説明

動く繊維材料の光学的走査装置及び方法

動かされる繊維材料(9)例えば糸の光学的走査装置(1)は、繊維材料(9)用の通路(91)を含んでいる。異なる場所に設けられて通路(91)のそれぞれ1つの照明範囲(81,82)を照明するため異なるスペクトル特性を持つ光(71,72)を放射する少なくとも2つの光源(21,22)が、通路(91)のそれぞれ1つの照明範囲(81,82)を照明する。光検出器(6)が、異なる照明範囲(81,82)に由来する光を検出する。少なくとも1つの視野絞り(52)が、すべての照明範囲(81,82)の共通集合の部分量である走査範囲(85)からの光のみを光検出器(6)へ当てる。それにより繊維材料(9)が、関与するすべての光成分(73,74)により走査される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載の動かされる繊維材料の光学的走査装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維材料を検査する多数の異なる装置及び方法が公知である。それらは、その使用後、両方のクラス即ち実験室検査(オフライン)及び製造過程中の検査(オンライン)に区分される。繊維検査装置では異なるセンサ原理が使用される。即ち特定のセンサ原理の使用は、とりわけどんな特性を光学的に検出するかに関係する。特に糸検査においてしばしば使用されるセンサ原理は、容量的原理及び光学的原理である。後者の場合糸は光源により照明され、糸と相互作用する光が光検出器により検出される。それから例えば糸太さ又は異物の存在が求められる。
【0003】
国際公開第93/13407号は、異繊維を検出する光学的ヤーンクリヤラの例を示す。測定間隙を通って動かされる糸は、光源により変調される光で照明される。第1のセンサが糸により反射される光を受け、第2のセンサが同時に糸により透過される光を受ける。両方のセンサから出される電気信号は出力信号となるように互いに組合わされ、例えば加算されて、出力信号が糸中における異繊維の存在を示すけれども、糸の直径変化には無関係である。同じ測定原理に基く不純物を検出する別の光学的ヤーンクリヤラが公知である。そこでは糸と相互作用する光からそれぞれ2つの異なる光学的信号が検出され、互いに組合わされて、組合わせ信号が万一の不純物を示すけれども、直径変化を示さない。米国特許出願公開第5,383,017号第5,414,520号明細書によれば、組合わせは商の形成である。米国特許出願公開第5,768,938号明細書は、更に測定間隙と光源又はセンサとの間に光を導く光伝送素子を示し、これらの光伝送素子は、糸に対して直角な面に設けられている。
【0004】
欧州特許出願公開第1655599号及び第1655600号明細書に記載のヤーンクリヤラの光学的測定ヘッドは、米国特許出願公開第5,768,938号明細書の光学的測定ヘッドの影響を受けている。両者において糸が1つの光源により照明される。光源に対向する第1の受光器は、糸により透過される光を検出し、光源のそばに設けられる2つの別の受光器は、糸により反射される光を検出する。光伝送素子は、測定間隙と光源又は受光器との間に光を導くのに役立つ。欧州特許第1655599号明細書によれば、糸が存在しない場合、受光器により測定間隙の対向壁の写像が検出可能であり、これらの写像は光源の直接放射により照明される測定間隙の壁の面外で両側にある。それにより寄生信号の妨害の影響が抑制され、異繊維検出が改善される。欧州特許出願公開第1655600号明細書は、ランバート放射特性を持つ放射器として光源を構成することを提案している。測定間隙から第1の受光器へ光を導く光伝送素子は、絞り及びレンズを含み、絞りは無限に写像される。光源と絞りとの間に拡散レンズが設けられて、絞りを通過しかつレンズの光軸に対して対称な光線を生じる。こうして測定結果の品質が改善される。
【0005】
国際公開第00/20849号は糸中の異物の検出装置を開示している。照明素子は糸上に半球状に形成され、半球に分布する同じ光波長の光源を持っている。すべての光源は半球の中心へ向けられ、この中心を通って糸が動かされる。対物レンズは検出器上の糸部分を照明する。中心の周囲に特に明るい均質な光スポットが生じ、一層良好な場所解明のため、検出器の前に取付けられる絞りによりこの光スポットを限定することができる。この装置はこじんまりしており、場所を節約する。それは写される糸部分の強力な照明を行うので、糸を高い速度で動かすことができるにもかかわらず、異物が確実に検出される。
【0006】
更に糸にある異物を検出する多くの光学的ヤーンクリヤラが公知であり、異物を糸の基本材料からかつ/又は互いに区別するために、2つ又はそれ以上の異なる光波長で動作する。欧州特許出願公開第0399945号又は第0652432号明細書に記載のヤーンクリヤラは、それぞれ1つの広帯域光源及び2つの波長選択性光検出器を使用し、そのうち一方が例えば赤い光に感応し、他方が緑の光に感応する。両方の検出信号の同じ変化は単に糸直径の変化を示唆し、異なる変化が糸にある異物を示唆する。この配置の物理的反転は第2の実施形態を生じ、順次に脈動的に作動せしめられる赤及び緑の光源と広帯域光検出器が存在する。国際公開第00/73771号は、木綿中のポリプロピレンを一層よく検出できるようにするため、赤外線範囲(IR)にある2つの波長を使用する。国際公開第2007/010325号によれば、第1の光成分が電磁スペクトルの可視範囲にあり、第2の光成分が赤外線(IR)又は紫外線(UV)の範囲にある。国際公開第03/008950号は、両方の光成分を別々ではなく同時に一緒に検出することを提案し、異なる信号振幅のため異なる異物を互いに区別することができる。2つの光波長による異物検出を、3つの色例えば赤、緑及び青に拡張することができる。それにより糸の色を大体求めることができる。その例を欧州特許出願公開第1018645号明細書、国際公開第95/29396号、国際公開第2004/044579号及び国際公開第2007/012936号が示している。上述した異物クリヤラでは、異なる波長又は色を持つ2つ又はそれ以上の成分を含む光で糸が照明される。この光を発生するため、順次に作動せしめられる複数の狭帯域光源(例えば発光ダイオード、略称LED)又は広帯域光源(例えば白熱電球、多重LED又はルミネッセンス変換LED)が問題となる。前者の場合波長選択は時間的に光源の順次作動により行われ、後者の場合波長選択光検出器により局部的に行われる。
【0007】
複数の光源を持つ異物クリヤラでは、異なる光源が互いに接近していても異なる場所に設けられている。これらの光源の光が共通なレンズにより視準される場合、レンズの後に異なる色の部分光線が生じて、レンズから糸へ異なる放射角で延びる。そのため測定領域に、これらの部分光線の1つだけ又はこれらの部分光線の複数又はすべての部分光線により照明される範囲がある。従って糸に存在する異物が、異物クリヤラによりその検査中にすべての部分光線により照明されない範囲に存在することがある。これは誤った測定結果を生じることがあり、望ましくない。理想的な場合、異物がその検出中に常にすべての部分光線により照明される範囲に存在するようにするが、これは従来技術では保証されていない。この問題は一方では糸の長手方向に起こる。なぜならば、糸は長手方向に測定領域を通って動かされるからである。しかし他方では長手方向に対して直角な方向に問題が起こる。なぜならば、糸進行が横方向に安定なことはまれだからである。
【0008】
測定領域における異なる色の範囲を局部的に互いに分離し、異なる色の範囲において時間的に順次に行われる測定のサンプルずれを計算による修正により時間的に一致させることによって、問題を回避しようとするだろう。しかしサンプルずれのこのような修正のために、瞬間の糸速度を知らねばならないが、これはまれな場合である。このために糸の平均速度は十分でない。なぜならば、瞬間速度は、ボビンへの糸の側方移動のため、±30%まで平均速度からそれることがあるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、関与するすべての光成分で繊維材料を走査できるようにする、動かされる繊維材料の光学的走査装置及び方法を提示することである。異なる光成分に対応するセンサ信号は、繊維材料の瞬間速度を正確に知ることなしに、簡単かつ正確に互いに組合わせ可能であるようにする。装置及び方法は糸進行の変動に対して強固であるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題及び別の課題は、独立請求項に規定されているように、本発明による装置及び本発明による方法によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に示されている。
【0011】
本発明によれば、少なくとも1つの視野絞りにより、すべての光源により照明可能な測定領域の範囲のみが選ばれる。その結果検出器の全視野が、関与するすべての色で照明される。検出器は、例えば1つの色のみで照明される個所を見ない。サンプルずれの修正は不要である。少なくとも2つの光源が同じ場所に設けられているかのようである。本発明による手段は、装置において使用されるすべての検出器に対して、透過光検出器に対しても反射光検出器に対しても使用することができる。
【0012】
視野絞りとは、技術的光学系において公知なように、写像可能な対象の範囲を決定するため光束の範囲を限定する素子を意味する。視野絞りは通常写像の縁範囲を隠す。入射瞳と射出瞳が区別される。入射瞳は光学系の入口開口であり、光学糸が写像する最大画角を限定する射出瞳は光学系の出口開口であり、光線が光学系を通った後の最大画角を限定する。これに反し、口径絞りは画像における光量を決定する。“視野絞り”及び“口径絞り”の概念は、本明細書において使用されるように、例えばE.Hecht,A.Zajac,“Optics”,Addison−Wesley Publishing Company,1974,paragraph 5.3に詳述されている。
【0013】
従って動かされる繊維材料の本発明による光学的走査装置は、繊維材料用通路、異なる場所に設けられて通路のそれぞれ1つの照明範囲を照明するため異なるスペクトル特性を持つ光を放射する少なくとも2つの光源、及び異なる照明範囲に由来する光を検出する光検出器を含んでいる。少なくとも1つの視野絞りが、すべての照明範囲の公差の部分量である走査範囲からの光のみを光検出器へ当てる。
【0014】
少なくとも1つの視野絞りが入射瞳及び/又は射出瞳により実現されている。
【0015】
光検出器が、繊維材料において透過されるか又は繊維材料により反射される光を検出するように、光源、通路及び光検出器が互いに配置されている。好ましい実施形態では、複数の光検出器が存在し、そのうち少なくとも1つなるべくちょうど1つが、繊維材料において透過される光を検出し、少なくとも他の1つなるべくちょうど2つが、繊維材料により反射される光を検出する。繊維材料用通路と光源又は光検出器との間で光を導くため、光伝送素子例えばガラス及び/又はプラスチックから成る光導波路が存在する。
【0016】
光源の各々が、関連する限られたスペクトル範囲である波長スペクトルを持つ光を放射し、異なる光源のスペクトルが重ならないと、有利である。従って光源が発光ダイオード(LED)として形成されている。好ましい実施形態では、赤い光を放射する発光ダイオードと緑の光を放射する発光ダイオードが存在する。光源が、なるべく全部注型されて放射される光に対して透明な共通のハウジングに収容されている。ハウジングは同時に放射される光のためのコリメータレンズとして作用することができる。
【0017】
本発明による装置は、例えば繊維材料なるべく糸にある異物を検出するために使用される。それは紡糸機又は巻取り機にあるヤーンクリヤラにおいて有利に使用される。
【0018】
動かされる繊維材料の本発明による光学的走査方法では、異なるスペクトル特性を持つ少なくとも2つの光成分により、繊維材料がそれぞれ1つの照明範囲において照明される。異なる照明範囲に由来する光、しかもすべての照明範囲の交差の部分集合である走査範囲からの光のみが検出される。検出される光は、なるべく糸である繊維材料を検出するために使用される。
【0019】
本明細書において、“光”又は“照明する”のような概念は、可視光に対してのみならず、隣接するスペクトル範囲紫外線(UV)及び赤外線(IR)からの電磁放射線に対しても使用される。
【0020】
本発明が概略的な図面により以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 透過走査を行う本発明による装置の第1実施例を側面図で示す。
【図2】 図1の装置の異なる照明範囲を正面図で示す。
【図3】 反射走査を行う本発明による装置の第2実施例を側面図で示す。
【図4】 透過走査を行う本発明による装置の第3実施例を側面図で示す。
【図5】 透過走査を行う本発明による装置の第4実施例を側面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、本発明による第1実施例が側面図で示されている。繊維材料9例えば糸は、装置1を通る所定の通路91に沿って動かされる。図1において、糸9の長手方向と一致する運動方向が矢印90で示されている。
【0023】
糸9又は通路91を照明するため、装置1は2つの異なる色の光源21,22を持っている。この実施例には、2つの発光ダイオード(LED)、例えば赤い光71を放射する第1のLED21及び緑の光72を放射する第2のLED22がある。光源21,22はなるべく1つの(図示しない)光源制御装置により個々に制御可能である。その強さはなるべく周期的に調節される。2つの光源21,22において、強度経過は90°移相可能なので、直角復調を行うことができる。その代りに光源21,22を順次に開閉することができる。重要なことは、繊維材料9が1周期内に両方の光源21,22により照明される走査範囲85の寸法と比較して小さい、なるべく少なくとも10倍小さい行程のみを進むように、周期的光源変調の周波数を高く選ぶことである。糸9がv=2000m/minの速度で装置1を通って動かされかつf=300kHzの走査周波数で走査される例を考察する。その場合糸は、T=1/f=3.3・10−6の周期中に行程s=v・T=0.11mmだけ進むが、これは約D=1.5mmの走査範囲85の直径より著しく小さい。従ってこの例では、走査周波数fは十分高く選ばれている。走査周波数fの選択に対してな

【0024】
両方のLED21,22は共通なハウジング3に収容されている。ハウジング3は、光71,72に対して透明なプラスチックから全体を注型され、糸通路91へ向けられる湾曲した限界面31を持っている。従ってハウジング3は、LED21,22から放射される光71,72を平行な照明光束73,74にできるだけ集束するコリメータレンズとして作用する。透明なハウジング3内に注型されるこのような異なる色のマルチLED21,22は、例えば徳島の日亜化学社又はミュンヘンのOsram社から市販されている。
【0025】
異なるLED21,22がハウジング3内で同じ場所に存在できず、異なる場所に設けられていることは、必然的なことである。両方のLED21,22は、装置1の光軸10に関して対称であるのがよい。その相互距離は例えば約0.7mmとすることができる。このずれのため、両方の照明光束73,74は、光軸10に関して異なる放射角を持っている。従って両方のLED21,22は、糸通路91の異なる照明範囲81,82を照明し、これが図2の正面図に概略的に示されている。赤い照明範囲81は、糸の運動方向90に関して緑の照明範囲82より上流にあり、両方の照明範囲81,82のずれは約1.5mmであり、その直径はそれぞれ約3mmである。
【0026】
装置1は更に糸9と相互作用する光75を検出する光検出器6を含んでいる。図1の実施例では、糸9により透過されるか又は糸9のそばを通って透過される光75が問題である。検出器側の写像レンズ4は糸9を検出器6に写像する。検出器6は、それに当たる光の強さを、光の強さに比例する電気出力信号に変換する。この出力信号は電気導線により評価装置へ導かれるが、これら両者は示されていない。評価装置において出力信号が適当なやり方で復調されて、光成分73,74に相当する個々の信号成分を与える。それから信号成分が評価され、なるべく互いに組合わされて、糸直径及び/又は糸9に存在する異物のような糸9のパラメータについての情報を与える。評価はアナログ及び/又はディジタルに行うことができる。異なる光源を必要とする場合検出器信号を評価するための適当な方法及び装置は、最初に引用した従来技術から公知であり、ここでそれ以上説明する必要はない。
【0027】
集合論により本発明の作用を明確に説明するために、以下に次の表記が使用される。
R=赤い照明範囲81にあるすべての点の集合
G=緑の照明範囲82にあるすべての点の集合
両方の照明範囲81,82のすべての光が検出され、即ち検出器が和集合R∪Gを見ると、赤い部分範囲83からの赤く照明される点だけが赤い部分範囲83が差集合R/Gに関係し、緑の部分範囲84からの緑に照明される点だけが差集合G/Kに関係する。しかしこのような単色の部分範囲83,84からの測定値の検出が誤測定を生じる可能性がある。なぜならば評価アルゴリズムは、両方の光成分71,72が同時に検出されることを前提とするからである。ここで本発明が始まる。本発明によれば、照明範囲81,82の共通集合R∩G例えば円板状走査範囲85からの光のみが検出される。従って走査範囲85からの点の集合Aは、照明範囲81,82の共通集合R∩Gの部分集合である。
A⊆R∩G
ここでAは真の部分集合(A⊂R∩G)であるか、共通集合と等しくてもよい(A=R∩G)。この目的のため装置1は、走査範囲85に由来するような光75のみを光検出器6に当てさせる射出瞳52を含んでいる。
【0028】
図1の実施例では、射出瞳52は、検出器6の直前又は検出器6に設けられる固有の光学素子として構成されている。しかしこのような射出瞳52は、付加的な光学素子を必要とすることなく、検出器6の光に感応する面の大きさによっても規定することができる。
【0029】
本発明による装置1の第2の実施例が図3に側面図で示されている。この実施例は図1の実施例と類似なので、互いに一致する素子に対して同じ符号が使用される。両方の実施例の主要な相違は、図3では検出器6が糸9で反射される光85を検出することである。ここでは光軸10は垂直ではなく、糸9の長手方向90に対して傾斜している。しかしこのことは、糸9で反射される光75の検出のために必要ではない。(相互ずれを別として)光源21,22と検出器6を、糸9の長手方向90に対して直角な1つの面に設けることが可能である。同じ装置において図1による透過測定も行う場合、透過測定用の検出器も同様に前記の面に設けることができる。糸の長手方向に対して直角な面に設けられている多LED光源、2つの反射検出器及び透過検出器を持つヤーンクリヤラ測定ヘッドは、米国特許出願公開第5768938号又は国際公開第2004/044579号に開示されている。このような測定ヘッド装置は、本発明のために受継ぐこともできる。図3に示す糸9におけるフレネル光反射は、簡単化された理想化である。一般に光73,74は糸の所で散乱される。しかしこのことは本発明の作用において大した違いはない。
【0030】
図4は本発明による装置1の第3実施例を示す。図1の実施例と同じように、この実施例は透過で動作するが、写像レンズ4なしで動作する。装置は、糸9の後にある入射瞳51と検出器9の後にある射出瞳52を持っている。これらの両方の視野絞り51,52は、適当な構成及び配置において、走査範囲85からの光75のみが検出器6へ達するようにする。
【0031】
検出器側の光の案内の第4実施例を図5が示す。ここでは糸9と相互作用する光75が光導波路53中と通路91から検出器6へ導かれる。光導波路53は、例えば使用される光に対して透明なガラス及び/又はプラスチックから製造することができる。その壁は鏡面化されるか、又は導かれる光が壁における全反射により反射される。その代りに、例えば粗面化及び/又は被覆により壁を散乱するように形成することができる。本発明によれば、光導波路53即ちその形状寸法及びその光学的特性は、走査範囲85からの光75のみが検出器6へ達するように、構成されかつ配置されている。糸側終端面54の限界はここでは入射瞳51として作用し(図4参照)、検出器側終端面55の限界は射出瞳52として作用する。更にここでは終端面54,55の数値的口径も、走査範囲85を規定する際役割を果たす。
【0032】
光源21,22の間に光導波路が存在してもよい。光源又は光検出器と糸との間で光を導く光導波路は米国特許出願公開第5768938号明細書に開示されているが、そこでは口径絞り又は視野絞りの局面に立入ってはいない。
【0033】
本発明が上述した実施例に限定されないことは自明である。本発明を知れば、当業者は本発明に属するそれ以外の変形例を推論できるであろう。既に述べたように、装置1は、図1及び3の繊維材料9において透過される光及び繊維材料9の所で反射される光用の光検出器を持つことができ、即ち図1及び3の実施例の組合わせとして構成することができる透過される光及び/又は反射される光のためにそれぞれ複数の検出器が存在し、透過される光のために1つの検出器が、反射される光のために2つの検出器が存在していてもよい。
【0034】
図1,3及び4の実施例では、糸9の長手方向90を含む面に両方の光源21,22がある。このことは必ずしも必要でない。例えば長手方向90に対して直角な面に光源21,22を設けることが可能である。その場合図2の照明範囲81,82が90°回されるけれども、走査範囲85は同じである。このような装置は糸進路の変動に対して強固である。照明範囲81,82も走査範囲85も円板状である必要のないことは明らかである。
【0035】
2つより多い光源、例えば赤、緑及び青の色を持つ3つの光源が存在していてもよい。可視光に加えて又はその代りに、繊維材料を紫外線及び/又は赤外線で照明することができる。光の案内を一層明らかにし、本発明を一層よく説明できるようにするため、図1,3及び4における照明は、方向づけられる光束の形で示されている。その代りに通路91の拡散照明を行うことも可能であり、事情によっては有利である。検出される光75は拡散光でもよく、これは光導波路53の壁の散乱構成(図5参照)又は受像側光路にある散乱板によって行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 装置
10 光軸
21,22 光源
3 光源用ハウジング
31 ハウジングの限界面
4 写像レンズ
51 入射瞳
52 射出瞳
53 光導波路
54 糸側終端面
55 検出器側終端面
6 光検出器
71,72 放射される光
73,74 照明光束
75 走査範囲からの光
81,82 照明範囲
83,84 照明範囲の単色部分範囲
85 走査範囲
9 繊維材料
90 繊維材料の長手方向及び運動方向
91 繊維材料用通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動かされる繊維材料(9)の光学的走査装置(1)であって、繊維材料(9)用通路(91)、異なる場所に設けられて通路(91)のそれぞれ1つの照明範囲(81,82)を照明するため異なるスペクトル特性を持つ光(71,72)を放射する少なくとも2つの光源(21,22)、及び異なる照明範囲(81,82)に由来する光を検出する光検出器(6)を有するものにおいて、すべての照明範囲(81,82)の公差の部分量である走査範囲(85)からの光のみを光検出器(6)へ当てる少なくとも1つの視野絞り(51,52)を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも1つの視野絞り(51,52)が入射瞳(51)及び/又は射出瞳(52)により実現されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
光検出器(6)が、繊維材料(9)において透過されるか又は繊維材料(9)により反射される光(75)を検出するように、光源(21,22)、通路(91)及び光検出器(6)が互いに配置されている、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項4】
複数の光検出器が存在し、そのうち少なくとも1つなるべくちょうど1つが、繊維材料(9)において透過される光を検出し、少なくとも他の1つなるべくちょうど2つが、繊維材料により反射される光を検出する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
通路(91)と光源(21,22)又は光検出器(6)との間で光を導くため、光伝送素子(53)例えばガラス及び/又はプラスチックから成る光導波路が存在する、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項6】
光源(21,22)の各々が、関連する限られたスペクトル範囲である波長スペクトルを持つ光を放射し、異なる光源(21,22)のスペクトルが重ならない、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項7】
光源(21,22)が発光ダイオードとして形成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
赤い光(71)を放射する発光ダイオード(21)と緑の光(72)を放射する発光ダイオード(22)が存在する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
光源(21,22)が、なるべく全部注型されて放射される光(71,72)に対して透明な共通のハウジング(3)に収容されている、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項10】
繊維材料(9)なるべく糸にある異物を検出するために使用される、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項11】
動かされる繊維材料(9)の光学的走査方法であって、異なるスペクトル特性を持つ少なくとも2つの光成分(73,74)により、繊維材料(9)がそれぞれ1つの照明範囲(81,82)において照明されるものにおいて、すべての照明範囲(81,82)の共通集合の部分集合である走査範囲(85)からの光(75)のみが検出されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
繊維材料(9)において透過されかつ/又は繊維材料(9)により反射される光(75)が検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各光成分(73,74)の波長スペクトルが関連する限られたスペクトル範囲であり、異なる光成分(73,74)のスペクトル範囲が重ならない、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
繊維材料(9)が赤い光(73)及び緑の光(74)で照明される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
なるべく糸である繊維材料(9)を検出するために、検出される光(75)が使用される、請求項11〜4の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504038(P2013−504038A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527171(P2012−527171)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【国際出願番号】PCT/CH2010/000205
【国際公開番号】WO2011/026249
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(503169552)ウステル・テヒノロジーズ・アクチエンゲゼルシヤフト (37)
【Fターム(参考)】