説明

動圧流体軸受装置およびこれを備えたモータ、記録再生装置

【課題】大きな振動が想定される状況であっても、耐振動性を確保し、騒音の発生を抑えることが可能な動圧流体軸受装置およびこれを備えたモータ、記録再生装置を提供する。
【解決手段】スリーブ32の内周面に形成されるラジアル動圧発生溝41a,41bは、L2<L1/2の関係を満たす形状を有している。L1:ラジアル軸受部42における動圧起因部の軸方向長さ,L2:ラジアル軸受部42の軸方向外側の端部42aと所定のラジアル動圧発生溝41a,41bの中心CL1とが交差する基準点BP1と、所定のラジアル動圧発生溝41aaに対して相対回転方向前方側に隣接するラジアル動圧発生溝41abの相対回転方向後方側端部EL1との軸方向距離

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク、光ディスク等の記録ディスクを回転駆動するモータに搭載される流体軸受装置に関するものであって、特に、モータの小型化に対応可能な流体軸受装置およびこれを備えたモータ、記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等のディスク状の記録媒体を回転駆動する記録装置は、そのメモリー容量が増大するとともにデータの転送速度も高速化している。従って、この種の記録装置に用いられる軸受装置には高速に回転駆動する軸を高精度に保持することが要求されるため、この要求を満たす軸受装置として動圧流体軸受装置が用いられている。
そして、モータのアンバランスやHDD内部の気流の乱れなどによる振動の対策として、例えば、軸方向においては、2箇所のラジアル動圧発生部の圧力発生ピークを高めることで2点の軸受支持力を強くして、軸受部のモーメント剛性を高めることが行われている。そして、この動圧発生部の圧力発生ピークを向上させるために、軸受スパン、動圧発生溝の溝角度、溝幅比、溝深さなどを変化させることが一般的に行われている。
例えば、特許文献1には、軸方向に対して15度〜45度の角度(溝角度)を有する2組のヘリカル溝の間に、80度以上90度未満の角度を有するヘリングボーン溝を形成し、動圧発生溝に発生する圧力を高めることが可能な動圧流体軸受装置が開示されている。また、特許文献2においては、1組のパーシャル溝(逆ハの字形状溝)を連結する溝を設けて、動圧発生溝に発生する圧力を高めることが可能な動圧流体軸受装置が開示されている。さらに、特許文献3には、へリングボーン溝の少なくとも一部を曲線状に形成して、動圧発生溝に発生する圧力を高めることができる動圧流体軸受装置が開示されている。上述の特許文献1〜3は、いずれも、動圧発生溝の形状を変化させて圧力発生ピークを高くすることで、軸受部のモーメント剛性を高くしている。
【特許文献1】特公平7−065611号公報(平成7年7月19日公告)
【特許文献2】特開昭63−266209号公報(昭和63年11月2日公開)
【特許文献3】特開平7−269560号公報(平成7年10月17日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の動圧流体軸受装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記従来の動圧流体軸受装置をパンニングやティルティング等の外乱振動が発生するビデオカメラ,携帯電話,携帯音楽プレーヤなどのようなモバイル製品に搭載した場合、従来、固定部であった、例えば、スリーブ(回転主体がシャフトの場合)自体も振動することとなり、圧力発生ピークを高くするだけではその振動に耐え得るだけの軸受部のモーメント剛性を得ることができない。このため、スリーブの端部に対してシャフトが傾斜した状態で接触することとなり、その接触摺動音が騒音として記録されるような不具合が発生してしまう。
本発明の課題は、大きな外乱振動が想定される状況、例えば、モバイル製品として使用される場合であっても、耐振動性を確保し、騒音の発生を抑えることが可能な動圧流体軸受装置およびこれを備えたモータ、記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明に係る動圧流体軸受装置は、スリーブと、シャフトと、ラジアル軸受部と、を備えている。スリーブは、軸受穴を有している。シャフトは、スリーブの軸受穴内に相対回転可能な状態で配置されている。ラジアル軸受部は、スリーブとシャフトとの間に形成される隙間に充填される潤滑流体と、スリーブの内周面あるいはシャフトの外周面の少なくとも一方に形成されたラジアル動圧発生溝と、を有しており、スリーブとシャフトとの間で相対回転することによってシャフトの半径方向に動圧力を誘起する。そして、ラジアル動圧発生溝が、下記(1)式を満たすように形成されている。
L2<L1/2・・・(1)
L1:ラジアル軸受部で発生する動圧力のシャフトの軸方向における圧力分布において圧力ピークを形成する位置である圧力ピーク形成位置とラジアル軸受部の軸方向外側の端部との間において、シャフトの軸方向に対して傾きを有する部分に該当する動圧起因部の軸方向における長さ
L2:ラジアル軸受部の軸方向外側の端部と所定のラジアル動圧発生溝の中心とが交差する基準点と、所定のラジアル動圧発生溝に対して相対回転方向前方側に隣接するラジアル動圧発生溝の相対回転方向後方側端部との軸方向における距離
なお、ここでいうシャフトは、このシャフトにおける径よりも大径であるフランジ部を有してもよい。また、ラジアル軸受部とは、シャフトの半径方向において、スリーブとシャフトとが互いに対向している部分を言う。そして、相対回転方向とは、回転部材にラジアル動圧発生溝が形成されている場合には回転部材の回転方向、固定部材にラジアル動圧発生溝が形成されている場合には回転部材の回転方向とは反対の方向を意味する。
【0005】
ここで、ラジアル軸受部は、スリーブとシャフトとの間で相対回転することによってシャフトの半径方向に動圧力が誘起される。このとき、シャフトの軸方向(以下、軸方向と示す)における動圧力の圧力分布において、圧力が最大となる位置、すなわち、圧力ピークを形成する軸方向における位置とラジアル軸受部の軸方向外側の端部との間において、ラジアル動圧発生溝がシャフトの軸方向に対して傾きを有する部分を「動圧起因部」と定義すると、L1は、その動圧起因部の軸方向における長さを意味する。例えば、ラジアル動圧発生溝が、相反する溝角度を有する一対のスパイラル溝を連結した略「く」の字形状のへリングボーン形状である場合、L1は、溝角度が反転する「く」の字形状の凸部(交差部)と軸受外側の端部との軸方向における長さとなる。また、ラジアル軸受部の軸方向外側の端部と所定のラジアル動圧発生溝の中心とが交差する点を基準点と定義すると、L2は、その基準点と前述した所定のラジアル動圧発生溝に対して相対回転方向前方側に隣接するラジアル動圧発生溝の相対回転方向後方側に位置する端部との軸方向における距離を意味する。
なお、ラジアル動圧発生溝の中心とは、ラジアル動圧発生溝の溝幅方向における中心線のことを意味する。また、ラジアル動圧発生溝の端部とは、ラジアル動圧発生溝の溝幅方向において溝部分と溝でない部分(丘部)の境界を言う。そして、ラジアル動圧発生溝の相対回転方向後方側に位置する端部は、溝幅方向において最大の圧力が発生する位置でもある。
【0006】
従来、動圧流体軸受装置においては、ラジアル軸受部における動圧の圧力発生ピークを高めること、すなわち、動圧発生溝の溝角度、溝幅比、溝深さ等の要素をそれぞれ個別に変化させることによって圧力発生ピークを高めて動圧流体軸受装置におけるモーメント剛性を得ていた。しかし、動圧流体軸受装置をモバイル製品に搭載した場合、パンニングやティルティング等によって、従来、固定部であった、例えば、スリーブ(回転主体がシャフトの場合)自体も振動することとなり、スリーブとシャフトとが回転中に接触することになる。また、先に述べた要素を変えて圧力発生ピークを高くしようにも、動圧流体軸受装置をコンパクト化するという条件においては限界があり、その振動に耐え得るだけのモーメント剛性を得ることができない。このため、スリーブに対してシャフトが傾斜した状態で接触することとなり、その接触音(騒音)が記録されてしまうといった不具合が発生するおそれがあった。また、モーメント剛性を高くできても軸受損失トルクが犠牲になる場合があり、その結果、消費電力が大きくなるので、モバイル製品には不適当である。
そこで、本発明の動圧流体軸受装置においては、スリーブの内周面あるいはシャフトの外周面の少なくとも一方に形成されたラジアル動圧発生溝の溝形状が、L2<L1/2を満たすように形成されている。
【0007】
これにより、ラジアル軸受部における動圧力の圧力分布において、圧力発生ピークとなる位置以外の動圧力を上昇させて、ラジアル軸受部におけるモーメント剛性を高めている。すなわち、シャフトとスリーブとが接触する位置に近い位置における動圧力を上げることによってラジアル軸受部におけるモーメント剛性を高めて、シャフトとスリーブとの接触の回避あるいは接触時の衝撃を低減するようにしている。
この結果、動圧流体軸受装置が、大きな振動が想定される状況、例えば、モバイル製品として使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。
第2の発明に係る動圧流体軸受装置は、第1の発明に係る動圧流体軸受装置であって、動圧起因部上であって、圧力ピーク形成位置近傍のラジアル動圧発生溝の溝角度は、7度以上20度以下である。
なお、ここで言う溝角度とは、ラジアル動圧発生溝の相対回転方向に対する傾きの角度を意味する。
これにより、ロストルクの増大を防止することが可能となる。この結果、通常時は消費電力が小さく、かつ半径方向の並進剛性を高めることが可能になる。
第3の発明に係る動圧流体軸受装置は、第1の発明に係る動圧流体軸受装置であって、ラジアル動圧発生溝の溝角度は、圧力ピーク形成位置から端部の間で変化しており、端部側の溝角度は、5度以上12度以下である。
【0008】
これにより、潤滑流体を導入する部分の角度が浅くなることから潤滑流体を吸い込みやすくなり、発生する動圧が高くすることが可能となる。また、後述するシャフトとスリーブとが衝突する可能性が高い領域におけるエッジ角度も小さくして衝突音を小さくすると共に、磨耗を抑制することができ長寿命化がはかれる。
第4の発明に係る動圧流体軸受装置は、スリーブと、シャフトと、ラジアル軸受部と、を備えている。スリーブは、軸受穴を有している。シャフトは、スリーブの軸受穴内に相対回転可能な状態で配置されている。ラジアル軸受部は、スリーブとシャフトとの間に形成される隙間に充填される潤滑流体と、スリーブの内周面あるいはシャフトの外周面の少なくとも一方に形成されたラジアル動圧発生溝と、を有しており、スリーブとシャフトとの間で相対回転することによってシャフトの半径方向に動圧力を誘起する。
ここで、ラジアル動圧発生溝の溝角度は、ラジアル軸受部に発生する動圧力のシャフトの軸方向圧力分布における圧力ピーク形成位置から軸方向外側端部の間で変化しており、軸方向外側端部側の溝角度θ1は、5度以上12度以下であり、動圧起因部上であって、圧力ピーク形成位置近傍のラジアル動圧発生溝の溝角度θ2は、7度以上20度以下であり、θ1はθ2より小さく設定している。
【0009】
これにより、ラジアル軸受部における動圧力の圧力分布において、圧力発生ピークとなる位置以外の動圧力を上昇させて、ラジアル軸受部におけるモーメント剛性を高めている。すなわち、シャフトとスリーブとが接触する位置に近い位置における動圧力を上げることによってラジアル軸受部におけるモーメント剛性を高めて、シャフトとスリーブとの接触の回避あるいは接触時の衝撃を低減するようにしている。
この結果、動圧流体軸受装置が、大きな振動が想定される状況、例えば、モバイル製品として使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。ロストルクの増大を防止することが可能となる。この結果、通常時は消費電力が小さく、かつ半径方向の並進剛性を高めることが可能になる。
第5の発明に係る動圧流体軸受装置は、固定体と、回転体と、スラスト軸受部と、を備えている。回転体は、固定体に対して軸方向(アキシャル方向)に微小な空隙を介して相対回転可能な状態に対向配置されている。ここで、回転体と固定体との間の微小空隙を構成する対向面の少なくとも一方には、スラスト動圧発生溝が形成されており、この微小隙間に潤滑流体が充填されることでスラスト軸受部を構成している。すなわち、固定体と回転体とが相対回転することによって、回転体の軸方向に動圧力を誘起する。そして、スラスト動圧発生溝が、下記(2)式を満たすように形成されている。
【0010】
ΔR<(Do−Dcr)/2・・・・・・(2)
Do:スラスト軸受部におけるスラスト動圧発生溝の最外径
Di:スラスト軸受部におけるスラスト動圧発生溝の最内径
Dcr:内径Dcr,外径Doの円環状部の面積が、内径Di,外径Doの円環状部の面積の1/4となる直径
ΔR:スラスト軸受部の外径端部と所定のスラスト動圧発生溝の中心とが交差する基準点と、スラスト軸受部の半径方向外側の端部と所定のスラスト動圧発生溝の中心とが交差する基準点と、所定のスラスト動圧発生溝に対して相対回転方向前方側に隣接するスラスト動圧発生溝の相対回転方向後方側端部との半径方向における距離
なお、軸回転型の場合、回転体は、一般的にシャフトやそれに付随するスラストフランジやロータハブ等を意味し、また、固定体は、スリーブ、スラストプレート等に相当する。また、軸固定型の場合、回転体は、一般的にスリーブ、スラストプレート等を意味し、また、固定体は、シャフトやそれに付随するスラストフランジやロータハブ等に相当する。ただしこれらは上述したものに限定されるものではなく、それに相当するものはすべて該当すると考えて良い。
【0011】
そして、ここで言うスラスト軸受部とは、回転体と固定体とが互いに軸方向に対向して実質的にスラスト動圧を発生している部分を言い、例えば、スラスト板が、シャフトの外径よりも大きな場合には、シャフトとスラスト板とが互いに軸方向に対向している部分、すなわち、シャフトの最外径より内側の範囲をスラスト軸受部とする。さらに言えば、動圧を発生する動圧発生溝が形成されている部分である。
そして、相対回転方向とは、回転部材にスラスト動圧発生溝が形成されている場合には回転部材の回転方向、固定部材にスラスト動圧発生溝が形成されている場合には回転部材の回転方向とは反対の方向を意味する。また、スラスト動圧発生溝の相対回転方向後方側に位置する端部は、溝幅方向において最大の圧力が発生する位置でもある。
ここで、Doは、シャフトとスラスト板とが互いに対向している部分に形成されたスラスト動圧発生溝の最外径、すなわち、スラスト軸受部におけるスラスト動圧発生溝の最外径とする。また、Diは、シャフトとスラスト板とが互いに対向している部分に形成されたスラスト動圧発生溝の最内径、すなわち、スラスト軸受部におけるスラスト動圧発生溝の最内径とする。ここで式(3)のようにDcrを定めると、外径Dcr,内径Diである円環状部の面積は、外径Do,内径Diである円環状部の面積の3/4となる。
【0012】
【数1】

従来、動圧流体軸受装置においては、スラスト軸受部における動圧の圧力発生ピークを高めること、すなわち、動圧発生溝の溝角度、溝幅比、溝深さ等の要素をそれぞれ個別に変化させることによって圧力発生ピークを高めて動圧流体軸受装置におけるモーメント剛性を得ていた。しかし、動圧流体軸受装置をモバイル製品に搭載した場合、パンニングやティルティング等によって、従来、固定部であった、例えば、スリーブやスラスト板自体も振動することとなり、シャフトとスラスト板とが回転中に接触することになる。また、先に述べた要素を変えて圧力発生ピークを高くしようにも、動圧流体軸受装置をコンパクト化するという条件の中においては限界があり、その振動に耐え得るだけのモーメント剛性を得ることができない。このため、スラスト板に対してシャフトが傾斜した状態で接触することとなり、その接触音(騒音)が記録されてしまうといった不具合が発生するおそれがあった。
そこで、本発明の動圧流体軸受装置においては、回転体あるいは固定体の少なくとも一方に形成されたスラスト動圧発生溝が、ΔR<(Do−Dcr)/2を満たすように形成されている。ここで、ΔRは、スラスト軸受部の半径方向外側の端部と所定のスラスト動圧発生溝の中心とが交差する基準点と、所定のスラスト動圧発生溝に対して相対回転方向前方側に隣接するスラスト動圧発生溝の相対回転方向後方側端部との半径方向における距離を意味する。
【0013】
これにより、シャフトの半径方向における動圧力の圧力分布において、圧力発生ピークとなる位置以外の動圧力を上昇させて、スラスト軸受部におけるモーメント剛性を高めている。すなわち、動圧流体軸受装置をコンパクト化するという条件の中においては、圧力発生ピークを高めてモーメント剛性を得るには限界があることから、シャフトとスラスト板とが接触する位置に近い位置における動圧力を高めて、接触の回避あるいは接触時の衝撃を低減するようにしている。
この結果、動圧流体軸受装置が、大きな振動が想定される状況、例えば、モバイル製品として使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。
第6の発明に係る動圧流体軸受装置は、第5の発明に係る動圧流体軸受装置であって、スラスト動圧発生溝の半径方向中心側の溝角度は、7度以上20度以下である。
なお、ここで言う溝角度とは、スラスト動圧発生溝の境界線上の任意点における接線と、スラスト軸受部の中心をその中心とし、この任意点を通る円の接線とがなす角度である。例えば、スラスト動圧溝の形状が対数螺旋である場合には、前述した円の接線方向と対数螺旋の接線方向との角度を意味する。
これにより、エッジ角度を小さくしてロストルクの増大を防止することが可能となる。この結果、回転体と固定体とが衝突する場合においても滑らかに衝突するようになるので、接触時の衝撃を低減する効果が大きくなると共に、通常時は消費電力が小さく、かつ軸方向の並進剛性を高めることが可能になる。
【0014】
第7の発明に係る動圧流体軸受装置は、第5の発明に係る動圧流体軸受装置であって、スラスト動圧発生溝の溝角度は、スラスト軸受部の中心と半径方向端部との間で変化しており、半径方向端部側の溝角度は、5度以上12度以下である。
これにより、潤滑流体を導入する部分の角度が浅くなることから潤滑流体を吸い込みやすくなり、発生する動圧が高くすることが可能となる。
第8の発明に係る動圧流体軸受装置は、固定体と、固定体に対して軸方向に微小な隙間を介して対向配置した回転体と、隙間に充填される潤滑流体と、回転体と固定体との間の少なくとも一方に形成されたスラスト動圧発生溝とを有しており、固定体と回転体との間で相対回転することによって軸方向に動圧力を発生するスラスト軸受部とを備え、スラスト動圧発生溝の溝角度は、スラスト軸受部の半径方向内周側とスラスト軸受部の半径方向外側端部との間で変化しており、半径方向外側端部側の溝角度θ6は、5度以上12度以下であり、スラスト動圧発生溝の半径方向内周側の溝角度θ5は7度以上20度以下であり、半径方向外側端部側の溝角度θ6は、半径方向内周側の溝角度θ5より小さい。
これにより、シャフトの半径方向における動圧力の圧力分布において、圧力発生ピークとなる位置以外の動圧力を上昇させて、スラスト軸受部におけるモーメント剛性を高めている。すなわち、動圧流体軸受装置をコンパクト化するという条件の中においては、圧力発生ピークを高めてモーメント剛性を得るには限界があることから、シャフトとスラスト板とが接触する位置に近い位置における動圧力を高めて、接触の回避あるいは接触時の衝撃を低減するようにしている。
【0015】
この結果、動圧流体軸受装置が、大きな振動が想定される状況、例えば、モバイル製品として使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。また通常時は消費電力が小さく、かつ軸方向の並進剛性を高めることが可能になる。
第9の発明に係るモータは、第1〜8の発明のいずれか1つに係る動圧流体軸受装置と、ベースと、ステータと、ハブと、を備えている。動圧流体軸受装置は、ベースに搭載される。また、ステータは、ベースに固定されている。ロータマグネットは、ステータに対向して配置され、ステータとともに磁気回路を構成している。ハブは、ロータマグネットを固定する。
これによれば、大きな振動が想定される状況で使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。
第10の発明に係る記録再生装置は、第9の発明に係るモータと、記録媒体と、情報アクセス手段と、を備えている。記録媒体は、ハブに固定されており、情報を記録することができる。情報アクセス手段は、記録媒体の所要の位置に情報を書込または読み出すものである。
これによれば、大きな振動が想定される状況で使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る動圧流体軸受装置およびこれを備えたモータ、記録再生装置によれば、大きな振動が想定される状況で使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を搭載したモータ1について、図面を用いて説明する。
なお、以下の説明において、図1における上下方向を「軸方向」、上方向を「軸方向上
側」(軸方向外側)、下方向を「軸方向下側」(軸方向外側)と表現するが、これらは実際の流体軸受装置30の取り付け方向を限定するものではない。
[モータ1全体の構成]
本実施形態に係るモータ1は、図1に示すように、記録ディスク(記録媒体)5を回転駆動するための装置であって、主として、回転部材10と、静止部材20と、流体軸受装置(動圧流体軸受装置)30とを備えている。
回転部材10は、主に、記録ディスク5が装着されるハブ11と、ロータマグネット12とを有している。
ハブ11は、例えば、鉄系金属材料であるステンレンス鋼(例えば、マルテンサイト系またはフェライト系のステンレス鋼材であり、例えば、DHS1など)で形成されており、シャフト31に対して圧入接着等によって、シャフト31と一体化される。また、ハブ11は、外周部に、記録ディスク5を載置するためのディスク載置部11aを一体的に形成している。
【0018】
ロータマグネット12は、ハブ11の外周側の面に固定されており、後述するステータ22とともに磁気回路を構成する。そして、ロータマグネット12は、ネオジウム,鉄,ボロン系樹脂マグネット等の高エネルギー積の磁石材料からなり、表面には防錆処理やチッピング防止処理を兼ねてエポキシ樹脂コーティングやニッケルメッキなどが施されている。
記録ディスク5は、ディスク載置部11aの上に載置され、シャフト31の軸方向上側にネジ15によって固定されたクランパ14によって軸方向下側に押え付けられており、クランパ14とディスク載置部11aとの間に狭持されている。
静止部材20は、図1に示すように、主に、ベース21と、ベース21に固定されたステータ22と、ベース21に固定されたブラケット23と、から構成されている。
ベース21は、記録再生装置のハウジングを兼ねており、後述する流体軸受装置30の土台部分となる第1ベース部21aと、ステータ22をとりつけるための第2ベース部21bとを有する。そして、ベース21は、アルミ系金属材料または鉄系金属材料で形成されている。
ステータ22は、第2ベース部21bに固定されており、ロータマグネット12に対向する位置に配置されている。そして、ステータ22のステータコアは、厚み0.15〜0.20mmの厚みのケイ素鋼板で形成されている。
【0019】
ブラケット23は、シャフト31の凸部31bを挿通する開口部を有する環状の上保持部23a、上保持部23aにつながる比較的厚肉の円筒状の側部23b、及び側部23bにつながり側部23bより薄くなされた円筒状の下保持部23cを有している。そして、ブラケット23は、図1に示すように、ブラケット23内にスリーブ32を挿入すると、ブラケット23の上保持部23aはスリーブ32の上端面とシャフト31の段部31aを覆い、側部23bはスリーブ32の側面を覆う。これにより、ブラケット23は、ブラケット23の上保持部23a内周部がシャフト31の段部31aを覆うため、ブラケット23はシャフト31の抜け止めの機能を有する。また、ブラケット23は、シャフト31とは別の切削性の良いステンレス鋼で形成されているか、または、プレス性の良いステンレス鋼で形成されている。
[流体軸受装置30の詳細構成等]
流体軸受装置30は、図2に示すように、ベース21のほぼ中央部分に形成された開口部に固定されており、静止部材20に対して回転部材10を回転可能な状態で支持する。そして、流体軸受装置30は、主として、シャフト31と、スリーブ32と、スラスト板33と、潤滑流体としてのオイル(潤滑流体)34と、を含むように構成されている。なお、このうちスリーブ32およびスラスト板33が静止側の部材を構成し、シャフト31が回転側の部材を構成する。
【0020】
シャフト31は、鉄系金属材料であるステンレス鋼(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS303等や通常のオーステナイト系ステンレス鋼よりもマンガン含有量を高めたASK8000等、マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS420等)やセラミックスなどで形成された軸方向に延びる円柱状の部材であって、スリーブ32の軸受穴32aに回転可能に挿入されている。具体的には、シャフト31は、スリーブ32とスラスト板33とによって形成された軸受穴32aの内周側に対して隙間を介して相対回転可能な状態で配置されている。そして、シャフト31は、スリーブ32の上面近傍に直径を細くした段部31aを有し、また、ハブ11を取付けるために、凸部31bを有している。凸部31bは、ハブ11が圧入、接着、レーザ溶接などによって固定されている。
スリーブ32は、例えば、純鉄、ステンレス鋼、銅合金および焼結金属等によって形成される軸方向に延びる略円筒状の部材であって、ブラケット23を介してベース21に対して固定されている。
スラスト板33は、鉄系金属材料であるステンレス鋼(例えば、SUS420)や超硬合金鋼(例えば、FB10)で形成されており、スリーブ32の軸方向下側の端部に形成された略円形の開口部を塞ぐように配置されている。これにより、スリーブ32とスラスト板33とによって軸受穴32aが形成される。
【0021】
軸受穴32aの表面、例えばスリーブ32の内周面には当技術分野では周知の2組のへリングボーン形状のラジアル動圧発生溝41a,41bが、また、例えばスラスト板33の上面(シャフト31との対向面)には、スラスト動圧発生溝43が設けられている。このため、シャフト31およびスリーブ32の間には、このラジアル動圧発生溝41a,41bを含むラジアル軸受部42が形成される。また、シャフト31およびスラスト板33の間には、このスラスト動圧発生溝43を含むスラスト軸受部44が形成される。なお、スリーブ32の内周面に形成されるラジアル動圧発生溝41a,41bと、スラスト板33の上面に形成されるスラスト動圧発生溝43の溝形状については、後段にて詳述する。
オイル34は、ラジアル軸受部42およびスラスト軸受部44を含むシャフト31、スリーブ32およびスラスト板33の間に形成される隙間に充填されている。そして、オイル34としては、例えば、低粘度なエステルオイル等を用いることができる。
以上に述べたように、この流体軸受装置30は、2つのラジアル動圧軸受と1つのスラスト動圧軸受とから構成されるフランジレスシャフトタイプである。
[モータ1の動作]
ここで、図1と図2とを参照して、モータ1の動作について説明する。
【0022】
モータ1では、ステータ22に通電されると回転磁界が発生し、ロータマグネット12に回転力が付与される。これにより、回転部材10を、シャフト31を回転中心としてシャフト31とともに回転させることができる。
シャフト31が回転すると、各動圧発生溝41a,41b,43において半径方向および軸方向の支持圧が発生する。これにより、シャフト31がスリーブ32に対して非接触状態で支持される。すなわち、静止部材20に対して回転部材10が非接触状態で回転可能となり、これにより記録ディスク5の高精度な高速回転が実現される。
[ラジアル動圧発生溝41a,41bの形状]
スリーブ32の内周面に形成されるラジアル動圧発生溝41a,41bは、図3に示すように、回転方向に並んで複数配置された溝が、シャフト31の軸方向に2組並んで配置されている。そして、ラジアル動圧発生溝41a,41bの溝形状は、相反する溝角度を有する一対のスパイラル溝を連結した略「く」の字形状のへリングボーン形状であって、下記に示す式(1)の関係を満たすような形状を有している。
L2<L1/2・・・(1)
具体的には、図4に示すように、L1=1.5mm、L2=0.6mmである。
【0023】
ここで、L1は、ラジアル動圧発生溝41a,41bにおいて動圧の発生に起因する部分(以下、動圧起因部)の軸方向長さを意味し、図3に示すような、ラジアル軸受部42の軸方向外側の端部から圧力ピークを形成する位置との間Lにおいて、溝角度θ1,θ2を有している部分の長さに該当する。本実施形態のラジアル動圧発生溝41a,41bにおいては、動圧起因部の長さLと溝角度θ1,θ2を有する部分の長さL1は同じ(L=L1)である。さらに、本実施形態のラジアル動圧発生溝41a,41bは、溝角度θ1,θ2が軸方向で変化している。具体的には、図4に示すように、圧力ピークの位置から軸方向外側に0.8mm離れたところで変化しており、軸方向外側の溝角度(以下、外溝角度と示す)θ1は10度、圧力ピークを形成する位置側の溝角度(以下、内溝角度と示す)θ2は15度である。また、L2は、図3に示すように、ラジアル軸受部42の外側端部42aと所定のラジアル動圧発生溝41aの中心線CL1とが交差する点を基準点BP1と定義すると、その基準点BP1と、所定のラジアル動圧発生溝41aaに対して相対回転方向前方に隣接するラジアル動圧発生溝41abの相対回転方向後方側に位置する端部EL1との距離に該当する。(ここで言う相対回転方向とは、ラジアル動圧発生溝41a,41bが固定部材であるスリーブ32に形成されているので、回転部材の回転方向とは反対の方向、すなわち、シャフト31の回転方向とは反対方向を意味している。)
なお、ここで説明した長さ(L,L1,L2)は、すべてシャフト31の軸方向に対する長さとする。
【0024】
[スラスト動圧発生溝43の形状]
スラスト板33に形成されるスラスト動圧発生溝43(図2参照)は、図5,図6に示すように、回転軸を中心とするスパイラル状に配置されており、下記に示す式(2)の関係を満たすような形状を有している。
ΔR<(Do−Dcr)/2・・・(2)
具体的には、図5に示すように、Do=3mm、Dcr=2.61mm、Di=0.49mm、ΔR=0.157mmである。
ここで、Doは、図5に示すように、スラスト軸受部44におけるスラスト動圧発生溝43の最外径に該当する。なお図5では外径Doのスラスト軸受部44より、さらに外周側に至る領域までスラスト動圧発生溝43を延伸して設けているが、外径Doよりも外側領域は実質的にスラスト動圧を発生しない領域であるので除外して考える。また、Diは、図5に示すように、スラスト軸受部44におけるスラスト動圧発生溝43の最内径に該当する。そして、式(3)のようにDcrを定めると、外径Dcr,内径Diである円環状部の面積は、外径Do,内径Diである円環状部の面積の3/4となる。
【0025】
【数2】

また、ΔRは、図5に示すように、スラスト軸受部44の外側端部44aと所定のスラスト動圧発生溝43aの中心線CL2とが交差する点を基準点BP2と定義すると、その基準点BP2と、所定のスラスト動圧発生溝43aに対して相対回転方向前方の隣接するスラスト動圧発生溝43bの相対回転方向後方側に位置する端部EL2との半径方向距離に該当する。(ここで言う相対回転方向とは、スラスト動圧発生溝43が固定部材であるスラスト板33に形成されているので、回転部材の回転方向とは反対の方向、すなわち、シャフト31の回転方向とは反対方向を意味している。)
さらに、本実施形態のスラスト動圧発生溝43の溝角度θ5,θ6は、中心からの半径が1.25mm離れたところで変化している。具体的には、図6に示すように、外側の溝角度(以下、外溝角度と示す)θ5が10度、圧力ピークを形成する位置側(中心側)の溝角度(以下、内溝角度と示す)θ6が15度である。
[実施例1]
ラジアル動圧発生溝41a,41bの溝形状が、本発明における条件を満たした場合に、騒音を小さくすることができるという効果を確認するために以下の実験を行った。具体的には、以下に示す4パターン(シャフト31の軸方向におけるラジアル軸受部42の段数NとL1)の流体軸受装置について、L2/L1の値と発生する騒音の関係について実験を行った。
【0026】
1)N=2 L1=1.5
2)N=2 L1=1.05
3)N=2 L1=0.45
4)N=1 L1=0.3
騒音レベルを定量的に評価するために、図18に示すようなスイングテーブル装置70を用意して測定を行った。スイングテーブル71上にディスク面が垂直になるようにHDD72を設置し、HDD72の軸受部下端にはコンデンサマイク73をワックスにて固定する。そこでモータを駆動させた状態で、テーブル71を一定周期で台形波的に揺動させた。具体的には0.5秒ごとに60°回転させるように実験を行った。
この結果、図7に示すように、4パターン全ての組み合わせにおいて、発生する騒音の大きさは、L2/L1の値が0.5を境として急激に変化し、L2/L1<0.5の領域で小さくなることが確認できた。これにより、関係式(1)の条件を満たしたラジアル動圧発生溝41a,41bを備えたラジアル軸受部42は、発生する騒音の抑制に対して有効であることが確認できた。
次に、流体軸受装置の構成をシャフト31の軸方向におけるラジアル軸受部42の段数Nを2段、L1の長さを0.45mmに固定して、以下に示す3パターンのL2/L1の値について、発生する騒音について実験を行った。
【0027】
a)L2/L1=0.8
b)L2/L1=0.56
c)L2/L1=0.32
この結果を図8(a)〜図8(c)に示す。同図にはそれぞれ騒音の時間軸波形とテーブル71の回転位相角度出力波形とが表示してある。図に示すように、L2/L1=0.8のとき、発生する騒音が一番大きく、L2/L1=0.32の場合に発生する騒音が一番小さいことが確認された。これにより、関係式(1)の条件を満たしたラジアル動圧発生溝41a,41bを備えたラジアル軸受部は、発生する騒音の抑制に対して有効であることが確認できた。
[実施例2]
スラスト動圧発生溝43の溝形状が、本発明における条件を満たした場合に、騒音を小さくすることができるという効果を確認するために以下の実験を行った。以下に示す3パターン(スラスト動圧発生溝43の数Ngr)の流体軸受装置について、2ΔR/(Do−Dcr)の値と発生する騒音の関係について実験を行った。
1)Ngr=6
2)Ngr=8
3)Ngr=10
騒音レベルを定量的に評価するために、図18に示すようなスイングテーブル装置70を用意して測定を行った。スイングテーブル71上にディスク面が垂直になるようにHDD72を設置し、HDD72の軸受部下端にはコンデンサマイク73をワックスにて固定する。そこでモータを駆動させた状態で、テーブル71を一定周期で台形波的に揺動させた。具体的には0.5秒ごとに60°回転させるように実験を行った。
【0028】
この結果、図9に示すように、3パターン全ての組み合わせにおいて、発生する騒音の大きさは、2ΔR/(Do−Dcr)の値が1.0を境として急激に変化し、2ΔR/(Do−Dcr)<1.0の領域で小さくなることが確認できた。これにより、関係式(2)の条件を満たしたスラスト動圧発生溝43を備えたスラスト軸受部44は、発生する騒音の抑制に対して有効であることが確認できた。
次に、スラスト動圧発生溝43の数を固定して、以下に示す3パターンについて、発生する騒音について実験を行った。
a)ΔRが、(Do−Dcr)/2の2.0倍
b)ΔRが、(Do−Dcr)/2の1.2倍
c)ΔRが、(Do−Dcr)/2の0.6倍
この結果を図10(a)〜図10(c)に示す。同図にはそれぞれ騒音の時間軸波形とテーブル71の回転位相角度出力波形とが表示してある。図に示すように、2ΔR/(Do−Dcr)=2.0のとき、発生する騒音が一番大きく、2ΔR/(Do−Dcr)=0.6の場合に発生する騒音が一番小さいことが確認された。これにより、関係式(2)の条件を満たしたスラスト動圧発生溝43を備えたスラスト軸受部44は、発生する騒音の抑制に対して有効であることが確認できた。
【0029】
[実施例3]
本発明の溝形状の条件を満たしたスラスト動圧発生溝43を備えた流体軸受装置が、耐振動性を確保しているという効果を確認するために以下の実験を行った。具体的には、図11(a)に示すような諸元のスラスト軸受部44において、スラスト板33とシャフト31との最小隙間に対するモーメント剛性Mについて数値解析実験を行った。
この結果を図11(b)に示す。従来の構成のスラスト軸受と比べて、本発明における溝形状の条件を満たしたスラスト動圧発生溝43によるスラスト軸受部44に発生するモーメント剛性Mは、スラスト板33とシャフト31との最小隙間が小さいほど大きいことが確認できた。これにより、モータ1が外部から振動を受けた場合、すなわち、シャフト31あるいはスラスト板33が傾いてシャフト31とスラスト板33との間隙隙間が小さくなった場合ほどモーメント剛性Mが大きくなることが確認できた。この結果、本発明における溝形状を有するスラスト軸受部44は、耐振動性が確保されていると言える。また、シャフト31の軸方向の支持力を示す負荷容量Wは、図11(b)に示すように、本発明における溝形状を有するスラスト軸受部44と従来の構成のスラスト軸受とでは、ほとんど変化がない。これにより、本発明によって負荷容量Wの値を犠牲にすることなくモーメント剛性Mを改善することが可能であることが確認された。
【0030】
次に、本発明におけるスラスト動圧発生溝43の溝角度θ5,θ6の大きさと、スラスト軸受部44におけるモーメント剛性Mとの関係を確認するための数値解析実験を行った。具体的には、図11(a)における諸元表に示された従来の構成のスラスト軸受において発生するモーメント剛性と、本発明の構成のスラスト軸受部44において外溝角度θ5と内溝角度θ6とを変化させたときに発生するモーメント剛性の比を取得した。まず内周側の溝角度θ6を15°に固定して外周側の溝角度θ5を変化させた場合、図12(a)に示すように、外溝角度θ5がおよそ3度から15度の間において、従来構成の軸受部よりモーメント剛性が大きくなることが確認でき、特に、モーメント剛性比が1.5以上となる溝角度は5度から12度の範囲であることが確認できた。次に外溝角度θ5を10゜に固定して内溝角度θ6を変化させた場合、図12(b)に示すように、内溝角度θ6においては、全範囲について、従来構成のスラスト軸受よりもモーメント剛性が大きくなることが確認でき、特に、モーメント剛性比が1.5以上となる溝角度は7度から20度の範囲であることが確認できた。これにより、本発明におけるスラスト動圧発生溝43の外溝角度θ5が5度から12度、内溝角度θ6が7度から20度の範囲にある場合、従来のスラスト軸受に比べてモーメント剛性Mが大きくなることが確認できた。よって、本発明における溝形状の条件を満たしたスラスト動圧発生溝43を含むスラスト軸受部44は、耐振動性が確保されていると言える。
【0031】
[実施例4]
図13を用いて本発明が騒音を抑制するメカニズムについて説明する。
本発明における溝形状の条件を満たしたラジアル動圧発生溝41a,41bによるラジアル軸受部42において、図13が示す一正面図は、シャフト31とスリーブ32との接触によって騒音が発生する可能性が高い場面を示している。図13では、ラジアル動圧発生溝41a,41bと溝のない丘部とのエッジの部分にシャフト31が接触する場面を示しており、この場面において接触や衝突による騒音が発生すると考えられる。
まず図13に示す状態が最も衝突による騒音が発生しやすいと考えられる根拠を説明する。
図13に示す2つの圧力分布図は、この状態におけるラジアル軸受部42の軸方向断面(A−A)において半径方向に発生する圧力と、ラジアル軸受部42の回転方向断面(B−B)において半径方向に発生する圧力とを示している。同図に示すように、シャフト31の回転方向(B−B)に発生する圧力は、ラジアル動圧発生溝41a,41bの相対回転方向後方端部EL4において、最大となっている。さらに任意位置における圧力を求めると、同図において網掛け処理を施した各溝部の境界のうち、太線で描かれた左側の境界線上で溝内の最大圧力が発生することがわかる。
【0032】
したがって、シャフト31に外乱振動が加わり、シャフト31がスリーブ32上の丘部であるEC4−EC5間に近接するときには、シャフト31がスリーブ32と接触する軸方向外側の端部42aの直近に前記最大圧力発生部が位置するので、このような場合には大きな外乱が加わっても衝撃的に接触しないので強い衝突は生じない。
一方、シャフト31に外乱振動が加わり、シャフト31がスリーブ32上の溝部のエッジであるEC3とEC4との間に接近するときには、上記の場合とは全く異なる現象を生ずる。まずラジアル軸受の軸方向外側の端部42a上では、ラジアル軸受の開放端に近いので、ラジアル動圧はほとんどゼロであり、しかも溝部の最も深い部分である溝中心線は、シャフト31の外周との間に必ず隙間が生ずるように設定される。しかも、前記最大圧力発生部は軸方向下方に遠く離れるので、シャフト31がスリーブ32に接近するのを妨げるような力が生じにくい。したがって、シャフト31はEC3−EC4間の溝部に近接するときは衝撃的に衝突することになる。しかも溝部のエッジであるEC3,EC4は丘部に比較してその両端にシャープなエッジを形成するのでより衝撃は大きくなり騒音も大きくなる。
この接触を防止もしくは緩和するには、軸方向端部EC3,EC4との回転方向中央部における半径方向の支持力を高めることが望ましい。さらに、その支持力は、できるだけラジアル軸受部42の外側の端部42aの近傍で発生することが望ましい。このような支持力を発生させれば、スリーブ32とシャフト31とが接触する可能性のあるラジアル軸受部端部42aを半径方向に十分な動圧で支持し、接触の回避あるいは接触時の衝撃を低減することが可能となる。
【0033】
本発明のラジアル動圧発生溝41a,41bの形状は、L2<L1/2を満たす。この条件によれば、前方端部EC3と後方端部EC4との中央部に発生する支持力の軸方向位置をスリーブ32とシャフト31とが接触するラジアル軸受部端部42aに比較的近づけることができる。これにより、スリーブ32とシャフト31との接触を回避あるいは接触時の衝撃を低減することが可能となり、騒音を抑制することが可能となる。またL2<L1/2を満たすようにラジアル動圧発生溝の形状を設定することで、図3におけるθ1が小さくなる。その結果、図13に示すエッジ角θeがさらに大きくなり、衝突時の衝撃も小さくなると共に、磨耗も緩和されるという効果がある。
以上ラジアル軸受を例にとって本発明によって騒音が小さくなるメカニズムを説明したが、スラスト軸受の場合も同様の考え方で衝突を緩和することが説明可能である。その差はラジアル軸受の場合はL1とL2の関係式で定義されたのが、スラスト軸受の場合はDcr,Do,Diの関係式で定義されるというだけである。
なおラジアル動圧発生溝の加工はボール転造方法、NC旋盤加工法、電解加工法、エッチング加工法などが一般に用いられる。一方、スラスト動圧発生溝の加工は、NC旋盤加工法、電解加工法、エッチング加工法やコイニングなどのプレス加工等が広く用いられる。これらの加工法の中でボール転造方法、NC旋盤加工法、電解加工法、コイニングなどのプレス加工などは特に動圧発生溝の溝部分との境界のエッジ角度θeを大きく設定できるので、低騒音化に関して特に有利である。
【0034】
[モータ1の特徴]
(1)
本実施形態のモータ1は、図4に示すように、L1=1.5mm、L2=0.6mmであって、下記に示す式(1)の関係を満たすような形状を有している。
L2<L1/2・・・(1)
これにより、シャフト31の軸方向における動圧力の圧力分布において、シャフト31とスリーブ32端部とが接触する位置に近い位置における動圧力を上げて、接触の回避あるいは接触時の衝撃を低減するようにしている。
この結果、モータ1が、大きな振動が想定される状況で使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。
(2)
本実施形態のモータ1においては、図4に示すように、ラジアル動圧発生溝41a,41bの外溝角度θ1が10度である。
この結果、シャフト31とスリーブ32の端部とが衝突する場合においても滑らかに衝突するようになるので、接触時の衝撃を低減する効果が大きくなる。またその結果衝突による磨耗を抑制し、長寿命の軸受を提供することができる。
【0035】
(3)
本実施形態のモータ1においては、ラジアル動圧発生溝41a,41bの溝角度θ1,θ2が変化しており、内溝角度θ2が15度である。
これにより、ラジアル軸受部の摩擦ロストルクを増大させることなく、ラジアル並進方向の軸受剛性を高めることができる。また、この溝角度が変化する位置は、軸受長さL1の20〜80%の位置であれば効果を見込むことができる。
(4)
本実施形態のモータ1は、図6に示すように、Do=3mm、Dcr=2.61mm、Di=0.49mm、ΔR=0.157mmであって、下記に示す式(2)の関係を満たすような形状を有している。
ΔR<(Do−Dcr)/2・・・・・・(2)
これにより、シャフト31の半径方向における動圧力の圧力分布において、シャフト31とスラスト板33とが接触する部分に近い位置における動圧力を上げて、接触の回避あるいは接触時の衝撃を低減するようにしている。
この結果、モータ1が、大きな振動が想定される状況で使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる。
【0036】
(5)
本実施形態のモータ1においては、図6に示すように、外溝角度θ5が10度である。
この結果、シャフト31とスラスト板33とが衝突する場合においても滑らかに衝突するようになるので、接触時の衝撃を低減する効果が大きくなる。
(6)
本実施形態のモータ1では、スラスト動圧発生溝43の溝角度θ5,θ6が変化しており、内溝角度θ6が15度である。
これにより、スラスト軸受部の摩擦ロストルクを増大させることなく、スラスト軸受の軸方向剛性を高めることができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態のモータ1では、ラジアル動圧発生溝41a,41bの形状をL1=1.5mm、L2=0.6mmとする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
例えば、ラジアル動圧発生溝の形状をL1=0.45mm、L2=0.18mmやL1=1.05mm、L2=0.42mm等としてもよい。この場合も、ラジアル動圧発生溝の形状がL2<L1/2の関係を満たしていれば、上記の実施形態に係るモータ1と同様の効果を得ることができる。
(B)
上記実施形態のモータ1では、ラジアル動圧発生溝41a,41bの外溝角度θ1が10度とする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル動圧発生溝の外溝角度θ1は、6度や8度等、5度から12度の範囲であればよい。
(C)
上記実施形態のモータ1では、ラジアル動圧発生溝41a,41bの溝角度が、軸受中央部から端部の間で変化する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル動圧発生溝41a,41bの溝角度が、軸受中央部から端部の間で変化することなく、一定の溝角度θ1を有していてもよい。
【0038】
また、ラジアル動圧発生溝41a,41bの溝角度が、軸受中央部から端部の間で変化する場合には、外溝角度θ1が内溝角度θ2よりも小さければよい。
(D)
上記実施形態のモータ1では、ラジアル動圧発生溝41a,41bの内溝角度θ2が15度とする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル動圧発生溝の外溝角度θ2は、8度や18度等、7度から20度の範囲であればよい。
(E)
上記実施形態のモータ1では、ラジアル軸受部42がシャフト31の軸方向に2段配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル軸受部がシャフトの軸方向に1段や3段配置する等、1段以上配置すれば、上記の実施形態に係るモータ1と同様の効果を得ることができる。
(F)
上記実施形態のモータ1では、ラジアル動圧発生溝41a,41bの溝形状は、相反する溝角度を有する一対のスパイラル溝を連結した略「く」の字形状のへリングボーン形状を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
例えば、図14(a)に示すようなスパイラル形状や、図14(b)に示すようなヘリングボーン形状であってもよい。この場合におけるL1、L2の定義は、図14(a)、図14(b)に示す通りである。
なお、ラジアル軸受部と呼ぶ領域は図17(b)に示すように、実質的にラジアル方向の動圧を発生する領域Rd1をいい、溝を形成していてもシャフトとスリーブとの間に動圧を発生する微小隙間を構成しない領域は除外する。
(G)
上記実施形態のモータ1では、スリーブ32の内周面にラジアル動圧発生溝41a,41bが形成され、シャフト31が回転部材である例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル動圧発生溝は、シャフトに形成されていてもよい。この場合における相対回転方向とは、シャフトが回転する方向を言う。また、ラジアル動圧発生溝がシャフトに形成されており、スリーブが回転部材であってもよい。この場合における相対回転方向とは、スリーブの回転方向とは逆の方向を言う。
なお、本実施形態における相対回転方向とは、シャフト31が回転する方向とは逆の方向を言う。
【0040】
(H)
上記実施形態のモータ1では、スラスト動圧発生溝43の形状を、図6に示すように、Do=3mm、Dcr=2.61mm、Di=0.49mm、ΔR=0.157mmとする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、Do=6mm、Dcr=5.408mm、Di=3mm、ΔR=0.18mmと、シャフトの外径よりも大なるフランジ部をシャフトに固定した構成としてもよい。この場合も、スラスト動圧発生溝の形状がΔR<(Do−Dcr)/2の関係を満たしていれば、上記の実施形態に係るモータ1と同様の効果を得ることができる。
(I)
上記実施形態のモータ1では、スラスト動圧発生溝43の外溝角度θ5が10度とする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、スラスト動圧発生溝の外溝角度は、6度や8度等、5度から12度の範囲であればよい。
(J)
上記実施形態のモータ1では、スラスト動圧発生溝43の溝角度が、軸受中心部から端部の間で変化する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
例えば、スラスト動圧発生溝43の溝角度が、軸受中心部から端部の間で変化することなく、一定の溝角度θ5を有していてもよい。
また、スラスト動圧発生溝43の溝角度が、軸受中央部から端部の間で変化する場合には、外溝角度θ5が内溝角度θ6よりも小さければよい。
(K)
上記実施形態のモータ1では、スラスト動圧発生溝43の内溝角度θ6が15度とする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、スラスト動圧発生溝の内溝角度は、8度や18度等、7度から20度の範囲であればよい。
(L)
上記実施形態のモータ1では、スラスト板33に形成されるスラスト動圧発生溝43は、図5,図6に示すように、回転軸を中心とするスパイラル状に配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、スラスト板に形成されるスラスト動圧発生溝を、図15に示すように、へリングボーン形状に配置してもよい。この場合におけるDo、Dcr、Di、ΔRの定義は、図15に示す通りである。
【0042】
(M)
上記実施形態のモータ1では、シャフト31に形成されたスラスト動圧発生溝43およびスラスト板33の間において、スラスト軸受部44が形成された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図17(a)に示すように、シャフト31における径よりも大径であるスラストフランジ80を有していて、そのフランジ部にスラスト動圧発生溝43bが形成されていてもよい。
なお、図17(a)に示すように、スラストフランジ80の上下面にスラスト動圧発生溝43a,43bが形成されている場合、そのいずれか一方が前記Do、Dcr、Di、ΔRの関係を満たしていても良いし、双方とも満足していても良い。
またスラスト軸受部は前述のように、実質的なスラスト動圧を発生する部分をいい、図17(a)においては領域Th1,Th2が該当する。
(N)
上記実施形態のモータ1では、スラスト板33にスラスト動圧発生溝43が形成され、シャフト31が回転部材である例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
例えば、スラスト動圧発生溝は、シャフトに形成されていてもよい。この場合における相対回転方向とは、シャフトが回転する方向を言う。また、スラスト動圧発生溝がシャフトに形成されており、スラスト板が回転部材であってもよい。この場合における相対回転方向とは、シャフトの回転する方向とは逆の方向を言う。
なお、本実施形態における相対回転方向とは、シャフト31が回転する方向とは逆の方向を言う。
(O)
上記実施形態のモータ1では、ロータマグネット12の外周側にステータ22を対向配置した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえばロータマグネットの内周側にステータを対向配置した、いわゆるアウターロータタイプのモータでも良い。またリング状磁石と空芯コイルとを軸方向に対向配置した、いわゆるフラットモータでも良い。
(P)
上記実施形態では、本発明をモータ1に対して適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
例えば、図16に示すように、上記構成を有するモータ1を搭載しており、記録ヘッド60aによって記録ディスク5に記録された情報を再生したり、記録ディスク5に対して情報を記録したりする記録再生装置60に対して本発明を適用することもできる。
これにより、大きな振動が想定される状況で使用される場合であっても、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることができる小型・薄型化に対応可能な記録再生装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、耐振動性を確保し騒音の発生を抑えることが可能になるため、例えば、常にユーザの手の中であらゆる方向に振られ、パンニングやティルティングしやすい小型のムービー等に搭載される再生記録装置等への適用が特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を含むモータの外観図。
【図2】図1のモータに含まれる流体軸受装置の拡大断面図。
【図3】図2の流体軸受装置を形成するラジアル動圧発生溝の説明図。
【図4】図2の流体軸受装置を形成するラジアル軸受部の断面図。
【図5】図2の流体軸受装置を形成するスラスト動圧発生溝の説明図。
【図6】図2の流体軸受装置を形成するスラスト軸受部の平面図。
【図7】ラジアル軸受部におけるL2/L1と騒音との関係を示す実験結果。
【図8】(a)ラジアル軸受部においてL2/L1が0.8のときに発生する騒音測定結果、(b)ラジアル軸受部においてL2/L1が0.56のときに発生する騒音測定結果、(c)ラジアル軸受部においてL2/L1が0.32のときに発生する騒音測定結果。
【図9】スラスト軸受部におけるΔRによる騒音と騒音との関係を示す実験結果。
【図10】(a)スラスト軸受部においてΔRが(Do−Dcr)/2の2倍のときに発生する騒音測定結果、(b)スラスト軸受部においてΔRが(Do−Dcr)/2の1.2倍のときに発生する騒音測定結果、(c)スラスト軸受部においてΔRが(Do−Dcr)/2の0.6倍のときに発生する騒音測定結果。
【図11】(a)図2の流体軸受装置を形成するスラスト軸受部と、従来のスラスト軸受部についての諸元、(b)図2の流体軸受装置を形成するスラスト軸受部と、従来のスラスト軸受部についてのスラスト板とシャフトにおける隙間に対するモーメント剛性。
【図12】(a)図2の流体軸受装置を形成するスラスト軸受部における外溝角度を変化させた時の従来のスラスト軸受部に対するモーメント剛性比、(b)図2の流体軸受装置を形成するスラスト軸受部における内溝角度を変化させた時の従来のスラスト軸受部に対するモーメント剛性比。
【図13】図2の流体軸受装置を形成するラジアル軸受部におけるシャフトの軸方向(A−A)と、シャフトの半径方向(B−B)とに発生する圧力を示した図。
【図14】(a)本発明のさらに他の実施形態に係るスパイラル形状のラジアル動圧発生溝、(b)本発明のさらに他の実施形態に係るヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝。
【図15】本発明のさらに他の実施形態に係るヘリングボーン形状のスラスト動圧発生溝。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係る記録再生装置の構成を示す内部断面図。
【図17】(a)本発明のスラスト軸受部の横断面図、(b)本発明のラジアル軸受部の横断面図。
【図18】騒音測定用スイングテーブルの斜視図。
【符号の説明】
【0047】
1 モータ
5 記録ディスク(記録媒体)
10 回転部材
11 ハブ
11a ディスク載置部
12 ロータマグネット
14 クランパ
15 ネジ
20 静止部材
21 ベース
21a 第1ベース部
21b 第2ベース部
22 ステータ
23 ブラケット
23a 上保持部
23b 側部
23c 下保持部
30 流体軸受装置(動圧流体軸受装置)
31 シャフト
31a 段部
31b 凸部
32 スリーブ
32a 軸受穴
32b 面取り部
33 スラスト板
34 オイル(潤滑流体)
41a,41b,41aa,41ab ラジアル動圧発生溝
42 ラジアル軸受部
42a ラジアル軸受部端部
43,43a,43b スラスト動圧発生溝
44 スラスト軸受部
44a スラスト軸受部端部
60 記録再生装置
60a 記録ヘッド
70 スイングテーブル装置
71 テーブル
72 HDD
73 コンデンサマイク
80 スラストフランジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受穴を有するスリーブと、
前記スリーブの前記軸受穴内に相対回転可能な状態で配置されたシャフトと、
前記スリーブと前記シャフトとの間に形成される隙間に充填される潤滑流体と、前記スリーブの内周面あるいは前記シャフトの外周面の少なくとも一方に形成されたラジアル動圧発生溝と、を有しており、前記スリーブと前記シャフトとの間で相対回転することによって前記シャフトの半径方向に動圧力を発生するラジアル軸受部と、
を備えており、前記ラジアル動圧発生溝が、下記(1)式を満たすように形成されている動圧流体軸受装置。
L2<L1/2・・・(1)
L1:前記ラジアル軸受部に発生する前記動圧力の前記シャフトの軸方向圧力分布における圧力ピーク形成位置と前記ラジアル軸受部の前記軸方向外側の端部である軸方向外側端部との間であって、前記シャフトの軸方向に対して傾きを有する部分に該当する動圧起因部の前記軸方向における長さ
L2:前記ラジアル軸受部の前記軸方向外側端部と所定のラジアル動圧発生溝の中心とが交差する基準点と、前記所定のラジアル動圧発生溝に対して相対回転方向前方側に隣接するラジアル動圧発生溝の前記相対回転方向後方側の端部である相対回転方向後方側端部との前記軸方向における距離
【請求項2】
前記動圧起因部上であって、前記圧力ピーク形成位置近傍の前記ラジアル動圧発生溝の溝角度は、7度以上20度以下である、
請求項1に記載の動圧流体軸受装置。
【請求項3】
前記ラジアル動圧発生溝の溝角度は、前記圧力ピーク形成位置から前記軸方向外側端部の間で変化しており、前記軸方向外側端部側の前記溝角度は、5度以上12度以下である、
請求項1に記載の動圧流体軸受装置。
【請求項4】
軸受穴を有するスリーブと、
前記スリーブの前記軸受穴内に相対回転可能な状態で配置されたシャフトと、
前記スリーブと前記シャフトとの間に形成される隙間に充填される潤滑流体と、
前記スリーブの内周面あるいは前記シャフトの外周面の少なくとも一方に形成されたラジアル動圧発生溝と、
を有しており、前記スリーブと前記シャフトとの間で相対回転することによって前記シャフトの半径方向に動圧力を発生するラジアル軸受部と、
を備えており、
前記ラジアル動圧発生溝の溝角度は、前記ラジアル軸受部に発生する前記動圧力の前記シャフトの軸方向圧力分布における圧力ピーク形成位置から前記軸方向外側端部の間で変化しており、前記軸方向外側端部側の溝角度θ1は、5度以上12度以下であり、
前記動圧起因部上であって、前記圧力ピーク形成位置近傍の前記ラジアル動圧発生溝の溝角度θ2は、7度以上20度以下であり、前記軸方向外側端部側の溝角度θ1は前記圧力ピーク形成位置近傍の溝角度θ2より小さい動圧流体軸受装置。
【請求項5】
固定体と、
前記固定体に対して軸方向に微小な隙間を介して対向配置した回転体と、
前記隙間に充填される潤滑流体と、前記回転体と前記固定体との間の少なくとも一方に形成されたスラスト動圧発生溝と、
を有しており、前記固定体と前記回転体との間で相対回転することによって前記軸方向に動圧力を発生するスラスト軸受部と、
を備えており、
前記スラスト動圧発生溝が、下記(2)式を満たすように形成されている動圧流体軸受装置。
ΔR<(Do−Dcr)/2・・・・・・(2)
Do:前記スラスト軸受部における前記スラスト動圧発生溝の最外径
Di:前記スラスト軸受部における前記スラスト動圧発生溝の最内径
Dcr:内径Dcr,外径Doの円環状部の面積が、内径Di,外径Doの円環状部の面積の1/4となる直径
ΔR:前記スラスト軸受部の外径端部と所定のスラスト動圧発生溝の中心とが交差する基準点と、前記所定のスラスト動圧発生溝に対して相対回転方向の前方側に隣接するスラスト動圧発生溝の前記相対回転方向の後方側の端部である相対回転方向後方側端部との前記スラスト軸受部の半径方向における距離
【請求項6】
前記スラスト動圧発生溝の前記半径方向内周側の溝角度は7度以上20度以下である、
請求項5に記載の動圧流体軸受装置。
【請求項7】
前記スラスト動圧発生溝の溝角度は、前記スラスト軸受部の半径方向内周側と前記スラスト軸受部の半径方向外側端部との間で変化しており、前記半径方向外側端部側の溝角度は、5度以上12度以下である、
請求項5に記載の動圧流体軸受装置。
【請求項8】
固定体と、
前記固定体に対して軸方向に微小な隙間を介して対向配置した回転体と、
前記隙間に充填される潤滑流体と、前記回転体と前記固定体との間の少なくとも一方に形成されたスラスト動圧発生溝と、
を有しており、前記固定体と前記回転体との間で相対回転することによって前記軸方向に動圧力を発生するスラスト軸受部と、
を備えており、
前記スラスト動圧発生溝の溝角度は、前記スラスト軸受部の半径方向内周側と前記スラスト軸受部の半径方向外側端部との間で変化しており、前記半径方向外側端部側の溝角度θ6は、5度以上12度以下であり、
前記スラスト動圧発生溝の前記半径方向内周側の溝角度θ5は7度以上20度以下であり、
前記半径方向外側端部側の前記溝角度θ6は、前記半径方向内周側の前記溝角度θ5より小さい動圧流体軸受装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の動圧流体軸受装置と、
ベースと、
前記ベースに固定されるステータと、
前記ステータに対向して配置され、前記ステータとともに磁気回路を構成するロータマグネットと、
前記ロータマグネットを固定するハブと、
を備えるモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のモータと、
前記ハブに固定された、情報を記録できる記録媒体と、
前記記録媒体の所要の位置に情報を書込または読み出すための情報アクセス手段と、
を備えた記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−333115(P2007−333115A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166554(P2006−166554)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】