説明

劣化補償がなされたOLEDディスプレイ

出力が時間経過または使用とともに変化する複数の発光素子を備えるOLEDディスプレイを駆動するための画像信号を補償する方法は、a)個々の発光素子が、既知の画像信号に応答して消費する電流の第1の測定値または第1の推定値を取得するステップと;b)発光素子からなる複数のグループを指定し、そのとき、指定したそのグループのうちの少なくとも1つが、指定した別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含んでいるようにするステップと;c)指定したそれぞれのグループが、既知の画像信号に応答して消費する合計電流を測定するステップと;d)その測定した合計電流に基づき、個々の発光素子が消費する電流の第2の推定値を形成するステップと;e)第1の電流値と第2の電流値の差に基づいて個々の発光素子に関する補正値を計算するステップと;f)その補正値を画像信号に対して用いて発光素子の出力変化を補償し、補償済み画像信号を発生させるステップを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体OLEDフラット-パネル・ディスプレイ装置に関するものであり、より詳細には、有機発光ディスプレイの劣化を補償する手段を備えるそのようなディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体有機発光ダイオード(OLED)画像ディスプレイ装置は、優れたフラット-パネル・ディスプレイ技術として非常に注目されている。このディスプレイでは、有機材料からなる薄膜を通過する電流を利用して光を発生させる。発生する光の色と、電流から光へのエネルギー変換効率は、有機薄膜材料の組成によって決まる。異なる有機材料が異なる色の光を出す。しかしディスプレイを使用しているうちにそのディスプレイの有機材料が劣化し、発光効率が低下する。するとディスプレイの寿命が短くなる。異なる有機材料は異なる速度で劣化する可能性があるため、色の劣化には差が生じ、ディスプレイを使用しているうちにそのディスプレイの白色点が変化する。ディスプレイのいくつかの発光素子が他の発光素子よりも多く使用されるのであれば、空間的な位置によって劣化が異なる可能性があるため、同じ信号で駆動するとディスプレイのある部分が他の部分よりも暗くなる。
【0003】
図2を参照すると、OLEDディスプレイ装置においてOLEDに電流を流したときの典型的な光出力のグラフを示してある。3本の曲線は、異なる色の光を出す別々の発光素子(例えば赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子をそれぞれ表わす)の典型的な性能を、時間または累積電流の関数としての輝度出力によって示したものである。これらの曲線からわかるように、色の異なる発光素子では輝度の減衰が異なる可能性がある。違いは、色の異なる発光素子で使用されている材料の劣化特性が異なること、または色の異なる発光素子の使われ方が異なることに起因する可能性がある。したがって従来の使用法では、劣化補正がなされていないと、ディスプレイが暗くなり、色が変化し、特にディスプレイの白色点がシフトすることになろう。
【0004】
ディスプレイが劣化する速度は、デバイスの中を通過する電流の量、したがってディスプレイから出る光の量に関係している。2002年7月2日にShenらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,414,661 B1号には、各画素に印加される累積駆動電流に基づいてその画素の光出力効率の減衰を計算して予測し、次の駆動電流に適用する補正係数を各画素について導出することにより、OLEDディスプレイ装置の個々の有機発光ダイオード(OLED)の発光効率の長期的な変動を補償する方法とその方法に関係したシステムが記載されている。この方法では、各画素に印加される駆動電圧を測定して積算する必要があるため記憶用メモリが必要とされ、ディスプレイを使用している間を通じてその記憶用メモリを連続的に更新せねばならない。したがって複雑で大きな回路が必要になる。
【0005】
2003年1月7日にNaritaらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,504,565 B1号には、複数の発光素子を配置することによって形成された発光素子アレイと、その発光素子アレイを駆動してそれぞれの発光素子から光を発生させる駆動ユニットと、発光素子アレイの各発光素子の発光回数を記憶するメモリ・ユニットと、このメモリ・ユニットに記憶されている情報に基づいて駆動ユニットを制御して各発光素子から出る光の量を一定にする制御ユニットとを備える発光デバイスが記載されている。発光デバイスを利用した露光デバイスと、この露光デバイスを利用した画像形成装置も開示されている。この設計では、各画素に送られる各信号に応答して使用状況を記録する計算ユニットを使用する必要があるため、回路設計が非常に複雑になる。
【0006】
2002年9月27日に公開された沼尾孝次による日本国特開2002-278514 Aには、電流測定回路によって有機EL素子に所定の電圧を印加して流れる電流を測定し、温度測定回路によって有機EL素子の温度を推定する方法が記載されている。素子に印加される電圧値と、流れる電流値と、推定温度とを、同じ構成の素子についてあらかじめ求めた経時変化と、電流-輝度特性の経時変化と、特性測定時の温度と比較し、素子の電流-輝度特性を推定する。次に、電流-輝度特性の推定値と、素子を流れる電流の値と、表示データとに基づき、本来表示されるはずの輝度が得られるよう、表示データが表示されている間に素子に供給される電流の合計値を変化させる。この設計では、画素の予測可能な相対値を利用することが想定されているため、画素群または個々の画素が実際に利用されているときの違いに対応することはできない。したがって色のグループまたは空間的なグループを正確に補正しても時間が経過すると不正確になるであろう。
【0007】
Cokらによる「劣化補償がなされたOLEDディスプレイ」という名称のアメリカ合衆国特許出願2004/0150590には、出力が時間経過または使用とともに変化する複数の発光素子を2つ以上のグループに分割したものと;ディスプレイで消費される合計電流を感知して電流信号を発生させる電流測定装置と;1つのグループ内の全発光素子を同時にアクティブにするとともに、電流信号に応答してそのグループ内の発光素子のための補正信号を計算し、その補正信号を入力画像信号に適用して、そのグループの発光素子の出力変化を補償した補正済み入力画像信号を発生させる制御装置とを備えるOLEDディスプレイが記載されている。各グループを個々の発光素子で構成できることが示唆されているが、個々の発光素子の電流測定には時間がかかり、しかも困難かつ不正確である可能性がある。なぜなら、各素子を通過する電流は一般に非常に小さいからである。あるいはOLEDデバイス全体で異なる発光素子グループについて独立な測定を行なうOLEDシステムでは、各グループ内の個々の素子に関して異なる使用状況または発光性能に対処する能力が限られているため、そのように異なる劣化を効果的に補償することができない。したがって、個々の発光素子の使用電流を測定する速度と精度が改善された劣化補償システムを提供できることが望ましかろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様によれば、出力が時間経過または使用とともに変化する複数の発光素子を備えるOLEDディスプレイを駆動するための画像信号を補償する方法が記載されており、この方法は、
a)個々の発光素子が、既知の画像信号に1回目に応答して消費する電流の第1の測定値または第1の推定値を取得するステップと;
b)発光素子からなる複数のグループを指定し、そのとき、指定したそのグループのうちの少なくとも1つが、指定した別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含んでいるようにするステップと;
c)指定したそれぞれのグループが、既知の画像信号に2回目に応答して消費する合計電流を測定するステップと;
d)その測定した合計電流に基づき、個々の発光素子が消費する電流の第2の推定値を形成するステップと;
e)第1の電流値と第2の電流値の差に基づいて個々の発光素子に関する補正値を計算するステップと;
f)その補正値を画像信号に対して用いて発光素子の出力変化を補償し、補償済み画像信号を発生させるステップを含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の利点として、ディスプレイの有機材料の劣化を補償するのに大きな回路または複雑な回路を必要とすることなく、しかも測定の精度および/または速度が向上したOLEDディスプレイ装置が提供されることが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照すると、OLEDディスプレイ10システムは、出力が時間または使用に伴って変化する複数の発光素子12を備えている。これらの発光素子12は指定した2つ以上のグループ24、26に分割されていて、少なくとも1つの発光素子が両方のグループ24と26に共通している。ディスプレイ10が既知の画像信号によって駆動されて一方のグループ24または26の発光素子12が光ることにより合計電流信号13が発生したときにはいつでも、電流測定装置14が、ディスプレイ10が消費する合計電流を感知する。ディスプレイ較正モードでは、制御装置16が既知の画像信号を供給し、各グループ24、26の全発光画素12をアクティブにする。制御装置16は、電流信号13の合計値に応答して個々の発光素子が消費する電流の推定値を形成し、消費電流の少なくとも1つの推定値を記憶する。指定した別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含むグループを指定することにより、電流測定の精度および/または速度を改善することができる。これについて以下により詳しく説明する。制御装置16は、消費電流の現在の推定値と、以前の電流推定値または電流測定値との間の比較に基づき、各グループ24、26の発光素子12の補正値を計算し、ディスプレイの動作中にその補正値を画像信号18に適用し、各グループ24、26の発光素子12の出力変化を補償した補償済み画像信号20を発生させる機能も持つ。
【0011】
個々の発光素子が消費する電流に関する初期の推定値または測定値は、例えば製造中、または製造後かつ製品の出荷前、またはディスプレイのユーザーがディスプレイを動作させる前に形成することができる。特別な一実施態様では、個々の発光素子が消費する電流の第1の測定値または推定値は、1回目の指定として発光素子からなる第1の複数のグループを指定し、その第1のグループのそれぞれが既知の画像信号に1回目に応答して消費する第1の合計電流の測定を行ない、個々の発光素子が消費する電流の第1の推定値を、測定された第1の合計電流に基づいて形成することによって得られる。このような実施態様では、個々の発光素子が消費する電流の第2の推定値は、2回目の指定として発光素子からなる第2の複数のグループを指定し(ただし、指定した第2のグループのうちの少なくとも1つは、指定した第2のグループのうちの別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含んでいる)、その第2のグループのそれぞれが既知の画像信号に2回目に応答して消費する第2の合計電流の測定を行ない、個々の発光素子が消費する電流の第2の推定値を、測定された第2の合計電流に基づいて形成することによって得られる。第1と第2の複数のグループは同じものを指定できるが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0012】
複数の個々の発光素子を備えるOLEDデバイスおよびOLEDディスプレイと、OLEDを駆動し、計算を実行し、例えばルック-アップ表またはマトリックス変換を利用して画像信号を補正するための制御装置が、従来技術で知られている。電流測定装置14は、従来技術で知られているように、例えば、オペレーショナル増幅器の端子間に接続された抵抗器を備えることができる。
【0013】
一実施態様では、ディスプレイ10は、画素アレイを備えるカラー画像ディスプレイであり、各画素は、色の異なる複数の発光素子12(例えば赤、緑、青)を備えている。その発光素子12が制御回路16によって個別に制御されてカラー画像が表示される。着色発光素子は、異なる色の光を発生させるさまざまな有機発光材料で形成すること、またはすべてを同じ有機白色発光材料で形成し、カラー・フィルタを個々の素子の上に取り付けて異なる色を発生させることができる。別の一実施態様では、発光素子は、ディスプレイ中の個別のグラフィック素子であり、アレイとして組織する必要はない。どの実施態様でも、発光素子は、パッシブ-マトリックス制御またはアクティブ-マトリックス制御のいずれかにすることができ、ボトム-エミッション型またはトップ-エミッション型の構成が可能である。
【0014】
OLEDの劣化は、OLEDを通過する電流が累積して性能が低下することと関係している。また、OLED材料が劣化すると、OLEDの見かけの抵抗値が増大し、所定の駆動電圧においてOLEDを通過する電流が減少する。電流の減少は、所定の駆動電圧におけるOLEDの輝度の低下と直接関係している。OLEDの抵抗値が使用とともに変化することに加え、有機材料の発光効率も低下する。OLED材料の劣化と明るさは、OLEDデバイスとOLED材料を電流が通過するときの温度とも関係している。したがって本発明のさらに別の一実施態様では、温度信号17を提供する温度センサー22をOLEDディスプレイ10の上または近くに設置するとよい。制御装置16は、その温度信号17に応答し、デバイスが所定の温度範囲にあるときだけ補正値を計算すること、または測定を行なうこともできる。
【0015】
所定の駆動電圧における輝度低下と、その輝度低下と電流低下の関係に関するモデルは、既知の画像信号を用いてOLEDディスプレイを駆動し、電流と輝度の時間変化を測定することによって作ることができる。次に、所定の入力画像信号に対してOLEDディスプレイに定格輝度を出力させるのに必要な補正値を既知の画像信号に関して決定する操作を、OLEDディスプレイ10中のそれぞれのタイプのOLED材料について行なう。次に、その補正値を用いて補正済み画像信号を計算する。したがって、OLEDに適用される信号を制御することにより、一定輝度かつ一定白色点のOLEDディスプレイを実現し、局所的な劣化を補正することができる。
【0016】
本発明により、測定精度と測定速度という競合する要求をうまくバランスさせる手段が提供される。一般に、OLEDディスプレイの中には非常に多数の発光素子が存在しており、個々の素子は、非常にわずかな電流しか必要としない(例えばピコアンペア)ため測定が難しい。まとめてオンにされる発光素子のグループを利用することで消費電流はより大きくなるため、測定をより容易に、そしてより正確にすることができる。それと同時に、必要な測定の回数をより少なくすることができる。しかし各発光素子が消費する電流の推定値の精度は低下する。発光素子からなる複数のグループを指定し、そのとき、指定したグループがそれとは別の指定したグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含むようにすると、個々の発光素子が含まれる指定した各グループのさまざまな電流測定値を合計し、その測定値の合計から個々の発光素子の電流消費を導出することにより、推定値の精度を向上させることができる。
【0017】
図3Aを参照すると、本発明の一実施態様は以下のように動作する。OLEDディスプレイの使用を開始する前に、既知の画像信号に1回目に応答して個々の発光素子が消費する電流の第1の測定値または推定値を取得する201。図3Bを参照すると、既知の画像信号に1回目に応答して個々の発光素子が消費する電流の第1の測定値または推定値を取得する特別な一実施態様では、2つ以上のグループを最初に指定する200。各グループは、OLEDディスプレイの中にあって時間経過または使用とともに変化する出力を有する複数の発光素子を含んでいる。ある1つのグループの発光素子だけを同時に刺激する既知の画像信号を供給した後、その既知の画像信号に応答してそのグループの発光素子が消費する合計電流を測定することにより、電流を各グループについて測定する202。各グループが消費する合計電流が測定されるまで、測定を各グループで別々に繰り返す。一般にその測定は、OLEDデバイスのユーザーにとって中断が最も少なくなるようにして順番に行なう。電流が各グループについて測定されると202、各発光素子が消費する電流を推定する204。推定値は各発光素子から得られるが、2つ以上の発光素子が1つの推定値を共有していてもよい。推定値は、例えば制御装置16の中に、または制御装置に付随するメモリ(例えば不揮発性RAM)の中に記憶させることができる。
【0018】
図3Aと図3Bを参照する。個々の発光素子が既知の画像信号に1回目に応答して消費する電流の第1の測定値または推定値を取得した後、OLEDデバイスを、そのデバイスの予想寿命に応じて選択した所定の期間(例えば1ヶ月)にわたって動作させる206。デバイスを動作させた206後はデバイスは劣化しており、発光素子12の光出力特性が変化している。そこで個々の発光素子が既知の信号に2回目に応答して消費する電流の第2の推定値を取得する。発光素子からなるグループを指定する208。そのとき、指定したグループのうちの少なくとも1つが、指定した別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含んでいるようにする。既知の画像信号に応答する各グループの合計電流を測定し210、その測定された合計電流に基づき、2回目の推定として各発光素子が消費する電流の第2の値を推定する212。2回目に形成された電流値の第2のセットを、以前に第1回目として形成された電流値の第1のセットと比較することにより、各発光素子の補正値を計算することができる214。次に、これら補正値を入力画像信号に適用し216、劣化の効果に起因する発光素子の出力変化を補償して補償済み画像信号にする218。次に、補償済み画像信号をディスプレイ装置に出力し220、補償済み画像を表示させる222。デバイスを新たにある期間にわたって動作させた後、この補正プロセスを繰り返すことができる。
【0019】
その後の補正値計算サイクルの間、各発光素子の電流推定値が一般に第1の推定値と比較され、OLEDデバイスを最初にオンにしてからの電流推定値の変化に基づいて補正値が計算される。このようにしてOLEDデバイスの性能を初期の動作状態に維持することができる。その後の補正では異なるグループを用いてもよいが、一般には同じグループが毎回用いられる。しかし顕著な変化がいくつかの領域で起こった場合には、推定値の精度を高めるためにグループを変更することができる。例えばグループをより小さくすること、またはグループ同士をより広範囲で重ねること、またはサンプリングしたグループを用いることができる。
【0020】
OLEDデバイスを使用するにつれてOLED材料は劣化していくため、新たな補正値を計算するとよく、そうすることが望ましいことがしばしばある。測定は発光素子のグループに対してなされるため、測定に要する時間は、各発光素子について別々に測定を行なうのに必要な時間と比べてはるかに短くなる。さらに、発光素子のグループに関する電流測定は、好ましいことにより容易で相対的により正確である。なぜなら1つの発光素子が消費する電流は非常に小さいため信頼性よく測定することが難しいのに対し、発光素子のグループが消費する電流は(グループのサイズによるが)はるかに大きくて雑音がより少ないからである。それと同時に、共通する少なくとも1つの発光素子を含むグループを用いることにより、そして各グループの電流測定結果を注意深く組み合わせることにより、各発光素子の補正をカスタム化して画像信号の補正を改善することができる。
【0021】
本発明のさまざまな実施態様によれば、各グループは、例えばOLEDディスプレイの解像度や、発光素子の数や、各グループで電流測定に利用できる時間に応じてサイズが異なっていてもよい。大きなディスプレイではより多くのグループを用いることができ、電流測定により多くの時間を使える用途では、より小さなグループを用いることができる。
【0022】
図4Aを参照すると、従来技術で言及した空間的に独立なグループを示してある。すでに説明したように、個々の発光素子が消費する電流の推定値を改善するため、本発明では発光素子のグループを指定して利用する。そのとき、指定したグループのうちの少なくとも1つが、指定した別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含んでいるようにする。一実施態様によれば、指定したグループは、例えば図4Bに示してあるように一部が重複していてもよい。あるいは図4Cに示してあるように、1つのグループが完全に別のグループの中に含まれていてもよい。グループの位置とサイズは異なっていてもよく、OLEDディスプレイの解像度、および/またはサイズ、および/または利用法によって決めることができる。例えばOLEDディスプレイがあるサイズのグラフィック・アイコンを持つ用途で使用される予定であることがわかっている場合には、グループは、そのサイズ、またはそのサイズの好ましい倍数または約数にすることができる。
【0023】
本発明によれば、電流測定値を用い、1つのグループ内の各発光素子の補正値を計算することができる。各発光素子に関して得られる補正値は同じになるかもしれないが、補正値は異なっている可能性のほうが高い。図5Aと図5Bを参照すると、9つの発光素子12からなる複数のグループを、互いに隣接したグループ50、52、54、56と、それと重なるグループ50'、52'、54'、56'として示してある(ダッシュを付けた各グループは、発光素子1つ分だけ右下に移動している)。各グループの発光素子12は、そのグループ内の発光素子の空間位置に対応する添字で指定される。例えばグループ50の中にある左上の発光素子は500,0と表記し、グループ54の中にある右下の発光素子は542,2と表記してある。
【0024】
さまざまな計算法を利用して電流消費を推定し、各グループの各発光素子の補正値を計算することができる。多数の補正値が2つ以上のグループに共通する1つの発光素子について形成される場合には、その推定値を組み合わせてより正確な1つの推定値を形成する。好ましい1つの方法は、各発光素子に関するより正確な推定値を、その各発光素子が属するさまざまなグループ内でのその発光素子の空間位置と、これらグループの測定値とに応じて内挿するというものである。内挿した電流測定値から、内挿補正値を計算することができる。3つの発光素子を含む複数のグループがあって各グループの2つの発光素子が互いに重なっている一次元の例では、aとbが興味の対象である1つの発光素子を含む1つのグループのディスプレイ内における空間位置を表わし、Pが興味の対象であるその発光素子の内挿された電流推定値であり、M (a, b)がそのグループの電流測定値であるとすると、各発光素子の推定値は、以下のように計算できる。
P = (2×M (a, b) + M (a-1, b) + M (a+1, b))/4
この計算は、bのさまざまな値に関する推定値を組み合わせ、適切な重みを付けることによって二次元に拡張することができる。
【0025】
この例によれば、1つのグループ内の各発光素子に関する内挿された推定値は、そのグループの複数の測定値を重み付けして組み合わせた値に等しい。ただし、重みは、そのグループ内の発光素子の位置に応じて割り当てられる。グループに関するより多くの測定値と別の重み付け法を利用した別の多くの内挿法が可能である。数学では、多彩な内挿計算法が知られている。次に、個々の補正値を各発光素子に関して計算することができる。指定するグループが同じままに留まる特別な一実施態様では、1つのグループ内の各発光素子は同じ電流を消費すると仮定することができ、そのグループの各発光素子に関する共通の補正値は、そのグループに関する1回目と2回目の電流測定値を比較することによって計算でき、個々の発光素子の推定値は、そのグループ補正値から内挿することができる。本発明に合った多彩な変換法または計算法を利用することができる。例えば測定したデータまたは計算したデータを1つの数学的空間(例えば線形空間)から別の数学的空間(例えば対数空間)に変換すること、またはその逆が可能である。
【0026】
別の実施態様では、重なりがより少ないグループを用いることができる。例えば図6に示してあるように、隣り合ったグループの両方が共通する1つの発光素子列を含んでいる。この場合には、用いられるグループの数がより少ないため計算の回数がより少なくなる。内挿の計算は、例えば(水平方向の)2つ目の発光素子ごとに行なうとよい。そのような場合、適切な内挿は以下のようになろう。
P- = (M (a, b) + M (a, b-1)/2
P+ = (M (a, b) + M (a+1, b)/2
ただしP+は、グループ (a, b)とグループ(a+1, b)に共通する発光層であり、P-は、グループ (a, b)とグループ(a-1, b)に共通する発光層である。
【0027】
図7を参照すると、興味の対象となる特定の領域における補正を繰り返しによって改善することも可能である。例えばグループのサイズをより大きくすると、OLEDデバイス内で劣化状態が異なることを意味する電流測定値が大きく変化した領域を素早く見つけることができる。次に、そのより大きなグループからの発光素子を含むより小さなグループをさらに規定し、そのより小さなグループで電流を測定することができる。より小さなグループからはより多数の測定値が得られるため、個々の発光素子に関する内挿の計算はより正確になり、その結果として画像信号の補正が改善される。このプロセスは、ディスプレイの用途にとって十分な補正がなされるまで、ますます小さなグループにして繰り返すことができる。グループに関して選択するサイズは、ディスプレイ上で利用する情報コンテンツの表示サイズ(例えばアイコンのサイズ、またはテキストのサイズ)と関係づけることができる。より小さなグループの発光素子に関する内挿は、そのより小さなグループだけに関する測定値の組み合わせに基づいて行なってもよいし、より大きなグループとより小さなグループを合わせた測定値の組み合わせに基づいて行なってもよい。このような繰り返し法は、図5と図6に示した重複化技術と組み合わせることができる。
【0028】
図8に示した別の一実施態様では、発光素子からなる1つ以上のグループが、サンプリングする部分集合として発光素子の一次元アレイまたは二次元アレイをさらに含んでいる。風景に関するコンテンツが特別な構造を持つことがわかっている場合には、その構造内でよりハードに駆動される発光素子を選択的にサンプリングすることができる。例えばパターン化された背景を用いる場合、そのパターン中のより明るい発光素子60をまとめてサンプリングするとともに、より暗い発光素子62をまとめてサンプリングすることで、ディスプレイ内のさまざまな発光素子による消費電流の品質のよりよい指標を提供し、したがってより正確な補正値を提供することができる。
【0029】
OLED材料は時間経過とともに劣化するため、OLEDの抵抗は増大し、所定の入力画像信号が与えられたときの消費電流は低下し、補正が大きくなる。ある時点で制御回路16がもはや画像信号の補正をできなくなるほど画像信号の補正が大きくなる。その結果、ディスプレイは明るさまたは色を仕様にもはや合わせることができなくなり、最適な性能が維持される寿命の終わりに到達する。しかしディスプレイは性能を低下させながら動作し続けるため、徐々に劣化していく。さらに、ディスプレイがもはや仕様を満たすことができなくなる時点は、最大の補正値が計算されたときとしてディスプレイのユーザーに知らせることができるため、ディスプレイの性能に関する有用なフィードバックとなる。あるいはディスプレイの全体的な明るさを低下させ、光出力の局所的な欠陥を補正することもできる。
【0030】
本発明の構成は単純にすることができ、必要とされるのは、(従来のディスプレイ制御装置に加え、)電流測定回路と、メモリと、所定の画像信号に関する補正値を決定するための計算回路だけである。電流累積情報または時間情報は不要である。OLEDデバイスの使用中に測定値を更新するためディスプレイは定期的にオフにされるが、測定の頻度は非常に少なく、例えば数ヶ月、数週間、数日、数十時間にわたって使用したときである。補正値の計算は、使用中に定期的に、または電源をオンにしたとき、または電源をオフにしたとき、デバイスの電源は入っているが不使用中に、またはユーザーの信号に応答して、実行することができる。測定には1つのグループにつきほんの数ミリ秒しかかからないため、どのユーザーへの影響も限られている。あらゆるユーザーへの影響をさらに小さくするには、個々のグループの測定を異なるときに行なうとよい。
【0031】
本発明を利用してカラー・ディスプレイの色の変化を補正することができる。図2を参照して指摘したように、画素内のさまざまな発光素子の中を電流が通過すると、それぞれの色の発光素子の材料は異なった劣化の仕方をすることになる。所定の1つの色の発光素子を含むグループを作り、そのグループのためにディスプレイが消費する電流を測定することにより、その所定の色の発光素子のための補正を、それとは異なる色の発光素子とは別に計算することができる。
【0032】
本発明を拡張し、補正された画像信号と、測定された電流と、材料劣化との間の複雑な関係が含まれるようにすることができる。ディスプレイの多彩な出力に対応して多数の画像信号を使用することができる。例えばディスプレイの明るさのレベルごとに異なる画像信号を用いることができる。補正値を計算するとき、異なった所定の画像信号を用いることにより、ディスプレイの明るさのレベルごとに別々の補正値を得ることができる。次に、ディスプレイで必要とされる明るさのレベルごとに独立した1つの補正信号を使用する。すでに指摘したように、これは、発光素子の各グループ(例えば色の異なる発光素子のグループ)について行なうことができる。したがって補正値により、それぞれの材料が劣化するにつれて、それぞれの色に関するディスプレイの明るさのレベルごとに補正を行なうことができる。
【0033】
OLEDディスプレイはかなり大量の熱を散逸させるため、長時間にわたって使用するときには極めて熱くなる。出願人が実施した追加の実験により、温度と、発光素子によって生じる電流との間には密接な関係があることが明らかになった。これはおそらくOLEDの電圧が温度に依存するためであろう。したがってディスプレイをある期間使用し続けると、補正値を計算する際にディスプレイの温度を考慮する必要が出てくる可能性がある。それとは逆に、ディスプレイを使用していないと仮定する場合、またはディスプレイを冷却する場合には、ディスプレイは所定の周囲温度(例えば室温)にあるため、補正値を計算する際にディスプレイの温度を考慮する必要はないと仮定できよう。例えば比較的頻繁に短時間の使用がなされる携帯デバイスは、電源をオンにしたときにディスプレイの補正値を決定すれば、温度補正は不要であろう。より長時間にわたって連続的にオンにされる用途のディスプレイ(例えばモニタやテレビ)は、温度調節を必要とするか、ディスプレイの温度の問題を避けるために電源をオンにしているときに補正することができる。
【0034】
電源をオフにしたときにディスプレイを較正するのであれば、ディスプレイは周囲温度よりも著しく熱くなっている可能性があるため、温度効果を含めて較正することが好ましい。これは、例えば基板またはデバイスのカバーの上に配置した熱電対を用いて、またはディスプレイのエレクトロニクスと一体化した温度感知素子(例えばサーミスタ温度センサー22(図1参照))を用いてディスプレイの温度を測定することによって実現できる。さらに、ディスプレイの温度が安定点に到達するまで待ち、その時点で温度を測定することができる。常時使用しているディスプレイでは、ディスプレイは周囲温度よりもかなり高い温度で動作している可能性が大きいため、温度をディスプレイの較正に取り入れることができる。温度センサー22は温度信号17を提供し、制御装置16はその温度信号を用いて電流測定値と画像信号をより正確に補正することができる。
【0035】
不正確な電流読み取り値またはディスプレイの十分に補償されていない温度によって厄介な問題が生じる可能性をさらに減らすため、入力画像信号に適用する補正信号の変化を制御装置で制限するとよい。例えば1つの発光素子のための補正値が単調増加するように制限すること、および/または変化を所定の最大値に制限すること、および/または計算により寿命までその発光素子の平均輝度が一定に維持されるようにすること、および/または計算により、その発光素子の寿命まで輝度レベルが低下し続けるが、補正されていない発光素子よりは低下がゆるやかになるようにすること、および/または計算によりその発光素子の白色点が一定に維持されるようにすることができる。
【0036】
より詳細には、劣化プロセスは逆転しないため、計算で求める補正値は単調増加するように制限することになろう。補正値のいかなる変化も大きさを制限することができる(例えば5%までの変化)。補正値の変化を時間平均することもできる。例えば指示された補正値の変化を以前の値と合わせて平均して変動を小さくすることができる。あるいはいくつかの読み取り値を取得した後に実際の補正を行なうことができる。例えばデバイスをオンにするごとに補正値の計算を実施し、計算された多数の補正値(例えば10個)を平均して実際の補正値を生成させ、それを画像信号に適用する。ディスプレイが暑い環境の中で常時使用される場合には、そのディスプレイに供給される電流を減らし、そのような環境での導電率の増大を補償することが望ましかろう。
【0037】
補正された画像信号は、OLEDディスプレイ装置に応じてさまざまな形態を取ることができる。例えばアナログ電圧レベルを利用して画像信号を特定する場合には、補正によってその画像信号の電圧が変化することになろう。これは、従来技術で知られているように増幅器を用いて行なうことができる。第2の例として、ディジタル値(例えばアクティブ-マトリックスの1つの発光素子の位置に配置した電荷に対応するディジタル値)を用いる場合には、従来技術でよく知られているようにルックアップ表を用いてそのディジタル値を別の補償済みディジタル値に変換することができる。典型的なOLEDディスプレイ装置では、ディジタル・ビデオ信号またはアナログ・ビデオ信号を用いてディスプレイを駆動する。実際のOLEDは、OLEDに電流を流すのに用いる回路に応じて電圧駆動または電流駆動にすることができる。ここでも、これらの方法は従来技術でよく知られている。
【0038】
入力画像信号を変更して補償済み画像信号を形成するのに用いられる補正値は、ディスプレイの性能に関する多彩な属性の経時変化を制御するのに使用できる。例えば入力画像信号に補正信号を適用するのに用いられるモデルは、ディスプレイの平均輝度または白色点を一定に保持することができる。あるいは補正済み画像信号を生成させるのに用いる補正信号により、劣化が原因となる平均輝度の低下を補正信号なしの場合よりもよりゆるやかにすること、またはディスプレイの制御信号を選択してより低い輝度を維持し、デバイスの効率変化をわかりにくくすることができる。
【0039】
本発明の好ましい一実施態様では、1988年9月6日にTangらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,769,292号や、1991年10月29日にVanSlykeらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,061,569号などに開示されている小分子OLEDまたはポリマーOLEDからなる有機発光ダイオード(OLED)を備えるデバイスで、本発明が用いられる。有機発光ディスプレイの多くの組み合わせとバリエーションを利用してこのようなデバイスを製造することができる。
【0040】
デバイスの全体構造
【0041】
本発明はたいていのOLEDデバイス構造で利用することができる。このような構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。
【0042】
本発明をうまく実現できる有機層の構成は多数ある。典型的な従来の1つの構造を図9に示してあり、この構造は、基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、電子輸送層111と、カソード113からなる。これらの層について以下に詳細に説明する。基板はカソードに隣接する位置でも、基板が実際にアノードまたはカソードを構成していてもよいことに注意されたい。アノードとカソードに挟まれた有機層を便宜上有機EL素子と呼ぶ。有機層を合わせた厚さは500nm未満であることが好ましい。
【0043】
OLEDのアノードとカソードは、導電体260を通じて電圧/電流源250に接続されている。OLEDは、アノードとカソードの間に、アノードがカソードと比べて正の電位となるように電圧を印加することによって動作する。正孔はアノードから有機EL素子に注入され、電子はカソードから有機EL素子に注入される。ACモードではACサイクル中にポテンシャル・バイアスが逆転して電流が流れないわずかな期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときにデバイスの安定性向上を実現できることがときにある。AC駆動のOLEDの一例が、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されている。
【0044】
基板
【0045】
本発明のOLEDデバイスは、支持用基板の上に形成されて、カソードまたはアノードが基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノードであることが一般的だが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板は、透光性または不透明にすることができる。基板が透光性である場合には、反射性または光吸収性の層を用いてカバーを通過する光を反射させたり吸収したりすることで、ディスプレイのコントラストを改善する。基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、回路板材料などがある。もちろん、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0046】
アノード
【0047】
EL光をアノード103を通して見る場合には、アノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物だが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノードとして用いることができる。EL光をカソード電極だけを通して見るような用途では、アノードの透光特性は重要でないため、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0048】
正孔注入層(HIL)
【0049】
必ずしも必要ではないが、正孔注入層105をアノード103と正孔輸送層107の間に設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。
【0050】
正孔輸送層(HTL)
【0051】
正孔輸送層107は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0052】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を有するものである。正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、または芳香族第三級アミンの混合物で形成することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン。
【0053】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミン基を有する第三級芳香族アミン(オリゴマー材料を含む)を使用できる。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0054】
発光層(LEL)
【0055】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層(LEL)109は、ルミネッセンス材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数のゲスト発光材料をドープしたホスト材料からなる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。ドーパントは、通常は強い蛍光染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO00/70655に記載されている遷移金属の錯体)も有用である。ドーパントは、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。ポリマー材料(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン、PPV)))もホスト材料として使用することができる。その場合には、小分子ドーパントをポリマーからなるホストに分子として分散させること、またはドーパントを少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加することができる。
【0056】
ドーパントとして染料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ電位の比較である。ホストからドーパント分子に効率的にエネルギーが移動するための必要条件は、ドーパントのバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体の場合には、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高くてホストからドーパントにエネルギーが移動できることも重要である。
【0057】
有用であることが知られているホスト材料および発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものがある。
【0058】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体と、それと同様の誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成する。有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0059】
有用なホスト材料の他のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,935,721号に記載されているアントラセンの誘導体(例えば9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンとその誘導体)、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])などがある。カルバゾール誘導体はリン光発光体にとって特に有用なホストである。
【0060】
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物などがある。
【0061】
電子輸送層(ETL)
【0062】
本発明の有機EL阻止の電子輸送層111を形成するのに用いられる好ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド化合物であり、その中にはオキシンそのもの(一般に8キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含まれる。このような化合物は電子を注入して輸送するのを助け、高性能を示し、容易に薄膜の形態になる。オキシノイド系化合物の例は、すでにリストにして示した。
【0063】
他の電子輸送材料として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体と、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。ベンズアゾールとトリアジンも有用な電子輸送材料である。
【0064】
カソード
【0065】
アノードだけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソード113は、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、有機層(例えば電子輸送層(ETL))に接する薄い電子注入層(EIL)を備えていて、その上により厚い導電性金属層を被せた構成の二層がある。その場合、EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0066】
カソードを通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、アメリカ合衆国特許第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、ヨーロッパ特許第1 076 368号、アメリカ合衆国特許第6,278,236号、第6,284,393号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着)によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー・アブレーション、選択的化学蒸着などがある。
【0067】
他の一般的な有機層とデバイス構造
【0068】
層109と111を場合によってはまとめて単一の層にし、発光と電子輸送の両方をサポートする機能を担わせることができる場合がある。発光ドーパントを正孔輸送層に添加できることも従来技術で知られている。その場合、正孔輸送層がホストとして機能する。多数のドーパントを1つ以上の層に添加し、例えば青色発光材料と黄色発光材料、またはシアン色発光材料と赤色発光材料、または赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料を組み合わせて白色発光OLEDを作ることができる。白色発光デバイスは、例えば、ヨーロッパ特許第1 187 235号、アメリカ合衆国特許出願公開202/0025419、ヨーロッパ特許第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号に記載されている。
【0069】
追加の層(例えば従来技術で知られている電子阻止層または正孔阻止層)を本発明のデバイスで用いることができる。正孔阻止層は、例えばアメリカ合衆国特許公開2002/0015859に記載されているように、リン光発光デバイスの効率を向上させるのに一般に使用される。
【0070】
本発明は、例えばアメリカ合衆国特許第5,703,436号と第6,337,492号に記載されているようないわゆる積層デバイス構造で使用することができる。
【0071】
有機層の堆積
【0072】
上記の有機材料は、気相法(例えば昇華)を通じてうまく堆積するが、流体(例えば溶媒)から堆積させることもできる(そのときには、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)。材料がポリマーである場合には溶媒堆積が有用だが、他の方法(例えばスパッタリング、ドナー・シートからの熱転写)も利用できる。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料を含む層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0073】
封止
【0074】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封止と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx)、テフロン(登録商標)、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封止法として知られている。
【0075】
光学的最適化
【0076】
本発明のOLEDデバイスでは、発光特性の向上を望むのであれば、公知のさまざまな光学的効果を利用することが可能である。例示すると、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、色変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングは、特にカバーの上に、またはカバーの下にある電極保護層に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】フィードバック回路と制御回路を有する本発明の一実施態様によるOLEDディスプレイの概略図である。
【図2】OLEDディスプレイの素子の劣化を示すグラフである。
【図3A】本発明の実施態様を示すフローチャートである。
【図3B】本発明の実施態様を示すフローチャートである。
【図4A】発光素子のグループを示す図である。
【図4B】発光素子のグループを示す図である。
【図4C】発光素子のグループを示す図である。
【図5A】発光素子のグループを示す図である。
【図5B】発光素子のグループを示す図である。
【図6】発光素子のグループを示す図である。
【図7】発光素子の分割されたグループを示す図である。
【図8】発光素子のサンプリングされたグループを示す図である。
【図9】従来のOLEDデバイスの部分断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 OLEDディスプレイ
12 発光素子
13 電流信号
14 電流測定装置
16 制御装置
17 温度信号
18 入力画像信号
20 補正済み入力画像信号
22 温度測定装置
24 発光素子のグループ
26 発光素子のグループ
50 発光素子のグループ
50' 発光素子のグループ
500,0 発光素子
50'0,0 発光素子
52 発光素子のグループ
52' 発光素子のグループ
54 発光素子のグループ
54' 発光素子のグループ
542,2 発光素子
54'2,2 発光素子
56 発光素子のグループ
56' 発光素子のグループ
60 明るい画素
62 暗い画素
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層
107 正孔輸送層
109 発光層
111 電子輸送層
113 カソード
200 グループを指定するステップ
201 電流を取得するステップ
202 電流を測定するステップ
204 電流を推定するステップ
206 ディスプレイを動作させるステップ
208 グループを指定するステップ
210 電流を測定するステップ
212 電流を推定するステップ
214 補正を計算するステップ
216 画像を入力するステップ
218 画像を補償するステップ
220 補償済み画像を出力するステップ
222 補償済み画像を表示するステップ
250 電圧/電流源
260 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力が時間経過または使用とともに変化する複数の発光素子を備えるOLEDディスプレイを駆動するための画像信号を補償する方法であって、
a)個々の発光素子が、既知の画像信号に1回目に応答して消費する電流の第1の測定値または第1の推定値を取得するステップと;
b)発光素子からなる複数のグループを指定し、そのとき、指定したそのグループのうちの少なくとも1つが、指定した別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含んでいるようにするステップと;
c)指定したそれぞれのグループが、既知の画像信号に2回目に応答して消費する合計電流を測定するステップと;
d)その測定した合計電流に基づき、個々の発光素子が消費する電流の第2の推定値を形成するステップと;
e)第1の電流値と第2の電流値の差に基づいて個々の発光素子に関する補正値を計算するステップと;
f)その補正値を画像信号に対して用いて発光素子の出力変化を補償し、補償済み画像信号を発生させるステップを含む方法。
【請求項2】
指定した上記グループのうちの少なくとも2つのグループのサイズが異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記グループのそれぞれが別の1つのグループと重なる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記グループのうちの1つのグループの位置が、別のグループの中に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記補正値が、指定した上記グループのうちの少なくとも1つのグループに含まれる各発光素子で同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記補正値が、指定した上記グループのうちの少なくとも1つに含まれる少なくとも2つの発光素子で異なっている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの発光素子が消費する電流の上記第2の推定値を、測定された上記合計電流から内挿する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記内挿が、指定したグループ内の少なくとも1つの発光素子の位置に依存する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
指定した1つのグループ内でサブグループを繰り返して指定し、そのサブグループのうちの少なくとも1つが消費する合計電流を測定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのサブグループ内の個々の発光素子が消費する電流の推定値を、そのサブグループについて測定された合計電流に基づいて形成するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
異なる画像信号に関する複数の補正値を計算するため、指定した上記グループが消費する合計電流の測定を、既知の異なる複数の画像信号に応答して行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
指定した上記グループが消費する合計電流の測定を、電源をオンにしたとき、または電源をオフにしたとき、デバイスの電源は入っているが不使用中に、またはユーザーの信号に応答して、または定期的に実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法を時間経過の中で繰り返して再計算した補正値を取得し、1つの発光素子のための補正値が単調増加するように制限すること、および/または変化を所定の最大値に制限すること、および/または計算により寿命までその発光素子の平均輝度が一定に維持されるようにすること、および/または計算により、その発光素子の寿命まで輝度レベルが低下し続けるが、補正されていない発光素子よりは低下がゆるやかになるようにすること、および/または計算によりその発光素子の白色点が一定に維持されるようにすることを特徴とする方法。
【請求項14】
発光素子の出力が温度とともに変化することと、ディスプレイの温度を感知し、その温度を用いて補正値を計算するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ディスプレイが、画素アレイを含むカラー・ディスプレイであり、各画素が、色の異なる複数の発光素子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記グループの位置をOLEDディスプレイの用途によって決める、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
指定した上記グループのうちの1つ以上が、サンプリングする部分集合として一次元または二次元の発光素子アレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
1回目の指定として発光素子からなる第1の複数のグループを指定することにより、個々の発光素子が消費する第1の測定値または第1の推定値を取得し、既知の画像信号に1回目に応答し、その第1のグループのそれぞれが消費する第1の合計電流を測定し、その測定された第1の合計電流に基づき、個々の発光素子が消費する第1の推定値を形成することと;2回目の指定として発光素子からなる第2の複数のグループを指定することにより、個々の発光素子が消費する第2の推定値を取得し(ただし、指定した第2のグループのうちの少なくとも1つは、指定した第2のグループのうちの別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を含んでいる)、既知の画像信号に2回目に応答し、第2のグループのそれぞれが消費する第2の合計電流を測定し、その測定した第2の合計電流に基づき、個々の発光素子が消費する電流の第2の推定値を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
a)出力が時間経過または使用とともに変化する複数の発光素子と;
b)ディスプレイが消費する合計電流を感知して電流信号を発生させる電流測定装置と;
c)発光素子からなる複数のグループを指定し(ただし、指定したグループのうちの少なくとも1つが、指定した別のグループと共通する少なくとも1つの発光素子を備えている)、既知の画像信号に応答して指定した発光素子グループをアクティブにし、該電流信号に応じて各グループ内の発光素子について補正値を計算し、その補正値を画像信号に適用して、各グループの発光素子の出力が時間経過または使用とともに変化するのを補償する補償済み画像信号を生成させる制御装置とを備えるOLEDディスプレイ。
【請求項20】
発光素子の出力が温度とともに変化することと、温度センサーをさらに備えることと、上記制御装置が温度にも応答して上記補正値を計算することを特徴とする、請求項19に記載のOLEDディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−515219(P2009−515219A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539111(P2008−539111)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/043187
【国際公開番号】WO2007/053783
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】