動力機付き二輪車およびその荷かご
【課題】大きな受電用コイルを、走行に支障のない位置に、且つ、誘電体損を抑制できるように配置可能な動力機付き二輪車およびそのための荷かごを提供する。
【解決手段】動力機付き二輪車の前かご70の領域S1を合成樹脂からなる枠組み構造とし、この枠組み構造に、コイル101を支持するための支持部706を配置する。合成樹脂からなるカバー71が、支持部706に支持されたコイル101を覆い、且つ、コイル101と隙間を持つように、前かご70に装着される。
【解決手段】動力機付き二輪車の前かご70の領域S1を合成樹脂からなる枠組み構造とし、この枠組み構造に、コイル101を支持するための支持部706を配置する。合成樹脂からなるカバー71が、支持部706に支持されたコイル101を覆い、且つ、コイル101と隙間を持つように、前かご70に装着される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電池を備えた動力機付き二輪車およびそれに装備される荷かごに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータにより駆動力を補助する、いわゆるアシスト自転車が商品化され普及している。かかるアシスト自転車には、電動モータに電力を供給するための充電池が装備される。充電池は、着脱可能となっており、適宜、商用電源を用いて充電される。充電は、専用のアダプターを用いて行われる。
【0003】
通常、充電は、家庭において行われるが、アシスト自転車が駐輪場に駐輪されたようなときに充電が行われると便利である。たとえば、駐輪場にワイヤレス電力伝送システムを配置することで、別途、充電のための作業を伴うことなく、アシスト自転車側の充電池に充電を行うことができる。
【0004】
かかる充電のためのシステムとして、たとえば、共鳴法による電力伝送システムを用いることができる(特許文献1)。このシステムでは、送電側のコイルと受電側のコイルとの間の磁気共鳴を利用して電力が送られる。2つのコイルがある程度離れていても、送電側から受電側に電力を送ることができる。このため、駐輪場におけるアシスト自転車の駐輪位置をそれほど厳格に管理せずとも、充電池に対する充電が円滑に行われ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記電力伝送システムでは、アシスト自転車側に受電用のコイルを配置する必要がある。この場合、受電用のコイルが大きくなる程、共振周波数が低くなり、電力を伝送可能な距離が長くなる。このため、アシスト自転車には、なるべく大きい受電用コイルを配置するのが望ましい。このとき、受電用コイルは、アシスト自転車の走行に支障のない位置に、簡易に配置される必要がある。
【0007】
また、上記システムでは、電力伝送の際に、種々の損失が起こり得る。磁気共鳴方式の電力伝送では、磁界の他、交流(高周波)の電界が発生する。この電界が誘電体に作用することにより、損失が生じる(誘電体損)。よって、受電用コイルは、誘電体損をなるべく抑制できるようにして、アシスト自転車に配置される必要がある。
【0008】
本発明は、これらの課題に鑑みて為されたものであり、大きな受電用コイルを、走行に支障のない位置に、且つ、誘電体損を抑制できるように配置可能な動力機付き二輪車およびそのための荷かごを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、動力機付き二輪車に関する。本態様に係る動力機付き二輪車は、充電池と、受電用のコイルと、前記コイルを介して受電した電力を前記充電池に充電するための充電回路と、荷かごとを備える。そして、前記荷かごの少なくとも一部を合成樹脂からなる枠組み構造とし、前記枠組み構造に、前記コイルを支持するための支持部を配置する。さらに、合成樹脂からなるカバーが、前記支持部に支持された前記コイルを覆い
、且つ、前記コイルと隙間を持つように、前記荷かごに装着される。
【0010】
本発明の第2の態様は、動力機付き二輪車のための荷かごに関する。本態様に係る荷かごは、荷かご本体と、合成樹脂からなるカバーとを備える。そして、前記荷かご本体の少なくとも一部を合成樹脂からなる枠組み構造とし、前記枠組み構造に、前記コイルを支持するための支持部を配置する。さらに、前記カバーが、前記支持部に支持された前記コイルを覆い、且つ、前記コイルと隙間を持つように、前記荷かごに装着される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大きな受電用コイルを、走行に支障のない位置に、且つ、誘電体損を抑制できるように配置可能な動力機付き二輪車およびそのための荷かごを提供することができる。
【0012】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る自転車の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る前かごの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る前かごの枠組み構造を示す図である。
【図4】実施の形態に係るコイルの取付状態を示す図である。
【図5】実施の形態に係るカバーの構成を示す図である。
【図6】実施の形態に係るカバーの取付方法を説明する図である。
【図7】実施の形態に係るカバーの取付状態を示す図である。
【図8】実施の形態に係る給電システムの構成を示す図である。
【図9】実施の形態に係る給電システムの回路構成を示す図である。
【図10】実施の形態に係る前かごの効果を説明する図である。
【図11】実施の形態の変更例に係る前かごの枠組み構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態は、アシスト自転車(以下、自転車という)に本発明を適用したものである。
【0015】
自転車1は、本体フレーム10と、前輪21と、後輪22と、サドル30と、ペダル40と、モータ50と、バッテリーユニット60と、前かご70と、前照灯80と、ハンドル90を備えている。
【0016】
モータ50には、バッテリーユニット60から電力が供給される。この電力によりモータ50が駆動されると、モータ50の駆動力がペダルクランク軸に伝達される。これにより、ペダル40を踏む力より大きな推進力で、自転車1を走行させることができる。なお、バッテリーユニット60の電力は、モータ50以外にも、前照灯80などの他の電気部品にも供給される。
【0017】
バッテリーユニット60は、着脱可能となっている。ユーザは、取り外したバッテリーユニット60に対し、所定のアダプターを用いて、充電を行うことができる。充電は、バッテリーユニット60に配された回路ユニット61によって制御される。
【0018】
本実施の形態では、かかる充電形態の他に、電力伝送による充電が可能となっている。すなわち、前かご70に受電用のコイルが配置され、このコイルと、送電側のコイルとの
磁気共鳴を利用して、電力伝送が行われる。送電された電力は、回路ユニット61に送られ、バッテリーユニット60内の充電池に蓄電される。
【0019】
図2(a)は、前かご70と受電用コイルの概略構成を示す分解斜視図、図2(b)は、前かご70にコイル101、102および基板103と、カバー71とを取り付けた状態の斜視図である。
【0020】
図2(a)を参照して、前かご70の前面には、2つのコイル101、102と、基板103と、カバー71が装着される。領域S1は、カバー70の装着領域を示している。領域S1には、2つのコイル101、102と基板103が装着される。さらに、これら2つのコイル101、102と基板103を覆うように、カバー71が前かご70の前面に取り付けられる。カバー71は、前かご70側に開口71aが形成された有底箱形状を有している。
【0021】
コイル101は、両端が非接続のLC共振コイルであり、送電時に、送電側のコイルとの間で磁気共鳴が生じるように設計されている。すなわち、コイル101は、送電時に、送電側のコイルと、磁場の共鳴により磁気的に結合される。
【0022】
コイル102は、磁気共鳴によりコイル101に生じた磁界を、電磁誘導により、電力として取り出すよう構成されている。コイル102には、コイル101により生じる磁界の変化に応じて、電流(交流)が流れる。コイル102の両端は、基板103上の整流回路に接続されている。電磁誘導によりコイル102に流れた電流(交流)は、基板103上の整流回路によって直流の電流に変換され、図1に示すバッテリーユニット60の回路ユニット61に送られる。なお、図2(a)には、基板103から回路ユニット61に向かう配線が図示省略されている。
【0023】
本実施の形態では、2つのコイル101、102は、方形状に巻回されている。2つのコイル101、102は、方形状の他、円形状に巻回されても良い。ただし、コイル101は、その輪郭がなるべく大きい方が望ましい。コイル101の輪郭が大きいほど、送電距離を長くできるためである。
【0024】
図3は、前かご70の構成を示す図である。なお、図3には、前かご70の前面のうち、領域S1近傍の領域が示されている。
【0025】
前かご70は、全体が、プラスチック(合成樹脂)により形成されている。図3に示すように、前かご70は、縦フレーム701と横フレーム702とが交差した枠組み構造となっている。縦フレーム701と横フレーム702は一体的に形成され、縦フレーム701と横フレーム702の間には、フレームのない隙間が網目状に存在している。
【0026】
領域S1の内側には、図2に示すコイル101、102と基板103が装着される領域S2が設けられている。この領域S2は、周りよりも、枠組み構造が疎となっている。すなわち、領域S2の縦フレーム703と横フレーム704は、周りの縦フレーム701と横フレーム702よりも幅が狭く、厚みも薄くなっている。また、縦フレーム703間の間隔と横フレーム704間の間隔は、それぞれ、縦フレーム701間の間隔と横フレーム702間の間隔よりも広くなっている。領域S2を除く前かご70の領域には、縦フレーム701と横フレーム702が、図3と同様の形態にて形成されている。
【0027】
領域S1と領域S2の間には、図2のカバー71を取り付けるための4つの係子部705が形成されている。また、領域S2には、横フレーム704上に、コイル101を位置決め支持するための4つの支持部706が形成され、各支持部706に隣接して、平面状
の受け部707が形成されている。さらに、領域S1には、横フレーム704上に、コイル102を位置決めするための4つの支持部708が形成され、各支持部708に隣接して、平面状の受け部709が形成されている。受け部709は、縦フレーム703と横フレーム704の交差部に、縦フレーム703と横フレーム704の両方に繋がるように形成されている。また、領域S1の中央には、基板103を装着するための板部710が形成され、この板部710に、基板103が嵌め込まれる凹部710aが形成されている。
【0028】
なお、支持部706は、同図左右方向に所定の間隔をおいて形成された一対の突片706a(図6(c)参照)からなっている。コイル101は、一対の突片706aの間に挿入されることにより、支持部706によって位置決め支持される。支持部708も支持部706と同様、一対の突片からなっており、コイル102は、一対の突片の間に挿入されることにより、支持部708によって位置決め支持される。
【0029】
図4は、領域S2にコイル101、102と基板103を装着した状態を示す図である。コイル101、102は、上記のとおり、4隅近傍を支持部706、708によって支持される。また、基板103が板部710の凹部710aに嵌め込まれ、接着固定される。あるいは、これに代えて、ネジ留めにより基板103を固定してもよい。上記のとおり、基板103には、整流回路が設置されている。整流回路により直流化された電流は、配線103aを通って、回路ユニット61(図1参照)に送られる。
【0030】
図5は、カバー71を開口71a側から見たときの平面図である。
【0031】
カバー71は、全体が、プラスチック(合成樹脂)により形成されている。カバー71を形成する材料は、前かご70の材料と同じでも、異なっていても良い。上記のように、カバー71は、前かご70側に開口71aが形成された有底箱形状を有している。
【0032】
図5に示すように、カバー71は、縦フレーム711と横フレーム712とが交差した枠組み構造となっている。縦フレーム711と横フレーム712は一体的に形成され、縦フレーム711と横フレーム712の間には、フレームのない隙間が網目状に存在している。本実施の形態では、カバー71の枠組み構造は、前かご70の領域S2(図4参照)の枠組み構造よりも密になっている。
【0033】
カバー71には、図3に示す4つの係止部705に対応する位置に、それぞれ、係止部705が嵌り込む受け孔713が形成されている。また、図3に示す4つの支持部706に対応する位置に、それぞれ、突起714が形成され、さらに、4つの受け部707に対応する位置に、それぞれ、突起715が形成されている。また、図3に示す4つの支持部708に対応する位置に、それぞれ、突起716が形成され、さらに、4つの受け部709に対応する位置に、それぞれ、突起717が形成されている。
【0034】
カバー71は、図3に示す4つの係止部705を、それぞれ、受け孔713に嵌め込むことにより、前かご70に取り付けられる。なお、嵌め込みに代えてネジ留めによりカバー71を前かご70に取り付けてもよい。
【0035】
図6(a)は、係止部705を受け孔713に嵌め込む直前の状態を示す図である。同図は、図4の右上の係止部705の近傍領域(破線)を同図の左右方向に平行で且つ紙面に垂直な面で切断したときの断面図である。
【0036】
図6(a)に示すように、係止部705は、円柱形状を有し、先端に掛かり部705aが形成されている。掛かり部705aは、係止部705の根元に向かって徐々に径が大きくなっている。また、係止部705には、先端から根元に向かってスリット705bが形
成されている。このスリット705bによって、掛かり部705aは内側に撓むようになる。
【0037】
また、受け孔713は、係止部705の根元と略同径の円形の孔713aと、孔713aより径が大きい円形の孔713を有する。
【0038】
図6(a)の状態から受け孔713を矢印方向に押し込むと、掛かり部705aが内側に撓み、係止部705が孔713a内に入る。さらに受け孔713を押し込むと、掛かり部705aが、孔713abに到達し、孔713a内で広がる。こうして、図6(b)に示すように、掛かり部705aと孔713bとが係合し、係止部705が受け孔713から抜けなくなる。このとき、係止部705の先端が、前かご70の裏面に当接する。これにより、カバー71と前かご70の間隔が、距離Dに保たれる。
【0039】
なお、ここでは、図6(a)、(b)を参照して、図4の右上の係止部705と、これに対応する受け孔713との係合について説明したが、他の3つの係止部705と、対応する受け孔713との係合も、上記と同様に行われる。
【0040】
図6(c)は、支持部706にコイル101を収容した状態を示す図である。同図は、図4の支持部706の近傍領域を同図の左右方向に平行で紙面に垂直な面で切断したときの断面図である。
【0041】
図6(c)に示すように、支持部706は、一対の突片706aを備えている。これら2つの突片706aは、上面が傾斜した形状を有し、また、内側にやや突出した抜け止め706bが形成されている。コイル101は、2つの突片706aの間に収容される。
【0042】
図6(d)は、上記のようにカバー71を前かご70に取り付けたときの状態を示す図である。同図は、図4の右上の支持部706の近傍領域(破線)を同図の左右方向に平行で紙面に垂直な面で切断したときの断面図である。
【0043】
図6(d)に示すように、カバー71を前かご70に取り付けると、カバー71側の突起714が2つの突片706aの間に入り込む。このとき、突起714の先端は、コイル101から所定の距離だけ離れる。このように突起714が2つの突片706aの間に入り込むことにより、支持部706からコイル101が脱落するのが防止される。なお、突起714は、断面が台形で所定の厚みを有する板状部材で、カバー71に一体的に形成されている。
【0044】
また、カバー71を前かご70に取り付けると、カバー71側の突起715の先端が、受け部707に当接する。なお、突起715は、断面が台形の円柱状の部材で、カバー71に一体的に形成されている。このように、突起715が受け部707に当接することにより、コイル101近傍のカバー71と前かご70の間隔が、距離Dに保たれる。このため、カバー71が前方から押されても、突起714がコイル101側に大きく変位することはなく、突起714の先端がコイル101に強く押し付けられることが防止される。
【0045】
なお、ここでは、図6(c)、(d)を参照して、図4の右上の支持部706の近傍領域の、カバー71取付時の状態について説明したが、他の3つの支持部706の近傍領域の、カバー71取付時の状態も、図6(c)、(d)と同様である。また、支持部708も支持部706と同様の構成を有し、コイル102は、上記と同様にして、支持部708に固定される。支持部708の近傍領域の、カバー71取付時の状態も、図6(c)、(d)と同様である。
【0046】
図7は、カバー71を前かご70に取り付けた状態を示す図である。
【0047】
図示の如く、カバー71を前かご70に取り付けることにより、コイル101、102と、基板103がカバー71によって覆われる。これにより、コイル101、102と、基板103はカバー71により保護され、また、前かご70の見栄えが高められる。
【0048】
図8は、給電システムの構成例を示す図である。同図の給電システムは、たとえば、駐輪場に設置されている。
【0049】
給電システムは、送電部2と、タイヤ止め3と、回路ユニット4とを有する。タイヤ止め3は、前輪21を幅方向に挟むようにして、前輪21をホールドする。自転車1は、前輪21をタイヤ止め3に嵌め込んだ状態で駐輪される。このように自転車1を駐輪すると、前かご70の前面が送電部2に向き合う。送電部2には、送電側のコイルが収容されている。回路ユニット4には、送電部2を介して送電を行うための回路が収容されている。
【0050】
図9は、給電システムの回路構成を示すブロック図である。
【0051】
図9において、整流回路111は、図2の基板113に配置されている。また、制御回路112、充電回路113、電源回路115、通信装置116は、図1の回路ユニット61に配置され、充電池114は、図1のバッテリーユニット60内に配置されている。さらに、発振器211から通信装置215は、図8の回路ユニット4内に配置されている。送電側のコイル201、202は、図8の送電部2に収容されている。
【0052】
コイル201とコイル101は、数MHz〜数10MHzの周波数帯域で共振が起こるように構成されている。コイル201とコイル101は、略同じ形状と大きさを有する。コイル202は、コイル201とコイル101との間で共振(磁気共鳴)が起こるよう、電磁誘導により、電力をコイル201に与える。
【0053】
発振器211は、商用電源や太陽電池からの電力を、コイル201とコイル101との間で共振が起こる周波数(以下、「目標共振周波数」という)の電流信号に変換してコイル202に与える。カプラ212は、発振器211からコイル202に供給される電気信号の一部を検波器213に供給する。検波器213は、供給された電気信号をA/D変換し、変換後のデジタル信号を制御回路214に供給する。
【0054】
制御回路214は、検波器213から供給されたデジタル信号に基づいて、発振器211からコイル202に供給されている電流信号の周波数と振幅を検出する。そして、制御回路214は、検出した周波数と振幅に基づき、コイル202に供給される電流信号が、目標共振周波数と振幅になるよう、発振器211を制御する。なお、電流信号の振幅は、伝送される電力の大きさに応じて調整される。
【0055】
整流回路111は、コイル102により受電された交流の電力(交流電流)を直流の電力(直流電流)に変換し、制御回路112に供給する。制御回路112は、充電回路113、電源回路115および通信装置116を制御する。充電回路113は、充電池に対する充電を行う。充電は、商用電源から供給された電力、または、整流回路111から供給された電力を用いて行われる。電源回路115は、充電池114に蓄積された電力を、制御回路112による制御に応じて、各部に供給する。通信装置116は通信装置215との間で通信を行う。
【0056】
電力伝送時において、発振器211からコイル202に電流信号が供給されると、コイル202に磁界が発生し、この磁界に基づく電磁誘導によりコイル201に高周波電力が
発生する。この高周波電力は、コイル201とコイル101との間の磁気共鳴によって、コイル101に伝送される。こうして伝送された電力は、電磁誘導により、コイル101からコイル102に受電される。
【0057】
コイル102は、受電した電力を整流回路111に出力する。整流回路111は、受電した交流の電力(交流電流)を整流して直流の電力(直流電流)に変換し、制御回路112に供給する。制御回路112は、供給された電力を充電回路113に供給し、充電回路113に充電を行わせる。充電回路113は、供給された電力を充電池114に充電する。
【0058】
かかる充電の際に、制御回路112は、充電池114に対する充電状況を監視し、送電すべき電力に関する情報を、通信装置116を介して通信装置215に送信する。通信装置215は、受信した情報を制御回路214に送る。制御回路214は、制御回路112から要求された電力になるよう、発振器211の振幅を調整する。
【0059】
充電池114が満充電になると、制御回路112は、その旨を示す情報を、通信装置116を介して通信装置215に送信する。通信装置215は、受信した情報を制御回路214に送る。これを受けて、制御回路214は、発振器211を停止させる。これにより、電力伝送が終了する。
【0060】
以上、本実施の形態によれば、自転車の荷かごに受電用のコイル101が配置されるため、コイルの形状を大きくすることができる。また、図4に示すように、枠組み構造によりコイル101が支持されるため、コイル101の近傍に存在するプラスチック(誘電体)の体積を小さくすることができ、電力伝送時の誘電体損を抑制することができる。本実施の形態では、コイル101が配置される領域S2の枠組み構造がその他の領域の枠組み構造よりも疎となっているので、荷かご本来の機能を維持しながら、電力伝送時の誘電体損を抑制することができる。さらに、領域S2を覆うカバー71が荷かごに取り付けられるため、コイル101、102と、基板103をカバー71により保護することができるとともに、前かご70の見栄えを高めることができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、突起715と受け部707とによって、荷かご70とカバー71との隙間が確保されるため、たとえば、荷かご70の前面に何かが衝突したような場合にも、コイル101、102と基板103に強い衝撃が加わるのを防止できる。なお、本実施の形態では、図10の丸印の位置に、突起715と受け部707からなる間隔保持手段が配置されたが、間隔保持手段の配置位置および配置数はこれに限定されず、図10の場合より多くの間隔保持手段を配置しても良い。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0063】
たとえば、上記実施の形態では、係止部705を荷かご70側に配置し、受け孔713をカバー71側に配置したが、係止部をカバー70側に配置し、受け孔を荷かご70側に配置しても良い。また、上記実施の形態では、受け部707を荷かご70側に配置し、受け部707に当接する突起715をカバー71側に配置したが、受け部をカバー70側に配置し、突起を荷かご70側に配置しても良い。
【0064】
また、上記実施の形態では、領域S2以外の領域も、領域S2と同様、プラスチックにて形成したが、領域S2以外の領域の全部または一部が金属等の他の材料によって構成されても良い。ただし、金属材料は、コイル101の磁気共鳴に影響を及ぼすため、コイル101が装着される領域の周囲は、上記と同様、プラスチックにて構成するのが望ましい
。
【0065】
また、上記実施の形態では、前かご70の前面にコイル101等の受電のための構成を配置したが、前かご70の他の側面にコイル101等を配置しても良く、前かご70の前面と他の側面にコイル101等を配置しても良い。さらに、自転車1に後ろかごが装着される場合には、後ろかごにコイル101等を配置しても良い。
【0066】
また、領域S2の枠組み構造は、上記実施の形態の他に種々の変更が可能である。たとえば、図11(a)に示すように、縦フレーム703と横フレーム704の一部を省略しても良い。こうすると、上記実施の形態に比べ、コイル101に近接するプラスチック(誘電体)の体積をさらに小さくすることができるため、電力伝送時の誘電体損を一層抑制することができる。この他、領域S2の枠組み構造を、縦フレーム703のみ、あるいは、横フレーム704のみにより構成しても良く、あるいは、斜や曲線状のフレームにより構成しても良い。
【0067】
また、図11(b)に示すように、板部710の領域を縦フレーム703と横フレーム704に到達するまで広げても良い。
【0068】
また、カバー71と、前かご70の領域S2に、コイル101、102および基板103を雨等から保護するための防水シートを配置しても良い。
【0069】
また、上記実施の形態では、整流回路が設置された基板103を前かご70の領域S2に配置したが、整流回路は、バッテリーユニット60内の回路ユニット61に配置しても良い。
【0070】
また、領域S2以外の領域は、枠組み構造でなくても良く、たとえば、板状の部材に多数の孔が設けられたような構造でも良い。また、コイル102を省略して、コイル101から直接、電力を取り出すようにしても良い。
【0071】
さらに、本実施の形態は、アシスト自転車に本発明を適用したものであったが、原動機つき自転車やオートバイ等、アシスト自転車以外の動力機付き二輪車に本発明を適用することも可能である。
【0072】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 … 自転車
60 … バッテリーユニット(充電池)
61 … 回路ユニット(充電回路)
70 … 前かご(荷かご)
71 … カバー
101 … コイル
703 … 縦フレーム(枠組み構造)
704 … 横フレーム(枠組み構造)
707 … 受け部(間隔保持手段)
715 … 突起(間隔保持手段)
706 … 支持部
706a … 突片
714 … 突起(突部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電池を備えた動力機付き二輪車およびそれに装備される荷かごに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータにより駆動力を補助する、いわゆるアシスト自転車が商品化され普及している。かかるアシスト自転車には、電動モータに電力を供給するための充電池が装備される。充電池は、着脱可能となっており、適宜、商用電源を用いて充電される。充電は、専用のアダプターを用いて行われる。
【0003】
通常、充電は、家庭において行われるが、アシスト自転車が駐輪場に駐輪されたようなときに充電が行われると便利である。たとえば、駐輪場にワイヤレス電力伝送システムを配置することで、別途、充電のための作業を伴うことなく、アシスト自転車側の充電池に充電を行うことができる。
【0004】
かかる充電のためのシステムとして、たとえば、共鳴法による電力伝送システムを用いることができる(特許文献1)。このシステムでは、送電側のコイルと受電側のコイルとの間の磁気共鳴を利用して電力が送られる。2つのコイルがある程度離れていても、送電側から受電側に電力を送ることができる。このため、駐輪場におけるアシスト自転車の駐輪位置をそれほど厳格に管理せずとも、充電池に対する充電が円滑に行われ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記電力伝送システムでは、アシスト自転車側に受電用のコイルを配置する必要がある。この場合、受電用のコイルが大きくなる程、共振周波数が低くなり、電力を伝送可能な距離が長くなる。このため、アシスト自転車には、なるべく大きい受電用コイルを配置するのが望ましい。このとき、受電用コイルは、アシスト自転車の走行に支障のない位置に、簡易に配置される必要がある。
【0007】
また、上記システムでは、電力伝送の際に、種々の損失が起こり得る。磁気共鳴方式の電力伝送では、磁界の他、交流(高周波)の電界が発生する。この電界が誘電体に作用することにより、損失が生じる(誘電体損)。よって、受電用コイルは、誘電体損をなるべく抑制できるようにして、アシスト自転車に配置される必要がある。
【0008】
本発明は、これらの課題に鑑みて為されたものであり、大きな受電用コイルを、走行に支障のない位置に、且つ、誘電体損を抑制できるように配置可能な動力機付き二輪車およびそのための荷かごを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、動力機付き二輪車に関する。本態様に係る動力機付き二輪車は、充電池と、受電用のコイルと、前記コイルを介して受電した電力を前記充電池に充電するための充電回路と、荷かごとを備える。そして、前記荷かごの少なくとも一部を合成樹脂からなる枠組み構造とし、前記枠組み構造に、前記コイルを支持するための支持部を配置する。さらに、合成樹脂からなるカバーが、前記支持部に支持された前記コイルを覆い
、且つ、前記コイルと隙間を持つように、前記荷かごに装着される。
【0010】
本発明の第2の態様は、動力機付き二輪車のための荷かごに関する。本態様に係る荷かごは、荷かご本体と、合成樹脂からなるカバーとを備える。そして、前記荷かご本体の少なくとも一部を合成樹脂からなる枠組み構造とし、前記枠組み構造に、前記コイルを支持するための支持部を配置する。さらに、前記カバーが、前記支持部に支持された前記コイルを覆い、且つ、前記コイルと隙間を持つように、前記荷かごに装着される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大きな受電用コイルを、走行に支障のない位置に、且つ、誘電体損を抑制できるように配置可能な動力機付き二輪車およびそのための荷かごを提供することができる。
【0012】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る自転車の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る前かごの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る前かごの枠組み構造を示す図である。
【図4】実施の形態に係るコイルの取付状態を示す図である。
【図5】実施の形態に係るカバーの構成を示す図である。
【図6】実施の形態に係るカバーの取付方法を説明する図である。
【図7】実施の形態に係るカバーの取付状態を示す図である。
【図8】実施の形態に係る給電システムの構成を示す図である。
【図9】実施の形態に係る給電システムの回路構成を示す図である。
【図10】実施の形態に係る前かごの効果を説明する図である。
【図11】実施の形態の変更例に係る前かごの枠組み構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態は、アシスト自転車(以下、自転車という)に本発明を適用したものである。
【0015】
自転車1は、本体フレーム10と、前輪21と、後輪22と、サドル30と、ペダル40と、モータ50と、バッテリーユニット60と、前かご70と、前照灯80と、ハンドル90を備えている。
【0016】
モータ50には、バッテリーユニット60から電力が供給される。この電力によりモータ50が駆動されると、モータ50の駆動力がペダルクランク軸に伝達される。これにより、ペダル40を踏む力より大きな推進力で、自転車1を走行させることができる。なお、バッテリーユニット60の電力は、モータ50以外にも、前照灯80などの他の電気部品にも供給される。
【0017】
バッテリーユニット60は、着脱可能となっている。ユーザは、取り外したバッテリーユニット60に対し、所定のアダプターを用いて、充電を行うことができる。充電は、バッテリーユニット60に配された回路ユニット61によって制御される。
【0018】
本実施の形態では、かかる充電形態の他に、電力伝送による充電が可能となっている。すなわち、前かご70に受電用のコイルが配置され、このコイルと、送電側のコイルとの
磁気共鳴を利用して、電力伝送が行われる。送電された電力は、回路ユニット61に送られ、バッテリーユニット60内の充電池に蓄電される。
【0019】
図2(a)は、前かご70と受電用コイルの概略構成を示す分解斜視図、図2(b)は、前かご70にコイル101、102および基板103と、カバー71とを取り付けた状態の斜視図である。
【0020】
図2(a)を参照して、前かご70の前面には、2つのコイル101、102と、基板103と、カバー71が装着される。領域S1は、カバー70の装着領域を示している。領域S1には、2つのコイル101、102と基板103が装着される。さらに、これら2つのコイル101、102と基板103を覆うように、カバー71が前かご70の前面に取り付けられる。カバー71は、前かご70側に開口71aが形成された有底箱形状を有している。
【0021】
コイル101は、両端が非接続のLC共振コイルであり、送電時に、送電側のコイルとの間で磁気共鳴が生じるように設計されている。すなわち、コイル101は、送電時に、送電側のコイルと、磁場の共鳴により磁気的に結合される。
【0022】
コイル102は、磁気共鳴によりコイル101に生じた磁界を、電磁誘導により、電力として取り出すよう構成されている。コイル102には、コイル101により生じる磁界の変化に応じて、電流(交流)が流れる。コイル102の両端は、基板103上の整流回路に接続されている。電磁誘導によりコイル102に流れた電流(交流)は、基板103上の整流回路によって直流の電流に変換され、図1に示すバッテリーユニット60の回路ユニット61に送られる。なお、図2(a)には、基板103から回路ユニット61に向かう配線が図示省略されている。
【0023】
本実施の形態では、2つのコイル101、102は、方形状に巻回されている。2つのコイル101、102は、方形状の他、円形状に巻回されても良い。ただし、コイル101は、その輪郭がなるべく大きい方が望ましい。コイル101の輪郭が大きいほど、送電距離を長くできるためである。
【0024】
図3は、前かご70の構成を示す図である。なお、図3には、前かご70の前面のうち、領域S1近傍の領域が示されている。
【0025】
前かご70は、全体が、プラスチック(合成樹脂)により形成されている。図3に示すように、前かご70は、縦フレーム701と横フレーム702とが交差した枠組み構造となっている。縦フレーム701と横フレーム702は一体的に形成され、縦フレーム701と横フレーム702の間には、フレームのない隙間が網目状に存在している。
【0026】
領域S1の内側には、図2に示すコイル101、102と基板103が装着される領域S2が設けられている。この領域S2は、周りよりも、枠組み構造が疎となっている。すなわち、領域S2の縦フレーム703と横フレーム704は、周りの縦フレーム701と横フレーム702よりも幅が狭く、厚みも薄くなっている。また、縦フレーム703間の間隔と横フレーム704間の間隔は、それぞれ、縦フレーム701間の間隔と横フレーム702間の間隔よりも広くなっている。領域S2を除く前かご70の領域には、縦フレーム701と横フレーム702が、図3と同様の形態にて形成されている。
【0027】
領域S1と領域S2の間には、図2のカバー71を取り付けるための4つの係子部705が形成されている。また、領域S2には、横フレーム704上に、コイル101を位置決め支持するための4つの支持部706が形成され、各支持部706に隣接して、平面状
の受け部707が形成されている。さらに、領域S1には、横フレーム704上に、コイル102を位置決めするための4つの支持部708が形成され、各支持部708に隣接して、平面状の受け部709が形成されている。受け部709は、縦フレーム703と横フレーム704の交差部に、縦フレーム703と横フレーム704の両方に繋がるように形成されている。また、領域S1の中央には、基板103を装着するための板部710が形成され、この板部710に、基板103が嵌め込まれる凹部710aが形成されている。
【0028】
なお、支持部706は、同図左右方向に所定の間隔をおいて形成された一対の突片706a(図6(c)参照)からなっている。コイル101は、一対の突片706aの間に挿入されることにより、支持部706によって位置決め支持される。支持部708も支持部706と同様、一対の突片からなっており、コイル102は、一対の突片の間に挿入されることにより、支持部708によって位置決め支持される。
【0029】
図4は、領域S2にコイル101、102と基板103を装着した状態を示す図である。コイル101、102は、上記のとおり、4隅近傍を支持部706、708によって支持される。また、基板103が板部710の凹部710aに嵌め込まれ、接着固定される。あるいは、これに代えて、ネジ留めにより基板103を固定してもよい。上記のとおり、基板103には、整流回路が設置されている。整流回路により直流化された電流は、配線103aを通って、回路ユニット61(図1参照)に送られる。
【0030】
図5は、カバー71を開口71a側から見たときの平面図である。
【0031】
カバー71は、全体が、プラスチック(合成樹脂)により形成されている。カバー71を形成する材料は、前かご70の材料と同じでも、異なっていても良い。上記のように、カバー71は、前かご70側に開口71aが形成された有底箱形状を有している。
【0032】
図5に示すように、カバー71は、縦フレーム711と横フレーム712とが交差した枠組み構造となっている。縦フレーム711と横フレーム712は一体的に形成され、縦フレーム711と横フレーム712の間には、フレームのない隙間が網目状に存在している。本実施の形態では、カバー71の枠組み構造は、前かご70の領域S2(図4参照)の枠組み構造よりも密になっている。
【0033】
カバー71には、図3に示す4つの係止部705に対応する位置に、それぞれ、係止部705が嵌り込む受け孔713が形成されている。また、図3に示す4つの支持部706に対応する位置に、それぞれ、突起714が形成され、さらに、4つの受け部707に対応する位置に、それぞれ、突起715が形成されている。また、図3に示す4つの支持部708に対応する位置に、それぞれ、突起716が形成され、さらに、4つの受け部709に対応する位置に、それぞれ、突起717が形成されている。
【0034】
カバー71は、図3に示す4つの係止部705を、それぞれ、受け孔713に嵌め込むことにより、前かご70に取り付けられる。なお、嵌め込みに代えてネジ留めによりカバー71を前かご70に取り付けてもよい。
【0035】
図6(a)は、係止部705を受け孔713に嵌め込む直前の状態を示す図である。同図は、図4の右上の係止部705の近傍領域(破線)を同図の左右方向に平行で且つ紙面に垂直な面で切断したときの断面図である。
【0036】
図6(a)に示すように、係止部705は、円柱形状を有し、先端に掛かり部705aが形成されている。掛かり部705aは、係止部705の根元に向かって徐々に径が大きくなっている。また、係止部705には、先端から根元に向かってスリット705bが形
成されている。このスリット705bによって、掛かり部705aは内側に撓むようになる。
【0037】
また、受け孔713は、係止部705の根元と略同径の円形の孔713aと、孔713aより径が大きい円形の孔713を有する。
【0038】
図6(a)の状態から受け孔713を矢印方向に押し込むと、掛かり部705aが内側に撓み、係止部705が孔713a内に入る。さらに受け孔713を押し込むと、掛かり部705aが、孔713abに到達し、孔713a内で広がる。こうして、図6(b)に示すように、掛かり部705aと孔713bとが係合し、係止部705が受け孔713から抜けなくなる。このとき、係止部705の先端が、前かご70の裏面に当接する。これにより、カバー71と前かご70の間隔が、距離Dに保たれる。
【0039】
なお、ここでは、図6(a)、(b)を参照して、図4の右上の係止部705と、これに対応する受け孔713との係合について説明したが、他の3つの係止部705と、対応する受け孔713との係合も、上記と同様に行われる。
【0040】
図6(c)は、支持部706にコイル101を収容した状態を示す図である。同図は、図4の支持部706の近傍領域を同図の左右方向に平行で紙面に垂直な面で切断したときの断面図である。
【0041】
図6(c)に示すように、支持部706は、一対の突片706aを備えている。これら2つの突片706aは、上面が傾斜した形状を有し、また、内側にやや突出した抜け止め706bが形成されている。コイル101は、2つの突片706aの間に収容される。
【0042】
図6(d)は、上記のようにカバー71を前かご70に取り付けたときの状態を示す図である。同図は、図4の右上の支持部706の近傍領域(破線)を同図の左右方向に平行で紙面に垂直な面で切断したときの断面図である。
【0043】
図6(d)に示すように、カバー71を前かご70に取り付けると、カバー71側の突起714が2つの突片706aの間に入り込む。このとき、突起714の先端は、コイル101から所定の距離だけ離れる。このように突起714が2つの突片706aの間に入り込むことにより、支持部706からコイル101が脱落するのが防止される。なお、突起714は、断面が台形で所定の厚みを有する板状部材で、カバー71に一体的に形成されている。
【0044】
また、カバー71を前かご70に取り付けると、カバー71側の突起715の先端が、受け部707に当接する。なお、突起715は、断面が台形の円柱状の部材で、カバー71に一体的に形成されている。このように、突起715が受け部707に当接することにより、コイル101近傍のカバー71と前かご70の間隔が、距離Dに保たれる。このため、カバー71が前方から押されても、突起714がコイル101側に大きく変位することはなく、突起714の先端がコイル101に強く押し付けられることが防止される。
【0045】
なお、ここでは、図6(c)、(d)を参照して、図4の右上の支持部706の近傍領域の、カバー71取付時の状態について説明したが、他の3つの支持部706の近傍領域の、カバー71取付時の状態も、図6(c)、(d)と同様である。また、支持部708も支持部706と同様の構成を有し、コイル102は、上記と同様にして、支持部708に固定される。支持部708の近傍領域の、カバー71取付時の状態も、図6(c)、(d)と同様である。
【0046】
図7は、カバー71を前かご70に取り付けた状態を示す図である。
【0047】
図示の如く、カバー71を前かご70に取り付けることにより、コイル101、102と、基板103がカバー71によって覆われる。これにより、コイル101、102と、基板103はカバー71により保護され、また、前かご70の見栄えが高められる。
【0048】
図8は、給電システムの構成例を示す図である。同図の給電システムは、たとえば、駐輪場に設置されている。
【0049】
給電システムは、送電部2と、タイヤ止め3と、回路ユニット4とを有する。タイヤ止め3は、前輪21を幅方向に挟むようにして、前輪21をホールドする。自転車1は、前輪21をタイヤ止め3に嵌め込んだ状態で駐輪される。このように自転車1を駐輪すると、前かご70の前面が送電部2に向き合う。送電部2には、送電側のコイルが収容されている。回路ユニット4には、送電部2を介して送電を行うための回路が収容されている。
【0050】
図9は、給電システムの回路構成を示すブロック図である。
【0051】
図9において、整流回路111は、図2の基板113に配置されている。また、制御回路112、充電回路113、電源回路115、通信装置116は、図1の回路ユニット61に配置され、充電池114は、図1のバッテリーユニット60内に配置されている。さらに、発振器211から通信装置215は、図8の回路ユニット4内に配置されている。送電側のコイル201、202は、図8の送電部2に収容されている。
【0052】
コイル201とコイル101は、数MHz〜数10MHzの周波数帯域で共振が起こるように構成されている。コイル201とコイル101は、略同じ形状と大きさを有する。コイル202は、コイル201とコイル101との間で共振(磁気共鳴)が起こるよう、電磁誘導により、電力をコイル201に与える。
【0053】
発振器211は、商用電源や太陽電池からの電力を、コイル201とコイル101との間で共振が起こる周波数(以下、「目標共振周波数」という)の電流信号に変換してコイル202に与える。カプラ212は、発振器211からコイル202に供給される電気信号の一部を検波器213に供給する。検波器213は、供給された電気信号をA/D変換し、変換後のデジタル信号を制御回路214に供給する。
【0054】
制御回路214は、検波器213から供給されたデジタル信号に基づいて、発振器211からコイル202に供給されている電流信号の周波数と振幅を検出する。そして、制御回路214は、検出した周波数と振幅に基づき、コイル202に供給される電流信号が、目標共振周波数と振幅になるよう、発振器211を制御する。なお、電流信号の振幅は、伝送される電力の大きさに応じて調整される。
【0055】
整流回路111は、コイル102により受電された交流の電力(交流電流)を直流の電力(直流電流)に変換し、制御回路112に供給する。制御回路112は、充電回路113、電源回路115および通信装置116を制御する。充電回路113は、充電池に対する充電を行う。充電は、商用電源から供給された電力、または、整流回路111から供給された電力を用いて行われる。電源回路115は、充電池114に蓄積された電力を、制御回路112による制御に応じて、各部に供給する。通信装置116は通信装置215との間で通信を行う。
【0056】
電力伝送時において、発振器211からコイル202に電流信号が供給されると、コイル202に磁界が発生し、この磁界に基づく電磁誘導によりコイル201に高周波電力が
発生する。この高周波電力は、コイル201とコイル101との間の磁気共鳴によって、コイル101に伝送される。こうして伝送された電力は、電磁誘導により、コイル101からコイル102に受電される。
【0057】
コイル102は、受電した電力を整流回路111に出力する。整流回路111は、受電した交流の電力(交流電流)を整流して直流の電力(直流電流)に変換し、制御回路112に供給する。制御回路112は、供給された電力を充電回路113に供給し、充電回路113に充電を行わせる。充電回路113は、供給された電力を充電池114に充電する。
【0058】
かかる充電の際に、制御回路112は、充電池114に対する充電状況を監視し、送電すべき電力に関する情報を、通信装置116を介して通信装置215に送信する。通信装置215は、受信した情報を制御回路214に送る。制御回路214は、制御回路112から要求された電力になるよう、発振器211の振幅を調整する。
【0059】
充電池114が満充電になると、制御回路112は、その旨を示す情報を、通信装置116を介して通信装置215に送信する。通信装置215は、受信した情報を制御回路214に送る。これを受けて、制御回路214は、発振器211を停止させる。これにより、電力伝送が終了する。
【0060】
以上、本実施の形態によれば、自転車の荷かごに受電用のコイル101が配置されるため、コイルの形状を大きくすることができる。また、図4に示すように、枠組み構造によりコイル101が支持されるため、コイル101の近傍に存在するプラスチック(誘電体)の体積を小さくすることができ、電力伝送時の誘電体損を抑制することができる。本実施の形態では、コイル101が配置される領域S2の枠組み構造がその他の領域の枠組み構造よりも疎となっているので、荷かご本来の機能を維持しながら、電力伝送時の誘電体損を抑制することができる。さらに、領域S2を覆うカバー71が荷かごに取り付けられるため、コイル101、102と、基板103をカバー71により保護することができるとともに、前かご70の見栄えを高めることができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、突起715と受け部707とによって、荷かご70とカバー71との隙間が確保されるため、たとえば、荷かご70の前面に何かが衝突したような場合にも、コイル101、102と基板103に強い衝撃が加わるのを防止できる。なお、本実施の形態では、図10の丸印の位置に、突起715と受け部707からなる間隔保持手段が配置されたが、間隔保持手段の配置位置および配置数はこれに限定されず、図10の場合より多くの間隔保持手段を配置しても良い。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0063】
たとえば、上記実施の形態では、係止部705を荷かご70側に配置し、受け孔713をカバー71側に配置したが、係止部をカバー70側に配置し、受け孔を荷かご70側に配置しても良い。また、上記実施の形態では、受け部707を荷かご70側に配置し、受け部707に当接する突起715をカバー71側に配置したが、受け部をカバー70側に配置し、突起を荷かご70側に配置しても良い。
【0064】
また、上記実施の形態では、領域S2以外の領域も、領域S2と同様、プラスチックにて形成したが、領域S2以外の領域の全部または一部が金属等の他の材料によって構成されても良い。ただし、金属材料は、コイル101の磁気共鳴に影響を及ぼすため、コイル101が装着される領域の周囲は、上記と同様、プラスチックにて構成するのが望ましい
。
【0065】
また、上記実施の形態では、前かご70の前面にコイル101等の受電のための構成を配置したが、前かご70の他の側面にコイル101等を配置しても良く、前かご70の前面と他の側面にコイル101等を配置しても良い。さらに、自転車1に後ろかごが装着される場合には、後ろかごにコイル101等を配置しても良い。
【0066】
また、領域S2の枠組み構造は、上記実施の形態の他に種々の変更が可能である。たとえば、図11(a)に示すように、縦フレーム703と横フレーム704の一部を省略しても良い。こうすると、上記実施の形態に比べ、コイル101に近接するプラスチック(誘電体)の体積をさらに小さくすることができるため、電力伝送時の誘電体損を一層抑制することができる。この他、領域S2の枠組み構造を、縦フレーム703のみ、あるいは、横フレーム704のみにより構成しても良く、あるいは、斜や曲線状のフレームにより構成しても良い。
【0067】
また、図11(b)に示すように、板部710の領域を縦フレーム703と横フレーム704に到達するまで広げても良い。
【0068】
また、カバー71と、前かご70の領域S2に、コイル101、102および基板103を雨等から保護するための防水シートを配置しても良い。
【0069】
また、上記実施の形態では、整流回路が設置された基板103を前かご70の領域S2に配置したが、整流回路は、バッテリーユニット60内の回路ユニット61に配置しても良い。
【0070】
また、領域S2以外の領域は、枠組み構造でなくても良く、たとえば、板状の部材に多数の孔が設けられたような構造でも良い。また、コイル102を省略して、コイル101から直接、電力を取り出すようにしても良い。
【0071】
さらに、本実施の形態は、アシスト自転車に本発明を適用したものであったが、原動機つき自転車やオートバイ等、アシスト自転車以外の動力機付き二輪車に本発明を適用することも可能である。
【0072】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 … 自転車
60 … バッテリーユニット(充電池)
61 … 回路ユニット(充電回路)
70 … 前かご(荷かご)
71 … カバー
101 … コイル
703 … 縦フレーム(枠組み構造)
704 … 横フレーム(枠組み構造)
707 … 受け部(間隔保持手段)
715 … 突起(間隔保持手段)
706 … 支持部
706a … 突片
714 … 突起(突部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電池と、
受電用のコイルと、
前記コイルを介して受電した電力を前記充電池に充電するための充電回路と、
荷かごと、を備え、
前記荷かごの少なくとも一部を合成樹脂からなる枠組み構造とし、
前記枠組み構造に、前記コイルを支持するための支持部を配置し、
合成樹脂からなるカバーが、前記支持部に支持された前記コイルを覆い、且つ、前記コイルと隙間を持つように、前記荷かごに装着される、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の動力機付き二輪車において、
前記荷かごは、全体が枠組み構造を有し、
前記荷かごの前記コイルが装着される領域の枠組み構造が、その他の領域の枠組み構造よりも疎となっている、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動力機付き二輪車において、
前記荷かごと前記カバーとの間の間隔を保つための間隔保持手段をさらに備える、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項4】
請求項3に記載の動力機付き二輪車において、
前記支持部は、前記コイルを挟んで前記コイルを位置決めする一対の突片を有し、
前記カバーは、前記一対の突片の間に入って前記突片から前記コイルが脱落するのを規制する突部を有する、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項5】
請求項4に記載の動力機付き二輪車において、
前記間隔保持手段は、前記突片と前記突部に隣接する位置に配置されている、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項6】
動力機付き二輪車用の荷かごにおいて、
荷かご本体と、
合成樹脂からなるカバーと、を備え、
前記荷かご本体の少なくとも一部を合成樹脂からなる枠組み構造とし、
前記枠組み構造に、前記コイルを支持するための支持部を配置し、
前記カバーが、前記支持部に支持された前記コイルを覆い、且つ、前記コイルと隙間を持つように、前記荷かごに装着される、
ことを特徴とする動力機付き二輪車用の荷かご。
【請求項1】
充電池と、
受電用のコイルと、
前記コイルを介して受電した電力を前記充電池に充電するための充電回路と、
荷かごと、を備え、
前記荷かごの少なくとも一部を合成樹脂からなる枠組み構造とし、
前記枠組み構造に、前記コイルを支持するための支持部を配置し、
合成樹脂からなるカバーが、前記支持部に支持された前記コイルを覆い、且つ、前記コイルと隙間を持つように、前記荷かごに装着される、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の動力機付き二輪車において、
前記荷かごは、全体が枠組み構造を有し、
前記荷かごの前記コイルが装着される領域の枠組み構造が、その他の領域の枠組み構造よりも疎となっている、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動力機付き二輪車において、
前記荷かごと前記カバーとの間の間隔を保つための間隔保持手段をさらに備える、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項4】
請求項3に記載の動力機付き二輪車において、
前記支持部は、前記コイルを挟んで前記コイルを位置決めする一対の突片を有し、
前記カバーは、前記一対の突片の間に入って前記突片から前記コイルが脱落するのを規制する突部を有する、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項5】
請求項4に記載の動力機付き二輪車において、
前記間隔保持手段は、前記突片と前記突部に隣接する位置に配置されている、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項6】
動力機付き二輪車用の荷かごにおいて、
荷かご本体と、
合成樹脂からなるカバーと、を備え、
前記荷かご本体の少なくとも一部を合成樹脂からなる枠組み構造とし、
前記枠組み構造に、前記コイルを支持するための支持部を配置し、
前記カバーが、前記支持部に支持された前記コイルを覆い、且つ、前記コイルと隙間を持つように、前記荷かごに装着される、
ことを特徴とする動力機付き二輪車用の荷かご。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−30621(P2012−30621A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169662(P2010−169662)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
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