説明

動力伝達装置

【課題】使用中のタイミングベルトの寿命を検知することにより、タイミングベルトが交換時期に達したか否かを高精度に検出できる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】クランクシャフト11に設けられたクランクシャフトプーリ41と、吸気カムシャフト22に設けられた吸気カムシャフトプーリ43と、クランクシャフトプーリ41および吸気カムシャフトプーリ43に掛け回されたタイミングベルト46とを備えた動力伝達装置1において、タイミングベルト46は、外力を受けることにより発光する応力発光材料を含有し、タイミングベルト46に対向して配置されるとともにタイミングベルト46の測光を行う光センサ49と、光センサ49で検出された測光値に基づいてタイミングベルト46の寿命を算出し、寿命に基づいてタイミングベルト46が交換時期に達したか否かを判断するECU4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側プーリおよび従動側プーリに掛け回されたベルトにより駆動側プーリから従動側プーリに動力を伝達する動力伝達装置に関し、特に、ベルトの寿命を検出することによりベルトが交換時期に達したことを検出できる動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オーバヘッドカムシャフト式のバルブ機構を有した内燃機関、例えばエンジンでは、エンジンの下部に配設されたクランクシャフトの回転をエンジンの上部に配設されたカムシャフトに伝達する必要がある。またバルブ機構が適正に作動するためにはクランクシャフトの回転とカムシャフトの回転を同期させる必要がある。このため、クランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達する手段としてタイミングベルトが多用されている。
【0003】
これにより、クランクシャフトの回転とカムシャフトの回転が同期されている。しかしながら、不測の事態によりタイミングベルトが損傷した場合には、クランクシャフトの回転とカムシャフトの回転とが同期されなくなる可能性がある。
【0004】
そこで、タイミングベルトが損傷する少し前に、タイミングベルトが交換時期に達したことを運転者に知らせる機能を有する動力伝達装置が提案されている。この種の動力伝達装置として、例えば、エンジンの回転数および運転時間に基づいてタイミングベルトなどの環状伝動体の疲労度を算出し、その疲労度が基準値を超えたときに、タイミングベルトを交換すべきという警告を発するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この動力伝達装置によれば、車両の走行距離のみによりタイミングベルトの交換時期が判断される場合に比べ、タイミングベルトが交換時期に達したか否かがより適切に判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−239802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような動力伝達装置にあっては、タイミングベルトの疲労状態を直接測定することなく、エンジンの回転数および運転時間に基づいてタイミングベルトの疲労度を算出して交換時期を判断しているので、算出した疲労度と実際の疲労度とは必ずしも一致せず交換時期の判断の精度が高くなかった。
【0008】
例えば、同じエンジン回転数および運転時間であっても、高負荷の運転が多かったものと低負荷の運転が多かったものとでタイミングベルトの疲労度は異なる。このため、この動力伝達装置によりエンジンの回転数および運転時間に基づいて算出したタイミングベルトの疲労度に比べて実際の疲労度が大きくなる場合を考慮して、安全率を大きく設定して警告を発する必要があった。
【0009】
これにより、実際のタイミングベルトの疲労度は小さいにも関わらずタイミングベルトを交換すべきという警告が発せられることがあり、まだ交換する必要の無いタイミングベルトを無駄に交換することがあるという問題があった。そこで、タイミングベルトの寿命を検出して、その寿命に基づいてタイミングベルトが交換時期にあるか否かを判断可能な動力伝達装置の開発が望まれていた。
【0010】
また、ベルトの交換時期の判断の精度が高くないという課題は、タイミングベルトだけの課題には限られない。すなわち、駆動側プーリおよび従動側プーリに掛け回されたベルトにより駆動側プーリから従動側プーリに動力を伝達する動力伝達装置の全般で、上述と同様の課題が想定される。
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、使用中のベルトの寿命を検知することによりベルトが交換時期に達したか否かを高精度に検出できる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る動力伝達装置は、上記目的達成のため、(1)駆動軸に設けられた駆動側プーリと、従動軸に設けられた従動側プーリと、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリに掛け回されたベルトとを備えた動力伝達装置において、前記ベルトは、外力を受けることにより発光する応力発光材料を含有し、前記ベルトに対向して配置されるとともに前記ベルトの測光を行う光センサと、前記光センサで検出された測光値に基づいて前記ベルトの寿命を算出し、前記寿命に基づいて前記ベルトが交換時期に達したか否かを判断する交換時期判断部とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成により、ベルトに応力発光材料が含有されているので、ベルトに外力が作用したときにベルトが発光する。そして、ベルトに生ずる応力(Pa)や伸び速度(mm/min)が変化したときに、ベルトの発光量が変化する。ここでの発光量としては、例えば、光量(lm・s)、輝度(cd・m−2)、照度(lx)、光度(cd)などとすることができる。
【0014】
ここで、応力発光材料とは、弾性変形領域の摩擦、衝撃、圧縮、引張などの微小な外力によって可視光域での発光が励起される発光材料である。応力発光材料が含有されたベルトでは、応力発光強度がベルトの応力とベルトの伸び速度との積に比例する。
【0015】
そして、光センサがベルトの発光を検出し、交換時期判断部が光センサで検出された測光値に基づいてベルトの寿命を算出する。さらに、交換時期判断部が、算出された寿命に基づいてベルトが交換時期に達したか否かを判断する。したがって、ベルトから発せられた光を測定することによりベルトの寿命を直接検出しているので、従来のようにベルトの状態を検出することなく駆動軸の回転数および運転時間に基づいてベルトの交換時期を判断する場合に比べて、より高精度にベルトの交換時期を判断することができる。
【0016】
上記(1)に記載の動力伝達装置においては、(2)前記交換時期判断部は、前記測光値から前記ベルトの寿命と前記寿命に対する使用程度とを検出し、前記使用程度が所定の閾値を超えたときに、前記ベルトが前記交換時期に達したと判断する寿命−交換判断部を備えることが好ましい。
【0017】
この構成により、寿命−交換判断部が、ベルトの寿命を算出してベルトの寿命に対する使用程度を検出し、この使用程度に基づいてベルトが交換時期に達したか否かを判断する。このため、ベルトの寿命に対する実際の使用の程度を考慮して交換時期を判断しているので、ベルトが交換時期にあるか否かをより高精度に判断することができる。
【0018】
上記(2)に記載の動力伝達装置においては、(3)前記寿命−交換判断部は、前記光センサで検出された前記測光値に基づいて前記ベルトの応力を算出する応力算出部と、前記ベルトが同一の前記応力で回転した回転回数nを計測する回転回数n計測部と、前記ベルトの前記応力での寿命回転回数Nを算出して前記寿命を検出する寿命回転回数N検出部と、前記ベルトの前記応力が変動するごとに、前記回転回数nと前記寿命回転回数Nとから前記応力での疲労損傷n/Nを算出する疲労損傷n/N算出部と、前記疲労損傷n/Nを累積して前記使用程度を算出する使用程度算出部と、前記使用程度が所定値を超えたときに、前記ベルトが前記寿命に近いと判定する疲労損傷−寿命判定部と、前記疲労損傷−寿命判定部により前記ベルトが寿命に近いと判定されたときに、前記ベルトが前記交換時期に達したと判断する交換判断部とを備えることが好ましい。
【0019】
この構成により、応力算出部がベルトの応力を算出する。回転回数n計測部が回転回数nを算出する。寿命回転回数N検出部が寿命回転回数Nを算出して寿命を検出する。そして、ベルトの応力が変動するごとに、疲労損傷n/N算出部が、回転回数nおよび寿命回転回数Nに基づいて疲労損傷n/Nを算出する。
【0020】
さらに、使用程度算出部が、変動した応力ごとの疲労損傷n/Nを累積して使用程度を算出する。そして、疲労損傷−寿命判定部が、使用程度が所定値を超えたときにベルトが寿命に近いと判定する。交換判断部は、疲労損傷−寿命判定部によりベルトが寿命に近いと判定されたときに、ベルトが交換時期に達したと判断する。
【0021】
ここで、ベルトの寿命回転回数Nは作用した応力によって異なったものとなる(図7参照)。この動力伝達装置によれば、ベルトの発光量から応力を算出し、変動する応力に基づいてベルトの寿命および使用程度を算出しているので、ベルトに実際に作用した応力の変化なども考慮することができ、より高精度にベルトが交換時期にあるか否かを検出することができる。
【0022】
上記(1)から(3)に記載の差動装置においては、(4)前記駆動側プーリと前記従動側プーリとの間に、前記ベルトを背側から押圧するテンショナを備えるとともに、前記光センサは、前記テンショナを通過した直後の前記タイミングベルトに対向する位置に配置されることが好ましい。
【0023】
この構成により、ベルトが背側から押圧された直後に光センサにより発光量が検出されるようになる。このため、ベルトの応力の大きいときに発光量が検出されるようになるので、ベルトの発光状態の変化の検出精度が高まる。
【0024】
上記(1)から(4)に記載の差動装置においては、(5)前記ベルトの全体を覆って遮光するカバーを備えるとともに、前記カバーは、前記光センサを前記ベルトに対向させて保持する光センサ保持部と、前記ベルトから前記光センサへの光路の領域を除き前記光センサ保持部の周囲の少なくとも一部を取り囲んで設けられる遮光部とを有することが好ましい。
【0025】
この構成により、カバーがエンジン本体の熱により変形しても光センサ保持部に保持された光センサはカバーの変動に伴って変動するので、光センサと遮光部との相対位置はほとんど変わらない。これにより、カバーの変形によりエンジン本体とカバーとの間に隙間が生じて隙間からカバーの内部に外光が侵入しても、光センサは遮光部により遮光されているので、外光のカバーの内部への侵入によるベルトの発光量の検出精度の低下を抑制することができる。
【0026】
上記(1)から(5)に記載の差動装置においては、(6)前記駆動軸は内燃機関のクランクシャフトであり、前記従動軸はカムシャフトであり、前記ベルトはタイミングベルトであることが好ましい。
【0027】
この構成により、内燃機関のタイミングベルトが交換時期にあるか否かを高精度に判断できるようになる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ベルトに応力発光材料を含有するとともにベルトの発光量に基づいてベルトの交換時期を判断するので、使用中のベルトの寿命を検出してベルトが交換時期にあるか否かを高精度に判断できる動力伝達装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置を示す概略の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置のエンジンのクランクシャフトとカムシャフトと動力伝達機構とを示す概略の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置のカバーを切断した状態を示す概略の側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置のタイミングベルトを示す一部切断した斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置の寿命−交換判断部を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置のタイミングベルトの応力からタイミングベルトの寿命および使用程度を求めて、この使用程度の累積に基づいてタイミングベルトが交換時期にあるか否かを判断する手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置のタイミングベルトに発生した応力とその応力でのタイミングベルトの寿命回転回数Nとの関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置のタイミングベルトの回転回数nとそのときの応力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の動力伝達装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態では、本発明の動力伝達装置を自動車に適用した例を示している。
【0031】
まず、本実施の形態に係る動力伝達装置1の構成について説明する。この実施形態では、動力伝達装置1は自動車2に搭載したものとしている。
【0032】
図1に示すように、自動車2は、内燃機関であるエンジン3と、交換時期判断部としてのECU(Electronic Control Unit)4と、警告装置5とを備えている。
【0033】
図1および図2に示すように、エンジン3は、ピストンが2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う4サイクルのガソリンエンジンによって構成されている。
【0034】
エンジン3は、直列4気筒のガソリンエンジンを採用している。エンジン3は、エンジン本体6と、エンジン本体6に燃焼用空気を供給する図示しない吸気装置と、エンジン本体6からの排気を外部に排出する図示しない排気装置とを備えている。エンジン本体6は、シリンダブロック10と、シリンダブロック10の上側に固定されたシリンダヘッド20と、シリンダブロック10の下側に固定されたオイルパン30と、シリンダブロック10とシリンダヘッド20とオイルパン30との前面(以下、単にエンジンブロック前端面と呼ぶ)6aの近傍に設けられた動力伝達機構40とを備えている。
【0035】
シリンダブロック10は、図示しないピストンと、図示しないコネクティングロッドと、駆動軸としてのクランクシャフト11とを備えている。ピストンは、シリンダブロック10に対して上下方向に往復動可能に設けられている。ピストンは、コネクティングロッドに回転可能に連結されている。コネクティングロッドは、クランクシャフト11に回転可能に連結されている。
【0036】
また、エンジン本体6では、シリンダブロック10とシリンダヘッド20とピストンとによって、図示しない燃焼室が形成されている。エンジン3は、燃焼室において燃料と空気との混合気を所望のタイミングで燃焼させることによりピストンを往復動させ、コネクティングロッドを介してクランクシャフト11を回転させるようになっている。
【0037】
シリンダヘッド20は、吸気装置の吸気通路と燃焼室とを連通する図示しない吸気ポートと、吸気ポートを開閉する吸気バルブ21と、吸気バルブ21を作動させる従動軸およびカムシャフトとしての吸気カムシャフト22と、燃焼室および排気装置を連通させる図示しない排気ポートと、排気ポートを開閉する排気バルブ23と、排気バルブ23を作動させる従動軸およびカムシャフトとしての排気カムシャフト24とを備えている。
【0038】
吸気カムシャフト22は、吸気カム25を備えるとともにシリンダヘッド20に対して回転可能に設けられている。吸気カム25は、吸気バルブ21の上端に当接されている。吸気カムシャフト22の回転により、吸気カム25が回転して吸気バルブ21を昇降させる。吸気バルブ21は、昇降により吸気ポートと燃焼室との間を開閉し、吸気装置から燃焼室への燃焼用空気の導入を制御するようになっている。
【0039】
排気カムシャフト24は、排気カム26を備えるとともにシリンダヘッド20に対して回転可能に設けられている。排気カム26は、排気バルブ23の上端に当接されている。排気カムシャフト24の回転により、排気カム26が回転して排気バルブ23を昇降させる。排気バルブ23は、昇降により燃焼室と排気ポートとの間を開閉し、燃焼室から排気装置への排気の排出を制御するようになっている。
【0040】
図1〜図3に示すように、動力伝達機構40は、駆動側プーリとしてのクランクシャフトプーリ41および補機用プーリ42と、従動側プーリとしての吸気カムシャフトプーリ43および回転位相差可変アクチュエータ44と、従動側プーリとしての排気カムシャフトプーリ45と、ベルトとしてのタイミングベルト46と、テンショナ47と、カバー48と、光センサ49とを備えている。
【0041】
クランクシャフトプーリ41および補機用プーリ42は、クランクシャフト11の前端部に取り付けられている。クランクシャフトプーリ41はカバー48の内部に配置されるとともに、補機用プーリ42はカバー48の外部に配置されている。
【0042】
吸気カムシャフトプーリ43および回転位相差可変アクチュエータ44は、吸気カムシャフト22の前端部に取り付けられている。回転位相差可変アクチュエータ44は、吸気カムシャフト22が吸気カムシャフトプーリ43に対して回転位相差を生ずるように吸気カムシャフト22を回転させるようになっている。回転位相差可変アクチュエータ44は、運転状況に応じて、クランクシャフト11および吸気カムシャフト22の間の回転位相差を調整するようになっている。なお、図1では、回転位相差可変アクチュエータ44を取り外すことにより、吸気カムシャフトプーリ43が露出した状態を示している。
【0043】
排気カムシャフトプーリ45は、排気カムシャフト24の前端部に取り付けられている。
【0044】
タイミングベルト46は、クランクシャフトプーリ41と吸気カムシャフトプーリ43と排気カムシャフトプーリ45とに巻き掛けられている。タイミングベルト46によって、クランクシャフトプーリ41の回転が、吸気カムシャフトプーリ43および排気カムシャフトプーリ45に伝達される。
【0045】
クランクシャフト11の回転は、クランクシャフトプーリ41→タイミングベルト46→吸気カムシャフトプーリ43→吸気カムシャフト22→吸気カム25→吸気バルブ21の経路で伝達され、吸気ポートを開閉するようになっている。
【0046】
これと同時に、クランクシャフト11の回転が、クランクシャフトプーリ41→タイミングベルト46→排気カムシャフトプーリ45→排気カムシャフト24→排気カム26→排気バルブ23の経路で伝達され、排気ポートを開閉するようになっている。
【0047】
図4に示すように、タイミングベルト46は、ゴム製の歯付きベルトからなり、芯材となる心線51と、歯側を構成する歯側ゴム52と、背側を構成する背側ゴム53と、歯側ゴム52の表面に取り付けられた歯布54とを備えている。歯布54はナイロンおよびアラミド繊維からなる。
【0048】
歯側ゴム52により歯55が形成されている。歯側ゴム52および背側ゴム53には、外力を受けることにより発光する応力発光材料が含有されている。
【0049】
ここで、応力発光材料としては、緑色(波長500nm〜600nm)の発光を示すユウロピウム添加アルミン酸ストロンチウム(SAOE)が使用されている。粉末状のSAOEが歯側ゴム52および背側ゴム53に含有されている。
【0050】
図1に示すように、テンショナ47は、クランクシャフトプーリ41と吸気カムシャフトプーリ43との間でタイミングベルト46を背側から押圧するように配置されている。テンショナ47は、テンションローラ61とテンションばね62とを備えている。
【0051】
テンションばね62は、テンションローラ61にタイミングベルト46を押圧する付勢力を与えるようになっている。テンションローラ61は、タイミングベルト46の背側からタイミングベルト46を押圧して、タイミングベルト46に適切な張力を与えるようになっている。そして、テンションローラ61の押圧により、タイミングベルト46が吸気カムシャフトプーリ43、排気カムシャフトプーリ45およびクランクシャフトプーリ41から緩んで外れないようになっている。
【0052】
また、タイミングベルト46の回転方向は、図中矢印で示すように、クランクシャフトプーリ41からテンショナ47→吸気カムシャフトプーリ43→排気カムシャフトプーリ45→クランクシャフトプーリ41の方向になっている。
【0053】
図1および図3に示すように、カバー48は、エンジン本体6のエンジンブロック前端面6aに接するように設けられるとともに、タイミングベルト46の全体を覆って遮光するようになっている。カバー48は、透過性の無いプラスチック製で、カバー本体71と、光センサ49を保持する光センサ保持部72と、光センサ保持部72の近傍に設けられた遮光部73と、ガスケット74とを備えている。
【0054】
カバー本体71の周端縁は、ガスケット74を介してエンジンブロック前端面6aに接している。これにより、外光が、カバー本体71の周端縁とエンジンブロック前端面6aとの間からカバー48の内部に入り込まないようになっている。
【0055】
ガスケット74は、カバー本体71の周端縁によりエンジンブロック前端面6aに向けて押圧されている。これにより、カバー本体71の熱変形によりカバー本体71の周端縁がエンジンブロック前端面6aから多少離れても、ガスケット74が弾性変形することにより、カバー本体71の周端縁とエンジンブロック前端面6aとの間に隙間が生じないようになっている。
【0056】
光センサ保持部72は、テンショナ47を通過した直後のタイミングベルト46の歯側に対向する位置に設けられている。光センサ保持部72は筒状で、その奥部に光センサ49を入れて保持する。光センサ保持部72は、光センサ49の検出方向をタイミングベルト46の歯側に向けるようにして光センサ49を保持している。
【0057】
遮光部73は、タイミングベルト46から光センサ49への光路の領域を除き、光センサ保持部72の周囲の少なくとも一部を取り囲んで設けられる。ここでは、遮光部73は、光センサ49の背後に設けられた背板73aと、光センサ49と吸気カムシャフトプーリ43との間に設けられた側板73bとを備えるようにしている。
【0058】
光センサ49は、フォトダイオードからなるものとしている。この光センサ49は測光量としてタイミングベルト46の歯側の輝度(cd・m−2)を検出する。フォトダイオードは、pn接合もしくはpin構造を有する。このpn接合もしくはpin構造に十分なエネルギを持った光子が入射することにより、電子が励起されて電流(A)が発生するようになっている。この電流は後述するECU4に入力される。これにより、タイミングベルト46で発せられた光は、ECU4において電流として処理される。
【0059】
ECU4は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)と、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)および入出力インターフェース回路を備えている。
【0060】
ECU4は、光センサ49や、図示しないクランクセンサなどの各種のセンサに接続されている。ECU4のROMには、タイミングベルト46に発生した応力とその応力におけるタイミングベルト46の輝度との関係を示す応力−輝度マップ、タイミングベルト46に発生した応力とその応力でのタイミングベルト46の疲労寿命の寿命回転回数Nとの関係を示す応力−寿命回転回数マップ(図7参照)、タイミングベルト46の交換判断プログラムなどの各種の判断に必要なプログラムやデータが記憶されている。
【0061】
クランクポジションセンサは、クランクシャフト11の回転数(rpm)を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU4に出力するようになっている。また、ECU4は、予め設定したクランクシャフトプーリ41の歯数Tp(枚)と、タイミングベルト46の歯数Tb(枚)と、クランクポジションセンサから出力された検出信号が表すクランクシャフト11の回転数Nc(rpm)と、計測時間T(min)とから、タイミングベルト46の回転回数n(回転)=Nc×T×(Tp/Tb)を算出するようになっている。
【0062】
寿命−交換判断部90は、タイミングベルト46の測光値からタイミングベルト46の寿命と寿命に対する使用程度とを検出し、使用程度が所定の閾値を超えたときに、タイミングベルト46が交換時期に達したと判断する。
【0063】
図5に示すように、寿命−交換判断部90は、応力算出部91と、回転回数n計測部92と、寿命回転回数N検出部93と、疲労損傷n/N算出部94と、使用程度算出部95と、疲労損傷−寿命判定部96と、交換判断部97とを備えている。
【0064】
応力算出部91は、光センサ49で検出された輝度の測光値に基づいてタイミングベルト46の応力を算出するようになっている。応力算出部91は、図1に示す光センサ49に接続されている。
【0065】
回転回数n計測部92は、タイミングベルト46が同一の応力のままで連続して回転した回転回数n(回転)を計測するようになっている。
【0066】
寿命回転回数N検出部93は、タイミングベルト46がある応力を生じているときに、その応力での寿命回転回数N(回転)を算出して寿命を検出するようになっている。寿命回転回数N(回転)の算出は、図7に示す応力とタイミングベルト46の寿命回転回数Nとの関係に基づいて行われる。
【0067】
疲労損傷n/N算出部94は、タイミングベルト46の応力が変動するごとに、回転回数nと寿命回転回数Nとから、変動した各応力での疲労損傷n/Nを算出するようになっている。
【0068】
使用程度算出部95は、疲労損傷n/Nを累積して、タイミングベルト46の使用程度Σn/Nを算出するようになっている。
【0069】
疲労損傷−寿命判定部96は、使用程度Σn/Nが所定値、例えば0.8を超えたときに、タイミングベルト46が寿命に近いと判定するようになっている。
【0070】
交換判断部97は、疲労損傷−寿命判定部96によりタイミングベルト46が寿命に近いと判定されたときに、タイミングベルト46が交換時期に達したと判断するようになっている。
【0071】
図1に示すように、警告装置5は、ECU4に接続されている。警告装置5は、交換判断部97によりタイミングベルト46が交換時期に達したと判断された場合に、運転者にタイミングベルト46の交換を促す警告を与えるようになっている。警告装置5としては、例えば、運転席に設けられた警告ランプや警告ブザーなどを採用することができる。
【0072】
ここで、本実施の形態のクランクシャフトプーリ41と、吸気カムシャフトプーリ43と、排気カムシャフトプーリ45と、タイミングベルト46と、カバー48と、光センサ49と、ECU4とは、本発明に係る動力伝達装置を構成している。
【0073】
次に、本実施の形態における動力伝達装置1の動作について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0074】
なお、図6に示すフローチャートは、ECU4のCPUによって、RAMを作業領域として実行されるタイミングベルト46の交換判断プログラムの実行内容を表す。また、このプログラムではマイナー則を利用してタイミングベルト46の寿命および使用程度を算出し、使用程度に基づいて交換時期の判定を行っている。
【0075】
タイミングベルト46の交換判断プログラムの実行処理は、ECU4のCPUによって、イグニッションのオンからオフまでの間に予め定められた時間間隔で実行されるようになっている。ここでの時間間隔は、車種やエンジン3、タイミングベルト46の設定諸元によって適宜選択される。この時間間隔が長すぎると判断の精度が低下する虞があり、短すぎると処理が煩雑になることがあるので、これらの条件から時間間隔を適宜設定するようにする。
【0076】
タイミングベルト46の装着後に初めてエンジン3が始動されると(ステップS21)、タイミングベルト46の応力の変動回数を計測するカウンタmを0に設定する(ステップS22)。
【0077】
上述したステップS22は、タイミングベルト46の装着直後に1回だけ行う工程である。このため、タイミングベルト46を交換するまでは、次にエンジン3を始動したときにステップS22をスキップするようにする。
【0078】
エンジン3の始動により、クランクシャフト11の回転に伴ってタイミングベルト46が回転する。回転によってタイミングベルト46に張力が作用する。この張力により、タイミングベルト46に応力が発生する。この応力により、タイミングベルト46の歯側ゴム52および背側ゴム53に含有される応力発光材料に外力が作用して、応力発光材料が発光する。
【0079】
タイミングベルト46の歯側ゴム52および背側ゴム53から発せられた光は、輝度を弱めながら歯布54を透過する。歯布54を透過した光は、光センサ49により受光されて電流(A)の電気信号に変換される。光センサ49からの電気信号はECU4の応力算出部91に入力され、輝度の測光値として検出される(ステップS23)。なお、本フローチャートの以下の説明において、測光値の各種の処理は、実際にはECU4の中での電流の処理として行うものとしている。
【0080】
ECU4は、応力算出部91において、光センサ49で検出された輝度の測光値に基づいてタイミングベルト46の応力を算出する(ステップS24)。これは、ECU4に予め記憶しておいた輝度−応力マップに基づいて算出する。
【0081】
そして、ECU4が、回転回数n計測部92において、今回算出した応力(Pa)と直前に算出した応力(Pa)とが同じであるかを判断する(ステップS25)。今回算出した応力と直前に算出した応力とが異なる場合は(ステップS25;NO)、応力の変動回数が増えるので、ECU4が回転回数n計測部92において変動回数のカウンタmに1を加算する(ステップS26)。
【0082】
例えば、図8に示す例では、図中Aで示す計測時に、その時点で算出した応力Sと直前で算出した応力Sとは異なる。このような場合にカウンタmに1を加算して、m=1からm=2にしている。
【0083】
カウンタmに1を加算した後は回転回数nの計測は1から始めるので、ECU4が、回転回数n計測部92において回転回数nを1にする(ステップS27)。
【0084】
さらに、ECU4が、寿命回転回数N検出部93において、その時の応力における寿命回転回数Nを算出する(ステップS28)。これは、応力−寿命回転回数マップにより算出する。例えば、図7に示す例では、応力Sの場合の寿命回転回数Nは、同図に示すグラフよりNであると算出される。
【0085】
一方、ステップS25において、今回算出した応力と直前に算出した応力とが同じである場合は(ステップS25;YES)、回転回数nが1回増えるので、ECU4が回転回数nに1を加算する(ステップS29)。
【0086】
例えば、図8に示す例では、図中Bで示す計測時に、その時点で算出した応力Sと直前で算出した応力Sとは同じである。このような場合に回転回数nに1を加算して、n=2からn=3にしている。
【0087】
ステップS28において寿命回転回数Nを算出した後、あるいはステップS29において回転回数nに1を加算した後は、ECU4が、疲労損傷n/N算出部94において、回転回数nと寿命回転回数Nとから、変動した応力ごとの疲労損傷n/Nを算出する。
【0088】
さらに、ECU4が、使用程度算出部95において疲労損傷n/Nの計算結果を累積し、応力に基づく使用程度Σn/Nを数式1により算出する(ステップS30)。
【数1】

【0089】
例えば、図8に示す例では、m=1のときに寿命回転回数Nで回転回数n=3、m=2のときに寿命回転回数Nで回転回数n=1、m=3のときに寿命回転回数Nで回転回数n=1、m=4のときに寿命回転回数Nで回転回数n=4となる。したがって、Σn/N=(n/N)+(n/N)+(n/N)+(n/N)=(3/N)+(1/N)+(1/N)+(4/N)となる。
【0090】
そして、ECU4が、疲労損傷−寿命判定部96において、使用程度Σn/Nが所定値を超えたかを判断する(ステップS30)。ここで、タイミングベルト46の使用程度Σn/Nが1である場合は、タイミングベルト46は寿命に達していると判断されるので、疲労損傷−寿命判定部96において使用程度Σn/Nと比較する所定値としては安全率を含めて例えば0.8とする。
【0091】
ECU4が、疲労損傷−寿命判定部96においてタイミングベルト46の使用程度Σn/Nが所定値を超えたと判断した場合は(ステップS30;NO)、ECU4は疲労損傷−寿命判定部96においてタイミングベルト46が寿命に近いと判定する。
【0092】
疲労損傷−寿命判定部96においてタイミングベルト46が寿命に近いと判定されたことにより、ECU4が交換判断部97においてタイミングベルト46が交換時期に達したと判断する。これにより、警告装置5がタイミングベルト46の交換を促す警告を発する(ステップS31)。
【0093】
一方、ECU4が、疲労損傷−寿命判定部96においてタイミングベルト46の使用程度Σn/Nが所定値以下であると判断した場合は(ステップS30;YES)、タイミングベルト46は交換する程には劣化していないと判断して、再度、光センサ49およびECU4により、タイミングベルト46の輝度の測定が行われる(ステップS23)。
【0094】
以上のように、本実施の形態に係る動力伝達装置1によれば、タイミングベルト46の発光量に基づいて応力を算出し、その応力からタイミングベルト46の寿命と使用程度Σn/Nを算出する。そして、使用程度Σn/Nに基づいてタイミングベルト46の寿命が近いか否かを判定するので、より高精度にタイミングベルト46の交換時期を検出することができる。
【0095】
このため、タイミングベルト46の状態を直接検出しているので、従来のようにタイミングベルト46の状態を測定することなくエンジン3の回転数および運転時間に基づいてタイミングベルト46の交換時期を判断する場合に比べ、タイミングベルト46の交換時期の判断の精度を高くすることができる。
【0096】
特に、変動する応力に応じて寿命回転回数Nを変化させて応力ごとに疲労損傷n/Nを算出して累積して使用程度Σn/Nを算出しているので、タイミングベルト46の交換時期をより高精度に検出することができる。
【0097】
また、光センサ49が、テンショナ47を通過した直後のタイミングベルト46の歯側に対向する位置に設けられている。タイミングベルト46はテンショナ47により背側を内側にして曲げられるので、テンショナ47を通過した直後は歯55が最も欠けやすい位置となる。このため、タイミングベルト46の歯55が最も欠けやすい位置で輝度が検出されるようになるので、タイミングベルト46の劣化の検出精度を高めることができる。
【0098】
また、光センサ49は筒状の光センサ保持部72の奥部に内蔵されているので、光センサ49が外光を誤検出することを抑制することができる。さらに、光センサ49の周囲には遮光部73が設けられているので、光センサ49が外光を誤検出することをより抑制することができる。
【0099】
また、光センサ49がカバー本体71に一体化された光センサ保持部72により保持されているので、カバー48がエンジン本体6の熱により変形しても光センサ49はカバー48の変動に伴って変動するようになる。このため、光センサ49と遮光部73との相対位置はほとんど変わらない。
【0100】
これにより、カバー48の変形によりエンジンブロック前端面6aとカバー48との間に隙間が生じて隙間からカバー48の内部に外光が侵入しても、光センサ49は遮光部73により遮光されているので、タイミングベルト46の輝度の検出精度の低下を抑制することができる。
【0101】
上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、図1に示すように、光センサ49はテンショナ47を通過した直後のタイミングベルト46の歯側に対向する位置に配置されているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、例えば光センサ49は他の位置に配置されるようにできる。
【0102】
例えば、テンショナ47と吸気カムシャフトプーリ43との間の吸気カムシャフトプーリ43の近傍に光センサ31を設けるようにしたり、または、吸気カムシャフトプーリ43と排気カムシャフトプーリ45との間に光センサ32を設けるようにしたり、あるいは、排気カムシャフトプーリ45とクランクシャフトプーリ41との間に光センサ33を設けるようにすることができる。
【0103】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、光センサ49はカバー48の光センサ保持部72に保持されているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、例えば光センサ49はエンジンブロック前端面6aの面上に固定されるようにできる。
【0104】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、光センサ49はタイミングベルト46の歯側を向いて配置されているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、例えば光センサ49はタイミングベルト46の背側を向いて配置されるようにできる。
【0105】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、タイミングベルト46の歯側ゴム52および背側ゴム53の両方に応力発光材料が含有されているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、応力発光材料は少なくとも光センサ49が輝度を検出する側のゴムに含有されていればよい。
【0106】
すなわち、例えば、光センサ49がタイミングベルト46の歯側から輝度を検出する場合は、応力発光材料は少なくとも歯側ゴム52に含有されていればよく、また、光センサ49がタイミングベルト46の背側から輝度を検出する場合は、応力発光材料は少なくとも背側ゴム53に含有されていればよい。
【0107】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、応力発光材料としてユウロピウム添加アルミン酸ストロンチウムを使用しているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、応力発光材料としてマンガンを発光中心として添加した硫化亜鉛(ZnS:Mn)を使用することができる。この場合、タイミングベルト46は黄橙色に発光するようになる。
【0108】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、ベルトとして歯付きベルトを使用しているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、平ベルトやVベルトなど、他の種類のベルトとすることができる。
【0109】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、図3に示すように、カバー本体71の周端縁とエンジンブロック前端面6aとの間にガスケット74を設けているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、ガスケット74を利用せずに、例えばエンジンブロック前端面6aとカバー本体71の周端縁とが所謂インロー構造として組み合うようにできる。
【0110】
この場合、例えば、エンジンブロック前端面6aにカバー本体71の熱変形量よりも深い溝を形成し、カバー本体71の周端縁を溝の底部までを挿入するようにできる。これにより、カバー本体71が熱変形を生じてもカバー本体71の周端縁は溝から出ないので、カバー48の内部に外光が入り込むことを防止できる。
【0111】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、エンジン本体6の前部にカバー48を設けているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、例えば、エンジンルーム内が十分に遮光されるとともにタイミングベルト46の輝度が光センサ49により十分に検出可能である場合はカバー48を省略することができる。
【0112】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、光センサ49としてフォトダイオードを用いているが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、例えば、その他の光起電力効果を利用した光センサを用いることができる。光起電力効果を利用した光センサとしては、例えば、フォトトランジスタ、フォトIC、太陽電池などが挙げられる。
【0113】
また、光起電力効果を利用した光センサにも限られず、CdS(硫化カドミウム)セル、CdSe(セレン化カドミウム)セル、PbS(硫化鉛)セルなどの光導電効果を利用した光センサや、光導管、光電子倍増管(フォトマル)などの光電子放出効果を利用した光センサを用いてもよい。
【0114】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、エンジン3として直列4気筒のエンジンを採用したが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、例えば、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジン、V型12気筒エンジン、水平対向6気筒エンジンなどの種々の型式のエンジンを採用することができる。
【0115】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、エンジン3としてガソリンを燃料とするエンジンを採用したが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、例えば、軽油などの炭化水素系の燃料や、エタノールなどのアルコールとガソリンとを混合したアルコール燃料を燃料とするエンジンとすることができる。
【0116】
また、上述した本実施の形態の動力伝達装置1においては、動力伝達装置1を自動車2のエンジン3に使用したが、本発明に係る動力伝達装置においては、これに限られず、駆動側プーリおよび従動側プーリに掛け回されたベルトにより駆動側プーリから従動側プーリに動力を伝達する動力伝達装置の全般に適用することができる。
【0117】
以上説明したように、本発明に係る動力伝達装置は、駆動側プーリおよび従動側プーリに掛け回されたベルトの交換時期を検出する場合に好適な動力伝達装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0118】
1 動力伝達装置
2 自動車
3 エンジン(内燃機関)
4 ECU(交換時期判断部、寿命−交換判断部、応力算出部、回転回数n計測部、寿命回転回数N検出部、疲労損傷n/N算出部、使用程度算出部、疲労損傷−寿命判定部、交換判断部)
5 警告装置
6 エンジン本体
11 クランクシャフト(駆動軸)
22 吸気カムシャフト(従動軸、カムシャフト)
24 排気カムシャフト(従動軸、カムシャフト)
31 光センサ
32 光センサ
33 光センサ
41 クランクシャフトプーリ(駆動側プーリ)
43 吸気カムシャフトプーリ(従動側プーリ)
45 排気カムシャフトプーリ(従動側プーリ)
46 タイミングベルト(ベルト)
47 テンショナ
48 カバー
49 光センサ
54 歯布
72 光センサ保持部
73 遮光部
90 寿命−交換判断部
91 応力算出部
92 回転回数n計測部
93 寿命回転回数N検出部
94 疲労損傷n/N算出部
95 使用程度算出部
96 疲労損傷−寿命判定部
97 交換判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に設けられた駆動側プーリと、従動軸に設けられた従動側プーリと、前記駆動側プーリおよび前記従動側プーリに掛け回されたベルトとを備えた動力伝達装置において、
前記ベルトは、外力を受けることにより発光する応力発光材料を含有し、
前記ベルトに対向して配置されるとともに前記ベルトの測光を行う光センサと、
前記光センサで検出された測光値に基づいて前記ベルトの寿命を算出し、前記寿命に基づいて前記ベルトが交換時期に達したか否かを判断する交換時期判断部とを備えることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記交換時期判断部は、前記測光値から前記ベルトの寿命と前記寿命に対する使用程度とを算出し、前記使用程度が所定の閾値を超えたときに、前記ベルトが前記交換時期に達したと判断する寿命−交換判断部を備えることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記寿命−交換判断部は、
前記光センサで検出された前記測光値に基づいて前記ベルトの応力を算出する応力算出部と、
前記ベルトが同一の前記応力で回転した回転回数nを計測する回転回数n計測部と、
前記ベルトの前記応力での寿命回転回数Nを算出して前記寿命を検出する寿命回転回数N検出部と、
前記ベルトの前記応力が変動するごとに、前記回転回数nと前記寿命回転回数Nとから前記応力での疲労損傷n/Nを算出する疲労損傷n/N算出部と、
前記疲労損傷n/Nを累積して前記使用程度を算出する使用程度算出部と、
前記使用程度が所定値を超えたときに、前記ベルトが前記寿命に近いと判定する疲労損傷−寿命判定部と、
前記疲労損傷−寿命判定部により前記ベルトが寿命に近いと判定されたときに、前記ベルトが前記交換時期に達したと判断する交換判断部とを備えることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記駆動側プーリと前記従動側プーリとの間に、前記ベルトを背側から押圧するテンショナを備えるとともに、
前記光センサは、前記テンショナを通過した直後の前記タイミングベルトに対向する位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記ベルトの全体を覆って遮光するカバーを備えるとともに、
前記カバーは、前記光センサを前記ベルトに対向させて保持する光センサ保持部と、前記ベルトから前記光センサへの光路の領域を除き前記光センサ保持部の周囲の少なくとも一部を取り囲んで設けられる遮光部とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記駆動軸は内燃機関のクランクシャフトであり、前記従動軸はカムシャフトであり、前記ベルトはタイミングベルトであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202538(P2012−202538A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70430(P2011−70430)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】