説明

動圧軸受の性能評価方法

【課題】動圧軸受の性能を正確かつ簡便に評価できる動圧軸受の性能評価方法を提供すること。
【解決手段】スピンドルモータ1の回転部を図1にαで示す方向にz軸の回りに回転させた状態で、入力軸3を図1にβで示す方向にx軸の回りに揺動させる。このようにして、上記回転部にジャイロ荷重を作用させて、上記回転部を図1にγで示す方向にy軸の回りに揺動させることにより、スピンドルモータ1の回転軸部と、スピンドルモータ1のスリーブ部とのラジアル隙間を変化させる。上記ジャイロ荷重の値を算出すると共に、上記ラジアル隙間を測定することにより、スピンドルモータ1が有する動圧軸受の剛性およびラジアル負荷容量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動圧軸受の性能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、すべり軸受の性能評価方法としては、特開2000−202737号公報(特許文献1)に記載されている静圧軸受の性能評価方法がある。
【0003】
この静圧軸受の性能評価方法は、カッター等を取り付ける主軸と、空気静圧スピンドルと、静圧軸受と、荷重付加装置と、変位測定装置とを備える判定装置を用いて行われる。
【0004】
上記空気静圧スピンドルは、内周円筒面を有している。上記空気静圧スピンドルは、上記主軸の一端部を覆うように、上記主軸の一部分の径方向の外方に配置されている。また、上記静圧軸受は、上記主軸の一端部と、上記空気静圧スピンドルとの間に配置されている。また、上記荷重付加装置は、上記主軸の静圧軸受側と反対側の他端部に、荷重付加部材を接触させることにより、上記主軸に径方向に作用する荷重を付加するようになっている。また、上記変位測定装置は、上記主軸の他端部の径方向の変位を測定するようになっている。
【0005】
この静圧軸受の性能判定方法は、上記静圧軸受の駆動時に、回転している主軸の他端部に上記荷重付加部材を接触させることによって、上記主軸に荷重を付加するようになっている。そして、上記変位測定装置によって、上記静圧軸受の駆動時における上記主軸の他端部の変位を測定して、上記主軸の剛性および上記静圧軸受の負荷容量等を測定するようになっている。
【0006】
しかしながら、上記従来の静圧軸受の性能判定方法では、回転している主軸に上記荷重付加部材を接触させることによって、上記主軸の剛性や上記静圧軸受の負荷容量等を測定するようになっているので、上記主軸を回転させるモータの出力が小さい場合、上記主軸と上記荷重付加部材との摩擦力によって、上記主軸の回転が停止して、上記主軸の剛性や上記静圧軸受の負荷容量の測定ができないという問題がある。また、上記主軸に、上記荷重付加部材を接触させる形式であるので、上記主軸に傷がつき易いという問題がある。
【0007】
また、上記従来の静圧軸受の性能判定方法では、上記主軸の他端部に、上記荷重付加部材を接触させる形式であるので、上記主軸に大きな力のモーメントが作用することになる。このため、性能が評価されるすべり軸受は、負荷容量が大きいという条件を満たす必要があり、この方法は、動圧軸受等の負荷容量が小さい軸受に適用することができないという問題がある。
【特許文献1】特開2000−202737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、動圧軸受の性能を正確かつ簡便に評価できる動圧軸受の性能評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の動圧軸受の性能評価方法は、
シャフトの外周面と、このシャフトを収容するスリーブの内周面とのうちの少なくとも一方に動圧発生溝を有している動圧軸受の性能評価方法であって、
上記シャフトまたは上記スリーブを回転させた状態で、上記シャフトに直交する方向のまわりに、上記動圧軸受を回転または揺動させることにより、上記回転している上記シャフトまたは上記スリーブに作用するジャイロ荷重に基づいて変化する上記シャフトと上記スリーブとの隙間を測定する隙間測定工程を備えることを特徴としている。
【0010】
尚、上記シャフトに直交する方向の回りに揺動させるとは、シャフトの中心軸に対して直角に交わる方向の回りに揺動させるのは勿論のこと、シャフトの中心軸に対して斜めに交わる方向の回りであっても、直角方向の成分の回りに揺動する限り、上記シャフトに直交する方向の回りに揺動することに含めるものとする。
【0011】
上記シャフトまたは上記スリーブを回転させた状態で、上記シャフトに直交する方向のまわりに、上記動圧軸受を回転または揺動させると、上記回転している上記シャフトまたは上記スリーブにジャイロ荷重が作用する。そして、上記回転している上記シャフトまたは上記スリーブが、上記シャフトの方向および上記シャフトに直交する方向の両方に直交する方向のまわりに、回転または揺動する。この結果、上記回転または揺動している上記シャフトまたは上記スリーブは、動圧軸受の性能(支持剛性の強さ、負荷容量等)に依存した量、上記両方に直交する方向に変位する。
【0012】
本発明によれば、上記シャフトまたは上記スリーブを回転または揺動させることによって、上記シャフトまたは上記スリーブに付加されるジャイロ荷重を使用して動圧軸受の性能を評価する。したがって、従来の方法と異なり回転しているシャフトに荷重付加部材を接触させる必要がないので、シャフトまたはスリーブを回転させる回転動力が小さくても測定を行うことができ、静圧軸受に比べて負荷容量が小さい動圧軸受であっても、性能を簡便かつ正確に評価できる。
【0013】
また、本発明によれば、従来の方法と異なり回転しているシャフトに荷重付加部材を接触させる必要がないので、シャフトに傷がつくこともない。
【0014】
また、一実施形態の動圧軸受の性能評価方法は、上記シャフトと上記スリーブとの間には、導電性を有する流体が充填されており、上記隙間測定工程は、上記シャフトと上記スリーブとの間の電圧または電気抵抗を測定することにより、上記ジャイロ荷重に対する隙間の大きさを測定する。
【0015】
上記実施形態によれば、上記シャフトと上記スリーブとの間に、導電性を有する流体が充填されており、上記シャフトと上記スリーブとの間の電圧または電気抵抗を測定することにより、上記ジャイロ荷重に対する隙間の大きさを測定するので、付加荷重に対する上記隙間の変動を、精密に測定できる。
【0016】
また、一実施形態の動圧軸受の性能評価方法は、上記ジャイロ荷重を連続的に変化させながら上記シャフトと上記スリーブとの間の電圧または電気抵抗を連続的に測定することにより、上記ジャイロ荷重に対する隙間の大きさを連続的に測定する。
【0017】
上記実施形態によれば、上記ジャイロ荷重に対する隙間の大きさを連続的に測定するので、付加荷重に対する上記隙間の変動を、更に精密に測定できる。
【0018】
また、一実施形態の動圧軸受の性能評価方法は、上記ジャイロ荷重と、上記シャフトとスリーブとの隙間とに基づいて、動圧軸受の剛性および負荷容量のうちの少なくとも一つを算出する。
【0019】
上記実施形態によれば、動圧軸受の剛性および負荷容量のうちの少なくとも一方を、簡便かつ精密に測定できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の動圧軸受の性能評価方法によれば、シャフトまたはスリーブを回転または揺動させることによって、シャフトまたは上記スリーブに付加されるジャイロ荷重を使用して動圧軸受の性能を評価するので、シャフトに荷重付加部材を接触させる必要がなくて、シャフトまたはスリーブを回転させる回転動力が小さくても測定を行うことができ、静圧軸受に比べて負荷容量が小さい動圧軸受であっても、性能を簡便かつ正確に評価できる。
【0021】
また、本発明の動圧軸受の性能評価方法によれば、シャフトに荷重付加部材を接触させる必要がないので、シャフトに傷がつくこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0023】
図1は、この発明の一実施形態の動圧軸受の性能評価方法を行う性能評価装置の斜視図である。
【0024】
この性能評価装置は、台座1と、この台座1上に固定されたスピンドルモータ2と、入力軸3とを備える。
【0025】
上記台座1は、載置面の形状が長方形の板部材である。また、スピンドルモータ2は、台座1の載置面の略中央に固定されている。また、上記入力軸3は、図1に示すように、スピンドルモータ2の中心軸に垂直な平面に平行な方向で、かつ、台座1の周囲における幅方向の部分の略中心から、台座1の長手方向に平行な方向に延在している。上記入力軸3は、台座1に固定されており、入力軸3は、台座1と相対運動不可な状態になっている。上記入力軸3は、図示しないモータ等からの動力により回転または揺動するようになっている。
【0026】
この性能評価装置は、入力軸3を回転または揺動させることにより、台座1およびこの台座1上のスピンドルモータ2を入力軸3のまわりに回転または揺動させるようになっている。
【0027】
図2は、上記スピンドルモータ2の断面図である。
【0028】
上記スピンドルモータ1は、図2に示すように、回転部11と、固定部12と、電圧計13と、変位センサ14とを備えている。
【0029】
上記回転部11は、筒部20と、端面部21と、回転軸部22とを有する。上記筒部20の内周円筒面上には、ロータ23が配置されている。また、上記端面部21は、筒部20の一端の内周面から径方向の内方に延びており、筒部20の一端を完全に密閉している。また、上記回転軸部22は、端面部21の略中央から軸方向の内方に延びている。上記回転軸部22は、本体25と、この本体25の一端に連なるフランジ26とから成る。上記本体25の外周面には、ヘリングボーン型の動圧発生溝27が、軸方向に離間された軸方向の2箇所に、全周に亘って形成されている。また、上記フランジ26は、回転軸部22の端面部21側と反対側の端部に形成されている。
【0030】
上記固定部12は、スリーブ部28と、フランジ部29と、蓋部30とを有する。上記スリーブ部28の外周円筒面上には、ステータ32が配置されている。上記ステータ32の外周面と、ロータ23の内周面とは、径方向に対向している。上記フランジ部29は、スリーブ部28の一端に連なっている。上記フランジ部29は、スリーブ部28の中心軸に垂直な方向に延びている。上記スリーブ部28およびフランジ部29は、フランジ26を収容するフランジ収容空間34と、このフランジ収容空間34に連なると共に、回転軸部22の本体25を収容する本体収容空間35とを画定している。また、上記蓋部30は、フランジ収容空間34にフランジ26が収容されており、かつ、本体収容空間35に本体25が収容されている状態で、フランジ部29の内周円筒面にはめ込まれて、フランジ部29の開口を隙間無く塞ぐようになっている。上記蓋部30が、フランジ部29の内周円筒面にはめ込まれて固定された後、固定部12と、回転軸部22との間には、導電性の動圧流体が充填されるようになっている。
【0031】
上記電圧計13は、回転部11と固定部12との間の電圧を測定するようになっている。上記電圧計13と、回転部11との間は、第1の電気配線37で接続されており、電圧計13と、固定部12との間は、第2の電気配線38で接続されている。上記第1の電気配線37の回転部11側の一端には、スリップリング40が取り付けられている。上記スリップリング40は、回転部11の外面上を摺接するようになっており、電圧計13と、回転している回転部11との間を確実に電気接続するようになっている。
【0032】
上記変位センサ14は、筒部20の変位を測定するようになっている。詳細には、図1および図2に示すように、スピンドルモータの停止状態において、回転軸部22の中心軸を、z軸上に配置すると共に、フランジ部29を、z軸に垂直でかつx軸を含む平面と平行になるように配置し、かつ、入力軸3をx軸上に配置したとき、変位センサ14は、x軸上に配置されている。上記変位センサ14は、変位センサ14から筒部20の外周面までの距離aを測定するようになっている。
【0033】
このスピンドルモータ2は、ステータ32に対してロータ23を回転させることにより、例えば、回転部11の端面部21上に載置されたディスク等を回転させるようになっている。
【0034】
以下に、図1および図2を用いて、この発明の一実施形態の動圧軸受の性能評価方法を説明することにする。
【0035】
尚、図1においては、簡略したため、電圧計13および変位センサ14の図示を省略している。また、説明を容易にするため、図1および図2に示すように、性能評価装置の停止状態において、スピンドルモータ2の中心軸は、z軸上に配置されており、台座1は、上記z軸に垂直なx軸およびy軸を含む平面に平行に配置されており、かつ、入力軸3は、x軸上に配置されているものとする。
【0036】
先ず、隙間測定工程を行う、この隙間測定工程では、スピンドルモータ2の電源をオンにして、ステータ32に対してロータ23を回転させ、固定部12に対して回転部11を図1にαで示す方向に角速度ω[rad/s]で回転させる。そして、回転軸部22が回転している状態で、入力軸3を図1にβで示す方向に揺動角速度Θ[rad/s]で揺動させることにより、回転部11にジャイロ荷重を作用させて、回転部11を、回転部11の中心軸の方向および入力軸3の方向の両方に垂直な方向の回りに図1にγで示す方向に揺動させる。
【0037】
言い換えると、回転部11をz軸の回りに角速度ωで回転させると共に、スピンドルモータ2をx軸の回りに揺動角速度Θで揺動させることにより、回転部11にジャイロ荷重を作用させて、回転部11を、図2に示すy軸の回りに揺動させる。
【0038】
そして、電圧計3を用いて、回転部11と固定部12との間の電圧を測定することにより、電圧と一対一に対応する回転軸部25とスリーブ部28との間のラジアル隙間を算出する。詳しくは、揺動角速度Θを連続的に変動させることにより、電圧を連続的に測定し、ラジアル隙間を連続的に測定する。
【0039】
上記回転軸部22とスリーブ部28との間に充填された導電性の動圧流体(油)は、絶縁抵抗が高いので通常は低電位(高抵抗値)を示すが、ジャイロ荷重によりラジアル隙間が狭まると電圧が増大する(抵抗値が低下する)。ここで、導電性の動圧流体(油)の種類毎に、電圧と隙間との関係は、一対一の対応関係があるので、電圧(または抵抗値)を測定することによりラジアル隙間を正確に測定できる。
【0040】
続いて、ジャイロ荷重算出工程を行う。このジャイロ荷重算出工程では、上記回転部11の回転軸部22の中心軸の回りの慣性モーメントI[kgm]、角速度ω[rad/s]、揺動角速度Θ[rad/s]、二つの動圧軸受27のスパンr[m]より、ジャイロ荷重J[N]を以下の(1)式から算出する。
J=I×ω×Θ/r・・・(1)
【0041】
最後に、性能評価工程を行う。この性能評価工程では、揺動周波数Θを連続的に変動させて、ジャイロ荷重を連続的に変動させ、各ジャイロ荷重に対するラジアル隙間を測定する。そして、ジャイロ荷重に対する回転軸部22の位置の変化である動圧軸受の剛性を求めると共に、回転軸部22とスリーブ部28とが接触するときのジャイロ荷重を算出することにより、ラジアル負荷容量を求める。
【0042】
図3は、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法を用いて算出されたラジアル負荷容量の一例を表す図である。
【0043】
図3において、横軸は、揺動周波数を示し、縦軸は、ジャイロ荷重およびラジアル負荷容量を示す。また、図3にaで示す直線は、ラジアル負荷容量を示し、図3にbで示す直線は、ジャイロ荷重を示す。また、図3において、P、Q、RおよびSは、揺動周波数が、0.42、0.62、0.74および0.9のときの、時間と電圧の関係を示すグラフである。
【0044】
図3に示すように、揺動周波数が大きくなる、すなわち、ジャイロ荷重が大きくなると、P、Q、RおよびSに示すように、電圧が大きくなっており、ラジアル隙間の値が大きくなっている。また、この測定では、揺動周波数の全ての点において、その点のジャイロ荷重とラジアル隙間とに基づいて算出されたラジアル負荷容量は、13.8[N]と算出されている。
【0045】
上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法によれば、回転部11を回転させながら、スピンドルモータ2を揺動させることによって、回転部11に付加されるジャイロ荷重を使用して動圧軸受の性能を評価する。したがって、従来の方法と異なり回転している回転部11に荷重付加部材を接触させる必要がないので、回転部11を回転させる回転動力が小さくても測定を行うことができ、静圧軸受に比べて負荷容量が小さい動圧軸受であっても、性能を簡便かつ正確に評価できる。
【0046】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法によれば、従来の方法と異なり回転している回転部11に荷重付加部材を接触させる必要がないので、回転部11に傷がつくこともない。
【0047】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法によれば、回転軸部25とスリーブ部28との間に、導電性の動圧流体が充填されており、回転軸部25(回転部11)とスリーブ部28(固定部12)との間の電圧を測定することにより、ジャイロ荷重に対するラジアル隙間の大きさを測定するので、付加荷重に対する上記ラジアル隙間の変動を、精密に測定できる。
【0048】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法によれば、ジャイロ荷重に対するラジアル隙間の大きさを連続的に測定するので、付加荷重に対するラジアル隙間の変動を、更に精密に測定できる。
【0049】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法によれば、動圧軸受の剛性および負荷容量のうちの少なくとも一方を、簡便かつ精密に測定できる。
【0050】
尚、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法では、回転部と固定部との電圧を計測することによって、ラジアル隙間を測定したが、図2に14で示す変位センサで、変位センサ14と回転部11とのx軸方向の隙間aを測定することにより、ラジアル隙間の測定を直接行っても良い。
【0051】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法では、回転部と固定部との電圧を計測することによって、ラジアル隙間を測定したが、この発明では、回転部と固定部との抵抗を計測することにより、ラジアル隙間を測定しても良い。
【0052】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法では、台座1(動圧軸受)を揺動させることにより、回転部11にジャイロ荷重を作用させたが、この発明では、台座(動圧軸受)を回転させることにより、回転部にジャイロ荷重を作用させても良い。
【0053】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法では、軸部材である回転部11を回転されると共に、スリーブ部材である固定部を静止させたが、この発明では、スリーブ部材を回転させると共に、軸部材を静止させても良い。
【0054】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法では、揺動周波数を連続的に変動させて、ラジアル隙間の変動を連続的に測定したが、この発明では、複数の離散的な揺動周波数で測定を行って、複数の離散的なラジアル隙間を測定しても良い。
【0055】
また、上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法では、揺動周波数を変化させて、ジャイロ荷重を変化させて、ラジアル隙間の変化を測定したが、この発明では、回転している軸部材またはスリーブ部材の角速度ωを変化させて、ジャイロ荷重を変化させて、ラジアル隙間の変化を測定しても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、この発明の動圧軸受の性能評価方法を、回転軸部の軸方向の2箇所に動圧発生溝27が形成されている動圧軸受に適用したが、この発明の動圧軸受の性能評価方法を、スリーブ部材における軸部材に対向している内周面に動圧発生溝が形成されている動圧軸受等、回転軸部の軸方向の2箇所に動圧発生溝が形成されている動圧軸受以外の動圧軸受に適用しても良い。
【0057】
また、この発明の動圧軸受の性能評価方法を、軸部材のフランジの端面(図2においては、フランジ26の端面に対応)およびスリーブ部材におけるフランジの受け面(図2においては、蓋部材30のフランジ26側の面に対応)のうちの少なくとも一方に動圧発生溝が形成されているスラスト動圧軸受に適用しても良い。
【0058】
尚、ジャイロ荷重を用いて、軸受の性能を判定するというこの発明の思想は、動圧軸受の性能の判定に限られないことは、勿論であり、静圧軸受等のすべり軸受の性能の判定に適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態の動圧軸受の性能評価方法を行う性能評価装置の斜視図である。
【図2】上記性能評価装置が有するスピンドルモータの断面図である。
【図3】上記実施形態の動圧軸受の性能評価方法を用いて算出されたラジアル負荷容量の一例を表す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 台座
2 スピンドルモータ
3 入力軸
11 回転部
12 固定部
13 電圧計
14 変位センサ
23 ロータ
32 ステータ
27 動圧発生溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周面と、このシャフトを収容するスリーブの内周面とのうちの少なくとも一方に動圧発生溝を有している動圧軸受の性能評価方法であって、
上記シャフトまたは上記スリーブを回転させた状態で、上記シャフトに直交する方向のまわりに、上記動圧軸受を回転または揺動させることにより、上記回転している上記シャフトまたは上記スリーブに作用するジャイロ荷重に基づいて変化する上記シャフトと上記スリーブとの隙間を測定する隙間測定工程を備えることを特徴とする動圧軸受の性能評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の動圧軸受の性能評価方法において、
上記シャフトと上記スリーブとの間には、導電性を有する流体が充填されており、
上記隙間測定工程は、上記シャフトと上記スリーブとの間の電圧または電気抵抗を測定することにより、上記ジャイロ荷重に対する隙間の大きさを測定することを特徴とする動圧軸受の性能評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載の動圧軸受の性能評価方法において、
上記ジャイロ荷重を連続的に変化させながら上記シャフトと上記スリーブとの間の電圧または電気抵抗を連続的に測定することにより、上記ジャイロ荷重に対する隙間の大きさを連続的に測定することを特徴とする動圧軸受の性能評価方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の動圧軸受の性能評価方法において、
上記ジャイロ荷重と、上記シャフトとスリーブとの隙間とに基づいて、動圧軸受の剛性および負荷容量のうちの少なくとも一つを算出することを特徴とする動圧軸受の性能評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−192737(P2007−192737A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12766(P2006−12766)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】