説明

動作補助装置、及び該動作補助装置を管理する情報管理装置

【課題】動作補助装置の使用状況を効率よく管理し、最適な状態を維持する。
【解決手段】動作補助装置において、装着者の関節の角度を検出する第1の検出手段と、装着者の筋活動に伴う生体信号を検出する第2の検出手段と、駆動源の駆動トルクを検出する第3の検出手段と、基準パラメータデータベース、指令信号データベース、及び前記第1から第3の検出手段の検出信号からなる動作履歴情報が格納される格納手段と、前記動作履歴情報を管理者側に送信し、前記管理者側からの前記基準パラメータ及び/又は指令信号を受信する通信手段と、前記更新情報の該当するフェーズに対応させて更新情報を格納する更新制御手段と、関節角度信号と、基準パラメータとを比較することにより、前記装着者の動作のフェーズを推定し、推定されたフェーズに対応する指令信号に基づいて、前記駆動源を駆動する制御手段を備えることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作補助装置、及び該動作補助装置を管理する情報管理装置に係り、特に動作補助装置の使用状況を効率よく管理し、最適な状態を維持するための動作補助装置、及び該動作補助装置を管理する情報管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、老化や事故、病気等に起因した筋骨格系の衰弱や損傷、未発達等による運動機能障害等を持つ人の数は、急激な増加を続けている。このような運動機能に障害を持つ人々には、健常者であれば簡単に行える動作でも困難である場合が多い。
【0003】
このため、従来よりこれらの人達の動作を補助或いは代行するための種々のパワーアシスト装置の開発が進められている。これらのパワーアシスト装置としては、例えば、利用者(以下「装着者」という)の体に一体的に装着されて、装着者の意志に基づいて発生する生体電位を検出し、この生体電位信号から駆動ユニットを制御して装着者の関節に駆動力を付与して装着者の関節の動きを助けて動作を補助する装着式動作補助装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような装着式動作補助装置は、装着者の意思に応じた動作補助を行うだけでなく、例えば運動機能の回復を目的としたリハビリテーション(以下、リハビリと称する。)を行う際にも適用することができる(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このように装着式動作補助装置を適用すれば、装着者の意思に応じて動作を補助すると共に、装着者の動作をガイドして意図した動作を過大な負荷をかけない状態で行えるため、リハビリの例に限らず、様々な動作を習得する訓練をすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−230099号公報
【特許文献2】特開2008−264509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えばリハビリ等は、医師や理学療法士等の指導のもとで、必要な補助を受けながら所定の動作をすることで身体機能の回復を図るものであるが、継続的に行うことが好ましいため、通常は、医師等の指導を定期的に受けながら、その指導に基づいた動作を個人的(例えば、医師等の同席なし等)に反復して行うこととなる。また、医師等の指導が終了した場合には、個人的に運動訓練を継続して行うこととなる。このように一旦所定の動作の指導を受けた後に反復して同じ動作を繰り返して訓練を行う場合、運動機能が回復する等の要因によって、前回医師等の指導を受けて行った動作が、実際にリハビリを行っている時点の身体状況には適さなくなってしまう場合があった。
【0008】
また、例えばリハビリ効果の高い新たな運動プログラム等が考案された場合でも、次に医師等の指導を受けるまでは、その運動プログラムを伝授することはできないという問題があった。また、リハビリに限らず何らかの動作を習得するためのトレーニングにおいても同様に、指導者の指導を頻繁に直接受けられない場合に、その時の身体状況に最適なトレーニングを行うのが困難であるという問題があった。
【0009】
また、装着式動作補助装置を着用してリハビリ動作を行ったとしても、指導を受けたときの動作を、装着者の意思に応じて再現することができるように装着者の動作を補助することはできるものの、指導者が動作を直接指示することなく、装着者の回復度合いに応じて目的とする動作を変化させたり、装着者に新たな運動プログラムをさせるように補助したりすることはできなかった。
【0010】
そこで、本発明は、指導者に直接指導を受けることなく、装着者に新たな動作を伝達することができるように装着者の動作を補助する装着式動作補助装置を提供し、また、このような動作補助装置を管理する情報管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0012】
請求項1に記載された発明は、装着者に対して動力を付与する駆動源を有した動作補助装着具により装着者の動作を補助或いは代行する装着式の動作補助装置において、前記装着者の動作に応じた前記装着者の関節の角度を検出する第1の検出手段と、前記装着者の筋活動に伴う生体信号を検出する第2の検出手段と、前記駆動源の駆動トルクを検出する第3の検出手段と、前記装着者の動作パターンを構成する一連のフェーズの個々に対応するように、装着者の関節角度と生体信号とを関連づけて設定したデータ群からなる基準パラメータデータベース、前記基準パラメータのそれぞれに対応した動力を前記駆動源に発生させるための指令信号を設定したデータ群からなる指令信号データベース、及び前記第1から第3の検出手段の検出信号からなる動作履歴情報が格納される格納手段と、前記動作履歴情報を管理者側に送信し、前記管理者側からの前記基準パラメータ及び/又は指令信号を受信する通信手段と、前記更新情報の該当するフェーズに対応させて前記格納手段に前記更新情報を格納する更新制御手段と、前記第1の検出手段によって検出された関節角度信号と、前記更新制御手段により更新された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者の動作のフェーズを推定し、推定されたフェーズに対応する指令信号に基づいて、前記駆動源を駆動する制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、動作履歴情報により動作補助装置の使用状況及び装着者の身体状況を管理者側に送信すると共に、管理者側からの基準パラメータ及び/又は指令信号を受信して更新し、更新された基準パラメータ及び/又は指令信号によって装着式動作補助装置の駆動源を駆動することができるため、管理者は装着者及び装着式動作補助装置の最新の状態を知った上で、その状況に適した基準パラメータや指令信号を送信することができる。また、この更新された基準パラメータ等に基づいて装着式動作補助装置の駆動源が制御されるため、指導者に直接指導を受けることなく、装着者に新たな動作を伝達することができるように装着者の動作を補助することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明は、前記第1の検出手段により検出された関節角度を前記基準パラメータの関節角度と比較することにより、前記装着者の動作のフェーズを選定するフェーズ判定手段を更に有し、前記フェーズ判定手段により選定したデータの種類が前記動作履歴情報として前記格納手段に格納されることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、装着者毎に最適なフェーズを選択することで、使用性を向上させることができる。また、動作履歴情報としてフェーズ判定手段により選択したデータの種類を格納することで、フェーズの使用頻度を把握することができる。
【0016】
請求項3に記載された発明は、前記フェーズ判定手段によって判定されたフェーズに応じた動力を前記駆動源に発生させるための指令信号を生成する自律的制御手段とを有することを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、フェーズに応じて最適に駆動源の制御を行うことができる。これにより、装着者に違和感のない動作補助を提供することができる。
【0018】
請求項4に記載された発明は、前記請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の動作補助装置から動作履歴情報を取得して前記動作補助装置の動作状況を管理する情報管理装置において、前記動作補助装置から送信される前記動作履歴情報を解析する解析手段と、前記解析手段により解析された結果に基づいて、対応する基準パラメータの更新を行う更新データ生成手段と、前記更新データ生成手段により生成された更新データを送信するために、前記動作補助装置に対して更新データの要求指示を送信し、要求のあった動作補助装置に対して前記更新データを送出する更新データ送出手段とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、装着者の身体情報及び装着式動作補助装置の動作履歴を情報管理装置で一元管理することができる。また、メンテナンスには、装着者の身体情報及び装着式動作補助装置の動作履歴に応じて基準パラメータ及び/又は指令信号を容易に変更・更新することができる。
【0020】
請求項5に記載された発明は、受信した更新用のフェーズデータの作成者の認証を行う認証手段と、前記認証手段により認証された更新データの生成権限のある動作補助装置から送信された更新データのみを格納するよう制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、更新データの信頼度を向上させることができ、また一般の使用者等の情報に優先度を設けて管理することができるため、より高精度な解析を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、動作補助装置の使用状況を効率よく管理し、最適な状態を維持することで、指導者に直接指導を受けることなく、装着者に新たな動作を伝達することができるように装着者の動作を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態における下半身用の装着式動作補助装置の一実施例が装着された状態を示す図である。
【図2】本実施形態における上半身用の装着式動作補助装置の一実施例が装着された状態を示す図である。
【図3】本実施形態における動作補助装置用収納装置の概略構成の一例を示す図である。
【図4】装着式動作補助装置の管理システムを説明するための図である。
【図5】本実施形態における装着式動作補助装置の一実施例に適用された制御系システムを示すブロック図である。
【図6】データ格納手段に格納される各データの一例を示す図である。
【図7】フェーズ間の動作指示信号の連結を説明するための一例を示す図である。
【図8】本実施形態における情報管理装置の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<本発明について>
本発明は、動作補助装置の動作履歴情報(例えば、関節角度、生体信号、駆動源の駆動トルク等)を有線又は無線等の通信ネットワークを介して、1又は複数の動作補助装置の使用状況を管理する管理者(装着式動作補助装置のメンテナンス等のシステム管理を行っている者又は、装着者に動作の指導を行う指導者)側に設けられた情報管理装置に送信し、情報管理装置は、各装着式動作補助装置から送信されてきた履歴情報を蓄積して、この履歴情報を解析して故障の発生し易い使用状況等を解析し、この解析結果に基づいて動作補助装置の基準パラメータ及び/又は指令信号の更新を行い、新たな基準パラメータ及び/又は指令信号を動作補助装置にダウンロードさせて各動作補助装置の更新を行うというものである。
【0025】
更に、動作補助装置からの要求信号に応じて、又は定期的又は任意のタイミングで情報管理センターから、更新情報を送信する。また、動作補助装置は、情報管理センターからの更新情報を基準パラメータデータベース及び/又は指令信号データベースに反映させる。
【0026】
以下に、上述したような特徴を有する本発明における動作補助装置、及び該動作補助装置を管理する情報管理装置を好適に実施した形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
なお、以下の説明では、一例として二足歩行による下半身運動機能補助・再建を目的とした装着式動作補助装置による、より自然な歩行、立ち座り等の動作を提供するためのハードウェア構成と駆動制御手法について説明する。
【0028】
また、本実施形態における装着式動作補助装置は、生体信号として例えば上位中枢からの指令信号が脊髄を介して筋表面で電位の形で発生する表面筋電位(EMG:Electro Myogram/Myoelectricity)を用いて制御を行い、更に筋関節の負担、違和感を軽減するために、慣性モーメント・粘弾性を適用するインピーダンス調整による補償を制御するものである。
【0029】
なお、生体信号とは、装着者の体内に発生する電気に起因する信号であり、身体から測定可能な信号であると共に身体の動作や脳からの信号に伴って時系列で変化する信号である。例えば、生体信号は、神経電位や筋電位、脳波、心電位、更に、モーションアーティアファクト(動作の影響)によって生じる電位等、生化学反応により生じる電位や、心臓の拍動によって生じる脈波等の振動等、生体の活動によって生じる信号を意味する。
【0030】
<装着式動作補助装置:下半身(ハードウェア構成)>
図1は、本実施形態における下半身用の装着式動作補助装置の一実施例が装着された状態を示す図である。装着式動作補助装置10aは、脳からの信号により筋力を発生させる際に生じる生体信号(例えば、表面筋電位等の人の身体から出る信号等)を検出し、この検出信号に基づいてアクチュエータからの駆動力を付与するように作動するものである。
【0031】
装着式動作補助装置10aを装着した装着者1は、自らの意思で歩行動作を行うと、その際に発生した生体信号に応じた駆動トルクがアシスト力として装着式動作補助装置10aから付与され、例えば、通常歩行で必要とされる筋力の半分の力で歩行することが可能になる。したがって、装着者1は、自身の筋力とアクチュエータ(本実施例では、電動式の駆動モータを用いる)からの駆動トルクとの合力によって全体重を支えながら歩行することができる。
【0032】
その際、装着式動作補助装置10aは、後述するように歩行動作に伴う重心の移動に応じて付与されるアシスト力(モータトルク)が装着者1の意思を反映するように制御している。そのため、装着式動作補助装置10aのアクチュエータは、装着者1の意思に反するような負荷を与えないように制御されており、装着者1の動作を妨げないように制御される。
【0033】
また、装着式動作補助装置10aは、歩行動作以外にも、例えば装着者1が椅子に座った状態から立ち上がる際の動作、或いは立った状態から椅子に腰掛ける際の動作、更には、装着者1が階段を上がったり、階段を下がったりする動作等、装着者の意思に対応した動作を補助することができる。特に、筋力が弱っている場合には、階段の上り動作や、椅子から立ち上がる動作を行うことが難しいが、装着式動作補助装置10aを装着した装着者1は、自らの意思に応じて駆動トルクを付与されて筋力の低下を気にせずに動作することが可能になる。
【0034】
ここで、図1に示す装着式動作補助装置10aの構成の一例について説明する。装着式動作補助装置10aは、図1に示されるように、装着者1に装着される動作補助装着具11にアクチュエータ(駆動源に相当する)を設けたものである。
【0035】
なお、アクチュエータとしては、装着者1の右側股関節に位置する右腿駆動モータ12と、装着者1の左側股関節に位置する左腿駆動モータ13と、装着者1の右膝関節に位置する右膝駆動モータ14と、装着者1の左膝関節に位置する左膝駆動モータ15とを有する。これらの駆動モータ12,13,14,15は、制御装置からの制御信号により駆動トルクを制御されるサーボモータからなる駆動源であり、モータ回転を所定の減速比で減速する減速機構を有しており、小型ではあるが十分な駆動力を付与することができる。
【0036】
また、装着式動作補助装置10aは、装着者1の腰に装着される腰ベルト16を有し、駆動モータ12〜15を駆動させるための電源として機能するバッテリ17,18等が取り付けられている。バッテリ17,18は、充電式バッテリであり、装着者1の歩行動作を妨げないように左右に1又は複数個が分散配置されている。
【0037】
また、装着式動作補助装置10aは、装着者1の背中に装着される制御バック19を有し、例えば制御装置、モータドライバ、計測装置、電源回路等の機器が収納される。なお、制御バック19の下部は、腰ベルト16に支持され、制御バック19の重量が装着者1の負担にならないように取り付けられる。
【0038】
また、装着式動作補助装置10aは、装着者1の右腿の動きに伴う表面筋電位(EMGhip)を検出する筋電位センサ20a,20bと、装着者1の左腿の動きに伴う表面筋電位(EMGhip)を検出する筋電位センサ21a,21bと、右膝の動きに伴う表面筋電位(EMGknee)を検出する筋電位センサ22a,22bと、左膝の動きに伴う表面筋電位(EMGknee)を検出する筋電位センサ23a,23bとを有する。
【0039】
これらの各筋電位センサ20a,20b,21a,21b,22a,22b,23a,23bは、骨格筋が筋力を発生させる際の表面筋電位を測定する検出手段であり、骨格筋で発生した微弱電位を検出する電極を有する。なお、本実施形態では、各筋電位センサ20a,20b,21a,21b,22a,22b,23a,23bは、例えば電極の周囲を覆う粘着シール等により装着者1の皮膚表面に着脱自在に貼着されるように取り付けられる。
【0040】
筋電位センサ20a,21aは、装着者1の腿の付け根部分前側に貼着され、腸腰筋の表面筋電位を検出することにより脚を前に出すときの筋力に応じた筋電位を測定する。
【0041】
筋電位センサ20b,21bは、装着者1のお尻に貼着され、大殿筋の表面筋電位を検出することにより、例えば、後ろに蹴る力や階段を上がるとき筋力に応じた筋電位を測定する。
【0042】
筋電位センサ22a,23aは、装着者1の膝上前側に貼着され、大腿四頭筋の表面筋電位を検出し、膝から下を前に出す筋力に応じた筋電位を測定する。
【0043】
筋電位センサ22b,23bは、装着者1の膝上後側に貼着され、大腿二頭筋の表面筋電位を検出し、膝から下を後に戻す筋力に応じた筋電位を測定する。したがって、装着式動作補助装置10では、これらの筋電位センサ20a,20b,21a,21b,22a,22b,23a,23bによって検出された表面筋電位に基づいて4個の駆動モータ12,13,14,15に供給する駆動電流を求め、この駆動電流で駆動モータ12,13,14,15を駆動することで、アシスト力が付与されて装着者1の歩行動作を補助するように構成されている。
【0044】
また、歩行動作による重心移動をスムーズに行うため、脚の裏にかかる荷重を検出する必要がある。そのため、装着者1の左右脚の裏には、反力センサ24a,24b,25a,25bが設けられている。
【0045】
また、反力センサ24aは、右脚前側の荷重に対する反力を検出し、反力センサ24bは、右脚後側の荷重に対する反力を検出する。反力センサ25aは、左脚前側の荷重に対する反力を検出し、反力センサ25bは、左脚後側の荷重に対する反力を検出する。各反力センサ24a,24b,25a,25bは、例えば、印加された荷重に応じた電圧を出力する圧電素子等からなり、体重移動に伴う荷重変化、及び装着者1の脚と地面との接地の有無を夫々検出することができる。
【0046】
また、アクチュエータには、角度センサ及びトルクセンサが内蔵されている。このトルクセンサには、例えば駆動モータ12,13,14,15に供給される電流値を検出し、この電流値をアクチュエータに固有となるトルク定数に乗じることによって駆動トルクの検出を行うもの等を適用することができる。また、角度センサには、例えばロータリーエンコーダ等を適用することができる。
【0047】
<装着式動作補助装置:上半身(ハードウェア構成)>
次に、上半身(上体側)の装着式動作補助装置について図を用いて説明する。図2は、本実施形態における上半身用の装着式動作補助装置の一実施例が装着された状態を示す図である。図2に示す装着式動作補助装置10bは、装着者1の右腕回りに対応する装着式動作補助装置1の右上半部について説明するものである。
【0048】
装着式動作補助装置10bは、体幹部材31と、上腕部材32と、前腕部材33とを有する。体幹部材31は、装着者1の胴体に装着される。また、上腕部材32は、装着者1の上腕部に沿って延び、装着者1の上腕部に装着される。また、前腕部材33は、装着者1の前腕部に沿って延び、装着者1の前腕部に装着される。
【0049】
ここで、体幹部材31は、第1の部材の一例であり、上腕部材32は、第2の部材の一例である。また、上腕部材32は、第1の部材の一例でもあり、前腕部材33は、第2の部材の一例である。
【0050】
また、図2に示すように、装着式動作補助装置10bは、体幹部材31と上腕部材32との間に肩関節機構34とを有し、体幹部材31と上腕部材32とが肩関節機構34を介して互いに回動可能に連結されている。また、装着式動作補助装置10bは、上腕部材32と前腕部材33との間に肘関節機構35を有し、上腕部材32と前腕部材33とが肘関節機構35を介して互いに回動可能に連結されている。装着式動作補助装置10bは、その左上半部にも右上半部と同様の構成を有する。
【0051】
また、図2に示すように、装着式動作補助装置10bは、屈曲側生体電位センサ36と伸展側生体電位センサ37とが設けられている。第1のフレーム32は、第1の骨格となる上腕骨に沿って配置され、肘関節に近い側及び遠い側の2箇所に設けられたバンド等で上腕部に固定されている。第2のフレーム33は、第2の骨格となる尺骨又は橈骨に沿って配置され、肘関節に近い側及び遠い側の2箇所に設けられたバンド等で前腕部に固定されている。
【0052】
また、第1のフレーム32と第2のフレーム33とを連結する駆動ユニット38は、角度センサ、駆動ユニット、及びトルクセンサが内蔵されている。このトルクセンサには、例えばアクチュエータに供給される電流値を検出し、この電流値をアクチュエータに固有となるトルク定数に乗じることによって駆動トルクの検出を行うもの等を適用することができる。
【0053】
屈曲側生体電位センサ36は、図2に示すように肘関節の屈曲動作のときに随意筋として主に働く上腕二頭筋及び上腕筋に対応する体表面に貼り付けられる。また、伸展側生体電位センサ37は、図2に示すように肘関節の伸展動作のときに随意筋として主に働く上腕三頭筋に対応する体表面に貼り付けられる。
【0054】
なお、上述した屈曲側生体電位センサ36及び伸展側生体電位センサ37は、バンド等から離れた位置に貼り付けられる。これらは、生体電位信号を最も検出しやすい位置に張り付けられていればよいため、例えば、肘関節に近い側のバンドの内周面に配置してもよい。
【0055】
また、肩関節機構34は、駆動ユニット38と、第1及び第2の連結部材39,40を有する。図2に示すように、第1の連結部材39の一端は、体幹部材31に取り付けられている。また、第2の連結部材40の一端は、上腕部材32に取り付けられている。
【0056】
上述した装着式動作補助装置10bを用いて肘関節周りの物理量及び随意筋となる上腕二頭筋、上腕筋、上腕三頭筋の生体電位信号を計測し対応する動作補助を行う場合には、例えば図2に示すように、上体を起こした姿勢で肘を屈曲及び伸展させるのが好ましい。
【0057】
なお、上述した図1,図2に示すように、生体の可動部である関節及びそこから延びる骨格に対して沿うように装着されるフレームを有した装着式動作補助装置10a、10bは、上述した図1,図2の各部位に限らず、例えば1つの装着式動作補助装置10として体全体(上半身及び下半身)の動作補助を行ってもよい。また、本実施形態における装着式動作補助装置10は、他の関節に合わせて作られてもよく、例えば足首、肩、手指、首、股間等にも適用できる。なお、手指に適用する場合は、駆動ユニットを小型化するべく、例えば液圧のアクチュエータ、超音波モータ、ワイヤとソレノイドを組み合わせたプランジャ式アクチュエータ等を用いることができる。
【0058】
なお、本発明における装着式動作補助装置のその他の構成ユニットとしては、膝関節や、腰関節、肘関節、手首関節等に用いることができる。つまり、本発明における装着式動作補助装置は、単関節に適用することもできるし、全身にも適用することができる。
【0059】
<動作補助装置用収納装置>
ここで、装着式動作補助装置10は、例えば専用の収納装置(ドック)等に収納される。この動作補助装置用収納装置(ドック)の一例について図を用いて説明する。
【0060】
図3は、本実施形態における動作補助装置用収納装置の概略構成の一例を示す図である。図3に示す動作補助装置用収納装置50は、着座部61と、肘掛け部62と、操縦部63と、表示部64と、指示部65と、移動部66とを有している。
【0061】
図3に示す動作補助装置収納装置60は、図1に示した下半身用の装着式動作補助装置10aを収納できるように構成されている。装着式動作補助装置10と、動作補助装置用収納装置50との接続手段には、一般的なコネクタを適用することができる。装着式動作補助装置10を動作補助装置用収納装置50に収納したときに互いに装着式動作補助装置10aと、動作補助装置用収納装置50とが接触する部位に、例えば雌雄のコネクタがそれぞれ着脱可能に設けられている。
【0062】
したがって、装着式動作補助装置10(図3の例では、装着式動作補助装置10a)が動作補助装置用収納装置50に着座したような状態で収納された場合には、これらのコネクタが互いに係合して、装着式動作補助装置10と動作補助装置用収納装置50とが電気的に接続される。なお、コネクタは、例えば装着式動作補助装置10の背面と動作補助装置用収納装置50の着座部61の背もたれ等に設けられる。
【0063】
また、接続手段としては、例えば電磁誘導や電波等を介して非接触で電気的な接続を行えるようなものも適用することができる。この接続手段を介して、装着式動作補助装置10の電源部充電池を充電したり、装着式動作補助装置10と動作補助装置用収納装置50との間で通信を行うことができる。
【0064】
また、動作補助装置用収納装置50は、接続手段等により通信ネットワークを介して外部の情報管理装置等を送受信可能な状態で接続することができ、装着式動作補助装置10の制御プログラムやフェーズデータ等のアップデートやダウンロードを行い、制御プログラムやフェーズデータ等の更新、変更等を容易に行うことができる。
【0065】
動作補助装置用収納装置50には、装着式動作補助装置10の更新状態をチェックするチェック手段を有し、装着式動作補助装置10をチェックする場合には、接続手段を介して装着式動作補助装置10に予め設定されたテスト信号を入力し、装着式動作補助装置10からの応答信号を受けて装着式動作補助装置10の状態を検査する。例えば、動作補助装置用収納装置50は、各パーツの構成(どこに、どのようなパーツが接続されているか等)、各アクチュエータの状態(回転性能、トルク性能)等を検査する。また、動作補助装置用収納装置50内に一時的に蓄積されている各アクチュエータの駆動履歴を抽出し、通信ネットワークを介して情報管理装置等に送信することもできる。
【0066】
このように、動作補助装置用収納装置50における装着式動作補助装置10のメンテナンス機能は、上述したチェック手段の検査結果に基づいて、又は情報管理装置側からの指令等により、修理する必要のある部品又はユニットを特定することができる。
【0067】
また、動作補助装置用収納装置50内には、スペアのパーツ(部品)が格納されており、修理が必要となったパーツを交換することができるアーム手段を有していてもよい。つまり、そのパーツを修理又は交換することで、動作補助装置用収納装置50のメンテナンスを行うことができる。
【0068】
また、移動部66は、動作補助装置用収納装置50を移動させるための機構を有し、例えば、図3に示すような車輪を有しており、操縦手段63によって入力される方向及び速度で移動することができる。
【0069】
移動部66は、駆動源であるモータにギアを介して車輪が連結されて構成されている。この場合、動作補助装置用収納装置50は、例えば操縦手段63を操作することにより、駆動部66のモータを駆動させて車輪を回転させ移動することができる。また、動作補助装置用収納装置50は、操縦手段63を操作することで、速度を調整したり、移動方向を調整することができる。
【0070】
また、肘掛け部62は、装着式動作補助装置10を装着した状態の装着者1が着座部61に着座した場合に、両肘を掛ける部分である。また、図3には、動作補助装置用収納装置50を移動させるための移動部66を備えている。
【0071】
操縦手段63は、図3に示すように、レバー状の構成を有しており、肘掛け部62の先端側に設けられた軸受け部に棒状の操作レバーが軸支されている。この操作レバーの傾斜角度及び傾斜方向に応じて移動部66が制御される。
【0072】
また、例えば装着者1(動作補助装置用収納装置50の利用者)がレバーを操作することができない場合には、装着式動作補助装置10を介して取得される生体信号を動作補助装置用収納装置50が読み取って操作することもできる。また、操縦手段63は、リモートコントローラ等を用いて動作補助装置用収納装置50を遠隔操作することもできる。
【0073】
また、表示手段64は、動作補助装置用収納装置50が情報管理装置と通信回線により接続されており、プログラムの更新指示が情報管理装置側からあった場合に、更新を行わせるため、例えば「プログラムの更新を行ってください」等のメッセージを表示する。また、動作補助装置用収納装置50にから指示手段65により指示した内容を表示したり、その指示内容を実行している経過又はその結果を表示することができる。また、上述したメンテナンス手段により実行した内容を表示させることができる。なお、表示手段64は、表示と共に、表示されるメッセージ内容に対応させた音声を出力する音声出力部を設けていてもよい。
【0074】
また、指示手段65は、充電の開始や終了、移動の開始や終了、情報管理装置との通信等の各指示情報の入力を行うことができる。また、動作補助装置用収納装置50は、例えば装着式動作補助装置10を寝かせた状態で格納できるような箱型の容器を適用してもよい。
【0075】
<管理システムの実施形態>
次に、本発明における動作補助装置や動作補助装置用収納装置の使用状況等の各情報を管理する管理システムの実施形態について説明する。図4は、装着式動作補助装置の管理システムを説明するための図である。
【0076】
図4に示すように、管理システム70は、情報管理装置71と、蓄積データベース72と、通信ネットワーク73と、通信ネットワーク73に接続される無線端末74と、上述した各装着式動作補助装置10(10a,10b)及び動作補助装置用収納装置50とを有するよう構成されている。
【0077】
情報管理装置71は、通信ネットワーク73と接続可能で使用者側の無線端末74とデータの送受信が可能となっている。
【0078】
図4に示す装着式動作補助装置10は、上述のように各駆動ユニットに通信手段を有する。つまり、装着式動作補助装置10は、肩関節機構や肘関節機構、股間の関節機構や、膝関節機構等の各駆動ユニット等のそれぞれに通信手段が設けられている。この複数の通信手段を用いて、それぞれの駆動ユニットの動作状態に関する情報が無線端末74を通じて通信ネットワーク73上に定期的又はある特定の指示操作等により不定期で送られる。
【0079】
また、別の装着者が使用している別の装着式動作補助装置10や動作補助装置用収納装置50についても同様に駆動ユニットに関する情報を通信ネットワーク73上に送る。管理者側に配備された情報管理装置71は、通信ネットワーク73上に送られた使用者毎の情報を受け取り、一括して管理することができる。
【0080】
更に、図4に示すように装着式動作補助装置10と動作補助装置用収納装置50との間、装着式動作補助装置10間、又は、動作補助装置用収納装置間でも通信することができ、これにより交信を継続することで、例えば一方を動作させて取得した更新プログラムや更新データを他方の装着式動作補助装置に反映させて各種情報を共有し、自分と同じ動作を他の装着者にさせることができたり、装着式動作補助装置間で情報(感覚)の共有を実現することができる。なお、これらの通信は、通信ネットワーク73を介してもよく、装置間で直接行ってもよい。
【0081】
<装着式動作補助装置10の制御系システム>
次に、本実施形態における装着式動作補助装置10の制御系システム例について図を用いて説明する。図5は、本実施形態における装着式動作補助装置の一実施例に適用された制御系システムを示すブロック図である。
【0082】
図5に示されるように、装着式動作補助装置10の制御系システムは、概略的には、駆動源(モータ等)80と、情報検出手段81(物理現象検出手段82−1、生体信号検出手段82−2、駆動トルク検出手段82−3)と、基準パラメータデータベース構築手段83と、随意混在型自律的制御系84と、電力増幅手段(モータ駆動アンプ等)85と、更新制御手段86と、通信手段87と、入力手段88と、出力手段89とを有するよう構成されている。
【0083】
また、随意混在型自律的制御系84は、データ格納手段90と、制御手段91とを有し、データ格納手段90には、指令信号データベース92と、基準パラメータデータベース93と、履歴データベース94等が格納される。また、制御手段91は、差分導出手段95と、ゲイン変更手段96と、自律的制御手段97と、フェーズ判定手段98と、基準パラメータ選出手段99と、フェーズ間調整手段100とを有するよう構成されている。
【0084】
ここで、図5に示される駆動源80は、図1又は図2に示した装着式動作補助装置10a、10bにおける各駆動モータ12,13,14,15、駆動ユニット38に対応するものである。具体的には、駆動源80は、例えば駆動モータ等からなり、装着者1に対して駆動モータのトルク力を動力付与として装着者1に伝達する。
【0085】
また、物理現象検出手段82−1(第1の検出手段)は、物理現象として装着者1の動作に応じた関節角度(θknee,θhip)を検出する。また、生体信号検出手段82−2(第2の検出手段)は、生体信号として装着者1が発生する筋力に応じた筋電位(EMGknee,EMGhip)を検出する。また、駆動トルク検出手段82−3(第3の検出手段)は、駆動源80により装着者1に伝達され、装着式動作補助装置10により動作された駆動トルクを検出する。
【0086】
また、物理現象検出手段82−1は、検出された装着者1の動作により取得される関節角度を等の各種情報を基準パラメータデータベース構築手段83に出力し、生体信号検出手段82−2は、検出された筋電位信号等の各種情報を基準パラメータデータベース構築手段83に出力し、駆動トルク検出手段82−3は、検出された駆動トルクを基準パラメータデータベース構築手段83に出力する。
【0087】
また、基準パラメータデータベース構築手段83は、物理現象検出手段82−1により得られる関節角度、及び、生体信号検出手段82−2により得られる生体信号をフェーズに対応させて基準パラメータとしてデータ格納手段90に格納して基準パラメータデータベース93を構築する。
【0088】
なお、基準パラメータデータベース構築手段93は、例えば、ある目的(例えば、リハビリプログラム等)毎に関節を動かすための基準パラメータを集めるため、装着式動作補助装置10を動作させて、各動作をフェーズ毎に分類してパラメータを集めることで、基準パラメータデータベース93を構築する。
【0089】
随意混在型自律的制御系84に含まれるデータ格納手段90は、装着式動作補助装置10に対する動作制御の各指令信号が蓄積された指令信号データベース92や、基準パラメータデータベース93、履歴データベース94、その他、本実施形態の実行に伴い必要となる各種データや実行結果のデータ等の各種データ、実行プログラム等を格納する。なお、データ格納手段90に格納されるフェーズ等の各種データは、更新制御手段86等により随時更新、変更、削除等を行うことができる。
【0090】
ここで、履歴データベース94は、装着者1の動作により得られる関節角度や筋電位信号等の情報を物理現象検出手段82−1、生体信号検出手段82−2、及び駆動トルク検出手段82−3から取得し、取得したデータを時系列に管理する。更に、履歴データベース94は、フェーズ判定手段98より得られた選定結果の情報を履歴データベース94に出力する。データ格納手段90に格納される指令信号データベース92、基準パラメータデータベース93、履歴データベース94の詳細については、後述する。
【0091】
随意混在型自律的制御系84に含まれる制御手段91において、差分導出手段95は、物理現象検出手段82−1により検出した関節角度に対応する基準パラメータの生体信号と、生体信号検出手段82−2により検出された生体信号との差分を導出し、差分が予め設定した許容値を超えているか否かを判断する。
【0092】
差分導出手段95は、物理現象検出手段82−1により検出した関節角度に対応する基準パラメータの生体信号と、生体信号検出手段82−2により検出された生体信号との差分を導出し、差分が予め設定した許容値を超えているか否かを判断する。
【0093】
ゲイン変更手段96は、差分導出手段95により差分が予め設定した許容値を超えていると判断された場合、自律的制御手段97に生成させる指令信号(制御信号)を差分に応じてゲインPを変更するように、補正信号を自律的制御手段97に出力する。
【0094】
フェーズ判定手段98は、装着者1の動作パターンのフェーズを判定する。ここで、フェーズとは、装着者が行う一連の動作(タスク)パターンを分割する上での最小単位となるものであり、装着者の動作補助のために求められる動力は、フェーズ毎に定まることになる。
【0095】
具体的には、フェーズ判定手段98は、物理現象検出手段82−1により検出された関節角度を基準パラメータデータベース93に格納された基準パラメータの関節角度と比較することにより、それぞれの装着者1に適した動作パターンのフェーズを、例えば瞬間的又は経時的な関節角度の変化に伴う一致性の高さ等により判定する。また、フェーズ判定手段98は、判定結果により選択されたフェーズに属するデータ群を基準パラメータ選出手段99及び履歴データベース94に出力する。
【0096】
図5に示す装着式動作補助装置10においては、フェーズ判定手段98等によって装着者の動作パターンの各フェーズを特定し、このフェーズに応じた動力を駆動源80に発生させるための指令信号(制御信号)を生成する自律的制御手段97を備えている。
【0097】
自律的制御手段97は、コンピュータに自律的制御を実行させるプログラムからなり、例えば角度センサにより検出された関節角度と、メモリに格納された基準パラメータの関節角度とを比較することにより、装着者の動作パターンのフェーズを推定できるように構成されている。
【0098】
具体的には、自律的制御手段97は、物理現象検出手段82−1によって検出された関節角度と、更新制御手段86により更新されメモリ等に格納されている基準パラメータとを比較することにより、装着者1の動作のフェーズを推定し、推定されたフェーズに対応する指令信号に基づいて、駆動源80を駆動する。
【0099】
更に、装着式動作補助装置10では、例えば着席姿勢から起立するまでの一連の動作パターンの各フェーズに対応する関節角度を基準パラメータとしてメモリに予め格納しておけば、自律的制御手段97による駆動源80の制御によって、着席姿勢の装着者の腰、膝を回動させる筋力に対して駆動源80がパワーアシストすることで装着者が楽に起立することができる。
【0100】
なお、最適な動作パターンを選定する場合には、例えば装着者から送られる早すぎる(遅すぎる)、或いは、もっと早く(もっと遅く)等の指示情報等に基づいて、予め設定される多数のフェーズの中から指示情報に対応する基準パラメータを選択する。
【0101】
基準パラメータ選出手段99は、フェーズ判定手段98により得られたフェーズに属するデータ群の中から予め設定された条件に基づいて、最適な基準パラメータを選出する。具体的には、基準パラメータ選出手段99は、今まで装着者が使用してきた基準パラメータの内容や関節角度の瞬間的又は統計的な動きの内容に伴う一致性の高さ等により、特定の基準パラメータを選出する。
【0102】
また、基準パラメータ選出手段99は、基準パラメータデータベース93から関連する1又は複数のフェーズの制御データである基準パラメータを選出し、そのフェーズの制御データに対応する指令信号を生成する。また、基準パラメータ選出手段99は、生成された指令信号を自律的制御手段97又はフェーズ間調整手段100に出力する。なお、自律的制御手段97又はフェーズ間調整手段100のどちらに出力するかについては、例えば指令信号の内容により、連続性が重要視されるフェーズの場合にはフェーズ間調整手段100に出力し、それ以外は制御処理時間を短縮するために自律的制御手段97に出力するよう設定されてもよく、予めどちらかに出力するよう設定しておいてもよい。
【0103】
なお、上述した処理において、より最適な動作パターンを選定する場合には、例えば装着者1から送られる早すぎる(遅すぎる)、或いは、もっと早く(もっと遅く)等の指示情報等に基づいて、予め設定される多数のフェーズの中から指示情報に対応する基準パラメータを選出することができる。
【0104】
また、基準パラメータ選出手段99は、後述する入力手段88や出力手段89等を用いて装着者1や管理者等により入力される情報から基準パラメータを選出することができる。
【0105】
フェーズ間調整手段100は、基準パラメータ選出手段99から得られる基準パラメータ等からなる各フェーズに対応する指令信号について、各フェーズ間の信号の連結がスムーズに連結できるようにそれぞれの接続部分の調整を行う。
【0106】
つまり、フェーズ間調整手段100は、各フェーズ間を連結される場合に、単純に各フェーズを並べただけでは、連結部分の動きが滑らかにならない場合があるため、選択されたフェーズ間でパラメータの微調整を行い、より滑らかで連続的な動作指示を行うための制御データを生成することができる。フェーズ間調整手段100は、調整された制御データを自律的制御手段97に出力する。
【0107】
なお、フェーズ間調整手段100は、例えば連結する前後のフェーズにおいて、その連結部分の値の差が所定値より大きいか否かを判断し、所定値より差が大きい場合には、フェーズ間調整を行うようにしてもよい。また、この場合には、連結するフェーズの内容により上述した所定値を変動させてもよい。
【0108】
更に、フェーズ間調整手段100は、1人の装着者に対して、上述した図3に示すような各部位の動作補助装置を複数装着した場合に、各装置間の位置関係及び各フェーズの関連性に基づいてフェーズ間の調整を行い、装着者1に対する補助動作を連動させることができる。これにより、フェーズ間の繋ぎ目を滑らかにすることができ、装着者に違和感のない動作補助を提供することができる。
【0109】
自律的制御手段97は、基準パラメータ選出手段99又はフェーズ間調整手段100により、所定の動作を行うためのフェーズ間の制御データを取得すると、各フェーズの制御データに応じた指令信号(制御信号)を生成する。また、自律的制御手段97は、所定の動作を実行するための動力を駆動源に発生させるための指令信号を電力増幅手段85に供給する。なお、自律的制御手段97は、フェーズ判定手段98により特定されたフェーズの制御データをゲイン変更手段96から得られた補正信号によりゲインPを補正し、補正されたゲインPに応じた指令信号を電力増幅手段85に供給する。
【0110】
なお、自律的制御手段97では、差分導出手段95により差分が予め設定した許容値を超えていないと判断された場合、ゲイン変更手段96から補正信号が供給されないため、基準パラメータ選出手段99又はフェーズ間調整手段100から得られた制御データを補正せずに電力増幅手段85に供給する場合もある。
【0111】
また、自律的制御手段97は、フェーズ間調整手段100からの制御データにより、フェーズ間が滑らかで連動性のある動作を実現できるため、装着者に無理な負荷がかからず負担を軽減することができる。
【0112】
更に、自律的制御手段97は、物理現象検出手段82−1により検出された関節角度に対応する生体信号と、生体信号検出手段82−2により検出された生体信号との差分の値に応じて電力増幅手段85に供給する指令信号を随意補正する。このため、自律的制御と随意的制御とを組み合わせた制御を行うことができる。
【0113】
電力増幅手段85は、自律的制御手段97から得られる信号に基づいて、モータ駆動アンプ等により駆動源80に対する電力の増減を行う。これにより、装着者1が動作途中でその動作を中止し、別の動作を行う場合にも、装着者1の意思が反映されるように駆動源80を制御することができる。
【0114】
更新制御手段86は、定期的又は装着者1や装着式動作補助装置10の管理者等による入力手段88からの指示等のタイミングにより、有線又は無線によるデータの送受信が可能な通信手段87を用いて、インターネット等の通信ネットワーク73を介してデータの送受信が可能な状態で接続されている外部の情報管理装置71から各種の最新又は更新されたフェーズデータ及び/又は指令信号を取得する。また、更新制御手段86は、取得したフェーズデータ及び/又は指令信号を用いて指令信号データベース92、基準パラメータデータベース93、履歴データベース94等の各種データの追加、更新等を行う。なお、フェーズは、情報管理装置71により定期的又は更新情報が所定のデータ量になった場合、更には修正を急ぐフェーズ等がある場合等に通信ネットワーク73を介して装着式動作補助装置10に送信されてもよい。
【0115】
この場合、更新制御手段86は、情報管理装置71から送信されたフェーズデータを通信手段87から取得し、データ格納手段90にフェーズデータの内容を反映させることができる。更に、更新制御手段86は、履歴データベース94に蓄積された各種データを、通信手段87を介して情報管理装置71に出力することができる。また、更新制御手段86は、通信手段87を用いて通信ネットワーク73上に接続されている他の装着式動作補助装置10−1が接続されている場合には、装着式動作補助装置間(図5における装着式動作補助装置10と装着式動作補助装置10−1間)で、フェーズデータや履歴データ、指令信号等の各種データの送受信を行うことができる。これにより、装着式動作補助装置間で最新のフェーズに更新することができ、フェーズの交換や履歴管理を行うことができる。
【0116】
したがって、本実施形態によれば、通信手段87を用いて装着式動作補助装置間で、フェーズ単位のデータのやり取りを行うことができ、データの共有が可能となる。更に、本実施形態によれば、同一のフェーズを用いて装着式動作補助装置同士が同一の動作を行うこともできる。
【0117】
また、入力手段88は、使用者等からの更新データのダウンロード指示や、履歴データベース94の送信指示等の各処理の入力を受け付ける。なお、入力手段88は、例えばキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、マイク等の音声入力デバイス等からなる。
【0118】
出力手段89は、入力手段88により入力された各指示内容や、各指示内容に基づいて生成された更新データや、動作補助装置の動作内容、ダウンロード実行中における各種メッセージ等の内容を表示したり、音声を出力する。なお、出力手段89は、ディスプレイやスピーカ等からなる。
【0119】
したがって、本実施形態によれば、装着者毎に動作パターンは異なるため、ある所定の動作で判断されるフェーズについては、装着者や管理者等の指示により、負荷のかかり具合やスピード等を変動させて最適なフェーズを迅速に対応させることができる。
【0120】
つまり、本実施形態によれば、装着式動作補助装置間で、フェーズ単位のデータのやり取りを行うことができ、データの共有が可能となる。更に、本実施形態によれば、同一のフェーズを用いて装着式動作補助装置同士が同一の動作を行うこともできる。
【0121】
<データベースについて>
次に、上述した装着者の動作補助を行うための各動作(フェーズ)の具体的な制御方法について説明する。図6は、データ格納手段に格納される各データの一例を示す図である。なお、図6(A)は、基準パラメータデータベース93の一例を示し、図6(B)は、指令信号データベース92の一例を示し、図6(C)は、履歴データベース94の一例を示している。
【0122】
ここで、装着者1の動作を分類するタスクとしては、例えば、座位状態から立位状態に移行する立ち上がり動作データを有するタスクAと、立ち上がった装着者1が歩行する歩行動作データを有するタスクBと、立位状態から座位状態に移行する座り動作データを有するタスクCと、立位状態から階段を上がる階段昇り動作データを有するタスクDとが基準パラメータデータベース93等に格納されている。
【0123】
そして、各タスクには、更に最小単位の動作を規定する複数のフェーズデータが設定されており、例えば、歩行動作のタスクBには一例として、左右両脚が揃った状態の動作データを有するフェーズB1と、右脚を前に出したときの動作データを有するフェーズB2と、左脚を前に出して右脚に揃えた状態の動作データを有するフェーズB3と、左脚を右脚の前に出した状態の動作データを有するフェーズB4とが格納されている。
【0124】
図6(A)に示す基準パラメータデータベース93には、各動作毎に設定されたタスクA,タスクB,…のそれぞれを分割した各フェーズ(例えば、フェーズA11,A12,A13,・・・)について、1又は複数の関節角度基準パラメータ(例えば、θA11(t),θA12(t),θA13(t),・・・)と筋電位基準パラメータ(例えば、EA11(t),EA12(t),EA13(t),・・・)等が互いに関連づけられて格納されている。
【0125】
また、図6(B)に示す指令信号データベース92には、基準パラメータデータベースに格納されているフェーズ毎に設定された各基準パラメータ(関節角度基準パラメータと筋電位基準パラメータとの組み合わせ)に対応して設定された指令関数とゲインと指令信号等が格納されている。各動作について設定されたタスクA,B,…の各領域に、それぞれのタスクを分割したフェーズのデータ領域が設定されており、各フェーズ(例えば、フェーズA11,A12,A13,・・・)について予め設定される指令関数(例えば、fA11(t),fA12(t),fA13(t),・・・)、ゲイン(例えば、PA11,PA12,PA13,・・・)、指令信号(例えば、PA11×fA11(t),PA12×fA12(t),PA13×fA13(t),・・・)等が格納されている。
【0126】
更に、図6(C)に示す履歴データベース94には、その装着動作補助装置を使用する装着者個人の識別情報(ユーザID)や使用日時、タスク名、そのタスクのフェーズ構成等の各使用状況等が格納されている。なお、履歴データベース94は、図6(C)に示すようにユーザID毎に格納されているが、本発明においてはこれに限定されず、例えば使用日時毎、タスク毎、フェーズ構成毎、ユーザを予め設定した症状や回復状態毎に分類分けされた結果毎に各データが格納されていてもよい。
【0127】
つまり、本実施形態では、例えば関節を動かすために装着式動作補助装置を動作させて、各動作をフェーズ毎に分類して各パラメータを集めて、例えば、リハビリプログラム等の動作補助専用プログラムを作成する。このとき、装着者各個人毎や、その時の状態(例えば、筋肉の回復状態等)に合わせて最適なフェーズ(パラメータ)を選択する。したがって、データ格納手段90には、各装着者毎の個人情報(氏名、年齢、性別、身長、体重、動作補助装置の装着位置、装着期間)や現在のフェーズの選択内容等の情報を格納し、装着者毎に管理されてもよい。
【0128】
例えば、立ち上がり動作におけるフェーズ(Phase)の一連の動作が「PhaseA1→PhaseA2→PhaseA3」であり、PhaseA1にはA11〜A18までの異なる動作パターンがあり、PheseA2にはA21〜A28、PhaseA3にはA31〜A38のそれぞれ異なる動作パターンがあるとする。このとき、例えば、装着者1aの場合には、「A12→A24→A33」となり、装着者1bの場合には「A11→A25→A33」として提供することができる。また、これらの各装着者情報を履歴データベース94に格納して管理することができる。
【0129】
ここで、例えば装着者1aがPhaseA2について、もう少し早く動かしたい場合等は、A24をA23にするといったフェーズ毎の変更を実現することができる。
【0130】
また、本実施形態における基準パラメータデータベース93により、ある1つのフェーズに対して多数のパラメータ/パターンと、各パラメータに応じた指令信号を格納することができるため、それらの中から最適なパラメータ/パターンや指令信号を選び出すことができる。
【0131】
更に、履歴データベース94には、装着者の情報や各タスクに対するフェーズの組み合わせのパターン(一連の動作)が格納されていくため、過去にその装着者が行った動作を再び行う場合や、繰り返し行う場合、または、他の装着者が行った動作を同じ様に行う場合等に、履歴データベースから所望のフェーズの組み合わせパターンを読み出して、対応する指令信号を生成することができる。
【0132】
<出力手段89による表示内容の具体例:フェーズ間の動作指示信号の連結について>
次に、上述した出力手段89による表示内容の具体例について説明する。なお、以下に示す具体例では、例えばフェーズ間の動作指示信号の連結について図を用いて説明する。図7は、フェーズ間の動作指示信号の連結を説明するための一例を示す図である。なお、図7(A)は、装着者が椅子に座った状態から立ち上がる動作について、自律的制御及び随意的制御の組み合わせにより動力付与する場合を示し、図7(B)は、装着者が椅子に座った状態から立ち上がり動作を途中まで行った後に、座り込んだ際に、自律的制御及び随意的制御の組み合わせにより動力付与する場合を示している。また、図7(A),(B)共に、フェーズ1〜4(Phase1〜4)まで存在する。また、図7に示すグラフは、例えば、出力手段89により表示されるが、本発明において出力手段89に表示される画面はこれに限定されない。
【0133】
ここで、図7(A)−(a)はフェーズ番号を示し、図7(A)−(b)はひざ(膝)の回転角θを示している。図7(A)−(c)は自律的制御による指令信号に応じた膝アクチュエータのトルクを示し、図7(A)−(d)は随意的制御による指令信号に応じた膝アクチュエータのトルクを示し、図7(A)−(e)は自律的制御による指令信号と随意的制御による指令信号とを合成した総指令信号に応じた膝アクチュエータのトルクを示している。
【0134】
また、図7(B)−(a)はフェーズ番号を示し、図7(B)−(b)は膝の回転角θを示している。ここで、図7(A)−(e)のグラフから明らかなように、実際の膝アクチュエータのトルクはフェーズ2の立ち上がりで急激に増大し、フェーズ3の立ち下がりで急激に低下した。椅子からの立ち上がりに対応するフェーズ2の先端で、トルクが急激に増大したため、膝アクチュエータは装着者の意思に遅れなく回動を開始し、装着者は十分にパワーアシスト感を持つと共に、立ち上がり動作をすることができる。
【0135】
またフェーズ3の立ち下がりでは、自律的制御によるトルクが速やかに0になることにより、装着者を不用意に押し出そうとするトルクを装着者に付与する事態を防止し、装着者に与える違和感を抑えることができる。その結果、フェーズ1〜4の全工程において、装着者は十分なパワーアシスト感を持って、違和感なくスムーズに動作を行うことができた。
【0136】
図7(A)−(e)に示されるハイブリッド制御によるトルクは、図7(A)−(c)に示される自律制御によるトルクと図7(A)−(d)に示される随意制御によるトルクを合成して得られるものである。図7(A)−(d)に示す随意的制御によるトルクを発生させるための(随意的)指令信号は、生体信号検出82により検出された生体信号に基づいて生成される。このとき、フェーズ2においては、自律制御によるトルクが、随意制御によるトルクに先駆けて発生しているので、立ち上がる瞬間をスムーズにサポートすることができる。
【0137】
また、図7(A)−(c)に示す自律的制御によるトルクを発生させるための(自律的)指令信号は、物理現象検出手段82−1、生体信号検出手段82−2、及び駆動トルク検出手段82−3の検出結果から基準パラメータデータベース93(図6参照)に基づいて判断されたフェーズに応じて生成される。このように、随意的制御及び自律的制御の組み合わせによって、素早い始動と装着者の動作にマッチしたトルクの両方が得られ、予め設定されたアシストを装着者の意思に合わせて行うことができる。
【0138】
一方、立ち上がりかけた後、直ぐに座り込んだ場合には、図7(B)−(e)のグラフから明らかなように、椅子からの立ち上がりに対応するフェーズ2の先端で、トルクが急激に増大したため、膝アクチュエータは装着者の意思に遅れなく回動を開始し、装着者は十分にパワーアシスト感を持つ共に、立ち上がり動作をすることができる。また、フェーズ3の途中においては、生体信号が弱まるため、随意的制御によるトルクは徐々に減少するが、自律的制御によるトルクが付加されるので、装着者の負担を軽減してゆっくり座り込むようにすることができる。この結果、動作(タスク)を急に変更しても、装着者は十分なパワーアシスト感を持って動作を行うことができた。
【0139】
なお、上述したように、出力手段89において、例えば図7(A)−(b)に示すようにある1つのフェーズ(Phase3)に対して基準パラメータである膝の回転角θが複数存在する場合(例えば、θA31(t),θA32(t),θA33(t))、それぞれの基準パラメータを表示し、その表示された軌跡から装着者1又は管理者等に任意に選択させることができる。また、出力手段89により、図7に示すような時間に対応したフェーズ区間に対して装着者1又は管理者等が動作に対応する曲線等の軌跡を直接入力することにより、基準パラメータを定義することができる。
【0140】
<情報管理装置71:機能構成例>
次に、本実施形態における情報管理装置71の機能構成例について図を用いて説明する。図8は、本実施形態における情報管理装置の機能構成の一例を示す図である。図8に示す情報管理装置71は、入力手段111と、出力手段112と、認証手段113と、解析手段114と、更新データ生成手段115と、更新データ送出手段116と、制御手段117と、送受信手段118とを有するよう構成されている。
【0141】
入力手段111は、送信された更新データを登録するか否かの認証指示や、使用者等に対する更新データのダウンロード指示、履歴データベース94の内容に対する解析指示、更新データ生成指示、更新データ送出指示、送信指示等の各処理の入力を受け付ける。なお、入力手段111は、例えばキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、マイク等の音声入力デバイス等からなる。
【0142】
出力手段112は、入力手段111により入力された各指示内容や、各指示内容に基づいて生成された更新データや、各装着式動作補助装置10から送られる履歴データベース94に格納されている履歴内容、更新データ生成内容、生成された更新データ等の内容を表示したり、音声を出力する。なお、出力手段89は、ディスプレイやスピーカ等からなる。
【0143】
認証手段113は、予め設定される個人情報等に基づいて、例えばある分野の専門家が作成したプログラムのみを更新データとして登録するようにする。つまり、認証手段113は、ユーザID等に基づいて権限情報を付与しておき、例えば、ある特定の医師や理学療法士等が作成したリハビリカリキュラムに対応するフェーズ情報等を登録できるようにする。なお、それらの更新データは、蓄積データベース72に登録される。
【0144】
また、解析手段114は、通信ネットワーク73等を介して装着式動作補助装置10や動作補助装置用収納装置50により得られる動作補助履歴情報に基づいて、動作内容を改善するため解析処理を行う。具体的には、装着者1におけるタスクやフェーズの使用頻度と、その頻度の時間帯、使用内容等からフェーズ単位での更新の有無を判断する。
【0145】
更新データ生成手段115は、解析手段114において、更新が必要となったフェーズに対して更新用のデータを生成する。また、更新データ生成手段115は、更新されたデータを蓄積データベース72に出力する。
【0146】
また、更新データ送出手段116は、更新データを使用するユーザに対して更新して欲しい旨の更新要求情報を生成し、送受信手段118により通信ネットワーク73を介して無線端末74と通信可能な装着式動作補助装置10又は動作補助装置用収納装置50に送信する。
【0147】
また、更新データ送出手段116は、更新したい旨の指示情報を装着式動作補助装置10又は動作補助装置用収納装置50から受信した場合に、装着式動作補助装置10又は動作補助装置用収納装置50のそれぞれに対応する更新データを送信する。
【0148】
また、制御手段117は、情報管理装置71の各構成部全体の制御を行う。また、送受信手段118は、通信ネットワーク73を介して装着式動作補助装置10又は動作補助装置用収納装置50との通信及び蓄積データベース72等との通信を行う。
【0149】
上述した情報管理装置71を設けることにより、システム的に常に良好な状態に保つためにメンテナンス(保守管理)を情報管理装置で一元管理することができる。また、メンテナンスには、それぞれの動作補助装置の制御ユニットで制御するためのプログラムを把握し、必要に応じて容易に変更・更新することができる。
【0150】
更に、例えばリハビリ等の目的で本発明にかかる動作補助装置を使用した場合、管理者は、管理者側に送信された動作履歴情報に基づいて、生体信号の発生具合や信号の履歴、関節角度の変化の履歴(関節の可動域等の変化履歴)、アクチュエータの駆動履歴を知ることができ、装着者の身体の状態(リハビリの進行状況)を判断して、それに応じた新たな動作パターンを送信し、装着者に新たな動作を伝達することができるように装着者の動作を補助することができる。
【0151】
また、専門家等により例えば新たなリハビリ手法が発見された際、その手法に対応する動作補助における制御プログラムを開発した場合には、その制御プログラムを管理し、必要な他の動作補助装置に反映させることができる。
【0152】
上述したように、本発明によれば動作補助装置の使用状況を管理し、容易に最適な状態を維持するための動作補助装置用収納装置、及び該動作補助装置を管理する情報管理装置を提供することができる。
【0153】
また本発明によれば、生体電位信号に基づいて装着した人の動き(タスク)をフェーズに分解して、データベースを構築し、そのデータベースの中から各フェーズをユーザ(装着者)の状態に合わせて適宜選択して新たなタスクを構築し、装着者の動作をアシストすることができる。
【0154】
また、本発明によれば、新しいフェーズデータを情報管理装置や他の装着式動作補助装置と通信して交信(ダウンロード)することで、装着式動作補助装置を常に最新(最適)のフェーズを有する状態に保つことができ、最適な動作補助を提供することができる。
【0155】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0156】
1 装着者
10 装着式動作補助装置
11 動作補助装着具
12 右腿駆動モータ
13 左腿駆動モータ
14 右膝駆動モータ
15 左膝駆動モータ
16 腰ベルト
17,18 バッテリ
19 制御バック
20,21,22,23 筋電位センサ
24,25 反力センサ
31 体幹部材
32 上腕部材
33 前腕部材
34 肩関節機構
35 肘関節機構
36 屈曲側生体電位センサ
37 伸展側生体電位センサ
38 駆動ユニット
39 第1の連結部材
40 第2の連結部材
41 ギアヘッド部
50 動作補助装置用収納装置
61 着座部
62 肘掛け部
63 操縦部
64 表示部
65 指示部
66 移動部
70 管理システム
71 情報管理装置
72 蓄積データベース
73 通信ネットワーク
74 無線端末
80 駆動源
81 情報検出手段
82−1 物理現象検出手段
82−2 生体信号検出手段
82−3 駆動トルク検出手段
83 基準パラメータデータベース構築手段
84 随意混在型自律的制御系
85 電力増幅手段(モータ駆動アンプ等)
86 更新制御手段
87 通信手段
88 入力手段
89 出力手段
90 データ格納手段
91 制御手段
92 指令信号データベース
93 基準パラメータデータベース
94 履歴データベース
95 差分導出手段
96 ゲイン変更手段
97 自律的制御手段
98 フェーズ判定手段
99 基準パラメータ選出手段
100 フェーズ間調整手段
111 入力手段
112 出力手段
113 認証手段
114 解析手段
115 更新データ生成手段
116 更新データ送出手段
117 制御手段
118 送受信手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者に対して動力を付与する駆動源を有した動作補助装着具により装着者の動作を補助或いは代行する装着式の動作補助装置において、
前記装着者の動作に応じた前記装着者の関節の角度を検出する第1の検出手段と、
前記装着者の筋活動に伴う生体信号を検出する第2の検出手段と、
前記駆動源の駆動トルクを検出する第3の検出手段と、
前記装着者の動作パターンを構成する一連のフェーズの個々に対応するように、装着者の関節角度と生体信号とを関連づけて設定したデータ群からなる基準パラメータデータベース、前記基準パラメータのそれぞれに対応した動力を前記駆動源に発生させるための指令信号を設定したデータ群からなる指令信号データベース、及び前記第1から第3の検出手段の検出信号からなる動作履歴情報が格納される格納手段と、
前記動作履歴情報を管理者側に送信し、前記管理者側からの前記基準パラメータ及び/又は指令信号を受信する通信手段と、
前記更新情報の該当するフェーズに対応させて前記格納手段に前記更新情報を格納する更新制御手段と、
前記第1の検出手段によって検出された関節角度信号と、前記更新制御手段により更新された基準パラメータとを比較することにより、前記装着者の動作のフェーズを推定し、推定されたフェーズに対応する指令信号に基づいて、前記駆動源を駆動する制御手段を備えることを特徴とする動作補助装置。
【請求項2】
前記第1の検出手段により検出された関節角度を前記基準パラメータの関節角度と比較することにより、前記装着者の動作のフェーズを選定するフェーズ判定手段を更に有し、前記フェーズ判定手段により選定したデータの種類が前記動作履歴情報として前記格納手段に格納されることを特徴とする請求項1に記載の動作補助装置。
【請求項3】
前記フェーズ判定手段によって判定されたフェーズに応じた動力を前記駆動源に発生させるための指令信号を生成する自律的制御手段とを有することを特徴とする請求項2に記載の動作補助装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の動作補助装置から動作履歴情報を取得して前記動作補助装置の動作状況を管理する情報管理装置において、
前記動作補助装置から送信される前記動作履歴情報を解析する解析手段と、前記解析手段により解析された結果に基づいて、対応する基準パラメータの更新を行う更新データ生成手段と、前記更新データ生成手段により生成された更新データを送信するために、前記動作補助装置に対して更新データの要求指示を送信し、要求のあった動作補助装置に対して前記更新データを送出する更新データ送出手段とを有することを特徴とする情報管理装置。
【請求項5】
受信した更新用のフェーズデータの作成者の認証を行う認証手段と、
前記認証手段により認証された更新データの生成権限のある動作補助装置から送信された更新データのみを格納するよう制御する制御手段とを有することを特徴とする請求項4に記載の情報管理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−263934(P2010−263934A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115295(P2009−115295)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】