説明

動作幅の設定手段を備えたノズルバー及びノズル板の動作幅の設定方法

この発明によるノズルバーは、ノズルバーに沿って移送される商品の帯状体の繊維を処理するための液体ジェット噴流を発生する装置上に置かれる。このノズルバーは、帯状体の動作幅に渡って延びる上部(4)と液体送出スリット(10)で終端する下部(5)とで構成される。この発明では、液体送出スリット(10)の下には、ノズル板(14)と、噴射水の流れの方向に見てノズル板の直ぐ上には、容易に取り外し可能な、所謂マスク板(18)が液密に取り付けられている。マスク板(18)によって、ノズル板(14)のノズル噴射孔の一部が覆われるとともに、その一部が開放され、この開放されている部分から流体ジェット噴流が噴射されて、密な液体のカーテンを形成する。この発明では、ノズルバーに対して、最大噴射幅のノズル板(14)を用いる。より小さい噴射幅が要求された場合、それに対応してノズル板(14)の外側領域の不必要なノズル孔を覆うマスク板(18)を取り付ける。このようにして、動作幅の簡単かつ安価な設定が可能となり、更に、プロセスに必要なエネルギーだけが用いられるとともに、製品の帯状体を移送する部品が傷まない。更に、設備での噴射水の増加分が少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動作幅を設定する手段を備えたノズルバーとノズル板の動作幅を設定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルバーは、ノズルバーに沿って移送される帯状体の繊維を処理する液体ジェット噴流を発生する装置上に置かれる。このバーは、繊維の帯状体の動作幅に渡って延びる上部とそれに液密に固定された下部とから構成され、上部内には、圧力を加えられた液体を、例えば、前面側に供給する圧力室がバーの全長に渡って配置されている。隔壁の後には、隔壁内に配置された液体貫通孔を介して圧力室と繋がった圧力分配室が、圧力室と平行に配備されており、下部上には、噴射液用の孔を備えたノズル板が取り付けらている。
【0003】
ノズル板は、噴射水を作り出す役割を果し、その噴射水は、1,000バールまでの圧力を用いて発生させられる。そのようなノズル板は、約1ミリメートルの厚さと約1インチ(25.4ミリメートル)の幅の金属板である。繊維束の幅全体に渡って延びるノズル板の長さは、実施形態に応じて、繊維束の幅よりも凡そ300〜500ミリメートル長い。ノズル板のノズルが配備されている長さは、通常繊維束の幅に50ミリメートルを加えた長さに相当する。ノズル板内の孔の直径は、0.08〜0.2ミリメートルである。整然と噴出する噴射水を保証することができるように、取水口上の孔の縁を非常に精確に作らなければならない。噴射水は、繊維束の上に当たるまで拡がらないように維持すべきであり、そのことは、そのような噴射水だけが全運動エネルギーを繊維束の処理対象のフリース内に流入して、それによりフリース内に個々の繊維又は線条の最適な状態の変化を引き起こすことができるからである。この状態の変化の効果によって、フリースを所望の形式に硬化させるとともに、任意選択として、その構造にも影響を与えられる。
【0004】
現在市販されている動作幅が3.6メートルの機械では、前述した構成にもとづき、3.650ミリメートルの噴射水の幅が得られる。40hpi(1インチ当りの孔の数)のノズルピッチでは、そのようなノズル板は、全部で5,748個のノズル孔を有し、個々の孔は、それぞれ機能性検査に100%合格しなければならない。そこに障害が有った場合、直ちに生産された製品に欠陥の有る箇所が発生し、そのため、欠陥製品とされるか、さもなければ少なくとも品質の劣化を来すこととなる。このようなノズル板に対する特別な要件は、製造コストを上昇させ、そのため部品コストを増大させる方向に作用する。
【0005】
更に、ノズルバーに沿って移送される製品の帯状体の繊維を処理する生産設備は、柔軟に動作し、それにより様々な顧客の注文に対処することができなければならない。生産する製品は、様々な動作幅を要求して来る可能性が有る。従来技術では、ウェータージェットニードリング機械を様々な動作幅で動作可能とするために、それに対応した孔の幅を持つノズル板を用いていた。その欠点は、ノズル板の製造が非常に費用がかかるので、投資が大きくなることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、ノズルバーに沿って移送される帯状体の繊維を処理する液体ジェット噴流を発生する装置に関して、簡単かつ安価に動作幅を設定することが可能なノズルバー及びそれに対応した方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、この発明の請求項1によるノズルバー及びそれに対応した方法によって解決される。
【0008】
この発明によるノズルバーは、ノズルバーに沿って移送される帯状体の繊維を流体力学的にジェットニードリング処理するための非常に細かい液体ジェット噴流を発生する装置上に置かれるものであり、帯状体の動作幅に渡って延びる上部と下部とから構成され、上部内には、圧力を加えられた液体を供給する圧力室が、ノズルバーの全長に渡って配置されており、下部内には、液体送出スリットで終端する圧力分配室が、圧力室と平行に配備されている。液体送出スリットの下には、ノズル板が取り付けられており、噴射水の流れの方向に見てノズル板の直ぐ上には、容易に取り外し可能な、所謂マスク板が液密に取り付けられている。マスク板によって、ノズル板のノズル噴射孔の一部が覆われるとともに、ノズル板のノズル噴射孔の一部が開放され、これらのマスク板によって開放されているノズル板のノズル噴射孔からは、それに応じた数の流体ジェット噴流が噴出して、密な液体のカーテンを形成するものである。
【0009】
この発明では、ノズルバーに対して、ジェット噴流の最大幅に対応するノズル板が用いられる。そこで、より小さい幅のジェット噴流が要求された場合、噴射水の流れの方向に見てノズル板の前には、ノズル板の外側領域の不要なノズル孔を覆うマスク板が取り付けられる。
【0010】
ジェット噴流の幅を製品の帯状体の動作幅に合わせることは、必要な量のエネルギーだけが処理に用いられるという利点も有する。さもなければ、ジェット噴流の幅の分のエネルギー消費量が増大する。更に、ジェット噴流の幅を合わせることは、製品の帯状体を移送する部品を傷めず、設備での噴射水の増加分を少なくし、それによって、水の閉じた循環系における処理水の使用量が低減されることとなる。
【0011】
有利な実施構成は、従属請求項に記載されている。
【0012】
有利な実施形態では、マスク板は、ノズル板のノズル噴射孔の配列の長さよりも短いスリット形状の切り込みを有し、このスリット形状の切り込みは、ノズル噴射孔の配列の一部が開放されるような形でノズル板のノズル噴射孔の配列上に配置される。
【0013】
マスク板は、有利には、プラスチック、金属、セラミック又はゴム部材を含む複合材から製造される。マスク板の必要な輪郭は、例えば、レーザー切断法により形成することができる。従って、マスク板は、安価に製造することが可能であり、そのためノズル板及び容易に交換可能なマスク板を備えたノズルバーによって、様々な動作幅に対するノズルバーの柔軟性が、簡単かつ費用を節約した形で保証されるものである。
【0014】
更なる利点は、このような形のノズルバーの実施形態が、直ちに、即ち、負担のかかる取替作業無しで、既存の設備にも適用可能なことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下において、図面にもとづき、この発明のノズルバーの実施例を説明する。
【0016】
図1のノズルバーの筐体は、全長に渡り数カ所において図示されていないネジにより下側から下部2とねじ止めされた上部1から構成される。上部1は、二つの縦長の内腔4と5を有し、その中の上側が圧力室4であり、下側が圧力分配室5である。両方の室4と5は、一方の正面側をカバー6と7によって液密にねじ止めされている。圧力室4は、筐体の他方の正面側15に開口3を有し、その開口を通して、1,000バールまでの圧力を加えられた液体が導入される。両方の室4と5は、隔壁8によって互いに分離されている。ノズルバーの全長に渡って、隔壁8内の多数の貫通口9が、両方の室4と5を繋いでおり、その結果圧力室4内に流入した液体は、同時に全長に渡って分散される形で圧力分配室5内に流れ出て行く。圧力分配室5は、下に向かって開いている、詳しく言うと圧力分配室5の内腔の直径と比べて狭い液体送出スリット10が開けられており、そのスリットは、ノズルバーと液体送出スリット10の下に配置されたノズル板14とに沿って延びている。液体送出スリット10が延びる長さは、ノズル板14の流れの方向に向かって直ぐ手前に有るマスク板18によって覆われていない部分の長さによって決定される。下部2は、カバー6と7及びそれと対向する筐体の正面壁15と同列に、それぞれ別のカバー16と17によって液密にねじ止めされている。
【0017】
図2は、図1のノズル板14とマスク板18の縮尺通りではない詳細図を図示している。この場合、符号Xは、ノズル板14の孔が開けられている長さを表し、符号X’は、マスク板18内のそれより短い切り込みの長さを表している。垂直に走る矢印は、噴射水の流れの方向を示している。
【0018】
図3は、図1のC−C線に沿った断面をノズル板14の前面側から見た図を図示している。
【0019】
それに対応して、図4では、図1のC−C線に沿った断面を切り込み19を有するマスク板18の前面側から見た図が図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ノズルバーの実施例の縦断面図
【図2】図1のノズル板とマスク板の詳細図
【図3】図1のC−C線に沿った断面をノズル板の前面側から見た図
【図4】図1のC−C線に沿った断面をマスク板の前面側から見た図
【符号の説明】
【0021】
1 上部
2 下部
3 開口
4 圧力室
5 圧力分配室
6 カバー
7 カバー
8 隔壁
9 貫通口
10 液体送出スリット
14 ノズル板
15 筐体の正面壁
16 カバー
17 カバー
18 マスク板
19 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルバーに沿って移送される帯状体の繊維を流体力学的にジェットニードリングするための非常に細かい液体ジェット噴流を発生する装置の動作幅を設定する手段を備えたノズルバーであって、
a)その上部(1)には、圧力を加えられた液体を供給する圧力室(4)が、ノズルバーの全長に渡って配置されており、
b)その下部(2)内には、液体送出スリット(10)で終端する圧力分配室(5)が、圧力室と平行に配備されている、
ノズルバーにおいて、
c)液体送出スリット(10)の下には、取り外し可能な形で配置されたマスク板(18)と、ノズル板(14)とが液密に取り付けられており、マスク板(18)によって、ノズル板(14)のノズル噴射孔の一部が覆われるとともに、ノズル板(14)のノズル噴射孔の一部が開放され、このマスク板(18)によって開放されているノズル板(14)のノズル噴射孔から、それに応じた数の流体ジェット噴流が噴射されて、密な液体のカーテンを発生する、
ことを特徴とするノズルバー。
【請求項2】
マスク板(18)は、ノズル板(14)のノズル噴射孔の配列の長さ(X)よりも短い長さ(X’)のスリット形状の切り込みを有し、このスリット形状の切り込みは、ノズル噴射孔の配列の一部が、この長さ(X’)に沿って開放されるように、ノズル噴射孔の配列に沿ってノズル板(14)内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のノズルバー。
【請求項3】
マスク板(18)が、プラスチック、金属、セラミック又はゴム部材を含む複合材から製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載のノズルバー。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載のノズルバーに沿って移送される製品の帯状体の繊維を流体力学的にジェットニードリングするための非常に細かい液体ジェット噴流を発生する装置の動作幅を設定する方法において、
所望の動作幅に従い、それに対応して、ノズル板(14)のノズル噴射孔が開けられている長さ(X)よりも短い長さ(X’)の部分を開放するマスク板(18)を用いることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−528282(P2008−528282A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553492(P2007−553492)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000345
【国際公開番号】WO2006/081938
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(505196727)フライスナー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (19)
【Fターム(参考)】