説明

動力系の原動機を始動させるためのシステムおよび方法

【課題】動力系の原動機を始動させるためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】動力系は、電動機/発電機に駆動接続された原動機を含む。動力系はまた、第1の電気エネルギー貯蔵装置および第2の電気エネルギー貯蔵装置を含む。動力系は、第2の電気エネルギー貯蔵装置からの電気で第1の電気エネルギー貯蔵装置を選択的に充電すること、および第1の電気エネルギー貯蔵装置から電動機/発電機へ電気を伝達して、電動機が原動機を始動させるように電動機/発電機を動作させることによって、原動機を選択的に始動させるように構成された動力系制御装置をさらに含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、原動機を備える動力系、より詳しくは、そのような原動機の始動に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの機械の動力系は、機械によって種々の作業を行うための動力を提供する原動機を含む。例えば、多くの機械は、原動機としてエンジンを含み、エンジンは、機械で1つ以上の作業を行うために使用できる電気を発生させる電動機/発電機に駆動接続されている。機械の原動機は、一般に、機械が使用されていないときには停止されている。1つ以上の作業を行うために機械を動作させることが望まれる場合、原動機を始動させる必要があるかもしれない。多くの場合、原動機の始動には、原動機がそれ自体の動力によって動作し始めることができるようになるまで、外部動力源によって原動機を駆動させることを必要とする。
【0003】
原動機を始動させるための多くの公知の手法は、原動機がそれ自体の動力で動作し始めるまで、電動機を使用して原動機を駆動することを含む。例えば、多くの公知のシステムは、バッテリなどの電気エネルギー貯蔵装置を使用して電動機を駆動し、原動機を始動させる。電気エネルギー貯蔵装置の充電レベルが低すぎると、残念ながら原動機を始動させることはできないであろう。
【0004】
市川への(特許文献1)には、機械の動力系のバッテリを充電することが開示されている。(特許文献1)には、電動機/発電機に駆動接続されたエンジンを備える動力系が開示されている。(特許文献1)には、バッテリに接続されたインバータからの電気によってエンジンを始動させるための電動機/発電機の動作が開示されている。(特許文献1)のシステムは、バッテリを充電するために、100vまたは200vの交流電力の商用電源などの、機械に取り付けられていない電力供給装置に接続できる充電器を含む。
【0005】
(特許文献1)には、バッテリを充電するために、機械に取り付けられていない商用電源に接続できる充電器を備えるシステムが開示されているが、一定の不利益が依然としてあるかもしれない。例えば、多くの場合、充電器に接続しバッテリを充電するための非搭載型商用電源に、すぐに利用できる供給源はないかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0076636A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示のシステムおよび方法は、上記の問題の1つ以上を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示される一実施形態は動力系に関する。動力系は、電動機/発電機に駆動接続された原動機を含み得る。動力系はまた、第1の電気エネルギー貯蔵装置および第2の電気エネルギー貯蔵装置を含み得る。動力系は、第2の電気エネルギー貯蔵装置からの電気で第1の電気エネルギー貯蔵装置を選択的に充電すること、および第1の電気エネルギー貯蔵装置から電動機/発電機へ電気を伝達して、電動機が原動機を始動させるように電動機/発電機を動作させることによって、原動機を選択的に始動させるように構成された動力系制御装置をさらに含み得る。
【0009】
別の実施形態は動力系の動作方法に関する。動力系は、電動機/発電機に駆動接続された原動機、第1の電気エネルギー貯蔵装置、および第2の電気エネルギー貯蔵装置を含み得る。この方法は、第2の電気エネルギー貯蔵装置からの電気で第1の電気エネルギー貯蔵装置を選択的に充電すること、および第1の電気エネルギー貯蔵装置から電動機/発電機へ電気を伝達して、電動機が原動機を始動させるように電動機/発電機を動作させることによって、原動機を始動させることを含み得る。
【0010】
さらに開示される実施形態は、車台と動力系とを有する機械に関する。動力系は、電動機/発電機に駆動接続された原動機、電力負荷、および電動機/発電機から電力負荷に電気を伝達するように動作可能な電力線を含み得る。動力系はまた、第1の電気エネルギー貯蔵装置および第2の電気エネルギー貯蔵装置を含み得る。第1の電気エネルギー貯蔵装置は車台に接地され、第2の電気エネルギー貯蔵装置は車台から電気的に絶縁され得る。動力系はまた、第2の電気エネルギー貯蔵装置によって供給されたエネルギーを使用して、電動機が原動機を始動させるように電動機/発電機を動作させることによって、原動機を始動するように構成された動力系制御装置を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示による動力系を有する機械の一実施形態を示す。
【図2】本開示による動力系の一実施形態をより詳細に示す。
【図3】本開示による例示的な動力系の一動作方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および図2に、本明細書による機械10、動力系11、およびそれらの種々の構成要素を示す。機械10は、1つ以上の作業を実施するために動力を用いる任意のタイプの機械とし得る。例えば、機械10は、人、物品、または他の物質(matter)または物体を運搬するかまたは動かすように構成された可動機械とし得る。加えて、または代わりに、機械10は、採鉱、建設、エネルギー探査および/または生成、製造、輸送、および農業などの商業または工業に関連した種々の他の作業を実施するように構成し得る。
【0013】
図1に示すように、一部の実施形態では、機械10は、採掘用に構成されたエクスカベータとし得る。機械10は、機械10の他の構成要素が取り付けられる車台13を含み得る。一部の実施形態では、車台13の一部分または全体は、導電性材料、例えば鋼、鋳鉄、アルミニウム、および/または他の導電性金属などから構成される。図1に示す例では、車台13は下部走行体14および上部旋回体20を含み得る。下部走行体14はフレーム12を含み得る。一部の実施形態では、機械10を可動機械とし、下部走行体14は1つ以上の推進装置16を含んで機械10を推進させ得る。推進装置16は、機械10を推進させるように構成された任意のタイプの装置とし得る。例えば、図1に示すように、推進装置16は履帯ユニットとし得る。代わりに、推進装置16は車輪、または機械10を推進させるように動作可能な他のタイプの装置とし得る。下部走行体14はまた、推進装置16を駆動させるために1つ以上の構成要素を含み得る。例えば、下部走行体14は、推進装置16を駆動させるために駆動モータ18を含み得る。駆動モータ18は電動機または液圧モータとし得る。
【0014】
上部旋回体20はフレーム12から吊るされ得る。一部の実施形態では、上部旋回体20はピボットシステム22によってフレーム12から吊るされ得る。ピボットシステム22は旋回ベアリング24および電動機46を含み得る。旋回ベアリング24は、フレーム12に装着された内側レースと、上部旋回体20が装着される外側レースとを含み得る。旋回ベアリング24の内側レースおよび外側レースの双方とも、垂直軸34に同心に延在し得る。内側レースおよび外側レースは、玉軸受などの転動体(図示せず)を介して互いに係合し、外側レースおよび上部旋回体20が軸34の周りでフレーム12に対して旋回し得るようにする。
【0015】
電動機46は、上部旋回体20および旋回ベアリング24の外側レースを軸34の周りで回転させるように動作可能とし得る。電動機46は、その出力軸に装着された歯車51を有し、電動機46は、歯車51がフレーム12上の歯車の歯にかみ合うような位置で上部旋回体20を装着し得る。電動機46は、動力系11の種々の構成要素から動力を受けて、軸34の周りで上部旋回体20を回転させ得る。電動機46は、動力系11の多くの電力負荷の1つを構成し得る。
【0016】
機械10は種々の他の構成要素を含み得る。例えば、図1に示すように、機械10は器具36を含み得る。器具36は機械10の種々の部分に装着され、かつ種々の作業を実施するように構成され得る。一部の実施形態では、器具36は上部旋回体20に装着され、かつ採掘を行うように構成され得る。機械10はまたオペレータステーション38を含み、そこから、個人が機械10の動作の1つ以上の局面を制御できる。オペレータステーション38はまた上部旋回体20に装着され得る。
【0017】
図2は、詳細な動力系11の図を示す。動力系11は、動力系制御装置26、および種々の作業を実施するために動力を提供するように動作可能な種々の構成要素を含み得る。一部の実施形態では、動力系11はハイブリッド式電力系統とし得る。動力系制御装置26に加えて、動力系11は電動機46、原動機30、電動機/発電機32、第1の電気エネルギー貯蔵装置48、第2の電気エネルギー貯蔵装置50、および動力伝達システム52を含み得る。本明細書で使用されるように、用語「電動機/発電機」は、電力を受けるときには電動機として動作するように機能し、および/または機械的に駆動されているときには発電機として動作するように機能する任意の電気装置を指す。
【0018】
原動機30は、電動機/発電機32を駆動するための機械的な力を生じるように構成された任意のタイプの装置とし得る。例えば、原動機30をディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ガス燃料エンジン、または機械的な力を生じるように動作可能な任意の他のタイプの構成要素とし得る。
【0019】
電動機/発電機32は、原動機30から受けた機械的な力によって電気を生成するように動作可能な任意のタイプの構成要素とし得る。電動機/発電機32はまた、電気を受けて電動機として動作し、いくつもの目的のために原動機30を駆動するように動作可能とし得る。電動機46を、動力伝達システム52から電気を受けて電動機として動作するように動作可能な任意のタイプの構成要素とし得る。電動機/発電機32および電動機46の各々を、例えば、永久磁石型電気機械、スイッチドリラクタンス電気機械、直流機、誘導型機のいずれかまたは当該技術分野で公知の任意の他のタイプの電気機械のいずれかとし得る。
【0020】
電気エネルギー貯蔵装置48を、電気エネルギーを貯蔵しかつ動力伝達システム52と電気を交換する(すなわち、電気を受けたり伝達したりする)ように動作可能な任意のタイプの装置とし得る。例えば、電気エネルギー貯蔵装置48は、1つ以上のバッテリおよび/または1つ以上のコンデンサを含み得る。電気エネルギー貯蔵装置48は陽極端子54および陰極端子56を含み得る。電気エネルギー貯蔵装置48は、機械10の車台13から電気的に絶縁され得る。電気エネルギー貯蔵装置48は、陽極端子54および陰極端子56に電気的に接続された1つ以上の貯蔵セル(図示せず)を含み得る。一部の実施形態では、電気エネルギー貯蔵装置48は、陽極端子54および陰極端子56に直列および/または並列に電気的に接続された複数の貯蔵セルを含み得る。
【0021】
電気エネルギー貯蔵装置48はまた、端子54、56および/または貯蔵セルに接続された種々の他の電気部品を含み得る。例えば、電気エネルギー貯蔵装置48が、互いに接続された複数のエネルギー貯蔵セルを含む一部の実施形態では、電気エネルギー貯蔵装置48は1つ以上の回路を含んで、電気エネルギー貯蔵装置48の充電および/または放電中に1つ以上のセルの周りに電気が流れることを可能にし得る。電気エネルギー貯蔵装置48のこれらのおよび他の構成要素は、電気エネルギー貯蔵装置48の充電中などの所定の状況では、貯蔵セルの相対的な充電レベルが不均衡となった状況においてそのセルの充電の平衡を保つために、限られた電流しか流すことができないかもしれない。
【0022】
電気エネルギー貯蔵装置48は、動力系11用の主電気エネルギー貯蔵装置としての機能を果たし得る。従って、電気エネルギー貯蔵装置48は高いエネルギー貯蔵容量を有し得る。加えて、電気エネルギー貯蔵装置48は、例えば約350ボルトの比較的高い公称定格電圧を有し得る。
【0023】
電気エネルギー貯蔵装置50はまた、電気エネルギーを貯蔵しかつ動力伝達システム52と電気を交換する(すなわち、電気を受けたり伝達したりする)ように動作可能な任意のタイプの装置とし得る。電気エネルギー貯蔵装置48のように、電気エネルギー貯蔵装置50は1つ以上のバッテリおよび/または1つ以上のコンデンサを含み得る。電気エネルギー貯蔵装置50は陽極端子58および陰極端子60を含み得る。一部の実施形態では、端子58、60の一方は車台13に電気的に接続されることにより、端子58、60の電圧は車台を基準にするようにする。例えば、陰極端子60は電気的な接地140を介して車台13に電気的に接続し得る。電気エネルギー貯蔵装置50は動力系11の副電気エネルギー貯蔵装置として機能し得る。加えて、電気エネルギー貯蔵装置50は、エネルギー貯蔵装置48よりも遙かに低い公称定格電圧を有し得る。例えば、電気エネルギー貯蔵装置50は約12ボルトまたは約24ボルトの公称定格電圧を有し得る。
【0024】
動力伝達システム52は、インバータ100、電力調整器102、電力調整器104、および種々の電気コネクタ、例えばこれらの装置を接続する電気線路および/または電気スイッチを含み得る。インバータ100はパワーエレクトロニクスユニット106、パワーエレクトロニクスユニット108、電力線110、111、バルクコンデンサ114、および制御装置112を含み得る。パワーエレクトロニクスユニット106は、電動機46と電力線110、111との間の電力の流れを調整するように動作可能とし得る。パワーエレクトロニクスモジュール106はまた、電動機46と電力線110、111との間に流れる電気の形態を変換するように動作可能とし得る。例えば、パワーエレクトロニクスユニット106は、電動機46での交流電流と電力線110、111での直流との間の変換を行うように動作可能とし得る。同様に、パワーエレクトロニクスモジュール108は、電動機/発電機32と電力線110、111との間の電力の流れを調整するように動作可能とし得る。パワーエレクトロニクスモジュール108はまた、電動機/発電機32での交流電流の電気と電力線110、111での直流の電気とを変換するなど、電動機/発電機32と電力線110、111との間に流れる電気の形態を変換し得る。パワーエレクトロニクスモジュール106、108は、電力を調整および/または変換するために種々のタイプの制御可能な電気部品を含み得る。制御可能な電気部品は、SCR(シリコン制御整流器)、GTO(ゲートターンオフ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、およびFET(電界効果トランジスタ)を含むがこれらに限定されない。バルクコンデンサ114は、電力線110と111との間に接続され、かつ電力線110、111での電圧のいかなる変動も取り除く働きをし得る。インバータ100のこの形態は、パワーエレクトロニクスモジュール106、108および電力線110、111を経由した電動機/発電機32と電動機46との間の電気の交換を可能にし得る。
【0025】
制御装置112は、パワーエレクトロニクスモジュール106、108に動作可能に接続され、制御装置112は、パワーエレクトロニクスモジュール106、108の動作の1つ以上の局面を制御するように構成され得る(例えば、プログラムされ得る)。一部の実施形態では、制御装置112は、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサおよび/または1つ以上のメモリ素子を含み得る。パワーエレクトロニクスモジュール106、108を制御することによって、制御装置112は、電力線110、111上の電圧、および電力線110、111、電動機46、および電動機/発電機32の間を流れる電流量を制御するように動作可能とし得る。一部の実施形態では、制御装置112はパワーエレクトロニクスモジュールを制御して、電力線110、111の電圧を電気エネルギー貯蔵装置48の公称定格電圧よりも高く維持し得る。例えば、電気エネルギー貯蔵装置48の公称定格電圧が約350ボルトである場合、制御装置112はパワーエレクトロニクスモジュール106、108を動作して、電力線の電圧を約650ボルトに維持し得る。
【0026】
電力調整器102は入力/出力端子116、117、118、119を含み得る。電力調整器102は、端子116、117と端子118、119との間で交換される電気の1つ以上の局面を調整可能にする任意の形態を有し得る。電力調整器102は、例えば、端子116、117と端子118、119との間で電気を交換するかどうかを制御するように動作可能とし得る。電力調整器102はまた、端子116、117と端子118、119との間に流れる電気の方向、すなわち、電気が端子116、117から端子118、119へ流れるか、またはその反対方向に流れるかを制御するように構成され得る。電力調整器102は、種々の形態の電気を交換し得る。一部の実施形態では、電力調整器102は、端子116、117、118、119で直流の電気を受けるおよび/または供給するように構成され得る。電力調整器102はまた、端子116、117、118、119の各々での電圧を、および端子116、117、118、119の各々で流れる電流量を制御するように動作可能とし得る。例えば、電力調整器102は、端子116、117と端子118、119との間で伝達された電気を、端子116、117での直流の電気のある電圧(例えば約650ボルト)から、端子118、119での直流の電気の別の電圧(例えば約350ボルト)に変更するように動作可能とし得る。以下さらに説明するように、電力調整器102はまた、動力系11の1つ以上の他の構成要素によって制御可能とし得るので、それらの他の構成要素は、電力調整器102が端子116、117と端子118、119との間の電気の交換を制御する方法を制御し得る。電力調整器102は、上述の機能性を提供することを可能にする構成要素の任意の相応しい構成を含み得る。
【0027】
電力調整器104は入力/出力端子126、127、128、129を含み得る。電力調整器104は、端子126、127と端子128、129との間で交換される電気の1つ以上の局面を調整できるようにする任意の構成を有し得る。電力調整器104は、例えば、端子126、127と端子128、129との間で電気が交換されるかどうかを制御するように動作可能とし得る。電力調整器104は種々の形態の電気を交換し得る。一部の実施形態では、電力調整器104は、端子126、127、128、129直流の電気を受けるおよび/または供給するように構成され得る。電力調整器104はまた、端子126、127、128、129の各々での電圧を、および端子126、127、128、129の各々で流れる電流量を制御するように動作可能とし得る。例えば、電力調整器104は、端子126、127と端子128、129との間で伝達される電気を、端子126、127での直流の電気のある電圧(例えば約12または24ボルト)から、端子128、129での直流の電気の別の電圧(例えば約350ボルト)に変更するように動作可能とし得る。
【0028】
電力調整器104は一方向または双方向電力調整器とし得る。電力調整器104が一方向電力調整器である実施形態では、電力調整器104は、端子126、127と端子128、129との間で一方向にのみ電気を伝達するように動作可能とし得る。例えば、一部の実施形態では、電力調整器104は、端子126、127から端子128、129へ電気を伝達するが、その反対方向には伝達しないように動作可能とし得る。反対に、電力調整器104が双方向電力調整器である実施形態では、電力調整器104は、端子126、127と端子128、129との間を流れる電気の方向、すなわち、電気が端子116、117から端子118、119へ流れるか、またはその反対方向に流れるかを制御するように構成され得る。
【0029】
電力調整器104は、電力調整器104がその端子126、127、128、129間で電気の交換を制御する方法の上述の局面を制御するように構成された(例えば、プログラムされた)制御装置134を含み得る。制御装置134は、電力調整器104のそのような制御を実施できるようにする任意の構成を有し得る。一部の実施形態では、制御装置134は、1つ以上のマイクロプロセッサおよび/または1つ以上のメモリ素子を含み得る。制御装置134はまた、電力調整器102およびインバータ100の制御装置112に動作可能に接続され得るので、制御装置134は、電力調整器102およびインバータ100の動作の1つ以上の局面を監視および/または制御し得る。以下さらに説明するように、制御装置134および電力調整器104は、動力系制御装置26の他の構成要素に動作可能に接続し得るので、それらの他の構成要素は、情報を提供し得るおよび/または制御装置134が電力調整器104、電力調整器102、およびインバータ100を制御する方法の1つ以上の局面を制御し得る。電力調整器104は、上述の機能性を提供できるようにする構成要素の任意の相応しい構成を含み得る。
【0030】
一部の実施形態では、電力調整器104は、少量の電流を電力調整器102よりも正確に制御するように動作可能とし得る。例えば、電力調整器104は、ミリアンペアで測定された電流量および電流の電圧の安定的で効果的な制御を提供するように動作可能とし得るが、電力調整器102は、遙かに大きい電力レベル、数十または数百アンペアの電流量などを制御するように構成され得る。同時に、一部の実施形態では、電力調整器102は電力調整器104よりも高い電力容量を有し得る。例えば、電力調整器102は電力調整器104の電力容量の数十、数百、または数千倍の電力容量を有し得る。
【0031】
インバータ100、電力調整器102、104、電気エネルギー貯蔵装置48、50、電動機46、および電動機/発電機32は、種々の方法で互いに電気的に接続され得る。図2に示すように、一部の実施形態では、電力調整器102の端子116、117はインバータ100の電力線110、111に電気的に接続される。これにより、インバータ100の電力線110、111を介した電力調整器102、電動機46、および電動機/発電機32の間での電気の交換が可能になる。
【0032】
加えて、動力伝達システム52は、電力調整器102の端子118、119を直接または間接的に電力調整器104、電気エネルギー貯蔵装置48、および電気エネルギー貯蔵装置50の各々と接続し得る。電力調整器102の端子118は、例えば、電力調整器104の端子128に連続して電気的に接続され得る。加えて、動力伝達システム52は、閉じられているときに電力調整器102の端子119を電力調整器104の端子129に電気的に接続するように動作可能なスイッチング素子138を含み得る。それゆえ、スイッチング素子138が、電力調整器102の端子118、119が電力調整器104の端子128、129に電気的に接続されるように閉鎖動作状態にあるとき、電力調整器102、104は互いの間で電気を交換し、電力調整器102は電力調整器104を通して電気エネルギー貯蔵装置50に間接的に接続され得る。反対に、スイッチング素子138がその開放動作状態にあるとき、電力調整器102および電力調整器104は互いに効果的に電気的に絶縁され得る。
【0033】
スイッチング素子138はまた、電力調整器102の端子119を電気エネルギー貯蔵装置48の陰極端子56に電気的に接続するように動作可能とし得る。加えて、動力伝達システム52は、閉鎖動作状態にあるときに電力調整器102の端子118を電気エネルギー貯蔵装置48の陽極端子54に電気的に接続するように動作可能なスイッチング素子136を含み得る。それゆえ、スイッチング素子136、138が閉鎖動作状態にあるとき、電力調整器102および電気エネルギー貯蔵装置48は互いの間で電気を交換し得る。反対に、スイッチング素子136、138のいずれかが開放動作状態にあるとき、電気エネルギー貯蔵装置48は電力調整器102から効果的に電気的に絶縁され得る。スイッチング素子136、138は、動力系制御装置26の種々の他の構成要素によって制御され得る。一部の実施形態では、スイッチング素子136、138は、例えば制御装置134によって制御され得る。
【0034】
動力伝達システム52はまた、電力調整器104と電気エネルギー貯蔵装置48との間の電気の交換を可能にするように構成し得る。電力調整器104の端子129は、例えば、電気エネルギー貯蔵装置48の陰極端子56に連続して電気的に接続され得る。加えて、上述のように、電力調整器104の端子128は電力調整器102の端子118に連続して電気的に接続され、スイッチング素子136は、閉鎖動作状態にあるときに電力調整器102の端子118を電気エネルギー貯蔵装置48の陽極端子54に電気的に接続するように動作可能とし得る。それゆえ、スイッチング素子136が閉鎖動作状態にあるときに、電力調整器104および電気エネルギー貯蔵装置48は互いの間で電気を交換し得る。反対に、スイッチング素子136が開放動作状態にあるときには、電力調整器104および電気エネルギー貯蔵装置48は互いに効果的に電気的に絶縁され得る。
【0035】
動力伝達システム52はまた、電気エネルギー貯蔵装置50と電力調整器104との間で電気を伝達し得る。例えば、電力調整器104の端子126は電気エネルギー貯蔵装置50の陽極端子58に連続して接続され得る。加えて、電気エネルギー貯蔵装置50の陰極端子60および電力調整器104の端子127は電気的に共通の大地140、例えば機械10の車台13の導電性部分に電気的に接続され得る。
【0036】
図2に示す動力伝達システム52の例示的な形態は、種々の方法で電力調整器102、104を通して電動機/発電機32、電動機46、電気エネルギー貯蔵装置48、および電気エネルギー貯蔵装置50の間で電気を伝達できるようにし得る。例えば、スイッチング素子136が閉鎖動作状態にあり、スイッチング素子138が開放動作状態にあるとき、動力伝達システム52は、電力調整器104を経由して電気エネルギー貯蔵装置50と電気エネルギー貯蔵装置48との間で電気を伝達し得る。スイッチング素子136が開放動作状態にあり、スイッチング素子138が閉鎖動作状態にあるとき、動力伝達システム52は、電力調整器102、104を経由して電気エネルギー貯蔵装置50、電動機/発電機32、および電動機46との間で電気を伝達し得る。両スイッチング素子136、138が閉鎖しているとき、動力伝達システム52は、電力調整器102、104の一方または双方を通して電気エネルギー貯蔵装置48、電気エネルギー貯蔵装置50、電動機/発電機32、および電動機46の間で電気を自由に交換し得る。
【0037】
図2で示したものに加え、動力系11はまた、いくつもの他の電気負荷および/または電源を含み得る。例えば、電動機46に加えて、動力系11は、種々の他の大型で高電圧の電気負荷、例えば、インバータ100の電力線110、111に接続された駆動モータ18を含み得る。加えて、動力系11は、ライト、計器、センサ、ファンモータなどの小型で低電圧の負荷とし得る、電気エネルギー貯蔵装置50に接続された種々の電気負荷62を有し得る。そのような負荷62は、動力伝達システム52とは別個の低電圧の動力伝達システムを通して電気エネルギー貯蔵装置50に接続され得る。加えて、動力系11は1つ以上の電源を含んで、電気エネルギー貯蔵装置50を充電し得るおよび/またはそれに接続された任意の小型の低電圧負荷に電力を供給し得る。例えば、動力系11は、原動機30によって駆動された従来のオルタネータ(図示せず)を含み得る。複数の電力負荷62、それらを電気エネルギー貯蔵装置50に接続する低電圧の動力伝達システム、ならびに電気エネルギー貯蔵装置50および複数の電力負荷62に接続された他の任意の電気エネルギー源は、例えば大地140への接続によって、車台13を電気的に基準とし得る。
【0038】
動力系制御装置26は、蓄電装置48、50の充放電、原動機30の動作、電動機/発電機32の動作、電動機46の動作、およびこれらのタスク全てに関連する電力転送システム52を通した電気の伝達を制御するように構成され得る。動力系制御装置26は、上述の複数の構成要素、例えばインバータ100、電力調整器102、電力調整器104、およびスイッチング素子136、138を含み得る。これらの構成要素の動作を制御するために、動力系制御装置26の一部の実施形態では1つ以上の他の構成要素を含み得る。例えば、図2に示すように、動力系制御装置26は、電力調整器104の制御装置134に動作可能に接続された制御装置152を含み得る。制御装置152はまた、制御装置152がこれらの構成要素の動作の1つ以上の局面を監視および/または制御できるように、原動機30、電動機/発電機32、および電動機46に動作可能に接続され得る。原動機30、電動機/発電機32、電動機46、および/または動力系11の他の構成要素の種々の運転パラメータに基づいて、制御装置152は動力系11の高レベルの制御を行い得る。その際、制御装置152は、電力調整器104の制御装置134に、電力調整器104、電力調整器102、インバータ100、主電気エネルギー貯蔵装置48、副電気エネルギー貯蔵装置50、および/または動力系11の他の構成要素の動作に対する種々の目標値を提供し得る。例えば、制御装置152は制御装置134に、動力系11の所定の部分における電圧および/または電流に対する目標値を通信し、および制御装置134は、電力調整器104、電力調整器102、インバータ100、スイッチング素子136、138および/または動力系11の他の構成要素を制御して、目標値を達成し得る。制御装置152は、上述の構成要素を制御するために任意の好適な情報処理装置を含み得る。一部の実施形態では、制御装置152は、以下説明するような方法で動力系11を制御するようにプログラムされた1つ以上のマイクロプロセッサおよび/または1つ以上のメモリ素子を含み得る。
【0039】
動力系制御装置26はまた、動力系11の動作の種々の局面を監視するための構成要素を含み得る。例えば、動力系制御装置26は、電気エネルギー貯蔵装置48の端子54、56間の電圧を感知する電圧センサ142を含み得る。この電圧は、電気エネルギー貯蔵装置48の充電レベルを示す機能を果たし得る。動力系制御装置26はまた、電力調整器102の端子118、119間の電圧を感知する電圧センサ144を含み得る。同様に、動力系制御装置26は、電力線110と111との間の電圧を感知する電圧センサ154を含み得る。加えて、動力系制御装置26はまた、端子118の電流量を感知する電流センサ、インバータ100と電動機46との間を流れる電流量を感知する電流センサ148、およびインバータ100と電動機/発電機32との間を流れる電流量を感知する電流センサ150を含み得る。
【0040】
動力系制御装置26はまた、電動機/発電機32のシャフトの回転位置を感知する位置センサ64を含み得る。位置センサ64は、電動機/発電機32のシャフトの位置を感知するように動作可能な任意のタイプのセンサとし得る。一部の実施形態では、位置センサ64は、電動機/発電機32のシャフトが回転しているときのみ、電動機/発電機32のシャフトの回転位置を、位置センサ64によって生成された信号から識別できるようなタイプとし得る。
【0041】
動力系制御装置26のセンサは種々の構成要素に通信できるようにリンクされ得る。例えば、これらのセンサは制御装置134および/または制御装置152に通信できるようにリンクされ得るので、動力系制御装置26は、これらのセンサによって感知されたパラメータを監視し得る。加えて、動力系制御装置26は、動力系11の動作の種々の他の局面、例えば原動機30が電動機/発電機32を駆動しているかどうかおよび電動機/発電機32が電気を生成しているかどうかなどを感知するセンサを含み得る。制御装置134および/または制御装置152および/または動力系制御装置26の他の構成要素はまたこれらの運転パラメータを監視し得る。
【0042】
電気エネルギー貯蔵装置48および電気エネルギー貯蔵装置50は、動力系11の2つの異なる分岐または回路の一部を形成し得る。上述のように、電気エネルギー貯蔵装置48は機械10の車台13から電気的に絶縁され、および電気エネルギー貯蔵装置50は、車台13を大地140へ接続することによって車台13を電気的な基準にし得る。上述のように、電力負荷62、および電気エネルギー貯蔵装置50に接続された種々の他の電気部品は、例えば大地140へ接続することによって、機械10の車台13を電気的な基準にし得る。他方で、電気エネルギー貯蔵装置48のように、電力調整器102、インバータ100、電力線110、111、電動機/発電機32、および電動機46は車台13から、それゆえ、電気エネルギー貯蔵装置50、電気負荷62、および他の車台を基準にする電気部品から電気的に絶縁され得る。それゆえ、電気エネルギー貯蔵装置50、電力負荷62、および他の車台基準構成要素は、動力系11の1つの分岐または回路の一部を形成し得る一方、電気エネルギー貯蔵装置48、電力調整器102、インバータ100、電力線110、111、電動機/発電機32、および電動機46は、動力系11の別個の電気的に絶縁された分岐または回路の一部を形成し得る。上述のように、一部の実施形態では、電気エネルギー貯蔵装置50を含む分岐または回路は低電圧の分岐または回路とし、および電気エネルギー貯蔵装置48を含む分岐または回路は高電圧の分岐または回路とし得る。電力調整器104は、電気エネルギー貯蔵装置50を含む車台基準分岐または回路と、電気エネルギー貯蔵装置48を含む他の分岐または回路との間の橋絡の機能を果たし得る。
【0043】
機械10および動力系11は、図1および図2に示しかつ上記で説明した構成に限定されない。例えば、動力系制御装置26によって扱われる制御タスクは、上述したものとは異なるように制御装置112、134、および152の間で分配され得る。加えて、動力系制御装置26は、動力系11の種々の構成要素間での電気の伝達を制御するために種々の他の構成および/または配置を含み得る。動力系制御装置26のそのような他の構成は、互いに通信できるようにリンクされかつ制御タスクを共有するように動作可能な追加的な制御部品、例えば、制御装置112、134、および152とは別の制御装置を含み得る。反対に、一部の実施形態では、動力系制御装置26は、制御装置112、134、および152のうちの2つ以上の代わりに単一の制御装置を有し得る。加えて、動力系制御装置26は、電力調整器、スイッチング素子、および動力系11の電力負荷と電源との間で電力を伝達する他の構成要素の他の数および/または構成を含み得る。動力系11はまた、上述の例とは異なる数および/または構成の電気エネルギー貯蔵装置を含み得る。加えて、電動機46は、上部旋回体20を軸34の周りで回転させる以外の機能、例えば機械10の他の構成要素を動かす、または機械的な力を供給して機械10を推進させるなどの機能も果たし得る。さらに、機械10は、静止機械を含め、エクスカベータ以外のいくつものタイプの機械のいずれかとし得る。
【産業上の利用可能性】
【0044】
機械10および動力系11は、1つ以上の作業を実施するための動力を必要とする任意の用途での使用法を有し得る。機械10の作動中、動力系制御装置26は、電動機46を作動させて上部旋回体20を軸34の周りで回転させるなど、種々の電気負荷を作動させて種々の作業を実施し得る。動力系11は、種々の状況で種々の源から電動機46および任意の他の電気負荷の動作に必要な電気を提供し得る。状況に応じて、動力系11は、電動機/発電機32、主電気エネルギー貯蔵装置48、および/または副電気エネルギー貯蔵装置50のうちの1つ以上から電動機46および他の電気負荷に電気を提供し得る。
【0045】
多くの場合、原動機30が停止しているときに、原動機30によって動力を提供することが望ましくなり得る。そのような状況では、動力系制御装置26が原動機30を始動し得る。原動機30の始動には、原動機30がそれ自体の動力で動作し始めるまで、外部動力源による原動機30の駆動を必要とし得る。動力系制御装置26は、種々の外部動力源を使用して原動機30を駆動させ、それを始動させ得る。一部の実施形態では、動力系制御装置26は、電動機が主電気エネルギー貯蔵装置48および/または副電気エネルギー貯蔵装置50からの電気エネルギーで原動機30を駆動させるように電動機/発電機32を動作させ得る。動力系制御装置26はそのために種々の手法を使用し得る。
【0046】
図3は、動力系制御装置26が電動機/発電機32によって、および電気エネルギー貯蔵装置48、50の一方または双方からの電気によって原動機30を始動し得る1つの方法を示す。原動機30を始動させるプロセスは、原動機30を始動するコマンドが生成されると開始し得る(ステップ310)。始動コマンドは、種々のエンティティ(entity)によって種々の方法で生成され得る。例えば、始動コマンドは、種々の動作条件に応えて動力系制御装置26によって自動的に生成され得るか、または始動コマンドは、機械10の操作者または1つ以上の非搭載型制御部品から動力系制御装置26によって受信され得る。
【0047】
始動コマンドに応答して、動力系制御装置26は、電動機が原動機30を始動させるために十分長期間原動機を駆動するように、主電気エネルギー貯蔵装置48が電動機/発電機32を動作させるための十分なエネルギーを有しているかどうかを判断し得る(ステップ312)。動力系制御装置26は、主電気エネルギー貯蔵装置48が原動機30を始動させるのに十分なエネルギーを有しているかどうかを評価するために種々の手法を使用し得る。一部の実施形態では、動力系制御装置26は、電圧センサ142からの、主電気エネルギー貯蔵装置48の端子54、56での電圧を示す信号を使用することによって、主電気エネルギー貯蔵装置48のエネルギーレベルを評価し得る。例えば、動力系制御装置26は、主電気エネルギー貯蔵装置48の端子54、56で感知された電圧レベルを基準値と比較して、主電気エネルギー貯蔵装置48が原動機30を始動させるための十分なエネルギーを有しているかどうか判断する。
【0048】
動力系制御装置26が、主電気エネルギー貯蔵装置48のエネルギーは原動機30を始動させるのに不十分であると判断する場合、動力系制御装置26が、副電気エネルギー貯蔵装置50からの電気によって主電気エネルギー貯蔵装置48の充電を開始し得る(ステップ314)。そのためには、動力系制御装置26はスイッチング素子136をその閉鎖動作状態に制御して、電力調整器104の端子128、129が主電気エネルギー貯蔵装置48の端子54、56に電気的に接続されるようにし得る。電力調整器104が主電気エネルギー貯蔵装置48にそのように接続されると、動力系制御装置26は電力調整器104を制御して副電気エネルギー貯蔵装置50からの電気を受け、主電気エネルギー貯蔵装置48に電気を伝達し得る。電力調整器104は副電気エネルギー貯蔵装置50からある電圧で電気を受け、別の電圧で主電気エネルギー貯蔵装置48に電気を供給し得る。例えば、電力調整器104は副電気エネルギー貯蔵装置50から約12または24ボルトで電気を受け、電力調整器104は、主電気エネルギー貯蔵装置48にそれよりも高い電圧、例えば約350ボルトで電気を供給し得る。
【0049】
副電気エネルギー貯蔵装置50からの電気で主電気エネルギー貯蔵装置48を充電する間、動力系制御装置26は、主電気エネルギー貯蔵装置48が原動機30を始動させるのに十分なエネルギーを有しているかどうかを繰り返し再評価し得る(ステップ312)。動力系制御装置26が、主電気エネルギー貯蔵装置48は原動機30を始動させるのに十分なエネルギーを有していると判断すると、動力系制御装置26は、主電気エネルギー貯蔵装置48からの電気によって原動機30を始動させるプロセスを開始し得る。これは、スイッチング素子136、138をそれらの閉鎖動作状態に制御して、主電気エネルギー貯蔵装置48が電力調整器102を介して電力線110、111に電気的に接続されるようにすることを含み得る。
【0050】
主電気エネルギー貯蔵装置48が充電され、かつ電力線110、111に接続された状態では、動力系制御装置26は、種々のステップを実行して、主電気エネルギー貯蔵装置48からの電気によって原動機30を始動し得る。一部の実施形態では、動力系制御装置26は、原動機30を駆動するための電動機/発電機32への電気の供給を適切に制御するために、電動機/発電機32のシャフトの回転位置を知る必要があるかもしれない。加えて、上述のように、一部の実施形態は、回転位置を突き止めるために電動機/発電機32のシャフトを動かすことを必要とするタイプの位置センサ64を有し得る。従って、原動機30を始動させるプロセスの一部として、動力系制御装置26は、位置センサ64からの信号によってシャフトの回転位置を突き止めるのに十分な程度、電動機/発電機32のシャフトを回転させる(ステップ315)。動力系制御装置26は種々の方法によってそれを行うことができる。一部の実施形態では、動力系制御装置26は、目標電圧レベルまでバルクコンデンサ114を充電し、かつパワーエレクトロニクスモジュール108を制御して電気のパルスをバルクコンデンサ114から電動機/発電機32まで伝達し、そのシャフトを、その回転位置を突き止めるのに十分な程度に回転させ得る。動力系制御装置26はまた、原動機30を駆動してそれを始動させ始める前に種々の他の予備ステップを実行し得る。
【0051】
任意のそのような予備ステップが完了したら、電動機が原動機30を駆動するように、動力系制御装置26は、主電気エネルギー貯蔵装置48から電動機/発電機32へ電気を伝達して電動機/発電機32を動作させ得る(ステップ316)。これは、電力調整器102が主電気エネルギー貯蔵装置48から電気を受けて電力線110、111に電気を伝達することを含み得る。パワーエレクトロニクスモジュール108は電力線110、111から電動機/発電機32へ電気を中継し得る。電力調整器102は、主電気エネルギー貯蔵装置48からある電圧で電気を受け、電力線110、111に別の電圧で電気を供給する。例えば、電力調整器102は、主電気エネルギー貯蔵装置48から約350ボルトで電気を受け、電力線110、111に約650ボルトで電気を供給する。
【0052】
パワーエレクトロニクスモジュール108は、電動機/発電機32に種々の形態の電気を供給し、パワーエレクトロニクスモジュール108は種々の運転パラメータに基づいて、電動機/発電機32に供給された電気を制御し得る。一部の実施形態では、パワーエレクトロニクスモジュール108は、電力線110、111での直流電流から、電動機/発電機32に供給された多相の交流電流に電気を変換し得る。加えて、パワーエレクトロニクスモジュール108は、電動機/発電機32のシャフトの判断された回転位置に基づいて、電動機/発電機32に供給された電気の1つ以上の局面、例えば電気の種々の位相のタイミングなどを制御し得る。
【0053】
原動機30がそれ自体の動力で動作し始めると、図3に示す始動ステップは終了し得る。そこで、原動機30が電動機/発電機32を駆動している状態では、動力系制御装置26は、発電機が電力線110、111に電気を供給するように、電動機/発電機32を動作させるように制御し始め得る。動力系制御装置26は、パワーエレクトロニクスモジュール108を動作させて、種々の方法で電動機/発電機32によって電力線110、111に供給された電気を制御し得る。一部の実施形態では、パワーエレクトロニクスモジュール108は、電力線110、111に供給された電気を約650ボルトの直流電流とするように制御し得る。動力系制御装置26は、電力線110、111に供給されたこの電気を使用して種々の作業を行うように、種々の他の構成要素を制御し得る。例えば、動力系制御装置26は、電力線110、111に接続された電動機46および/または他の高電圧負荷を制御して、電動機/発電機32によって電力線110、111に供給された電気で動作するようにし得る。
【0054】
そのような動作中、動力系制御装置26は、電力線110、111に接続された電動機46および他の大型の高電圧負荷の電気条件の変動を吸収するために、主電気エネルギー貯蔵装置48に依存し得る。これは、電力線110、111に接続された電動機46および/または他の電気部品の電力条件が高いときに主電気エネルギー貯蔵装置48から電力線110、111へ電気を伝達するための電力調整器102の制御を含み得る。反対に、電力線110、111に接続された電動機46および/または他の電力負荷の電力条件が低いとき、電力調整器102は、電動機/発電機32によって電力線110、111に供給された電気を主電気エネルギー貯蔵装置48へ伝達してそれを充電し得る。電力調整器102は、電力線110、111と主電気エネルギー貯蔵装置48との間で伝達された電気を種々の方法で制御し得る。一部の実施形態では、電力調整器102は、伝達された電気を、主電気エネルギー貯蔵装置48でのある電圧から電力線110、111での別の電圧に変換し得る。例えば、電力調整器102は、主電気エネルギー貯蔵装置48での約350ボルトから電力線110、111での約650ボルトに変換し得る。
【0055】
電動機/発電機32および/または主電気エネルギー貯蔵装置48が電気を電力線110、111に供給して電動機46および/または他の高電圧の電力負荷に電力を供給している間、副電気エネルギー貯蔵装置50は、動力系11の他の電力負荷に電気を供給し得る。例えば、副電気エネルギー貯蔵装置50は電力負荷62に電気を供給し得る。副電気エネルギー貯蔵装置50はこの電気を、電力線110、111に供給された電気とは異なる電圧で供給し得る。例えば、電力線110、111は電気を約650ボルトで送り得るが、副電気エネルギー貯蔵装置50は、それよりも低い電圧で、例えば約12または24ボルトで電力負荷62に電気を供給し得る。
【0056】
動力系11の動作は、本開示で説明しかつ図3に示した例に限定されない。例えば、動力系制御装置26は、上述のおよび/または図3に示した動作の1つ以上を省略してもよい。一部の実施形態では、動力系制御装置26は、電動機/発電機32を動作させて原動機30を駆動し、それを始動させ始める前に、電動機/発電機32を短期間回転させてそのシャフトの位置を判断する動作を省略してもよい。
【0057】
さらに、動力系制御装置26は、上述の図3に示したものに加えて種々の他の動作を実行してもよい。例えば、図3に示す、原動機30を始動させるプロセスに関連して、動力系制御装置26は、始動プロセスのステータス情報を機械10の操作者に通信してもよい。プロセスをトリガする始動コマンド(ステップ310)が操作者から届いた場合、操作者は、原動機30が遅延なく始動することを期待する傾向にあるであろう。従って、動力系制御装置26がまず主電気エネルギー貯蔵装置48を充電すると決定する場合、動力系制御装置26は操作者に、原動機30は幾分の遅延後に始動されることを通信し得る。
【0058】
動力系制御装置26はまた、原動機30を副電気エネルギー貯蔵装置50からの電気によって始動させることに関して上記で説明したもの以外の手法を使用し得る。図3に示す手法によれば、動力系制御装置26は、主電気エネルギー貯蔵装置48に電気を伝達した後にその電気で原動機30を始動させることによって、副電気エネルギー貯蔵装置からの電気によって原動機30を始動させることがある。一部の実施形態では、代わりに、動力系制御装置26は、主電気エネルギー貯蔵装置48に電気を伝達することなく、副電気エネルギー貯蔵装置50から電力線110、111へ電気を伝達し得る。そのためには、動力系制御装置26は、スイッチング素子138をその閉鎖動作状態に制御し、かつスイッチング素子136をその開放動作状態に制御し得る。これは、電力調整器102を電力調整器104に電気的に接続する一方、主電気エネルギー貯蔵装置48を電力調整器104から電気的に絶縁し得る。
【0059】
動力系11の構成要素がこのように接続されている場合、動力系制御装置26は電力調整器102、104を動作させて、副電気エネルギー貯蔵装置50から電力調整器102へ、および電力調整器102から電力線110、111へ電気を伝達し得る。同時に、動力系制御装置26はパワーエレクトロニクスモジュール108を動作させて、電動機が原動機30を始動させるように、電動機/発電機32へ電気を伝達しそれを動作させる。電力調整器102、104およびパワーエレクトロニクスモジュール108は、種々の方法で副電気エネルギー貯蔵装置50から伝達された電気を、それが電動機/発電機32に流れるときに制御し得る。一部の実施形態では、電力調整器104は、副電気エネルギー貯蔵装置50からの電気をある電圧で受け、電力調整器102に別の電圧で電気を供給する。例えば、電力調整器104は、副電気エネルギー貯蔵装置50からの電気を約12または24ボルトで受け、電力調整器102に約350ボルトで電気を供給する。同様に、電力調整器102は電力線110、111に、それが受けたのとは異なる電圧で電気を供給する。例えば、電力調整器102は、電力線110、111に約650ボルトで電気を供給する。電力調整器104が比較的高電力容量を有する動力系11の実施形態は、電気をまず主電気エネルギー貯蔵装置48に伝達することなく、電動機/発電機32に電気を伝達する上述の手法に特に好適となり得る。
【0060】
動力系制御装置26は、上述のものとは異なる種々の方法での動力系11における電気の伝達を制御し得る。例えば、動力系制御装置26は、動力系11における種々の位置での電圧を、上述の例とは異なる値に制御し得る。加えて、動力系制御装置26は、動力系11における種々の位置で異なるように、電気の形態を制御し得る。例えば、動力系制御装置26は、電力線110、111で送られる電気を、直流の電気の代わりに交流電流の電気となるよう制御し得る。
【0061】
上述の実施形態は所定の利点を提供し得る。例えば、原動機30の始動に副電気エネルギー貯蔵装置50からの電気を使用することは、主電気エネルギー貯蔵装置48のエネルギーがそうするのに不十分であるときに、すぐに利用できる非搭載型電源がない場合でさえも、原動機30の始動を可能にし得る。これは、機械10の利用可能性を著しく増加させ得る。
【0062】
当業者には、本開示の範囲から逸脱せずに、開示のシステムおよび方法に種々の修正および変形をなすことができることが明らかであろう。当業者には、本書に記載したシステムおよび方法の明細書および実施を考慮することから、開示のシステムおよび方法の他の実施形態が明らかであろう。明細書および例は例示にすぎず、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示されることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
10 機械
11 動力系
12 フレーム
13 車台
14 下部走行体
16 推進装置
18 駆動モータ
20 上部旋回体
22 ピボットシステム
24 旋回ベアリング
26 動力系制御装置
30 原動機
32 電動機/発電機
34 垂直軸
36 器具
38 オペレータステーション
46 電動機
48 主電気エネルギー貯蔵装置
50 副電気エネルギー貯蔵装置
51 歯車
52 動力伝達システム
54 陽極端子
56 陰極端子
58 陽極端子
60 陰極端子
62 電気負荷
64 位置センサ
100 インバータ
102、104 電力調整器
106、108 パワーエレクトロニクスユニット
110、111 電力線
112 制御装置
114 バルクコンデンサ
116、117、118、119、126、127、128、129 入力/出力端子
134 制御装置
136、138 スイッチング素子
140 大地
142、144 電圧センサ
148、150 電流センサ
152 制御装置
154 電圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機/発電機に駆動接続された原動機;
第1の電気エネルギー貯蔵装置;
第2の電気エネルギー貯蔵装置;および
動力系制御装置であって、
第2の電気エネルギー貯蔵装置からの電気によって第1の電気エネルギー貯蔵装置を選択的に充電すること;および
第1の電気エネルギー貯蔵装置から電動機/発電機へ電気を伝達して、電動機が原動機を始動させるように電動機/発電機を動作させること
によって原動機を選択的に始動するように構成された動力系制御装置
を含む動力系。
【請求項2】
第2の電気エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵容量が第1の電気エネルギー貯蔵装置よりも小さい、請求項1に記載の動力系。
【請求項3】
動力系制御装置が、第1の電気エネルギー貯蔵装置と第2の電気エネルギー貯蔵装置との間に接続された電力調整器を含み;および
第2の電気エネルギー貯蔵装置からの電気で第1の電気エネルギー貯蔵装置を充電することが:
第2の電気エネルギー貯蔵装置から電力調整器へ電気を伝達すること、および
電力調整器から第1の電気エネルギー貯蔵装置へ電気を伝達すること
を含む、請求項1に記載の動力系。
【請求項4】
動力系制御装置が、第1の電気エネルギー貯蔵装置と第2の電気エネルギー貯蔵装置との間に接続された電力調整器を含み;および
第2の電気エネルギー貯蔵装置からの電気で第1の電気エネルギー貯蔵装置を充電することが:
第2の電気エネルギー貯蔵装置から電力調整器へ第1の電圧で電気を伝達すること、および
電力調整器から第1の電気エネルギー貯蔵装置へ第2の電圧で電気を伝達すること
を含む、請求項1に記載の動力系。
【請求項5】
第2の電圧が第1の電圧よりも高い、請求項4に記載の動力系。
【請求項6】
動力系制御装置が、動力系の電力負荷の1つに電気を伝達するようにさらに動作可能であり、
原動機の始動後、電動機/発電機および第1の電気エネルギー貯蔵装置から第1の電力負荷へ第1の電圧で電力を選択的に伝達すること;および
第2の電気エネルギー貯蔵装置から第2の電力負荷へ第2の電圧で電力を選択的に伝達すること
を含む、請求項1に記載の動力系。
【請求項7】
動力系の動作方法であって、動力系が、電動機/発電機に駆動接続された原動機、第1の電気エネルギー貯蔵装置、および第2の電気エネルギー貯蔵装置を含み、方法が:
第2の電気エネルギー貯蔵装置からの電気で第1の電気エネルギー貯蔵装置を選択的に充電すること、および
第1の電気エネルギー貯蔵装置から電動機/発電機へ電気を伝達して、電動機が原動機を始動させるように電動機/発電機を動作させること
によって原動機を始動させること
を含む、方法。
【請求項8】
第1の電気エネルギー貯蔵装置から第1の電力負荷に第1の電圧で電気を選択的に供給すること;および
第2の電気エネルギー貯蔵装置から第2の電力負荷に第2の電圧で電気を選択的に供給すること
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1の電圧が第2の電圧よりも高い、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
原動機の始動後、発電機として電動機/発電機を動作させること、および電動機/発電機から第1の電力負荷に電気を供給することをさらに含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140123(P2012−140123A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289083(P2011−289083)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】