説明

動力伝達用チェーンの弛み検知具及び該検知具を用いた動力伝達用チェーンのテンション調整方法

【課題】 チェーンの弛みの検知を個人差なく簡単に行え、チェーンの弛みを解消するテンション調整を効率的に行えるようにする。
【解決手段】 回動可能に接続されるとともにチェーンaの長手方向に沿って該チェーンaの撓み面a1に当接するように形成された一片部10及び他片部20と、一片部10に対し他片部20が所定角度回動したことを認識する角度認識手段とを備え、一片部10と他片部20の双方がチェーンaの撓み面a1に押し付けられた際に、前記角度認識手段による角度の認識によりチェーンaの弛みが検知されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達用チェーンの弛みを検知する検知具及び該検知具を用いた動力伝達用チェーンのテンション調整方法に関し、特にシャッター装置における動力伝達用チェーンの弛みの検知及び調整に好適な動力伝達用チェーンの弛み検知具及び該検知具を用いた動力伝達用チェーンのテンション調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャッター装置における動力伝達用チェーンの弛み(緩み)は、歯飛びの原因となる上、放置すると、チェーン切断やスプロケットの損傷、シャッターカーテンの落下等に至るおそれがある。そこで、例えば、特許文献1に示される従来技術では、チェーンが切断した際に移動する係合部材を従動スプロケットに係合して、従動スプロケットの回転を制動するようにしている。また、特許文献2に示される従来技術では、チェーンを交差方向へ付勢するテンショナーによってチェーンの緩みを検知し、駆動源を停止するようにしている。
【0003】
ところで、チェーンの弛みや切断に起因して、シャッター装置が停止してしまうような機会は少ない方がよく、そのためには、定期的なメンテナンスによりチェーンの弛みを確認し、調整するのが好ましい。この場合、従来は、作業者が点検口に挿入した手をチェーンに掛けて、該チェーンを交差方向に引っ張って、該チェーンの弛み及び緩みを確認するようにしていた。
しかしながら、点検口の開口面積が小さく、作業がし難い上、感覚的な作業なので、チェーンの弛み具合の判断に個人差が生じるおそれがある。
また、前記の方法でチェーンの弛みを検知した場合には、駆動源である開閉機の支持箇所にスペーサを挟んで、駆動スプロケットと従動スプロケットの間の距離を広げるようにするが、従来は、開閉機を支持する複数のボルトに対し、そのボルト毎に独立したスペーサ(図13参照)を係合させていたため、その作業に時間がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188236号公報
【特許文献2】特開平3−68299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、チェーンの弛みの検知を個人差なく簡単に行えること、チェーンの弛みを解消するテンション調整を効率的に行えること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための技術的手段は、回動可能に接続されるとともにチェーンの長手方向に沿って該チェーンの撓み面に当接するように形成された一片部及び他片部と、前記一片部に対し前記他片部が所定角度回動したことを認識する角度認識手段とを備え、前記一片部と前記他片部の双方がチェーンの撓み面に押し付けられた際に、前記角度認識手段による角度の認識によりチェーンの弛みが検知されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
チェーンが弛んでいる場合、該チェーンの撓み面に一片部及び他片部が押し付けられると、一片部に対し他片部が回動する。その回動角度が所定角度に達すると、そのことが角度認識手段により認識され、チェーンの弛みを検知することができる。よって、チェーンの弛みの検知を、個人差が少なく簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る弛み検知具の一例を示す斜視図である。
【図2】同弛み検知具をチェーンにセットした状態を示す側面図であり、(a)はチェーンに弛みのない状態、(b)はチェーンを弛ませた状態を示す。
【図3】同弛み検知具の要部断面図である。
【図4】本発明に係る弛み検知具の他例を示す要部断面図である。
【図5】本発明に係る弛み検知具の他例を示す側面図であり、(a)はチェーンに弛みのない状態、(b)はチェーンを弛ませた状態を示す。
【図6】(a)は図5における(VI-a)-(VI-a)線断面、(b)は図5における(VI-b)-(VI-b)線断面を示す。
【図7】本発明に係る弛み検知具の他例を示す側面図であり、(a)はチェーンに弛みのない状態、(b)はチェーンを弛ませた状態を示す。
【図8】本発明に係る弛み検知具の他例を示す側面図であり、(a)はチェーンに弛みのない状態、(b)はチェーンを弛ませて一片部と他片部の間を一段階回動させた状態、(c)はチェーンを更に弛ませて一片部と他片部の間を二段階回動させた状態を示す。
【図9】本発明に係る弛み検知具の検知対象となるチェーンを具備した開閉装置の一例を示す要部斜視図である。
【図10】(a)と(b)の各々にスペーサの一例を示す図である。
【図11】本発明に係るテンション調整方法の一例を示す要部平面図であり、(a)はテンション調整前の状態、(b)はテンション調整のために開閉機を動かしスペーサを挿入している状態を示す。
【図12】本発明に係るテンション調整方法の一例を示す要部平面図であり、(c)は開閉機を押し戻した状態、(d)はテンション調整を完了した状態を示す。
【図13】従来のスペーサの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の一形態である動力伝達用チェーンの弛み検知具では、回動可能に接続されるとともにチェーンの長手方向に沿って該チェーンの撓み面に当接するように形成された一片部及び他片部と、前記一片部に対し前記他片部が所定角度回動したことを認識する角度認識手段とを備え、前記一片部と前記他片部の双方がチェーンの撓み面に押し付けられた際に、前記角度認識手段による角度の認識によりチェーンの弛みが検知されるようにした。
【0010】
また、前記一片部に対し前記他片部が所定角度回動したことを目視で認識するようにした好ましい態様では、前記角度認識手段は、前記一片部と前記他片部に、前記一片部に対し前記他片部を所定角度回動させた際に重なり合う目印部を具備する。
【0011】
また、前記一片部に対し前記他片部が所定角度回動したことを触感的に容易に判断できるようにするためには、前記角度認識手段は、前記一片部と前記他片部に、前記一片部に対し前記他片部を所定角度回動させた際に係合し合う係合部及び被係合部を具備する。
【0012】
また、前記一片部に対し前記他片部が所定角度回動したことを、より認識し易くするためには、前記角度認識手段は、前記一片部に、横方向の長孔と縦方向の長孔とからなる略逆L字状の第1の案内孔を設け、前記他片部に、縦方向の長孔からなる第2の案内孔を設け、これら二つの案内孔に挿通されるとともにこれら二つの案内孔に沿って移動自在となるように案内軸を設けてなり、前記一片部に対し前記他片部を所定角度回動させた際に、前記案内軸が、前記第1の案内孔における前記横方向の長孔に沿って移動した後、前記第1及び第2の案内孔における双方の縦方向の長孔に沿って移動するようする。
【0013】
また、前記一片部及び前記他片部をチェーンに対し容易に沿わせることができるようにするためには、前記一片部と前記他片部の一方又は双方は、前記チェーンの撓み面に押し付けられる第1の面部と、前記チェーンの側面に近接又は接触される第2の面部とを有する。
【0014】
また、前記一片部及び前記他片部をチェーンに押し付けて回動させる操作を、狭い作業スペースでも容易に行えるようにするためには、前記一片部及び前記他片部の回動軸、又は前記一片部もしくは前記他片部における前記回動軸の近傍に、ストラップを設ける。
【0015】
また、前記弛み検知具を用いた好ましいテンション調整方法としては、開閉機の出力軸に設けられた駆動スプロケットと、巻取軸の端部側に設けられた従動スプロケットと、前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットとの間に巻かれたチェーンと、前記開閉機を巻取軸側から支持する支持部材とを備えた開閉装置について、前記チェーンの弛みを、前記弛み検知具を用いて調整する方法であって、前記一片部と前記他片部の双方をチェーンに押し付けて前記チェーンの弛みを検知する工程と、該工程によって検知されたチェーンの弛みに応じて前記開閉機と前記支持部材との間にスペーサを挿入する工程と、を含む。
【0016】
さらに、前記スペーサを挿入する作業を容易にする一形態では、前記開閉機が複数本の軸状部材によって前記支持部材に固定され、前記スペーサが、前記複数本の軸状部材を挿通可能な単数又は複数の切欠部を有する一体の部材である。
【0017】
また、チェーンの張り具合に応じた適当なテンション調整を行うには、前記角度認識手段が前記一片部に対する前記他片部の角度を複数段階認識するように構成され、前記角度認識手段により認識される角度の段階に応じて、前記スペーサの厚み又は枚数を変更する。
【0018】
また、チェーンのテンション調整作業をより容易に行えるようにした一形態では、前記開閉機の反スプロケット側を前記支持部材から引き離す工程と、該工程によって形成された隙間に前記スペーサを挿入する工程と、前記開閉機の反スプロケット側を前記支持部材側へ押し戻す工程と、を含む。
【0019】
以下、上記形態の具体例について、図面に基づいて詳細に説明する。
動力伝達用チェーンの弛み検知具1は、図1〜図3に示すように、回動可能に接続されるとともにチェーンa(図示例によればローラーチェーン)の長手方向に沿って該チェーンaの撓み面a1(図2によれば上面)に当接するように形成された一片部10及び他片部20を備え、前記一片部10と前記他片部20の双方がチェーンaの撓み面a1に押し付けられて、前記一片部10に対し前記他片部20が所定角度回動したことを角度認識手段により認識することで、チェーンaの弛みを検知するように構成される。
【0020】
一片部10は、ステンレス板や鋼板等の金属製板材を曲げ加工してなり、チェーンaの撓み面a1に押し付けられる第1の面部11と、前記チェーンaの側面a2に近接又は接触される第2の面部12と、該第2の面部の基端側から交差方向(図示例によれば下方)へ延設された延設片部13とを備え、側面視略逆L字状に形成される(図2参照)。
【0021】
第1の面部11は、チェーンaの長手方向に沿って該チェーンaの撓み面a1に対し、略全面を当接させるように形成された平坦板状の部位である。
【0022】
第2の面部12は、チェーンaの長手方向に沿って該チェーンaの側面a2に対し、近接又は接触させるように形成された平坦板状の部位である。この第2の面部12は、第1の面部11の幅方向の端部に対し略直角に接続されている(図3参照)。
【0023】
延設片部13は、第2の面部12の基端側から交差方向へ延設された平板状の部位であり、その中央側に回動軸30を挿通するための軸孔13a(図1参照)を有する。
この延設片部13には、回動軸30の周囲(図示例によれば下側)に位置するように、一片部10に対し他片部20を所定角度回動させた際の目印部となる貫通孔13bが設けられる。この貫通孔13bは、後述する他片部20の目印部とに重なり合うことで、一片部10に対し他片部20が所定角度回動したことを認識する角度認識手段として作用する。
【0024】
さらに、前記延設片部13の下端側には、ストラップ40を止着するための止着孔13cが貫通形成されている。ストラップ40は、紐やワイヤー等の無端輪状の可撓性長尺体であり、前記止着孔13cに結び付けられ、下方へ垂れ下がっている。
【0025】
また、他片部20は、ステンレス板や鋼板等の金属製板材を曲げ加工してなり、チェーンaの撓み面a1に押し付けられる第1の面部21と、前記チェーンaの側面a2に近接又は接触される第2の面部22と、該第2の面部22の基端側から交差方向(図示例によれば下方)へ延設された延設片部23とを備え、側面視略逆L字状に形成される。
【0026】
第1の面部21及び第2の面部22は、上述した一片部10の第1の面部11及び第2の面部12と左右対称に形成されている(図2参照)。
【0027】
延設片部23は、上述した一片部10の延設片部13に略重なる形状に形成され、その中央側に回動軸30を挿通するための軸孔(図示せず)を有する。回動軸30は、一片部10及び他片部20の双方の前記軸孔に挿通され、一片部10に対し他片部20を回動自在に支持する。
【0028】
この延設片部23には、一片部10に対し他片部20が所定角度回動した際に、一片部10の貫通孔13bと重なり合うように、円形状の目印部23b(角度認識手段)が着色されている。
【0029】
また、延設片部23の側端部には、一片部10及び他片部20の回動方向に交差する方向(図示例によれば直交方向)へ突出する係合部23aが設けられる。この係合部23aは、一片部10に対し他片部20が回動した際に、一片部10における延設片部13の側端部である被係合部13dに当接するように設けられ、一片部10と他片部20との間が所定角度となったことを認識する角度認識手段として作用する。
【0030】
次に、上記構成の弛み検知具1についてその使用方法を説明する。
先ず、弛み検知具1は、一片部10及び他片部20における両第1の面部11,21をチェーンaの撓み面a1に当接するとともに、両第2の面部12,22を同チェーンaの側面a2に近接又は接触させるようにして、セットされる。
【0031】
この際、弛み検知具1は、チェーンaにおけるスプロケットに係合していない部分であれば何処にセットされてもよいが、例えば、図9に示す開閉装置100の場合には、開閉体150の荷重が巻取軸120を境として開閉機110の逆側に加わることに起因して、チェーンaの上側の部分a10よりも下側の部分a20の方が弛み易いので、この下側の部分a20にセットするのが好ましい。
【0032】
次に、図2に示すように、ストラップ40を下方へ引っ張る操作、又は一片部10と他片部20の間を手で下方へ下げる操作により、チェーンaを強制的に撓ませる。この際の下方向きの力は、一般の男性が片手の指でチェーンaを直交方向へ押圧する程度の力であればよい。
【0033】
そして、前記操作により、チェーンaが撓み、それに伴って一片部10に相対し他片部20が所定角度回動した場合には、そのことを、一片部10の貫通孔13bと他片部20の目印部23bとの重なり合いにより目視確認することができ、さらに、他片部20の係合部23aと一片部10の被係合部13d(側端部)との係合によって触覚的に確認することもできる。そして、このような場合には、チェーンaのテンション調整が必要であると判断することができる。
【0034】
また、チェーンaが殆ど撓まない場合には、前記のような貫通孔13bと目印部23bの重なり合いや、係合部23aと被係合部13dの係合がないため、そのことによって、チェーンaのテンションが正常であると判断することができる。
【0035】
次に、本発明に係わる弛み検知具の他の形態について説明する。
なお、以下に示す弛み検知具は、上述した弛み検知具1に対し、一部の構成を変更したものであるため、その変更部分についてのみ異なる符号を付けて説明し、略同様の箇所については重複する詳細説明を省略する。
【0036】
図4に示す弛み検知具2は、上記構成の弛み検知具1に対し、チェーンaの他方の側面a2に近接又は接触される第3の面部14(24)を加えた構成とされ、図示例によれば、一片部10と他片部20の各々が断面凹部状に形成される。
第3の面部14(24)は、チェーンaの長手方向に沿って該チェーンaの他方(図4によれば右側)の側面a2に対し、近接又は接触するように形成された平坦板状の部位である。この第3の面部14(24)は、一片部10又は他片部20における第1の面部11(又は21)の幅方向の端部に対し略直角に接続されている。
よって、図4に示す弛み検知具2によれば、一片部10と他片部20をそれぞれチェーンaに対し凹凸状に嵌め合わせることができ、ひいては、撓み検知作業の際に、当該弛み検知具2がチェーンaに対し交差方向へ滑るようなことを防ぐことができる。
【0037】
また、図5及び図6に示す弛み検知具3は、上述した弛み検知具1に対し、角度認識手段である貫通孔13b、目印部23b、係合部23a等を、係合部13e及び被係合部23eに置換した構成とされる。
【0038】
係合部13eは、一片部10における回動軸30の周囲(図示例によれば下側)に設けられ、他片部20側へ突出する突起である。この係合部13eは、図示する好ましい一例では、他片部20側へ突出して回転自在なボールと、該ボールを出没可能に付勢するスプリングと、これらボール及びスプリングを覆い保持するとともに一片部10に螺合される筒部とから構成される所謂ボールプランジャである。このボールプランジャは、一片部10の外面側(図6によれば下側)から一片部10に螺合貫通され、前記ボールを他片部20側へ没入可能に突出させている。
【0039】
被係合部23eは、他片部20における回動軸30の周囲(図示例によれば下側)に設けられた凹部又は貫通孔(図示例によれば、貫通孔)であり、一片部10に対し他片部20が所定角度回動した際に、一片部10における前記係合部13eと嵌り合うように設けられる。
【0040】
よって、上記構成の弛み検知具3によれば、図5に示すように、チェーンaにセットされ、その回動軸30側がチェーンaに対する交差方向へ引かれると、チェーンaの撓みに伴って、一片部10に相対し他片部20が回動する。そして、他片部20の回動角度が所定角度に達すると、係合部13eと被係合部23eが係合し合って、これらの角度が固定されるため(図6(a)(b)参照)、そのことを触覚的に認識することができる。
また、図示した好ましい一例では、被係合部23eを貫通孔としているため、他片部20の外面側(図6の上側)から被係合部23eである貫通孔内を視ることで、被係合部23eに係合部13eが係合したことを視覚的にも認識することができる。なお、被係合部23eの突端部(ボール)に着色を施せば、より視認性を良好にすることができる。
【0041】
また、図7に示す弛み検知具4は、上述した弛み検知具1に対し、角度認識手段である貫通孔13b、目印部23b、係合部23a等を、一片部10に設けられた第1の案内孔13fと、他片部20に設けられた第2の案内孔23fと、これら第1の案内孔13f及び第2の案内孔23fに挿通される案内軸33fに置換したものである。
【0042】
第1の案内孔13fは、横方向(詳細には回動軸30の軸心を中心とした円弧状)の長孔と、前記横方向の長孔に対し略直交する縦方向の長孔とからなる略逆L字状に形成されている。
また、第2の案内孔23fは、一片部10に対し他片部20が所定角度回動した際に、第1の案内孔13fの前記縦方向の長孔と重なり合うように形成された縦方向の長孔である。
そして、案内軸33fは、前記第1の案内孔13f及び第2の案内孔23fの双方に挿通された軸状部材であり、前記二つの案内孔の何れに対しても移動自在に係合している。
【0043】
よって、図7に示す弛み検知具4によれば、チェーンaにセットされてその回動軸30側の部分にチェーンaに押し付ける方向の力がわ加えられると、チェーンaの撓みに伴って、一片部10に相対し他片部20が回動し、その際、案内軸33fは、一片部10の第1の案内孔13fにおける前記横方向の長孔に沿って移動する。その後、一片部10に対し他片部20が所定角度回動すると、案内軸33fは、第1及び第2の案内孔13f,23fにおける双方の縦方向の長孔に沿って自重落下する。したがって、一片部10に対し他片部20が回動不能に係止された状態となり、その状態を触覚的に認識することができる。
【0044】
また、図8に示す弛み検知具5は、上述した弛み検知具1とは異なる外観形状の一片部50と他片部60と、一片部50に対する他片部60の角度を複数段階認識する角度認識手段とを具備する。
【0045】
一片部50と他片部60は、ステンレス板や鋼板等の金属製板材を曲げ加工してなり、チェーンaの撓み面a1に押し付けられる第1の面部51(又は61)と、前記チェーンaの側面a2に近接又は接触される第2の面部52(又は62)とを備える。
【0046】
第1の面部51(又は61)は、チェーンaの長手方向に沿って該チェーンaの撓み面a1に対し、略全面を当接させるように形成された平坦板状の部位である。
また、第2の面部52(又は62)は、チェーンaの長手方向に沿って該チェーンaの側面a2に対し、近接又は接触するように形成された平坦板状の部位である。この第2の面部52(又は62)は、第1の面部11の幅方向の端部に対し略直角に接続されている。
【0047】
双方の第2の面部52,62の基端側には、回動軸30が挿通され、一片部50及び他片部60は該回動軸30によって互いに回動するように接続される。
【0048】
そして、一片部50の第2の面部52における回動軸30の周囲には、回動軸30を中心とした同一径上に、複数(図示例によれば2つ)の被係合部52eが設けられる。各被係合部52eは、貫通孔又は凹部(図示例によれば貫通孔)である。
【0049】
また、他片部60の第2の面部62における回動軸30の周囲には、一片部50に対する他片部60の回動に伴い、前記複数の被係合部52eに順次に係合する単一の係合部62eが設けられる。この係合部62eは、一片部50側へ突出する突起であり、本実施の形態の好ましい一例によれば、上述したボールプランジャ(図6参照)が用いられる。
【0050】
よって、図8に示す弛み検知具5によれば、チェーンaにセットされ、その回動軸30側がチェーンaに対する交差方向へ引かれると、チェーンaの撓みに伴って、一片部50に相対し他片部60が回動する。そして、他片部60の回動角度が所定角度に達すると、係合部62eが第1段目の被係合部52eに係合するため(図8(b)参照)、そのことを触覚的に認識することができ、更に他片部60が回動すると、係合部62eが第1段目の被係合部52eから外れて第2段目の被係合部52eに係合するため(図8(c)参照)、そのことを再度触覚的に認識することができる。
また、図8に示す好ましい一例では、被係合部52eを貫通孔としているため、一片部50の外面側(図8の手前側)から被係合部52eである貫通孔内を視ることで、係合部62eが何れの被係合部52eに係合したのかを視覚的に確認することができる。
ひいては、弛み検知具5により認識された角度の段階に応じて、例えば、図9に示す開閉装置100において、開閉機110と支持部材140との間に挿入されるスペーサ200(200’)の厚み又は枚数を変更して、チェーンaのテンションを適宜に調整することができる。
【0051】
次に、上記弛み検知具を用いた動力伝達用チェーンのテンション調整方法について、詳細に説明する。
このテンション調整方法では、開閉機110の出力軸111に設けられた駆動スプロケット112と、出力軸111と略平行に設けられた巻取軸120と、該巻取軸120の中心側に固定された回転軸121と、該回転軸121をベアリングを介して回転自在に支持する軸受ブラケット130と、該軸受ブラケット130の軸方向の外側で回転軸121の端部に固定された従動スプロケット122と、前記駆動スプロケット112と従動スプロケット122との間に巻かれたチェーンaと、開閉機110を巻取軸側から支持する支持部材140と、巻取軸120における反開閉機110側に吊り下げられた開閉体150と、を備えた開閉装置100について、前記チェーンaの弛みを、上述した弛み検知具1,2,3,4又は5と、開閉機110と支持部材140との間に挿入されるスペーサ200を用いて調整する。
【0052】
開閉機110は、その基台113の部分に、支持部材140をその裏側から貫通する複数のボルト141が螺合され、これらボルト141の締め付けによって支持部材140に強固に固定される。
【0053】
上記弛み検知具によってチェーンaの弛みを検知した場合、巻取軸120に開閉体150を吊持する前であれば、軸受ブラケット130に対する支持部材140の位置調整等により、チェーンaの弛みを解消する。具体的には、支持部材140を軸受ブラケット130に止着するボルトの孔が水平方向へ長い長孔となっており、該長孔内で前記ボルトを移動することにより調整が行われる。そして、調整後は、支持部材140が容易に移動したりがたついたり等しないように、前記ボルトが軸受ブラケット130に溶接固定される。
【0054】
上記弛み検知具によってチェーンaの弛みを検知した場合であって、巻取軸120に開閉体150を吊持した後である場合には、開閉体150の重量によりチェーンaが張り、前記のようにして支持部材140を移動することが困難になる。このため、開閉機110の基台113を支持部材140に止着している複数のボルト141を緩めて、基台113と支持部材140の間にスペーサ200(又は200’)を挿入して、チェーンaの弛みを解消する。
【0055】
スペーサ200(又は200’)は、平板状の金属板であり、複数の軸状部材(具体的にはボルト141)を挿通可能な単数又は複数(図示例によれば2つ)の切欠部210を有する一体の部材である。
このスペーサ200(又は200’)を用いたテンション調整方法によれば、ボルト141毎に分割された従来のスペーサ299(図13参照)を用いた場合と比較し、スペーサ挿入作業の効率を、顕著に向上することができる。
【0056】
図10(a)に示すスペーサ200は、開閉機110と支持部材140との隙間に対し上方又は下方から挿入するようにしたタイプであり、ボルト141を挿通可能な開口を上方又は下方(図示例によれば下方)へ向けた切欠部210を有する。
【0057】
また、図10(b)に示すスペーサ200’は、開閉機110と支持部材140との隙間に対し横方向から挿入するようにしたタイプであり、ボルト141を挿通可能な開口を横方へ向けた切欠部210’を有する。以下に示す動力伝達用チェーンのテンション調整方法では、このスペーサ200’を用いる。
【0058】
このテンション調整方法における最初の工程では、上記弛み検知具をチェーンaにおける下側の部分a20にセットして、弛み検知具の回転軸側を下方へ引っ張ることで、該弛み検知具の一片部と他片部をチェーンaの撓み面a1に押し付ける。そして、上記撓み検知具における一片部と他片部の角度が所定角度に達したか否かにより、チェーンaのテンション調整が必要な状態か否かが判断される。
【0059】
そして、前記方法によりチェーンaの弛みを検知し、テンション調整が必要と判断した場合には、次の工程として、開閉機110の基台113を支持部材140に止着している複数のボルト141を緩める。
【0060】
次の工程では、開閉機110における反スプロケット側(図11によれば左側)へ延設された部分を支持部材140から引き離す。この際、基台113のスプロケット側(図11によれば右端側)を支点とした梃子の原理により、開閉機110を容易に動かすことができる(図11(b)参照)。
【0061】
そして、次の工程では、前記工程で検知されたチェーンaの弛みに応じて、開閉機110の基台113と支持部材140との間に、その側方側からスペーサ200’が挿入される(図11(b)参照)。
【0062】
この際、前記工程で上記弛み検知具5(図8参照)を用いた場合には、角度認識手段により認識される角度の段階に応じて、スペーサ200’の厚み又は枚数を変更する。
すなわち、角度認識手段により認識される角度が第1段階であった場合(角度小の場合)には、比較的薄いスペーサ200’を用いるか、スペーサ200’の枚数を比較的少なくする。
また、角度認識手段により認識される角度が第2段階の角度であった場合(角度大の場合)には、比較的厚いスペーサ200’を用いるか、スペーサ200’の枚数を比較的多くする。
【0063】
次の工程では、開閉機110の反スプロケット側を支持部材140側へ押し戻す(図12(c)参照)。この際、上記した梃子の原理により、開閉機110を容易に動かすことができる。
【0064】
そして、前記のようにして開閉機110の反スプロケット側を支持部材140側へ押し戻しながら、あるいは押し戻した後に、スペーサ200’を、その左右端部が、基台113の左右端部と略一致する定位置まで押し込む(図12(d)参照)。
【0065】
そして、次の工程として、緩めていた複数のボルト141を全て締め付ける。
【0066】
よって、このテンション調整方法によれば、チェーンaの弛みの検知を個人差なく簡単に行える上、チェーンaの弛みを解消するテンション調整を精度良くスピーディに行うことができる。
【0067】
なお、弛み検知具の他例としては、上述した一片部と他片部との間に、これら一片部と他片部の間の角度を初期状態(例えば図2に示す一例によれば(a)に示す状態)に戻すように付勢する付勢部材を設けるようにしてもよい。この付勢部材は、前記一片部と他片部との間に設けられる引張りバネや圧縮バネ、板バネ、あるいは回動軸30周囲に環装されるコイルバネ等とすればよい。
この構成によれば、当該弛み検知具をチェーンaにセットする際、一片部と他片部との角度を意識することなく初期状態に戻すことができ、より使い勝手を向上することができる。
また、このような弛み検知具において、弛んでいることの判断をし易くする観点からは、弛みを検知して一片部と他片部の角度が所定角度に達した場合に係止されて初期状態に戻らない態様、例えば、図5、図6、図7に示すように、その角度が固定、維持される態様とするのが好ましい。
【0068】
また、上述した図7に示す弛み検知具4においては、案内軸33fを回動軸30から離れる方向(図示例によれば下方)へ付勢する付勢部材を設けるようにしてもよい。この付勢部材は、例えば、回動軸30を前記方向へ付勢するように設けられた引張りバネ、圧縮バネ又は板バネ等とすればよい。
この構成によれば、例えばチェーンaのわたる方向が上下方向であった場合でも、一片部10に対し他片部20が所定角度回動した際に、案内軸33fを、その自重によることなく前記付勢部材の付勢力によって、反回動軸30側(図7によれば下方)へ移動させることができる。
【0069】
また、上記角度認識手段の他例としては、上記一片部と上記他片部のうちの一方に複数の目盛りを設けるとともに、その他方に前記目盛りを指す矢印を設けるようにしてもよい。この構成によれば、一片部に対する他片部の角度をより精密に視認することができ、ひいては、チェーンaの弛み具合をより精密に検知することができる。
【0070】
また、上記角度認識手段の他例としては、上記一片部に対し上記他片部が所定角度回動したことを検知する接触式又は非接触式のセンサ部を設けるとともに、前記センサ部の検知信号に応じて音及び/又は光を発する報知部を設けるようにしてもよい。
前記センサ部の具体例としては、上記一片部と上記他片部の間に、これらの間の角度が所定角度となった際に作動するようにリミットスイッチを設ければよい。
前記報知部の具体例としては、前記センサ部の検知信号に応じて光を発するように、発光ダイオードやブザー等を設ければよい。
この構成によれば、一片部に対し他片部が所定角度回動したことを、視覚的及び/又は聴覚的に認識することができ、チェーンaの弛みが規定値以上であることの検知を、一層容易に行うことができる。
【0071】
また、上記弛み検知具の検知対象であるチェーンaは、図示例によれば、金属製のローラーチェーンとしているが、ゴム製チェーンやその他の材質のチェーン、あるいはベルト等とすることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1〜5:弛み検知具 10:一片部
11,21:第1の面部 13b:貫通孔(角度認識手段)
13d:被係合部(側端部) 13f:第1の案内孔(角度認識手段)
12,22:第2の面部 20:他片部
23a:係合部(角度認識手段) 23b:目印部(角度認識手段)
23f:第2の案内孔(角度認識手段) 30:回動軸
33f:案内軸(角度認識手段) 40:ストラップ
100:開閉装置 110:開閉機
112:駆動スプロケット 120:巻取軸
122:従動スプロケット 130:軸受ブラケット
140:支持部材 200,200’:スペーサ
a:チェーン a1:撓み面 a2:側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能に接続されるとともにチェーンの長手方向に沿って該チェーンの撓み面に当接するように形成された一片部及び他片部と、前記一片部に対し前記他片部が所定角度回動したことを認識する角度認識手段とを備え、
前記一片部と前記他片部の双方がチェーンの撓み面に押し付けられた際に、前記角度認識手段による角度の認識によりチェーンの弛みが検知されるようにしたことを特徴とする動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項2】
前記角度認識手段は、前記一片部と前記他片部に、前記一片部に対し前記他片部を所定角度回動させた際に重なり合う目印部を具備していることを特徴とする請求項1記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項3】
前記角度認識手段は、前記一片部と前記他片部に、前記一片部に対し前記他片部を所定角度回動させた際に係合し合う係合部及び被係合部を具備していることを特徴とする請求項1又は2記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項4】
前記角度認識手段は、前記一片部に、横方向の長孔と縦方向の長孔とからなる略逆L字状の第1の案内孔を設け、前記他片部に、縦方向の長孔からなる第2の案内孔を設け、これら二つの案内孔に挿通されるとともにこれら二つの案内孔に沿って移動自在となるように案内軸を設けてなり、
前記一片部に対し前記他片部を所定角度回動させた際に、前記案内軸が、前記第1の案内孔における前記横方向の長孔に沿って移動した後、前記第1及び第2の案内孔における双方の縦方向の長孔に沿って移動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項5】
前記一片部と前記他片部の一方又は双方は、前記チェーンの撓み面に押し付けられる第1の面部と、前記チェーンの側面に近接又は接触される第2の面部とを有することを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項6】
前記一片部及び前記他片部の回動軸、又は前記一片部もしくは前記他片部における前記回動軸の近傍に、ストラップを設けたことを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項7】
開閉機の出力軸に設けられた駆動スプロケットと、巻取軸の端部側に設けられた従動スプロケットと、前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットとの間に巻かれたチェーンと、前記開閉機を巻取軸側から支持する支持部材とを備えた開閉装置について、前記チェーンの弛みを、請求項1乃至6何れか1項記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具を用いて調整する方法であって、
前記一片部と前記他片部の双方をチェーンに押し付けて前記チェーンの弛みを検知する工程と、該工程によって検知されたチェーンの弛みに応じて前記開閉機と前記支持部材との間にスペーサを挿入する工程と、を含むことを特徴とする動力伝達用チェーンのテンション調整方法。
【請求項8】
前記開閉機が複数本の軸状部材によって前記支持部材に固定され、前記スペーサが、前記複数本の軸状部材を挿通可能な単数又は複数の切欠部を有する一体の部材であることを特徴とする請求項7記載の動力伝達用チェーンのテンション調整方法。
【請求項9】
前記角度認識手段が前記一片部に対する前記他片部の角度を複数段階認識するように構成され、
前記角度認識手段により認識される角度の段階に応じて、前記スペーサの厚み又は枚数を変更するようにしたことを特徴とする請求項7又は8記載の動力伝達用チェーンのテンション調整方法。
【請求項10】
前記開閉機の反スプロケット側を前記支持部材から引き離す工程と、該工程によって形成された隙間に前記スペーサを挿入する工程と、前記開閉機の反スプロケット側を前記支持部材側へ押し戻す工程と、を含むことを特徴とする請求項7乃至9何れか1項記載の動力伝達用チェーンのテンション調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−255462(P2012−255462A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127582(P2011−127582)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【出願人】(398057396)文化シヤッターサービス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】