説明

動物における口腔の健康を促進する方法

【課題】動物における口腔の健康を促進する方法の提供。
【解決手段】抗酸化剤、例えばビタミンC、ビタミンE、またはこれらの組合せを含む組成物を動物に摂取させることによって、歯肉炎を軽減、予防、また治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、2004年12月22日に出願された米国仮出願第11/0204491号に対する優先権を請求し、この開示を本明細書において参考のために引用する。
【0002】
本発明は一般に、動物における口腔の健康を促進する方法に関し、特に、動物における口腔の健康を促進するための抗酸化剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
コンパニオン動物の例えば猫及び犬を含む動物は、口腔ケアを必要とする。不満足な口腔の健康は、一生の間中疼痛及び深刻な歯の問題を引き起こし得、並びに、多分より深刻な疾病、例えば、心臓及び腎臓疾患を生じる。米国獣医歯科学会(the American Veterinary Dental Society)及び指導的な獣医歯科専門家によると、70%の猫及び80%の犬が、3才までにある形態の歯肉疾患を有する。歯肉の炎症または歯肉炎を含む不健康な歯肉は、コンパニオン動物に影響する一般的な口腔の健康の問題とみなされる。
【0004】
口腔の健康を促進する方法は周知である。米国特許第6,503,483号は、ビタミンCを含む経口吸収可能な歯科用配合物の局所投与による、ヒト及び動物における歯肉疾患の治療のための組成物及び方法を説明している。米国特許第5,376,374号は、口腔濯ぎ組成物の投与並びにミネラル及びビタミンC及びEを含むビタミンを用いた食物栄養補助による歯肉疾患の軽減を提案している。米国特許第5,032,384号は、アリールプロピオニック非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)及び抗酸化剤の組合せを使用した、歯周病の治療のための組成物及び方法を説明している。米国特許第4,272,512号は、トラネキサム酸及び葉酸を使用した、歯肉炎の症状を阻害するための、口腔用組成物の局所使用及び方法を提案している。Battino et al (1999) Crit. Rev. Oral Biol. Med. 10(4), 458は、炎症性歯周疾患を治療または予防する際の抗酸化剤の可能な治療効果を概説している。Clarke (2001) J. Vet. Dent. 19(4), 177は、猫科の動物の口腔の健康を改良するための口腔防腐薬としての亜鉛アスコルベートゲルの局所使用を提案している。
【0005】
動物のための口腔用ケア製品の利用可能性にもかかわらず、適切な口腔ケアを動物の例えばコンパニオン動物に提供することは、特に、不便、不十分さ、困難、及び費用が理由となって問題であるままである。例えば、常用の獣医による歯の調査及びクリーニングは高価となり得る。動物の介護者による通常のブラシングは有益であるが、規則的に実行するのが困難な、不便な仕事となり得る。従来の硬質のカリカリしたドライフード、咀嚼トイ、及びその他同様なものは、歯肉の線での歯垢及び歯石を完全に除去できず、歯周の健康を促進するには不十分である。従って、動物、特にコンパニオン動物における口腔の健康を促進する便利な及び有効な方法に対する必要が、依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,503,483号
【特許文献2】米国特許第5,376,374号
【特許文献3】米国特許第5,032,384号
【特許文献4】米国特許第4,272,512号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Battino et al (1999) Crit. Rev. Oral Biol. Med. 10(4), 458
【非特許文献2】Clarke (2001) J. Vet. Dent. 19(4), 177
【発明の概要】
【0008】
本発明は、口腔の健康促進量の少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を動物に摂取させることによって、動物における口腔の健康を促進する方法を提供する。幾つかの具体例においては、本方法は、口腔の健康促進量のビタミンC、ビタミンE、またはこれらの組合せを含む組成物を動物に摂取させることを含む。
【0009】
本発明の他の目的、特徴及び利点並びにさらなる目的、特徴及び利点は、当業者には容易に明白であろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
“動物”という用語は、不満足な口腔の健康になりやすいか若しくはこれに苦しむかまたは口腔の健康を促進する方法を必要とする任意の動物を意味する。
【0011】
“口腔の健康”という用語は、本明細書において、歯及び/または歯肉を含む任意の口腔の状態を指す。
“口腔の健康を促進すること”という表現は、歯を取り囲み、支持する歯肉及び/または組織/構造に関連した口腔の状態の軽減、予防、または治療を意味する。口腔の状態の非限定例は、本明細書において、歯肉炎(歯肉(歯肉組織)の炎症)及び歯周炎(歯肉及び歯を支持する結合組織の両方において存在する炎症及び/または感染)を含む。
【0012】
“単一包装”という用語は、キットの構成要素は1つ以上の容器においてまたはこれと物理的に関連し、製造、配給、販売、または使用のための単位とみなされることを意味する。容器としては、袋、箱、瓶、収縮包装、留めたかまたはさもなければ固定された構成要素、またはこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されるものではない。単一包装は、物理的に関連する個々の抗酸化剤の容器としてよく、その結果、これは、製造、配給、販売、または使用のための単位とみなされる。
【0013】
“仮想包装”という用語は、キットの構成要素は、例えば、1つの構成要素及びウェブサイトに行くか、記録されたメッセージと接触するか、視覚メッセージを見るか、または介護者若しくは指導者と接触してキットの使用の仕方に関する指導を得ることを使用者に指導する指示を含む袋中の、他の構成要素を得る仕方を使用者に指導する1つ以上の物理的または仮想キット構成要素に関する指示によって、関連することを意味する。
【0014】
本発明は、本明細書において説明する特定の方法、プロトコール、及び試薬に限定されず、というのはこれらは変化することがあるからである。さらに、本明細書において使用する用語は、特定の具体例を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していない。本明細書において使用するように、また添付の請求の範囲において、単数形の“ある(a)”、“ある(an)”、及び“その(the)”は、文脈が明らかに他に指示しない限り複数の参照を含む。同様に、“含む(comprise)”、“含む(comprises)”、及び“含むこと(comprising)”という語は、排他的にではなく含めて解釈すべきである。
【0015】
特に断らない限り、本明細書において使用する全ての術語及び科学的用語及び任意の頭文字語は、発明の分野における当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において説明するものと同様であるかまたは等しい任意の方法及び材料を本発明の実施において使用できるが、好ましい方法、装置、及び材料を本明細書において説明する。
【0016】
本明細書において言及する全ての特許、特許出願、及び刊行物を、本発明と共に使用できるかもしれないとその中で開示される化合物、プロセス、手法、手順、技術、物品、並びに他の組成物及び方法を説明し、開示するために、本明細書において法律によって許される程度に参考のために引用する。しかしながら、本明細書においては、何も、本発明は、前の発明によるこのような開示に先行する権利がないと認めるものと解釈すべきではない。
本発明
本発明は、動物における口腔の健康を促進する方法を提供する。本方法は、口腔の健康促進量の少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を動物に摂取させることを含む。特定の理論によって束縛されるものではないが、遊離基並びに酸化的プロセスが、炎症のプロセスにおいて含まれていると考えられている。例えば、シクロオキシゲナーゼ酵素は、アラキドン酸から前炎症性分子(pro-inflammatory molecule)プロスタグランジンE2への変換において酸素化段階を提供する。反応性酸素種、例えば、酸化窒素は、炎症性プロセスの一因である。抗酸化剤は、例えば、歯肉の炎症、歯肉炎、または歯周病を引き起こす炎症性プロセスを阻害すると考えられている。
【0017】
本発明において有用な抗酸化剤は、直接に遊離基をクエンチするかまたは間接的に遊離基にクエンチさせる任意の材料である。当業者は、様々な材料が、遊離基クエンチまたは吸収能力を有することを知っている。例えば、以下のものは、酸素遊離基吸収能力(“ORAC”)容量が高い未加工の成分である:ほうれん草、ほうれん草絞りかす、トマト絞りかす、柑橘類パルプ、ぶどう絞りかす、にんじん、にんじん顆粒、ブロッコリ、緑茶、イチョウ(ginkgo biloba)、コーングルテンミール、藻類、クルクミン、アスタキサンチン、ベータ−カロテン、グルタチオン、緑茶、ルテイン、リコペン、N−アセチルシステイン、ポリフェノール、大豆イソフラボン、S−アデノシルメチオニン、含硫アミノ酸、タウリン、トコトリエノール、フォレート、ビタミンA、ビタミンC及びビタミンE。
【0018】
様々な具体例においては、抗酸化剤は、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、リポ酸、アスタキサンチン、ベータ−カロテン、L−カルニチン、補酵素Q10、グルタチオン、リコペン、ルテイン、N−アセチルシステイン、大豆イソフラボン、S−アデノシルメチオニン、タウリン、トコトリエノール、ほうれん草、トマト、柑橘類の果実、ぶどう、にんじん、ブロッコリ、緑茶、イチョウ、コーングルテンミール、米ぬか、藻類、クルクミン、マリン油(marine oil)、果実、野菜、酵母、カロテノイド、フラボノイド、ポリフェノール、またはこれらの混合物とすることができる。
【0019】
抗酸化物フード、フード製品、またはこれらの成分で未加工若しくはそうでないものの例は、ほうれん草(例えば、ほうれん草絞りかす)、トマト(例えば、トマト絞りかす)、柑橘類の果実(例えば、柑橘類パルプ)、ぶどう(例えば、ぶどう絞りかす)、にんじん(例えば、にんじん顆粒)、ブロッコリ、緑茶、イチョウ、コーングルテンミール、米ぬか、藻類、クルクミン、マリン油、若しくは酵母(例えば、セレン酵母)、またはこれらの混合物を含む。
【0020】
リポ酸は、米国特許第5,621,117号において説明されているように、アルファ−リポ酸またはリポ酸塩若しくはエステル、または、例えば、リポ酸の異性体として存在できる。本明細書において使用する“アルファ−リポ酸”は、“リポ酸”と同じ意味である。リポ酸は、様々な形態、例えば、ラセミ混合物、単数または複数の塩、単数または複数のエステル、及び/または単数または複数のアミドで提供されることができる。リポ酸は、本組成物中に存在する場合、少なくとも約100ppm、少なくとも約50ppm、または少なくとも約25ppm、最高で約600ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量までの量とすることができる。
【0021】
L−カルニチンは、L−カルニチンとしてまたは誘導体形態、例えば、塩(例えば、塩酸塩)、エステル(例えば、フマル酸エステルまたはコハク酸エステル)で、またはアセチル化L−カルニチンとして存在できる。L−カルニチンは、本組成物中に存在する場合、少なくとも約500ppm、少なくとも約200ppm、少なくとも約100ppm、または少なくとも約50ppmの量とすることができる。無毒の最大量を用いることができ、例えば、約5,000ppm未満である。
【0022】
カロテノイドは本組成物中に存在でき、レチノール(ビタミンA)、レチナール、レチノイン酸、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、δ−カロテン、ルテイン、リコペン、リコフィル(lycophyll)、リコキサンチン(lycoxanthin)、ロドキサンチン(rhodoxanthin)、アスタキサンチン及びクリプトキサンチンを含む。ビタミンAは、ビタミンAまたはビタミンAのC2−20脂肪酸エステルのような誘導体及びその他同様なものとして存在できる。例示的に、β−カロテンは、本組成物中に存在する場合、約1〜約15ppmの量とすることができる。
【0023】
他の抗酸化剤は、約0.1〜約5ppmのセレン;少なくとも約1ppmのルテイン〜最高で約100ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量まで;少なくとも約25ppmの補酵素Q10〜最高で約2000ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量まで;少なくとも約50ppmのS−アデノシルメチオニン〜最高で約2000ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量まで;少なくとも約500ppmのタウリン〜最高で約5000ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量まで;少なくとも約25ppmの単数または複数の大豆イソフラボン〜最高で約5000ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量まで;少なくとも約50ppmのN−アセチルシステイン〜最高で約1000ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量まで;少なくとも約50ppmのグルタチオン〜最高で約1000ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量まで;及び少なくとも50ppmのイチョウ抽出物〜最高で約1000ppmまでまたは最高で動物にとって有毒ではない量までを含む。
【0024】
幾つかの具体例においては、本方法は、口腔の健康促進量のビタミンC、ビタミンE、またはこれらの組合せを含む組成物を動物に摂取させることを含む。
ビタミンEは、任意の適切な形態で、例えばトコフェロール、トコフェロールの混合物、及び/またはこれらの様々な誘導体、例えばエステル誘導体、例えば、ビタミンEの酢酸、コハク酸、またはパルミチン酸エステルとして提供されることができる。本明細書において使用するビタミンEは、動物による摂取の後にビタミンE様活性を提供する形態及び誘導体を含む。ビタミンEは、アルファ、ベータ、ガンマ、またはデルタ立体配置とすることができる。その上、ビタミンEは、そのd−立体異性体立体配置でまたはラセミ混合物として存在できる。従って、特に断らない限り、“ビタミンE”という用語を本明細書において一般的に使用して、ビタミンE活性を有する任意のエナンチオマーまたはこのラセミ化合物、及びこのような化合物の任意の混合物を含む任意のトコフェロールまたはトコトリエン(tocotriene)化合物を包含する。
【0025】
幾つかの具体例においては、組成物のビタミンE含量は、少なくとも約100ppm、例示的に約100〜約5000ppm、約250〜約2500ppm、または約500〜約1500ppmとすることができる。
【0026】
ビタミンCは、アスコルビン酸、例えばL−アスコルビン酸、または様々なこの誘導体、例えば、アスコルビン酸のリン酸カルシウム塩、アスコルビン酸のコレステリル塩、またはアスコルベート−2−モノホスフェートとして動物に提供されることができる。ビタミンCの塩は、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、及び第一鉄塩を含む。エステルは、例えば、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル、及び同様な誘導体を含む。ビタミンCまたはこの誘導体は、任意の物理的形態、例えば、液体、半固体、固体、または熱安定な形態とすることができる。
【0027】
幾つかの具体例においては、組成物のビタミンC含量は、少なくとも約10ppm、例示的に約10ppm〜約10,000ppm、または約20〜約2000ppm、または約25〜約500ppmとすることができる。
【0028】
本発明の方法及び組成物は、様々なヒト及びヒト以外の動物のために有用であり、これは、鳥類の、ウシ科の、犬科の、ウマ科の、猫科の、ヒクリン(hicrine)、ネズミ科の、羊、及び豚の動物を含み、特に、コンパニオン動物の例えば犬及び猫を含む犬科の動物及び猫科の動物のために有用である。
【0029】
様々な具体例においては、本発明は、口腔の健康促進量の少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物をコンパニオン動物に摂取させることを含む、コンパニオン動物における口腔の健康を促進する方法を提供する。1具体例においては、本方法は、歯垢の蓄積を低減することによって、口腔の健康を促進する。他のものにおいては、本方法は、歯垢蓄積が低減されない場合でさえも歯肉及び/または歯周の健康を促進することによって、口腔の健康を促進する。実施例1に示すように、通常歯肉炎を助長するファクターである歯垢が蓄積する時でさえも、本方法が歯肉炎を低いベースラインレベルに保つのは特に驚くべきことである。さらなる具体例においては、本方法は、歯肉及び/または歯周の健康を促進することによって、口腔の健康を促進する。
【0030】
本方法は、1つ以上の抗酸化剤を含む任意の様々な組成物を動物に投与することに対処したものである。コンパニオン動物による摂取に適した組成物は、フード、栄養補助剤、トリート、スナック、及びトイ(典型的に咀嚼可能な及び消費可能なトイ)を含む。
【0031】
1具体例においては、1つ以上の抗酸化剤を含む組成物をフードの成分として動物に供給することができる。フードは、動物の通常の栄養上の必要性を満たし、これは、当業者であれば、動物の種、年齢、性別、体重、及び他のファクターに基づいて決定できる。例えば、1〜6才の犬科の動物のための典型的な食餌は、乾物ベースで、約23%のタンパク質、約15%の脂肪、約0.6%のリン、0.6%のカルシウム、及び約0.3%のナトリウムを含む。より高齢の犬科の動物及び猫科の動物のための典型的な食餌を、表1に示す。
【0032】
【表1】

1kcalのME(代謝エネルギー)/kgのフード(乾物)
【0033】
別の具体例においては、本組成物は、1つ以上の抗酸化剤を含むフード栄養補助剤である。栄養補助剤は、例えば、全体の栄養バランスまたは性能を改良するために、別の供給物またはペットフードと共に使用される供給物またはペットフードを含む。栄養補助剤は、栄養補助剤として他の供給物またはペットフードに未希釈で供給されるか、別個に入手可能な動物用飼料の他の部分と共に自由に選択できるか、または希釈され、動物の通常の供給物またはペットフードと混合されて完全な供給物またはペットフードを製造する組成物を含む。AAFCOは、例えば、the American Feed Control Officials, Inc., Official Publication, p. 220 (2003)において栄養補助剤に関する検討を提供している。栄養補助剤は、例えば、粉末、液体、シロップ、丸剤、カプセル封入組成物等を含む様々な形態とすることができる。
【0034】
別の具体例においては、本組成物は、1つ以上の抗酸化剤を含むトリートである。トリートは例えば、動物に与えられて、動物が非食事時間に食するように誘う組成物を含む。犬科の動物のためのトリートは例えば、ドッグボーンの形状の犬用ビスケットを含む。トリートは栄養があるものとすることができ、ここで組成物は1つ以上の栄養素を含み、例えば、フードに関して上記に説明した組成物を有することができる。非栄養トリートは、無毒の任意の他のトリートを包含する。1つ以上の抗酸化剤は、トリートの上にコーティングできるか、またはトリート中に取り入れることができるか、または両方である。
【0035】
さらなる具体例においては、本組成物は、1つ以上の抗酸化剤を含むトイである。トイは例えば、咀嚼可能なトイを含む。犬のためのトイは例えば、人工の骨状物(artificial bone)を含む。1つ以上の抗酸化剤は、例えば、トイの表面の若しくはトイの構成要素の表面のコーティング中に存在できるか、部分的に若しくは完全にトイ全体にわたって取り入れることができるか、または両方である。具体例においては、1つ以上の抗酸化剤は、目的とする使用者によって経口で利用可能である。本発明による修正に適した例示のトイは、米国特許第5,339,771号、米国特許第5,419,283号、及びこの中に開示する参考文献において開示されている。本発明は、部分的に消費可能なトイ(例えば、プラスチック成分を含むトイ)及び完全に消費可能なトイ(例えば、ローハイド及び様々な人工の骨状物)の両方を提供する。本発明はまた、ヒト及びヒト以外による使用の両方のための、特にコンパニオン動物、家畜、及び動物園の動物による使用のための、特に犬または猫による使用のためのトイを提供する。“トリート”及び“トイ”という用語は、互換性があるとみなすことができる。しかしながら、一般にトリートは完全に可食であり、トイは可食コーティングを有する。
【0036】
本発明の組成物を製造する際に、1つ以上の抗酸化剤を、配合処理の最中に、例えば本組成物の他の成分の混合の最中及び/または後に本組成物中に取り入れることができる。こうした成分の本組成物中への分布を、当業者には周知の標準的な混合手順を含む任意の従来の方法によって為し遂げることができる。
【0037】
本発明の組成物(特にフード)は、従来のペットフード加工を使用して、缶入り、またはウエット形態で製造できる。1具体例においては、挽いた動物(例えば動物、家禽、及び/または魚)のタンパク性組織を、動物脂肪及び植物油、穀物、他の栄養バランス剤、特殊目的の添加剤(例えばビタミン及びミネラル混合物、無機塩、セルロース及びビートパルプ、充填剤、及びその他同様なもの)を含む他の成分と混合し;加工に十分な水も加える。
【0038】
本発明の組成物(特にフード)を、従来の加工を使用して乾燥形態で製造できる。1具体例においては、例えば、動物性タンパク質源、植物性タンパク質源、穀物等を含む乾燥成分を挽き、一緒に混合する。脂肪、油、動物性タンパク質源、水等を含む湿ったまたは液体の成分を次に乾燥混合物に加え、これと混合する。混合物を次にキブルまたは同様の乾燥部片に加工する。キブルはしばしば、乾燥及び湿潤成分の混合物に高圧及び高温で機械仕事を施し、小さな開口部を通して押し、回転ナイフによって切り取ってキブルにする押し出し法を使用して形成される。湿潤したキブルを次に乾燥させ、例えば香味料、脂肪、油、粉末、及びその他同様なものを含むことができる1つ以上の局所コーティングで所望によりコーティングする。キブルはまた、押し出しではなくベーキング法を使用して生地から製造でき、ここで乾熱処理の前に生地を型に入れる。キブルはまた、ペレット化されるフードマトリックスから製造できる。抗酸化剤を、例えば、押出しの前に上記に説明した混合物に加えることによって、または押出しキブルまたはペレットを、例えば、局所コーティングの成分としての少なくとも1つの抗酸化剤でコーティングすることによって、抗酸化剤をフード組成物中に取り入れることができることに言及するのは重要である。
【0039】
本発明のトリートを、例えば、ドライフードに関して上記に説明したものと同様の押し出しまたはベーキング法によって製造できる。他の方法も使用して、1つ以上の抗酸化剤を含むコーティングを、既存のトリート形態の外面に施用するか、または少なくとも1つの抗酸化剤を既存のトリート形態中に注入することができる。本発明の動物用トイは典型的に、少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物で任意の既存のトイをコーティングすることによって製造される。
【0040】
抗酸化剤または抗酸化剤の混合物を、フードの成分としてまたはフード栄養補助剤として動物に供給できる。フード中に提供される量を、全て乾物ベースで、本明細書において活性材料として述べる。抗酸化剤の量は、超えると毒性をもたらす最大を超えるべきではない。好ましくは、抗酸化剤またはこの混合物を、口腔の健康を促進するのに有効な全量で動物に供給する。有効な量を構成するものは、動物の種、単数または複数の抗酸化剤のタイプ及び他のファクターに依存して変化する。当業者であれば、本明細書における開示に基づいて、常用の試験によって、任意の特定の状況において口腔の健康促進効果を有する全抗酸化剤量を容易に確立できよう。
【0041】
さらなる態様においては、本発明は、1つ以上の抗酸化剤を動物に投与するのに適したキットを提供する。キットは、単一包装中の別個の容器中にまたは仮想包装中の別個の容器中に、適切に、少なくとも1つの抗酸化剤及び以下のもののうちの少なくとも1つを含む(1)動物による消費に適した1つ以上の成分、(2)口腔の健康を促進するために有用な組成物を作るために、抗酸化剤及び他のキット構成要素を組み合わせる仕方に関する指導、(3)特に口腔の健康を促進するための、抗酸化剤及び本発明の他の構成要素の使用の仕方に関する指導。キットが仮想包装を含む場合、キットは、1つ以上の物理的キット構成要素と組み合わせた仮想環境における指導に限定される。キットは、抗酸化剤及び他の構成要素を、口腔の健康を促進するのに十分な量で含む。典型的に、抗酸化剤及び他の適切なキット構成要素を、動物による消費の直前に混和する。1具体例においては、キットは、1つ以上の抗酸化剤を含むパケット及び動物による消費のためのフードの容器を含む。キットは、追加の項目の例えば抗酸化剤及び成分を混合するための装置または混和物を含むための装置、例えば、フード用ボールを含んでよい。別の具体例においては、抗酸化剤を、動物における良好な健康を促進する追加の栄養補助剤の例えばビタミン及びミネラルと混合する。
【0042】
別の態様においては、本発明は、(1)口腔の健康を促進するために1つ以上の抗酸化剤を使用すること、(2)1つ以上の抗酸化剤を本発明の他の構成要素と混和すること、(3)1つ以上の抗酸化剤を単独でまたは本発明の他の要素と組み合わせて動物に投与すること、及び(4)口腔の健康を促進するために本発明のキットを使用すること、のうちの1つ以上に関する情報またはこれらに関する指導を伝達するための手段を提供する。本手段は、情報または指導を含む文書、ディジタル記憶媒体、光学的記憶媒体、音声提示、または視覚表示を含む。特定の具体例においては、伝達手段は、情報または指導を含む文書、ディジタル記憶媒体、光学的記憶媒体、音声提示、または視覚表示を含む。好ましくは、伝達手段は、このような情報または指導を含む表示されたウェブサイトまたはパンフレット、製品ラベル、包装挿入物、広告、または視覚表示である。有用な情報は、以下のうちの1つ以上を含む(1)抗酸化剤及び/または他の成分を組み合わせ、投与する方法及び技術並びに(2)本発明及びその使用に関する質問を有する場合、使用するために動物またはその介護者に関する情報と接触する。有用な指導は、混合のための量及び投与量及び頻度を含む。伝達手段は、本発明を使用する利益に関して指導し、本発明を動物に投与する承認された方法を伝達するために有用である。
【0043】
さらなる態様においては、本発明は、薬剤を製造するための、口腔の健康促進量の少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用に対処したものである。別のものにおいては、本発明は、口腔の健康を促進するための、薬剤を製造するためのこのような組成物の使用に対処したものである。一般に、薬剤は、化合物または組成物を、賦形剤、緩衝剤、バインダー、可塑剤、着色剤、希釈剤、圧縮剤(compressing agent)、滑沢剤、香味料、湿潤化剤(moistening agent)、及び動物への投与に適した薬剤を製造し、薬剤を配合するために有用であると当業者には周知の他の成分と混和することによって製造される。
【実施例】
【0044】
本発明を、その好適な具体例の以下の実施例によってさらに示すことができるが、特に断らない限り、こうした実施例は単に示すために含まれ、本発明の範囲を限定することを意図されていないことは理解できよう。
実施例1
この実施例は、歯肉の炎症は、ビタミンE及びCを様々な組合せで補った栄養的に完全な猫科の動物用のペットフードを供給された猫において増大しないをことを示す。
【0045】
38匹の猫を、4つの群A〜Dのうちの1つに無作為に割り当てた。栄養的に完全な猫科の動物用のペットフードに、4つの異なるレベルの抗酸化剤ビタミンC及びビタミンEを補った。群A〜Dを次の通り指定する:
【0046】
【表2】

【0047】
研究の開始の前に、全ての猫は、歯肉上及び歯肉下の歯垢及び歯石の除去並びに全ての露出した歯の表面をラバーカップ及び軽石を用いて研磨することを含む、完全な歯のクリーニングを受けた。各猫は、柔らかい歯ブラシ及びペット用歯磨き剤を用いて5日の期間毎日刷掃を受けた。ベースライン評価の前に、刷掃を48時間中止した。0日目に、全ての猫を、ベースライン歯垢蓄積及び歯肉の炎症に関して評価した。各猫に、完全な歯のクリーニングを与え、4週間後に猫を再度、歯垢蓄積及び歯肉の炎症に関して評価した。
【0048】
同様のモデルを使用した先の研究において、猫に、ビタミンCを有せず、65ppmのビタミンEを有する典型的なドライのグロサリー(grocery)キャットフードを供給した。この群の猫は、4週の期間にわたって、歯垢の142%の増大及び歯肉炎の52.4%の増大を示した。
【0049】
下記の表2に示すように、4週の期間にわたって、群A〜Dにおいて、歯肉炎のレベルのベースラインからの実質的な変化がなかった。これは、群A〜Dの各々は、歯垢蓄積のレベルにおいてベースライン値からの増大を示したという事実にもかかわらずそうであった。
【0050】
【表3】

【0051】
こうしたデータは、炎症のレベルの実質的な変化が無いことによって示されるように、ビタミンE及びCの様々な組合せを補った猫科の動物用のペットフードは、4週の期間にわたって歯肉組織に対する保護効果を提供できることを証明する。
【0052】
本明細書において、本発明の典型的な好適な具体例を開示し、特定の用語を用いたが、これは一般的な及び説明の意味でのみ使用し、限定及び請求の範囲において述べる本発明の範囲のためではない。明らかに、上記の教示を考慮して、本発明の多くの修正及び変形が可能である。従って、添付の請求の範囲内で、本発明は、具体的に説明したものとは異なって実施してよいことは理解できるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物における口腔の健康を促進する方法であって、口腔の健康促進量の少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を前記動物に摂取させることを含む方法。
【請求項2】
前記抗酸化剤は、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、リポ酸、アスタキサンチン、ベータ−カロテン、L−カルニチン、補酵素Q10、グルタチオン、リコペン、ルテイン、N−アセチルシステイン、大豆イソフラボン、S−アデノシルメチオニン、タウリン、トコトリエノール、ほうれん草、トマト、柑橘類の果実、ぶどう、にんじん、ブロッコリ、緑茶、イチョウ、コーングルテンミール、米ぬか、藻類、クルクミン、マリン油、果実、野菜、酵母、カロテノイド、フラボノイド、ポリフェノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物はコンパニオン動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動物は犬科の動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動物は猫科の動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物はフードである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物はトリートまたはトイである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は栄養補助剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗酸化剤は、歯肉または歯周の健康の軽減、予防、または治療のために有効な全抗酸化剤量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記全抗酸化剤量は、歯肉炎の軽減、予防、また治療のために有効である、請求項10に記載の方法。
【請求項11】
前記抗酸化剤は、ビタミンC、ビタミンEまたはこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物は、ビタミンEを約100〜約5,000ppmの量で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物は、ビタミンEを約250〜約2,500ppmの量で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物は、ビタミンEを約500〜約1,500ppmの量で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物は、ビタミンCを約10〜約10,000ppmの量で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物は、ビタミンCを約20〜約2,000ppmの量で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物は、ビタミンCを約25〜約500ppmの量で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
1つ以上の抗酸化剤を動物に投与するのに適したキットであって、単一包装中の別個の容器中にまたは仮想包装中の別個の容器中に、適切に、少なくとも1つの抗酸化剤並びに(1)動物による消費に適した1つ以上の成分、(2)口腔の健康を促進するために有用な組成物を作るために、前記抗酸化剤及び他のキット構成要素を組み合わせる仕方に関する指導、(3)特に口腔の健康を促進するための、前記抗酸化剤及び本発明の他の構成要素の使用の仕方に関する指導のうちの少なくとも1つを含むキット。
【請求項19】
(1)口腔の健康を促進するために1つ以上の抗酸化剤を使用すること、(2)1つ以上の抗酸化剤を本発明の他の構成要素と混和すること、(3)1つ以上の抗酸化剤を単独でまたは本発明の他の要素と組み合わせて動物に投与すること、及び(4)口腔の健康を促進するために本発明のキットを使用すること、のうちの1つ以上に関する情報またはこれらに関する指導を伝達するための手段であって、前記情報または指導を含む文書、ディジタル記憶媒体、光学的記憶媒体、音声提示、または視覚表示を含む手段。
【請求項20】
表示されたウェブサイト、パンフレット、製品ラベル、包装挿入物、広告、または視覚表示からなる群から選択される、請求項21に記載の手段。
【請求項21】
動物における口腔の健康を促進するために薬剤を製造するために口腔の健康促進量の少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用。

【公開番号】特開2012−211157(P2012−211157A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134814(P2012−134814)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【分割の表示】特願2007−548470(P2007−548470)の分割
【原出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】