説明

励振ファクタの改良された減衰のための多周波制御段

【課題】部分円弧進入システムの制御段における周方向蒸気分配均一性の欠如により生じる問題に対する択一的な解決手段を提供する。
【解決手段】蒸気タービンのための制御段10において、該制御段が、前記タービンの負荷を制御するために、蒸気進入流を調整するための、タービンの周囲に周方向に分配された複数のステージング弁12と、各ステージング弁12の下流端部に接続されたノズルチャンバ14と、ノズルチャンバの下流部分を形成する少なくとも2つの進入の円弧16と、ノズルチャンバ14の下流端部における、進入の円弧16における複数の制御段ノズル(18)と、が設けられている形式のものにおいて、各ノズルチャンバ14の進入の円弧(16)の下流端部がそれぞれ、互いに異なる周方向寸法L1,L2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービンに関する。特に、本発明は蒸気タービン制御段配列に関する。
【背景技術】
【0002】
多段蒸気タービンシステムの電力出力を絞る効率的手段は、分割された蒸気供給システムによるものであり、この場合、蒸気は、多数の隔離可能な、個々の制御可能な、進入の円弧を介して、タービン入口に進入する。部分円弧進入として知られるこの方法において、アクティブな第1段ノズルの数は、負荷の変化に応じて変化させられる。しかしながら、過去の部分円弧進入システムは、幾つかの欠点を有することが知られており、これらの欠点は、制御段における作業出力の効率を制限する。これらの制限の幾つかは、不可避な機械的制約、例えば、不可避な量のウィンデイジ及び乱流によるものであり、これは、回転する羽根が、蒸気を放出していないノズル群を通過しながら生じる。これは、特に制御段に続く第1の羽根列のための問題である、羽根の機械的な励振を生じる。この問題に対する解決は、混合のための体積を増大し、これにより羽根により均一な流れの分配を提供することによって、進入円弧と回転する羽根との間の距離を増大させることである。しかしながら、この解決手段は、タービン全長を増大するので望ましくない。
【0003】
翼の機械的励振の効果を減じかつタービンの混合区分の短縮を可能にする別の解決手段は、羽根及びノズルをより剛性にすることである。しかしながら、このようなアプローチは、より剛性の羽根は概して性能を低減するので、効率を高めるという要求に対して矛盾する。
【0004】
米国特許第4780057号明細書は択一的な解決手段を提供し、この場合、部分円弧進入システムは、可変アスペクト比を備えた適切に配置された制御段ノズルを有しており、可変アスペクト比は蒸気分配を改善する。米国特許第5080558号明細書は、様々な寸法を有する制御ノズルを使用するさらに別の解決手段を提供している。
【0005】
しかしながら、このような構成は問題を排除せず、他の解決手段が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4780057号明細書
【特許文献2】米国特許第5080558号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、部分円弧進入システムの制御段における周方向蒸気分配均一性の欠如により生じる問題に対する択一的な解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、独立請求項の主題によって解決された。有利な実施形態は従属請求項に与えられている。
【0009】
本発明は、タービンの各ノズルチャンバのための進入の多数の円弧を提供し、有利には円弧を配列及び寸法決めする一般的な概念に基づく。
【0010】
タービンが全負荷されているときの均一な周方向流れの点までは、制御段によって発生される励振の周波数が高くなるほど、混合チャンバにおける混合はより効率的になり、これにより、標準的な羽根の減じられすぎた周期的応力につながることが分かっている。この観察は、蒸気タービンのための制御段を提供する発明の1つの態様において利用されており、この場合、制御段は、タービンの負荷を制御するために蒸気進入流を調整するための、タービンの周囲に周方向に分配された複数のステージング弁と、各ステージング弁の下流端部に接続されたノズルチャンバと、各ノズルチャンバの下流部分を形成する進入の円弧と、ノズルチャンバの下流端部を形成する、進入の円弧における制御段ノズルとを有しており、制御段は、それぞれ異なる周方向寸法を備えた少なくとも2つの進入円弧を有する各ノズルチャンバを特徴とする。
【0011】
別の態様は、制御段を提供し、この場合、各進入の円弧が、別のノズルチャンバの進入の円弧によって周方向に分散させられており、これにより、改良された蒸気周方向供給均一性と、より高い供給調波とを提供している。制御段は、好適には、4つのステージング弁を有していてよく、この場合、各ノズルチャンバは、2つの進入円弧を有しており、これらの進入円弧は、周方向で対角で向き合った2つのステージング弁が開放している場合に、開放しているステージング弁に対応する進入円弧が、閉鎖されているステージング弁に対応する進入円弧と交互に配置されているように、配置及び構成されている。タービンが、さらに別の制御弁によってさらに負荷されると、第2及び第3の調波の間で励振が生じ、著しく改良された減衰効果を提供する。この配列の改良された減衰効果は、混合チャンバから通過するより均一な蒸気流を保証するか又はさもなければ混合チャンバの短縮を可能にすることによって、したがって取り付けられた標準的な羽根の数を増大しこれにより与えられた機械ロータ長さのための全体的な機械効率を増大することによって、標準的な羽根における機械的応力の差を減じるために、有利には利用されることができる。
【0012】
種々異なる進入の円弧を介して蒸気付加を不均衡にすることによって、標準的な羽根における応力負荷におけるさらなる改良が達成されることができることが分かった。この効果は、運転中に、ノズルチャンバの進入の円弧を通る供給密度が異なることを保証するように構成された少なくとも1つのノズルチャンバを提供する発明の別の態様によって提供される。
【0013】
不均衡の実際の量は、このような不均衡から生じる機械効率を減じることを考慮して、与えられた機械の設計及び性能必要条件に依存する。
【0014】
本発明のその他の目的及び利点は、添付の図面に関連した以下の説明から明らかなり、図面において、例示及び例によって、発明の実施形態が開示されている。
【0015】
例えば、発明の実施形態は、添付の図面に関連して以下により完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】制御段を備えた蒸気タービンの側方断面図である。
【図2】図1のII−IIに沿った蒸気タービン制御段の断面図であり、発明の好適な実施形態による部分円弧進入制御段を示している。
【図3】図2のノズルチャンバの詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態がここで図面を参照しながら説明され、図面において、同じ参照符号は、全体を通じて、同じエレメントを表すために使用されている。以下の説明において、説明のために、数字の特定の詳細は、発明の徹底的な理解を提供するために示されている。しかしながら、発明は、これらの特定の詳細なしに実施されてよいことが明らかであるかもしれない。本明細書を通じて、円周参照は、タービン長手方向軸線からの一定の垂直な距離を有する円弧を表す。
【0018】
図1は、部分円弧進入システムを備えて構成された制御段10を備えた蒸気タービンの側面図である。制御段10は、蒸気タービンの負荷を制御するために、図2に示された、ステージング弁12を有している。ステージング弁12の下流には、ノズルチャンバ14が接続されている。ノズルチャンバ14の下流部分は、進入の円弧16を有しており、この進入の円弧は、下流端部において制御段ノズル18を有している。制御段ノズル18は、蒸気を、回転する制御段羽根19に方向付け、これらの制御段羽根は、ロータ25に取り付けられており、タービンが部分的に負荷されている時に制御段ノズル18からの可変蒸気分配に耐えるように頑丈に構成されている。制御羽根19の下流に配置された標準的な羽根30における応力をさらに減じるために、制御羽根19は、タービン圧力損失の大部分が制御羽根を横切って生じるように構成されている。標準的な羽根30の応力をさらに減じるために、混合チャンバ20が、標準的な羽根30と制御段羽根19との間に設けられている。この混合チャンバ20は、蒸気の周方向混合を保証するために必要とされる容積を提供するように構成されている。混合チャンバ20の長さ22は、制御段羽根19の下流端部と第1の標準的な羽根30の上流縁部との間の距離として定義される。
【0019】
図2は、本発明の好適な実施形態の詳細を示しており、この場合、制御段は、4つのステージング弁12を有しており、各ステージング弁はノズルチャンバ14に接続されており、ノズルチャンバは、進入の円弧16を提供するように構成された下流部分を有している。各ノズルチャンバ14は2つの進入の円弧16を有しており、各ノズルチャンバ14の進入の円弧16は、別のノズルチャンバ14の進入の円弧16と交互に配置されている。この配列において、対角で向き合った2つのステージング弁12が開放される、これらの解放したステージング弁のノズルチャンバ14の端部を形成する進入の円弧16は、閉鎖したステージング弁12を有するノズルチャンバ14の進入の円弧16と交互に配置される。
【0020】
図3は、典型的な実施形態のノズルチャンバ14の詳細を示しており、このノズルチャンバは、周方向蒸気分配の有利な不均衡を提供する複数の特徴を含んでいる。図示のように、2つの進入の円弧16の周方向寸法L1,L2は異なっている。さらなる不均衡は、進入の円弧16の設計と組み合わされた、ノズルチャンバ14の分岐路15の寸法及び形状によって達成され、これらの分岐路15は、ノズルチャンバ14の蒸気流を分割し、分割された流れを進入の円弧16へ方向付ける。典型的な実施形態において、ノズルチャンバ14は、各進入の円弧16への流れに対する異なる抵抗を提供するために、寸法及び形状を介して構成されている。これは、可変供給密度を生じ、これは、羽根応力をさらに減じる不均衡を生ぜしめる。
【0021】
発明は、最も実用的かつ好適な実施形態であると考えられるものにおいて示されかつ説明されたが、発明の範囲内で変更が行われることができ、この変更は、ここに説明された詳細に限定されず、あらゆる及び全ての均等な装置を包含するために添付の請求項の完全な範囲に適合する。例えば、発明の実施形態は、片側蒸気タービンに関して説明されたが、発明は、両側蒸気タービンに等しく適用されることができる。さらに、本発明は、例示されたものとは異なる数のステージング弁12及び進入の円弧16を有する他の構成に適用されることもできる。
【符号の説明】
【0022】
10 制御段、 12 ステージング弁、 14 ノズルチャンバ、 15 ノズルチャンバ分岐路、 16 進入の円弧、 18 制御段ノズル、 19 制御段羽根、 20 混合チャンバ、 22 混合チャンバ長さ、 25 ロータ、 30 標準的な羽根、 A 機械軸線、 L1,L2 進入の円弧の周方向寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンのための制御段(10)において、該制御段が、
前記タービンの負荷を制御するために、蒸気進入流を調整するための、前記タービンの周囲に周方向に分配された複数のステージング弁(12)と、
各ステージング弁(12)の下流端部に接続されたノズルチャンバ(14)と、
ノズルチャンバの下流部分を形成する少なくとも2つの進入の円弧(16)と、
前記ノズルチャンバ(14)の下流端部における、前記進入の円弧(16)における複数の制御段ノズル(18)と、が設けられている形式のものにおいて、
各ノズルチャンバ(14)の進入の円弧(16)の下流端部がそれぞれ、互いに異なる周方向寸法(L1,L2)を有することを特徴とする、蒸気タービンのための制御段。
【請求項2】
各進入の円弧(16)が、別の前記ノズルチャンバ(14)の前記進入の円弧(16)と周方向で交互に配置されている、請求項1記載の制御段。
【請求項3】
4つのステージング弁(12)が設けられており、各ノズルチャンバが、周方向で対角で向き合った2つのステージング弁(12)が開放されている時に、前記開放したステージング弁(12)に対応する進入の円弧(16)が、閉鎖したステージング弁(12)に対応する進入の円弧(16)と交互に配置されているように、配置及び構成されている、請求項2記載の制御段。
【請求項4】
少なくとも1つのノズルチャンバ(30)が、進入の円弧のそれぞれを通る流れに異なる抵抗を提供するように構成されている、請求項1記載の制御段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−48254(P2010−48254A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−192760(P2009−192760)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】