説明

動力伝達系

【課題】 動力伝達系を提供する。
【解決手段】 本発明は、駆動機械(2、3)に取り付けられて遊星歯車セット(18)を備えるトランスミッション(10)を介して、少なくとも1つの駆動輪に結合させることができる駆動出力シャフト(6)を有する少なくとも1つの駆動機械(2、3)を備える動力伝達系に関する。動力伝達系の開発および/または製造のための費用を低減するために、トランスミッション(10)が、駆動機械(2、3)の駆動出力シャフト(6)に対して回転された異なる取付け位置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッションを介して少なくとも1つの駆動輪に結合させることができる駆動出力シャフトを有する少なくとも1つの駆動機械を備え、トランスミッションがその駆動機械に取り付けられて遊星歯車セットを備える動力伝達系(drivetrain)に関する。また、本発明は、前記タイプの動力伝達系内に1次駆動機械と2次駆動機械を有するハイブリッド車に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献は、関連する背景技術を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第10 2006 038 396A1号明細書
【特許文献2】独国特許第10 2006 0 14 514A1号明細書
【特許文献3】独国特許第199 09 424A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、請求項1の前段による動力伝達系の開発および/または製造のための費用を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、トランスミッションを介して少なくとも1つの駆動輪に結合させることができる駆動出力シャフトを有する少なくとも1つの駆動機械を備え、トランスミッションがその駆動機械に取り付けられて遊星歯車セットを備える動力伝達系において、トランスミッションが、駆動機械の駆動出力シャフトに対して回転された異なる取付け位置を有することによって達成される。トランスミッションは、好ましくは減速トランスミッションとして設計される。適切な減速比によって、駆動機械の比較的高い駆動回転速度を、所望の車輪回転速度まで減少させることができる。この動力伝達系は、好ましくは、内燃機関と、少なくとも1つの電気機械、好ましくは、それぞれ1つのトランスミッションが取り付けられている2つの電気機械とを有するハイブリッド動力伝達系である。本発明によるトランスミッションを用いると、簡単に、自動車での利用可能な設置スペースを最適に利用することができる。
【0006】
動力伝達系の好ましい例示的実施形態は、トランスミッションを、各場合に、異なる取付け位置の間で規定の角度範囲だけ回転させることができることを特徴とする。規定の角度範囲は、好ましくは60度である。
【0007】
動力伝達系のさらなる好ましい例示的実施形態は、動力伝達系が、2つの電気機械を備え、電気機械に、同一設計の2つのトランスミッションが取り付けられることを特徴とする。それらの電気機械の駆動出力シャフトは、同軸の回転軸を有し、互いに取り付けられた電気機械から反対方向に延在する。各場合に、2つのトランスミッションの一方が、電気機械の互いに逆を向いた側に取り付けられる。
【0008】
動力伝達系のさらなる好ましい例示的実施形態は、トランスミッションが、駆動機械に向かって面する中間カバーを有するトランスミッションハウジングを備え、中間カバーが、トランスミッションハウジングに対して回転された異なる取付け位置を有することを特徴とする。各場合に、中間カバーを、異なる取付け位置の間で規定の角度範囲だけ回転させることができ、この角度範囲は好ましくは30度である。
【0009】
動力伝達系のさらなる好ましい例示的実施形態は、中間カバーが複数の流体ポート、特に高圧ポートを有し、中間カバーおよび/またはトランスミッションの取付け位置に応じて流体ポートに異なる機能を割り当てることができることを特徴とする。3つの高圧ポートを中間カバーに提供することが好ましく、しかしそれらの高圧ポートのうち2つのみが使用される。第3の高圧ポートは、好ましくは使用されず、したがって閉じられる。
【0010】
動力伝達系のさらなる好ましい例示的実施形態は、トランスミッションが複数の排出開口を有し、トランスミッションの取付け位置に応じて排出開口に異なる機能が割り当てられることを特徴とする。トランスミッションは、2つの排出開口を有することが好ましい。排出開口の一方は、ドレンプラグ(ドレンネジ)によって閉じられることが好ましい。必要であれば、トランスミッションから外にオイルを排出するために、ドレンプラグを外すことができる。他方の排出開口内には、センサ、特に温度センサを配置することができる。
【0011】
動力伝達系のさらなる好ましい例示的実施形態は、トランスミッションが、様々な平歯車対のための平歯車設置スペースを備えることを特徴とする。様々な平歯車対によって、様々な変速比を簡単に実現することができる。したがって、平歯車設置スペースのサイズは、様々な平歯車対に適合される。
【0012】
動力伝達系のさらなる好ましい例示的実施形態は、トランスミッションが、内側板および外側板を有する多板クラッチを備え、外側板が、外側歯列によって、トランスミッションハウジングに形成された内側歯列に係合することを特徴とする。トランスミッションハウジングに直接形成される内側歯列は、好ましくは侵食形成されてハードコートされる。
【0013】
動力伝達系のさらなる好ましい例示的実施形態は、内側板が内側歯列を有し、その内側歯列に、遊星歯車セットの内側歯車に形成された外側歯列が係合することを特徴とする。多板クラッチは、軸方向で前記内側歯車に重なるように遊星歯車セットの内側歯車の半径方向外側に配置されることが好ましい。表現「軸方向」および「半径方向」は、電気機械の駆動出力シャフトの回転軸に関係する。軸方向とは、駆動出力シャフトの回転軸の方向またはそれと平行な方向を意味する。半径方向とは、電気機械の駆動出力シャフトの回転軸に対して横方向(横断する方向)を意味する。遊星歯車セットの内側歯車およびトランスミッションハウジングに歯列を設ける(統合する)ことによって、トランスミッションのサイズが大幅に縮小される。
【0014】
本発明は、好ましくは、上述した動力伝達系内に1次駆動機械と2次駆動機械を有するハイブリッド車に関する。1次駆動機械は、好ましくは内燃機関である。2次駆動機械は、好ましくは、互いに取り付けられた2つの電気機械を備える。上述したトランスミッションが、電気機械それぞれに取り付けられる。
【0015】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、図面を参照して様々な例示的実施形態を詳細に説明する以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】長手方向断面での本発明による動力伝達系を示す図である。
【図2】半断面図での、遊星歯車セットおよび摩擦クラッチを含む図1からの拡大詳細図である。
【図3】図2からの拡大詳細図である。
【図4】ジョイントフランジの後方でのねじ接続の領域の、図1からの拡大詳細図である。
【図5】軸受保持板を有する図1からの拡大詳細図である。
【図6】換気ポートを有する図1からの拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図6は、本発明による動力伝達系を様々な図または詳細で示す。本発明の動力伝達系は、ハイブリッド駆動装置を備える自動車(ハイブリッド車とも呼ばれる)のハイブリッド動力伝達系である。このハイブリッド動力伝達系は、共通の機械ハウジング8内で組み合わされた2つの電気機械2、3を有する電気機械構成1を備える。
【0018】
図1では、電気機械2の大部分は切れており見えない。2つの電気機械2、3は同一設計であり、それぞれ、駆動出力シャフト6を有する回転子(ローター)5を備える。機械ハウジング8は、トランスミッション側の端部で軸受カバー7によって閉じられ、軸受カバー7には駆動出力シャフト6用の固定軸受が提供される。機械ハウジング8は、2つの電気機械2、3の間に区壁9を有し、区壁9には駆動出力シャフト6用の浮動軸受が提供される。区壁9は、図1に示される動力伝達系の部分に関する対称軸または対称面となる。
【0019】
機械ハウジング8のトランスミッション側の端部には、トランスミッション10が取り付けられている。参照符号11は、トランスミッション10と電気機械構成1の分割線を表す。トランスミッション10と同一設計のさらなるトランスミッション(図示せず)が、電気機械2のトランスミッション側の端部(図示せず)に取り付けられる。
【0020】
駆動に関して、トランスミッション10は、自動車の駆動輪を電気機械3に接続する。駆動輪を接続するために、ジョイントフランジ12が、モジュール式減速トランスミッションとして設計されたトランスミッション10に取り付けられる。本発明によるトランスミッション10の設計によって、左(図示)と右の両側で、同一のトランスミッションを電気機械構成1に取り付けることができる。
【0021】
トランスミッション10は、トランスミッションハウジング14を備え、トランスミッションハウジング14は、植込みボルト13、17とナット19、23によって機械ハウジング8に様々な位置で取り付けることができる。本発明の重要な態様によれば、計6個の植込みボルト13、17が、規則的な穴パターンで配列される。このようにすると、簡単に、トランスミッション10の取付け位置を、電気機械構成1の駆動出力シャフト6の回転軸に対して(関して)60度ステップで(毎に)回転させることができるようになる。
【0022】
トランスミッション10を位置決めするために、トランスミッション10の中間カバー15に芯出し用の直径が提供される。バリアカバーとも呼ばれる中間カバー15は、芯出しのために環状の段差を備え、この環状の段差によって、中間カバー15は、機械ハウジング8の軸受カバー7に提供される対応する凹部に係合する。
【0023】
中間カバー15は、電気機械構成1の方向でトランスミッションハウジング14を閉じる。分割線11は、電気機械構成1の軸受カバー7とトランスミッション10の中間カバー15の間に延在する。トランスミッションハウジング14は、反対側では外側カバー16によって閉じられ、外側カバー16を通ってジョイントフランジ12が延出する。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、中間カバーまたはバリアカバー15は、適切な穴パターンを有するねじ接続によって、30度ステップで(毎に)回転可能にトランスミッションハウジング14に固定することができる。半径方向外側で中間カバー15に3つの高圧接続手段を提供することが好ましく、しかしそのうちの2つのみが使用される。第3のポートは閉じられる。
【0025】
トランスミッションハウジング14に対して中間カバー15を回転させることによって、高圧ポートの位置を簡単に変えることができる。特に、中間カバー15は、常に、換気を可能にするように1つのポートが上にあるようにトランスミッションハウジング14に対して回転させることができる。
【0026】
第1のポートに対して120度ずらしてさらなるポートが配置されることが好ましい。緊急走行動作を可能にする多板クラッチ40(以下でより詳細に説明する)が、第2のポートを介して油圧式に作動される。
【0027】
トランスミッション10は、遊星歯車セット18と、平歯車対20を有する平歯車機構とを備える。平歯車対20は、内側平歯車21と外側平歯車22を備える。本発明のさらなる態様によれば、平歯車機構はモジュール設計であり、複数の平歯車対を備え、それらが、トランスミッション10を様々な要件に適合させるように様々な変速比を実現する。
【0028】
したがって、様々なサイズの平歯車21、22を収容することができるように、平歯車対20のための収容スペースがトランスミッションハウジング14内に形成される。このようにすると、簡単に、トランスミッション10を例えば特定の走路に適合させることができる。ジョイントフランジ12および外側カバー16が取り外された後、平歯車対20を備える平歯車機構を迅速かつ簡単に交換することができる。
【0029】
駆動出力シャフト6の駆動出力シャフトスタブ24が、電気機械構成1の軸受カバー7およびトランスミッション10の中間カバー15を通って延在する。遊星歯車セット18の太陽歯車25は、スプライン歯列26によって駆動出力シャフトスタブ24に、それと一体回転するように接続される。
【0030】
太陽歯車25は、3つの遊星歯車と噛み合い、図1ではそのうちの1つの遊星歯車28のみが見える。遊星歯車28は、軸受ジャーナル29によって遊星歯車キャリア32内に回転可能に担持される。遊星歯車28を回転可能に担持するために針状ころ(needle−roller)軸受30が提供されていることを図2で見ることができる。遊星歯車28は内側歯車34と噛み合い、内側歯車34は、このために、図1で見ることができるように内側歯列35を設けられている。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、内側歯車34が、内側歯列35に加えて外側歯列36も設けられていることを図2で見ることができる。外側歯列36によって、内側歯車34は、多板クラッチ40の内側板37に、それと一体回転するように接続される。内側板37は、多板クラッチ40の外側板38と摩擦係合する。
【0032】
内側板37と外側板38の摩擦係合は、作動ピストン39によって生み出され、作動ピストン39は、圧縮ばね41、特につる巻き圧縮ばねによって板37、38に対して軸方向に予荷重をかけられる。板37と板38の摩擦係合は、圧縮ばね41の予荷重の力に反する油圧を圧力チャンバ42にかけることによって解消することができ、緊急走行を可能にする。
【0033】
作動ピストン39は、板37、38とは逆側に、圧縮ばね41の一部を収容するための凹部を有する。圧縮ばね41の別の部分を収容するための同様の凹部が、中間カバーまたはバリアカバー15内に提供される。さねはぎガイドによって、作動ピストン39は、中間カバー15と一体回転するが軸方向では移動できるように、中間カバー15に接続される。同時に、さねはぎガイドは、作動ピストン39用の軸方向ストッパを形成する。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、多板クラッチ40の内側板37は、駆動歯列によって内側歯車34に直接位置される。内側板37は、半径方向内側にスプライン歯列を設けられる。前記スプライン歯列に係合する内側歯車34の外側歯列36も駆動歯列と呼ぶ。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、外側板38が外側歯列を設けられ、外側歯列は、トランスミッションハウジング14に直接形成された内側歯列43に係合する。内側歯列43は、好ましくはアルミニウムから形成されたトランスミッションハウジング14に直接侵食形成されてハードコートされる。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、内側歯車34は、好ましくは薄型リング軸受として設計される2つの軸受44、45によって回転可能に担持される。内側歯車34は、2つの軸受44、45によって両側で案内される。軸受44は、半径方向内側でトランスミッションハウジング14に支持される。軸受45は、半径方向内側で軸受キャリア46に支持される。軸受キャリア46は、ねじ47によって中間カバー15に固定される。半径方向外側では、作動ピストン39が、軸方向で移動可能に軸受キャリア46に案内される。
【0037】
軸受ジャーナル29は、一端で、半分に縮小されたカラー48によって、押込み係止して遊星歯車キャリア32に接続される。軸受ジャーナル29は、その他端では、軸方向固定リング49によって遊星歯車キャリア32に保持される。一端での押込み係止と他端での軸方向固定リング49により、遊星歯車キャリア32に対する軸受ジャーナル29の軸方向と回転方向での複合型の係止が達成される。また、軸受ジャーナル29は、簡単に針状ころ軸受30の潤滑を可能にするオイル通過穴50も備える。
【0038】
図1は、太陽歯車25が、外側歯列51によって遊星歯車28と噛み合い、遊星歯車キャリア32に回転可能に担持されていることを示す。さらに遊星歯車キャリア32は、軸受53、54によって回転可能に担持される。遊星歯車キャリア32の一端は、浮動軸受53によってトランスミッション10の外側カバー16に担持される。遊星歯車キャリア32は、固定軸受54によってトランスミッションハウジング14内に担持される。内側平歯車21が、軸方向で2つの軸受53と54の間に配置され、軸方向固定リングによって保持される。
【0039】
外側平歯車22は、2つのさらなる軸受55、56によって回転可能に担持される。軸受55によって、外側平歯車22は、トランスミッション10の外側カバー16内に担持される。軸受56によって、外側平歯車22は、トランスミッションハウジング14内に担持される。ジョイントフランジ12は、スプライン歯列58によって外側平歯車22に、それと一体回転するように接続される。
【0040】
潤滑および/または冷却のために、トランスミッション10にトランスミッションオイルが充填される。本発明のさらなる態様によれば、多板クラッチ40の外端板60は、図3に矢印62によって示されるようにオイルが半径方向内側から半径方向外側に通過することができるように構成される。半径方向外側への所期のオイル通過により、開いた状態での多板クラッチ40の動力損失を大幅に減少させることができる。
【0041】
オイルの通過またはオイルの逃げを可能にするために、半径方向溝、この場合には計5個の半径方向溝が、端板または外端板60に形成される。半径方向溝に加えて、くぼみの形状での回転輪郭が、外端板60に半径方向外側で形成される。
【0042】
これにより、簡単に、オイルを半径方向外側に向けて、トランスミッションハウジング14内に形成されたチャネル64内に送ることができるようになる。流れ出るオイルは、チャネル64から、平歯車対20のための収容スペース内に流れる。
【0043】
図4は、ジョイントフランジ12が、スナップリング66によって、前記ジョイントフランジを非破壊で繰り返し取り外すことができるように外側平歯車22に取り付けられることを示す。それにより、ジョイントフランジ12は、引張力を加えることによって簡単に取り外すことができる。ジョイントフランジ12を取り外すことにより、組立てのために、ジョイントフランジ12の後ろに配置されたナット19および関連の植込みボルト13に手が届くようになる。したがって、本発明によるジョイントフランジの取付けは、規則的であり対称的なねじ接続穴パターンの実現に寄与する。
【0044】
図5は、トランスミッション10が第1のオイルチャンバ71を備え、オイルチャンバ71内に2つの平歯車21、22が配置されていることを示す。したがって、第1のオイルチャンバ71は、平歯車オイルチャンバまたは平歯車設置スペースとも呼ばれる。第2のオイルチャンバ72が遊星歯車セットに割り当てられる。トランスミッション10の動作中、より多くのオイルが第1のオイルチャンバ71で必要とされる。本発明のさらなる態様によれば、第1のオイルチャンバ71から第2のオイルチャンバ72内への経路(矢印73によって示される)が、軸受保持板74によって制限される。
【0045】
軸受保持板74は、ねじ75によってトランスミッションハウジング14に固定され、軸受44を通るオイルの通過が大幅に減少されるように構成される。ここで、軸受保持板74と軸受54の軸受内側リングとの間に小さな残留ギャップが開いて残り、それにより、オイルの通過が制限されている場合でさえ適切な潤滑が維持される。
【0046】
雌ねじを切られた2つの排出開口をトランスミッションハウジング14に提供することが好ましい。トランスミッション10を設置した状態では、2つの排出開口のうち下側の排出開口にドレンプラグがねじ留めされて、排出開口を閉じる。2つの排出開口のうち上側の排出開口には、温度センサがねじ留めされることが好ましい。
【0047】
多板クラッチ40の領域内では、動力損失を減少するために、さらなる領域に所期のオイル管路が設けられる。このために、本発明のさらなる態様によれば、トランスミッションハウジング14の内側歯列43における個々の歯が意図的に省かれ、軸方向通過開口と組み合わされる。さらに、くぼみによって、軸方向オイル通過開口に対して円周方向でのオイルの通過を可能にする環状チャンバを提供することができる。
【0048】
このオイル管路によって、所期の通りに、オイルを第2のオイルチャンバ72から出して、平歯車オイルチャンバとも呼ばれる第1のオイルチャンバ71内に流し込むことができる。このようにすると、特に高い回転速度で動力損失を大幅に減少させることができる。
【0049】
回転速度がより高くなると、多板クラッチ40の回転する内側板37が、オイルが半径方向外側に搬送されることを保証する。オイルは、内側歯列43における好ましくは5つのハウジング歯を除去することによって形成された空間を通して、最初に環状チャンバ内に流し込まれ、次いで、軸方向開口またはアパーチャを通して第1のオイルチャンバ71内に流し込まれる。
【0050】
図6は、ねじ81を示し、ねじ81によって中間カバーまたはバリアカバー15がトランスミッションハウジング14に固定される。軸受56の軸受台の後方の静止区域内で、換気ポート82がトランスミッションハウジングに提供される。換気ポート82は、軸受56の後方の静止空間83に接続される。
【符号の説明】
【0051】
2 駆動機械
3 駆動機械
6 駆動出力シャフト
10 トランスミッション
18 遊星歯車セット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッション(10)を介して少なくとも1つの駆動輪に結合させることができる駆動出力シャフト(6)を有する少なくとも1つの駆動機械(2、3)を備え、前記トランスミッションが前記駆動機械(2、3)に取り付けられて遊星歯車セット(18)を備える動力伝達系であって、前記トランスミッション(10)が、前記駆動機械(2、3)の前記駆動出力シャフト(6)に対して回転された異なる取付け位置を有することを特徴とする動力伝達系。
【請求項2】
前記トランスミッション(10)を、各場合に、前記異なる取付け位置の間で規定の角度範囲だけ回転させることができることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達系。
【請求項3】
前記動力伝達系が、2つの電気機械(2、3)を備え、前記電気機械(2、3)に、同一設計の2つのトランスミッション(10)が取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の動力伝達系。
【請求項4】
前記トランスミッション(10)が、前記駆動機械(2、3)に向かって面する中間カバー(15)を有するトランスミッションハウジング(14)を備え、前記中間カバー(15)が、前記トランスミッションハウジング(14)に対して回転された異なる取付け位置を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の動力伝達系。
【請求項5】
前記中間カバー(15)が複数の流体ポートを有し、前記中間カバー(15)および/または前記トランスミッション(10)の取付け位置に応じて前記流体ポートに異なる機能を割り当てることができることを特徴とする請求項4に記載の動力伝達系。
【請求項6】
前記トランスミッション(10)が複数の排出開口を有し、前記トランスミッション(10)の取付け位置に応じて前記排出開口に異なる機能が割り当てられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の動力伝達系。
【請求項7】
前記トランスミッション(10)が、様々な平歯車対(20)のための平歯車設置スペースを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の動力伝達系。
【請求項8】
前記トランスミッション(10)が、内側板(37)および外側板(38)を有する多板クラッチ(40)を備え、前記外側板(38)が、外側歯列によって、前記トランスミッションハウジング(14)に形成された内側歯列(43)に係合することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の動力伝達系。
【請求項9】
前記内側板(37)が内側歯列(43)を有し、前記内側歯列(43)に、前記遊星歯車セット(18)の内側歯車(34)に形成された外側歯列(36)が係合することを特徴とする請求項8に記載の動力伝達系。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の動力伝達系内に1次駆動機械と2次駆動機械を有するハイブリッド車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−162179(P2011−162179A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−19652(P2011−19652)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】