも1つの容器を含む。さらなる態様において、ヒトのAMDの発症と相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションの他方にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする第二ポリヌクレオチドプライマーが予め計量された用量で提供される。キットは、試料中のHTRA1の検出における治療もしくは診断キットの使用のための標識および/または使用説明書をさらに含む。キットはまた、限定されないが、氷、ドライアイス、発泡スチレン、フォーム、プラスチック、セロファン、収縮フィルム、発泡ビニルシート、紙、厚紙、デンプンピーナッツ、ビニールタイ、金属クリップ、金属缶、ドライアライト(drierite)、ガラスおよびゴムなどのパッケージング材料を含み得る(パッケージング材料の例として、www.papermart.com.から入手可能な製品を参照のこと)。さらに別の態様において、ヒトのAMDの発症と相関するHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブが、ヒトのAMDの発症と相関するCFH遺伝子のバリエーションにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする第二ポリヌクレオチドプローブと合わせられる。
【0167】
本発明の方法の実施には、特に記載のない限り、当該技術分野の技術の範囲である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来の技術が使用される。かかる技術は、文献において充分説明されている。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory (2001);DNA Cloning,第I巻およびII巻(D. N. Glover編,1985);Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait編,1984);Mullis et al. 米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B. D. Hames & S. J. Higgins編 1984);Transcription and Translation(B. D. Hames & S. J. Higgins編 1984);Culture of Animal Cells(R. I. Freshney,Alan R. Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B. Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);学術論文Methods In Enzymology (Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. MillerおよびM. P. Calos編,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,第154巻および第155巻(Wuら編),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (MayerおよびWalker編,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,第I巻〜第IV巻(D. M. WeirおよびC. C. Blackwell編,1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N. Y.,1986)を参照のこと。
【実施例】
【0168】
実施例
以下の実施例は例示の目的のためであり、いかなる方法にも限定されることを意図しない。
【0169】
以下の方法および物質は本明細書に記載される研究、特に実施例1および2に使用された。
【0170】
研究参加者
以前に(L. Baumら, Ophthalmologica 217, 111 (2003), C. P. Pangら, Ophthalmologica 214, 289 (2000))および新たに補充された参加者の両方を本研究で使用した。全ての補充は(C. P. Pangら, Ophthalmologica 214, 289 (200O))に記載される基準に従って行われた。手短に言うと、全ての参加者は標準検査プロトコールおよび視力測定を受けた。眼底の細隙灯生体顕微鏡検査を経験のある眼科医が行い、立体視的色眼底写真を訓練された眼科写真家が撮った。等級は国際加齢黄斑症疫学研究グループによって提案された標準分類を用いて行なわれた。対照は老化白内障を除いてAMDまたは任意の他の主要な眼疾患の症候を示さなかった。病歴をとる際に、参加者は喫煙習慣について尋ねられ、その情報を記録した。喫煙者は一年より多く毎日少なくとも5本を吸う人として定義された。喫煙者は3つの群:非喫煙者、喫煙者だった者、現在の喫煙者に分けられた。
【0171】
発明者に利用可能な117症例のうち、発明者はAMDの「湿性」症例だけを選択するためにAMD段階3または4(n=18)である者としていずれかに分類される者を排除した。症例と対照との間の年齢分布をより密接に適合するために、発明者は>90歳の症例(n=2)を排除した。元々の対照集団(n=153)は症例より有意に若かったために、発明者は<65歳の症例(n=22)を排除した。最終群の96症例と130対照の特徴を表1に示す。
【0172】

【0173】
遺伝子型同定
発明者はAffymetrix GeneChip Mapping 1OOK Setのマイクロアレイを用いて各個体を遺伝子型同定した。SNP遺伝子型同定アッセイはそれぞれ58,960および57,244SNPを有する2つのチップ(XbaIおよびHindIII)からなった。およそ250ngのゲノムDNAをAffymetrixプロトコール(H. Matsuzakiら, Nat Methods 1, 109 (2004))に従って各チップについて処理した。
【0174】
発明者は>90%の呼び出し率を達成する個体のチップだけを解析に使用可能であると見なした。286の個体をHindIIIで、266の個体をHindIIIおよびXbaIで遺伝子型同定した。
【0175】
個体の常染色体SNPデータクオリティを、呼び出し率を検査することによって評価した。<85%の呼び出し率を有するSNPを解析から排除した。可能な遺伝子型同定エラーを有するSNPをさらに排除するために、発明者は観察されたいずれかのヘテロ接合体がないヘテロ接合体SNPおよびヘテロ接合体だけを有するSNPを排除した。有益でないSNPを排除するために、発明者は非ヘテロ接合体SNPを排除した。最終的に、ハーディウエインベルグ平衡(HWE)の偏差を評価し、発明者はHWEχ2>50を有するSNPを排除した。これらの排除によって、主に<85%の低い呼び出し率のために、97,824常染色体SNPが解析のために残った。これらのデータを表2にまとめる。
【0176】

【0177】
統計的解析
最初の解析は全ての症例および対照の各SNPについて2x2の対立遺伝子数表および2x3の遺伝子型数表を構築することによって行われた。次に、ピアソンχ2統計を計算し、それぞれ対立遺伝子試験および遺伝子型試験について、χ2分布に対するχ2統計と1または2dfとを比較することによってP値をコンピューター解析した。5.1x10-7より小さいP値(0.05[0.05/97,824]のボンフェローニ制御有意さ)を生じるSNPをさらなる解析のために選択した。
【0178】
試料中の混合の存在を試験する2つの異なる方法Genomic Control (GC)およびGenomic Control, F試験(GCF) H. Okamotoら, Mol Vis 12, 156 (2006)を使用した。最初の方法GCは、研究において多くの未相関SNP(ヌルSNP)のχ2値の中位数を使用する。Genomic Control試験の目的のために、全ての有意でないSNPをヌルSNPと見なした。次に、有意さを試験するために、χ2値を中位数で割って、χ2分布と比較した。第二の方法GCFは中位の代わりにヌルχ2値の平均を使用する。個々のχ2値を再度平均で割って、得られた統計をLの自由度が1のF分布と比較する(Lは平均を計算するために使用されるヌルSNP数である)。
【0179】
オッズ比、集団寄与リスク、およびそのそれぞれの信頼区間を標準式P. Armitage, G. Berry, Statistical Methods in Medical Research (Balckwell Scientific Publications, 1971)を用いて計算した。症例/対照試料(55%)のrs 10490924でのリスク対立遺伝子の比較的高頻度のために、相当する寄与リスクは過剰推定され、そのため集団の良好なリスクの推定を提供しない。
【0180】
rs10490924周辺の目的の領域を同定するために、発明者は、4つの配偶子が観察された全てのSNP対によって拘束される領域を調べ、R. R. Hudson, N. L. Kaplan, Genetics 111, 147 (1985)、その後に「4-配偶子領域」と称した。発明者は、SNPHAP D. Clayton. http://www-gene.cimr.cam.ac.uk/clayton/softwareおよびPHASE M. Stephens, N. J. Smith, P. Donnelly, Am J Hum Genet 68, 978 (2001)アルゴリズムを用いて、4-配偶子領域の7つの内部SNPについてハプロタイプを構築して連鎖不均衡(LD)のパターンを調べた。両方のアルゴリズムは同様の頻度における同じハプロタイプを生じた。ハプロタイプを再構築すると、LDの標準基準であるD’を、HaploxtプログラムG. R. Abecasis, W. O. Cookson, Bioinformatics 16, 182 (2000)を用いて計算した。合わされた症例/対照試料のLDパターンを次にGOLD(R. Kleinら, Ophrhalmology 113, 373 (2006))を用いて視覚化した。合わされた症例および対照群ならびに各別々の群のハプロタイプ推定頻度を表3に示す。
【0181】

【0182】
それぞれの個体の最もあり得るハプロタイプ対をPHASEから得て、次に表4に示すハプロタイプ数を決定するために使用した。
【0183】


【0184】
これらのハプロタイプ数を使用して、分割表を作成し、表5に示されるリスクハプロタイプの影響の大きさを推定した。
【0185】

【0186】
この領域のLDパターンを調査するために、発明者は45人の血縁でない北京の漢民族個体(CHB)の情報を含む公共に利用可能なHapMapデータベースを使用した。4-配偶子領域に拘束される183SNPの遺伝子型をHapMapデータベースから抽出した。LD統計を計算するために、遺伝子型をHaploview(J. C. Barrett, B. Fry, J. Maller, M. J. Daly, Bioinformatics 21, 263 (2005))にアップロードした。この領域内の183のHapMap SNPの全てが、デフォルトクオリティ対照検査で遺伝子型同定または通過したわけではない(ハーディ-ウエインベルグP値>0.01、遺伝子型同定試料の最小パーセンテージ>75%、最大で1のメンデル不一致および0.001の最小対立遺伝子頻度)。ハプロタイプブロックを、Gabrielら(S. B. Gabrielら, Science 296, 2225 (2002))に示されたパラメーターを用いて同定し、即ち、D'周辺の95%信頼区間を使用してブロックを決定した。
【0187】
マーカーSNP rs10490924を取り囲む4配偶子試験によって明らかにされた推定組み換え部位の中で(R. J. Kleinら, Science 308, 385 (2005))、9つのSNP(63.9 kbに及ぶ)から推定された5つの主要ハプロタイプN1〜N5が同定され、試料中の全ハプロタイプの>90%を占めた。2つのコピーのリスクハプロタイプN1のオッズ比(OR)は10.40であり、その95%信頼区間(CI)は、単一SNP rs1O49O924のものと重複し、4.68〜23.14対4.83〜25.69である(表 5)。9つのSNPの各対についてLDを測定し、プロットした。SNP rs10490924は、PLEKHA1の上流SNPについてLDであるように思われるが、次の遺伝子型同定されたSNPは、非常に遠くの下流(26.3 kb)にあり、組み換え/ホモプラシー切断点についての意義のある情報を提供する。国際HapMapデータ(D. Altshulerら, Nature 437, 1299 (2005))によって提供された北京の漢民族(CHB)集団の公共に利用可能なHapMapデータベースからの非常に密なセットのSNPは、この問題を解決せず、rs10490924がこの集団のこの領域のいずれかの遺伝子についてLDでなく、発明者が疾患を生じるバリアントを明らかにできなかったことを示した。
【0188】
新しいSNPの同定
発明者はrs10490924に隣接する2つの遺伝子PLEKHA1およびHTRA1のエクソン、および5'上流配列の一部を再び配列決定し、任意の潜在的プロモーターバリアントを補捉した。発明者は、rs10490924リスク対立遺伝子(TT)のホモ接合体症例および非リスク対立遺伝子(GG)のホモ接合体対照由来のDNA試料を配列決定した。88試料、50症例および38対照は、すぐに配列決定に利用可能であった。全ての配列決定工程(プライマー設計、PCR増幅、二方向配列決定およびバリエーション解析)は、Genaissance Pharmaceuticals(New Haven, CT)によって行われた。
【0189】
発明者はこの領域で配列決定された22断片の中に43多形を同定した(表6)。
【0190】




【0191】
各断片の配列決定に使用されるプライマー対(M13尾部を除く)を表7に示す。
【0192】



【0193】
さらなる遺伝子型同定
rs11200638の同定に続いて、270症例および対照試料全てをカスタムTaqMan SNP遺伝子型同定アッセイ(Applied Biosystems)を用いてrs11200638について遺伝子型同定した。97症例および126対照について遺伝子型を得た。
【0194】
マウスリアルタイムPCR
網膜全体を、出生後1日齢、7日齢、1ヶ月齢、3ヶ月齢、6ヶ月齢、9ヶ月齢、および16ヶ月齢のC57/Black6マウスおよび3ヶ月齢Rd1マウスから単離した。全RNAを、TRIzol(Invitrogen)で抽出した。全RNA(2ug)を、SuperTranscriptキット(Invitrogen)を用いてcDNAに逆転写した。
【0195】
237bpの長さを有するHTRA1のプライマー対は、5'-TGGGATCCGAATGATGTCGCT(フォワード)(配列番号47)および5'-ACAACCATGTTCAGGGTG(リバース)(配列番号48)であった。アニーリング温度は58℃であった。Syber Green試薬(Bio-Rad)を、PCR産物標識に使用し、iCycler(Bio-Rad)を、PCR実施およびデータ回収に使用した。半定量的PCRを、2.5μlの10x High Fidelity PCRバッファ(Invitrogen)、1.5μlのMgSO4(5OmM, Invitrogen)、0.4μlのdNTP(25mM, Invitrogen)、0.2μlのTaq DNAポリメラーゼHigh Fidelity (Invitrogen)、0.2μlのプライマー(0.1mM)、および0.2μlのcDNAを含む全反応容積25μlで行った。
【0196】
HTRA1プロモーターのコンピューター解析
ヒトおよびマウスHTRA1遺伝子のプロモーター配列を、UCSCゲノムバイオインフォマティックスウェブサイト(www.genome.ucsc.edu)から入手した。可能性のある転写因子(TF)結合部位を、TRANSFACデータベース(www.gene-regulation.com/pub/databases.html)から抽出されたポジショナル計りマトリックスを用いて各プロモーター配列の-2,000〜+100bp領域で調べた。ヒトおよびマウスプロモーター間での配列保存のフットプリントを、Wise 2.0ソフトウェアパッケージのDnaBlockAlignerプログラム(www.ebi.ac.uk/Wise2/)を用いて作成した。マウスプロモーター配列内に、-407をヒトの-512 G->A SNP部位として同定した。SNPを包含し、かつヒトおよびマウス保存プロモーター領域に位置するTF結合部位だけを、適切であるとみなした。コンピューター解析の結果を図3に示す。
【0197】
クロマチン免疫沈降(ChIP)1x108 HeLaS3 細胞をホルムアルデヒド(最終濃度1%)で10分間処理し、タンパク質をそのDNA結合標的に架橋させ、最終濃度125mMのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中グリシンでクエンチした。細胞を、冷1x PBSで2回洗浄した。核抽出物を、低張性バッファ(20mM Hepes、pH 7.9、10mM KCl、1mM EDTA、pH8、10% グリセロール、1mM DTT、0.5mM PMSF、0.1mMナトリウムオルトバナデート、およびプロテアーゼインヒビター)中の細胞を15分間氷上で膨張させ、続いてダウンス(dounce)ホモゼナイゼーション(30ストローク)を行って調製した。核を短く遠心分離してペレット化し、繰り返しボルテックスしながら氷上で30分間放射線免疫沈降(RIPA)バッファ(10 mM Tris-Cl、pH 8.0、140mM NaCl、0.025% アジ化ナトリウム、1% Triton X-100、0.1% SDS、1% デオキシコール酸、0.5mM PMSF、1mM DTT、0.1mM ナトリウムオルトバナデートおよびプロテアーゼインヒビター)中に溶解した。抽出物を、Branson 250 Sonifierで超音波処理(出力20%、100%作業サイクル、5回30秒パルス)してDNAをせん断し、試料を4℃で15分間14,000rpmで遠心分離して清澄した。200μLの抽出物を対照入力DNA試料の精製のためにとって置いた。4℃一晩で穏やかに攪拌しながら、抗AP-2α(C-18)または抗SRF(H-300)抗体(Santa Cruz Biotechnology)を用いて超音波処理された抽出物からAP-2αまたはSRF-DNA複合体を免疫沈降した。対照クロマチンIP DNAを、正常ポリクローナルウサギIgG(Santa Cruz Biotechnology)を用いて調製した。各免疫沈降試料を、プロテインA-アガロース(Upstate Biotechnology)で4℃、1時間インキュベートし、次にRIPAバッファで3回洗浄し、1xPBSで1回洗浄した。抗体-タンパク質-DNA複合体を、1% SDS、1x TE(10mM Tris-Cl、pH7.6、1mM EDTA、pH8)を添加し、65℃で10分間インキュベートし、続いて1xTE中の0.67% SDSで2回溶出し、65℃でもう10分間インキュベートし、次に10分間穏やかにボルテックスしてビーズから溶出した。ビーズを、遠心分離で除去し、上清を、65℃で一晩インキュベートして架橋を逆にした。DNAおよび入力DNA試料を精製するために、RNaseAを添加し(1xTE中200μg/試料)、次に試料を37℃で2時間インキュベートし、続いて45℃で2時間プロテイナーゼK溶液(400μg/mlプロテイナーゼK)とインキュベートした。最後に、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール抽出を行い、DNAを、エタノール沈殿で回収した。手順のより詳細な記載は(S. E. Hartman ら, Genes Dev 19, 2953 (2005))に見ることができる。
【0198】
ChIP DNA試料の定量的PCR解析
正常ウサギIgG、AP-2α、およびSRF ChIP DNA試料を、特異的結合部位の豊富さを試験するために定量的PCRによって解析した。プライマーを、HTRA1遺伝子上流の候補標的領域に隣接するように設計した(-574〜-331;フォワード:5'-TCACTTCACTGTGGGTCTGG-3'(配列番号49);リバース:5'-GGGGAAAGTTCCTGCAAATC-3')(配列番号50)。また、プライマーを、ChIP PCR試験の陽性対照として機能するように公知のAP-2αおよびSRF-結合ヒトプロモーター領域に隣接するように設計した(S. Decaryら, Mol Cell Biol 22, 7877 (2002))。AP-2αについて、インシュリン様成長因子結合タンパク質5(IGFBP-5;-94〜+73;フォワード:5'-CTGAGTTGGGTGTTGGGAAG-3'(配列番号51);リバース:5'-AAAGGGAAAAAGCCCACACT-3')(配列番号52)およびE-カドヘリン(ECAD;-174〜-7; フォワード:5'-TAGAGGGTCACCGCGTCTATG-3'(配列番号53);リバース:5'-GGGTGCGTGGCTGCAGCCAGG-3')(配列番号 54)の上流領域を選択した(K. P. Magnussonら, PLoS Med 3, e5 (2006))。SRFの陽性対照は、Fos-相関抗原1(FRA-1;-238〜-91;フォワード:5'-GCGGAGCTCGCAGAAACGGAGG-3'(配列番号55);リバース:5'-GGCGCTAGCCCCCTGACGTAGCTGCCCAT-3')(配列番号56)(P.Adiseshaiah, S. Peddakama, Q. Zhang, D. V. Kalvakolanu, S. P. Reddy, Oncogene 24, 4193 (2005))および早期成長応答タンパク質(EGR-1;-196〜-30;フォワード:5'-CTAGGGTGCAGGATGGAGGT-3'(配列番号57);リバース:5'-GCCTCTATTTGAAGGGTCTGG-3')(配列番号58)(U. Philipparら, Mol Cell 16, 867 (2004))の上流であった。また、陰性対照ヒトプロモーター領域、B-リンパ球およびBAL-相関タンパク質(BBAP)が試験された(-151〜+59;フォワード 5'-CAGACAGCACAGGGAGGAG-3'(配列番号59);リバース 5'-ACTTGTACACCCGCACGAG-3')(配列番号60)。定量的PCR反応を、ABI Prism 7000配列検出システムおよびSYBR Greenマスターミックス(MJ Research)および5% DMSOを用いて行った。サイクル条件は以下:95℃5分間、95℃30秒間、52℃30秒間、72℃30秒間の40サイクル、72℃10分間の最終伸張期間、続いて60〜95℃の解離プロトコールの通りであった。ΔΔCtおよび倍変化値を参照PCR反応に対して計算した。
【0199】
レポーターアッセイ
HTRA1プロモーターの活性に対するSNP rs11200638の影響を、32回継代でトランスフェクトされたARPE19(不死化ヒト網膜色素上皮)細胞およびHeLaS3細胞上でのルシフェラーゼアッセイを用いて評価した。構築物を、表8のスキームに従って設計し、1つの構築物はrs11200638野生型対立遺伝子を含み、別の構築物はバリアント対立遺伝子を含み、3つ目は挿入を含まない。細胞を、高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10% ウシ胎児血清(FBS)+0.1%ゲンタマイシン中で増殖させた。トランスフェクションのために、培地をゲンタマイシンを含まない血清低減人工培地(Opti-MEM I)に交換した。HeLaS3細胞について80%コンフルエンスおよびARPE19細胞について50%コンフルエンスに達した場合に培養物をトランスフェクトした。トランスフェクションを、リポフェクトアミン 2000(2μl/ml; Invitrogen)、増強緑蛍光タンパク質(eGFP; 1.2μg/ml)および構築物(HeLaS3について0.7μg/ml、1.4μg/mlまたは2.1μg/mlおよびARPE19について1.4μg/ml)で行った。さらなる対照として、各細胞型をリポフェクトアミンだけ(対照)でトランスフェクトした。細胞を、8時間トランスフェクション試薬とインキュベートした。トランスフェクション試薬の除去後に、細胞を、さらに48時間成長させた後にルシフェラーゼアッセイを行った。150μlの溶解バッファを、各ウェルに添加した。1OOμlの得られた溶解物を黒色96ウェルプレートに負荷し、1OOμlのルシフェラーゼ基質(Bright-Glo; Promega)を各ウェルに添加した。データ回収(GFP蛍光強度およびルシフェラーゼ活性の両方)を、Packard Fusion96-ウェルプレートリーダー上で行った。独立した実験を、各構築物用量およびHeLaS3細胞用構築物型について3回、ならびにARPE19細胞用各構築物型について6回繰り返した。
【0200】

【0201】
実施例1
湿性新血管新生AMD表現型に個体が素因を有する(1つ以上の)新規遺伝的バリアントをアジア系の患者において同定するために、発明者は東南アジアの香港のコホート由来の湿性AMDと以前に診断された96患者およびAMDのない130の年齢適合対照個体を同定した(L. Baumら, Ophthalmologica 217, 111 (2003),. C. P. Pangら, Ophthalmologica 214, 289 (2000))。疫学的観察によって、新血管新生AMDが白色人種よりもアジア人でより罹病率が高いこと(A. C. Bird, Eye 17, 457 (2003), R. Kleinら, Ophthalmology 113, 373 (2006), T. S. Chang, D. Hay, P. Courtright, Can J Ophthalmol 34, 266 (1999))、および乾性AMDの特徴である明瞭な軟ドルーゼンがアジア個体でほとんど見られないこと(M. A. Sandberg, A. Weiner, S. Miller, A. R. Gaudio, Ophthalmology 105, 441 ( 1998), M. Uyamaら, Br J Ophthalmol 84, 1018 (2000), M. Yuzawa, K. Hagita, T. Egawa, H. Minato, M. Matsui, Jpn J Ophthalmol 35, 87 (1991))が示される。白色人種でしばしば生じるCFH Y402Hバリアント(>35%)は日本人および中国系の個体で頻度高く生じないことが示された(<5%)(N. Gotohら, Hum Genet 120, 139 (2006), H. Okamotoら, Mol Vis 12, 156 (2006),M. A. Grassiら, Hum Mutat 27, 921 (2006))。226の研究参加者のそれぞれの網膜眼底写真を調べた。インドシアニン緑色素(ICG)血管写真をとって、ポリープ状脈絡膜血管障害(PCV)を有する症例を排除し、CNV(AMD等級5)が全ての症例で存在することを証明した。AMD症例および対照は、平均74歳だった。研究集団の他の特徴を表1にまとめる。
【0202】
発明者は、以前に記載された遺伝子型同定およびデータクオリティサーベイランス手順(C. P. Pangら, Ophthalmologica 214, 289 (2000))を用いて一塩基多形(SNP)をスキャンするために、このアジアコホートに対して全ゲノム相関研究を行った。有益でありクオリティ対照検査を通過した97,824の常染色体SNPのうち、rs10490924は、ボンフェローニ基準を用いてAMDと有意な相関性を示した唯一の多形であった(表 9)。対立遺伝子頻度カイ二乗検定は4.1x10-12のP値を生じた(表9)。ORは、野生型ホモ接合体と比較した場合に2つのコピーのリスク対立遺伝子を保有するものについて11.1(95%信頼区間[CI]4.83〜25.69)であったが、単一のリスク対立遺伝子を有するものについて基準と区別できず1.7であった(95% CI 0.75〜3.68)。リスクホモ接合体は集団寄与リスク(PAR)の86%を占めるが、リスク対立遺伝子がAMDコホートの半分より多く(約55%)で保有されたのでこの数が人工的に吊り上げられ得る(表9)。見込み率試験を性別および喫煙状態について適合する場合またはゲノム対照法が集団層別化を制御するために適用される場合に、有意レベルの変化はほとんどなかった。
【0203】



【0204】
染色体10q26(図1)上の2つの遺伝子: pleckstrin相同ドメイン含有タンパク質(GenBank ID 59338)をコードするPLEKHA1およびPRSS11(GenBank ID 5654)としても公知の熱ショックセリンプロテアーゼをコードするHTRA1の間にSNP rs 10490924がある。rs10490924を含む遺伝子間領域の交差種の低い配列相同性によって、進化的に保存されていないことが示される(図1)。染色体10q26は、多くの独立した家族研究のAMDに連鎖され、この連鎖領域は以前にSNP rs10490924に狭められた(P. Armitage, G. Berry, Statistical Methods in Medical Research (Balckwell Scientific Publications, 1971))。SNP rs10490924は、仮説の座LOC387715のタンパク質コーディング変化を生じると元々考えられた(A. Riveraら, Hum Mol Genet 14, 3227 (2005), J. Jakobsdottirら, Am J Hum Genet 77, 389 (2005))。胎盤組織に見られる単一のcDNA配列だけの証拠に基づいて、LOC387715はその後、GenBankデータベースから除去された。発明者は、SNP rs10490924が近接する推定AMD疾患原因バリアントと相関するかまたは連鎖不均衡(LD)である代用マーカーであり得るという仮説を立てた。発明者の遺伝子型データまたは国際HapMapプロジェクトのデータを用いたハプロタイプ解析は、機能部位がある場所の同定で不成功であった。
【0205】
従って、発明者は、機能的バリアントの調査において、PLEKHA1およびHTRA1両方のプロモーター、エクソンおよびイントロン-エクソン結合を含む、局所ゲノム領域全体の配列決定をした。マーカーSNP rs10490924の遺伝子型に基づいて、リスク対立遺伝子のホモ接合体である50症例および野生型対立遺伝子のホモ接合体である38対照の配列決定をした。同定された43 SNPまたは挿入/欠失多形のうち(図1および表6)、HTRA1の推定転写開始点の上流512塩基対(bp)に位置し、SNP rs10490924の6,096bp下流にある1つのSNP(rs11200638)は、SNP rs10490924について完全LDパターンを示した。コホート全体の遺伝子型同定によって、SNP rs11200638がSNP rs10490924のものと同様の頻度で生じること(対立遺伝子相関χ2検定についてP=8.2x10-12)、および2つのSNPがほとんど完全LDにあったこと(D'>0.99)が明らかにされた(表9)。
【0206】
実施例2
SNP rs11200638は、HTRA1遺伝子(PRSS11としても公知、NM_002775)の転写開始点の上流512塩基対(bp)に位置する。
【0207】
HTRA1プロモーター配列のコンピューター解析によって、SNP rs11200638は転写因子アダプター相関タンパク質複合体2α(AP2αおよび血清応答因子(SRF)の推定結合部位にあることが予測された。野生型対立遺伝子を含むこのDNAセグメントは、CpGアイランドの一部であり、これらの2つの転写因子のコンセンサス応答配列と密接に適合する(図3)。リスク対立遺伝子の存在はHTRA1プロモーターに対するAP2αおよびSRFの親和性を変更することが予測された。また、MatInspector(Genomatix Software GmbH)を用いたプロモーター解析によって、SNP rs11200638での配列バリエーションがSp(特異的タンパク質)転写因子ファミリーメンバーの結合を変更し得ることが示唆された。
【0208】
培養ヒト細胞で、予測された転写因子がHTRA1プロモーターに結合することを立証するために、発明者はクロマチン免疫沈降(ChIP)続いて定量的リアルタイムPCR解析を行った。溶解物を、rs11200638のヘテロ接合体である成長中ヒト頸癌細胞(HeLaS3)から調製し、ChIPをAP2αまたはSRFに対するウサギポリクローナル抗体を用いて行った。ChIP DNA試料の定量的PCR試験によって、AP2αおよびSRFの両方がHTRA1遺伝子の上流に結合することが確認された(図2および3)。
【0209】
HTRA1プロモーターに対するSNP rs11200638の影響を調査するために、ヒトARPE19(網膜色素上皮)およびHeLaS3細胞を野生型(GG)またはリスクホモ接合体(AA)遺伝子型のいずれかを有するHTRA1プロモーターにつながれたルシフェラーゼレポータープラスミドで一過的にトランスフェクトした。予備的な結果は、GG遺伝子型と比較されたAAについて高いルシフェラーゼ発現の一貫した傾向を示した。
【0210】
以下の方法および物質は、本明細書に記載される研究、特に実施例3、4、および5に使用された。
【0211】
患者
本研究はユタ大学の構成審査委員会によって承認された。全ての被験体は研究への参加の前にインフォームドコンセントを与えられた。正常年齢適合対照(ドルーゼンまたはRPE変化を有さない60歳以上の個体)と同様に、AMD患者を、Moran Eye Center(ユタ大学)で補充した。全ての参加者は、標準検査プロトコールおよび視力測定を受けた。90ジオプターレンズを用いた眼底の細隙灯生体顕微鏡検査を行った。訓練された眼科写真家がTopcon眼底カメラ(Topcon TRV-50VT, Topcon Optical Company, Tokyo, Japan)を用いて中心窩を中央に置いて一対の立体的色眼底写真(50°)を撮った。等級は加齢黄斑障害(ARM)およびAMDの国際ARM疫学研究グループによって提案された標準グリッド分類システムに従って行った(A. C. Birdら, Surv Ophthalmol 39, 367 (1995))。黄斑の全ての異常は1)ドルーゼンの種類、大きさおよび数、2)RPE過剰色素または過小色素、ならびに3)進行したAMD段階、例えば地図状萎縮症(GA, 乾性AMD)、および脈絡膜新血管新生(CNV, 湿性AMD)に従って特徴付けられた。581のAMD患者(392 湿性AMD、189軟コンフルエントドルーゼン)および309の年齢および民族の適合した正常対照の全体が本研究に参加した(表10)。
【0212】

【0213】
遺伝子型同定
265の湿性AMDおよび177の軟コンフルエントドルーゼンを含む、442の白色人種AMD患者の最初のユタコホートを遺伝子型同定し、対立遺伝子頻度を309の年齢および民族適合正常対照と比較した。rs10490924およびrs11200638の第二段階遺伝子型同定の拡張された試料は581のAMD患者を含んだ(392の湿性AMD、189の軟コンフルエントドルーゼン)。
【0214】
rs11200638遺伝子型について、発明者はAMDおよび対照患者血液試料から抽出されたゲノムDNAをPCR増幅した。オリゴヌクレオチドプライマー、フォワード5’-ATGCCACCCACAACAACTTT-3'(配列番号61)およびリバース、5'-CGCGTCCTTCAAACTAATGG-3'(配列番号 62)を5% DMSOを含むPCR反応に使用した。DNAを、95℃で3分間変性し、続いてサイクルあたり94℃30秒、52℃30秒および72℃45秒の35サイクルを行った。PCR産物を、G対立遺伝子を同定するためにEag Iで消化した。rs10490924について、フォワードプライマー 5'-TACCCAGGACCGATGGTAAC-3'(配列番号 63)およびリバースプライマー5'GAGGAAGGCTGAATTGCCTA-3'(配列番号 64)をPCR増幅に使用し、PVUII消化を使用してG対立遺伝子を同定した。残りの13個のSNPを、製造業者の説明書に従い、ABI 3130遺伝子分析器(Applied Biosystems, Foster City, CA)上でのSNaPshot法を用いて遺伝子型同定した。CFH遺伝子型同定を、公表された方法に従って行った(K.P. Magnussonら, PLoS Med 3, e5 (Jan, 2006))。
【0215】
データ解析
10g26
対立遺伝子に対する付加モデルの傾向のためのカイ二乗検定を行い、相関の証拠を評価した。オッズ比および95%信頼区間も計算して、リスク対立遺伝子のヘテロ接合体およびホモ接合体のリスクの大きさを推定した。
【0216】
2座解析(1g31のCFHY402Hおよび10g26のrs11200638)
2座解析を、1q31のCFH rs1061170(Y402H)バリアントおよび1Og26のrs11200638について行った。対照-症例状態および2座遺伝子型組み合わせに基づいた対立表を構築した。CFHY402Hおよびrs11200638にわたる2座遺伝子型組み合わせはTT/GG、TT/AG、TT/AA、CT/GG、CT/AG、CT/AA、CC/GG、CC/AG、およびCC/AAであった。この包括的2座9x2対立表を、自由度8で、カイ二乗統計で試験した。両方の座(TT/GG)で共通の対立遺伝子のホモ接合のベースラインについて各遺伝子型組み合わせを比較する、オッズ比および95%信頼区間を計算した。同定されたリスク遺伝子型について、発明者は、Levin式(M. L. Levin, Acta Unio Int Contra Cancrum 9, 531 (1953))を用いて、リスク遺伝子型に寄与し得る全疾患リスクの割合を示す集団寄与リスク(PAR)を計算した。
【0217】
HTRA1免疫組織化学
AMDドナー眼を、Utah Lions Eye Bankから得た。パラホルムアルデヒド固定された眼の凍結切片をメタノール中の0.3%H2O2中でインキュベートし、内因性ペルオキシダーゼ活性をクエンチした。免疫組織化学を、5μg/ml単一特異的抗ヒトHTRA1ポリクローナル抗体を用いて行った(J. Chienら, J Clin Invest 116, 1994 (Jul, 2006))。 VectorStain Elite ABCキット(Vector Laboratories, Burlingame, CA)およびVIPペルオキシダーゼ基質(Vector Laboratories)をHTRA1検出に使用し、免疫標識をNikon Eclipse 8Oi顕微鏡でのノマルスキー光学を用いて捉えた。
【0218】
ヒトリンパ球試料中のHTRAI mRNAの半定量的RT-PCR
市販リアルタイムPCRシステム(Opticon; MJ Research, Watertown, MA)を、患者の血液リンパ球試料のHTRAI転写レベルを定量するために使用した。全RNAを血液試料の末梢リンパ球から抽出し(RNeasy; Qiagen, Valencia, CA)、逆転写PCR(RT-PCR)を、QuantiTect SYBR Green RT-PCRキット(Qiagen)を用いて行った。HTRAIプライマー(フォワードプライマー5'-AGCCAAAATCAAGGATGTGG-3’(エクソン3)(配列番号65)およびリバースプライマー5'-GATGGCGACCACGAACTC-3’(エクソン4))(配列番号66)ならびに各試料からの100ナノグラム(ng)全RNAを一段階RT-PCR反応に使用した。標準曲線を患者リンパ球試料由来の0〜400 ng全RNAから作成した。ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を、並行反応(フォワードプライマー5'-CTGCACCACCAACTGCTTAG 3'(エクソン7)(配列番号67)およびリバースプライマー5'-GTCTTCTGGGTGGCAGTGAT-3')(配列番号68)で増幅し、HTRA1値を標準化するために使用した。HTRA1およびGAPDH標準曲線は同様な増幅反応速度を示した。GGおよびAA遺伝子型の3〜4人の患者は、2回の反応および2回の作業でアッセイされた。結果はGG試料に対するAA試料のHTRA1 RNAレベルの増大パーセントとして示される(図4B)。
【0219】
ヒトRPEのHTRA1発現のウエスタン解析
AA遺伝子型を有する4つの湿性AMD眼およびGG遺伝子型を有する6つの正常眼由来の網膜色素上皮の25μgの全タンパク質を、SDS-PAGEに供した。ウエスタンブロットを、1.5μg/ml抗ヒトHtrA1ポリクローナル抗体を用いて行った(J. Chenら, J Clin Invest 116, 1994 (Jul, 2006))。HTRA1タンパク質発現レベルを(3-アクチンに対して標準化した。統計的有意さを独立した試料t-検定を用いて調べた(SPSSバージョン13.0)。
【0220】
実施例3
ユタの白色人種コホートの染色体座10q26での重大な遺伝子を同定するために、発明者は最も高いリスク相関SNP周辺を中心とした15の一塩基多形(SNP)のパネルを用いて、442AMD症例および309対照を遺伝子型同定し、rs 10490924が有意な相関シグナルを有することが分かった[付加対立遺伝子-用量モデルについてP=8.1x10-8、ORhet=1.35(0.99, 1.86)、ORhom=6.09(3.27, 11.34)、T対立遺伝子: 症例の39.7%対対照の24.7%]。しかし、解析された15のSNPのうち、rs11200638は、最も有意に相関したバリアントであった[P=1x10-9、ORhet=1.86(1.35,2.56)、ORhom=6.56(3.23,13.31)、A対立遺伝子: 症例の40.3%対対照の25.2%](図4Aおよび表11)。
【0221】

【0222】
相関の有意さに関して、rs10490924およびrs11200638に渡るTAハプロタイプはrs10490924で優れていたが(P=2.2 x 10-9)、rs11200638で劣った。発明者はこれら2つのバリアントについてさらに139のAMD患者を遺伝子型同定した。両方のSNPの結果は有意さで増大し(rs10490924、P=1.2X10-8; rs11200638, P=1.6x10-11)、バリアントrs11200638は、相関を説明する最良の単一バリアントのままであった[ORhet=1.90(1.40, 2.58)、ORhom=7.51(3.75, 15.04)]。
【0223】
実施例4
補体因子H(CFH)は、ドルーゼン形成を媒介することが示唆されている(G. S. Hagemanら, Proc Natl Acad Sci USA 102, 7227 (2005))。大きなドルーゼンの存在が調査中の主要表現型である発明者の以前の全ゲノム相関研究において、CFH Y402Hバリアントは主要な遺伝的リスク要因であることが示された(R. J. Kleinら, Science 308, 385 (2005))。より最近、CFH Y402Hの最も高いオッズ比(OR)がAMD等級1対照と比較してAMD等級4(即ち、CGAの存在)を有する症例で見られたことが報告された(E. A. Postelら, Ophthalmology 113, 1504 (2006))。AMDおよびCFH Y402Hならびに他のイントロン性CFHバリアントとの間での相関は10よりも多い異なる白色人種集団で示された(J. Mallerら, Nat Genet 38, 1055 (2006), S. Haddad, C. A. Chen, S. L. Santangelo, J. M. Seddon, Surv Ophthalmol 51, 316 (2006), M. Liら, Nat Genet 38, 1049 (2006), A. Thakkinstianら, Hum Mol Genet 15, 2784 (2006))。発明者は染色体1q31でのrs11200638およびCFH rs1O61170(Y402H)バリアントの両方での遺伝子型に基づいた相関解析を行った。9つの2座遺伝子型組み合わせを全て列挙する包括的2座解析において、AMDとの相関は有意であった(x2=56.56、8 df;P=2.2x10-9)。表12は、リスクのない遺伝子型のベースラインと比較した2座遺伝子型組み合わせのそれぞれのリスク推定を示す(CFHY402HでのTTおよびrs11200638でのGG)。
【0224】

【0225】
rs11200638のAMDに対する相関は、CFH Cリスク対立遺伝子の存在で条件的に解析される場合に有意であった(P=5.9x10-8)。特に、この条件的解析は、CFHでのリスク遺伝子型を保有する個体を含むベースラインと比較した場合でも、rs11200638のAリスク対立遺伝子のホモ接合体が全てのAMD症例のヘテロ接合体のもの[ORhet=1.83(1.25, 2.68)]に対して増大したリスク[ORhom=7.29 (3.18, 16.74)]であるような、対立遺伝子-用量効果を示す。対立遺伝子-用量モデルについて、rs11200638の推定集団寄与リスク(PAR)は49.3%である。付加効果と一致して、CFH Y402Hを有する結合モデルから推定したPARは(つまり、いずれかの座でのリスク対立遺伝子について)71.4%である。
【0226】
実施例5
白色人種におけるSNP rs11200638の機能的重要性を調査するために、発明者はリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用してリスク対立遺伝子AAを保有する4つのAMD患者および正常対立遺伝子GGを保有する3つの正常対照のリンパ球におけるHTRA1 mRNAの発現レベルを研究した(図4B)。AA遺伝子型を有するAMD患者のリンパ球におけるHTRA1 mRNAレベルはGG遺伝子型を有する正常対照のものより2.7倍高かった(図4B)。ホモ接合体AAリスク対立遺伝子を有する4つのAMDドナー眼のRPEのHTRA1タンパク質平均レベルはホモ接合体GG対立遺伝子を有する6つの正常対照のものより1.7倍高かった。ヒト眼組織の解析によって、本研究の60ドナーからAA遺伝子型を有する4つのAMDドナー眼に限定された。データはリスクAA対立遺伝子について高い発現への傾向を示唆する。免疫組織化学実験によって、HTRA1免疫標識が3つのAMD患者のドルーゼンに存在することが明らかにされた。
【0227】
HTRA1遺伝子はマウス網膜およびRPEで発現するセリンプロテアーゼファミリーの一員をコードする(C. Okaら, Development 131, 1041 (2004))。HTRA1は、細胞外マトリックスプロテオグリカンの分解を制御するように思われる。この活性は、コラゲナーゼおよびマトリックスメタロプロテアーゼ等の他の分解性マトリックス酵素の、その基質への接近を促進することが考えられる(S. Grauら, J Biol. Chem. 281, 6124 (2006))。おそらく、HTRA1の過剰発現はブルーフ膜の完全性を変更し、湿性AMDで生じるような細胞外マトリックスを横断する脈絡膜毛細血管の浸潤を促進し得る。また、HTRA1は細胞外マトリックス沈着および血管形成の重要なレギュレーターである形質転換成長因子-β(TGF-β)と結合し、かつこれを阻害する(Okaら, Development 131, 1041 (2004))。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体由来の試料におけるバリアントHTRA1遺伝子の検出用単離ポリヌクレオチドであって、ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーションを検出する核酸分子を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項2】
核酸分子が、ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するヒトHTRA1遺伝子のプロモーター領域の推定転写開始点に対して位置-512でのG以外のヌクレオチド塩基を特異的に検出する、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
DNAプローブである、請求項1または2記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
バリエーションがrs11200638と同定された一塩基多形に相当する、請求項1〜3いずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
1つ以上のヌクレオチドが放射活性、蛍光、または化学標識ヌクレオチドである、請求項1〜4いずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
個体の加齢性黄斑変性の発症または進行のリスクの評価用単離ポリヌクレオチドであって、SNP rs11200638でのHTRA1遺伝子のノンコーディング領域のバリエーションを検出する核酸分子を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項7】
ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点に対して位置-512に隣接するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプライマー。
【請求項8】
プライマーのペアである、請求項7記載のポリヌクレオチドプライマー。
【請求項9】
第一ポリヌクレオチドプライマーがヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点に対して位置-512の一方にハイブリダイズし、第二ポリヌクレオチドプライマーがその他方にハイブリダイズする、請求項8記載のポリヌクレオチドプライマーのペア。
【請求項10】
個体由来の試料中のDNAのPCR増幅に使用するための、請求項9記載のポリヌクレオチドプライマーのペア。
【請求項11】
DNAプライマーである、請求項7〜10いずれかに記載のポリヌクレオチドプライマー。
【請求項12】
1つ以上のヌクレオチドが放射活性、蛍光または化学標識ヌクレオチドである、請求項11記載のポリヌクレオチドプライマー。
【請求項13】
個体から得られた試料におけるヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するバリアントHTRA1遺伝子の検出方法であって、
(a)野生型HTRA1遺伝子ではなく、ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーションにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと、試料とを混合する工程;および
(b)ハイブリダイゼーションが生じるかどうかを決定する工程であって、ハイブリダイゼーションの発生は、加齢性黄斑変性の発症と相関するバリアントHTRA1遺伝子が試料中に存在することを示す、工程
を含む、方法。
【請求項14】
個体から得られた試料におけるヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するバリアントHTRA1遺伝子の検出方法であって、
(a)ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーションにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと、試料とを混合して、それによって混合物を生成する工程;
(b)工程(a)で生成した混合物をストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で維持する工程;および
(c) 混合物で生じるハイブリダイゼーションと対照のハイブリダイゼーションを比較する工程
を含み、
対照ポリヌクレオチドプローブがヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーションに結合しないか、または野生型HTRA1遺伝子のみに結合し、試料が(a)と同じ種類の試料であり、かつ(a)の試料と同じように処理されることを除いて、対照は(a)および(b)と同じであり、対照ではなく混合物におけるハイブリダイゼーションの発生は、加齢性黄斑変性の発症と相関するバリアントHTRA1遺伝子が試料中に存在することを示す、方法。
【請求項15】
ハイブリダイゼーションの程度が(c)で決定される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
個体から得られた試料におけるヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するバリアントHTRA1遺伝子の検出方法であって、
(a)ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーションにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと、第一部分の試料とを混合して、それによって第一部分の混合物を生成する工程;
(b)野生型HTRA1遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと、第二部分の試料とを混合して、それによって第二部分の混合物を生成する工程;ならびに
(c)第一部分の混合物および第二部分の混合物でハイブリダイゼーションが生じるかどうかを決定する工程であって、第二部分の混合物ではなく第一部分の混合物におけるハイブリダイゼーションの発生は、加齢性黄斑変性の発症と相関するバリアントHTRA1遺伝子が試料中に存在することを示す、工程
を含む、方法。
【請求項17】
ノンコーディング領域のバリエーションがヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点に対して位置-512でのG以外のヌクレオチド塩基である、請求項13〜16いずれかに記載の方法。
【請求項18】
ポリヌクレオチドプローブがDNAプローブである、請求項13〜17いずれかに記載の方法。
【請求項19】
個体から得られた試料におけるヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するバリアントHTRA1遺伝子の検出方法であって、
(a)試料とポリヌクレオチドプライマーのペアとを混合する工程であって、第一ポリヌクレオチドプライマーがヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域に位置するヒトHTRA1遺伝子のプロモーターの推定転写開始点に対して位置-512の一方にハイブリダイズし、第二ポリヌクレオチドプライマーがヒトHTRA1遺伝子のプロモーターの推定転写開始点に対して位置-512の他方にハイブリダイズする、工程;
(b)試料中のDNAを増幅して、それによって増幅DNAを生成する工程;
(c)増幅DNAを配列決定する工程;および
(d)増幅DNA中にHTRA1遺伝子のプロモーター領域の野生型配列のバリエーションの存在を検出する工程であって、バリエーションの存在はヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するバリアントHTRA1遺伝子が試料中で検出されることを示す、工程
を含む、方法。
【請求項20】
ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーションがSNP rs11200638に相当する、請求項13〜19いずれかに記載の方法。
【請求項21】
ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関する遺伝子のさらなるバリエーションの存在または非存在を試料中で決定する工程をさらに含み、さらなるバリエーションがヒトHTRA1遺伝子の推定転写部位の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーション以外である、請求項13〜20いずれかに記載の方法。
【請求項22】
さらなるバリエーションがさらなるバリエーションにハイブリダイズする第二プローブを用いて検出される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
さらなるバリエーションがさらなるバリエーションのいずれかの側にハイブリダイズする第二セットのプライマーを用いて検出される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
さらなるバリエーションがSNP rs1061170に相当するヒトCFHタンパク質の位置402でのヒスチジンの存在であるおよび/またはSNP rs10490924に相当するヒトタンパク質LOC387715の位置69でのセリンの存在である、請求項21〜23いずれかに記載の方法。
【請求項25】
加齢性黄斑変性を患う個体もしくは加齢性黄斑変性を発症するリスクがある個体の同定方法または同定の補助方法であって、ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点に対して位置-512でのG以外のヌクレオチド塩基の存在について個体から得られた試料をアッセイする工程を含み、バリアントHTRA1遺伝子の位置-512でのG以外のヌクレオチド塩基の存在は、個体が加齢性黄斑変性を患うかまたは加齢性黄斑変性を発症するリスクがあることを示す、方法。
【請求項26】
加齢性黄斑変性を患う個体もしくは加齢性黄斑変性を発症するリスクがある個体の同定方法または同定の補助方法であって、
(a)ストリンジェントな条件下で、野生型HTRA1遺伝子にハイブリダイズしないが、ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーションにハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと、個体から得られた試料とを混合して、それによって混合物を生成する工程;
(b)ハイブリダイゼーションが生じる適切な条件下で混合物を維持する工程;および
(c)ハイブリダイゼーションが生じるかどうかを決定する工程であって、ハイブリダイゼーションの発生は、個体が加齢性黄斑変性を発症するリスクがあることを示す、工程
を含む、方法。
【請求項27】
さらなるバリエーションにハイブリダイズする第二ポリヌクレオチドプローブと(a)の試料とを混合する工程を含み、ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーション以外のさらなるバリエーションを検出する工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
加齢性黄斑変性を患う個体もしくは加齢性黄斑変性を発症するリスクがある個体の同定方法または同定の補助方法であって、
(a)個体からDNAを得る工程;
(b)ヒトのHTRA1遺伝子のプロモーターの推定転写開始点から位置-512でのヌクレオチドを含むDNA領域を配列決定する工程;および
(c)HTRA1遺伝子のプロモーター領域の野生型配列のバリエーションがDNAに存在するかどうかを決定する工程であって、バリエーションの存在は、個体が加齢性黄斑変性を発症するリスクがあることを示す、工程
を含む、方法。
【請求項29】
ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御領域以外の、ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するさらなるバリエーションを配列決定する工程をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ヒトHTRA1遺伝子の推定転写部位の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーション以外の、ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するさらなるバリエーションの存在または非存在を試料中で決定する工程をさらに含む、請求項26または28記載の方法。
【請求項31】
さらなるバリエーションとして、SNP rs1061170に相当するヒトCFHタンパク質の位置402でのヒスチジンの存在;またはSNP rs10490924に相当するヒトタンパク質LOC387715の位置69でのセリンの存在を決定する工程を含む、請求項27、29および30いずれかに記載の方法。
【請求項32】
個体由来の試料におけるバリアントHTRA1遺伝子の検出用診断キットであって、
(a)ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するヒトHTRA1遺伝子の推定転写部位の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーションにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを配置した少なくとも1つの容器;ならびに
(b)試料中のバリアントHTRA1遺伝子の検出における診断キットの使用のための標識および/または指示書
を含む、キット。
【請求項33】
ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するさらなるバリエーションの存在または非存在を試料中で検出する第二プローブをさらに含み、さらなるバリエーションがヒトHTRA1遺伝子の推定転写部位の位置+1上流のノンコーディング制御領域のバリエーション以外のバリエーションである、請求項32記載のキット。
【請求項34】
さらなるバリエーションが、SNP rs1061170に相当するヒトCFHタンパク質の位置402でのヒスチジンの存在である;および/またはSNP rs10490924に相当するヒトタンパク質LOC387715の位置69でのセリンの存在である、請求項33記載のキット。
【請求項35】
個体由来の試料におけるバリアントHTRA1遺伝子の検出用診断キットであって、
(a)ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するヒトHTRA1遺伝子のプロモーター領域の推定転写開始点に対して位置-512でのバリエーションの一方に隣接する領域にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドプライマーを配置した少なくとも1つの容器;ならびに
(b)試料中のHTRA1の検出における診断キットの使用のための標識および/または指示書
を含む、キット。
【請求項36】
ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するHTRA1遺伝子のプロモーター領域におけるヒトのプロモーター領域の推定転写開始点に対して位置-512でのバリエーションの他方にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする第二ポリヌクレオチドプライマーをさらに含む、請求項35記載の診断キット。
【請求項37】
ヒトHTRA1遺伝子のプロモーター領域の推定転写開始点に対して位置-512でのバリエーション以外の、ヒトの加齢性黄斑変性の発症と相関するさらなるバリエーションのいずれかの側にハイブリダイズする第二セットのプライマーをさらに含み、さらなるバリエーションがSNP rs1061170に相当するヒトCFHタンパク質の位置402でのヒスチジン;またはSNP rs10490924に相当するヒトタンパク質LOC387715の位置69でのセリンを含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
ヒトHTRA1遺伝子の推定転写開始点の位置+1上流のノンコーディング制御プロモーター領域のバリエーションがSNP rs11200638に相当する、請求項32〜37いずれかに記載のキット。
【請求項39】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)HTRA1遺伝子またはmRNAにハイブリダイズするアンチセンス配列を含む核酸分子;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含み、アンチセンス配列のHTRA1遺伝子へのハイブリダイゼーションによってHTRA1遺伝子から転写されるRNA量が低減される、組成物。
【請求項40】
アンチセンス配列のHTRA1 mRNAへのハイブリダイゼーションによってHTRA1 mRNAから翻訳されるタンパク質の量が低減されるおよび/またはHTRA1 mRNAのスプライシングが変更される、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
核酸分子がインビボ安定性、細胞膜を横切る移動、またはHTRA1遺伝子もしくはmRNAへのハイブリダイゼーションを増進する1つ以上の改変ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む、請求項39または40記載の組成物。
【請求項42】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)HTRA1遺伝子またはmRNAにハイブリダイズするsiRNAもしくはmiRNA配列またはその前駆体を含む核酸分子;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含み、siRNAまたはmiRNA配列のHTRA1遺伝子へのハイブリダイゼーションによってHTRA1遺伝子から転写されるRNA量が低減される、組成物。
【請求項43】
siRNAまたはmiRNA配列のHTRA1 mRNAへのハイブリダイゼーションによって、HTRA1 mRNAから翻訳されるタンパク質の量が低減されるおよび/またはHTRA1 mRNAのスプライシングが変更される、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
核酸分子がインビボ安定性、細胞膜を横切る移動、またはHTRA1遺伝子もしくはmRNAへのハイブリダイゼーションを増進する1つ以上の改変ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む、請求項42または43記載の組成物。
【請求項45】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)HTRA1ポリペプチドに結合するアプタマー;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含み、アプタマーのHTRA1ポリペプチドへの結合によってHTRA1ポリペプチドの活性が低減される、組成物。
【請求項46】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)HTRA1ポリペプチドに結合する低分子;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含み、低分子のHTRA1ポリペプチドへの結合によってHTRA1ポリペプチドの活性が低減される、組成物。
【請求項47】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)HTRA1ポリペプチドに結合する抗体;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含み、抗体のHTRA1ポリペプチドへの結合によってHTRA1ポリペプチドの活性が低減される、組成物。
【請求項48】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)野生型HTRA1ポリペプチドと競合するHTRA1ポリペプチドのドミナントネガティブバリアント;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含み、HTRA1ポリペプチドのドミナントネガティブバリアントの競合によって野生型HTRA1ポリペプチドの活性が低減される、組成物。
【請求項49】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)HTRA1遺伝子のプロモーターと結合する転写因子のレベルを変更する薬剤;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含む、組成物。
【請求項50】
薬剤が過剰発現ベクター、アンチセンスRNA、siRNA、miRNA、アプタマー、低分子、もしくは転写因子に指向した抗体、または転写因子のドミナントネガティブバリアントである、請求項49記載の組成物。
【請求項51】
転写因子がSRFである、請求項49または50記載の組成物。
【請求項52】
転写因子がAP2αである、請求項49または50記載の組成物。
【請求項53】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)HTRA1ポリペプチドの分泌を阻害する薬剤;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含む、組成物。
【請求項54】
薬剤が分泌について野生型HTRA1と競合するHTRA1ポリペプチドのドミナントネガティブバリアントである、請求項53記載の組成物。
【請求項55】
薬剤がアプタマー、低分子、またはHTRA1ポリペプチドに指向した抗体である、請求項53記載の組成物。
【請求項56】
加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療用組成物であって、
(a)有効量のHTRA1活性のインヒビター;および
(b)薬学的に許容され得る担体
を含む、組成物。
【請求項57】
有効量の請求項39〜57いずれかに記載の組成物を被験体に投与する工程を含む、加齢性黄斑変性を患う被験体または加齢性黄斑変性のリスクがある被験体の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−544317(P2009−544317A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521835(P2009−521835)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/016809
【国際公開番号】WO2008/013893
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティー (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】