説明

動き検出装置、及び動き検出装置を備えたエレベータ

【課題】検知モードの切り換えを必要とすることなく、複数の動きの状態を選択して検出することができる動き検出装置を提供する。
【解決手段】動き検出装置2は、対象物に電磁波信号を放射してドップラー信号を取得するドップラー信号検出回路13と、ドップラー信号を増幅する対数増幅器14,15と、ドップラー信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてAD変換するAD変換回路16と、ドップラー信号に対してFFT処理を実行するFFT処理回路17と、ドップラー信号から対象物の動きを検出する動き検出回路20とを備える。動き検出回路20は、ドップラー信号の振幅又は電力及び位相を計算し、対象物の動きの状態を選択することと、選択された動きの状態に応じてサンプリング周波数を選択的にAD変換回路16に設定することとを繰り返し、複数の動きの状態に応じた異なる周波数成分を含むドップラー信号を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご内などにおける人の動きを検出する動き検出装置に関し、また、そのような動き検出装置を備えたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかご内などにおける人の動きを検出するために、カメラ画像を取得することによる挙動センサが実用化されている。しかしながら、最近では、ホテルなど、個人の特定を避けるためにカメラを設置できない場所が増加し、カメラ以外の手段を用いて低コストで人の挙動(あばれ、倒れ、入退場など)を非接触で検知できるセンサが求められている。
【0003】
例えば特許文献1では、人などの移動体の動きの非接触検出において、マイクロ波などの電波を用いたドップラーセンサーからFFT解析することで、所定の周波数の所定のバンドから、周波数レベルを検出して、全バンド幅の周波数レベルの総和を基準レベルに所定レベルを加算した結果と、異常レベルの比較により、移動物体の動きについて異常であるか正常であるかを判定している。
【0004】
特許文献2では、対象物からの伝播波の反射によるドップラー周波数信号を利用した人体検知装置において、ドップラー周波数信号のパワースペクトルを検出し、少なくとも一つの周波数帯域のパワー値と所定のパワー値の比較により人体感知信号を発生する。
【0005】
特許文献3では、マイクロ波ドップラーセンサーが内部に配設されている監視空間内で特定の種類の生き物、特に人間の存在を検出する方法であって、信号が、必要とされる増幅及びフィルタ処理後に、その特定の種類の生き物の存在を認識するためその生き物の種類に特有のセンサ特徴部分から信号の周波数スペクトルを示すようディジタル化され処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4522277号公報。
【特許文献2】特許第3379617号公報。
【特許文献3】特開平10−20026号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、ドップラー信号をFFT解析して人などの動きを検出する装置において、異なる状態にある動きの周波数を別々の状態として検知するためには、検出する周波数に合わせて検知モードを切り換える機能が必要であった。従って、同一のマイクロ波センサを切り換えることなく、FFT解析の結果から、検出したい動きの周波数エネルギー状態を検出するため、複数の動きの状態を選択して検出することができる動き検出装置が望まれる。
【0008】
本発明の課題は、以上の問題点を解決し、検知モードの切り換えを必要とすることなく、複数の動きの状態を選択して検出することができる動き検出装置を提供し、また、そのような動き検出装置を備えたエレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る動き検出装置によれば、
対象物に電磁波信号を放射し、上記電磁波信号の反射波を受信することによりドップラー信号を検出するドップラー信号検出手段と、
上記検出されたドップラー信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングするサンプリング手段と、
上記サンプリングされたドップラー信号に対してFFT処理を実行してドップラー信号の周波数スペクトルを計算するFFT処理手段と、
上記サンプリング手段のサンプリング周波数を制御し、上記FFT処理手段のFFT処理を制御し、上記FFT処理後の周波数スペクトルから上記対象物の動きを検出する制御手段とを備えた動き検出装置であって、
上記制御手段は、上記FFT処理後の周波数スペクトルの振幅又は電力及び位相を計算し、上記対象物がとりうる複数の動きの状態のうちのいずれかを選択することと、上記選択された動きの状態に応じて複数のサンプリング周波数のうちのいずれかを選択的に上記サンプリング手段に設定することとを繰り返し、上記複数の動きの状態に応じた異なる周波数成分を含む周波数スペクトルを取得し、上記周波数スペクトルの振幅又は電力及び位相に基づいて上記対象物の動きを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安静状態にある人が発生させるわずかな動きや、暴れている人が発生させる素早い動きなど、異なる状態について、同一の検出信号からサンプリング周波数を切り換えて周波数成分を検出し、その検出対象となる動きの周波数エネルギー状態変化を検出できるので、エレベータ内での人の動きを監視でき、エレベータの運行管理やセキュリティ対策に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る動き検出装置2を備えたエレベータのカゴ1の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS7で取得されるドップラー信号の周波数特性を示すグラフである。
【図4】図2のステップS8で取得されるドップラー周波数の平均位相を示すグラフである。
【図5】図2のステップS10で取得されるドップラー周波数の平均振幅を示すグラフである。
【図6】図2のステップS11で取得されるドップラー周波数の振幅標準偏差を示すグラフである。
【図7】図2のステップS6のフィルタリングを実行しない場合の、商用電源ノイズを含むドップラー信号の時間波形を示すグラフである。
【図8】図2のステップS6のフィルタリングを実行しない場合の、商用電源ノイズを含むドップラー信号の周波数特性を示すグラフである。
【図9】図2のステップS6で使用される例示的な商用電源ノイズフィルタの周波数特性を示すグラフである。
【図10】図2のステップS6で取得されるドップラー信号の時間波形を示すグラフである。
【図11】図2のステップS6で取得されるドップラー信号の周波数特性を示すグラフである。
【図12】図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理において、ドップラー信号が人4の速い動きによって生じた信号成分を含む場合の周波数特性、平均振幅、及び振幅標準偏差を示すグラフである。
【図13】図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理において、人4がエレベータのカゴ1に乗車及び降車する場合のドップラー信号の周波数特性、平均振幅、平均位相、及び振幅標準偏差を示すグラフである。
【図14】図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理において、人4が安静にしている場合のドップラー信号の周波数特性、平均振幅、及び振幅標準偏差を示すグラフである。
【図15】図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理において、人4が存在しない場合のドップラー信号の周波数特性、平均振幅、及び振幅標準偏差を示すグラフである。
【図16】図1のAD変換回路16及びFFT処理回路17に設定可能なパラメータの例を示す表である。
【図17】図1のエレベータのカゴ1の加速度及び速度を説明するためのグラフである。
【図18】本発明の実施の形態2に係る動き検出装置2を備えたエレベータのカゴ1の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係る動き検出装置2を備えたエレベータのカゴ1の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る速度計測装置について説明する。各図にわたって、同様の構成要素は同じ参照番号で示す。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る動き検出装置2を備えたエレベータのカゴ1の構成を示すブロック図である。エレベータのカゴ1は、乗っている人4の動きを検出する動き検出装置2と、エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置3とを備える。動き検出装置2は、送信アンテナ11、受信アンテナ12、ドップラー信号検出回路13、対数増幅器14,15、AD変換回路16、FFT処理回路17、及び動き検出回路20を備える。ドップラー信号検出回路13は、光や電波(例えばマイクロ波)などの所定周波数を有する電磁波の信号を発生して送信アンテナ11から放射し、エレベータのカゴ1内において所定速度で運動する物体(人4など)によって反射された電磁波の信号を受信アンテナ12で受信し、送信信号と受信信号からドップラー周波数を検出する。以下、本明細書では、検出されたドップラー周波数の情報を含む信号を「ドップラー信号」と呼ぶ。なお、動き検出装置2は、送信アンテナ11及び受信アンテナ12に代えて、送信アンテナ11及び受信アンテナ12を一体化した送受信アンテナを備えていてもよい。ドップラー信号検出回路13から出力されるドップラー信号は、I(In Phase)信号と、位相が90°ずれたQ(Quadrature Phase)信号との2つの信号を含む。対数増幅器14は、ドップラー信号のI信号を対数圧縮して増幅し、対数増幅器15は、ドップラー信号のQ信号を対数圧縮して増幅する。AD変換回路16は、対数増幅されたドップラー信号のI信号及びQ信号(アナログ信号)を所定のサンプリング周波数でサンプリングし、サンプリングされたアナログデータのドップラー信号をデジタルデータのドップラー信号に変換する。FFT処理回路17は、前処理回路18とFFT演算回路19とを含み、AD変換後のドップラー信号のI信号及びQ信号の周波数解析を行う。AD変換回路16及びFFT処理回路17は、動き検出回路20の制御下で動作する。動き検出回路20は、FFT処理回路17による周波数解析の結果から人4などの物体の動きを検出して、その動態を判定する。動き検出装置2はさらに、エレベータが昇降する際の加速度を検出する加速度検出装置21を備えてもよい。
【0014】
動き検出装置2は、エレベータの外部にいるオペレータがエレベータのカゴ1の内部を監視するために、エレベータの外部の端末装置(図示せず:例えば、エレベータ制御盤、エレベータ管理室のパーソナルコンピュータ、など)に接続される。動き検出装置2はさらに、エレベータ制御装置3と接続されていてもよい。この場合、エレベータ制御装置3は、動き検出装置2による動き検出の結果に基づいて動作する。
【0015】
以下、動き検出装置2の動作をさらに詳細に説明する。
【0016】
ドップラー信号検出回路13は、送信信号と受信信号との乗算により、人4などの物体の動きに比例した周波数成分と、物体の大きさや反射率に比例した強度成分とをもつドップラー信号を出力することができる。図1ではドップラー信号検出回路13はI信号及びQ信号の両方を出力するように示しているが、I信号及びQ信号のいずれか一方のみが使用されてもよい。
【0017】
次に、ドップラー周波数を取得する基本原理を示す。搬送波周波数をf[Hz]とし、物体(ターゲット)の移動速度をv[m/s]とし、送信信号の伝搬方向と物体の移動方向との角度をθ[rad]とし、光速をc[m/s]とすると、ドップラー周波数f[Hz]は次式で表される。
【0018】
【数1】

【0019】
ここで、例えば、人4が1[m/s]で移動する場合を想定し、例えば、f=24.15[GHz]、v=1[m/s]、θ=0[rad]、c=3×10[m/s]を用いると、ドップラー周波数fは161[Hz]になる。
【0020】
次に、ドップラー信号強度の回線設計を示す。送信電力をP[W]とし、送信アンテナ11の利得をG[dB]とし、受信アンテナ12の利得をG[dB]とし、搬送波波長をλ[m]とし、物体(ターゲット)の反射断面積をσ[m]とし、物体までの距離をR[m]とすると、受信電力P[W]は次式で表される。
【0021】
【数2】

【0022】
ここで、例えば、送信アンテナ11及び受信アンテナ12が同一利得を有し、同じ場所に位置し、人体の反射断面積を1[m]とし、人4までの距離Rが1[m]である場合を想定し、例えば、P=0.001[W]、G=G=10[dBi]、λ=c/f=0.01242[m]、σ=1[m]=0[dBsm]、R=1[m]を用いると、受信電力Pは−52.03[dBm]になる。ここで、単位[dBsm]は、1mを基準とする対象物の断面積を表す。
【0023】
対数増幅器14,15は、数2の受信電力Pを有するドップラー信号を対数圧縮して増幅する増幅器である。従来では、オペアンプなどを用いた線形増幅器による増幅が一般的であった。しかしながら、安静状態にある人4が発生させるわずかな動きや、暴れている人4が発生させる素早い動きなどに起因して、ドップラー周波数は、非常に低い周波数から高い周波数までの広い周波数範囲を有する。さらに、ドップラー信号の強度は、人4などの物体が非常に近い場所から遠い場所まで位置する可能性があることに起因して、広い信号強度をもつ。従って、線形増幅器では、所定の周波数範囲の利得を有する自動利得調整回路が必要となるが、低い周波数では追従に時間を要し、信号応答性に課題がある。本実施の形態の対数増幅器14,15は、自動利得調整回路用いることなく所定の周波数範囲の利得と所定の信号増幅度とをもたらし、広い周波数範囲と広い信号強度とを有するドップラー信号を増幅することができる。振幅情報が不要である場合、対数増幅器14,15に代えてリミッタアンプを用いてもよい。
【0024】
図2は、図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理を示すフローチャートである。前述のように、AD変換回路16及びFFT処理回路17は、動き検出回路20の制御下で動作する。図2の動き検出処理は、動き検出回路20の制御下で、AD変換回路16、FFT処理回路17、及び動き検出回路20によって実行される。図2のステップS1において、動き検出回路20はAD変換回路16にサンプリング周波数を設定する。ステップS2において、AD変換回路16は、ドップラー信号のデータのサンプリング及びAD変換を実行する。
【0025】
FFT処理回路17の前処理回路18は、FFT演算を実行する前に必要な、フレームバッファ処理、振幅補正、DCオフセットを除去、及び商用電源ノイズのフィルタリング等を実行する。ステップS3において、前処理回路18は、サンプリング及びAD変換後のドップラー信号のI信号及びQ信号のデータを、それぞれ、所定の個数を1フレームとして内部のバッファメモリ(図示せず)に格納する。
【0026】
ここで、サンプリングされたドップラー信号x[n]は、サンプリングされたI信号I[n]及びサンプリングされたQ信号Q[n]を用いて次式で表される。
【0027】
【数3】

【0028】
前処理回路18は、サンプリングされたI信号I[n]及びサンプリングされたQ信号Q[n]から、ドップラー信号の振幅A及び位相θを、次式により計算する。ここで、振幅Aから電力P=Aを求めてもよい。
【0029】
【数4】

【数5】

【0030】
次いで、ステップS4において、前処理回路18は、バッファメモリに格納したI信号及びQ信号のデータに対して振幅補正を実行し、I信号及びQ信号のデータの振幅バランスを調整する。ステップS5において、前処理回路18は、バッファメモリに格納したI信号及びQ信号のデータの振幅の平均値を求め、I信号及びQ信号のデータの直流分(DCオフセット)を除去する。ステップS5を省略し、I信号及びQ信号のデータの直流分を除去しなくてもよい。あるいは、ステップS5に代えて、FFT演算を実行した後に直流分周波数スペクトルを移動してもよい。
【0031】
次いで、ステップS6において、前処理回路18は、商用電源ノイズをフィルタリングする。図9は、図2のステップS6で使用される例示的な商用電源ノイズフィルタの周波数特性を示すグラフである。図9の横軸は、π×rad÷サンプル数で表された正規化周波数である。まず、商用電源ノイズについて説明する。図7は、図2のステップS6のフィルタリングを実行しない場合の、商用電源ノイズを含むドップラー信号の時間波形を示すグラフであり、図8は、図2のステップS6のフィルタリングを実行しない場合の、商用電源ノイズを含むドップラー信号の周波数特性を示すグラフである。図7及び図8に示すように、ドップラー信号に50Hz又は60Hzの商用電源ノイズが重畳する場合があり、特に機種が古いエレベータなどで検出されることがある。図7の丸印は、商用電源ノイズのピーク値を示す。図8に示す例では、50Hzの商用電源ノイズの9次高調波(450Hz)まで検出されている。従来では、商用電源ノイズを除去するために、線形アンプの後段にアナログノッチフィルタを入れる場合が多い。しかしながら、従来のアナログノッチフィルタによる高調波抑制には限界がある。本実施の形態では、この課題を克服するために、図9の周波数特性を有するデジタルノッチフィルタを導入することで、商用電源ノイズをその高調波まで容易に除去することが可能になった。図10は、図2のステップS6で取得されるドップラー信号の時間波形を示すグラフであり、図11は、図2のステップS6で取得されるドップラー信号の周波数特性を示すグラフである。図10及び図11は、50Hzデジタルノッチフィルタにより50Hzの商用電源ノイズを除去した結果を示す。50Hzと60Hzとの切り換えについては、デジタルノッチフィルタのフィルタ係数を切り換えるのみでよく、従来のように50Hzと60Hzの両方のアナログノッチフィルタを持つ必要が無く、コストを削減することができる。
【0032】
動き検出装置2が設置されるエレベータに商用電源ノイズがない場合、又は、エレベータの機種が商用電源ノイズの除去を必要としないものである場合には、ステップS6を省略可能である。
【0033】
次いで、図2のステップS7において、FFT演算回路19は、前処理回路18によって処理されたドップラー信号のデータに対してフレーム毎にFFT演算を実行する。実数部x[n]及び虚数部x[n]を含むドップラー信号x[n]に対してポイント数NのFFT演算を実行した結果X[n]は、次式で表される。
【0034】
【数6】

【数7】

【0035】
ここで、X[k]は、X[n]のk番目の周波数スペクトルを表す。数7は、回転因子Wを用いて次式のように表される。
【0036】
【数8】

【数9】

【0037】
本願発明では、人4などの物体の動きの状態を検出するために、動きの周波数スペクトルに着目している。例えば、人が激しく動き暴れているような場合、人体が速い速度で移動していることと同様であるので、ドップラー信号は主に高い周波数スペクトルを含む。また、人が倒れているような場合、呼吸や心拍などの動きがわずかになり、人体が非常に遅い速度で移動していることと同様であるので、ドップラー信号は主に低い周波数スペクトルを含む。従来では、サンプリング周波数を固定してドップラー信号をサンプリングしていたので、前記の高い周波数スペクトルを得るためには、高いサンプリング周波数でサンプリングする必要があった。また、前記の低い周波数スペクトルを得るためには、低いサンプリング周波数でサンプリングする必要があった。
【0038】
本実施の形態の動き検出装置2は、小型化及び低コスト化を目的としてデジタル処理部をコンパクトにする必要があり、この結果、リソースが限られているので、以下の方法を採用する。高低の周波数スペクトルを同一のAD変換回路16で得るためには、第1の方法として、検知すべき周波数スペクトルにより、サンプリング周波数を切り換える。第2の方法として、高いサンプリング周波数でサンプリングし、検知すべき周波数スペクトルにより、サンプリングデータを間引く。検出対象として注目する動きの種別(すなわち、暴れ、倒れ、乗降(入退場)、など)の個数に応じて、複数のサンプリング周波数を切り換えて使用してもよく、もしくは、サンプリングデータを複数の間引き幅で間引いてもよい。
【0039】
ここで、FFT演算におけるサンプリング周波数と周波数分解能との関係について説明する。サンプリング周波数をfとし、エイリアシングを防止するためのオーバーサンプリング数をOとし、周波数分解能をfとし、周波数レンジをFとし、サンプリング点数をNとし、サンプリングの時間長をTとし、周波数スペクトルのライン数をkとするとき、動き検出回路20は、次式の関係が成り立つようにAD変換回路16及びFFT処理回路17にパラメータを設定する。
【0040】
【数10】

【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【0041】
FFT演算回路19は、好ましくは、FFT演算を実行する際に周波数スペクトルの時間相関を考慮する。この場合、サンプリング及びAD変換後のデータをフレームデータとし、フレームデータを重複してFFT解析を繰り返す。サンプリング周波数をfとし、ドップラー周波数の相関時間をΔtとし、フレーム長をFとし、フレーム時間長をTとし、フレーム分割数をbとすると、前記動き検出のFFT解析から得られる周波数スペクトルの時間相関の検出が、次式で表される。
【0042】
【数15】

【数16】

【0043】
フレームを分割して時間相関検出を行う場合には、フレームデータに窓関数、例えばハニング窓、ハミング窓、ガウシアン窓などを用いて窓関数処理を行い、フレームデータの先端及び終端のデータを丸め、周波数スペクトルの高調波発生を抑制する。一方、フレームデータに窓関数を用いなくてもよい。
【0044】
図16は、図1のAD変換回路16及びFFT処理回路17に設定可能なパラメータの例を示す表である。速い動きを検出する際のサンプリング周波数と、遅い動きを検出する際のサンプリング周波数とを相違させる一方、サンプリング点数を同一にすることができ、周波数スペクトルのライン数を同一にすることができる。従って、メモリを増やすことなく異なる動き(速い動きと遅い動き)の検出を行うことができる。また、速い動きに対応した2000Hzのサンプリング周波数データをサンプリングし、サンプリングされたデータを1/500に間引くことで20Hzのサンプリング周波数のデータが得られ、この場合も前述の場合と同様に、サンプリング点数を同一にすることができ、周波数スペクトルのライン数を同一にすることができ、メモリを増やすことなく異なる動きの検出を行うことができる。さらに、速い動きの場合には、相関時間が0.1Hzであり、相関周波数が10Hzであり、遅い動きの場合には、相関時間が10Hzであり、相関周波数が0.1Hzであり、周波数スペクトルの分布を検出すると同時に、周波数スペクトルの時間変化を検出することができる。
【0045】
図3は、図2のステップS7で取得されるドップラー信号の周波数特性を示すグラフである。横軸は、1000サンプルを1フレームとするときのフレーム数である(図3〜図6にわたって同じ)。
【0046】
次いで、図2のステップS8において、動き検出回路20は、FFT演算を実行した結果の周波数スペクトルから、ドップラー周波数の各周波数の位相を計算する。動き検出回路20はさらに、計算された位相の平均を計算する。図4は、図2のステップS8で取得されるドップラー周波数の平均位相を示すグラフである。
【0047】
次いで、ステップS9において、動き検出回路20は、FFT演算を実行した結果の周波数スペクトルから、ドップラー周波数の各周波数の振幅又は電力を計算する。本実施の形態では、前述のように対数増幅器14,15を用いているので、FFT演算を実行した結果の周波数スペクトルにはすでに、ドップラー振幅又は電力の特徴が強調されている。対数増幅器14,15に代えて線形増幅器を用いる場合には、FFT演算の実行後、特徴量を強調するために周波数スペクトルを対数変換してもよい。
【0048】
ステップS10において、動き検出回路20は、ステップS9で計算された振幅又は電力の平均を計算し、ステップS11において、動き検出回路20は、ステップS9で計算された振幅又は電力の標準偏差を計算する。図5は、図2のステップS10で取得されるドップラー周波数の平均振幅を示すグラフであり、図6は、図2のステップS11で取得されるドップラー周波数の振幅標準偏差を示すグラフである。ステップS11では、振幅のバラツキを表すデータ、例えば標準偏差に代えて分散を計算してもよい。
【0049】
次いで、ステップS12において、動き検出回路20は動き検出を実行する。動き検出回路20は、人4などの物体の動きを検出するために、ドップラー信号の検出周波数帯の平均エネルギーを計算する。符号「FFT」をFFT演算の実行結果の各周波数fの振幅とし、周波数スペクトルをS(f)とし、検出対象となる下限周波数をf1とし、検出対象となる上限周波数をf2とし、FFT解析のライン数をLとすると、人4などの物体が移動することにより発生しているドップラー信号の検出周波数帯の平均エネルギーE(t)は、次式で表される。
【0050】
【数17】

【0051】
平均エネルギーE(t)の瞬時値もしくは時間積分値を所定の値と比較することにより、動きの状態の有無を判定することができる。動き検出回路20は、所定範囲の周波数スペクトルの振幅平均値が所定時間にわたって得られたこと、あるいは、所定範囲の周波数スペクトルの振幅平均値の時間積分値が所定値得られたことで、動きが有ることを検出する。さらに、動き検出回路20は、動きの誤検出を防止するために、所定の判定時間が経過した後、取得された平均エネルギーE(t)の値及び累積時間を消去する。動き検出回路20は、ドップラー周波数の位相(ステップS8)、振幅又は電力(ステップS9)、振幅又は電力の平均(ステップS10)、振幅又は電力の標準偏差(ステップS11)についても、所定の判定時間が経過した後、取得された値を消去する。
【0052】
次いで、ステップS13において、動き検出回路20は、エレベータ制御装置3に、又はエレベータの外部の端末装置(図示せず)に、動き検出結果を出力する。
【0053】
ステップS13の実行後、ステップS1に戻って処理を繰り返す。このとき、動き検出回路20は、必要に応じて、サンプリング周波数を変更してもよい。
【0054】
以下、図2のステップS12の動き検出についてさらに詳細に説明する。
【0055】
図12は、図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理において、ドップラー信号が人4の速い動きによって生じた信号成分を含む場合の周波数特性、平均振幅、及び振幅標準偏差を示すグラフである。図12の上から1段目のグラフは、FFT演算を繰り返し実行した結果の周波数スペクトルを示し、図12の2段目のグラフは、検出周波数帯の振幅スペクトルの平均を示し、そのハッチング部分が動きのエネルギーを示し、図12の3段目のグラフは、振幅スペクトルの標準偏差を示す。振幅スペクトルの標準偏差に代えて振幅スペクトルの分散を用いてもよい。振幅スペクトルの標準偏差又は分散を所定のしきい値と比較して、動きの程度を判定することができる。また、振幅スペクトルの標準偏差又は分散の時間積分値を用いてもよい。動きの程度について説明すると、例えば、大きな動きで動いているときは標準偏差σが大きくなり、小さな動きで動いているときは標準偏差σが小さくなる傾向がある。また、動いている人数が少ないときは標準偏差σが大きくなり、動いている人数が多いときは標準偏差σが小さくなる傾向がある。このときの標準偏差σ及び分散σを次式に示す。
【0056】
【数18】

【数19】

【0057】
また、p(f)をFFT演算の実行結果の各周波数fの位相スペクトルとするとき、人4などの物体が移動することにより発生している検出周波数帯の平均位相P(t)は、次式で表される。
【0058】
【数20】

【0059】
平均位相P(t)から、人4などの物体の動きの方向、すなわち動き検出装置2に対して接近しているか、又は離反しているかを判別することができる。
【0060】
図13は、図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理において、人4がエレベータのカゴ1に乗車及び降車する場合のドップラー信号の周波数特性、平均振幅、平均位相、及び振幅標準偏差を示すグラフである。図13の上から1段目のグラフは、FFT演算を繰り返し実行した結果の周波数スペクトルを示し、図13の2段目のグラフは、検出周波数帯の平均振幅を示し、図13の3段目のグラフは、位相スペクトルの平均を示し、図13の4段目のグラフは、振幅スペクトルの標準偏差を示す。図13の3段目のグラフによれば、位相スペクトルの正負が動きの平均的な方向を示し、これによりエレベータのカゴ1への乗車及び降車が判別できる。
【0061】
動き検出装置2に接続されたエレベータ制御装置3がエレベータの階床スイッチを含む場合、動き検出装置2は、エレベータ制御装置3から、エレベータのドア開閉信号、停止信号、照明信号などの制御信号を得られる。従って、動き検出装置2は、これら制御信号に応じて検出する動きの種別を切り換え、動きの状態に応じたサンプリング周波数を用いてドップラー信号を取得したり、動きの状態に応じてサンプリングデータの間引きを行ったりする。動き検出装置2がエレベータ制御装置3に接続されていない場合、動き検出装置2の加速度検出装置21によって検出される加速度信号を用いて、検出する動きの種別を切り換え、動きの状態に応じたサンプリング周波数を用いてドップラー信号を取得したり、動きの状態に応じてサンプリングデータの間引きを行ったりする。
【0062】
図14は、図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理において、人4が安静にしている場合のドップラー信号の周波数特性、平均振幅、及び振幅標準偏差を示すグラフであり、図15は、図1の動き検出回路20によって実行される動き検出処理において、人4が存在しない場合のドップラー信号の周波数特性、平均振幅、及び振幅標準偏差を示すグラフである。図14は、人4が安静にしている場合において、人4の呼吸のわずかな動きを検出したときのドップラー信号の例を示す。図14では、1Hz以下の非常にゆっくりとした周波数スペクトルが検出され、周波数スペクトルの平均振幅及び振幅標準偏差も一定以上の値を示す。一方、図15は、人4が存在していない場合で、周波数スペクトルが検出されず、周波数スペクトルの平均振幅及び振幅標準偏差も一定以下の小さい値を示す。
【0063】
動き検出装置2は、例えばエレベータのカゴ1などにおいて人4が存在することを一定時間以上検出して、かつ、階床スイッチが押されない状態が継続していると、注意喚起を報知する。また、人4などが存在しないことを一定時間以上検出すると、照明を消灯したり、空調機のオフ、あるいは温度設定の変更などの省エネルギー化のための動作を行ったりする。
【0064】
図17は、図1のエレベータのカゴ1の加速度及び速度を説明するためのグラフである。図17の上段はエレベータのカゴ1の加速度を示し、図17の下段はエレベータのカゴ1の速度を示す。図17は、動き検出装置2の加速度検出装置21によって検出される加速度信号と、この加速度信号を動き検出回路20が時間積分することで得られる速度信号とを示す。速度信号から、エレベータのカゴ1の速度を判定し、所定のしきい値速度以上である場合と、当該しきい値速度未満である場合とで、異なる動きの状態を検出する。例えば、人4などが激しく動いている場合は、速い動きとして暴れていることを検知する。エレベータのカゴ1内の床面に人4などが倒れている場合は、遅い動きとして倒れていることを検知する。エレベータのカゴ1内に人4などが長時間静止している場合は、遅い動きとして存否を検知する。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態の動き検出装置2によれば、検知モードの切り換えを必要とすることなく、複数の動きの状態を選択して検出することができ、また、そのような動き検出装置を備えたエレベータを提供することができる。
【0066】
実施の形態2.
図18は、本発明の実施の形態2に係る動き検出装置2を備えたエレベータのカゴ1の構成を示すブロック図である。図10に示す例では、エレベータのカゴ1の天井32の近くを、動き検出装置2の取り付けスペース33としている。ここに設けられた動き検出装置2は、エレベータのカゴ1内にいる人4A,4Bなどに向けて電磁波を送受信し、人の動きに応じたドップラー信号を取得し、このドップラー信号に対して図2の動き検出処理を実行して、人の動きの状態を検出する。
【0067】
動き検出装置2の取り付けスペース33は、人の動向を把握するために、エレベータのカゴ1内の階床スイッチ上面もしくは背面に設置してもよい。また、エレベータのカゴ1への乗降を把握するために、エレベータのカゴ1のドアの上部に設置してもよい。
【0068】
動きを検出した結果、人などが激しく動いている場合(図18の人4A)、暴れていることを検知して、警報音又は警告メッセージを報知する。また、エレベータのカゴ1内の床31に人などが倒れている場合や長時間静止している場合(図18の人4B)は、人の呼吸やわずかな揺動を検知して、警報音又は警告メッセージを報知する。警報音又は警告メッセージは、エレベータのカゴ1内に報知する他に、エレベータの乗り場や、エレベータ制御盤に伝えエレベータ管理室に報知してもよい。
【0069】
実施の形態3.
図19は、本発明の実施の形態3に係る動き検出装置2を備えたエレベータのカゴ1の構成を示すブロック図である。図19は、図1の動き検出装置2及びエレベータ制御装置3と実質的に同様の動き検出装置2A及びエレベータ制御装置3Aを備えたエレベータのカゴ1に、さらにカメラ41を設けた構成を示す。カメラ41は、動き検出装置2A及びエレベータ制御装置3Aにそれぞれ接続され、また、エレベータのカゴ1内の静止画像又は動画像を取得する。動き検出装置2Aは、実施の形態1と同様に動き検出処理を実行するとともに、人4などの動きを判定して、画像の使用が必要であると判定した場合に、カメラ41を動作させる。カメラ41によって取得された画像は、例えばエレベータの外部にいるオペレータがエレベータのカゴ1の内部を監視するために、エレベータ制御装置3Aを介してエレベータの外部の端末装置(図示せず)に送られる。
【0070】
カメラ41による画像の取得に制限がない場合には、常に画像を取得してもよい。常に画像を取得する場合、エレベータの外部の端末装置上に動き検出結果と画像とを表示させてもよい。この場合、人などの動きの状態による動き検出結果と画像との相関を解析することができ、動き検出処理の検出アルゴリズムのチューニングや、動き検出装置2の誤動作確認に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、検知モードの切り換えを必要とすることなく、複数の動きの状態を選択して検出することができる動き検出装置を提供することができ、また、そのような動き検出装置を備えたエレベータを提供することができる。
【0072】
本発明の動き検出装置によれば、ドップラー信号を取得する周期を変えること、又は一定周期で得たドップラー信号を間引くことにより、FFT処理の結果として得られる周波数成分から複数の動きの状態に応じた周波数成分を選択することができ、同一のFFT処理手段において複数の動きを選択して検出できる効果がある。
【0073】
本発明の動き検出装置によれば、対数増幅器を用いることにより、自動利得制御などにあるフィードバック系を持たないので、ゆっくりとした信号に追従でき、ドップラー信号の広い信号検出範囲を得ることができ、信号取得範囲が制限されたAD変換手段であっても、微弱信号から強信号まで、ドップラー信号を取得できる効果がある。
【0074】
本発明の動き検出装置によれば、ドップラー信号の取得を可変にしても、FFT処理手段のメモリを増加させずに、サンプリング点数と周波数スペクトルのライン数を同じにでき、異なる動き検出に対して、同一の処理を行うことができる。
【0075】
本発明の動き検出装置によれば、人などの動きにより取得したドップラー信号の周波数を検出するためのアナログフィルタやデジタルフィルタが不要になり、動きの状態に応じた所定の周波数スペクトルの振幅で、動きの状態を分離、検出できる効果がある。
【0076】
本発明の動き検出装置によれば、振幅の標準偏差又は分散を計算することにより、人などの動きにより取得したドップラー信号の周波数スペクトルの振幅のバラツキを把握することができ、同じ動きの状態検出においても、その動きの程度を予測検出できる効果がある。
【0077】
本発明の動き検出装置によれば、所定時間が経過する毎に計算結果を消去することにより、人などの動きによる動き検出の判定値が所定時間以上にわたって累積され続け、装置の誤動作防止に効果がある。
【0078】
本発明の動き検出装置によれば、加速度検出手段を備えたことにより、動き検出装置が設置されている環境の動きを加速度による速度信号により自己判断することができ、判断した結果に基づいて動きの検出状態を切り換えることができる効果がある。
【0079】
本発明のエレベータによれば、当該装置の設置環境を加速度から計算される速度により自己判断することで、予め決められた動きの状態を切り換えて検出できる効果がある。
【0080】
本発明のエレベータによれば、エレベータに当該動き検出装置を備えることで、エレベータのカゴ内部の動きを検出することができ、カゴの運用、人への注意喚起、省エネに効果がある。
【0081】
本発明のエレベータによれば、当該装置が接続された制御機器の設置環境を加速度から計算される速度により自己判断することで、予め決められた動きの状態を切り換えて検出できる効果がある。
【0082】
本発明のエレベータによれば、エレベータに当該動き検出装置を備えることで、エレベータのカゴ内部の動きを検出し、その内部状態を画像による確認することができ、緊急避難、セキュリティ向上、誤動作確認に効果がある。
【符号の説明】
【0083】
1 エレベータのカゴ、2,2A 動き検出装置、3,3A エレベータ制御装置、4,4A,4B 人、11 送信アンテナ、12 受信アンテナ、13 ドップラー信号検出回路、14,15 対数増幅器、16 AD変換回路、17 FFT処理回路、18 前処理回路18、19 FFT演算回路19、20 動き検出回路、21 加速度検出装置、31 床、32 天井、33 動き検出装置2の取り付けスペース、41 カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に電磁波信号を放射し、上記電磁波信号の反射波を受信することによりドップラー信号を検出するドップラー信号検出手段と、
上記検出されたドップラー信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングするサンプリング手段と、
上記サンプリングされたドップラー信号に対してFFT処理を実行してドップラー信号の周波数スペクトルを計算するFFT処理手段と、
上記サンプリング手段のサンプリング周波数を制御し、上記FFT処理手段のFFT処理を制御し、上記FFT処理後の周波数スペクトルから上記対象物の動きを検出する制御手段とを備えた動き検出装置であって、
上記制御手段は、上記FFT処理後の周波数スペクトルの振幅又は電力及び位相を計算し、上記対象物がとりうる複数の動きの状態のうちのいずれかを選択することと、上記選択された動きの状態に応じて複数のサンプリング周波数のうちのいずれかを選択的に上記サンプリング手段に設定することとを繰り返し、上記複数の動きの状態に応じた異なる周波数成分を含む周波数スペクトルを取得し、上記周波数スペクトルの振幅又は電力及び位相に基づいて上記対象物の動きを検出することを特徴とする動き検出装置。
【請求項2】
上記制御手段は、1つのサンプリング周波数を上記サンプリング手段に設定し、上記サンプリングされたドップラー信号の間引きを行って、上記複数の動きの状態に応じた異なる周波数成分を含む周波数スペクトルを取得することを特徴とする請求項1記載の動き検出装置。
【請求項3】
上記動き検出装置は、上記検出されたドップラー信号を対数圧縮して増幅する対数増幅器をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の動き検出装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記複数の動きの状態に応じた異なる周波数成分を含む周波数スペクトルを取得するとき、上記FFT処理のサンプリング点数が互いに同一になり、かつ、上記FFT処理後の周波数スペクトルのライン数が互いに同一になるように、上記FFT処理手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の動き検出装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記FFT処理後のスペクトルにおいて、所定範囲の周波数スペクトルの振幅又は電力の平均値が所定時間にわたって所定値に達しているとき、あるいは、所定範囲の周波数スペクトルの振幅又は電力の平均値の時間積分値が所定値に達したとき、上記対象物の動きを検出することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の動き検出装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記対象物の動きが検出されたとき、上記FFT処理後の周波数スペクトルにおいて、所定範囲の周波数スペクトルの振幅又は電力の標準偏差値もしくは分散値をしきい値と比較する、あるいは、所定範囲の周波数スペクトルの振幅又は電力の標準偏差値もしくは分散値の時間積分値をしきい値と比較することで、上記対象物の動きの程度を検出することを特徴とする請求項5記載の動き検出装置。
【請求項7】
上記制御手段は、所定時間が経過する毎に、計算された値を消去することを特徴とする請求項5又は6記載の動き検出装置。
【請求項8】
上記動き検出装置は、上記動き検出装置の加速度を検出する加速度検出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の動き検出装置。
【請求項9】
上記制御手段は、上記取得された加速度から上記動き検出装置の速度を計算し、上記速度が速度しきい値を超えた場合、速い動きの状態を検出し、上記速度が上記速度しきい値以下である場合、遅い動きの状態を検出することを特徴とする請求項8記載の動き検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の動き検出装置を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項11】
上記制御手段は、上記エレベータから上記エレベータの速度を取得し、上記エレベータの速度が速度しきい値を超えた場合、速い動きの状態を検出し、上記エレベータの速度が上記速度しきい値以下である場合、遅い動きの状態を検出することを特徴とする請求項10記載のエレベータ。
【請求項12】
上記エレベータは、上記エレベータのカゴ内の画像を取得する画像取得手段を備え、
上記制御手段は、上記画像取得手段による画像の取得と、上記取得された画像の上記エレベータの外部への伝送とを制御することを特徴とする請求項10又は11記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図3】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−225837(P2012−225837A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95162(P2011−95162)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】