説明

動物におけるフラビウイルス感染を予防および治療する方法

【課題】動物におけるフラビウイルス感染を予防および治療する方法の提供。
【解決手段】生弱毒化キメラフラビウイルスによる、フラビウイルス感染する危険があるまたはフラビウイルス感染している動物のワクチン接種を含む。これらのウイルスは、1つの構造タンパク質(または複数のタンパク質)が、免疫が求められる第二のフラビウイルスの対応する1つの構造タンパク質(または複数のタンパク質)で置換されたフラビウイルス(すなわち、骨格フラビウイルス)からなる。好ましくはキメラは、prMおよびEタンパク質が第二のフラビウイルスのprMおよびEタンパク質で置換された骨格フラビウイルスからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、動物におけるフラビウイルス感染を予防および治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
フラビウイルスは、世界中の多くの医学的および獣医学的環境において懸念されている、小さなエンベロープに包まれたプラス鎖RNAウイルスである。例えば、フラビウイルス科のメンバーである西ナイル(WN)ウイルスは、感染性であるが接触感染性でない節足動物媒介性のウイルス性疾患であるWN脳炎の原因物質である(Monathら、「Flaviviruses」、「Virology」中、Fields (編)、Raven-Lippincott、New York、1996、pp. 961-1034:非特許文献1)。本ウイルスは、アフリカ、西アジア、中東、ヨーロッパの地中海沿岸領域において、および近年、米国において見出されている。感染した野鳥から摂食した後、蚊がウイルスに感染し、ヒト、鳥、ならびに、ウマ、ヒツジ、ウシ、およびブタなどの動物を刺して、ウイルスを伝染させる。
【0003】
1999年、ニューヨークで神経学的症状を示す25頭のウマがWNウイルス感染していることが発見された。これらのウマは、運動失調の徴候、歩行困難、ナックリングオーバー(knuckling over)、頭位傾斜、筋肉の震え、および立位不能を示した。これら25頭のウマのうち9頭が死亡または安楽死させられ、これらのウマの組織試料中にウイルスおよびウイルス特異的抗体が見出された。16頭の生き残ったウマは全て回復し、またWNウイルス抗体力価を生じていた。以来、西ナイルウイルスに感染したウマの数が増加していることが確認されている。
【0004】
フラビウイルスタンパク質は、ポリタンパク質を生成する単一の長いオープンリーディングフレームの翻訳により産生され、宿主およびウイルス性プロテアーゼの組み合わせによる複雑な一連の翻訳後タンパク質分解性切断を受けて、成熟ウイルスタンパク質を生成する(Ambergら、J. Virol. 73:8083-8094、1999; Rice、「Flaviviridae」、「Virology」中、Fields (編)、Raven-Lippincott、New York、1995、第I巻、p. 937:非特許文献2)。ウイルス構造タンパク質は、ポリタンパク質においてC-prM-E(「C」はキャプシド、「prM」はウイルスエンベロープ結合M(膜)タンパク質の前駆体、および「E」はエンベロープタンパク質)の順に配置されている。これらのタンパク質はポリタンパク質のN末端領域に存在し、非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B、およびNS5)はポリタンパク質のC末端領域に位置している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Monathら、「Flaviviruses」、「Virology」中、Fields (編)、Raven-Lippincott、New York、1996、pp. 961-1034
【非特許文献2】Ambergら、J. Virol. 73:8083-8094、1999; Rice、「Flaviviridae」、「Virology」中、Fields (編)、Raven-Lippincott、New York、1995、第I巻、p. 937
【発明の概要】
【0006】
本発明は、非ヒト哺乳類にキメラフラビウイルスを投与する工程を含む、非ヒト哺乳類(例えばウマ)におけるフラビウイルス感染(例えば西ナイルウイルス感染)を予防または治療する方法を提供する。本発明はまた、そのような方法において使用するための医薬品の調製における、キメラフラビウイルスの使用を提供する。キメラフラビウイルスは、例えば、第一のフラビウイルス(例えば、17D系統由来の黄熱病ウイルスなどの黄熱病ウイルス)のキャプシドおよび非構造タンパク質、ならびに第二のフラビウイルス(例えば西ナイルウイルス)のprMおよびエンベロープタンパク質を含みうる。
【0007】
本発明はいくつかの利点を提供する。例えば、以下に述べるように、本発明の方法を用いて治療したウマは、ワクチン接種による副作用を示さず、さらにかなりのウイルス攻撃(challenge)に対して保護される。このように、本発明の方法は、フラビウイルス(例えば西ナイルウイルス)感染に対するウマの保護に非常に効果的である。また、本明細書に記載される黄熱病/西ナイルウイルスキメラに具体的に言及すると、黄熱病ウイルスの宿主域は非常に特異的であり、霊長類に限られる。したがって、ウマは霊長類とは関連が少なく、全く黄熱病ウイルスの天然の宿主域外であるので、西ナイルウイルス攻撃に対するウマの保護における黄熱病/西ナイルウイルスキメラの効力は驚くべきものであった。さらに、本発明において使用するワクチンウイルスは、1つより多い異なるウイルスに由来する材料からなるキメラであるため、野生型ウイルスに戻る可能性が除かれている。
【0008】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲より明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本発明は、ウマなどの動物におけるフラビウイルス(例えば、西ナイル(WN)ウイルス)感染を予防および治療する方法を提供する。本発明の方法は、生弱毒化キメラフラビウイルスによる、フラビウイルス感染する危険があるまたはフラビウイルス感染している動物のワクチン接種を含む。これらのウイルスは、1つの構造タンパク質(または複数のタンパク質)が、免疫が求められる第二のフラビウイルスの対応する1つの構造タンパク質(または複数のタンパク質)で置換されたフラビウイルス(すなわち、骨格フラビウイルス)からなる。好ましくはキメラは、prMおよびEタンパク質が第二のフラビウイルスのprMおよびEタンパク質で置換された骨格フラビウイルスからなる。
【0010】
本発明において使用されるキメラウイルスは、上記のように免疫が望まれるウイルスが挿入構造タンパク質の由来元であれば、ウイルスの任意の組み合わせからなることができる。例えば、西ナイルウイルス感染に対してウマなどの動物にワクチン接種するために、西ナイルウイルス構造タンパク質(例えばprMおよびEタンパク質)が挿入された黄熱病(YF)ウイルスのものなどのフラビウイルス骨格からなるキメラフラビウイルスを使用できる。このキメラにおいて、YF prMおよびEタンパク質はWNのものと置換されている。同様に、日本脳炎(JE)ウイルスに対する免疫が望ましければ、対応する骨格タンパク質のかわりに、JEウイルスのprMおよびEタンパク質を、黄熱病ウイルスなどの骨格フラビウイルスに挿入することができる。ウマにおいて疾患を引き起こし、保護を誘導するためにキメラウイルスを使用できる他のフラビウイルスには、Kunjin、マリーバレー脳炎、および跳躍病ウイルスが含まれる。
【0011】
ウマに加えて、本発明の方法を用いて治療できる動物には、例えば、ブタ、ヒツジ、ウシ、ネコおよびイヌなどの家畜動物、ならびに家禽類が含まれる。非ウマワクチン接種の具体的な例としては、ヒツジをヴェッセルスブロンウイルスまたは跳躍病ウイルス由来の構造挿入タンパク質を含むキメラウイルスを用いて処置することができ、ブタを日本脳炎ウイルス由来の構造挿入タンパク質を含むキメラウイルスを用いて処置することができる。
【0012】
このように、本発明において使用できるフラビウイルスの例には、骨格ウイルスまたは構造タンパク質挿入物の由来元として、蚊媒介性のフラビウイルス、例えば、日本脳炎、デング(血清型1-4)、黄熱病、マリーバレー脳炎、セントルイス脳炎、西ナイル、Kunjin、Rocio脳炎、ヴェッセルスブロン、およびイルヘウスウイルス;ダニ媒介性のフラビウイルス、例えば、中央ヨーロッパ脳炎、シベリア脳炎、ロシア春夏脳炎、キャサヌール森林病、オムスク出血熱、跳躍病、ポーワッサン、ネギシ、Absettarov、Hansalova、Apoi、およびHyprウイルス;ならびにヘパシウイルス属由来のウイルス(例えばC型肝炎ウイルス)が含まれる。挿入構造タンパク質の由来元として使用できるさらなるウイルスには、ペスチウイルス属由来のウイルス(例えばウシ下痢ウイルス)、ならびにラッサ、エボラ、およびマルブルグウイルスなどの他のウイルスが含まれる。上記のように、好ましくはウイルスは、西ナイルウイルス挿入物を含む黄熱病ウイルス骨格からなる。
【0013】
本発明において使用できるキメラウイルスの作製の詳細は、例えば、米国特許出願第09/007,664号、第09/121,587号、および第09/452,638号;国際出願PCT/US98/03894およびPCT/US00/32821;ならびにChambersら、J. Virol. 73:3095-3101、1999(これらはそれぞれその全体が参照として本明細書に組み入れられる)に提供されている。
【0014】
本発明のワクチンは、当業者が容易に決定できる量および方法を用いて投与できる。ワクチンは、例えば、適切なキメラウイルスに感染させた細胞培養物から回収した液体として投与および処方できる。生弱毒化キメラウイルスは、例えば、皮下、筋内、または皮内経路により投与するために、用量体積0.1〜1.0 ml中、102〜108の間(例えば106〜107の間)の感染単位(例えばプラーク形成単位(pfu)または組織培養感染用量)を含む無菌水溶液として処方される。さらに、経口経路などの粘膜経路を選択してもよい。投与するキメラの適切な量の選択は当業者により決定することができ、この量は、例えば、キメラを投与する動物のサイズ、タイプ、および全般的健康状態といった数多くの要因により変わりうる。
【0015】
上記のように、本ワクチンは、フラビウイルス感染の危険がある動物への一次予防薬として投与できる。本ワクチンはまた、感染したフラビウイルスに対する免疫応答を刺激することによって、フラビウイルス感染している動物を治療するための二次薬剤として使用できる。また、必要ではないが、キメラワクチンの免疫原性を増強するために、アジュバントを使用できる。適切なアジュバントの選択は、当業者により容易に実施できる。
【実施例】
【0016】
実験結果
ChimerVax-WNの安全性および効力は、ウマにおいて評価した。効力は、体液性免疫応答および攻撃からの保護という点から定義した。
【0017】
動物
下記表1に要約されているように、本研究では11頭のウマを使用した。ウマは、研究期間中、ABSL3格納建物に収容し、アルファルファ乾草および混合穀類を与えた。
【0018】
(表1)動物の特徴および治療の要約

【0019】
免疫化
4頭のウマ(EQ1、EQ2、EQ3、およびEQ4)を、ChimeriVax-WNウイルスを3週間あけて2回注射することにより免疫化した。各免疫化の際、1 ml中107プラーク形成単位(pfu)のウイルス用量を、左肩部から皮下接種した。
【0020】
ワクチン接種したウマのウイルス血症を、標準的なWNプラークアッセイを用いて解析した。試料は、そのままおよび1:5希釈で、二つ組で試験した。本発明者らは、0〜7日目のウイルス血症のレベルは非常に低いが、3日目および4日目のウイルス血症のピークは検出可能であることを見出した。
【0021】
抗体レベルは、表2に示すように、プラーク減少中和試験(PRNT)を用いて、ワクチン接種後の各ウマから回収した試料において測定した。要約すると、2頭のウマが一次免疫化の2週間以内に発症して80%減少力価10を生じ、4頭のウマ全てが4週間で10〜20の間の力価を有した(第二回目の免疫化の1週間後)。
【0022】
ウマ攻撃モデルの有効性確認
ウマのWNVによる蚊媒介性の攻撃により、通常ウイルス血症が引き起こされるが、臨床疾患はまれである。このため、WNVに対する保護性免疫の評価を可能にするため、適切な攻撃モデルを開発した。これらの研究において使用した攻撃ウイルスは、初めにカラスから単離され、Vero細胞で一回およびC636細胞で一回継代した、WNV NY99(4132)であった。ブースターワクチン注射後に過敏性反応が観察されたため、本発明者らは、BHK-21細胞中でさらなる時間ウイルスを継代し、吸着後にFBS含有接種物を洗い流し、20% WNV/SLE血清陰性ウマ血清を用いてストックを調製した。このFBSフリーの調製物をPBS中に希釈し、ウマのEQ1、EQ2、EQ4、EQ8、EQ9、EQ10、およびEQ11の攻撃に使用した。
【0023】
ほとんどのウマは、クモ膜下接種により攻撃した。この手法では、キシラジンおよびケタミンを組み合わせたものでウマを麻酔し、無菌条件下で大槽穿刺を行った。CSF 2 mlを回収し、ウイルス1.0 mlを注射した。すべてのケースにおいて、問題なく本手法から回復した。
【0024】
攻撃発症研究の結果を以下に要約する。
【0025】
ウマEQ5
このウマには、クモ膜下経路により104 pfuのWNVを接種した。このウマは、その日および翌日は正常に見えたが、2日目の午前には横臥し、あまり反応しなかった。安楽死させて剖検したところ、ウイルスは脳のいくつかの領域からは回収されなかった。この動物は、前夜の間に倒れて脊髄(剖検時に検査されなかった)に深刻な傷を負った可能性がある。このウマの死はWNV感染に関連していなかったことは明らかであると思われる。
【0026】
ウマEQ6
このウマには、104 pfu WNVを皮下接種した;4日後、血液脳関門を越えるウイルスの通過を促進するという考えで、大槽穿刺を行った。10日目の午前には、目立って不安げで正常でなかったが、その日の夕方までには常態に戻った。攻撃後6週間、他の臨床的徴候は観察されなかった。接種後の初めの13日間、日に2回回収した血清試料を、Vero細胞上でウイルスについてアッセイした(ウイルスはどの試料からも回収されなかった。)接種日および3週間後に回収した血清を用いて、PRNTアッセイを実施した。これらの試料の80%(および90%)中和力価はそれぞれ、10(<10)および40(40)であった。このウマは使用前に血清学的に陰性として試験されたので、接種日の80%力価1:10は驚くべきものであった。この動物は、WNの軽度の症例を有していた可能性がある。
【0027】
ウマEQ7
このウマには、104 pfu WNVをクモ膜下に接種した;接種物の逆力価測定(backtitration)により、用量は6×103 pfuであることがわかった。疾患の臨床的徴候は20日目までなく、このときこの動物は不安げで神経質な様子が明らかであった。続く2日間にわたって、不安げな様子が増し、頭部および唇部の震え、筋肉の収縮(fasiculation)、および後肢不全麻痺を伴い、状態が悪化した。しかし、23日目の夕方までには、このウマは回復しているように見られ、臨床的徴候の重症度は著しく減少した。疾患が本当にWNVに起因するものであることを確認するために、24日目に安楽死させた。脳の組織病理学的検査により、拡散した広範囲にわたる脳炎が明らかとなった。1日目〜9日目に日に2回回収された血清試料を、Vero細胞上にプラーク形成させることによってウイルスについてアッセイした;ウイルスはいずれの試料からも単離されなかった。本発明者らはまた、剖検時に回収された、CSFから、ならびに大脳、小脳、および脳幹のホモジネート(10%懸濁液ならびに-1および-2希釈としてアッセイされた組織)からも、ウイルスを単離することができなかった。0、7、14、および23日目に回収された血清のPRNT力価(80または90%)は、<10、<10、160、および160であった。
【0028】
ウマEQ8およびEQ9
これらのウマは、105 pfu WNVのクモ膜下接種によって攻撃した;逆力価測定により、投与用量は2×105 pfuであることが明らかとなった。両動物は、7〜7.5日間は臨床的に正常なままであり、次第に重度の疾患を発症した(各動物の記録についての臨床的説明)。この2頭のウマにおける疾患の経過はほぼ同一であり、9日目に双方を安楽死させて剖検した。組織病理学的検査により、両ウマにおいて重度の脳炎が明らかとなった。接種後、日に2回回収した血清を、Vero細胞上でのプラーク産生についてアッセイした。測定されたウイルス血症力価(log10 pfu/ml)は以下のとおりであった:

【0029】
剖検時に回収された、CSF、大脳、小脳、脳幹、および頭頚髄(cranial cervical cord)の試料を、Vero細胞上でウイルスについてアッセイした。EQ8はわずかな(1.5 log10 pfu/gram)ウイルスを脳幹に有し、EQ8は少量のウイルス(1.3 log10 pfu/gram)を小脳に有していた;他のすべての試料は陰性であった。両動物は、攻撃時、PRNT力価<10を有していた。安楽死の際、EQ8およびEQ9はそれぞれ、PRNT力価(90%)160および<10を有した。
【0030】
ワクチン接種したウマおよび対照の攻撃
ワクチン接種したウマEQ1、EQ2、およびEQ4には、一次免疫化のちょうど24週間後に攻撃した。2頭のさらなる対照ウマを同時に攻撃した。これらの攻撃はすべて、105 pfu WVNを含む1.0 ml(PBS中に希釈したFBSフリー調製物)のクモ膜下接種からなるものであった。接種物の逆力価測定により、ウマは約125,000 pfuのウイルスを受けたことが示された。
【0031】
2頭の対照ウマ(EQ10およびEQ11)は、ウイルス接種7〜8日後に始まる重度の臨床疾患を発症し、それぞれ攻撃の8.5日および10日後に安楽死させた。安楽死の際、PRNT抗体力価はそれぞれ、1:40および<10であった。攻撃時から安楽死の間に半日間隔で回収した血清を、Vero細胞上でのプラーク産生によってアッセイした;ウイルス血症力価(log10 pfu/ml血清)を以下の表に示す(8.0日目後に回収したEQ11からの陰性試料示さず)。

【0032】
剖検時に回収された、CSF、大脳、小脳、および脳幹の試料も、Vero細胞上でのプラーク産生によりアッセイした。ウイルスはいずれのCSF試料からも単離されなかった。わずかな量のウイルス(10%懸濁液0.1 mlを接種したウェルあたり1〜2プラーク)が、ウマEQ10の脳の3つの領域すべてから、およびウマEQ11の脳幹のみから単離された。EQ10およびEQ11の脳の組織病理学的検査により、広範囲にわたる脳炎が明らかとなった。
【0033】
2頭の対照ウマとは著しく対照的に、ワクチン接種したウマEQ1、EQ2、およびEQ4は、攻撃後4週間、いかなる臨床疾患の形跡も示さなかった。さらに、攻撃後最初の10日間これらの動物から日に2回回収されたいずれの血清試料からも、また、28日目の剖検時に回収された大脳、小脳、脳幹、またはCSFの試料からも、ウイルスは単離されなかった。脳の組織病理学的検査によっては、WNV感染に関連しないいくつかの偶発的所見以外の病変は明らかでなかった。
【0034】
WNVに対する抗体を、ウイルス接種の際および安楽死の際に回収したCSFにおいてアッセイした(EQ1、EQ2、およびEQ4については28日目;EQ10については8.5日目、ならびにEQ11については10日目)。試料は、1:5、10、および20希釈でアッセイした。ウマEQ1から剖検時に回収した試料は1:5でのプラーク計数において87%の減少を示し、EQ4からの剖検試料は1:5で98%の減少を示した。他のすべての試料は、80%の減少で力価<5を有した。
【0035】
ワクチン接種に対する血清反応
血清試料を、4頭の免疫化したウマから、ウマの保持期間週毎に回収し、二連で保存した。中和抗体力価を、これらの試料のサブセットについて、Vero細胞上の標準的なプラーク減少中和試験を用いて測定した。表2に示したように、いくつかのアッセイのみ、ウイルス接種物中の8%ヒト血清を用いて行った。
【0036】
(表2)ChimeriVax-WNで免疫化したウマのPRNT結果

*は、不安定血清因子の使用あり(+)またはなし(-)を示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト哺乳類におけるフラビウイルス感染を予防または治療するための医薬品の調製における、キメラフラビウイルスの使用。
【請求項2】
非ヒト哺乳類がウマである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
フラビウイルス感染が西ナイルウイルス感染である、請求項1記載の使用。
【請求項4】
キメラフラビウイルスが、第一のフラビウイルスのキャプシドおよび非構造タンパク質ならびに第二のフラビウイルスのprMおよびエンベロープタンパク質を含む、請求項1記載の使用。
【請求項5】
第一のフラビウイルスが黄熱病ウイルスである、請求項4記載の使用。
【請求項6】
黄熱病ウイルスが17D系統に由来する、請求項5記載の使用。
【請求項7】
第二のフラビウイルスが西ナイルウイルスである、請求項4記載の使用。
【請求項8】
ウマにおける西ナイルウイルス感染を予防するための医薬品の調製における、黄熱病ウイルスのキャプシドおよび非構造タンパク質ならびに西ナイルウイルスのprMおよびエンベロープタンパク質を含む、キメラフラビウイルスの使用。

【公開番号】特開2010−215647(P2010−215647A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123708(P2010−123708)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【分割の表示】特願2003−563423(P2003−563423)の分割
【原出願日】平成14年10月21日(2002.10.21)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【Fターム(参考)】