説明

動力工具

【課題】サイクロン集塵式のダストボックスを備えた卓上丸鋸盤において、従来単一のサイクロンユニットにより集塵する構成であったので、そのコンパクト性を確保しつつサイクロンユニットの集塵効率を高めることが困難であった。本発明では、ダストボックスのコンパクト性を損なうことなくサイクロンユニットの集塵効率をより高めることを目的とする。
【解決手段】ボックス本体31に複数のサイクロンユニット32,32を並列配置して、ボックス本体31内の集塵風を分岐してそれぞれのサイクロンユニット32において粉塵を分離、集塵する構成とする。これにより、ダストボックス30の特に高さ方向のコンパクト性を損なうことなく、各サイクロンユニット32の寸法バランスを理想的に設定して、その集塵効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばスライドマルノコと称される卓上丸鋸盤あるいはバンドソー等の、加工により粉塵を発生させる動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
卓上丸鋸盤は、切断材を載置するテーブルと、このテーブルに設けた本体支持部を介して上下に移動操作可能に設けられた本体部を備えた切断工具で、本体部に電動モータで回転する円形の鋸刃が備えられている。テーブル上に切断材を位置決め固定した状態で、本体部を下動させて回転する鋸刃を切断材に切り込むことにより切断加工を行うことができる。この種の切断工具には、切断加工により発生する切断粉等の粉塵を集塵するために、箱体をなすダストボックス又は袋体をなすダストバッグが備え付けられている。通常これらは、鋸刃の上側ほぼ半周の範囲を覆うブレードケースの後部に接続されている。鋸刃の回転により切断加工がなされると、切断部位から切断粉等の粉塵が上方のブレードケース内へ巻き上げられる。巻き上げられた粉塵は、ブレードケースの内面に沿ってその後部側へ吹き飛ばされてダストボックス内に集塵される。発生した粉塵がダストボックス内に集塵されることにより、粉塵の周囲への飛散が防止されて良好な作業環境が維持される。
従来よりこのダストボックスやダストバックについては、その集塵効率をより高める等の目的で様々な工夫がなされている。例えば、箱体をなすダストボックスについては、内部で集塵風(切断粉等の粉塵を含む風、以下同じ)の旋回流を発生させ、これにより発生する遠心力を利用して粉塵を集塵風の流れから分離するサイクロンユニットを備えたものが公知になっている。このサイクロンユニット付きのダストボックスに関する技術が下記の特許文献に開示されている。
これらに開示されたダストボックスによれば、サイクロンユニットは、集塵用の外筒と排気用の内筒を主体とするもので、外筒はその中心からオフセットして設けた吸気口を介してボックス本体の後部に縦向きに取り付けられており、内筒は外筒の中心に沿って同軸に配置されている。ボックス本体内から接続口を経て外筒内に吹き込まれた粉塵を含む集塵風の流れは外筒の内面に沿って内筒を中心とする旋回流となり、これにより発生する遠心力により粉塵は外筒の内面に沿って集塵された後、下方の排出口から排出される。こうして切断粉等の粉塵が分離された風は、内筒の下部からその内周側を経て上部の排気口から外部に排気される。
このようにボックス本体内に集塵風を流入させた後、さらに遠心分離式のサイクロンユニットにより粉塵を集塵風から分離することにより、より一層効率のよい集塵を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−198826号公報
【特許文献2】特開2006−88539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のサイクロンユニットを備えたダストボックスについてもさらに改良を施す必要があった。特に、上記従来のサイクロンユニットでは、外筒内での粉塵の分離性能をより高めることによりボックス本体内の圧力上昇を抑制し、これによりボックス本体内への集塵風の流入を促進してその集塵効率を一層高める必要があった。
本発明は、係る従来の問題に鑑みてなされたもので、サイクロンユニットの粉塵分離効率をより高めてダストボックスの集塵効率を一層高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、下記の発明によって解決される。
第1の発明は、切断材を載置するテーブルと、テーブルの上方において上下に移動操作可能に設けられた工具本体部を備え、工具本体部が電動モータにより回転する鋸刃を備えた切断工具であって、工具本体部は、鋸刃を覆うブレードケースと、ブレードケース内の粉塵を集塵するためのダストボックスを備えており、ダストボックスは、ボックス本体にオフセット接続された外筒と、この外筒の内側に支持された内筒を備え、外筒の内面に沿った集塵風の旋回流により発生する遠心力により集塵風から粉塵を分離するサイクロンユニットを複数備えた切断工具である。
第1の発明によれば、ボックス本体内に吹き込まれた集塵風が複数のサイクロンユニットに分岐して流入し、各サイクロンユニットにおいて集塵風から粉塵が遠心分離される。このため、従来のように単一のサイクロンユニットによる場合よりも、効率よく集塵風から粉塵を遠心分離することができ、これにより当該ダストボックスの集塵効率を高めることができる。
また、複数のサイクロンユニットを備えることにより、各サイクロンユニットの小型化を図りつつ、外筒と内筒の軸方向長さ及び径について理想的な寸法バランスを採用することができることから、ダストボックスひいては卓上丸鋸盤の小型化を図りつつ、当該ダストボックスの集塵効率をより一層高めることができる。
第2の発明は、第1の発明において、ボックス本体の左右両側部にサイクロンユニットを備えたデュアルサイクロン式の切断工具である。
第2の発明によれば、ボックス本体内に吹き込んだ集塵風が左右に配置された2つのサイクロンユニット内に分岐して吹き込まれ、この左右両サイクロンユニットにおいてそれぞれ集塵風から粉塵が遠心分離される。このため、単一のサイクロンユニットによる場合に比して粉塵の遠心分離がより効率よくなされ、これにより当該ダストボックスの集塵効率を高めることができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、複数のサイクロンユニットがボックス本体に対してアッセンブリ化された切断工具である。
第3の発明によれば、複数のサイクロンユニットを1つのアッセンブリとして取り扱うことができるので、当該ダストボックスの取り扱い性及びボックス本体に対するその組み付け性を高めることができる。
第4の発明は、第1〜第3の何れか1つの発明において、ボックス本体は、複数のサイクロンユニットに向けて集塵風を分岐する集塵風分岐部を備えており、集塵風分岐部の、複数のサイクロンユニットに対応して設けられた分岐面が円弧形状を有する切断工具である。
第4の発明によれば、ダストボックス内に吹き込んだ集塵風が円弧形状を有する分岐面に吹き当てられて効率よく複数のサイクロンユニットに向けて分岐され、この点でも当該ダストボックスの集塵効率が高められる。
第5の発明は、第4の発明において、ボックス本体の左右両側部にサイクロンユニットを備え、この左右両サイクロンユニットの外筒に設けられた、ボックス本体に対するオフセット接続用の接続口が集塵風分岐部を介して相互に接続されて当該左右のサイクロンユニットがアッセンブリ化された切断工具である。
第5の発明によれば、左右2つのサイクロンユニットが集塵風分岐部を介して相互に接続されてアッセンブリ化されており、これによりその取り扱い性及びボックス本体に対する組み付け性が高められる。
第6の発明は、加工により粉塵を発生させる動力工具であって、前記粉塵を集塵するためのダストボックスを備えており、該ダストボックスは、ボックス本体にオフセット接続された外筒と、該外筒の内側に支持された内筒を備え、前記外筒の内面に沿った集塵風の旋回流により発生する遠心力により前記集塵風から粉塵を分離するサイクロンユニットを複数備えた動力工具である。
第6の発明によれば、加工により発生した粉塵が、ダストボックスに集塵され、かつ複数のサイクロンユニットに分岐されて粉塵がより効率よく集塵されることから、従来のシングルサイクロン式のダストボックスに比してその集塵効率を高めることができる。また、第1の発明による場合と同様、サイクロンユニットのコンパクト性を損なうことなく外筒と内筒の軸方向長さ及び径について理想的な寸法バランスを採用することによりその集塵効率を高めることができる。
上記複数サイクロン式のダストボックスは、例えば前記した卓上丸鋸盤の他、携帯マルノコ、チップソーカッタ、ポータブルバンドソー、ディスクグラインダ、サンダあるいはポリッシャ等の手持ち式若しくは据え付け型の動力工具であって、切断、切削、研削等の各種加工により粉塵を発生する動力工具のダストボックスに広く適用することができる
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施形態に係る卓上丸鋸盤の全体側面図である。本図は、工具本体部が上動端位置かつスライド始端位置に戻された初期状態を示している。
【図2】本実施形態に係る卓上丸鋸盤の全体斜視図である。本図は、使用者側において左側斜め前側から見た状態を示している。工具本体部は図1と同じく上動端位置かつスライド始端位置に戻された状態で示されている。
【図3】本実施形態に係る卓上丸鋸盤の全体斜視図である。本図は、使用者側とは反対側において左斜め後方から見た状態を示している。工具本体部は図1と同じく上動端位置かつスライド始端位置に戻された状態で示されている。
【図4】本実施形態に係る卓上丸鋸盤の全体側面図である。本図は、工具本体部がスライド始端位置において下動端位置まで下動操作された状態を示している。
【図5】本実施形態に係るダストボックスの分解斜視図である。本図は、ボックス本体からアッセンブリ化された2つのサイクロンユニットを取り外した状態を示している。また、本図は、使用者側から見た状態を示している。
【図6】本実施形態に係るダストボックスの分解斜視図である。本図は、ボックス本体及びアッセンブリ化されたサイクロンユニットもそれぞれ分解された状態で示されている。
【図7】分解状態のダストボックスを図6中矢印(VII)方向から見た前面図である。
【図8】分解状態のダストボックスを図6中矢印(VIII)方向から見た後面図である。
【図9】図5中(IX)-(IX)線断面矢視図であって、集塵風分岐部を介してアッセンブリ化された2つのサイクロンユニットの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1〜図3に示すように本実施形態では動力工具の一例として卓上丸鋸盤1を例示する。この卓上丸鋸盤1は、いわゆるスライドマルノコと称される卓上型の丸鋸盤(切断工具)で、切断材Wを載置するテーブル2と、このテーブル2を水平方向に回転可能に支持するベース3と、テーブル2の後部に設けられた本体支持部10と、この本体支持部10を介してテーブル2の上方に支持された工具本体部20を備えている。図1において、当該卓上丸鋸盤1の右側に使用者が位置する。以下の説明において、使用者側を前側とする。
ベース3の左右側部には固定台座部3a,3aが設けられている。この左右の固定台座部3a,3a間に跨った状態で切断材Wがテーブル2の上面との間に僅かな隙間をおいた状態で固定される。
テーブル2の前部には、使用者が把持するグリップ部4が設けられている。このグリップ部4を把持してテーブル2を切断材Wに対して左右方向に回転させることにより、この切断材Wをいわゆる斜め切り加工することができる。
本体支持部10は、工具本体部20をテーブル2の上方において上下に傾動可能かつ前後にスライド可能に支持する機能を有している。本体支持部10は、相互に平行な左右一対の下スライドバー11,11と、支持脚部12と、相互に平行な左右一対の上スライドバー13,13を備えている。左右の下スライドバー11,11の後端部は、支持脚部12の下部に固定されている。両下スライドバー11,11は、テーブル2の後部に前後方向にスライド可能に支持されている。左右の上スライドバー13,13は、支持脚部12の上部に前後にスライド可能に支持されている。左右の上スライドバー13,13の前端部に本体支持ブラケット14が取り付けられている。この本体支持ブラケット14に設けた上下傾動支軸15を介して左右の上スライドバー13,13の前端に工具本体部20が上下に傾動操作可能に支持されている。
【0008】
工具本体部20は、電動モータ21により回転する円形の鋸刃22を備えている。鋸刃22の上側半周の範囲は、ブレードケース23で覆われている。ブレードケース23の後部が上記上下傾動支軸15を介して上スライドバー13,13の前部に支持されている。ブレードケース23から下方へ突き出された鋸刃22の下側半周の範囲は、可動カバー24で覆われている。この可動カバー24は、図示省略したリンクアームにより当該工具本体部20の下動により開かれ、上動により閉じられる。図4に示すように工具本体部20を下動させると、この可動カバー24は図において反時計回りに回動して開かれ、これにより露出された鋸刃22の下部が切断材Wに切り込まれる。
ブレードケース23の背面側(使用者から見て右側方)には、使用者が把持するループ形のハンドル部25が設けられている。このハンドル部25の内側にスイッチレバー26が設けられている。ハンドル部25を把持した手の指先でこのスイッチレバー26を引き操作すると電動モータ21が起動して鋸刃22が回転する。
このハンドル部25のさらに右側方には、照明具27が備え付けられている。この照明具27によって切断部位及びその周辺が明るく照らされて、暗所での切断作業の便宜が図られる。
ハンドル部25の後部には、同じくループ形のキャリングハンドル28が設けられている。このキャリングハンドル28を用いることにより、当該卓上丸鋸盤1をバランス良く持ち運ぶことができる。
【0009】
ブレードケース23の後部には、円筒形状の集塵口29が設けられている。この集塵口29に本実施形態のダストボックス30が接続されている。このダストボックス30に、切断作業により切断部位からブレードケース23内に吹き上げられた切断粉等の粉塵が集塵される。鋸刃22の回転により切断部位から切断粉等の粉塵がブレードケース23内に吹き上げられるとともに、ブレードケース23内には鋸刃22の回転方向と同じ方向の風の流れが発生し、この風に乗ってブレードケース23内に吹き上げられた粉塵等がブレードケース23の後部側であって集塵口29に向けて吹き飛ばされる。
鋸刃22の回転によって発生するブレードケース23内の粉塵を含む風(集塵風)は、集塵口29を経てダストボックス30のボックス本体31内に吹き込まれる。ダストボックス30の詳細が図5以下に示されている。ダストボックス30は、1つのボックス本体31と2つのサイクロンユニット32,32を備えている。
ボックス本体31は、左右の半割り構造を備えている。ボックス本体31の前部に、接続口33が設けられている。この接続口33は、ボックス本体31に対して上下に傾動可能に設けられている。この接続口33がブレードケース23側の集塵口29に接続されている。このため、ダストボックス30はブレードケース23に対して一定の角度範囲で上下に傾動可能に支持されている。集塵口29及び接続口33を経て、ブレードケース23内の集塵風がボックス本体31内に吹き込まれる。
ボックス本体31は、中央の主集塵室31Mと、この主集塵室31Mの左右両側の補助集塵室31S,31Sを備えている。図6に示すように主集塵室31Mと左右の補助集塵室31S,31Sとの間は、それぞれ前後方向のほぼ中程から後ろ側の範囲が壁部31aによって仕切られている。
主集塵室31Mの前部に接続口33が設けられている。ブレードケース23内の集塵風は、接続口33を経て主としてこの主集塵室31M内を経てその後部側に流れる。
ボックス本体31の下面には、主集塵室31Mと左右の補助集塵室31S,31Sに跨る大きな開口の排出口35が設けられている。この排出口35は、排出蓋34によって閉じられている。ボックス本体31の後部には、ロックレバー36が設けられている。このロックレバー36によって排出蓋34が排出口35を閉じた状態にロックされる。ロックレバー36を後方へ回動させて排出蓋34の後部に対する係合状態を解除すると、蓋34を開放することができる。排出蓋34を開放することにより、ボックス本体31内に堆積した粉塵を一度に廃棄することができる。
【0010】
ボックス本体31の後部側の左右両側部にサイクロンユニット32,32が併設されている。左右のサイクロンユニット32,32は左右対称であって同様の構成を備えている。サイクロンユニット32,32の詳細が図9に示されている。サイクロンユニット32は、それぞれ円筒形状を有する外筒32aと内筒32bを備えている。より大径の外筒32aの内側により小径の内筒32bがほぼ同軸に支持されている。外筒32aと内筒32bの径は概ね2:1の比率に設定されている。
内筒32bの上部には外筒キャップ32cが取り付けられている。この外筒キャップ32cが外筒32aの上部に取り付けられて、当該外筒32aの上部は閉じられている。また、この外筒キャップ32cを介して内筒32bが外筒32aの中心に沿って支持されている。
外筒32aの側部には、矩形の接続口32dが設けられている。接続口32dは、後述する集塵風分岐部40を介してボックス本体31に接続されている。接続口32dは、外筒32aの中心を外れたオフセット位置に設けられている。この接続口32dを経て外筒32a内に、ボックス本体31から集塵風が流入する。図9において白抜きの矢印で示すように中心から外れたオフセット位置に設けられた接続口32dを経て外筒32a内に流入した集塵風は、その内周側であって内筒32bの周囲を旋回する旋回流となる。この旋回流により発生する遠心力により粉塵が外筒32aの内周面に移動して集塵風から分離される。集塵風から分離された粉塵は、その自重により当該外筒32aに内面に沿って下方へ落下する。
外筒32aの下部には排出口32eが設けられている。外筒32aの排出口32eは、補助集塵室31Sの上面に設けた接続口に接続されている。このため、外筒32aの内面に沿って落下した粉塵は、その自重により排出口32eを経て補助集塵室31S内に排出される。外筒32a内の旋回流において、粉塵が分離された清浄な風は、内筒32bの下部から当該内筒32bの内周側を経てその上部から排気される。
【0011】
集塵風分岐部40は、左右両側部に接続口40a,40aを有する中空ブロック体形を有している。この左右の接続口40a,40aにそれぞれサイクロンユニット32の接続口32dが接続されている。図5に示すように、左右のサイクロンユニット32,32は、この集塵風分岐部40を介して相互に接合されて1つにアッセンブリ化されている。
集塵風分岐部40の前面には、矩形の吸気窓40bが形成されている。吸気窓40bの奥部には、左右一対の分岐面40c,40cが設けられている。図9に示すように両分岐面40c,40cは、それぞれ半円弧形状に後方へ膨らむ方向に湾曲している。
ボックス本体31の後部(主集塵室31Mの後部)には、集塵風分岐部40を差し込むための差し込み口31bが上方から切り込む状態に設けられている。この差し込み口31bに対して集塵風分岐部40を上から差し込んで取り付けると、その吸気窓40bが主集塵室31Mの後部においてボックス本体31の前方に向けられた状態となる。
このため、図9中白抜きの矢印で示すように、接続口33を経てブレードケース23内からボックス本体31内に吹き込んだ集塵風は後方(図9では上方)へ流れて集塵風分岐部40に吹き当てられる。集塵風は集塵風分岐部40に吹き当てられると、吸気窓40bを経てその内部に吹き込んで左右の分岐面40c,40cに吹き当てられる。分岐面40c,40cはそれぞれ円弧形状に湾曲していることから、集塵風は滑らかに左右に分岐されて左右の接続口40a,40aに向けて案内される。左右に分岐された集塵風は、それぞれサイクロンユニット32の外筒32aにおいて旋回流となり、これにより発生する遠心力により粉塵が効率よく集塵される。
集塵風分岐部40を差し込み口31bに差し込んだ状態で、当該差し込み口31bに固定蓋41を嵌め込むことにより、集塵風分岐部40がボックス本体31に固定され、これによりアッセンブリ化された左右のサイクロンユニット32,32がそれぞれ主集塵室31Mの左右両側部であって補助集塵室31S,31Sの上方に保持される。左右のサイクロンユニット32,32は、それぞれその排出口32eを補助集塵室31Sの上面に設けた接続口に接続した状態で、主集塵室31Mの側部にビス止めされることにより当該ボックス本体31に対して固定される。
【0012】
以上のように構成した本実施形態の卓上丸鋸盤1によれば、鋸刃22の回転により発生した切断粉等の粉塵は切断部位から上方へ吹き上げられ、そのまま集塵風となってブレードケース23内を後方へ吹き流される。ブレードケース23の後方へ流れた集塵風は、集塵口29及び接続口33を経てダストボックス30のボックス本体31内に吹き込まれる。ボックス本体31内に吹き込んだ集塵風は、左右2つのサイクロンユニット32,32に分岐されて集塵されることから、従来1つのサイクロンユニットによる場合に比して当該ダストボックス30の集塵効率をより一層高めることができる。
しかも、ボックス本体31内に吹き込んだ集塵風は、そのまま後方へ流れて集塵風分岐部40に吹き当てられる。集塵風分岐部40に吹き当てられた集塵風は、円弧形状をなす左右一対の分岐面40c,40cによって滑らかに左右に分岐されてそれぞれサイクロンユニット32に案内される。このように円弧形状の分岐面40c,40cによって集塵風がスムーズに分岐されることから、ボックス本体31内の風圧の上昇を抑制して当該ボックス本体31内への集塵風の流入を促進することができ、この点でも当該ダストボックス30の集塵効率を高めることができる。
また、本実施形態の卓上丸鋸盤1によれば、左右2つのサイクロンユニット32,32が集塵分岐部40を介して相互にアッセンブリ化されている。このため、当該2つのサイクロンユニット32,32の取り扱い性及びボックス本体31に対する組み付け性を高めることができる。
さらに、2つのサイクロンユニット32,32を備えることにより、各サイクロンユニット32の小型化を図ることができ、これによりダストボックス30ひいては卓上丸鋸盤1の小型化を図ることができる。
特に、旋回流により発生する遠心力により粉塵を分離するサイクロン式の集塵機では、その十分な分離機能を確保する必要上、一般的には外筒のサイズについてその軸方向の長さを径の概ね3倍程度に設定する必要がある。しかしながら、十分な分離機能を確保するために長い外筒を用いれば、ダストボックスの高さが大きくなってそのコンパクト性が損なわれるため、外筒ひいてはサイクロンユニットの大型化には限界があり、その結果従来外筒と内筒の軸方向長さ及び径について寸法バランスが悪く、排気に粉塵が混入しやすい等の問題があった。
この点、本実施形態によれば、2つ(複数)のサイクロンユニット32,32を並列使用することにより外筒32aと内筒32bの軸方向長さ及び径について理想的な寸法バランスを設定することにより、当該ダストボックス30の特に高さ方向(各サイクロンユニット32における外筒32aの軸方向長さ)のコンパクト化を図りつつ、その集塵効率を一層高めることができる。
【0013】
以上説明した実施形態には種々変更を加えて実施することができる。例えば、集塵風分岐部40について、円弧形状の分岐面40c,40cを設ける構成を例示したが、単に平坦な傾斜面を分岐面としてもよい。
また、集塵風分岐部40の分岐面40c,40cを省略し、あるいは集塵風分岐部40そのものを省略して、各サイクロンユニット32をボックス本体31に直接接続する構成としてもよい。
さらに、2つのサイクロンユニット32,32を備えるダストボックス30を例示したが、3つ以上のサイクロンユニットを備える構成としてもよい。
また、鋸刃22の回転により発生する集塵風の流れを利用して粉塵をボックス本体31内に導くダストボックス30を例示したが、これに限らず電動モータにより回転する集塵ファンによって粉塵を強制的にボックス本体内に集塵する形態のダストボックスに適用することもできる。
さらに、動力工具として卓上丸鋸盤1を例示したが、携帯マルノコ、チップソーカッタ、ポータブルバンドソー、ディスクグラインダ、サンダあるいはポリッシャ等の手持ち式又は据え付け型の動力工具であって、切断、切削、研削等の各種加工により粉塵を発生する動力工具のダストボックスに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0014】
W…切断材
1…卓上丸鋸盤
2…テーブル
3…ベース、3a…固定台座部
4…グリップ部
10…本体支持部
11…下スライドバー
12…支持脚部
13…上スライドバー
14…本体支持ブラケット
15…上下傾動支軸
20…工具本体部
21…電動モータ
22…鋸刃
23…ブレードケース
24…可動カバー
25…ハンドル部
26…スイッチレバー
27…照明具
28…キャリングハンドル
29…集塵口
30…ダストボックス
31…ボックス本体
31M…主集塵室、31S…補助集塵室
31a…壁部、31b…差し込み口
32…サイクロンユニット
32a…外筒、32b…内筒、32c…外筒キャップ、32d…接続口、32e…排出口
33…接続口
34…排出蓋
35…排出口
36…ロックレバー
40…集塵風分岐部
41…固定蓋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断材を載置するテーブルと、該テーブルの上方において上下に移動操作可能に設けられた工具本体部を備え、該工具本体部が電動モータにより回転する鋸刃を備えた切断工具であって、
前記工具本体部は、前記鋸刃を覆うブレードケースと、該ブレードケース内の粉塵を集塵するためのダストボックスを備えており、
該ダストボックスは、ボックス本体にオフセット接続された外筒と、該外筒の内側に支持された内筒を備え、前記外筒の内面に沿った集塵風の旋回流により発生する遠心力により前記集塵風から粉塵を分離するサイクロンユニットを複数備えた切断工具。
【請求項2】
請求項1記載の切断工具であって、前記ボックス本体の左右両側部に前記サイクロンユニットを備えた切断工具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の切断工具であって、前記複数のサイクロンユニットが前記ボックス本体に対してアッセンブリ化された切断工具。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載した切断工具であって、前記ボックス本体は、前記複数のサイクロンユニットに向けて集塵風を分岐する集塵風分岐部を備えており、該集塵風分岐部の、前記複数のサイクロンユニットに対応して設けられた分岐面が円弧形状を有する切断工具。
【請求項5】
請求項4記載の切断工具であって、前記ボックス本体の左右両側部に前記サイクロンユニットを備え、該両サイクロンユニットの外筒に設けられた、前記ボックス本体に対するオフセット接続用の接続口が前記集塵風分岐部を介して相互に接続されて当該左右のサイクロンユニットがアッセンブリ化された切断工具。
【請求項6】
加工により粉塵を発生させる動力工具であって、前記粉塵を集塵するためのダストボックスを備えており、
該ダストボックスは、ボックス本体にオフセット接続された外筒と、該外筒の内側に支持された内筒を備え、前記外筒の内面に沿った集塵風の旋回流により発生する遠心力により前記集塵風から粉塵を分離するサイクロンユニットを複数備えた動力工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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