説明

劣化診断装置及び劣化診断方法

【課題】膨大なデータベースを構築する必要がなく、電線の劣化度を容易に且つ正確に診断することができる劣化診断装置を提供する。
【解決手段】本劣化診断装置は、Lab表示系で色彩を測定するための色彩色度計5と、電線を通すための開口が形成された箱体10と、箱体10の内部に設けられた光源11と、開口を通って箱体10の内部に配置された電線を固定するための固定装置12とを備える。そして、固定装置12に固定された未使用電線の白色の絶縁層3の色彩を、光源11を発光させた状態で色彩色度計5によって測定した場合に、bの値が0.5以上3.0以下となるように、各構成の位置関係や光源11の仕様等を調整しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線(ケーブル)の劣化を非破壊的に診断する劣化診断装置及び劣化診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2には、電線(ケーブル)の劣化を非破壊的に診断する方法が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の方法では、先ず、ケーブルの絶縁層に超音波を送信し、その伝播速度を検出する。そして、検出した伝播速度を基準速度と比較することにより、ケーブルの劣化度を判定している。
【0003】
特許文献2に記載の方法では、ケーブルの絶縁層或いはシースに衝撃体を衝突させ、衝突前後の衝撃体の速度から表面硬度を検出する。そして、検出した表面硬度の変化に基づいて、ケーブルの劣化度を判定している。
【0004】
また、下記特許文献3には、絶縁材料の劣化を非破壊的に診断する方法として、絶縁材料から発生した二酸化炭素及びオゾンを検出するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3081734号公報
【特許文献2】特許第3014947号公報
【特許文献3】特開平3−277118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電線やケーブルは、絶縁層やシースの組成成分が、製造メーカによってそれぞれ異なる。このため、電線やケーブルに同じ環境負荷を与えても、絶縁層の硬化は、製造メーカ毎に異なる挙動を示す。
【0007】
このような理由から、特許文献1及び2に記載の方法によってケーブルの劣化度を判定する場合、その判定基準をケーブルの製造メーカ毎に用意しなければならなかった。このため、上記判定を行うために、膨大なデータベースを構築しなければならず、多大な時間と手間とを要するといった問題があった。
また、ある製造メーカについて新しいケーブルが入手できない場合、その製造メーカのケーブルに関しては、劣化度を判定することができなくなってしまう。
【0008】
特許文献3に記載の劣化診断方法も上記と同様であり、汎用性に欠けることが問題であった。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、膨大なデータベースを構築する必要がなく、電線の劣化度を容易に且つ正確に診断することができる劣化診断装置及び劣化診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る劣化診断装置は、Lab表示系で色彩を測定するための色彩測定装置と、電線を通すための開口が形成された箱体と、箱体の内部に設けられた光源と、開口を通って箱体の内部に配置された電線を固定するための固定装置と、を備え、固定装置に固定された未使用電線の白色の絶縁層の色彩を、光源を発光させた状態で色彩測定装置によって測定した場合に、bの値が0.5以上3.0以下となるように調整されたものである。
【0011】
この発明に係る劣化診断方法は、Lab表示系で色彩を測定するための色彩測定装置と、電線を通すための開口が形成された箱体と、箱体の内部に設けられた光源と、開口を通って箱体の内部に配置された電線を固定するための固定装置と、を備えた劣化診断装置によって電線の劣化を診断する方法であって、未使用電線を固定装置に固定し、未使用電線の白色の絶縁層の色彩を、光源を発光させた状態で色彩測定装置によって測定するステップと、未使用電線の色彩の測定時に、bの値が0.5以上3.0以下となるように調整を行うステップと、劣化診断の対象となる電線を固定装置に固定し、その電線の白色の絶縁層の色彩を、光源を発光させた状態で色彩測定装置によって測定するステップと、色彩測定装置によって測定された色彩のbの値が5.0以上の場合に、電線の劣化を判定するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、膨大なデータベースを構築する必要がなく、電線の劣化度を容易に且つ正確に診断できて、余寿命推定に関する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電線サンプルの構造を示す概略図である。
【図2】図1に示す電線サンプルの要部拡大図である。
【図3】色彩度の測定方法を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態1における劣化診断装置の構成を示す図である。
【図5】電線サンプルの絶縁抵抗の測定方法を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態2における劣化診断装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0015】
実施の形態1.
先ず、図1及び図2に基づき、本実施の形態で用いられる電線サンプルの構造について説明する。図1は電線サンプルの構造を示す概略図、図2は図1に示す電線サンプルの要部拡大図である。
【0016】
電線サンプル1は、ビニール絶縁ビニールシース平型ケーブル(VVF:Vinyl Insulated Vinyl sheathed Flat−type cable)である。電線サンプル1は、銅製の導体2を塩化ビニル製の絶縁層3で被覆した電線を、塩化ビニル製のシース4で更に被覆したものである。導体2の直径(φ)は、1.6mm又は2.0mm、2.6mmである。図1に示す電線サンプル1は、絶縁層3の色が赤(R)、白(W)、黒(B)からなる3本の電線を一つにまとめた3芯VVFである。このような電線サンプル1の例として、住電日立ケーブル株式会社製HST−SS30−3000Cが挙げられる。
【0017】
なお、電線の仕様はJISで決まっており、VVFについては、JIS C 3342等で規定されている。今回、出願人が用いた電線サンプル1について言えば、導体2の径が1.6mm又は2.0mm、絶縁層3の厚さが0.8mmの仕様である。実際にノギスを用いて白色の絶縁層3の最大幅(径)を測定したところ、導体2の径が1.6mmのものでは約3.2mm、導体2の径が2.0mmのものでは約3.6mmであった。また、導体2の径が2.6mmの場合は、絶縁層3の厚さが1.0mmの仕様である。これについても白色の絶縁層3の最大幅(径)を実測したところ、その測定値は約4.6mmであった。
【0018】
図3は色彩度の測定方法を説明するための図である。図3は、電線サンプル1の白色の絶縁層3の色彩を、汎用の色彩色度計(色彩測定装置)5を用いて測定する時の状態を示している。
【0019】
色彩色度計5は、測定ツール6、電源・表示装置7により、その要部が構成される。測定ツール6と電源・表示装置7は、接続ケーブル8によって接続されている。色彩色度計5によって白色の絶縁層3の色彩を測定する場合、先ず、上記構成の電線サンプル1のシース4を剥がして、白色の絶縁層3を所定の長さに渡って露出させる。次に、露出させた上記白色の絶縁層3をジグ9に固定する。そして、ジグ9上にセットされた絶縁層3の表面に測定ツール6を適切に接触させ、かかる状態で電源・表示装置7のスイッチ(図示せず)を押す。すると、電源・表示装置7から色彩の測定に必要な光が発信され、その光が、接続ケーブル8を経由して測定ツール6から絶縁層3の表面に照射される。測定ツール6から絶縁層3に照射された光の一部は、反射光となって測定ツール6及び接続ケーブル8を経由した後、電源・表示装置7に入力される。電源・表示装置7では、入力された上記反射光に基づいて色彩度を演算し、所定の表示器(図示せず)にその演算結果を表示させる。
【0020】
色彩の表示系には、(L、a、b)、(L、C、H)、マンセル、(Dx、y、z)、(Y、x、y)等がある。本実施の形態では、ばらつきの小さいLab表示系(L(値が大きいほど明るい、小さいほど暗い)、a(値が大きいほど赤、小さいほど緑)、b(値が大きいほど黄、小さいほど青))によって色彩を測定する。
【0021】
上記色彩色度計5の例として、コニカミノルタセンシング株式会社製CR−200が挙げられる。なお、色彩色度計5の分析領域、即ち、色彩の測定を行うことができる領域が、白色の絶縁層3の幅よりも大きい場合、色彩色度計5の測定結果には、絶縁層3の下地の影響が表れてしまう。例えば、色彩色度計5の分析領域がφ8mmの場合、本電線サンプル1の絶縁層3の幅は、3.2mm、3.6mm、4.6mmであるため、両隣の電線(R、B)が上記分析領域に含まれないようにセットして、色彩の測定を行わなければならない。また、電線サンプル1をセットするためのジグ9の色にも配慮する必要がある。更に、色彩を測定する際に、測定ツール6と電線サンプル1との隙間や、電線サンプル1とジグ9との隙間から、蛍光灯等の外からの光(以下、「外光」という)が取り込まれる恐れもある。このため、色彩を測定する際には、上記外光の制御も必要になる。
【0022】
本発明は、上記内容を考慮して白色の絶縁層3の色彩を正確に測定し、その測定結果から電線の劣化度を診断するものである。
以下に、本発明に係る劣化診断装置について、具体的に説明する。
【0023】
図4はこの発明の実施の形態1における劣化診断装置の構成を示す図である。
本劣化診断装置は、上述の色彩色度計5、箱体10、光源11、固定装置12により、その要部が構成される。
【0024】
箱体10は、外光を調整するためのものである。箱体10は、室内蛍光灯等の光を遮断するための所定の密閉度を有している。また、箱体10には、その側壁に、電線サンプル1を通すための開口(例えば、貫通孔)が形成されている。出願人は、厚さ1mmのアルミニウム(JIS 1050準拠:株式会社ニラコより購入)を接着剤で接合し、内寸がL150mm×W100mm×H50mmとなる箱体10を製作した。また、箱体10の内壁を黒スプレー(株式会社東急ハンズ製アクリルスプレー黒、300ml、HS)で均一に塗装した。
【0025】
光源11は、白色の絶縁層3の色彩を測定するため、更に、測定環境によって外光が変化しないように、外光を一定にするために備えられたものである。光源11は、箱体10の内部に設けられており、その内部空間を所定の光量で所定の位置から照らすことができるように配置されている。具体的に、光源11として、ナツメ球20Wホワイト(株式会社ヤザワコーポレーション製T201720W)を用いた。
【0026】
固定装置12は、箱体10の内部において、色彩色度計5の測定ツール6と上記開口を通って箱体10の内部に配置された電線サンプル1とを適切な位置関係で固定するためのものである。固定装置12によって電線サンプル1と測定ツール6とが適切に固定されることにより、電線サンプル1の白色の絶縁層3が、測定ツール6の測定領域に対して適切に配置される。例えば、固定装置12は、電線サンプル1のシース4(及び、白色の絶縁層3)を、固定部12aによって固定する。また、固定装置12は、測定ツール6の先端部分を固定部12bによって固定し、測定ツール6の測定方向が、電線サンプル1の白色の絶縁層3に対して直交するように、測定ツール6を保持する。
【0027】
上記構成を有する劣化診断装置では、白色の絶縁層3の色彩に基づいて電線サンプル1の劣化度を判定することができるように、光源11の仕様や、色彩色度計5(の測定ツール6)、箱体10、光源11、固定装置12(に固定された電線サンプル1)の位置関係及び色の設定が行われている。具体的には、未使用電線を固定装置12に固定し、その未使用電線の白色の絶縁層の色彩を、光源11を発光させた状態で色彩色度計5によって測定した場合に、bの値が0.5以上3.0以下となるように調整が行われている。なお、電線サンプル1の劣化度を判定する際に、色彩色度計5に備えられている光源も使用する。そして、このような調整が行われた劣化診断装置を用いることにより、本願発明の上記目的を達成することが可能となる。即ち、膨大なデータベース等を構築することなく、電線の劣化度を容易に且つ正確に診断することができる。
以下に、本劣化診断装置の有効性を証明するために出願人が行った実験について、具体的に説明する。
【0028】
今回、出願人は、上記構成の電線サンプル1について、シース4の長さが200mm、白(W)色の絶縁層3の露出長さが30mm、導体2の露出長さが10mmとなるように被覆を剥がしてテストピースを製作した。また、上記構成の劣化診断装置について、未使用電線の白色の絶縁層の色彩を測定した際にbの値が0.5以上3.0以下となるような調整を予め施し、その劣化診断装置を用いて以下の測定を行った。
【0029】
出願人は、電線サンプル1の劣化度を示す指標として、電線サンプル1の絶縁抵抗値を採用した。図5は電線サンプルの絶縁抵抗の測定方法を説明するための図である。
電線サンプル1(テストピース)の劣化度の測定においては、先ず、電線サンプル1の一端側に飛び出ている赤(R)色の電線と、他端側の白(W)色の電線とに絶縁抵抗計13を接続し、絶縁抵抗値を測定する。次に、電線サンプル1の一端側に飛び出ている黒(B)色の電線と、他端側の白(W)色の電線とに絶縁抵抗計13を接続し、絶縁抵抗値を測定する。そして、上記測定値の小さい方の値を、電線サンプル1の絶縁抵抗値として採用した。
【0030】
これは、熱や紫外線、湿度、酸化等によって絶縁層3又はシース4が変質する際に絶縁性能が低下し、絶縁抵抗値が低下することから採用した指標である。本絶縁抵抗値は、例えば、Hewlett−Packard Company製4339Aを用いることにより、所定のプローブで導体2を挟み、電圧をかけることによって測定することができる。出願人が行った実験では、電圧を500V、測定時間をロングモードにセットし、測定を開始して30秒が経過した後の絶縁抵抗値R1を記録した。
【0031】
本実験においては、先ず、ある製造メーカ(一社)の電線サンプル1について、導体2の径(φ=1.6mm、2.0mm、2.6mm)毎にテストピースを5本製作した。そして、各テストピースについて、上記劣化診断装置を用いて白(W)色の絶縁層3の色彩を測定し、b値のみを記録した。即ち、テストピースを固定装置12に適切に固定し、その固定したテストピースの白色の絶縁層3の色彩を、光源11を発光させた状態で色彩色度計5によって測定した。また、各テストピースについて、上記方法によって絶縁抵抗値を測定した。
下記表1乃至表3はその結果である。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
表1乃至表3に示すように、同一製造メーカの電線に関しては、本劣化診断装置を用いて白(W)色の絶縁層3の色彩を測定したところ、b値のばらつきは非常に小さく、その値は2.2乃至2.6の範囲であった。また、絶縁抵抗は、全て1012Ω以上が保たれている。
【0036】
次に、別の製造メーカ4社の電線サンプル1(導体2の径1.6mm)を入手し、製造メーカ毎にテストピースを5本製作した。そして、上記と同様に、各テストピースについて、白(W)色の絶縁層3の色彩を測定してb値を記録し、絶縁抵抗値を測定した。表4乃至表7はその結果である。
【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
【表7】

【0041】
表4乃至表7に示すように、製造メーカが異なる場合であっても、白(W)色の絶縁層3の色彩のb値及び絶縁抵抗値に、あまり差はみられない。即ち、種々の製造メーカの電線について、その電線が未使用(未使用とみなされる状態)であれば、白(W)色の絶縁層3のb値を、0.5以上3.0以下の範囲に収めることができる。これは、白色の塗料が他の色と比較して選択肢が少なく、製造メーカによる差がほとんど無いためだと推測される。
【0042】
次に、上記各テストピース(サンプル番号1乃至35)を100℃の高温槽に1000時間放置した後、上記と同様の測定を行った。また、同一のテストピースを、上記高温槽に更に4000時間(計5000時間)放置した後、同様の測定を行った。表8はその結果をまとめたものである。なお、表8の絶縁抵抗の単位は(×1012Ω)である。
【0043】
【表8】

【0044】
表8に示すように、bの値は、初期値に関わらず、100℃の高温に1000時間放置した後に5以上9以下の値に、5000時間放置した後に全て10以上となった。一方、絶縁抵抗は、一部のテストピースについては僅かながら1000時間経過後に低下が始まったものの、5000時間経過後には全てのテストピースにおいて顕著に低下した。
【0045】
以上の結果から、初期のb値が0.5以上3.0以下となるように、色彩色度計5、箱体10、光源11、固定装置12の位置関係や仕様を調整しておくことにより、電線の劣化度を正確に診断することができる。即ち、上記調整が行われた劣化診断装置を用いて電線の劣化診断を行う場合は、先ず、診断対象となる電線を固定装置12に適切に固定し、その電線の白色の絶縁層3の色彩を、光源11を発光させた状態で色彩色度計5によって測定する。そして、測定したb値が5以上の場合に、電線が劣化していると判定すれば良い。
【0046】
これは、絶縁抵抗の低下原因が、絶縁層中の可塑剤蒸発による欠陥発生であり、これが発生すると同時に白色の黄色化が生じることを利用した判定方法である。即ち、白色の黄色化が生じることによってb値が上昇するため、それを電線の劣化度の判定に利用している。
【0047】
なお、上記光源11を蛍光灯、冷陰極ランプ、ハロゲンランプ、LED、有機EL、無機EL、HIDランプ、白熱電球等に変え、更に、これらの光源11が内部に納まるように箱体10の大きさを調節して表8に示す評価を行ったところ、上記と同様の結果を得ることができた。
【0048】
本実施の形態では、絶縁層3の色が、赤(R)、白(W)、黒(B)である3本の電線を一つにまとめた3芯VVFの電線サンプル1について、具体的な説明を行った。しかし、絶縁層3として白色のものが用いられていれば、如何なる電線、ケーブルであっても、上記劣化診断装置を用いて劣化度の判定を行うことができる。これについても、テストピースとしてVVF以外のものを採用して表8に示す評価を行ったところ、上記と同様の結果を得ることができた。
【0049】
また、上記実験を行った箱体10の内壁と固定装置12とに測定ツール6を当て、光源11を用いて色彩色度計5でその色彩を測定したところ、Lab表示で、L=25.4、a=0.0、b=−0.7であった。比較として、箱体10を構成していたアルミニウム板(塗装なし)の色彩を同様に測定したところ、L=63、a=0.1、b=1.5であった。
【0050】
上記箱体10と同じ形状のものを製作して内壁の塗装を行わずに上記表8と同様の評価を行ったところ、b値が異常に小さくなる場合が発生した。かかる場合、色彩色度計5(の測定ツール6)、光源11、固定装置12(に固定された電線サンプル1)の各位置を調整しながら数回測定することにより、元の数値を得ることができた。
【0051】
そこで、箱体10の内壁にさまざまな塗装を行い、上記表8と同様の評価を行ったところ、b値が負の時は1回の測定で表8と同様の結果を得ることができた。一方、b値が正の時は、上記と同様にb値が異常に小さくなる現象が発生し、再測定が必要となった。
【0052】
箱体10の内壁と固定装置12との色に関わらず、上記本願発明の目的を達成すること自体は可能である。しかし、上記現象を考慮すると、予めbの値が負となるように上記各色を調整しておくことにより、測定誤差が小さい、信頼性の高い劣化診断を行うことができるようになる。
【0053】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2における劣化診断装置の構成を示す図である。
本実施の形態における劣化診断装置には、実施の形態1における構成に加え、判定装置14が備えられている。判定装置14は、色彩色度計5の電源・表示装置7に、接続ケーブル15によって接続されている。判定装置14は、色彩色度計5によって測定された色彩のbの値が5.0以上の場合に、電線の劣化を判定する機能を有している。
【0054】
上記構成を有する劣化診断装置であれば、電源・表示装置7の表示内容を読み間違えて、劣化している電線を正常と判断してしまうようなことを防止できる。これにより、劣化診断の信頼性を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 電線サンプル
2 導体
3 絶縁層
4 シース
5 色彩色度計
6 測定ツール
7 電源・表示装置
8、15 接続ケーブル
9 ジグ
10 箱体
11 光源
12 固定装置
12a、12b 固定部
13 絶縁抵抗計
14 判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lab表示系で色彩を測定するための色彩測定装置と、
電線を通すための開口が形成された箱体と、
前記箱体の内部に設けられた光源と、
前記開口を通って前記箱体の内部に配置された電線を固定するための固定装置と、
を備え、
前記固定装置に固定された未使用電線の白色の絶縁層の色彩を、前記光源を発光させた状態で前記色彩測定装置によって測定した場合に、bの値が0.5以上3.0以下となるように調整された劣化診断装置。
【請求項2】
前記箱体の内壁の色彩を、前記光源を発光させた状態で前記色彩測定装置によって測定した場合に、bの値が0よりも小さくなるように前記内壁が調整された請求項1に記載の劣化診断装置。
【請求項3】
前記色彩測定装置によって測定された色彩のbの値が5.0以上の場合に、電線の劣化を判定する判定装置と、
を更に備えた請求項1に記載の劣化診断装置。
【請求項4】
Lab表示系で色彩を測定するための色彩測定装置と、
電線を通すための開口が形成された箱体と、
前記箱体の内部に設けられた光源と、
前記開口を通って前記箱体の内部に配置された電線を固定するための固定装置と、
を備えた劣化診断装置によって電線の劣化を診断する方法であって、
未使用電線を前記固定装置に固定し、前記未使用電線の白色の絶縁層の色彩を、前記光源を発光させた状態で前記色彩測定装置によって測定するステップと、
前記未使用電線の色彩の測定時に、bの値が0.5以上3.0以下となるように調整を行うステップと、
劣化診断の対象となる電線を前記固定装置に固定し、その電線の白色の絶縁層の色彩を、前記光源を発光させた状態で前記色彩測定装置によって測定するステップと、
前記色彩測定装置によって測定された色彩のbの値が5.0以上の場合に、電線の劣化を判定するステップと、
を備えた劣化診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154870(P2012−154870A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16069(P2011−16069)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】