説明

動物の免疫方法、免疫用組成物、抗体の製造方法、ハイブリドーマの製造方法、及びモノクローナル抗体の製造方法

【課題】遺伝子免疫によって抗原タンパク質に対する抗体を作製する際に、より高効率で体液性免疫の応答を誘導することができる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を動物に投与することにより、該動物体内で該融合遺伝子を発現させ、抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導する。シャペロニンの例としては、大腸菌GroELが挙げられる。免疫用組成物、抗体の製造方法、ハイブリドーマの製造方法、及びモノクローナル抗体の製造方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の免疫方法、免疫用組成物、抗体の製造方法、ハイブリドーマの製造方法、及びモノクローナル抗体の製造方法に関し、さらに詳細には、抗原タンパク質をコードする遺伝子とシャペロニンをコードする遺伝子との融合遺伝子を投与して体液性免疫の応答を誘導する動物の免疫方法、該免疫方法に使用するための免疫用組成物、該免疫方法を用いる抗体の製造方法、該免疫方法により免疫された動物の免疫細胞を使用するハイブリドーマの製造方法、及び該ハイブリドーマを用いるモノクローナル抗体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は体液性免疫の主役であり、感作リンパ球とともに生体防御機構の重要な役割を担っている。一方で、抗体は、その抗原との特異的親和性を利用した各種の技術、例えば、アフィニティークロマトグラフィーや免疫測定法等にも頻繁に利用されており、バイオテクノロジー分野において必要不可欠のツールとなっている。従来より、抗体は、抗原タンパク質を免疫原として動物に投与し、体液性免疫の応答を誘導させることにより作製されている。この際、免疫原として用いる抗原タンパク質は、例えば、生体試料等から単離・精製されたものを使用する。最近では、組換えDNA技術を用いて宿主細胞に抗原タンパク質をコードする遺伝子を導入し、該宿主細胞の培養物から組み換え型の抗原タンパク質を単離・精製することもよく行われている。また、組換えDNA技術によって抗原タンパク質を調製することが困難な場合等には、抗原タンパク質の一部に対応するペプチドを化学的に合成し、それを免疫原として動物に投与することも行われている。
【0003】
一方、抗原タンパク質を接種するのではなく、その抗原タンパク質をコードする遺伝子を動物体内で発現させて免疫応答を誘導する、遺伝子免疫と呼ばれる技術がある。遺伝子免疫を行う場合は、例えば、抗原タンパク質をコードする遺伝子を適宜の発現ベクターに組み込み、該発現ベクターを動物に接種する。すると、発現ベクターに組み込まれた遺伝子が動物体内で発現し、抗原タンパク質が合成される。その結果、動物体内で合成された抗原タンパク質により免疫応答が誘導される。遺伝子免疫によれば、抗原タンパク質をコードする遺伝子さえ単離されておれば免疫を行うことができ、抗原タンパク質を単離・精製する必要がない。したがって、精製法が確立されていない抗原タンパク質、精製が困難な抗原タンパク質、遺伝子のみ知られている未知の抗原タンパク質であっても、その抗原タンパク質に対する免疫応答を誘導することが可能である。その結果、そのような抗原タンパク質に対する抗体を取得することが可能になる。また、遺伝子免疫の場合は、動物体内で遺伝子が発現して合成される抗原タンパク質の量が、抗原タンパク質を直接投与する場合に必要な量と比較して格段に少なくても免疫応答を誘導できるという利点もある。さらに、組換えDNA技術によって抗原タンパク質を調製することが困難な場合等であっても、従来の方法のようにペプチド抗原を別途化学合成する必要がなく、遺伝子の全長を動物に導入するだけでよいという利点もある。
【0004】
上記のように、遺伝子免疫は従来の方法にはない利点を有するが、抗原タンパク質の種類によっては体液性免疫の応答が誘導されず、抗体が産生されない場合がある。例えば、以下のような場合は、従来の免疫方法と同じく体液性免疫の応答が誘導されないことがある。すなわち、抗原タンパク質が、免疫した動物が内在的に有するタンパク質と極めて相同性が高いものである場合は、動物体内でその抗原タンパク質が合成されても異物として認識されないため、体液性免疫の応答が誘導されないことがある。また、抗原タンパク質がその動物体内で不安定なものである場合、動物体内における抗原タンパク質の量が少なくなり、体液性免疫の応答が誘導されないことがある。また、抗原タンパク質が主として細胞性免疫を誘導するものである場合は、体液性免疫が誘導されにくくなる。また、遺伝子免疫特有の問題点として、抗原タンパク質の遺伝子が動物への導入効率が悪いものである場合や、抗原タンパク質の遺伝子が動物体内での発現量が低いものである場合にも、抗原タンパク質の量が少なくなり、体液性免疫の応答が誘導されないことがある。
【0005】
上記した遺伝子免疫の問題点を解決するために、各種の工夫が提案されている。例えば、ウロキナーゼに対する免疫応答を誘導する際に、ウロキナーゼ遺伝子を単独で投与するのではなく、膜貫通ドメインの遺伝子との融合遺伝子の形で投与することにより、ウロキナーゼに対する高い免疫応答を誘導し、ウロキナーゼに対する抗体を取得した例がある(特許文献1)。ここで得られた高い免疫応答は、融合遺伝子の発現産物である融合タンパク質において、ウロキナーゼ部分が強制的に細胞表面に配置されるために起こったと考えられる。
【0006】
また、ワクチンの分野において、ヒートショックプロテインであるHSP70をコードする遺伝子と抗原タンパク質をコードする遺伝子との融合遺伝子(キメラ核酸)をDNAワクチンとして使用した例がある(特許文献2)。この例では、結核菌由来HSP70をコードする遺伝子を使用している。しかしながら、この技術では、抗原特異的細胞性免疫(キラーT細胞)を誘導することはできたが、体液性免疫すなわち抗体産生は誘導されていない。一方で、結核菌由来HSP70と抗原タンパク質との融合タンパク質を免疫原として用いると、HSP70が好適なアジュバントとして機能し、抗原タンパク質に対する抗体産生が誘導されたという報告がある(特許文献3)。これらのことは、HSP70と抗原タンパク質との融合タンパク質による免疫応答と、HSP70遺伝子と抗原タンパク質遺伝子との融合遺伝子による免疫応答とでは、抗原提示細胞での免疫応答機構が異なることを意味している。このように、ある抗原タンパク質に対する体液性免疫の免疫応答を誘導したい場合に、その抗原タンパク質の遺伝子を用いて免疫しても、所望の免疫応答が誘導されるとは限らない。むしろ、抗原タンパク質に対する所望の免疫応答を誘導できない可能性の方が高いと考えられる。
【0007】
【特許文献1】国際公開第02/08416号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/29233号パンフレット
【特許文献3】国際公開第94/29459号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、遺伝子免疫にはまだ未知の部分が多く、なお試行錯誤の域を出ない。遺伝子免疫により抗体を作製するためには、抗原タンパク質の種類を問わずに再現性よく確実に体液性免疫の応答を誘導することができる技術が求められる。本発明の目的は、遺伝子免疫によって抗原タンパク質に対する抗体を作製する際に、より高効率で体液性免疫の応答を誘導することができる各種の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、その遺伝子を動物に接種しても体液性免疫の応答を誘導できない抗原タンパク質であっても、抗原タンパク質をコードする遺伝子とシャペロニンをコードする遺伝子との融合遺伝子を動物に接種することにより、抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導することができることを見出し、本発明を完成した。本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
本発明の第1の様相は、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を動物に投与することにより、該動物体内で該融合遺伝子を発現させ、抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導する動物の免疫方法である。
【0011】
本様相の動物の免疫方法は、遺伝子免疫に属するものであり、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を動物に投与する。そして、該動物体内で該融合遺伝子を発現させ、抗原タンパク質の全部又は一部とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子との融合タンパク質が合成される。その結果、抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答が誘導される。本様相の動物の免疫方法によれば、抗原タンパク質をコードする遺伝子を単独で投与しても体液性免疫の応答を誘導できない抗原タンパク質であっても、シャペロニンの作用によって体液性免疫の応答を誘導することができる。その結果、そのような抗原タンパク質に対する抗体を動物に産生させることができる。
【0012】
シャペロニンは分子シャペロンの1種であり、分子量約6万のサブユニット(シャペロニンサブユニット)からなる複合タンパク質である。そして、シャペロニンはその内部に他のタンパク質を格納し、正しく折り畳むことができる。また、「シャペロニンサブユニット連結体」は、2個以上のシャペロニンサブユニットがペプチド結合を介して直列に連結された人工のタンパク質と定義される。換言すれば、シャペロニンサブユニット連結体は、2個以上のシャペロニンサブユニットがタンデムに連結された人工タンパク質である。なお、本明細書においては、シャペロニンサブユニットをコードする遺伝子、及びシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子を総称して「シャペロニンをコードする遺伝子」と呼ぶことがある。
【0013】
好ましくは、前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、大腸菌由来のものである。
【0014】
大腸菌由来のシャペロニンはGroELと呼ばれ、その生化学的及び物理化学的性質がよく調べられており、遺伝子も入手しやすい。そして、この好ましい様相の動物の免疫方法においては、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体が大腸菌由来のものである。かかる構成により、動物に投与するための融合遺伝子を容易に作製することができる。
【0015】
好ましくは、前記融合遺伝子は、発現ベクターに組み込まれており、かつ該発現ベクター上のプロモーターによって発現が調節されている。
【0016】
この好ましい様相の動物の免疫方法においては、融合遺伝子が発現ベクターに組み込まれており、その発現がプロモーターにより調節されている。かかる構成により、より確実に融合遺伝子を動物内で発現させることができる。その結果、より確実に体液性免疫の応答を誘導することができる。
【0017】
好ましくは、前記プロモーターは、CMVプロモーター、AMLプロモーター、SV40プロモーター、SRαプロモーター又はEF−1αプロモーターである。
【0018】
この好ましい様相の動物の免疫方法においては、発現ベクター上のプロモーターがCMVプロモーター等の誘導が強力なものであり、かつその性質もよく知られているものである。かかる構成により、融合遺伝子を高効率で発現することができる。その結果、より確実に体液性免疫の応答を誘導することができる。
【0019】
好ましくは、前記発現ベクターは、CpGモチーフを含むものである。
【0020】
CpGモチーフは微生物のDNAに含まれている塩基配列であり、ほ乳類の免疫刺激系を高めることが知られている。そして、この好ましい様相の動物の免疫方法においては、発現ベクターがCpGモチーフを含むものである。かかる構成により、動物に対してより高い免疫の応答を誘導することができる。その結果、高効率に抗原タンパク質に対する抗体を産生させることができる。
【0021】
好ましくは、前記動物は、哺乳類又は鳥類である。
【0022】
この好ましい様相の動物の免疫方法においては、免疫する動物がその取り扱いが簡単な哺乳類又は鳥類である。かかる構成により、より簡単に免疫を行うことができる。
【0023】
好ましくは、前記哺乳類は、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ又はブタである。好ましくは、前記鳥類は、ニワトリ、アヒル又は七面鳥である。
【0024】
好ましくは、前記抗原タンパク質は、Gタンパク質共役型受容体、イオンチャネル型受容体、チロシンカイネース型受容体、CD抗原、細胞接着分子、癌抗原、サイトカイン、成長因子、増殖因子、栄養因子、ウィルス抗原、細菌抗原又は毒素抗原である。
【0025】
この好ましい様相の動物の免疫方法においては、抗原タンパク質がGタンパク質共役型受容体等の医薬品開発に有用なタンパク質である。かかる構成により、これらの有用なタンパク質に対する抗体を取得でき、アッセイ系の構築等に適用することができる。
【0026】
本発明の第2の様相は、本発明の動物の免疫方法に使用するための免疫用組成物であって、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を主成分とする免疫用組成物である。
【0027】
上記した本発明の動物の免疫方法を実施する場合は、例えば、融合遺伝子を適宜の溶媒に溶かした組成物を調製し、該組成物を動物に投与することができる。そして、本様相の免疫用組成物は、本発明の動物の免疫方法に使用するためのものであり、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を主成分とする。本様相の免疫用組成物によれば、注射等の方法により融合遺伝子を動物に投与することができる。また、組成物中の融合遺伝子の濃度を調整することにより、融合遺伝子の投与量を正確に調節することができる。
【0028】
本発明の第3の様相は、本発明の動物の免疫方法により動物を免疫して抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導し、該動物に抗原タンパク質に対する抗体を産生させ、該動物から該抗体を採取する抗体の製造方法である。
【0029】
上記した本発明の動物の免疫方法は体液性免疫の応答を誘導するものであり、その結果、動物に抗体を産生させることができる。そして、本様相の抗体の製造方法は、本発明の動物の免疫方法によって体液性免疫の応答を誘導し、動物に抗原タンパク質に対する抗体を産生させ、該動物から抗体を採取するものである。本様相の抗体の製造方法によれば、精製法が確立されていない抗原タンパク質、精製が困難な抗原タンパク質、遺伝子のみ知られている未知の抗原タンパク質、組換えDNA技術では遺伝子の発現量が少ない抗原タンパク質等で、かつその遺伝子を単独で投与しても抗体が産生されない抗原タンパク質であっても、動物に抗体を産生させることができる。動物の血清から抗体を採取する場合は、ポリクローナル抗体として採取される。
【0030】
本発明の第4の様相は、本発明の動物の免疫方法により動物を免疫して抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導した後に、該動物から免疫細胞を採取し、該免疫細胞とミエローマとを細胞融合することにより抗原タンパク質に対する抗体を産生するハイブリドーマを作製するハイブリドーマの製造方法である。
【0031】
本様相のハイブリドーマの製造方法においては、上記した本発明の動物の免疫方法により体液性免疫の応答を誘導された動物の免疫細胞とミエローマを細胞融合することにより、抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製する。かかる構成により、抗原タンパク質自身あるいはその遺伝子を単独で投与しても抗体が産生されない抗原タンパク質であっても、それに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。
【0032】
本発明の第5の様相は、本発明のハイブリドーマの製造方法で製造されたハイブリドーマを培養し、培養物から抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を採取するモノクローナル抗体の製造方法である。
【0033】
本様相のモノクローナル抗体の製造方法は、上記した本発明のハイブリドーマの製造方法によって製造されたハイブリドーマを培養し、該培養物からモノクローナル抗体を採取する。かかる構成により、抗原タンパク質自身あるいはその遺伝子を単独で投与しても抗体が産生されない抗原タンパク質であっても、それに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。
【0034】
本発明の第6の様相は、本発明の動物の免疫方法により動物を免疫して抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導した後に、該動物から抗体に対するmRNAを調製し、該mRNAを鋳型としてcDNAを調製し、該cDNAを用いたファージディスプレイ法により抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製する製造方法である。
【0035】
本様相のモノクローナル抗体の製造方法はファージディスプレイ法を用いるものであり、上記した本発明の動物の免疫方法により体液性免疫の応答を誘導された動物からmRNAを調製し、該mRNAからcDNAを調製し、該cDNAを用いたファージディスプレイ法により抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製する。かかる構成により、抗原タンパク質を投与したり、その遺伝子を単独で投与したりしても抗体が産生されない抗原タンパク質であっても、それに対するモノクローナル抗体を製造することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の動物の免疫方法及び免疫用組成物によれば、遺伝子免疫を行う際に、その遺伝子を単独で動物に接種しても体液性免疫の応答を誘導することができない抗原タンパク質であっても、体液性免疫の応答を誘導することができる。
【0037】
本発明の抗体の製造方法によれば、遺伝子免疫を行う際に、その遺伝子を単独で動物に接種しても体液性免疫の応答を誘導することができない抗原タンパク質であっても、抗原タンパク質に対する抗体を製造することができる。
【0038】
本発明のハイブリドーマの製造方法によれば、遺伝子免疫を行う際に、その遺伝子を単独で動物に接種しても体液性免疫の応答を誘導することができない抗原タンパク質であっても、抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを製造することができる。
【0039】
本発明のモノクローナル抗体の製造方法によれば、遺伝子免疫を行う際に、その遺伝子を単独で動物に接種しても体液性免疫の応答を誘導することができない抗原タンパク質であっても、抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例3におけるhETAR遺伝子導入細胞と血清中の抗hETAR抗体と相互作用の解析結果を表し、図1(a)は遺伝子免疫前(0日目)の血清を用いた場合の二次元ドット表示図、図1(b)は遺伝子免疫後35日目の血清を用いた場合の二次元ドット表示図である。
【図2】実施例3におけるhETBR遺伝子導入細胞と血清中の抗hETAR抗体と相互作用の解析結果を表し、図2(a)は遺伝子免疫前(0日目)の血清を用いた場合の二次元ドット表示図、図2(b)は遺伝子免疫後35日目の血清を用いた場合の二次元ドット表示図である。
【図3】実施例3における対照の細胞と血清中の抗hETAR抗体と相互作用の解析結果を表し、図3(a)は遺伝子免疫前(0日目)の血清を用いた場合の二次元ドット表示図、図3(b)は遺伝子免疫後35日目の血清を用いた場合の二次元ドット表示図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳しく説明する。
【0042】
本発明の動物の免疫方法は、遺伝子免疫に属するものであり、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を動物に投与するものである。本発明の動物の免疫方法においては、抗原タンパク質の全部をコードする遺伝子と、抗原タンパク質の一部をコードする遺伝子の両方が使用可能であり、目的に応じて使い分けることができる。抗原タンパク質の全部をコードする遺伝子を用いる場合は、例えば、抗原タンパク質がもつ複数のエピトープそれぞれに対する抗体や、抗原タンパク質の立体構造を認識する抗体を産生させる際に好適である。一方、抗原タンパク質の一部をコードする遺伝子を用いる場合は、例えば、特定のエピトープに対する抗体を産生させる際に好適である。
【0043】
シャペロニンは分子シャペロンの一種であり、バクテリア、古細菌、真核生物等の全ての生物に存在している。特に、バクテリアの細胞質、真核細胞のミトコンドリア、葉緑体に多量に存在している。シャペロニンは、タンパク質の折り畳みを促進する活性やタンパク質の変性を阻止する活性を有する。シャペロニンは、分子量約6万のシャペロニンサブユニット(Hsp60ともいう)7〜9個からなるリング状構造体が2個重なった、総分子量80万〜100万程度のシリンダー状の巨大な複合タンパク質である。シャペロニンはそのリング状構造体の内部に空洞を有しており、その空洞内に折り畳み途中のタンパク質や変性したタンパク質を一時的に収納して複合体(以下、「シャペロニン−タンパク質複合体」という。)を形成する。そして、空洞内で収納したタンパク質を正しく折り畳み、続いて空洞から正しく折り畳まれたタンパク質を放出することが知られている。
【0044】
シャペロニンはグループ1型とグループ2型とに大別される。バクテリアや真核生物のオルガネラに存在するシャペロニンはグループ1型に分類され、コシャペロニンと称される分子量約10kDaのタンパク質の環状複合体を補因子とする。一方、グループ2型シャペロニンは、真核生物の細胞質や古細菌に見られ、それらの構造や機能に関しては不明な点が多く残されており、グループ1型のコシャペロニンに相当するタンパク質も現在のところ見つかっていない。(Gupta、Mol.Microbiol.、15、1−、1995年)。本発明の動物の免疫方法においては、いずれの型のシャペロニンの遺伝子でも使用可能である。例えば、グループ1型のシャペロニンとしては大腸菌のGroEL、グループ2型のシャペロニンとしては古細菌由来のTCPが挙げられる。すなわち、GroELサブユニット若しくはGroELサブユニット連結体をコードする遺伝子、TCPサブユニット若しくはTCPサブユニット連結体をコードする遺伝子を使用することができる。
【0045】
本発明の動物の免疫方法における一つの様相では、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニットとの融合遺伝子を動物に投与する。すると、抗原タンパク質をコードする遺伝子単独では免疫応答が誘導されない場合でも、十分に抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導することができる。なお、融合遺伝子が動物内で発現した際の発現産物がどのような形態をとっているかは不明であるが、可能性としては、免疫動物の細胞内でシャペロニンが抗原タンパク質を安定化しているような状態が考えられる。また近年、シャペロニンが抗原提示細胞の抗原受容体であるToll−like receptor 2及びToll−like receptor 4と結合するという報告がある(Gobert, A.P. et al., 2004, J. Biol. Chem. 279, 245)。このことから、シャペロニンと標的抗原との融合遺伝子産物において、シャペロニンが好適なアジュバントとして機能する可能性もある。
【0046】
本発明の動物の免疫方法における他の様相では、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子との融合遺伝子を動物に投与する。ここで、「シャペロニンサブユニット連結体」は、2個以上のシャペロニンサブユニットがペプチド結合を介して直列に連結された人工のタンパク質と定義される。換言すれば、シャペロニンサブユニット連結体は、シャペロニンサブユニット連結体は2個以上のシャペロニンサブユニットがタンデムに連結された人工タンパク質である。そして、シャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子は、2個以上のシャペロニンサブユニット遺伝子が直列に連結された人工の遺伝子である。換言すれば、2個以上のシャペロニンサブユニット遺伝子がタンデムに連結された人工遺伝子である。そして本様相は、この人工遺伝子と抗原タンパク質をコードする遺伝子との融合遺伝子を動物に投与するものである。なお、シャペロニンサブユニット連結体は、互いに集合して、天然のシャペロニンと同様の複合体構造をとることができる。したがって、本様相においても、融合遺伝子の発現産物が、可能性として、天然のシャペロニン−タンパク質複合体と同じように複合体を形成し、免疫動物の細胞内でシャペロニンが抗原タンパク質を安定化していることが考えられる。以上のように、本発明の動物の免疫方法においては、抗原タンパク質がシャペロニンの内部に格納され、正しく折り畳まれた正常型タンパク質として存在していると考えられる。
【0047】
大腸菌由来のシャペロニンはGroELと呼ばれるものである。GroELは、サブユニット(GroELサブユニット)7個からなるリング状構造体が2個重なった構造を有しており、計14個のGroELサブユニットから形成されている。GroELサブユニットの遺伝子は公知で入手容易であり、本発明の動物の免疫方法をより簡便に行うのに好適である。配列番号10に公知のGroELサブユニット遺伝子の塩基配列を示す。例えば、この塩基配列を元にプライマーを設計し、大腸菌のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行えば、GroELサブユニット遺伝子を得ることができる。
【0048】
シャペロニンには、1個のリング状構造体のみを有するシングルリングのシャペロニンも知られている。本発明の動物の免疫方法においては、シングルリングのシャペロニンをコードする遺伝子も使用可能である。シングルリングのシャペロニンの例として、GroELサブユニットの一部のアミノ酸残基が置換された改変型GroELサブユニットが挙げられる。改変型GroELサブユニット遺伝子の例を配列番号24に示す。この改変型GroELサブユニット遺伝子は、GroELサブユニットの452番目のアミノ酸残基がグルタミン酸に、461、463、及び464番目のアミノ酸残基がアラニンに置換された改変型GroELサブユニット(SR1)をコードする。
【0049】
なお、本発明の動物の免疫方法における「シャペロニンサブユニットをコードする遺伝子」には、天然のシャペロニンサブユニットの全長をコードする遺伝子の他に、天然のシャペロニンサブユニットに由来する同様の活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も含むものとする。そのような遺伝子の例としては、天然のシャペロニンサブユニットをアミノ酸置換等により改変した変異型のシャペロニンサブユニットをコードする遺伝子が挙げられる。他の例としては、天然型又は前記変異型のシャペロニンサブユニットの一部のドメインからなるタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。さらに他の例としては、天然型又は前記変異型のシャペロニンサブユニットの一部のドメインを欠失させたタンパク質をコードする遺伝子等が挙げられる。例えば、シャペロニンサブユニットの中の抗原決定部位となりうる免疫原性の高いドメインを欠失させた遺伝子を用いることにより、抗原タンパク質に対する免疫応答を優先的に誘導する等の操作が可能である。
【0050】
本発明の動物の免疫方法においては、融合遺伝子が発現ベクターに組み込まれ、発現ベクター上のプロモーターの制御下にある実施形態が好ましい。発現ベクターとしては、動物細胞内で複製可能な発現ベクターであればよく、pCI、pSI、pAdVantage、pTriEX、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK−CMV、pBK−RSV、EBV等の発現ベクターを挙げることができる。また、発現ベクター上のプロモーターは、動物細胞内で機能するものであればよく、例えば、サイトメガロウイルス(Cytomegarovirus、CMV)のCMVプロモーター、アデノウィルス後期(Adenovirus Major Late、AML)のAMLプロモーター、シミアンウィルス40(Simian Virus 40、SV40)のSV40プロモーター、SV40およびHTLV−1 LTRの融合プロモーターであるSRαプロモーター、伸長因子(Elongation Factor、EF)のEF−1αプロモーター等が挙げられる。さらに、発現ベクターにはプロモーター活性を増強するエンハンサーを含むものでもよい。
【0051】
さらに、発現ベクターにはCpGモチーフが含まれていてもよい。CpGモチーフはメチル化されていないシトシン(C)とグアニン(G)に富む配列である。CpGモチーフは、免疫動物の細胞表面に存在するToll like receptor 9(TLR9)によって認識され、細胞内情報伝達系を介してサイトカインの遺伝子発現による免疫反応を活性化すると同時に、抗原情報の発現を促進し抗原提示とヘルパーT細胞の活性化による特異的免疫応答を高めることができる。CpGモチーフを含む発現ベクターによれば、CpGモチーフの免疫刺激系を高める作用により、より高い免疫応答を得ることができる。なお、CpGモチーフは発現ベクターのどの位置に含まれていてもよく、1箇所でもよいし複数箇所でもよい。
【0052】
本発明の動物の免疫方法における融合遺伝子の投与方法としては特に制限はなく、皮下注射、筋肉注射、静脈注射等が挙げられる。またパーティクルガンによる投与も適用可能である。また、本発明の動物の免疫方法における融合遺伝子の投与量は、用いる発現ベクターやプロモーターの種類等に応じて適宜決定すればよいが、1回当たりおおむね1〜3mg/kg体重で、これはマウスの場合は25〜100μg/回になる。また投与の回数は、1回でもよいが、一定間隔をおいて複数回行う方がより高い体液性免疫の応答を誘導することができる。
【0053】
本発明の動物の免疫方法に好適な抗原タンパク質としては、例えば、Gタンパク質共役型受容体、イオンチャネル型受容体、チロシンカイネース型受容体、CD抗原、細胞接着分子、癌抗原、サイトカイン、成長因子、増殖因子、栄養因子、ウィルス抗原、細菌抗原又は毒素抗原が挙げられる。なお、本発明の動物の免疫方法ではこれらのタンパク質の遺伝子さえ入手できれば実施することができ、タンパク質自身が精製されている必要はない。
【0054】
本発明の動物の免疫方法に用いる動物としては、取り扱いが容易である哺乳類又は鳥類が好ましい。哺乳類の例としては、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等を挙げることができる。また、鳥類の例としては、ニワトリ、アヒル又は七面鳥を挙げることができる。特に、最終的にモノクローナル抗体を取得する場合、細胞融合の容易さからマウス、ラット、ウサギ又はニワトリを用いることが好ましい。また、いかなる動物種であろうとB細胞の腫瘍細胞が取得できればモノクローナル抗体を取得することは可能である。
【0055】
本発明の免疫用組成物は、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を主成分とするものである。本発明の免疫用組成物の代表的な形状としては、等張液に該融合遺伝子を溶解させたものである。等張液の例としては、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。その他、溶媒には各種の緩衝液を用いることもできる。また、抗体産生能を上昇させるために、Mg2+等の金属イオンを等張液に添加することも効果的である。さらに、細胞性免疫を特異的に抑制する免疫抑制剤を加えることで、より体液性免疫を誘導し、抗体産生を高めることも可能である。さらには、体液性免疫を誘導するTH2ヘルパーT細胞の分化を誘導するようなサイトカインであるGM−CSF、TNFα、IL−4を等張液に添加したり、またそれらのサイトカインをコードする遺伝子を添加したりすることも、抗体産生能を上昇させるためには効果的である。同様に、サイトカインの1つであるIL−10又はIL−10をコードする遺伝子を等張液に添加し、細胞性免疫を抑制することで、体液性免疫を誘導し、抗体産生を高めることも可能である。さらには、抗体産生の主役であるB細胞の活性化、分裂、抗体産生細胞への分化を誘導するサイトカインであるIL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10又はそれらをコードする遺伝子を等張液に添加することで、抗体産生を高めることも可能である。本発明の免疫用組成物における融合遺伝子の濃度は、例えば、10〜500μg/mL程度である。
【0056】
さらに、本発明の免疫用組成物には、CpGモチーフからなるオリゴヌクレオチドを含むものでもよい。この場合、該オリゴヌクレオチドはアジュバントとして機能し、より高い免疫応答を誘導することができる。また、本発明における免疫用組成物は、体液性免疫を誘導するためのワクチンとしても用いることができる。ワクチンとして用いる場合は、ヒトに投与することが可能である。
【0057】
本発明の抗体の製造方法においては、上記した本発明の動物の免疫方法によって免疫した動物から抗体を採取する。具体的には、例えば、免疫後の動物から定期的に部分採血を行って抗体価を測定し、抗体の産生状態をモニターする。そして、抗体価が最大に達した時点で全採血を行い、血清を調製する。そして、得られた血清から抗体を得る。この際、得られる抗体はポリクローナル抗体である。また、血清から抗体を単離・精製する方法としては、一般に抗体の精製に用いられている方法を使用することができ、例えば、プロテインAを用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いることができる。
【0058】
本発明のハイブリドーマの製造方法においては、上記した本発明の動物の免疫方法によって免疫した動物から免疫細胞を採取し、これをミエローマと細胞融合することによりハイブリドーマを作製する。細胞融合、ハイブリドーマの選抜及びクローニングについては、公知の方法をそのまま使用することができる。例えば、細胞融合はケーラーとミルシュタインの方法により行うことができる。また、ハイブリドーマの選抜は、HAT選択培地を用いた培養により行うことができる。さらに、ハイブリドーマのクローニングは限界希釈法により行うことができる。そして、このようにしてクローニングされたハイブリドーマを培養することにより、抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を製造することができる。ハイブリドーマの培養は、マウス等の動物の腹腔内で行ってもよく、ディッシュ等を用いてインビトロで行ってもよい。マウス等の動物の腹腔内でハイブリドーマを培養した場合は、腹水を採取し、その腹水からモノクローナル抗体を単離・精製することができる。インビトロで培養した場合は、その培養液からモノクローナル抗体を単離・精製することができる。モノクローナル抗体を精製する方法としては、サブクラスがIgGのモノクローナル抗体の場合は、例えば、上記したプロテインAを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって行うことができる。
【0059】
また、本発明のモノクローナル抗体の製造方法は、ファージディスプレイ法を用いる方法も含む。すなわち、上記した本発明の動物の免疫方法によって免疫した動物からmRNAを調製し、該mRNAを鋳型としてcDNAを調製し、抗体可変領域のみをコードする1本鎖抗体(scFV)遺伝子を作製する。そして、該遺伝子をファージミドベクターにクローニングして大腸菌に移入した後、ファージを感染させ、scFV抗体をファージ被膜上に発現させることができる。このようにして発現させたscFVを抗原タンパク質に対してスクリーニングすることで、抗原タンパク質に特異的なモノクローナルscFV抗体を作製することが可能である。なお、mRNAの調製、cDNAの調製、ファージミドへのサブクローニングや大腸菌への移入、ファージの感染、抗原タンパク質に特異的なモノクローナルscFV抗体のスクリーニングは、公知の方法をそのまま使用することができる。例えば、リーダー配列(シグナル配列)とファージ被膜タンパクIIIとをコードする遺伝子断片、及びM13複製開始点、の2つの要素を含むファージミドベクターに、scFV遺伝子をサブクローニングし、ファージとしては、M13ファージを用いることで、M13ファージ上にscFV抗体を発現させることが可能である。また、スクリーニングによって得られたファージを特定の細菌に感染させ、培養することで、培養液から抗原タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を大量に回収することも可能である。なお、本発明のモノクローナル抗体の製造方法によれば、scFV抗体だけではなく、抗体の定常領域を除いたFab抗体断片などを作製することも可能である。
【0060】
以下に実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
(1)ヒトエンドセリンA受容体遺伝子の単離
モデル抗原タンパク質としてヒト由来エンドセリンA受容体(hETAR)を用い、以下の手順で遺伝子免疫を行った。まず、ヒト肺cDNAライブラリー(タカラバイオ社)を鋳型とし、配列番号1及び2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、配列番号3に示す塩基配列を有するエンドセリンA受容体(hETAR)遺伝子を含むDNA断片を増幅した。なお、この増幅されたDNA断片には、プライマーに由来して、5’末端にNheIサイト、3’末端にSalIサイトが導入された。また、同様にして配列番号1及び4に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、配列番号3に示す塩基配列を有するhETAR遺伝子を含むDNA断片を増幅した。なお、この増幅されたDNA断片には、プライマーに由来して、5’末端にNheIサイト、3’末端に2個の停止コドン(TAATAG)をコードする配列及びSalIサイトが導入された。また、同様にして配列番号5及び6に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、配列番号3に示す塩基配列を有するhETAR遺伝子を含むDNA断片を増幅した。なお、この増幅されたDNA断片には、プライマーに由来して、5’末端にSalIサイト、3’末端にFLAGタグ(FLAG Tag、配列番号7)をコードする配列、2個の停止コドン(TAATAG)をコードする配列及びHindIIIサイトが導入された。
【0062】
(2)GroELサブユニット遺伝子の単離
大腸菌HMS174(DE3)株(ノバジェン社)からゲノムDNAを抽出・精製した。次に、精製したゲノムDNAを鋳型とし、配列番号8及び9に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、配列番号10に示す塩基配列を有するGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を増幅した。なお、この増幅されたDNA断片には、プライマーに由来して、5’末端にSalIサイト、3’末端に2個の停止コドン(TAATAG)をコードする配列及びNotIサイトが導入された。
【0063】
(3)ヒトエンドセリンA受容体とGroELサブユニットとの融合タンパク質を発現する遺伝子免疫用ベクターの構築
哺乳動物発現ベクターpCI Mammalian Expression Vector(Promega社)を制限酵素NheIとSalIで消化し、バクテリア由来アルカリフォスファターゼ(BAP)にて末端を脱リン酸化処理した後、上記(1)で増幅した5’末端にNheIサイトを、3’末端にSalIサイトを付加したhETAR遺伝子を含むDNA断片を挿入した。さらに、この発現ベクターをSalIおよびNotIで消化し、BAPにて末端を脱リン酸化処理した後、上記(2)で増幅したGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を挿入し、ベクターpCI−hETAR・GroELを構築した。すなわち、ベクターpCI−hETAR・GroELは、hETARをコードする遺伝子とGroELサブユニットをコードする遺伝子との融合遺伝子を有している。一方、同様にして、哺乳動物発現ベクターpCI Mammalian Expression Vectorを制限酵素NheIとSalIで消化し、BAPにて末端を脱リン酸化処理した後、上記(1)で増幅した5’末端にNheIサイトを、3’末端に停止コドンおよびSalIサイトを付加したhETAR遺伝子を含むDNA断片を挿入し、ベクタ−pCI−hETARを構築した。すなわち、ベクターpCI−hETARはhETAR遺伝子のみを有している。
【0064】
(4)ヒトエンドセリンA受容体を発現するベクターの構築
大腸菌用の発現ベクターpMAL(New England Biolabs社)を制限酵素SalIとHindIIIで消化し、BAPにて末端を脱リン酸化処理した後、上記(1)で増幅した5’末端にSalIサイトを、3’末端にFLAGタグをコードする配列、停止コドンおよびHindIIIサイトを付加したhETAR遺伝子を含むDNA断片を挿入し、発現ベクターpMAL−hETARを構築した。発現ベクターpMAL−hETARによれば、マルトースバインディングプロテイン(MBP)とhETARの融合タンパク質(以下、「MBP−hETAR融合タンパク質」と称する。)を大腸菌で発現させることができる。
【0065】
(5)ヒトエンドセリンA受容体の調製
抗体検出用のヒトエンドセリンA受容体(抗原タンパク質)を以下の手順で調製した。上記(4)で構築した発現ベクターpMAL−hETARを大腸菌BL21(Novagen社)に導入し、形質転換体を得た。該形質転換体を2×Y.T.培地(16g/L バクトトリプトン、10g/L 酵母エキス、5g/L NaCl)中で25℃、110rpmで18時間培養した。培養終了後、菌体を遠心分離(30,000g、30分、4℃)にて回収した。回収した菌体をPBSで洗浄した後、PBSに懸濁し、超音波処理にて菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心分離(100,000g、1時間、4℃)して不溶性沈殿を回収した。この不溶性沈殿をそれぞれ4% Triton X−100に溶解した後、SDS−PAGEに供した。さらに、抗FLAG抗体(ANTI−FLAG M2 Monoclonal Antibody、シグマ社)を1次抗体としたウエスタンブロッティングを行った。ブロッティングにはPVDF膜(Immobilon−P、ミリポア社)を用い、2次抗体として、ビオチン標識ユニバーサル2次抗体キット(Universal Quick Kit、ベクターラボラトリーズ社)を用いた。検出には、コニカイムノステインHRP−100(生化学工業社)を用いた。対照として、hETARをコードする遺伝子を挿入していないプラスミドpMALについても同様の操作を行った。その結果、対照には現れないMBP−hETAR融合タンパク質(84kDa)の分子量に相当する位置にバンドが出現した。これにより、hETARの全長が取得できていることが確認された。
【0066】
(6)遺伝子免疫
生理食塩水にベクターpCI−hETAR・GroELを250μg/mLの濃度になるよう溶解し、免疫用組成物を調製した。この免疫用組成物を、8週齢のマウスBALB/c(雌)の両足大腿筋に各0.12mLずつ注射を行い、免疫した(0日目)。これにより、pCI−hETAR・GroELを両足に各30μgずつ、すなわち、1匹につき1回あたり60μg投与した。その後、7日目、21日目、及び28日目にも同様して繰り返し免疫した。そして、0、7、14、21、28、35、42日目に採血を行い、血清を調製した。対照として、hETARを単独で発現するベクターpCI−hETARを用いてマウスを免疫した。
【0067】
(7)ウエスタンブロッティングによる抗体の検出
上記(5)で得られたMBP−hETAR融合タンパク質を含有する菌体破砕液に対して、上記(6)で調製した血清を1次抗体として用いてウエスタンブロッティングを行った。ブロッティングにはPVDF膜(Immobilon−P、ミリポア社)を用い、2次抗体として、ビオチン標識ユニバーサル2次抗体キットを用い、検出には、コニカイムノステインHRP−100を用いた。その結果、pCI−hETAR・GroELで免疫して28日目以降に採血された血清においてのみ、MBP−hETAR融合タンパク質に相当するバンドが検出された。以上より、hETAR遺伝子とGroELサブユニット遺伝子との融合遺伝子によって、hETARに対する抗体産生を誘導することができた。
【実施例2】
【0068】
本実施例では、遺伝子免疫とタンパク免疫との比較を行なった。
【0069】
(1)シャペロニンサブユニット連結体遺伝子とヒト由来エンドセリンA受容体遺伝子との融合遺伝子による遺伝子免疫
生理食塩水にベクターpCI−hETAR・GroELを250μg/mLの濃度になるよう溶解し、免疫用組成物を調製した。この免疫用組成物を、8週齢のマウスBALB/c(雌)の両足大腿筋に各0.12mLずつ注射を行い、免疫した(0日目)。これにより、pCI−hETAR・GroELを両足に各30μgずつ、すなわち、1匹につき1回あたり60μg投与した。その後、7日目、21日目、28日目、及び35日目にも同様して繰り返し免疫した。そして、0、7、14、21、28、35、42日目に採血を行い、血清を調製した。
【0070】
(2)シャペロニンサブユニット連結体とヒト由来エンドセリンA受容体との融合タンパク質によるタンパク免疫(比較例)
配列番号11及び12に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、2本鎖DNAを調製した。この2本鎖DNAをpTrc99A(アマシャムバイオサイエンス社)のNcoI−HindIIIサイトに導入し、pTrc99AIIを構築した。pTrc99AIIには、2本鎖DNAに由来するSpeIサイト、XbaIサイト、及びFLAGタグをコードする遺伝子が導入された。一方、大腸菌K12株のゲノムDNAを鋳型とし、配列番号13及び14に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、GroELサブユニット遺伝子(配列番号10)を含むDNA断片を増幅した。用いたプライマーに由来して、この増幅DNA断片の5’末端にはSpeIサイトが、3’末端にはXbaIサイトが導入された。この増幅DNA断片をpTrc99AIIのSpeI−XbaIサイトに導入し、pTrcGroELを構築した。
【0071】
配列番号15及び16に示すオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、2本鎖DNAを調製した。この2本鎖DNAを、pTrcGroELのDraIII−BamHIサイトに導入し、pTrcSR1を構築した。これにより、pTrcGroEL上のGroELサブユニット遺伝子に変異が導入された。変異が導入されたGroELサブユニット遺伝子(SR1遺伝子)の塩基配列を配列番号24に示す。すなわち、pTrcSR1は、GroELサブユニットの452番目のアミノ酸残基がグルタミン酸に、461、463、及び464番目のアミノ酸残基がアラニンに置換された改変型GroELサブユニット(SR1)を発現することができる。
【0072】
pTrcSR1をSpeIとXbaIで処理し、SR1遺伝子を含むDNA断片を単離した。このDNA断片を、あらかじめXbaIとBAPで処理されたpTrcSR1に導入し、pTrcSR2を構築した。pTrcSR2は、2個のSR1遺伝子が一方向に連結された遺伝子(SR2遺伝子)を含む。同様にして、SR1遺伝子を含むDNA断片を、あらかじめXbaIとBAPで処理されたpTrcSR2に導入し、pTrcSR3を構築した。pTrcSR3は、3個のSR1遺伝子が一方向に連結された遺伝子(SR3遺伝子)を含む。同様の操作を繰り返し、pTrcSR7を構築した。pTrcSR7は7個のSR1遺伝子が一方向に連結された遺伝子(SR7遺伝子)を含む。換言すれば、pTrcSR7は改変型GroELサブユニット7回連結体(SR7)を発現することができる。
【0073】
実施例1の(3)で構築したpCI−hETARを鋳型とし、配列番号17及び18に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、hETAR遺伝子(配列番号3)を含むDNA断片を増幅した。なお、この増幅DNA断片には、プライマーに由来して、5’末端にNheIサイト、3’末端にXhoIサイトが導入された。この増幅DNA断片を、あらかじめNheI、XhoI、及びBAPで処理されたpTrcSR7に導入し、pTrcSR7−hETARを構築した。pTrcSR7−hETARはSR7とhETARとの融合タンパク質(以下、「SR7−hETAR融合タンパク質」と称する。)を発現することができる。さらに、SR7−hETAR融合タンパク質のC末端にはFLAGタグが付加されている。
【0074】
pTrcSR7−hETARを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。該形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地中で23℃、110rpmで24時間回転培養した。培養終了後、培養菌体を遠心分離にて回収した。回収した菌体を超音波処理にて破砕した。この菌体破砕液を遠心分離し、上清を回収した。この上清を抗FLAG抗体固定化ビーズ(シグマ社)を用いて免疫沈降反応に供した。得られた沈降画分をSDS−PAGE/CBBに供した。その結果、SR7−hETAR融合タンパク質の分子量に相当する470kDa付近の位置にバンドが検出された。さらに、抗FLAG抗体を用いてウエスタンブロッティングを行ったところ、このバンドが反応した。以上より、SR7−hETAR融合タンパク質が大腸菌の可溶性画分に発現されていた。
【0075】
得られた上清を、ANTI−FLAG Monoclonal Antibody Agarose Affinity Gel(シグマ−アルドリッチ社)によるアフィニティクロマトグラフィー、及びブチルセファロースFF(Butyl Sepharose FF、アマシャムバイオサイエンス社)による疎水クロマトグラフィーに供し、SR7−hETAR融合タンパク質を精製した。
【0076】
8週齢のマウス(BALB/c、雌)に、50μgの精製されたSR7−hETAR融合タンパク質を皮下注射し、マウスを免疫した(0日目)。その後、本実施例(1)の遺伝子免疫の場合と同様に、7、21、28及び35日目にも繰り返し免疫した。そして、0、7、14,21、28、35、42日目に採血を行い、血清を調製した。
【0077】
(3)ELISAによる評価結果
実施例1の(5)で得られたMAL―hETAR(84kDa)を含む大腸菌の菌体破砕液をAmylose Resin(New England Biolabs社)カラムに供し、MAL−hETARを樹脂に結合させた。樹脂を洗浄後、マルトースによってMAL−hETARを溶出し、回収した。回収したMAL−hETARを96穴プレートに吸着させた。この96穴プレートを用いてELISAを行ない、(1)の遺伝子免疫で得られた各血清、及び(2)のタンパク免疫で得られた各血清の抗hETAR力価を測定した。なお、2次抗体としてはペルオキシダーゼ標識抗マウスIgGを用い、発色基質としてはTMBを用いた。ELISAの結果を第1表に示す。第1表において、各数値は血清の希釈倍率で表したELISA力価である。力価が高いほど抗体が多く産生されていることを示し、これは体液性免疫が強く誘導されていることを示す。すなわち、免疫開始から21日目までの短期間では遺伝子免疫したマウスよりもタンパク免疫したマウスの方が高い力価を示した。しかし、その後は遺伝子免疫したマウスの力価が急激に上昇し、42日目にはタンパク免疫したマウスの力価よりも10倍高い力価を示した。以上より、遺伝子免疫によってタンパク免疫よりも強く体液性免疫を誘導することができた。
【表1】

【実施例3】
【0078】
本実施例では、実施例2の(1)で得られた血清中の抗hETAR抗体について、細胞表面の活性型hETARに対する結合性を評価した。
【0079】
(1)ヒトエンドセリンA受容体発現細胞及びエンドセリンB受容体発現細胞の作製
実施例1の(3)で構築したpCI−hETAR・GroELを鋳型とし、配列番号19及び20に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、hETAR遺伝子を含むDNA断片を得た。このDNA断片をpCIneo(Promega社)のNheI−XhoIサイトに導入し、pCIneo−hETARを構築した。一方、ヒト胎盤cDNAライブラリー(タカラバイオ社)を鋳型とし、配列番号21及び22に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、ヒトエンドセリンB受容体(hETBR)遺伝子(配列番号23)を含むDNA断片を得た。このDNA断片をpCIneoのNheI−XhoIサイトに導入し、pCIneo−hETBRを構築した。
【0080】
37.5μLのLipofectamin溶液と、625μLのOPTI−MEMI培地と、20μgのpCIneo−hETARを含む625μLのOPTI―MEMI培地とを混和した。この混和液を用いて、pCIneo−hETARを2×105個のCOS7細胞(大日本製薬社)に導入した。同様の手順で、pCIneo−hETBRをCOS7細胞に導入した。対照として、pCIneo1のみをCOS7細胞に導入した。遺伝子が導入された各COS7細胞を、Ham’sF12K+10%FBS培地(ICN社)にて30時間培養した。さらに、2×104個/100μLの初期細胞濃度にて、各COS7細胞を96穴マイクロタイタープレートを用いて一昼夜培養した。培養終了後、10-6〜10-12Mの濃度範囲内のET―1(ペプチド研究所)によって各細胞を刺激したところ、細胞内のCa濃度が一過的に上昇した。Ca濃度は、Caシグナル解析装置(FLIPR;MD社)及び細胞内Ca染色キット(Ca3kit;MD社)を用いて測定した。このことから、活性型hETARと活性型hETBRのいずれもが、COS7細胞膜上に正常に発現していることがわかった。
【0081】
(2)フローサイトメトリーによる活性型hETARに対する結合性評価
pCIneo−hETARが導入されたCOS7細胞(以下、「hETAR遺伝子導入細胞」と称する。)、pCIneo−hETBRが導入されたCOS7細胞(以下、「hETBR遺伝子導入細胞」と称する。)、及び、pCIneo1が導入されたCOS7細胞(対照の細胞)をPBSで洗浄した。実施例2で調製された免疫後35日目の血清を500倍希釈し、各細胞と一緒にインキュベートした。さらに、2次抗体としてフィコエリスリン標識抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社)を添加した後、フローサイトメーターEPICS XL(ベックマンコールター社)を用いて、各細胞と血清中の抗hETAR抗体との相互作用を解析した。結果を図1、図2、及び図3に示す。
【0082】
図1はhETAR遺伝子導入細胞と血清中の抗hETAR抗体と相互作用の解析結果を表し、図1(a)は遺伝子免疫前(0日目)の血清を用いた場合の二次元ドット表示図、図1(b)は遺伝子免疫後35日目の血清を用いた場合の二次元ドット表示図である。図2はhETBR遺伝子導入細胞と血清中の抗hETAR抗体と相互作用の解析結果を表し、図2(a)は遺伝子免疫前(0日目)の血清を用いた場合の二次元ドット表示図、図2(b)は遺伝子免疫後35日目の血清を用いた場合の二次元ドット表示図である。図3は対照の細胞と血清中の抗hETAR抗体と相互作用の解析結果を表し、図3(a)は遺伝子免疫前(0日目)の血清を用いた場合の二次元ドット表示図、図3(b)は遺伝子免疫後35日目の血清を用いた場合の二次元ドット表示図である。図1〜3において、縦軸はフィコエリスリン(PE)由来の蛍光強度、横軸はフルオレセインイソチオシアネート(FITC)由来の蛍光強度を表す。4つのエリア(B1〜B4)のうち、B1(左上)に属するドットが血清中の抗hETAR抗体と結合した細胞を表す。各エリアに記載されている値は各エリアに属するドットの割合(%)である。
【0083】
その結果、hETAR遺伝子導入細胞を用いた場合は、遺伝子免疫前の血清ではB1のエリアにはドットがほとんど検出されなかったが(図1(a))、遺伝子免疫後の血清ではB1のエリアに多くのドットが検出された(図1(b))。これは、免疫後の血清中の抗hETAR抗体がhETAR遺伝子導入細胞に結合することを示していた。一方、hETBR遺伝子導入細胞を用いた場合は、遺伝子免疫後の血清でもB1のエリアにはほとんどドットが検出されなかった(図2)。これは、免疫後の血清中の抗hETAR抗体がhETBR遺伝子導入細胞に結合しないことを示していた。なお、対照の細胞を用いた場合も、遺伝子免疫後の血清でもB1のエリアにはほとんどドットが検出されなかった(図3)。これは、免疫後の血清中の抗hETAR抗体が対照の細胞に結合しないことを示していた。以上のことから、遺伝子免疫によって、活性型hETARの細胞外ドメインを特異的に認識する抗体の産生を誘導することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を動物に投与することにより、該動物体内で該融合遺伝子を発現させ、抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導する動物の免疫方法。
【請求項2】
前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、大腸菌由来のものである請求項1に記載の動物の免疫方法。
【請求項3】
前記融合遺伝子は、発現ベクターに組み込まれており、かつ該発現ベクター上のプロモーターによって発現が調節されている請求項1又は2に記載の動物の免疫方法。
【請求項4】
前記プロモーターは、CMVプロモーター、AMLプロモーター、SV40プロモーター、SRαプロモーター又はEF−1αプロモーターである請求項3に記載の動物の免疫方法。
【請求項5】
前記発現ベクターは、CpGモチーフを含むものである請求項3又は4に記載の動物の免疫方法。
【請求項6】
前記動物は、哺乳類又は鳥類である請求項1乃至5のいずれかに記載の動物の免疫方法。
【請求項7】
前記哺乳類は、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ又はブタである請求項6に記載の動物の免疫方法。
【請求項8】
前記鳥類は、ニワトリ、アヒル又は七面鳥である請求項6に記載の動物の免疫方法。
【請求項9】
前記抗原タンパク質は、Gタンパク質共役型受容体、イオンチャネル型受容体、チロシンカイネース型受容体、CD抗原、細胞接着分子、癌抗原、サイトカイン、成長因子、増殖因子、栄養因子、ウィルス抗原、細菌抗原又は毒素抗原である請求項1乃至8のいずれかに記載の動物の免疫方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の動物の免疫方法に使用するための免疫用組成物であって、抗原タンパク質の全部又は一部をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子とが連結された融合遺伝子を主成分とする免疫用組成物。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の動物の免疫方法により動物を免疫して抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導し、該動物に抗原タンパク質に対する抗体を産生させ、該動物から該抗体を採取する抗体の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれかに記載の動物の免疫方法により動物を免疫して抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導した後に、該動物から免疫細胞を採取し、該免疫細胞とミエローマとを細胞融合することにより抗原タンパク質に対する抗体を産生するハイブリドーマを作製するハイブリドーマの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法で製造されたハイブリドーマを培養し、培養物から抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を採取するモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至9のいずれかに記載の動物の免疫方法により動物を免疫して抗原タンパク質に対する体液性免疫の応答を誘導した後に、該動物から抗体に対するmRNAを調製し、該mRNAを鋳型としてcDNAを調製し、該cDNAを用いたファージディスプレイ法により抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製するモノクローナル抗体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−32276(P2011−32276A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207530(P2010−207530)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【分割の表示】特願2006−540983(P2006−540983)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(501080594)
【Fターム(参考)】