説明

動物の免疫調節剤

【課題】 本発明は、動物が継続的に摂取可能であり、副作用の心配がなく、安全性の高い動物の免疫調節剤、及び、この免疫調節剤を使用する動物の免疫調節方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 オーレオバシディウム属の菌の菌体を含有する動物の免疫調節剤、とりわけ、当該微生物の菌体と珪藻土とを含有してなる動物の免疫調節剤を提供することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーレオバシディウム属に属する微生物の菌体を含有してなる免疫調節剤に関し、詳細には、分泌型イムノグロブリンA(以下、「IgA」と略記する。)の産生を増強すると共に、イムノグロブリンE(以下、「IgE」と略記する。)の産生を抑制することにより、動物の微生物による感染を予防乃至治癒し、アレルギーの発症を抑制して、動物の健康状態を維持、増進、或いは、改善するための免疫調節剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農業生産上重要な家畜である牛、豚、鶏等の利用度が益々高まり、そのため家畜を飼育するための飼料が重要な位置を占めている。現在、家畜用飼料は昔ながらの素材型飼料から各飼料メーカーが配合調製した濃厚飼料への移行が進んでおり、それらを給餌してその経済効果を高めている。また、家庭で飼育するペットの増加に伴いペットフードの需要も高まっている。
【0003】
しかしながら、濃厚飼料を与えることによる弊害も報告されている。一般にいわれている影響のひとつは体内の酸性化で、特に胃腸にかかる負担が大きく、阻害例としては家畜の成長性等の問題が挙げられる。また、微生物の感染に対して抗生物質を使用した場合には、その残留に伴う安全性の面、多用による耐性菌の出現等も問題視されるようになってきた。その結果、家畜に感染症などの様々な要因が複合し、下痢、軟便等の症状が多く見られ、特に幼畜の体重増加の鈍化が問題となっている。また、ペットについても、室内での飼育に伴う運動不足やストレスにより免疫能が低下し、微生物感染やアレルギーの発生が認められ、感染症に起因する下痢や軟便、体重の減少など、健康状態が悪化する例が多数発生している。このよう家畜の症状を改善したり、飼料効果を賦与するための家畜用飼料添加剤も提案されているものの(例えば、特許文献1乃至3参照)、より効果的に、上記問題を解決し、動物の健康を維持・増進することのできる免疫調節剤の開発が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−50999号公報
【特許文献2】特開平8−157377号公報
【特許文献3】特公平4−34371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、動物が継続的に経口摂取可能であり、副作用の心配がなく、安全性の高い免疫調節剤、及び、この免疫調節剤を使用する動物の免疫調節方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属する微生物(以下、「オーレオバシディウム菌」という。)の菌体を含有する組成物、とりわけ、当該微生物の菌体と珪藻土とを配合した組成物が、家畜やペットなどの飼育動物に経口摂取せしめることで、その腸管内でのIgAの産生を効果的に増強する免疫調節能を有することを見出した。さらに、この組成物が、経口摂取せしめることで、IgEの産生を効果的に抑制する免疫調節能も有することを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、オーレオバシディウム菌の菌体を含有する免疫調節剤、とりわけ、当該微生物の菌体と珪藻土とを含有してなる免疫調節剤を提供することにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の免疫調節剤は、牛、豚、鶏、羊、ネコ、イヌ等の動物の種類や生育段階の別なく、抗体産生能を有するあらゆる動物に使用することができる。さらに、該免疫調節剤は、種々の動物に摂取させることにより、当該動物の粘膜免疫を増強し、IgA抗体の産生を増強し、及び/又は、IgE抗体の産生を低減することができる。その結果、家畜やペットなどの飼育動物、とりわけ、その幼畜や幼獣における有害微生物の腸内感染や腸内の増殖、呼気系の器官を通しての感染や増殖、アレルギーの発生などを防止し、動物の健康状態の維持、増進、或いは、改善を図り、幼畜や幼獣の歩留まりや肥育効果を高める共に、これらの動物による、肉、乳、卵などの畜産製品の生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明でいう免疫調節とは、消化器系や呼気系の器官を通じて感染したり、それらの器官で増殖すると、宿主である家畜やペットをはじめとする動物の健康状態を悪化させる微生物の感染やその増殖を抑制する効果を有する分泌型IgAなどの抗体の産生を増強すること、及び/又は、このIgAの産生を促進する脾臓、パイエル板、腸間膜リンパ節などのリンパ球からのサイトカイン類、例えば、インターロイキン6(IL−6)やトランスフォーミングファクター−β(TGF−β)の産生を増強することをいう。また、即時型のアレルギーを誘発するIgEの産生抑制、及び/又は、このIgEの産生を増強する脾臓、パイエル板、腸間膜などのリンパ節などのリンパ球からのインターロイキン−4(IL−4)などのサイトカイン類の産生抑制をいう。
【0010】
本発明でいう動物とは、抗体産生能を有する動物をいう。具体的には、牛、豚、羊、山羊、ネコ、イヌなどのほ乳類、鶏、家鴨、鴨などの鳥類をいい、は虫類、両生類、魚類を含む脊椎動物をいう。
【0011】
本発明で使用するオーレオバシディウム菌の菌体は、所期の効果が得られるのであれば、オーレオバシディウム属に属する菌由来であれば、特別の制限はなく、例えば、特許第3232488号公報や特公平6−92441号公報などに開示されたオーレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans)IFO 4464、IFO 4875、IFO 6353、IFO 6401、IFO 6725、オーレオバシディウム マンソーニ(Aureobasidium mansoni)IFO 9233、オーレオバシディウム ファーメンタンス バル ファーメンタンス(Aureobasidium fermentans var fermentans)IFO 6410、オーレオバシディウム ファーメンタンス バル フスカ(Aureobasidium fermentans var fusca)IFO 6402などのような公知の菌を使用してもよいし、又は、それらの変異株でもよく、新たに土壌中などから分離した菌を使用してもよい。なかでも、免疫調節作用の強い、オーレオバシディウム プルランスの菌体が特に望ましい。
【0012】
本発明の免疫調節剤に使用するオーレオバシディウム菌の菌体を製造する方法としては、オーレオバシディウム菌を増殖させることのできる培養方法であれば、特に制限はなく、公知の方法により、上記オーレオバシディウム菌を、炭素源、窒素源、無機塩などの適当な栄養源を含有する固体培地、又は、液体培地に植菌して静置、又は、通気撹拌などの培養方法で培養・増殖せしめ、これを分離し採取すればよい(例えば、特許第3232488号公報参照)。菌体の分離採取の容易さからいえば、液体培地での培養が望ましい。また、プルランの製造に使用した後の、菌体を分離し採取することもきわめて有利に実施できる。この場合の培地の栄養源としては、本発明のオーレオバシディウム菌の菌体を得ることのできるものであればよく、炭素源としては、グリセロール、キシロース、グルコース、ソルビトール、フラクトース、マルトース、シュクロース、ラクトース、セロビオース、マルトトリオース、マルトテトラオース、デキストロース イクイバレント(DE)10乃至DE70の澱粉部分分解物、廃糖蜜などが適している。プルランを同時に産生させる場合には、これら糖類を約3質量%乃至20質量%含有せしめた液体培地を用いて好気的条件で培養するのが好適である。窒素源としては、硝酸塩、アンモニウム塩、尿素などの化合物やポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、脱脂大豆抽出物、ペプチド、アミノ酸などの天然有機物などが適宜利用できる。また、無機塩としては、リン酸塩、カリウム塩、硫酸塩、マグネシウム塩、必要に応じて鉄塩、マンガン塩、カルシウム塩などが適宜選択できる。培養時のpH、温度は、該微生物が生育しうる条件であればよく、通常、pH2.0乃至pH9.0、温度15℃乃至35℃が選ばれる。また、培養期間は、菌数が最大になる期間が選ばれ、通常、液体培地で通気撹拌する場合1日乃至10日間である。培養物から菌体を分離採取する方法としては、例えば、前記液体培養物を、濾過又は遠心分離などの方法で分離すればよい。この際、プルランを採取する場合には、菌体を分離した液又は上清から常法に従って採取すればよく、例えば、培養液に珪藻土を添加して、プレコートフィルターなどにより、菌体と培養上清を分離すれば、特に強い免疫調節効果を有するオーレオバシディウム菌の菌体と珪藻土とからなる免疫調節剤を容易に調製することができるので特に望ましい。
【0013】
また、本発明の免疫調節剤は、オーレオバシディウム菌の培養物をそのまま使用してもよく、菌体を分離して使用してもよい。また、菌体は生菌であってもよく、滅菌した死菌であってもよく、両者が混在していてもよいし、これらの菌体を、そのままで、或いは、エチルアルコール、アセトンなどの親水性有機溶媒の1種又は2種以上で処理し、当該溶媒に溶解する成分を除去したものであってもよい。また、さらにこれらを、通風乾燥、熱風乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥などの方法で乾燥したものであってもよい。培養物からの菌体の分離方法に特に制限はなく、その形態により、遠心分離法や濾過法などの適宜の方法により分離すればよい。
【0014】
本発明の免疫調節剤は、オーレオバシディウム菌の菌体単独であってもよいが、オーレオバシディウム菌の菌体を含む組成物であってもよい。とりわけ、乾燥質量で、オーレオバシディウム菌1質量部に対して珪藻土を0.01質量部乃至25質量部、望ましくは0.1質量部乃至25質量部、特に望ましくは、1質量部乃至10質量部を配合した組成物は、オーレオバシディウム菌のもつ免疫調節作用を増強することができるので、本発明の免疫増強剤として好適である。また、当該免疫調節剤は、水、栄養剤、ミルクなどに混合して使用してもよく、家畜、家禽、は虫類、両生類、魚類の飼料、餌料やペットフードなどに、飼料用添加剤として配合することも随意である。また、本発明の免疫調節剤は、エビ、カニなどの甲殻類やタコ、イカ、貝などの軟体動物などに摂取させると、当該動物のもつ貪食細胞などの原始的な免疫系を活性化する作用も有しているので、上記脊椎動物用の免疫調節剤と同様の用量、用法で、これらの無脊椎動物の免疫増強剤として使用することも随意である。
【0015】
本発明の免疫調節剤は、本発明の作用効果を妨げない範囲で、必要に応じて、さらに、他の成分を任意に含有させることができる。例えば、ブドウ糖、果糖、マルトース、イソマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖、水飴、ニゲロース、ニゲロオリゴ糖、ラクトスクロースなどの還元性糖類、α,α−トレハロース、α,α−トレハロースの糖質誘導体、α,β−トレハロース、ラクトネオトレハロース、ラフィノース、エルロース、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリン、国際公開WO 02/10361号明細書などに開示されたサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖(サイクロニゲロシルニゲロース:Cyclonigerosylnigelose)、特開平2005−95148号公報などに開示されたサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖(サイクロマルトシルマルトース:Cyclomaltosylmaltose)、国際特許願PCT/JP2005/17642号明細書に開示されたサイクロ{→6)−[α−D−グルコピラノシル−(1→4)]n−α−D−グルコピラノシル−(1→}(nは4又は5を意味する)の構造を有する環状五糖や環状六糖や、これらの環状オリゴ糖の糖質誘導体などの非還元性糖類、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミンなどのアミノ糖、マルチトール、マルトトリイトール、ラクチトールなどのオリゴ糖の糖アルコール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどの単糖類の糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア抽出物、スクラロース、アセスルファムKなどの高甘味度甘味料、プルラン、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸やその塩類、キチン、キトサンなどの天然ガム類、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースなどの合成高分子ポリマー、コラーゲン、ゼラチンなどの増粘剤の何れか1種又は2種以上を添加することができる。なかでも、環状四糖、環状五糖、環状六糖、α,α−トレハロース、ラクトスクロース、キチン、キトサンなどは、何れも、腸管における免疫調節能、及び、ビフィズス菌や乳酸菌などの酸(有機酸)生成菌の増殖促進活性を有し、本発明の免疫調節剤の免疫調節能を増強すると共に、腸内環境の改善にも役立つことから、特に望ましい。これらの免疫調節能を有する糖質を併用する場合の糖質の使用量は、オーレオバシディウム菌の菌体のもつ免疫調節能を増強できる量であれば、特に制限はなく、通常は、該菌体(乾燥質量)1質量部に対して、0.01質量部乃至100質量部添加すればよく、0.1質量部乃至10質量部の添加が望ましく、0.5質量部乃至10質量部の添加が特に望ましい。
【0016】
また、上記以外にも、例えば、小麦、燕麦、トウモロコシなどの種実類、サツマイモデンプンかす、おから、大豆油抽出かす、ビールかす、バガスなどのかす類、米ぬか、ふすまなどのぬか類などの植物性飼料素材やこれらの植物性素材を微生物発酵したもの、魚粉、全脂乳、脱脂乳などの動物性飼料素材、飼料用酵母などの飼料原料、さらには、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、アスコルビン酸、ビタミンE、ルチン・ヘスペリジン・ナリンジンなどのバイオフラボノイド類或いは、これらビタミンやフラボノイドの誘導体など、α−リポ酸、アミノ酸類、CoQ10(コエンザイムQ10)、アデノシン・イノシンやその誘導体、それらのモノフォスフェイト、ジフォスフェイト或いはトリフォスフェイトのような核酸関連物質、プロポリス、カテキンなどのポリフェノール成分、カルシウム、マグネシウム、海洋深層水などのミネラル類、食物繊維、抗菌剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、整腸剤、ホルモン剤、栄養剤、酵素剤、食物繊維、感光素、賦形剤、結合剤、被覆剤、滑沢剤、崩壊剤、増量剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、呈味剤、乳化・可溶化・分散剤、安定剤、pH調節剤、着色料、香料、甘味料、酸味料などから選ばれる何れか1種又は2種以上を、適量含有させることも随意である。
【0017】
本発明の免疫調節剤やそれを配合した組成物は、その形状を問わず、例えば、液状、ペースト、半固状、固状、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤などの何れの形状であってもよく、そのままで、又は、必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、球状、短棒状、板状、立方体、錠剤など各種形状に成型して使用することも随意である。
【0018】
本発明の免疫調節剤の1日当たりの摂取量は、所期の作用効果が得られるのであれば、特に制限はないものの、これに含まれるオーレオバシディウム菌の菌体の摂取量として、菌体の乾燥質量で、動物のkg・体重/日当たり0.05g乃至25g(湿菌体として、0.5g乃至250gに相当)とするのが望ましく、kg・体重/日当たり1g乃至10g(湿菌体として、10g乃至100gに相当)が特に望ましい。乾燥質量として、kg・体重/日当たり0.05gよりも少ない摂取量では、免疫調節効果が得られず、kg・体重/日当たり25gを超える量を摂取しても、摂取量に見合う程の免疫調節効果は望めない。また、その摂取時期は、本発明の所期の作用効果が得られるのであれば、制限はなく、通常は、対象とする動物に飼料を与える時期に使用され、とりわけ、授乳期や離乳直後の哺乳動物に与えると、腸内の有害微生物の増殖を抑制し、動物の食欲を増進して、その生育を促進し、卵や肉など生産性を向上すると共に、それらの品質の向上に著効を発揮するので、望ましい。また、本発明の免疫調節剤は、整腸作用も有していることから、下痢や軟便の改善や、糞便の臭気を低減することもできる。本発明の免疫調節剤は、毎日摂取させてもよく、一定(2日乃至7日に1回程度)の間隔をあけてもよい。また、一度に1日の必要量を摂取させても、複数回に分けて摂取させてもよい。さらに、IFN−αの経口剤のような、飼育用動物の免疫系に作用して免疫能を高める機能を有する薬剤や、整腸剤、抗生物質などと併用することも随意である。
【0019】
本発明の免疫調節剤の組成物への配合量については、免疫調節効果を発揮できる量であれば、対象となる組成物のテクスチャーなどに大きな変化を及ぼさない限り、特に制限はなく、通常は、組成物の総質量に対して、オーレオバシディウム菌の菌体を、菌体の乾燥質量に換算して、約0.05質量%乃至25質量%配合(以下、本明細書では特に断らない限り、質量%を「%」と表記する。)したものが適しており、望ましくは約0.1%乃至10%配合したものが好適であり、約0.5%乃至5%配合したものが特に望ましい。組成物の総質量に対して、添加量が0.05%より少ないと、免疫調節作用が発揮できない場合がある。なお、本発明でいう菌体の乾燥質量とは、真空乾燥した菌体の質量をいい、菌体の湿質量とは培養液から遠心により分離した菌体の質量をいう。
【0020】
本発明の免疫調節剤は、目的の組成物が完成するまでの工程で、或いは、完成品に対して、含有せしめればよく、その具体的な方法としては、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、浸透、晶出、散布、塗布、付着、噴霧、被覆、注入、浸漬、固化などの1種又は2種以上の公知の方法の組み合わせが適宜に選ばれる。
【0021】
本発明の免疫調節剤は、動物の粘膜部位における免疫すなわち、腸管などの消化管や呼吸器系器官での分泌型IgAの産生を調節することから、肝炎ウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、ニューカッスル病ウイルスをはじめとするウイルス、コレラ菌、赤痢菌、サルモネラ菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオなどの細菌、条虫、吸虫、ミクロフィラリアなどの寄生虫などの腸内や呼吸器への感染乃至増殖を、抑制乃至阻止し、これらの有害生物に起因する動物の疾患を予防乃至治癒することができる。また、本発明の免疫調節剤は、IgE産生調節能を併せ持っているので、食品や花粉などに由来するアレルゲンに起因する動物のアレルギー症状の改善にも著効を発揮する。従って、本発明の免疫調節剤を摂取させることにより、動物の健康の維持・改善を図り、幼畜の歩留まりや、肥育効果を向上させると共に、乳、卵などの生産性を向上させることができる。
【0022】
以下、実験に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
<実験1>
<オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の菌体を経口摂取した場合のIgA産生に及ぼす影響
<オーレオバシディウム菌の菌体を配合した飼料の調製>
日本国特許第3232488号公報に記載された方法に基づき、ジャーファーメンターに、酸糖化水飴(DE43)15質量部、ペプトン0.2質量部、リン酸水素2カリウム0.2質量部、塩化ナトリウム0.2質量部、硫酸マグネシウム・7水和物0.2質量部、硫酸鉄・7水和物0.001質量部に、適量の水を加えて撹拌・溶解し、全量を100質量部として、栄養培地を調製した。これを、常法通り、120℃、20分間加圧滅菌し、約27℃に冷却後、無菌的にオーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)を植菌して、塩酸又は水酸化ナトリウムの添加により、pHを調整しつつ、通気撹拌しながら120時間培養した。培養終了後、培養液を遠心分離し、オーレオバシディウム菌の菌体を回収した。これらの菌体を洗浄するために、再度、水に懸濁した後、遠心分離して菌体を回収し、試験標品1とした。この試験標品1を、常法により、120℃、20分間加圧滅菌して、オーレオバシディウム プルランスの死菌体からなる試験標品2を調製した。また、上記オーレオバシディウム プルランスの培養液に濾過助剤として珪藻土(白山工業株式会社販売、商品名「ゼムライトスーパーM」)を加えて、常法により、濾過して、菌体と珪藻土からなる標品を回収した。この標品を、再度水に懸濁後、濾過し、試験標品3(珪藻土中にオーレオバシディウム プルランスの生菌体を乾燥質量で20%含有)とした。この試験標品3を、常法により、120℃、20分間加圧滅菌して試験標品4を調製(オーレオバシディウム プルランスの死菌体を乾燥質量で20%含有)した。これら4種類の試験標品を、それぞれ、乾燥質量で、0.1%となるように、市販のマウス用固形飼料に添加して、4種類の飼料を調製した。なお、試験標品中の菌体の乾燥質量は、培養終了後の培養液の一部を採取して、遠心分離により菌体と培養上清を分離し、この菌体を真空乾燥して、質量を測定して、培養液の単位容積当たりに含まれる乾燥菌体質量に基づき、計算により求めた。
<対照を配合した飼料の調製>
上記試験標品とは別に、飼料効果があることが報告されているビフィドバクテリウム ビフィダムを、特許文献3に記載の試験例1の方法に基づいて培養し、培養液を、遠心分離して、その菌体と培養上清を分離・採取した。さらに、その菌体については、常法により、120℃で20分間加圧滅菌して、その死菌体標品を調製した(対照1)。このビフィダムの死菌体1質量部とあらかじめ水に懸濁して濾過した珪藻土4質量部とを均質に撹拌混合したものを調製した(対照2)。対照1又は2の何れかを、乾燥質量で、0.1%となるように、市販のマウス用固形飼料に添加して、2種類の飼料を調製した。さらに、ビフィドバクテリウム ビフィダムの培養上清(対照3)、及び、オーレオバシディウム菌の菌体の調製の項で調製したオーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の培養上清(対照4)を、それぞれ、水で透析した後、濃縮して、固形物換算で、0.5%となるようにマウス用固形飼料に添加して、2種類の飼料を調製した。また、特公平6−92441号公報の実施例2に記載の方法に基づき、オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)を培養して、その培養上清を採取し、これを濃縮、精製して、免疫賦活効果があるといわれているオーレオバシラン(β−D−グルカン)の粉末を調製し(対照5)、これをPBSで溶解し、後述のBALB/cマウスに対して、その0.2mlの摂取で、0.5mg/kg・体重/匹となるよう希釈したオーレオバシランのPBS溶液を調製した。
<試験方法>
オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の菌体を経口摂取した場合のIgA産生に及ぼす影響を調べる試験を以下のように行った。すなわち、6週齢雌性BALB/cマウスに、表1に示す、上記の4種類のオーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の菌体標品(試験標品1乃至4)の何れか、又は、2種類のビフィドバクテリウム ビフィダムの死菌体(対照1又は2)の何れかを添加した飼料の何れかを、各群10匹のマウスに与えて、2週間飼育した。さらに、上記ビフィドバクテリウム ビフィダムの培養上清(対照3)又はオーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の培養上清(対照4)の何れかを添加して調製した飼料の何れかを、各群10匹のマウスに与えて、2週間飼育した。オーレオバシラン(β−D−グルカン)(対照5)のPBS溶液の場合のみ、10匹のマウスに、毎日、ゾンデを使用して口腔内に直接投与して、2週間飼育した。また、市販のマウス用固形飼料のみ(対照6)を、10匹のマウスに与えて2週間飼育した。これらの試験標品若しくは対照の何れかを添加した飼料を、2週間、毎日摂取させた翌日に、マウスから、採糞、採血した。採取したマウスの糞中及び血液(血清)中のIgA量を、抗マウスIgA抗体を使用した酵素抗体法により測定して、試験標品又は各対照を添加した飼料を摂取させたマウスの糞中又は血中(血清中)のIgA量を、なにも添加していない市販のマウス用固形飼料のみ(対照6)を摂取させたマウスの糞中又は血中(血清中)のIgA量を100とする相対値(%)として、表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1から明らかなように、4種類のオーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の菌体標品(試験標品1乃至4)を添加した飼料を摂取させたマウスでは、市販のマウス用固形飼料(対照6)のみで飼育したマウスと比較して、糞中及び血中のIgA量が増加し、その増加率は、糞中のIgAの方が高かった。また、増加率の程度で比較すると、オーレオバシディウム プルランスの生菌体を添加した飼料と死菌体を添加した飼料の摂取(試験標品1又は2を添加した飼料を摂取させた群間、或いは、試験標品3又は4を添加した飼料を摂取させた群間)ではほとんど差が認められなかったものの、珪藻土を含む菌体を添加した飼料を摂取させた場合には、菌体のみを添加した飼料を摂取させた場合よりも(試験標品1又は3を添加した飼料を摂取させた群間、或いは、試験標品2又は4を添加した飼料を摂取させた群間)、IgAの産生量が増強(約1.5倍)された。これに対して、オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)由来のβ−D−グルカン(対照5)を摂取させた場合には、市販のマウス用固形飼料のみ(対照6)で飼育したマウスと比較して、糞中のIgA量のわずかな増加が認められたものの、ビフィドバクテリウム ビフィダムの死菌体(対照1)、当該死菌体と珪藻土との混合物(対照2)、当該菌体の培養上清(対照3)、又は、オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の培養上清(対照4)を添加した飼料を摂取させた場合には、何れの場合にも、市販の固形飼料のみ(対照6)を摂取させた場合と、IgAの産生量に差は認められなかった。
【0026】
この結果は、オーレオバシディウム プルランスの菌体は、経口摂取により、動物の腸管内及び血液中のIgA量を効果的に増強する免疫調節剤として利用できること、その増強効果は、珪藻土との併用により、増強することができることを物語っている。また、オーレオバシディウム菌の菌体は、当該菌体に由来するβ−D−グルカンの摂取よりも優れた免疫調節作用を有していることを物語っている。
【0027】
<実験2>
<オーレオバシディウム菌の菌体を経口摂取した場合のIgA産生量及びリンパ球からのIL−4産生に及ぼす影響>
実験1で、オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の菌体に免疫調節能のあることが判明したので、この菌株以外のオーレオバシディウム菌の菌体を経口摂取した場合のIgA産生及びリンパ球からのIL−4産生に及ぼす影響を調べる試験を以下のように行った。すなわち、実験1の方法に基づき、オーレオバシディウム プルランス(IFO 4875)、オーレオバシディウム プルランス(IFO 4464)、オーレオバシディウム マンソーニ(IFO 9233)、オーレオバシディウム ファーメンタンス バル ファーメンタンス(IFO 6410)及びオーレオバシディウム ファーメンタンス バル フスカ(IFO 640)を、それぞれ培養し、それぞれの菌株について、実験1で調製したものと同様に、試験標品1乃至4を調製した。なお、各菌株に珪藻土を加えて調製した試験標品3及び4は、何れも、乾燥質量で、菌体を20±2%含有するように調製した。これらの試験標品の何れか1種を、6週齢雌性BALB/cマウスに、オーレオバシディウム菌として、乾燥質量で、0.1%となるように添加した飼料を与え、2週間飼育した(従って、試験標品3及び4は、乾燥質量で0.5%となるように飼料に添加)。また、対照として、試験標品を添加していない飼料(対照1)、或いは、珪藻土を水に懸濁して濾過したものを0.5%添加した飼料(対照2)を与えて2週間飼育した。試験には、各群10匹のマウスを使用した。試験標品若しくは対照を、2週間毎日摂取させた翌日に、これらのマウスから、採糞、採血後、脾臓を採取し、常法により、1×10細胞/mlの単細胞の懸濁液を調製した。これらの懸濁液に、リポポリサッカライド(以下、「LPS」と略記する。)を5μg/mlとなるように、又は、抗マウスCD3抗体を3.5μg/mlとなるように添加して、37℃で48時間培養後、培養上清を回収して、IL−4の産生量を、IL−4に対する抗体を使用した酵素抗体法により測定した。また、これらのマウスの糞中及び血清中のIgA量を、マウスIgAに対する抗体を使用した酵素抗体法により測定した。さらに、採取した糞を、常法により、適宜の濃度に希釈し、BCP寒天プレートを用いて、35℃で2日間混釈培養し、プレート当たり30個乃至300個のハローが認められたプレートのコロニー数をカウントして、酸生成菌数を求めた。試験標品又は対照2摂取させたマウスのIgA量、IL−4産生量、酸生産菌数を、対照1で飼育したマウスの各々の項目の測定値を100とする相対値(%)として、表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
<IgA量及び酸生成菌数>
表2から明らかなように、5種類のオーレオバシディウム菌を摂取させた場合には、何れの場合も、マウスの糞中のIgA量、及び、糞中の酸生成菌数は、通常の餌のみで飼育したマウス(対照1)及び珪藻土のみを添加した餌を摂取させたマウス(対照2)よりも増強された。その増強率の程度は、何れの菌株においても、試験標品1及び試験標品2よりも、試験標品3及び試験標品4の方が強く、試験標品1と試験標品2と、或いは、試験標品3と試験標品4とはほぼ同程度であった。さらに、オーディオバシディウム プルランスの菌体と珪藻土との混合物を摂取させた場合には、弱いながら血液中のIgA量も増加した。また、試験に使用した5種類のオーレオバシディウム菌について、IgA産生増強率及び酸生成菌数の増強率の強さで比較すると、2種類のオーレオバシディウム プルランスの菌体を摂取した場合の方が、他の3種類のオーレオバシディウム菌の菌体を摂取させた場合よりも高かった。
<リンパ球からのIL−4産生>
LPS或いは抗CD3抗体刺激による脾細胞からのIL−4産生は、何れの試験標品を摂取させた場合にも、通常の餌のみで飼育したマウス(対照1)及び珪藻土のみ添加した餌を摂取させたマウス(対照2)の脾細胞を刺激した場合に比べて抑制された。その抑制の強さの程度は、試験標品1及び試験標品2よりも、試験標品3及び試験標品4の方が強く、試験標品1と試験標品2とはほぼ同程度であり、試験標品3と試験標品4とはほぼ同程度であった。また、試験に使用した5種類のオーレオバシディウム菌について、IL−4産生の増強率についてみると、2種類のオーレオバシディウム プルランスの菌体を摂取した場合の方が、他の3種類のオーレオバシディウム菌の菌体を摂取させた場合よりも、強い抑制が認められた。
【0030】
これらの結果は、マウスにオーレオバシディウム菌の菌体を摂取せしめることにより、糞中及び血液中へのIgAの分泌を増強すると共に、腸内の酸生成菌数を増加させて、腸内の免疫を増強すると共に、腸内環境を整えることができることを物語っている。また、マウスにオーレオバシディウム菌の菌体を摂取せしめることにより、IgE抗体の産生を増強する作用を有するIL−4の産生を抑制することから、アレルギーを抑制することができることを物語っている。さらに、これらのIgAやIgEの産生に関わる免疫調節作用は何れも、オーレオバシディウム菌の菌体を単独で摂取させた場合よりも、珪藻土に混合したものを摂取させた方が効果的であること、及び、生菌と死菌とはほぼ同等の効果を有していることを物語っている。また、これらの効果は、オーレオバシディウム菌のなかでもでもオーレオバシディウム プルランスで特に強いことを物語っている。
【0031】
<実験3>
<オーレオバシディウム プルランスの菌体を経口摂取した場合のIgE産生及びリンパ球からのIL−4産生に及ぼす影響>
実験2で、オーレオバシディウム菌の菌体を経口摂取した際に、IL−4の産生が抑制されたことから、IgE産生も抑制される可能性があったので、オーレオバシディウム菌の菌体を経口摂取した場合の抗原特異的なIgE産生及びリンパ球からのIL−4産生に及ぼす影響を調べる試験を以下のように行った。すなわち、8週齢雄性BALB/cマウスに、実験1で調製した、オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の菌体を使用した試験標品1乃至4を、各々リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁して、オーレオバシディウム プルランスの菌体を乾燥質量として5mg/0.2ml/匹/日となるように、ゾンデを用いて胃腔内に、毎日1回、4週間投与した。対照として、0.2mlのPBSを、ゾンデを用いて胃腔内に、毎日1回、4週間投与した。試験には、各群10匹のマウスを使用した。試験標品又は対照投与開始、7日目及び21日目に、感作抗原として20μgの卵白アルブミン(OVA)と2mgの水酸化アルミニウム(アラムアジュバント)を含有する水溶液を、各マウスの腹腔内に投与した。試験標品又は対照投与開始24日目に、尾静脈から採血を行い、28日目に、脾臓を摘出した。この脾臓から調製した、1×10細胞/mlの単細胞の懸濁液に、抗原として使用したOVAを、3.5μg/mlとなるように添加して、37℃で48時間培養後、培養上清を回収して、IL−4の産生量を、IL−4産生に対する抗体を使用した酵素抗体法により測定した。また、採血した血液の血清中の総IgE量、及び、抗OVA−IgE抗体量を、マウスIgEに対する抗体を使用した酵素抗体法により測定した。各群のマウスの測定値の平均を求め、各試験標品を摂取させたマウスのIL−4の産生量及びIgE量を、対照を摂取させたマウスのIL−4の産生量及びIgE量を100とした相対値(%)として、表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
表3から明らかなように、OVA刺激による脾細胞からのIL−4産生、血液中の総IgE、及び、抗OVA−IgE抗体は、何れの試験標品を摂取させた場合にも、通常の餌のみで飼育したマウスに比べて抑制された。その抑制率の強さの程度は、試験標品1及び試験標品2よりも試験標品3及び試験標品4の方が強く、試験標品1と試験標品2と、或いは、試験標品3と試験標品4とはほぼ同程度であった。これらの結果は、オーレオバシディウム プルランスの菌体を摂取することにより、アレルギーを効果的に抑制することができることを物語っている。また、このIgE産生を抑制する免疫調節作用は菌体をそのまま摂取するよりも、珪藻土と混合した形態で摂取する場合の方が強いこと、及び、生菌と死菌とはほぼ同等の効果を有していることを物語っている。
【0034】
<実験4>
<オーレオバシディウム プルランスの菌体を経口摂取した際の、菌体の摂取量の、免疫調節能に及ぼす影響>
実験1乃至3において、オーレオバシディウム菌の菌体が免疫調節能を有することが確認されたので、その摂取量の免疫調節能に及ぼす影響を調べる試験を以下のように行った。すなわち、8週齢雄性BALB/cマウスに、実験1で調製した、オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の菌体を使用した試験標品4(珪藻土中にオーレオバシディウム菌の死菌体を乾燥質量で20%含有)を、表4に示す摂取量(菌体の乾燥質量として)となるように、試験試料の摂取量に応じて0.2ml乃至0.4mlのPBSに懸濁して毎日強制的に摂取させた。摂取は、ゾンデを用いて胃腔内に、毎日1回、4週間投与した。なお、5000mg/kg・体重/匹の投与の場合のみ、試験標品4を0.8mlのPBSに懸濁し、0.4mlずつ、朝晩2回に分けて投与した。対照として、餌のみ(対照1)で飼育、若しくは、0.2mlのPBS(対照2)を、ゾンデを用いて胃腔内に、毎日1回、4週間投与した。試験には、各群10匹のマウスを使用した。試験標品或いは対照を4週間投与した翌日に、採糞、採血後、脾臓を採取し、1×10細胞/mlの単細胞の懸濁液を調製した。血液中のIgA量、IgE量、糞中の酸生成菌数、脾細胞をLPS刺激した際のIL−4産生量を測定し、対照2又は試験標品4を投与した時の各測定項目の値を、対照1を投与した群の各測定項目の測定値を100とした相対値として表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4から明らかなように、マウスにオーレオバシディウム プルランスの死菌体を、乾燥質量で、体重・kg/日当たり0.05mg乃至2500mg経口的に投与することにより、糞中のIgA量及び酸生成菌の菌数が、増加し、その増加は0.5mg乃至500mgの摂取で明確となり、5mg乃至500mgの投与でより顕著となった。また、オーレオバシディウム菌の菌体を、乾燥質量で、体重・kg/日当たり0.05mg乃至2500mg投与することにより、LPSの刺激による脾細胞からのIL−4産生の抑制が観察され、その増加は0.5mg乃至500mgの投与で明確になり、5mg乃至500mgの投与でより顕著となった。そして、IL−4産生の抑制と併行して、血中のIgE抗体量が、乾燥質量で、体重・kg/日当たり、0.5mg乃至2500mgの投与で減少し、その減少は5mg乃至500mgの投与で顕著となった。この結果は、オーレオバシディウム菌の菌体を、乾燥質量で、体重・kg/日当たり0.05mg乃至2500mg経口摂取させることにより優れた免疫調節機能と整腸機能を発揮できることを物語っている。また、これらの機能は、0.5mg乃至500mgの摂取で明確となり、5mg乃至500mgの摂取でより顕著となることを物語っている。なお、5000mgの摂取でもIgA量の増加は認められたものの、その増強率は、0.05mg乃至2500mgを摂取させた場合よりも遙かに低いため、5000mgの摂取では、その摂取量に見合うほどのIgA産生の増強効果は期待できないと判断した。
【0037】
<実験5>
<オーレオバシディウム プルランスの菌体を経口摂取した場合の菌体と珪藻土との配合割合の、IgA、IgE産生及びリンパ球からのIL−4産生に及ぼす影響>
実験1で調製したオーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の死菌体(試験標品2)1質量部を20質量部の水に懸濁し、これに、珪藻土を適量加えて撹拌し、濾過して、オーレオバシディウム プルランスの死菌体と珪藻土との混合割合が、表5に示す比率(乾燥質量比)となるように試験標品を調製した。これらの試験試料を、8週齢雄性BALB/cマウスに、菌体摂取量として、乾燥質量で、10mg/kg・体重/匹となるように、試験試料の摂取量に応じて0.2ml乃至0.4mlのPBSに懸濁して毎日強制的に摂取させた。摂取は、ゾンデを用いて胃腔内に、毎日1回、4週間投与した。対照として、試験標品の調製に使用した珪藻土を、PBSに乾燥質量で50mg/mlとなるように懸濁した溶液を、0.2ml/匹(珪藻土を、乾燥質量で、10mg/kg・体重/匹摂取)、ゾンデを用いて胃腔内に、毎日1回、4週間投与した。試験には、各群10匹のマウスを使用した。試験標品或いは対照を4週間投与した翌日に、実験4と同様に、採糞、採血後、脾臓を採取し、1×10細胞/mlの単細胞の懸濁液を調製した。血液中のIgA量、IgE量、糞中のIgA量、酸生成菌数、脾細胞をLPSで刺激した際のIL−4産生量を測定し、試験標品を投与した時の各測定項目の値を、対照を投与した群の各測定項目の測定値を100とした相対値として表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
表5から明らかなように、乾燥質量で、オーレオバシディウムの菌体と珪藻土との配合割合が、1:0.01乃至1:25の試験試料を、マウスに、体重・kg/日当たり、菌体摂取量として、乾燥質量で、10mg、毎日経口的に投与することにより、糞中のIgA量及び酸生成菌の菌数が増加し、その増加は、1:0.1乃至1:25の配合で明確になり、1:1乃至1:10の配合割合の場合に特に顕著となった。また、乾燥質量で、オーレオバシディウム菌の菌体と珪藻土との配合割合が、1:0.01乃至1:25の試験試料を、マウスに、体重・kg/日当たり、菌体投与量として、乾燥質量で、10mg、毎日経口的に投与することにより、血液中のIgE量及びLPS刺激による脾細胞からのIL−4産生が抑制され、その抑制は、1:0.1乃至1:25の配合割合のものの投与で明確になり、1:1乃至1:10の配合割合の場合に特に顕著となった。この結果は、免疫調節剤としては、乾燥質量で、オーレオバシディウム菌の菌体と珪藻土との配合割合が、1:0.01乃至1:25のものが望ましく、1:0.1乃至1:25の配合割合のものがより望ましく、1:1乃至1:10の配合割合のものが特に望ましいことを物語っている。
【0040】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は何らこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
日本国特許第3232488号公報に記載された方法に基づき、ジャーファーメンターに、酸糖化水飴(DE43)15質量部、ペプトン0.2質量部、リン酸水素2カリウム0.2質量部、塩化ナトリウム0.2質量部、硫酸マグネシウム・7水和物0.2質量部、硫酸鉄・7水和物0.001質量部を入れ、水に溶解して全量を100質量部として、撹拌溶解して栄養培地を調製した。これを、常法通り、120℃、20分間加圧滅菌し、約27℃に冷却後、無菌的にオーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)を植菌して、塩酸又は水酸化ナトリウムの添加により、pH3.6乃至pH3.8に維持しつつ、通気撹拌しながら96時間培養した。培養終了後、遠心により菌体と培養上清を分離した。この菌体を、洗浄するために、再度水に懸濁して、遠心分離により菌体を回収した。本品は、そのままで、常法により加圧滅菌して、及び/又は、常法により乾燥して、動物用の免疫調節剤として使用することができる。また、これらの免疫調節剤は、代用乳に添加して、或いは、飼料、餌料、ペットフードなどに配合して使用することができる。
【実施例2】
【0042】
実施例1で調製した、オーレオバシディウム プルランス(IFO 6353)の培養液に、活性炭と、濾過助剤として珪藻土(昭和化学工業株式会社販売、商品名「ラヂオライト」)を加えて、濾過することにより培養上清を除去し、乾燥質量で、珪藻土約79%、菌体約20%、活性炭約1%を含有する組成物を得た。この組成物を120℃で20分間加圧滅菌して、オーレオバシディウム プルランスの死菌体を含む組成物を得た。これらの組成物は、そのままで、又は、常法により乾燥して、動物用の免疫調節剤として使用することができる。また、これらの免疫調節剤は、代用乳に添加して、或いは、飼料、餌料、ペットフードなどに配合して使用することができる。
【0043】
この珪藻土、活性炭とオーレオバシディウム プルランスの死菌体とを含む組成物を通風乾燥して、又は、実施例1で調製したオーレオバシディウム プルランスの死菌体を通風乾燥して、各々、乾燥質量で菌体として、1%となるように配合飼料に添加した。これらの配合飼料の何れかを、それぞれ離乳直後の子ウシ20頭に30日間摂取させた。また、実験1で調製したオーレオバシディウム プルランスの培養上清を、濃縮後、水で透析して、再度濃縮した標品(培養上清を濃縮した標品)を、固形物換算で、0.5%となるように添加した配合飼料を、離乳直後の子ウシ20頭に30日間摂取させた。対照として、菌体やその培養上清を添加していない配合飼料のみを子ウシ20頭に30日間摂取させた。何れかの飼料を30日間摂取させた翌日に、子ウシの体重測定と、採糞を行い、その糞中のIgA量と酸生成菌数を、実験2と同様の方法で測定した。なお、ウシのIgAの測定には、ウシのIgAに対する抗体を使用した酵素抗体法を使用した。珪藻土、活性炭とオーレオバシディウム プルランスの死菌体とを含む組成物、その死菌体のみ、若しくは、その培養上清を濃縮した標品を添加した配合飼料の何れかを摂取させた子ウシの糞中のIgA量と酸生成菌数を、飼料のみを摂取させた子ウシの、各々の測定値を100とした相対値として、表6に示す。また、糞の臭を嗅いで、飼料のみを摂取させた子ウシの糞の臭と比較した結果を、表6に併せて示す。さらに、各飼料を摂取させた子ウシの健康状態を観察して、感染に起因すると考えられる発熱・下痢などの異常(臨床症状)の認められた個体数を表6に併せて示す。
【0044】
【表6】

【0045】
表6から明らかなように、オーレオバシディウム プルランスの死菌体を添加した配合飼料、及び、当該菌体、活性炭と珪藻土とを添加した配合飼料を摂取させた子ウシでは、配合飼料のみ、或いは、培養上清を濃縮した標品を添加した配合飼料を摂取させた場合と比較して、糞中のIgA量、酸生成菌数及び体重の何れについても、高い増強率を示した。また、糞の臭も、オーレオバシディウム プルランスの死菌体を添加した配合飼料、及び、当該菌体、活性炭と珪藻土とを添加した配合飼料を摂取させた子ウシでは、配合飼料のみ、或いは、培養上清を濃縮した標品を添加した配合飼料を摂取させた場合と比較して、弱いと判定された。また、試験に使用した各子ウシの健康状態についてみると、オーレオバシディウム プルランスの死菌体、活性炭と珪藻土の混合物を添加した配合飼料を摂取させた子ウシでは異常の発生は認められず、当該死菌体のみを添加した配合飼料を摂取した子ウシでは、20頭中1頭に異常が認められたのに対して、配合飼料のみ、或いは、培養上清を濃縮した標品を添加した配合飼料を摂取させた場合には、何れの場合も、20頭中4頭の子ウシで異常が認められた。これらの結果は、オーレオバシディウム プルランスの死菌体を摂取せしめることにより、糞中へのIgAの分泌が増強させると共に、腸内の酸生成菌数を増加させて、腸管免疫が増強すると共に、腸内環境が整うので、効果的に子ウシの健康を維持することができることを示している。また、これらの効果は、菌体のみを摂取させるよりも、菌体と珪藻土との混合物を摂取させる方がより効果的に発揮させることができることを示している。
【0046】
上記試験に使用した珪藻土、活性炭とオーレオバシディウム プルランスの死菌体との組成物を通風乾燥したものを、菌体として、乾燥質量で、1%となるように、市販の鶏用の配合飼料に添加して、雌の鶏20羽に1ヶ月間摂取させた。この期間の産卵数を、市販の配合飼料のみを摂取させた雌の鶏20羽と比較したところ、オーレオバシディウム プルランスの死菌体、活性炭と珪藻土とを配合した配合飼料を摂取させた群の方が、平均で約11%産卵数が増加した。この結果は、オーレオバシディウム プルランスの死菌体と珪藻土とを摂取せしめることにより、効果的に鶏の産卵数を増加させて、卵の生産効率をあげることができることを示している。
【実施例3】
【0047】
ジャーファーメンターに、酵素水飴10質量部、ペプトン0.2質量部、リン酸水素2カリウム0.2質量部、塩化ナトリウム0.2質量部、硫酸マグネシウム・7水和物0.2質量部、硫酸鉄・7水和物0.001質量部を入れ、水に溶解して全量を100質量部として、撹拌溶解して栄養培地を調製した。これを、常法通り、120℃、20分間加圧滅菌し、約30℃に冷却後、無菌的にオーレオバシディウム ファーメンタンス バル ファーメンタンス(IFO6410)を植菌して、塩酸又は水酸化ナトリウムの添加により、pH4に維持しつつ、通気撹拌しながら120時間培養した。培養終了後、遠心分離により菌体を回収した。菌体を、脱イオン水に再度懸濁、遠心して洗浄し、菌体を回収した。本品は、動物用の免疫調節剤として、そのまま、滅菌して、及び/又は、乾燥して動物に摂取させることもできる。また、これらの免疫調節剤は、ミルクや代用乳などに添加して、或いは、飼料、餌料、ペットフードなどに配合して使用することも有利に実施できる。
【0048】
本品を、滅菌して、通風乾燥後、乾燥質量で、死菌体1質量部に対して珪藻土9質量部、ラクトスクロース含有糖質(株式会社林原商事販売、商品名「乳果オリゴ700」、ラクトスクロース純度70%)1質量部、キトサン0.02質量部を加えて撹拌混合し、免疫調節剤を調製した。この免疫調節剤は、動物用の免疫調節剤として、そのままで、ミルクや代用乳などに添加して、或いは、飼料、餌料、ペットフードなどに配合して使用することができる。
【0049】
この通風乾燥したオーレオバシディウム ファーメンタンス バル ファーメンタンスの死菌体に珪藻土とラクトスクロースを加えた上記免疫調節剤を、市販のドッグフードに、菌体として、乾燥質量で2%配合して、スギの花粉症を発症しているイヌ10匹に、30日間摂取させたところ、10匹中6匹で、くしゃみ及び鼻水の症状が改善した。また、これらのイヌから血液を採取し、スギ花粉アレルゲンに対するIgE量を、イヌのIgEに対する抗体を使用した酵素抗体法を用いて測定し、摂取前と比較したころ、摂取後の方が、摂取前に比べて、平均で約21%減少していた。
【実施例4】
【0050】
実施例1及び実施例2の方法で調製した免疫調節剤を、各々、常法により凍結乾燥して、粉砕し、粉末状の免疫調節剤を調製した。これらは、飼育動物用の免疫調節剤として、そのままで使用することができる。また、これらの免疫調節剤は、ミルクや代用乳などに添加して、或いは、飼料、餌料、ペットフードなどに配合して使用することができる。
【実施例5】
【0051】
実施例3で調製したオーレオバシディウム ファーメンタンス バル ファーメンタンスの死菌体1質量部を、水8質量部に再度懸濁し、これに、α,α−トレハロース0.5質量部とサイクロニゲロシルニゲロース0.5質量部を加えて撹拌し、これを常法により噴霧乾燥して、免疫調節剤を調製した。本品は、飼育動物用の免疫調節剤として、そのままで、ミルクや代用乳等に添加して、或いは、飼料、餌料、ペットフードなどに配合して使用することができる。
【実施例6】
【0052】
トウモロコシ24質量部、ふすま3質量部、ショ糖1質量部、トレハロース1.5質量部、乳糖果糖オリゴ糖(株式会社林原商事販売、商品名「乳果オリゴ550」)1.5質量部、脱脂米ぬか6質量部、大麦12質量部、脱脂大豆15質量部、魚粉7質量部、ビール酵母粉末2質量部、ホエー粉末10質量部、小麦9質量部、炭酸カルシウム0.4質量部、リン酸2カルシウム0.9質量部、食塩0.5質量部、ミネラル類混合物0.1質量部、ビタミン類混合物1.1質量部に、実施例2の方法で調製したオーレオバシディウム プルランスの死菌体、珪藻土及び活性炭を含む免疫調節剤を、加熱乾燥して、その5質量部を添加して、混合し、配合飼料を調製した。本品は、飼育動物、とりわけ子豚用の配合飼料として使用することができる。
【0053】
本品を、生後30日の子豚15頭に30日間摂取させ、本品に代えて、オーレオバシディウム プルランスの菌体を含まない点を除いて、本品と同じ組成の配合飼料(対照)を30日間摂取させた15頭の子豚と比較したところ、本品を摂取させた子豚の方が、餌の摂取量が約5%増加し、それに伴い、対照を摂取させた場合と比較して、平均体重が約10%増加した。また、これらの子豚の新鮮な糞中のIgA量及び酸生成菌の菌数を比較したところ、本品を摂取させた子豚の方が、対照を摂取させた場合と比較して、IgA量は2.3倍、酸生産菌数で約4.7倍の増強が認められた。また、各子豚の健康状態を観察したところ、本品を摂取させた群では、健康状態に異常のある子豚は認められなかったのに対して、対照を摂取させた場合には、3頭の子豚で、発熱・下痢などの感染症に起因すると考えられる異常(臨床症状)が、対照を用いて飼育した期間中に、3日以上観察された。また、対照を摂取させた子豚の糞は、臭が強かったのに対して、本品を摂取させた場合は、糞の臭が抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の免疫調節剤は、動物の腸管内などの粘膜における分泌型IgAの産生及びその産生を増強するサイトカイン類の増強効果に優れている。また、本発明の免疫調節剤は、IgE及びIgEの産生を増強するサイトカイン類の産生抑制効果に優れている。本発明の免疫調節剤を、動物に経口摂取させることにより、効果的に腸管内などでの有害微生物の増殖や食物等によるアレルギーを抑制し、動物の健康状態の維持、増進或いは改善を図ることができる。また、本発明の免疫調節剤は、安全性に優れ、長期間連続的に摂取しても、副作用の発生がない。本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に多大の貢献をする、誠に意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーレオバシディウム属に属する微生物の菌体を含有してなる免疫調節剤。
【請求項2】
オーレオバシディウム属に属する微生物の菌体と珪藻土とを含有してなる請求項1記載の免疫調節剤。
【請求項3】
乾燥質量で、オーレオバシディウム属に属する微生物の菌体1質量部に対して珪藻土を0.01質量部乃至25質量部含有してなる請求項2記載の免疫調節剤。
【請求項4】
さらに、飼料、餌料、又は、ペットフードに添加可能な1種又は2種以上の成分を含有してなる請求項1乃至3の何れかに記載の免疫調節剤。
【請求項5】
飼料、餌料、又は、ペットフードに添加可能な成分が、増量剤、糖類、ミネラル類、ビタミン類、医薬品、生理活性物質から選ばれる何れか1種又は2種以上である請求項4記載の免疫調節剤。
【請求項6】
オーレオバシディウム属に属する微生物が、オーレオバシディウム プルランスである請求項1乃至5の何れかに記載の免疫調節剤。
【請求項7】
オーレオバシディウム属に属する微生物が死菌体である請求項1乃至6の何れかに記載の免疫調節剤。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の免疫調節剤を経口摂取せしめる動物の免疫調節方法。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載の免疫調節剤を含有してなる動物の飼料。
【請求項10】
イムノグロブリンA産生増強剤及び/又はイムノグロブリンE産生抑制剤としての請求項1乃7の何れかに記載の免疫調節剤の使用。

【公開番号】特開2008−50306(P2008−50306A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228505(P2006−228505)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】