説明

動物の成長成績を改善する方法

【課題】家畜類の飼育システムにおいて、広く動物の成長成績を改善し単位生産費を低減する。
【解決手段】内因性抗炎症剤を抗生物質とともに任意選択的に薬学的担体、アジュバント、または賦形剤と組み合わせた組成物として投与することにより相乗的に成長促進を計ろうとするものであって、増殖速度の増大および飼料変換効率の増大になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、広く動物の成長成績を改善する方法に関する。特に、本発明は、一つもしくは複数の抗炎症剤の成長促進量を、それを必要とする動物に投与する段階を含む、動物の成長成績を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの国の農業産業において、商業的な家畜類の飼育システムは、ありふれたものになった。商業的な畜産技術は、家禽、ブタ、およびウシの飼育に使用され、これらの動物に由来する食品の生産が非常に増大されることとなった。
【0003】
家畜類の商業的な飼育には、単位生産費を減らすために増殖速度および飼料変換効率を最大にすることが必要である。この要求により、いわゆる「飼料添加物」の開発および広範な使用に至った。
【0004】
飼料添加物は、2つの一般的な目的を有する。一方の目的は、健康かつ栄養的に問題にならない動物において、増殖速度の増大および/または飼料変換効率の増大の面で動物の能力を増強することであった。他方の目的は、外傷または集中的な飼育の現在の方法では必然的に生じてしまう「ストレス」の期間の間の動物の健康を維持し、これにより動物に疾患なく維持することである。
【0005】
1950年代初期において、研究者らは、意外にもニワトリの肉をすりつぶした中に含まれる抗生物質成分が「成長因子」であることを発見した。この知見によって、家畜と家禽産業は劇的に変化して、これは製薬企業にとって経済的な恵みとなった。飼育動物は現在では、非常に制御された条件で生産され、多様な成長促進添加剤を加えた特殊飼料を与えられている。
【0006】
ペニシリン、テトラサイクリン、およびスルファメタジンのような抗生物質の少量を動物に添加すると、ブタおよびウシの成長を促進することが発見されて以来、動物に日常的に抗生物質を投与することはほぼ世界中に広まった。1979年では、米国において飼育された肉牛および子牛肉牛の約70%、ブタの90%、およびブロイラーのほぼ100%が、その毎日の飼料の一部として抗生物質を消費した。この使用は、アメリカにおける抗生物質の売り上げのほぼ40%を占め、消費者は食費を年間350万ドル節約すると推定される。
【0007】
成長促進に関して最適にした近代的条件で飼育された動物は、通常ダイズまたは綿実食(オーストラリアでは肉および骨または血の多い食事が広く用いられる)の形の蛋白質を高い比率で含み、そしてトウモロコシまたはモロコシの一種(オーストラリアではコムギとオオムギ)であるマイロのような穀粒を高い比率で含む糧食を与えられる。用いられている飼料添加剤には、同様に体重増加速度を増加させるジエチル-スチルベステロールのようなホルモン、閉じこめられた状態によって引き起こされるストレスの作用によって疾患または体重減少が起きないようにするトランキライザー(ブタでは広く用いられていない)が含まれる。
【0008】
ウシは通常、体重増加1 kgを生じるために飼料5 kgが必要である。最適な成長促進条件と栄養に富む飼料とがあれば、ウシは飼料わずか3 kgで体重が1 kg増加する。
【0009】
ホルモンと抗生物質とは、食用動物の成長速度を大きく改善したが、そのような添加剤を利用することは問題があった。成長刺激剤として一般的に用いられているホルモンの一つ、ジエチル-スチルベステロールまたはDESは、発癌物質であることが示されており、ほとんどの国において今後の使用が禁止されている。
【0010】
抗生物質を動物飼料に混合すると、化合物は環境中に広がって微生物に抗生物質を曝露する。微生物が抗生物質に絶えず曝露されると、微生物に生物学的圧力が加えられ、抗生物質に対して耐性を示すようになる。これによって、抗生物質に耐性で、特に重度の難治性の感染症を引き起こす微生物が起こりうる。
【0011】
抗生物質耐性微生物は、制御が難しいために、おそらく重篤な病原体である。この微生物が動物またはヒトにおいて感染症を引き起こせば、感染症は従来の抗生物質では制御されない可能性がある。感染症が重度であれば、どの抗生物質が感染細菌に対して有効であるかを決定する時間がないかも知れない。この問題は、疾患の治療のために自身が抗生物質を服用している人々が食肉中の抗生物質耐性菌を消費した場合に、特に重篤となった。抗生物質は、呼吸器および消化管における正常な微生物の多くを阻害する。これによって耐性菌は、迅速に増殖してより重度の疾患を引き起こすことが可能となる。過去数年間に米国において報告されたサルモネラ食中毒による死者のほとんどは、食品からの抗生物質耐性菌と人々の無効な抗生物質治療とが組み合わさった結果であった。
【0012】
飼料ロット中の抗生物質耐性菌の出現が増加しつつあること、そして抗生物質耐性菌によって引き起こされた多くのいくつかの重篤な流行病の結果として、動物飼料における抗生物質の使用を禁止するように政府の圧力が高まっている。実際に、世界保健機構およびオーストラリア政府は、感染症を制御するために環境に優しい代替方法を用いる必要性を明記した。家畜飼料および水からの様々な抗生物質の即時禁止または除去は、(i)動物における感染症の発生率を増加させ、その結果、成長成績を低下させる、(ii)動物の健康、受精能力、および交配成績をさらに減少させる可能性がある。その結果、健康を増強することによって疾患を減少させると共に、食用動物の新しい、安全で有効な成長刺激剤が直ちにそしてますます必要となっている。
【0013】
抗生物質を用いないで、動物の成長を促進する様々な試みは、多くの入念で遠回しの手段を用いていた。これらには、ホルモンまたは複合体から生成される陽イオンを有する複合体の塩を皮下に埋め込むことが含まれた(例えば、米国特許第6,197,815号(特許文献1);米国特許第3,991,750号(特許文献2);米国特許第4,067,994号(特許文献3)を参照のこと)。これらの試みはいずれも、単純または有効であることが証明されなかった。したがって、抗生物質または手の込んだ方法を用いることに依存しない動物の成長成績を改善させる方法がなおも必要である。
【0014】
本出願人は、ここで驚くべきことに、抗炎症剤、特にインターロイキン(IL)-1raなどの特定のサイトカイン受容体アンタゴニストの投与が、動物の抗生物質の量を減少させると共に成長成績を増大することを見出した。また、本出願人は、同様の成長成績効果が、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-4受容体、およびIL-8受容体などの可溶性サイトカイン受容体、またはTNFブロッキング因子などのサイトカイン・ブロッキング因子(Bargetzkiら、 Cancer Research 53: 4010-13 (1993)(非特許文献1); Engelmannら、 Journal of Biological Chemistry 264: 11974-80 (1989)(非特許文献2))またはTNF-α阻害剤(Engelmannら、 Journal of Biological Chemistry 265: 1531-6 (1990)(非特許文献3); Seckingerら、 European Journal of Immunology 20: 1167-74 (1990)(非特許文献4))を投与することによっても達成することができるという証拠も有する。
【0015】
いかなる特定の理論または仮説に拘束されたくはないが、出願人は、抗炎症剤を投与した動物において認められた成長成績の増加は、四つの重要な作用の相互作用によって起こると考えている。これらは以下の通りである:
1)抗炎症作用自体;
2)免疫増強作用;
3)抗寄生虫および抗菌作用;ならびに
4)ストレスの減少。
【0016】
これらの作用はそれぞれ、単独または共に、動物の健康および幸福に強く影響を及ぼし、これが次に動物の成長成績およびそれによって食肉の品質に影響を及ぼす。例えば:
【0017】
1)抗炎症
慢性炎症はしばしば、家畜において認められ、持続的な感染症および環境刺激によって誘発される免疫活性化に関連する。炎症は、感染症に対する免疫応答の開始において重要な役割を果たすが、慢性的な免疫の活性化、特に持続的な感染症または微生物の負荷によるものは、成長および発達に有害な影響を及ぼすことがあり得て、ワクチン接種の有効性を低下させ得る。過度の免疫活性化の結果には、炎症性サイトカインの産生、発熱、食欲不振、筋肉からのアミノ酸吸収、および食肉産生からの栄養の再指向が含まれる。抗炎症剤は、たとえばIL-1、IL-6、TGF-β、IL-11、IL-18、IL-12、IL-17、LIF、IFN-γ、IL-8、TNF-α、およびGM-CSFなどの炎症性サイトカインの効果を減少させることによって、慢性免疫活性化の病態を減少させることができる。または、これらの炎症性サイトカインの可溶性サイトカイン受容体、すなわちIL-1受容体、IL-8受容体、TNF-α受容体、IL-6受容体その他を投与することによって、過剰量の循環する炎症性サイトカインを減少させることができる。IL-1ra、IL-6ra、またはTNF-αraなどのサイトカイン受容体アンタゴニストは、これらのそれぞれの膜に発現された受容体に対するこれらの前炎症性のサイトカインの結合を競合的に阻害し、これらのサイトカインの作用を改善するために使用することができる。
【0018】
2)免疫増強作用
a)TH1/TH2免疫応答
免疫応答は、離すことができないほど体の免疫系に関係している。免疫サイトカイン調節ネットワークと体内の他の調節系との間に相互作用が起こる。感染症または抗原に対する免疫応答は互いに急激に一方に片寄りうる。免疫応答は、T細胞応答のタイプによって一般化することができる。Tヘルパー1(TH1)型の反応は主に細胞性免疫に関与するが、TH2パターンの反応は、しばしば液性免疫に関連する。TH1およびTH2型のT細胞サブセットは、サイトカインパターンによって規定される多くの免疫応答の調節に関係している。TH2細胞は、サイトカインであるインターロイキン(IL)-4、IL-5、IL-10、およびIL-13を発現する。IL-3の発現は、TH1およびTH2のT細胞の両者に共通している。一方、TH1細胞は、IL-2、IFNγ、およびTNFβを発現する。これらのTH2サイトカインはB細胞の発達に影響を及ぼし、抗体の分泌のような液性反応を増強する。双方のタイプのTH細胞は、それらが分泌するサイトカインによって互いに影響を及ぼす。例えば、IL-10のようなTH2サイトカインは、TH1機能を抑制することができる。また、その他のサイトカインも、TH1応答をダウンレギュレートすることが既知のTNFβなどのTH1またはTH2の発生に影響を及ぼし得る。
【0019】
侵入する抗原がないときには、Th1細胞の作用は、体に有害であると考えられることが知られている。抗炎症剤は、Th1細胞のIFN-γの産生を抑制する。また、抗炎症剤は、Th1細胞の過剰産生を抑制し、したがってTh2(抗体分泌)細胞の産生を増強する(これらの細胞は、お互いに交差制御するためである)。これは、特定の抗炎症剤を投与することによって、前炎症性のサイトカインの量が抑制されることを意味する。または、IL-1、IL4、IL-8、GM-CSF、IL-6、またはTNF-α様のサイトカインの可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、またはサイトカイン阻害因子を投与することによって、TH1細胞によるサイトカインの過剰産生が減少されるであろう。
【0020】
b)抗体のアイソタイプスイッチ
抗体は、感染症を消失させるまたは感染症から保護するために必要である。成熟B細胞は、抗原刺激後に抗体クラススイッチのプロセスを経る。TH細胞は、物理的接触およびスイッチ因子と呼ばれるサイトカインによってアイソタイプスイッチを調節する。単独または組み合わせてアイソタイプスイッチに関係することが知られているサイトカインのいくつかは、IL-4、IL-5、TNFβ、IL-1、IL-2、IL-6、およびIL-13である。IL-4およびIL-5は、相乗作用してIgG1反応を増強する。例えば、最適なIgG1反応も同様にIL-2を必要とする。IL-1は、IL-5の存在下でIgA産生を増強し得る。TNFβはIgA産生を誘導する。
【0021】
c)免疫機能障害
ほとんどの産生形質に関する遺伝能は、出生時に予め決まっている。この能力が達成されるか否かは、多くの要因(ストレス、疾患、栄養、免疫等)によって左右される。抗原曝露のレベルおよびタイプは、免疫系の「片寄り」に影響を及ぼしてこれを確立する。ほとんどの免疫応答は、細菌およびウイルスに対して免疫を促進するタイプ、または多くの寄生虫に対する免疫を促進するタイプに偏っている。動物の遺伝子型はこの片寄りに影響を及ぼしうるが、新生児が抗原および感染症に始めて接すると、免疫反応性を一つまたは他のタイプに向かわせることができる。この片寄りは、その後の抗原曝露に応じて変化する。産生形質に関する選択に基づく交配プログラムは、費用が高く、免疫コンピテンスまたは反応性の障害を有するように思われた。この変化は、水および飼料に対する抗生物質添加剤の持続的な使用によってさらに悪化して、それによっておそらく、有効な免疫応答を発揮する遺伝的能力の変化が起こる。
【0022】
d)粘膜の免疫
家畜において感染症が最も起こりやすい領域は粘膜部位、主に消化管および肺である。このように、粘膜免疫系は、病原体および疾患に対する第一線の防御である。サイトカイン、特に、IL-5、IL-4、IL-6、およびIL-10は、粘膜における免疫応答の調節および有効性において有意な役割を有する。
【0023】
IL-5およびIL-6は、粘膜免疫系におけるリンパ球のB-1およびB-2亜集団に作用する。IL-5またはIL-6の産生、またはその受容体産生のいずれかに欠損があれば、粘膜における保護反応に関与する抗体アイソタイプであるIgAの産生が有意に障害される。同様に、IL-5、IL-6、およびケモカインMIP-1αは、粘膜ワクチンに対するIgA反応を増加させる能力を有する。IL-4は、主にTH2反応を増強することによって、粘膜組織において免疫調節役割を有し、このように抗体産生を増強する。IL-4は、TH2経路の関与によって、肺における粘膜免疫応答の発達にとって必須であると考えられている。IL-4およびIL-5はいずれも、肺において協調して作用し、IL-4は、未経験のT細胞をTH2表現型に拘束して、このTH2表現型はその後活性化されるとIL-5を分泌して、その結果好酸球が蓄積される。さらに、IL-4およびIL-10は粘膜寛容において役割を有し、このように、腸管におけるアレルギー型の反応を調節して低下させ、腸管における慢性的な炎症状態に対する動物の感受性を減少させるために役立つ。
【0024】
3)抗寄生虫および抗菌作用
a)抗寄生虫作用
病原体に対する後天性免疫応答は、一般的に二つのタイプの一つ、すなわち細胞性(TH1)または抗体性(TH2)に分けられ、これはサイトカインによって制御される。TH2反応に関係するサイトカインは、それらが外部寄生虫および消化管寄生虫から保護して、TH1サイトカインによって誘導される炎症を抑制することから、魅力的な治療標的である。TH2サイトカインは、好酸球増加症、IgE合成、および粘液産生を誘導し、これらは寄生虫および他の消化管寄生虫に対する保護を増強する。
【0025】
b)抗菌作用
微生物感染症は、栄養、ワクチン、化学物質および抗生物質の進歩にもかかわらず、経済的影響および健康に関して依然として世界中の問題である。微生物病原体に対する免疫応答は、二つの認識系を組み入れる。最も重要な防御は自然免疫であり、これに、必要であればその後の適応免疫(細胞性免疫および抗体反応)が続く。フェニルブタゾン、フルニキシンメグルミン、およびケトプロフェン、または経静脈DMSOを含む抗炎症剤で炎症を減少することによって、患部組織に対する血流が改善されて、これが先天性免疫を援助して感染の克服を助ける。このプロセスは、アセチルプロマジン、フェノキシベンザミン、イソクスプリン、ペントキシフィリン、アスピリン、およびヘパリンなどの血管拡張薬を使用することによって援助されるであろう。他のアプローチでは、IL-1、TNF-α、IL-6、およびIL-8などの既知の炎症性サイトカインの可溶性サイトカイン受容体が投与される。
【0026】
4)ストレスの減少
食用ブタ飼育環境における多くの病態は、飼料の摂取、成長速度および屠畜体の品質の低下に関与する。それによってストレス物質が多くの種における成績に影響を及ぼすメカニズムを評価するための広汎な研究努力にもかかわらず、畜産における積年の問題は解決されていない。ストレス、特に初期および持続的なストレスによって、免疫機能障害、視床下部-脳下垂体-副腎皮質(HPA)活性および脳における化学物質の不均衡が起こる。神経および免疫系は、統合されて、互いに依存する神経免疫ネットワークを形成する。抑うつ、物理的または情動的ストレスは、免疫機能を変化させる内分泌系を活性化させ、これが次に脳における生理的および化学的変化を誘発する。同様に、感染の形態の免疫学的ストレスは、サイトカインおよびその他の可溶性メディエータを介した神経内分泌系を活性化して、ストレス応答を誘導し、その結果生産力を障害する。サイトカインは、免疫、内分泌、および中枢神経系の間の相互作用を媒介する。これまで免疫抑制性であると考えられていたが、ストレスはTH1/TH2免疫応答のシフトを誘導して、それによって免疫抑制ではなくて免疫調節障害が起こるという証拠が増加しつつある。サイトカインが恒常性経路に影響を及ぼす可能性から、免疫系の活性を評価する必要がある。
【特許文献1】米国特許第6,197,815号
【特許文献2】米国特許第3,991,750号
【特許文献3】米国特許第4,067,994号
【非特許文献1】Bargetzkiら、 Cancer Research 53: 4010-13 (1993)
【非特許文献2】Engelmannら、 Journal of Biological Chemistry 264: 11974-80 (1989)
【非特許文献3】Engelmannら、 Journal of Biological Chemistry 265: 1531-6 (1990)
【非特許文献4】Seckingerら、 European Journal of Immunology 20: 1167-74 (1990)
【発明の開示】
【0027】
発明の概要
その最も広い意味において、本発明は、一つもしくは複数の抗炎症剤の成長促進量をそれを必要とする動物に投与する段階を含む、動物の成長成績を改善する方法を提供する。
【0028】
抗炎症剤は、好ましくは動物自身の抗炎症性の系を増大または補足する。
【0029】
また、本発明は、動物の成長成績を改善する方法であって、その必要がある動物に、内因性の抗炎症剤レベルを増加または補足する化合物または組成物を投与する段階を含み、成長成績は、該化合物または組成物を投与していない動物の成長成績と比較して増強される方法を提供する。
【0030】
好ましくは、化合物または組成物は、一つまたは複数の抗炎症剤の成長促進量を投与する前、同時に、または投与した後に投与される。
【0031】
より好ましくは、化合物または組成物は、前炎症性のサイトカイン受容体のアンタゴニストを含む。さらにより好ましくは、化合物または組成物は、TNF-α受容体、GM-CSF受容体、IL-6受容体、IL-1受容体、IL-4受容体、またはIL-8受容体のアンタゴニストを含む。最も好ましくは、化合物または組成物は、IL-10、1,8-ナフトスルタム(napthosultam)置換化合物、またはキノキサリン化合物を含む。
【0032】
または、化合物または組成物は、前炎症性サイトカインの量を減少させることによって抗炎症剤の内因性のレベルを増大する。したがって、化合物または組成物は、循環する、前炎症性サイトカインに対する可溶性サイトカイン受容体の量を増大することができる薬剤を含む。
【0033】
また、本発明は、動物の成長成績を改善する方法であって、その必要がある動物に、抗炎症剤を、抗生物質と共に、任意に薬学的担体、アジュバント、または賦形剤と組み合わせて含む組成物を投与する段階を含み、該組成物は、相乗的成長促進作用を達成する方法を提供する。
【0034】
好ましくは、抗炎症剤は、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片であって、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フルニクス(flunix)、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート(meclofenamate)、メフェナム酸、メロキシカム(meloxicam)、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、チアプロフェン酸(tiaprofenic)、およびトルメチンからなる群より選択される抗炎症効果または抗炎症剤を有する。好ましくは、可溶性サイトカイン受容体またはこれらの生物活性断片は、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-1受容体、IL-4受容体、およびIL-8受容体、または動物の成長成績を改善することができるこれらの組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、可溶性サイトカイン受容体またはこれらの生物活性断片は、IL-1受容体である。
【0035】
好ましくは、サイトカイン受容体アンタゴニストまたはこれらの生物活性断片は、IL-1ra、IL-6ra、IL-8ra、およびTNF-αraからなる群より選択される。より好ましくは、サイトカイン受容体アンタゴニストまたはこれらの生物活性断片は、IL-1raである。
【0036】
好ましくは、サイトカイン阻害因子またはこれらの生物活性断片は、TNFブロッキング因子およびTNFα阻害剤からなる群より選択される。
【0037】
一つの特定の態様において、本発明の抗炎症剤は、一つまたは複数の薬学的担体、アジュバント、または賦形剤と、一つまたは複数の抗炎症剤を組み合わせることによって、成長を増強する組成物に処方される。より好ましくは、成長を増強する組成物は、一つまたは複数の可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片を、一つまたは複数のその他の抗炎症剤または薬学的担体、アジュバント、もしくは賦形剤のいずれかと組み合わせることによって処方される。抗炎症剤(類)の成長促進効果に悪影響を与えない限り、任意の既知の薬学的担体、アジュバント、または賦形剤を使用してもよいことは周知である。
【0038】
したがって、第2の側面において、本発明は、一つまたは複数の薬学的担体、アジュバント、または賦形剤と共に、一つまたは複数の抗炎症剤を含む成長促進組成物を提供する。好ましくは、組成物は、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片であって、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フルニクス(flunix)、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート(meclofenamate)、メフェナム酸、メロキシカム(meloxicam)、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、チアプロフェン酸(tiaprofenic)、およびトルメチンからなる群より選択される抗炎症剤を含む。
【0039】
より好ましくは、組成物は、一つもしくは複数の可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片と、一つもしくは複数の異なる可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片、または一つもしくは複数の抗炎症剤とを含む。最も好ましくは、組成物は、一つの可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片、および一つの異なる抗炎症剤または薬学的担体、アジュバント、または賦形剤を含む。
【0040】
抗生物質を含む組成物は、動物における微生物負荷を制限するために役立ち、それによって動物における成長成績を改善するために抗炎症剤を補助する。特に好ましい抗生物質は、従来の動物生産環境において既に用いられているものである。しかし、特に、好ましい抗生物質は、アモキシシリン、アンピシリン、アプラマイシン、アボパルシン、バシトラシン、ベネタミン、ベンザチン、セフチオフル、セフロキシム、セファロニウム、クロルテトラサイクリン、クロキサシリン、ジメトリダゾール、エリスロマイシン、キタサマイシン、ラサロシッド、リンコマイシン、モネンシン、ナラシン、ネオマイシン、オレアンドマイシン、オキシテトラサイクリン、オラキンドクス、ペニシリン、ペニシリンG、プロカイン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、チルミコシン、トリメトプリム、タイロシン、サリノマイシン、スルホンアミド(およびジアベリジンを含む)、およびバージニアマイシン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。最も好ましくは、抗生物質は、アモキシシリン、リンコマイシン、またはスペクチノマイシンである。
【0041】
抗炎症剤の活性、投与様式、動物の年齢および体重に応じて、異なる用量の抗炎症剤を用いることができる。しかし、特定の状況では、これより高いまたはより低い用量が適当であるかも知れない。用量の投与は、個別の用量単位の形での1回投与、またはより少ない用量単位を数回、および一定の間隔での分割用量の多数回投与によって行うことができる。
【0042】
しかし、如何なる特定の動物に関する特定の用量レベルも、用いる特定の抗炎症剤の活性、年齢、体重、全身健康状態、性別、飼料、投与時間および投与経路、排泄速度、ならびに抗炎症剤または抗生物質の組み合わせを含む様々な要因に依存するであろうと理解される。しかし、一般的に好ましい投与経路は、経口、局所、および非経口投与からなる群より選択される。
【0043】
非経口投与には、皮下注射、エアロゾル、静脈内、筋肉内、髄腔内注射、注入技術または封入された細胞が含まれる。
【0044】
本発明の抗炎症剤または組成物は、動物の水および/または飼料の添加剤として投与してもよい。
【0045】
動物の成長成績は、成長速度の増加、飼料の利用効率の増加、最終体重の増加、可食部重量の増加または脂肪含有量の減少を含む如何なる既知の手段によって決定してもよい。さらに、改善された動物の成長成績は、免疫増強、抗寄生虫もしくは抗菌作用、抗炎症作用、またはストレスの減少によって起こる可能性があることは当業者によって認識されるであろう。より好ましくは、免疫増強は、TH1/TH2免疫応答、抗体アイソタイプスイッチ、造血、免疫機能の改善、粘膜の免疫、食欲、内分泌または神経内分泌プロセスのような恒常性プロセスに及ぼす有用な作用によって起こるであろう。
【0046】
本明細書に開示の方法および組成物は、成長成績を改善することが望ましい転帰である如何なる動物にとっても有用となる可能性があることは当業者によって認識される。しかし、本発明は、食用動物、すなわち食肉生産のために日常的に飼育されている動物にとって特に有用である。好ましくは、動物は、高等偶蹄目または鳥類である。偶蹄目には、ウシ、ブタ、ヒツジ、ラクダ、ヤギおよびウマが含まれる。鳥類には、ニワトリ、七面鳥、ガチョウ、およびカモが含まれる。より好ましくは、本発明は、ウシ、ブタ、ラクダ、ヤギ、ウマおよびニワトリからなる群より選択される。最も好ましくは、動物はウシ、ブタ、またはヒツジである。
【0047】
第三の局面において、抗炎症剤は、該核酸分子が動物において発現されると、抗炎症剤の成長促進量が産生されるように、該抗炎症剤をコードする核酸分子として動物に投与される。このように、本発明は、該核酸分子の発現が、一つまたは複数の抗炎症剤の有効な成長促進量を産生する、一つもしくは複数の抗炎症剤をコードする核酸分子をそれを必要とする動物に投与する段階を含む、動物の成長成績を改善する方法を提供する。
【0048】
核酸分子は、DNA、cDNA、RNA、またはそのハイブリッド分子であってもよい。核酸分子という用語は、完全長の分子またはその生物活性断片を含むことは明確に理解される。
【0049】
好ましくは、核酸分子は、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片をコードするDNA分子である。最も好ましくは、DNAは、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-1受容体、IL-4受容体、およびIL-8受容体からなる群より選択されるサイトカイン受容体、もしくはこれらの組み合わせ、またはIL-1ra、IL-6ra、およびTNF-αraからなる群より選択されるサイトカイン受容体アンタゴニストをコードする。
【0050】
核酸分子は動物ゲノムに組み入れてもよく、または染色体外要素として存在してもよい。
【0051】
核酸分子は如何なる既知の方法によって投与してもよい;しかし、好ましくは、皮下、静脈内、もしくは筋肉内に注射するか、またはエアロゾルとして投与する。
【0052】
投与される核酸の量は、投与の経路および部位、並びに核酸分子によってコードされる特定のサイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片に依存する。本明細書に記載されているように、サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子またはこれらの生物活性断片をコードする核酸分子の200μgの導入量は、動物の成長成績を改善するために十分である。したがって、好ましくは、サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片をコードする核酸分子の約200μg〜1,000μgの量が、好ましくは動物に導入される。
【0053】
また、核酸分子は、ブタのアデノウイルス・ベクターなどのベクターにおいて輸送されてもよい。また、裸のDNAとして輸送されてもよい。
【0054】
したがって、第4の側面において、本発明は、サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片の有効な量をインビボで輸送するための構築物であって:
a)サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片をコードするヌクレオチド配列;
b)サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片が産生され、次にこれが動物の成長成績を改善するように、調節配列がa)のヌクレオチド配列の発現を制御することができる、調節配列を含むベクター、
を含む構築物を提供する。
【0055】
構築物の改変型および変種は、化学的もしくは酵素的処理によってインビトロで作製してもよく、または組換えDNA技術によってインビボで作製してもよい。そのような構築物は、例えば、一つまたは複数のヌクレオチド置換、欠失、または挿入のために開示の構築物と異なってもよいが、本発明の構築物または核酸分子の生物活性を実質的に保持している。
【0056】
したがって、第5の側面において、本発明は、動物の成長成績を改善するために使用されるキットであって:
a)一つまたは複数の抗炎症剤;
b)該抗炎症剤のための輸送装置;および、
c)本発明の方法に使用される説明書、を含むキットを提供する。
【0057】
また、キットには、適切な緩衝剤およびイオン性塩が含まれてもよい。
【0058】
発明の詳細な説明
本発明の実践は、特に明記していなければ、当業者の範囲内である慣例的な分子生物学、細胞生物学、および組換えDNA技術を利用する。そのような技術は当業者に周知であり、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook and Russelの「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、(2001)(グリーン出版、ニューヨーク);「Cloning:A Practical Approach」、第I巻およびII巻(D.N. Glover編、1985)(グリーン出版、ニューヨーク);「Oligonucleotide Synthesis」、(M.J. Gait編、1984);「Nucleic Acid Hybridization」、(B.D. Hames and S.J. Higgins編、1985);「Antibodies:A Laboratory Manual」、(Harlow and Lane編、1988);「Transcription and Translation」、(B.D. Hames and S.J. Higgins編、1984);「Animal Cell Culture」、(R.I. Freshney編、1986);「Immobilised Cells and Enzymes」、(IRL出版、1986);B. Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、(1984)およびSambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、(1989);Ausubel, F.ら1989〜1999、「Current Protocols in Molecular Biology」、(グリーン出版、ニューヨーク)を参照されたい。
【0059】
本発明の方法および組成物を記述する前に、本発明は変化する可能性があるために、本発明は記述の特定の材料および方法に制限されないと理解される。同様に、本明細書において用いた用語は、特定の態様を説明する目的に限られ、添付の請求の範囲に限って制限される本発明の範囲を制限すると解釈されない。本明細書および添付の請求の範囲において用いられるものとして、単数形「ある」、「ある(an)」、および「その」は、内容が明らかにそうでないことを明記しているのでなければ複数形が含まれることに注意しなければならない。このように、例えば、「ある可溶性サイトカイン受容体」という用語には、そのようなサイトカイン受容体の複数が含まれ、「ある抗生物質」という用語は、当業者に既知の一つまたは複数の抗生物質およびその同等物を意味する等である。特に明記していない限り、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等のいかなる材料および方法も用いて本発明を実践または試験することができるが、好ましい材料および方法をここに記述する。
【0060】
本明細書において言及した全ての出版物は、出版物において報告され、本発明に関連して用いてもよいプロトコル、試薬、およびベクターを説明および開示する目的で引用される。本明細書のいかなる開示も、先行発明に基づいて、本開示がなされた日付を早める権利が本発明者にはないと自認したと解釈されるべきではない。
【0061】
本発明の方法および組成物は、動物の「成長成績」を改善するために有用であることが理解される。「成長成績」という用語は、成長速度および動物の飼料利用効率の基準に対する言及として、そして同様に動物の最終体重、ならびに動物の屠畜体の可食部重量および脂肪含有量に対する言及として、当技術分野で既知である。動物の「成長速度」は、動物の生存体重における単位増加速度であり、「飼料利用効率」は、動物の生存体重の単位あたりの増加にとって必要な飼料の量である。動物の「最終体重」は、特定の年齢での屠殺時の動物の体重であり、「可食部重量」は、そこから内臓、脚、豚足、または蹄を除去した屠畜体の重量である。「脂肪含有量」は、可食部屠畜体の脂肪含有量である。成長速度、飼料利用効率、最終体重、ならびに屠畜体の可食部重量および脂肪含有量の基準を測定する方法は、当業者に既知である。例えば、Manipulating Pig Production VI、VII&VIII、1997、1999および2001、P.D. Cranwell編、オーストラリアブタ科学協会、ウェリビー、ビクトリア州、オーストラリアを参照のこと。成長速度は、経時的な生存体重の連続的な測定から得られる。飼料利用効率は、経時的な飼料消失と生存体重との連続的な測定から得られる。屠畜体の脂肪含有量は伝統的に、P2位での背部脂肪の厚さのミリメートルで表した測定から想定する。したがって、本発明において、「成長成績」という用語は、成長速度、飼料利用効率、動物の屠畜体の最終または可食部重量および脂肪含有量、の一つまたは複数の基準における改善を意味する。
【0062】
本明細書において用いられるように、「動物」という用語は、成長成績の増加が望ましい如何なる動物も意味する。例えば動物には、哺乳類の偶蹄目、または鳥綱トリが含まれる。
【0063】
偶蹄目は、9個の系統を通して分布する約150の生存種を含む:ブタ(イノシシ科)、アメリカイノシシ(ペッカリー科)、カバ(カバ科)、ラクダ(ラクダ科)、マメジカ(マメジカ科)、キリンおよびオカピ(キリン科)、シカ(シカ科)、エダツノカモシカ(プロングホーン科)、およびウシ、ヒツジ、ヤギ、およびカモシカ(ウシ科)。これらの動物の多くは様々な国において食用動物として用いられている。より重要なことは、本発明に関して、ヤギ、ヒツジ、ウシ、およびブタのような経済的に重要な動物の多くは、非常に類似の生物学を有し、高い程度のゲノム相同性を共有する。最も重要なことは、ヤギ、ヒツジ、ウマ、およびロバのような特定の動物は品種間交配させることができることは周知である。
【0064】
本明細書において用いられるように「トリ」および「鳥類」という用語は、卵または食肉を出荷することを目的として飼育されるニワトリ、七面鳥、カモ、ガチョウ、ウズラ、およびキジを含むがこれらに限定されない全ての鳥類種が含まれると解釈される。この用語にはまた、如何なるトリ種の雄および雌の双方が含まれる。したがって、「トリ」および「鳥類」という用語は特に、ニワトリの雌鶏、雄鶏、および雄ガモ、七面鳥、カモ、ガチョウ、ウズラ、およびキジを含むと解釈される。ニワトリおよび七面鳥が好ましい。
【0065】
全ての偶蹄目は、これらがたとえばインターロイキン、GM-CSFインターフェロンのα、β、およびγ、並びにこれらに応答する受容体を有するという点で、サイトカイン系を含む炎症性の系に類似する。大部分の種において、これらのサイトカインをコードする遺伝子は、特定の染色体上の特定の領域に位置する。たとえば、ヒトにおいて、インターロイキン5遺伝子は、GM-CSF、M-CSF、IL-3、およびIL-4をコードする遺伝子と同じ領域の中の染色体5q23-31に位置する。さらに重要なことに、サイトカインおよびそれらの受容体の多くは、異なる種の間での高い程度のアミノ酸配列相同性を有する。例えば、ブタインターロイキン5は、ウシ、ヒツジ、およびウマのような動物とそのアミノ酸の90%も共有することは周知である(例えば、Sylvinら、(2000)、Immunogenetics、51:59〜64を参照のこと)。実際に、マウスとヒトのような異なる種でも70%ものアミノ酸配列同一性を共有する(例えば、Dictionary of Cytokines(1995)、Horst Ibelgaufts、VCH出版、バインハイムを参照のこと)。さらに、ヒトIL-10は、ウシ、マウス、およびヒツジIL-10と有意な程度の配列相同性を有することが知られている(Dutiaら、(1994)Gene;149:393〜4)。
【0066】
同様に、多くのサイトカインが種間交叉反応性を有することは当技術分野において周知である。例えば、IL-4は、何らかの種間交叉反応性を有するが、IL-5は高レベルの交叉反応性を有する(Dictionary of Cytokines(1995)、Horst Ibelgaufts、VCH出版、バインハイム)。しかし、先行技術の文献に記載される交叉反応性は、インビトロアッセイおよびいくつかのインビボ実験に関連するが、成長成績に関連していないことに注目しなければならない。
【0067】
サイトカインはまた、刺激または非刺激性のいずれかでサイトカイン受容体の発現を調節し、それによって他のサイトカインによってサイトカインの生物活性を制御することが知られている。いくつかのサイトカインは、調節作用を有する可能性がある共通の受容体サブユニットを共有する。例えば、GM-CSF受容体は、IL-2β、IL-3、IL-6、IL-7、Epo、およびプロラクチン受容体を含む造血増殖因子の他の受容体と有意な相同性を示す(例えば、Cytokines Online Pathfinder Encyclopaedia−www.copewithcytokines.deを参照のこと)。IL-3がマウスマクロファージ上でのGM-CSF受容体の発現をアップレギュレートすることができること、IL-3が同様にヒトおよびマウス骨髄細胞上のIL-1受容体発現をアップレギュレートすること、IL-4がIL-1 1型受容体発現をアップレギュレートして、IL-2受容体発現をダウンレギュレートすることも同様に知られている。さらに、IL-7は、IL-4受容体発現をアップレギュレートして、TNFαはIL-3とGM-CSF受容体発現の双方をアップレギュレートする(Dictionary of Cytokines(1995)、Horst Ibelgaufts、VCH出版、バインハイム)。
【0068】
偶蹄類と類似のように、鳥類も同様に、インターロイキンを含む共通のサイトカイン系を有する。したがって、本明細書において用いられる「トリサイトカイン受容体」、または「鳥類サイトカイン受容体」という用語は、如何なる鳥類によっても産生されるサイトカインに対応する如何なるサイトカイン受容体も意味する。
【0069】
食用動物の多くにとって共通の祖先および生物学レベル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、およびブタのような多くの種に及ぶサイトカインおよびその他の炎症性プロセスの高度のアミノ酸相同性、並びにこれらのサイトカインの種間反応性レベルを考慮すると、当業者は本明細書に開示の組成物および方法が全ての食用動物および全てのサイトカインに応用できることを認識するであろう。
【0070】
本明細書に開示の組成物および方法は、本発明の他の局面を含むように直接補外してもよいことは当業者によってさらに認識されるであろう。例えば、データは特定のサイトカイン受容体アンタゴニストに関して示される;しかし、これらは本発明を制限すると解釈してはならない。実際に、開示のサイトカイン受容体アンタゴニストは、本発明の幅を示すために特に選択された。例えば、多くのサイトカインは、受容体または受容体サブユニットを共有する。例えば、IL-3、IL-5、およびGM-CSFは、受容体サブユニットを共有する(Dictionary of Cytokines(1995)、Horst Ibelgaufts、VCH出版、バインハイム)。IL-4は、IL-2およびIL-7と共通のサブユニットを共有する(Dictionary of Cytokines(1995)、Horst Ibelgaufts、VCH出版、バインハイム)。いくつかのサイトカインは類似の遺伝子構造を有し、例えばIL-3、IL-4、GM-CSF、およびIL-13は、ヒトおよびマウスでは一つの染色体上に集合する(Dictionary of Cytokines(1995)、Horst Ibelgaufts、VCH出版、バインハイム)。
【0071】
前述の全てが、包含される動物のタイプに関して現在開示された本発明の幅の例示である。しかし、「サイトカイン受容体」または「サイトカイン受容体アンタゴニスト」という用語はまた、広く解釈され、開示の実験データに限定されないことは容易に認められるであろう。たとえば、可溶性形態において、「サイトカイン受容体」という用語には、一つまたは複数のIL-1受容体、IL-6受容体、TGF-β受容体、IL-11受容体、IL-18受容体、IL-12受容体、IL-17受容体、LIF受容体、IFN-γ受容体、IL-8受容体、TNF-α受容体、およびGM-CSF受容体を含む。「受容体アンタゴニスト」という用語は、IL-1ra、IL-4ra、IL-8ra、GM-CSFra、IL-6ra、またはTNF-αraを含む。
【0072】
一つの特に好ましい態様において、本発明の方法の最初の段階は、動物に一つまたは複数の抗炎症剤の成長を促進する量の投与を含む。
【0073】
「抗炎症剤」という用語は、本明細書に使用されるものとして、炎症を減少することができる任意の化合物または組成物をいう。たとえば、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、または抗炎症効果を有するこれらの生物活性断片を使用してもよい。または、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フルニクス(flunix)、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート(meclofenamate)、メフェナム酸、メロキシカム(meloxicam)、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、チアプロフェン酸(tiaprofenic)、またはトルメチンなどの抗炎症剤を使用してもよい。副腎皮質ステロイド薬は、免疫応答の有害な効果を抑制するために広く使用される強力な抗炎症剤としても知られている。したがって、一つの態様において、副腎皮質ステロイド薬を使用してもよい。
【0074】
さらなる態様において、「抗炎症剤」という用語は、前炎症性サイトカインの可溶性受容体の数を増大する任意の化合物または組成物を含む。
【0075】
上記のように、成長成績は測定可能であるが;しかし、成長成績の増加が起こる理由はやや複雑である。いかなる特定の理論または仮説に拘束されたくはないが、出願人は、抗炎症剤の投与は、それによって成長成績の改善が起こる多くの補足的な方法において作用すると考えている。例えば、出願人は、食用動物の免疫を改善することによって、家畜の損失を回避して、その結果成長成績が改善することを発見した。このように、本発明は、感染症に対する動物の感受性を減少させる方法を提供する。本方法は、細菌、ウイルス、または寄生虫による感染症に対する感受性を減少させるために有用である。
【0076】
本出願人はまた、一つまたは複数の抗炎症剤を一つまたは複数の抗生物質と共に投与しても同様に、用いる抗生物質の全量を減少させながら動物の成長成績が改善することを発見した。抗生物質は、投与された抗炎症剤が成長成績に対して作用を発揮することができる閾値レベルにまで、動物における微生物負荷を制限すると考えられている。
【0077】
したがって、本出願人は、成長促進剤自体として機能するよりむしろこれが可能であれば、抗炎症剤の投与が、抗炎症剤によって活性化されうる免疫応答の液性および細胞性のアームを活性化することによって、成長成績の改善を引き起こす可能性があると理解されるであろうと考えている。
【0078】
本明細書において用いられるように、「成長促進量」という用語は、上記のように成長成績の増加を生じるために有効な本発明の抗炎症剤の量を意味する。例えば、成長速度の増加、飼料利用効率、最終体重の増加、屠畜体可食部重量の増加、または脂肪含有量の減少。
【0079】
本明細書において用いられるように、「投与」という用語は、本発明の組成物の輸送様式を意味する。この用語はまた、組成物の用量も意味する。抗炎症剤の活性ならびに動物の年齢および体重に応じて、投与様式および抗炎症剤の用量は変化するであろう。如何なる特定の動物に関する特異的用量レベルも、用いる特定の抗炎症剤の活性、年齢、体重、全身健康、性別、飼料、投与時期、投与経路、排泄速度および抗炎症剤または抗生物質の組み合わせを含む多様な要因に依存すると理解される。しかし、一般的に好ましい投与経路は、経口、局所および非経口投与からなる群より選択される。
【0080】
非経口投与には、皮下注射、エアロゾル、静脈内、筋肉内、髄腔内、注射または注入技術、および封入された細胞が含まれる。
【0081】
本明細書において用いられるように、「アップレギュレート」または「アップレギュレートする」という用語は、蛋白質またはペプチドの産生、分泌、または利用能の増加(そしてこのように濃度の増加)を誘導することを意味する。動物または鳥類において内因性の抗炎症剤をアップレギュレートする方法は、無処理の動物または鳥類と比較して動物または鳥類における抗炎症剤の産生、分泌、または利用能の増加を誘導する方法を意味する。
【0082】
「内因性」という用語は、調べる被験体、細胞、またはシステムを起源とすることを意味する。したがって、抗炎症剤の内因性レベルを補足することは、動物における抗炎症剤の全量が通常存在する量より高くなるように、化合物または複数の化合物を動物に投与することを意味する。抗炎症剤の内因性レベルを増加させることは、動物の細胞または組織による抗炎症剤の産生を増加させ、それによって動物における抗炎症剤の全量を有効に増加させるように、化合物または複数の化合物を動物に投与することを意味する。抗炎症剤の内因性レベルはまた、抗炎症剤の代謝回転速度を減少させることによって有効に増加させてもよい。例えば、本発明の化合物または複数の化合物は、動物に投与した場合、蛋白質分解酵素の作用を阻害することによって内因性の抗炎症剤の蛋白質分解速度を減少させる可能性がある。
【0083】
多くの物質は、サイトカイン受容体、IL-4およびIL-16、または、サイトカイン受容体アンタゴニストなどの内因性の抗炎症剤のアップレギュレーションを刺激することが可能である。たとえば、国際出願国際公開公報第93/18783号に示すように、IL-10は、IL-1受容体アンタゴニストの発現をアップレギュレートする。さらに、1,8-ナフトスルタム置換された化合物またはキノキサリン化合物のような化合物は、IL-8などのサイトカイン受容体アンタゴニストをアップレギュレートすることが既知である。たとえば、本明細書に参照として組み入れられる国際出願国際公開公報第99/36070号および国際公開公報第99/42461号を参照されたい。
【0084】
IL-1などの前炎症性サイトカインの効果を減少または改善するその他のプロセスは、循環からこれらを除去することによる。たとえば、リガンドに結合できる因子があることが周知であり、これによりこれらがこれらの受容体に結合することを防止する。たとえば、前記論議したTNFブロッキング因子およびTNF-α阻害剤は、TNFに結合することが既知である。
【0085】
「生物活性断片」という用語は、それが由来する全または完全な抗炎症剤と実質的に類似である、動物において生物学的または生理学的作用を有する抗炎症剤の一部をいう。例えば、IL-1受容体アンタゴニストの生物活性断片は、他の生物活性部位もしくはその部分のIL-1受容体アンタゴニスト活性を保持する部位のいずれかを含む約5アミノ酸残基以上を有する、IL-1受容体アンタゴニストのいかなる部分であってもよい。例えば、IL-1受容体アンタゴニストの一部が上記のようにIL-1受容体に結合する能力を保持する場合、この部分は、IL-1受容体アンタゴニストの「生物活性断片」である。典型的には、IL-1受容体アンタゴニストのこのような断片は、IL-1受容体に対するIL-1の結合を競合的に阻害することができるものである。
【0086】
IL-1ra機能の一部もしくは全部を提供するために十分なIL-1raの断片、またはIL-1ra機能の一部もしくは全部を提供するために十分な任意のその他の分子は、本方法においてむしろIL-1raよりも投与されるであろうことがわかる。たとえば、このような断片または分子は、IL-6およびIL-8の産生のブロッキングを含むIL-1raの機能の一部もしくは全部を提供することができる。典型的には、このような断片または分子は、IL-1受容体に対するIL-1raおよび/またはIL-1の結合を競合的に阻害することができるものである。したがって、1つの態様において、本発明は、一部もしくは全部のIL-1ra機能を提供するために、IL-1ra機能の一部もしくは全部のIL-1ra機能を提供するために十分なIL-1raの断片、または十分な分子を投与することを含む。
【0087】
また、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片のアミノ酸配列のアミノ酸配列変種も含まれる。例えば、一つまたは複数のアミノ酸残基を、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、もしくはこれらの生物活性断片配列、または先に定義したその断片のN-もしくはC-末端、またはその中に付加する場合。可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子配列、または先に定義したその断片のアミノ酸配列変種は、配列またはその断片の一つまたは複数のアミノ酸残基が欠失し、および選択的に一つまたは複数のアミノ酸残基に置換されており;および生じる産物が天然に存在しないアミノ酸であるように、アミノ酸残基が共有結合によって改変されている、上記の可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片の誘導体である。この場合も、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片のこれらの変種は全て、変種がそれが由来する完全な可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片の生物活性を保持する限り、「生物活性断片」という用語に含まれる。
【0088】
本明細書において用いられるように、「薬学的担体、アジュバント、または賦形剤」とは、抗炎症剤および/または抗生物質を動物に輸送するための薬学的に許容される溶媒、懸濁物質、または腑形剤である。担体は、液体または固体であってもよく、意図される計画された投与様式で選択される。
【0089】
「実質的に相同である」という用語は、核酸および/またはアミノ酸配列の双方を意味することができ、特定の被験配列、例えば、変異体配列が一つまたは複数の置換、欠失、または付加によって参照配列とは異なるが、その真の作用は参照配列と被験配列との間に有害な機能的相違が生じないことを意味する。本発明の目的に関して、同等の生物活性および同等の発現特徴を有する配列は、実質的に相同であると見なされる。より程度の低い同一性、比較可能な生物活性、および同等の発現特徴を有する配列は、同等物であると見なされる。
【0090】
「微生物の」とは、細菌、真菌(例えば、酵母)、ウイルス(例えば、バキュロウイルス)、または植物発現系において作製された組換え型蛋白質を意味する。その結果、「組換え型微生物の」とは、無傷の内因性の物質を本質的に含まず、関連する本来のグリコシル化を伴わない動物蛋白質を定義する。ほとんどの細菌培養物、例えば大腸菌培養物において発現される蛋白質は、グリコシル化改変を含まないであろう;酵母および昆虫細胞において発現された蛋白質は、哺乳類細胞において発現されたものとは異なるグリコシル化パターンを有するであろう。
【0091】
「核酸分子」または「ポリ核酸分子」は、本明細書において、全ての形のデオキシリボ核酸およびリボ核酸、すなわち一本鎖および二本鎖DNA、cDNA、mRNA等を意味する。
【0092】
「二本鎖DNA分子」とは、デオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)のその正常な二重らせんの重合型を意味する。この用語は、分子の一次構造および二次構造のみを意味し、如何なる特定の三次構造にそれらを限定しない。このように、この用語には、中でも直線状のDNA分子分子(例えば、制限断片)、ウイルス、プラスミド、および染色体において認められる二本鎖DNAが含まれる。特定の二本鎖DNA分子の構造を検討する場合、配列は、転写されていないDNA鎖に沿って5'から3'方向における配列のみを与える通常の慣例に従って本明細書に記載してもよい(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)。
【0093】
DNA配列は、遺伝子コードに従うDNA分子配列の翻訳によってアミノ酸配列が得られる場合、アミノ酸配列に「対応する」(すなわち、DNA配列はアミノ酸配列を「コードする」)。
【0094】
二つの配列が同じアミノ酸配列をコードする場合、一つのDNA配列はもう一つのDNA配列に「対応する」。
【0095】
二つのDNA配列は、DNA配列の規定の長さに対してヌクレオチドのマッチが少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは少なくとも約95%である場合に「実質的に類似」である。実質的に類似である配列は、サザンハイブリダイゼーション実験において、例えば特定の系に関して規定されたストリンジェントな条件において同定することができる。適当なハイブリダイゼーション条件を決定することは当業者の範囲内である。例えば、Sambrookらの「DNA Cloning」、第I、IIおよびIII巻、Nucleic Acid Hybridizationを参照のこと。しかし、通常、核酸分子のハイブリダイゼーションまたはアニーリングに関する「ストリンジェントな条件」は、以下の通りである:
(1)洗浄のために低イオン強度および高温、例えば、0.015 M NaCl/0.0015 Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を50℃を用いる、または
(2)ホルムアミドのような変性剤、例えば50%(容積/容積)ホルムアミドを0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50 mM燐酸ナトリウム緩衝液pH 6.5と共に750 mM NaCl、75 mMクエン酸ナトリウム42℃をハイブリダイゼーションの際に用いる。
【0096】
もう一つの例は、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75 M NaCl、0.075 Mクエン酸ナトリウム)、50 mM燐酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロ燐酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50 μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸を42℃で用いて、0.2×SSCおよび0.1%SDSで42℃で洗浄することである。
【0097】
DNA構築物の「異種」領域またはドメインは、自然界でより大きい分子に会合した状態で認められないより大きいDNA分子内のDNAの同定可能な部分である。このように、異種領域が哺乳類遺伝子をコードする場合、遺伝子は通常、起源となる生物のゲノムにおいて哺乳類のゲノムDNAに隣接しないDNAによって隣接されるであろう。異種領域のもう一つの例は、コード配列そのものが自然界に存在しない構築物である(例えば、ゲノムコード配列がイントロンまたは本来の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列を含むcDNA)。対立遺伝子変種または天然に存在する変異事象は、本明細書に記載のDNAの異種領域を生じない。
【0098】
「コード配列」は、蛋白質またはペプチド配列に対応するまたはコードするコドンのフレーム内配列である。二つのコード配列は、配列またはその相補的配列が同じアミノ酸配列をコードすれば、互いに対応する。適当な調節配列に会合したコード配列は、インビボでポリペプチドに転写および翻訳される可能性がある。ポリアデニル化シグナルおよび転写終了配列は通常、コード配列の3'に存在するであろう。
【0099】
「プロモーター配列」は、細胞においてRNAポリメラーゼに結合して、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。コード配列は、プロモーター配列に結合するRNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写して、次に、コード配列によってコードされる蛋白質に翻訳される場合、細胞においてプロモーター配列の「制御下」にある。
【0100】
本発明の目的に関して、プロモーター配列は、その3'末端でコード配列の翻訳開始コドンから始まり、バックグラウンド以上の検出可能なレベルで転写を開始させるために必要な塩基または要素の最小数を含むように上流に伸長する。プロモーター配列内において、転写開始部位(ヌクレアーゼS1によるマッピングによって簡便に規定される)と共に、RNAポリメラーゼの結合に関与する蛋白質結合ドメイン(コンセンサス配列)が認められるであろう。真核細胞プロモーターは、しばしば「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含むが必ずしも含むとは限らない;原核細胞プロモーターは、−10および−35コンセンサス配列の他にシャイン-ダルガルノ配列を含む。
【0101】
細胞は、そのような外因性DNAが細胞壁内部に導入される場合に外因性DNAによって「形質転換」されている。外因性DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み入れられても(共有結合)、組み入れられなくてもよい。原核細胞および酵母において、例えば、外因性DNAは、プラスミドのようなエピソーム要素上で維持してもよい。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞は、外因性DNAが染色体の複製を通して娘細胞に遺伝される細胞である。この安定性は、真核細胞が、外因性DNAを含む娘細胞の集団を含む細胞株またはクローンを確立できることによって証明される。
【0102】
DNAの「組み込み」は、マイクロインジェクション、バイオリスティックス、電気穿孔、またはリポフェクションを用いた細胞へのDNAの質量移入後の非相同的組換えを用いて行ってもよい。相同的組換え、および/または制限酵素媒介組み込み(REMI)、またはトランスポゾンのようなもう一つの方法も同様に含まれ、改善された組み込み法であると見なしてもよい。
【0103】
「クローン」は、分裂によって単細胞または共通の祖先に由来する細胞集団である。
【0104】
「細胞」、「宿主細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」は、本明細書において互換的に用いられ、そのような用語は全て、子孫を含むと解釈すべきである。「細胞株」は、多くの世代に関してインビトロで安定な増殖を行うことができる一次細胞のクローンである。このように、「形質転換体」および「形質転換細胞」という用語には、培養物を継代した回数にかかわらず、一次被験細胞およびそれに由来する培養物が含まれる。同様に、全ての子孫は、故意または偶然の変異により、DNA含有量が正確に同一である必要はないと理解すべきである。
【0105】
ベクターは、DNA、RNA、または蛋白質のような外来物質を生物に導入するために用いられる。典型的なベクターには、組換え型ウイルス(DNAに関して)およびリポソーム(蛋白質に関して)が含まれる。「DNAクローニングベクター」は、プラスミド、ファージ、またはコスミドのような自律的に複製するDNA分子である。典型的に、DNA分子クローニングベクターは、一つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み、その部位でそのようなDNA配列がベクターの本質的な生物学的機能を喪失することなく決定することができるように切断してもよく、その中にその複製およびクローニングを行うためにDNA断片をスプライシングしてもよい。クローニングベクターはまた、クローニングベクターによって形質転換した細胞の同定において用いるために適したマーカーを含んでもよい。
【0106】
「発現ベクター」は、DNAクローニングベクターと類似であるが、適当な宿主細胞による蛋白質の合成を指示することができる調節配列を含む。これは通常、RNAポリメラーゼに結合して、mRNAの転写を開始するプロモーターのみならず、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指示するリボソーム結合部位および開始シグナルを意味する。適切な部位および正しい読み取り枠で発現ベクターにDNA配列を組み入れた後、ベクターによって適当な宿主細胞の形質転換を行うと、DNA配列に対応するmRNAの産生が可能となり、通常、DNA配列によってコードされる蛋白質の産生が可能となる。
【0107】
本発明の目的に関して、プロモーター配列は、その3'末端でコード配列の翻訳開始コドンから始まり、バックグラウンド以上に検出可能なレベルで転写を開始するために必要な塩基または要素の最小数を含むように上流に伸長する。プロモーター配列内において、転写開始部位(ヌクレアーゼS1によるマッピングによって簡便に定義される)と共にRNAポリメラーゼの結合に関係する蛋白質結合ドメイン(コンセンサス配列)が認められるであろう。
【0108】
「外因性」要素は、宿主細胞に対して異物であるか、または宿主細胞に対して同種であるが、宿主細胞において要素が通常認められない位置に存在する要素である。
【0109】
DNAの「消化」は、DNAにおける特定の位置に限って作用する酵素によるDNAの触媒的切断に関する。そのような酵素は、制限酵素または制限エンドヌクレアーゼと呼ばれ、DNAにおいてそのような酵素の切断を受ける部位は制限部位と呼ばれる。DNA内に多数の制限部位が存在すれば、消化によって、二つまたはそれ以上の直線状DNA断片(制限断片)を生じるであろう。本明細書において用いられる様々な制限酵素が市販されており、その反応条件、共因子、および酵素の製造元によって確立された他の必要条件を用いる。制限酵素は一般的に、それぞれの制限酵素が最初に得られた微生物を表す大文字の次に他の文字が続き、特定の酵素を指定する数値からなる省略語によって示される。一般的に、DNA約1 μgは、緩衝液約20 μl中の酵素約1〜2単位によって消化される。特定の制限酵素に関する適当な緩衝液および基質の量は、製造元によって明記され、および/または当技術分野で周知である。
【0110】
制限消化物からのDNAの所定の断片の「回収」または「単離」は、典型的に電気泳動によってポリアクリルアミドまたはアガロースゲル上で「制限断片」と呼ばれる消化産物を分離すること、既知の分子量のマーカーDNA断片の移動度と比較したその移動度に基づいて関係する断片を同定すること、所望の断片を含むゲルの一部を切除すること、および例えば、電気的溶出によってゲルからDNAを分離することによって行われる。
【0111】
「ライゲーション」は、二つの二本鎖DNA断片の間にホスホジエステル結合を形成するプロセスを意味する。特に明記していない限り、ライゲーションは、既知の緩衝液、およびライゲーションすべきDNA断片のほぼ等モル量0.5 μgあたりT4 DNAリガーゼ10単位の条件を用いて行われる。
【0112】
「オリゴヌクレオチド」は、Engelsら、Agnew Chem. Int. Ed. Engl. 28:716〜734(1989)に記述されるような既知の方法(例えば、トリエステル、ホスホアミダイト、またはホスホネート科学を含む)によって化学合成される、長さが短い、一本鎖または二本鎖ポリデオキシオリゴヌクレオチドである。次に、それらを例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製する。
【0113】
本明細書において用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、一般的に米国特許第4,683,195号に記載されるように、所望のヌクレオチド配列のインビトロ増幅方法を意味する。一般的に、PCR法は、鋳型核酸に選択的にハイブリダイズすることができる二つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、プライマー伸長合成のサイクルを繰り返すことを伴う。典型的に、PCR法において用いられるプライマーは、増幅されるヌクレオチド配列に隣接する両端でまたは隣接する鋳型内でヌクレオチド配列と相補的であるが、増幅されるヌクレオチド配列と相補的なプライマーも同様に用いてもよい。Wangら、PCR Protocols、70〜75頁(アカデミック出版、1990);Ochmanら、PCR Protocols、219〜227頁;Trigliaら、Nucl.Acids Res. 16:8186(1988)。
【0114】
「PCRクローニング」とは、総ゲノムDNAおよび総細胞RNAから転写したcDNAを含む、適した細胞または組織起源から核酸に存在する特定の所望のヌクレオチド配列を増幅するためにPCR方法を用いることを意味する。Frohmanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8998〜9002(1988);Saikiら、Science 239:487〜492(1988);Mullisら、Meth. Enzymol. 155:335〜350(1987)。
【0115】
「ベクター」または「構築物」は、(1)遺伝子発現において調節的役割を有する遺伝子要素または複数の要素、例えば、プロモーターまたはエンハンサー、(2)mRNAに転写され、蛋白質に翻訳される構造またはコード配列、および(3)適当な転写開始および終了配列と共に転写単位を含む、プラスミド、ウイルス、またはゲノム組み込み体を意味する。酵母または真核細胞発現系において用いることが意図される構造単位には、宿主細胞によって翻訳された蛋白質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列が含まれるであろう。または、リーダーまたは輸送配列なく組換え型蛋白質を発現する場合、N-末端メチオニン残基を含んでもよい。この残基は、最終産物を生成するために、発現された組換え型蛋白質からその後切断してもよく、しなくてもよい。一般的に、組換え型発現ベクターには、宿主細胞の形質転換を可能にする複製開始点および選択マーカー、ならびに下流の構造配列の転写を誘導するために高度に発現された遺伝子に由来するプロモーターが含まれるであろう。異種構造配列は、翻訳開始および終了配列、ならびに好ましくは翻訳された蛋白質のペリプラスム間隙または細胞外媒体への分泌を指示することができるリーダー配列と共に適当な相で構築される。選択的に、異種配列は、所望の特徴、例えば発現された組換え型蛋白質の安定化または単純な精製、を付与するN-末端同定ペプチドを含む融合蛋白質をコードしうる。本発明の好ましい組換え型発現ベクターは、ウイルスベクター(例えば、ブタアデノウイルスベクター)、哺乳類細胞(例えば、ブタ細胞)、植物細胞、および細菌細胞である。
【0116】
「免疫応答」という用語は、脊椎動物被験者の免疫系による抗原または抗原性決定因子に対する如何なる反応も意味する。例としての免疫応答には、本明細書において下記に定義するように、液性免疫応答(例えば、抗原特異的抗体の産生)、および細胞性免疫応答(例えば、リンパ球の増殖)が含まれる。
【0117】
「全身性免疫応答」という用語は、Bリンパ球のような免疫系の細胞が発達するリンパ節、脾臓、および腸管関連リンパ様組織における免疫応答を意味する。例えば、全身性免疫応答は、血清IgG'sの産生を含みうる。さらに、全身性免疫応答は、血流において循環する抗原特異的抗体、ならびに脾臓およびリンパ節のような全身性の器官でのリンパ様組織における抗原特異的細胞を意味する。対照的に、腸管関連リンパ様組織(GALT)は、腸の抗原/病原体に反応する抗原特異的細胞がGALTにおいて誘導され、検出可能であることから、粘膜免疫系の成分である。
【0118】
サイトカイン受容体およびサイトカイン受容体アンタゴニストは、全ての食用動物種において内因性に発現され、これらの多くが高度の交叉反応性を有することから、サイトカイン受容体に続き、一つの種に由来するサイトカイン受容体アンタゴニストを、異なる種の動物に投与してもよく、およびその逆も可能となる。例えば、動物がブタである場合、IL-1受容体のようなヒトサイトカイン受容体を開示の方法において用いてもよい。特定のサイトカイン受容体またはサイトカイン受容体アンタゴニストが、動物において内因性に発現されるサイトカイン受容体またはサイトカイン受容体アンタゴニストと同一である必要はない。
【0119】
本発明の方法は一つの態様において以下を伴う:
(1)一つもしくは複数の抗生物質の投与前、と共に、またはその後に一つもしくは複数の抗炎症剤を投与する;または
(2)一つもしくは複数の抗炎症剤と一つもしくは複数の抗生物質とを含む組成物を投与する;
(3)如何なる抗生物質も投与せずに一つもしくは複数の抗炎症剤を投与する。
【0120】
本発明の抗炎症剤(複数)または組成物(複数)は、慣例的な非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、および賦形剤を含む単位投与製剤において、経口、局所、または非経口投与してもよい。本明細書において用いられるように、非経口という用語には、皮下注射、エアロゾル、静脈内、筋肉内、髄腔内、頭蓋内、注射または注入技術が含まれる。
【0121】
本発明はまた、本発明の成長成績を改善する新規方法において用いられる適した局所、経口、および非経口薬剤を提供する。本発明の組成物は、錠剤、水性もしくは油性懸濁液、ロゼンジ、トローチ、粉剤、顆粒剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤として経口投与してもよい。経口投与のための組成物は、薬学的に洗練された美味な調製物を生成するために、甘味料、着香料、着色剤、および保存剤からなる群より選択される一つまたは複数の物質を含んでもよい。錠剤は、錠剤の製造に適している非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、または賦形剤と混合して活性成分を含む。
【0122】
これらの担体、アジュバント、または賦形剤は、例えば、(1)炭酸カルシウム、乳糖、燐酸カルシウム、または燐酸ナトリウムのような不活性希釈剤;(2)コーンスターチまたはアルギン酸のような造粒剤および崩壊剤;(3)デンプン、ゼラチンまたはアカシアのような結合剤;ならびに(4)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクのような潤滑剤であってもよい。これらの錠剤は、コーティングしなくともよく、または消化管における崩壊および吸収を遅らせて、それによって持続的な作用をより長期間にわたって提供するために既知の技術によってコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのようなタイムディレイ材料を用いてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのようなタイムディレイ材料を用いてもよい。コーティングはまた、放出を制御するための浸透圧治療錠を形成するために、米国特許第4,256,108号、第4,160,452号、および第4,265,874号に記載される技術を用いて行ってもよい。
【0123】
本発明の方法において有用な抗体と共に抗炎症剤は、例えばインビボ適用のため、注射による非経口投与のため、または個別にもしくは共に徐々に一定時間潅流することによって投与することができる。投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮であってもよい。
【0124】
非経口投与のための製剤には、滅菌の水性または非水性溶液、懸濁液、および乳液が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝培地を含む水、アルコール/水溶液、乳液、または懸濁液が含まれる。非経口溶媒には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムが含まれ、乳酸加リンゲル静脈内溶媒には、液体および栄養補給剤、電解質補給剤(リンゲルデキストロースに基づくもののように)等が含まれる。抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、増殖因子、および不活性ガス等のような保存剤および他の添加剤も同様に、存在してもよい。
【0125】
本発明には、成長成績を改善するために有用な様々な組成物が含まれる。本発明の一つの態様に従う組成物は、一つまたは複数の抗炎症剤を、一つまたは複数の抗生物質と共に、または含まずに、担体、アジュバント、賦形剤、または添加剤を用いて、動物に投与するために適した形にすることによって調製される。
【0126】
本発明のこの局面において用いるために適した抗生物質は、動物の水および/または飼料に対する添加剤として、および動物における微生物負荷を制限するために家畜学において慣例的に用いられるものである。これらの抗生物質の例には、リンコマイシン、スペクチノマイシン、およびアモキシシリンが含まれる。オーストラリアにおける食用動物に関する抗生物質使用の詳細な分析は、「食用動物における抗生物質の使用:動物およびヒトにおける抗生物質耐性菌(The use of antibiotics in food-producing animals:antibiotic-resistant bacteria in animals and humans.)」、Report of the Joint Expert Advisory Committee on Antibiotic Resistance.(JETACAR)、オーストラリア連邦、1999に記載されている。
【0127】
抗生物質は、動物における微生物負荷を減少させる目的で、動物に慣例的に投与される量と同じ量で動物に投与することができる。抗生物質のこれらの量は、当業者に既知であり、上記のJETACARにおいて参照されている。
【0128】
しばしば用いられる担体、アジュバント、または賦形剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、乳糖、マンニトール、および他の糖、タルク、乳蛋白質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロース、およびその誘導体、動物性および植物性油、ポリエチレングリコール、および滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールのような賦形剤が含まれる。静脈内賦形剤には、液体および栄養補給剤が含まれる。保存剤には、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスが含まれる。他の薬学的に許容される担体には、その内容が参照として本明細書に組み入れられる、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、第15版、Easton、マック出版社、1405〜1412、1461〜1487(1975)、およびThe National Formulary、XIV、第14版、Washington:アメリカ製薬工業会(1975)に記載されるように、塩、保存剤、緩衝液等を含む水溶液、非毒性賦形剤が含まれる。薬学的組成物の様々な成分のpHおよび正確な濃度は、当技術分野において日常的な技術に従って調節される。Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics(第7版)を参照のこと。
【0129】
本発明に係る薬学的組成物は、成長促進量を局所または全身投与してもよい。この用途のために有効な量は、当然、抗炎症剤ならびに動物の体重および全身状態に依存するであろう。典型的に、インビトロで用いられる用量は、組成物のインサイチューでの投与にとって有用な量の有用な指標となる可能性がある。例えば、Langer、Science 249:1527(1990)において様々な検討が記述されている。経口で用いるための製剤は、活性成分が、不活性な固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、またはカオリンと混合される、硬ゼラチンカプセルの形であってもよい。それらはまた、活性成分が、水、またはピーナッツ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油のような油性媒体と混合される、軟ゼラチンカプセルの形であってもよい。
【0130】
水性懸濁液は通常、水性懸濁液の製造のために適した賦形剤と混合して活性材料を含む。そのような賦形剤は、(1)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムのような懸濁剤;(2)(a)レシチンのような天然に存在するホスファチド;(b)アルキレンオキサイドと脂肪酸との縮合産物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン;(c)エチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール;(d)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールのような、エチレンオキサイドと、脂肪酸とヘキシトールとに由来する部分的エステルとの縮合産物、または(e)エチレンオキサイドと、脂肪酸とヘキシトール無水物とに由来する部分的エステルとの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、であってもよい分散剤または湿潤剤であってもよい。
【0131】
組成物は、滅菌で注射可能な水性または油脂性懸濁液の形であってもよい。この懸濁液は、先に述べたそれらの適した分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて既知の方法に従って調製してもよい。滅菌注射可能調製物はまた、非毒性の非経口許容希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁液、例えば1,3-ブタンジオールの溶液としてであってもよい。用いてもよい許容される媒体および賦形剤は、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌の固定油は、溶媒または懸濁培地として慣例的に用いられている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む如何なる商標の固定油も用いてもよい。さらに、オレイン酸のような脂肪酸も、注射剤の調製に用いられる。
【0132】
本発明の抗炎症剤および組成物は、小さい単層小胞、大きい単層小胞、および多層小胞のようなリポソーム輸送系の形で投与してもよい。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンのような多様なホスホリピッドから形成することができる。
【0133】
本発明の抗炎症剤または組成物の用量レベルは、体重1 kgあたり約1 μg〜約50 μgの次数であり、好ましい用量範囲は、約5μg〜約20 μg/kg体重/用量(多数回または1回)(1用量あたり動物あたり約100 μg〜約500 μg)である。1回量を得るために担体材料と混合してもよい抗炎症剤の量は、動物および特定の投与様式に応じて変化するであろう。例えば、ブタに対する静脈内投与を意図する製剤は、組成物全体の約5〜95%まで変化してもよい担体材料の適当な都合のよい量と共に抗炎症剤約20 μg〜1 gを含んでもよい。用量単位剤形は一般的に、抗炎症剤約5 μg〜500 mgを含む。
【0134】
しかし、如何なる特定の動物の特定の用量レベルも、用いる特定の抗炎症剤の活性、年齢、体重、全身健康、飼料、投与時期、投与経路、排泄速度および薬剤の併用を含む多様な要因に依存するであろうと理解される。
【0135】
本発明の一つの特に好ましい態様において、抗炎症剤または複数の抗炎症剤は、外から投与されるよりむしろインビボで発現される。例えば、機能的プロモーターとの機能的な読み取り枠において、抗炎症剤をコードする構造的DNA配列を、適した翻訳開始および終了シグナルと共に挿入することによって、インビボで抗炎症剤を発現させることができる発現ベクターが作製される。ベクターは、宿主内での増幅を確実にするために、一つまたは複数の表現型選択マーカーおよび複製開始点を含む。形質転換のために適した原核細胞宿主には、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトモナス(Streptomonas)属、およびブドウ球菌(Staphylococcus)属の様々な種が含まれるが、他の菌も選択肢として用いてもよい。適した宿主株の形質転換および発現後、細胞をさらなる期間培養する。細胞は典型的に、遠心、物理的または化学的手段による破壊によって回収し、得られた粗抽出物はをさらなる精製のために保持する。様々な哺乳類細胞培養系も同様に、組換え型蛋白質を発現させるために用いてもよい。哺乳類の発現系の例には、Gluzman、Cell 23:175(1981)に記載されるサル腎線維芽細胞のCOS-7細胞株、および適合性のベクターを発現することができる他の細胞株、例えば、C127、3T3、CHO、Hela、およびBHK細胞株ならびに当然ブタの細胞が含まれる。哺乳類発現ベクターは、複製開始点、適したプロモーター、およびエンハンサーを含み、同様に、如何なる必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終了配列、ならびに5'隣接非転写配列を含むであろう。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列、例えば、SV40開始点、初期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル化部位を用いて、必要な非転写遺伝子要素を提供してもよい。細菌培養において産生された組換え型蛋白質は通常、細胞沈降物から初回抽出を行った後、1回またはそれ以上の塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィー段階によって単離する。蛋白質復元段階は必要に応じて、成熟蛋白質の構造を完成させるために用いることができる。最後に、最終精製段階のために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることができる。蛋白質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解の繰り返し、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む如何なる都合のよい方法によっても破壊することができる。精製のためのタグ配列を発現する発現系を用いると、精製が単純となるであろう。本明細書に規定する組換え型発現系は、発現されるDNAセグメントまたは合成遺伝子に結合した調節要素が誘導されると、異種蛋白質を発現するであろう。細胞不含翻訳系も同様に、本発明のDNA構築物に由来するRNAを用いてブタサイトカインを産生するために用いることができる。原核細胞宿主および真核細胞宿主について用いられる適当なクローニングおよび発現ベクターは、その開示が参照として本明細書に組み入れられる、Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、1985)に記載されている。
【0136】
特定の抗炎症剤をコードする核酸は、プラスミドDNAまたはウイルスベクター(ベクターはアデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルスに由来する、特にワクシニアウイルスまたはMVAウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス等に由来する)の形であると都合がよい。特定の抗炎症剤をコードする核酸は、感染性のウイルス粒子によって、または合成ベクター(陽イオン脂質、リポソーム、陽イオンポリマー等)、操作された細胞(該核酸によってトランスフェクトまたは形質導入された細胞)、もしくは操作されていない細胞(該核酸を本来含む)の形で輸送される。
【0137】
さらに好ましい変種に従って、関係する核酸は、複製に関して欠損である(宿主細胞において自律的に複製することができない)アデノウイルスベクターによって運ばれる。アデノウイルスに関する技術は、当技術分野の現状において記述されている(例えば、Graham and PrevecのMethods in Molecular Biology、1991、第7巻、109〜128頁、E. J. Murey編、ヒューマンプレスインクを参照のこと)。都合のよいことに、本発明の文脈において用いられるアデノウイルスベクターは、アデノウイルスのゲノムに由来し、少なくともITRs(逆方向末端反復配列)およびカプシド化配列を含み、E1アデノウイルス領域の全てまたは一部を欠損する。さらに、これはE3アデノウイルス領域の全てまたは一部を欠損しうる。しかし、都合のよい態様に従って、ポリペプチド、特に宿主の免疫系からの逃避を可能にする糖蛋白質gp19k(Goodingら、Critical Review of Immunology、1990、10:53〜71)をコードするE3領域の一部を保持することが好ましい。さらに、ベクターは、特にE2、E4、L1、L2、L3、L4、およびL5領域から選択される一つまたは複数の領域の全てまたは一部に影響を及ぼすさらなる欠失または変異を含みうる(例えば、国際出願国際公開公報第94/28152号を参照のこと)。この点を説明するために、E2 A領域のDBP(DNA結合蛋白質の意味)遺伝子に影響を及ぼす温度感受性変異を挙げてもよい(Ensingerら、J. Virol. 1972、10:328〜339)。もう一つの変種、または魅力的な組み合わせは、オープンリーディングフレーム(ORFs)6および7をコードする配列を除くE4領域を欠失することを含む(このような限定的な欠失は、E4機能が実行されるために必要ではない;Ketnerら、Nucleic Acids Res. 1989、17:3037〜3048)。好ましくは、関係する遺伝子(複数)は、欠失したアデノウイルス領域、特にE1領域の代わりにベクターに挿入される。いくつかの関係する遺伝子を用いる場合、それらは、ウイルスゲノムの同じ部位または異なる部位に挿入することができ、同じ調節要素の制御下で、または異なる要素の制御下に置くことができ、適当であれば、その発現レベルでの干渉現象を最小限にするために、それらのいくつかを互いに対して反対方向に置くことができる。組換え型アデノウイルスベクターのゲノムは、分子生物学技術または相同的組換え(国際公開公報第96/17070号を参照のこと)によって調製することができる。
【0138】
本発明の文脈において用いられるアデノウイルスベクターは、感染性のウイルス粒子を形成するために必要なペプチドを産生するために、トランスで欠損する機能(複数)を供給することができる補足細胞株において増殖させる。例えば、E1機能を補足するために細胞株293(Grahamら、J. Gen. Virol. 1977、36:59〜72)または二重の補足を行うために国際出願国際公開公報第97/04119号に記載される細胞株が利用されるであろう。同様に、欠損機能を全て補足するために適当な細胞株とヘルパーウイルスを用いることが可能である。産生されるウイルス粒子は、細胞培養物から回収され、必要であれば当技術分野の技術を用いて精製される(塩化セシウム勾配、クロマトグラフィー段階等)。
【0139】
本発明の文脈において用いられるアデノウイルスベクターは、ヒト、イヌ、トリ、ウシ、ネズミ、ヒツジ、ブタ、もしくはサル起源のアデノウイルスのゲノム、または異なる起源のアデノウイルスゲノム断片を含むハイブリッドに由来しうる。より詳しくは、イヌ起源のCAV-1またはCAV-2アデノウイルス、トリ起源のDAV、またはウシ起源の3型Badを挙げてもよい(Zakharchukら、Arch. Virol. 1993:128:171〜176;Spibey and Cavanagh、J. Gen. Virol. 1989、70:165〜172;Jouvenneら、Gene 1987、60:21〜28;Mittalら、J. Gen. Virol. 1995、76:93〜102)。しかし、調べる特定の動物種に対して特異的であるアデノウイルスベクターが好ましいであろう。例えば、ブタアデノウイルス(PAV)がブタに投与される。
【0140】
本発明の方法および手段は、キットの形態で具体化されてもよい。
【0141】
本キットは、一つまたは複数の抗炎症剤を含む第1の容器、薬剤を輸送するための装置、および使用説明書を含む。
【0142】
集中的な動物産生における使用に適応された態様において、本キットは、加えて一つまたは複数の抗生物質を含む第2の容器を含んでいてもよい。ほかのキットでは抗炎症剤をコードする一つまたは複数の核酸分子であって、動物に投与されたときに、動物の中で該核酸分子を発現し、抗炎症剤の成長を促進する量を産生する核酸分子を含む第1の容器、核酸分子を輸送するための装置、および使用説明書を含む。
【0143】
使用説明書により、農業家またはその他の動物の酪農経営者が、抗炎症剤または核酸分子を、このような薬剤または核酸分子の投与されていない動物と比較して動物の成長促進が増強されるように、投与することができるであろう。
【0144】
明細書を通して、「含む」ならびに「含む(comprising)」および「含む(comprises)」のようなその用語の変化形は、「含むがこれらに限定されない」ことを意味し、他の添加剤、成分、整数または段階を除外すると解釈されない。
【0145】
本発明は、以下の非制限的な実施例のみを参照としてさらに説明する。しかし、以下の実施例は説明するためであって、上記の本発明の普遍性に対する制限であると如何なるようにも解釈してはならないと理解すべきである。例えば、実施例の大半はブタに関するが、本発明は、例えば、ヒツジ、ウシ、およびニワトリを含む本明細書に開示の他の動物にも適用できると理解すべきである。
【0146】
実施例1
飼料中の抗生物質を置換するための成長促進剤としての組換え型IL-1RA
この実験は、IL-1raが商業的な環境において離乳期のブタの成長成績および健康を改善することが可能かどうか決定するために行った。また、本発明者らは、飼料中の抗生物質投薬に対しての置換としてのIL-1raの潜在能力を調査することを望んだ。
【0147】
実験デザイン
組換え型ブタIL-1raを大腸菌に発現させて、ポリHisタグ系を使用して精製した。実験の開始前に、生物検定で生物活性についてIL-1raを試験した。
【0148】
雄離乳期ブタ(28日齢)を表1に記載したように、20投与群に割り当てた。それぞれの投与群の平均重量を均等にし、分散を均等にした。ブタは、20のブタ舎群に収容し、2つのブタ舎には、現在の産業の標準あたりの投薬した水および飼料を提供したが、2つのブタ舎には、投薬していない水および飼料を与えた。ブタには、表2に記載したように、離乳期(42日)の間に、1mlの体積で、組換え型IL-1raまたは生理食塩水(対照)を毎週2回注射した。
【0149】
(表1)

【0150】
(表2)
0日 重量を測定し、28日齢の離乳期個体をグループ化した。
採血。群に注射した。
1日
群に注射した。
6日 重量を測定。
群に注射した。
7日(1週) 群に注射した。
9日 重量を測定。
13日 群に注射した。
群に注射した。
14日(2週) 重量を測定。
16日 群に注射した。
20日 群に注射した。
重量を測定。
21日(3週) 群に注射した。
23日 群に注射した。
27日 重量を測定。
群に注射した。
28日(4週) 群に注射した。重量を測定。最終採血。
30日 成長期ブタ舎へ移動した。
34日 成長期。全てのブタには標準的な飼料を与え、
前の群のままにした。
35日(5週) (73日)から成長期の最後(93日)の間に重量
37日 を計測。
41日 仕上げ期。ブタを単一のブタ舎に移動して、試料摂取を
FCRについて測定した(飼料転換率)。全てのブタには、
42日(6週) 標準的な仕上げ期飼料を与えた。(実験日114日)
(42〜93日) から仕上げ期の最後(屠殺133日)の間に重量を
測定。最終重量、P2の背脂肪、屠体重量、%仕上げ
(93〜133日) を測定した。
【0151】
離乳期の開始(0日)に、および離乳期終了後(42日)に、ブタから免疫学的な解析のために静脈穿刺によって採血した。ブタは、離乳期(0日〜42日)の全体にわたって、毎週、次いで79日、93日に、および113日の試験の最後に重量を測定し、その後に動物を屠殺して屠体の特徴を測定した。
【0152】
結果
処理の最初の4週間では、IL-1raによって処理したブタ並びに生理食塩水の対照で、増加の割合について行った(図1)。しかし、離乳期の後の週の5週および6週に実験および処理が進行したときには、IL-1raによって処理したブタでは、投薬および非投薬の摂取法の両者において、生理食塩水処理したブタを上回っていた(図2)。さらに、IL-1raによって処理し、抗生物質フリーの食餌を摂取したブタ、並びに生理食塩水処理したブタでも、投薬食餌の摂取を行った(図2、生理食塩水+に対するIL-1ra-)。IL-1raによって処理し、投薬食餌を摂取したブタでは、離乳期最後の2週以上において最も大きな増加割合を有した。
【0153】
このような結果は、IL-1ra処理が、商業的な条件下でブタの成長を促進するための飼料中の抗生物質の適用と同様の効果があることを示唆する。IL-1ra投与の4週後におけるIL-1ra処理したブタの成績の改善は、飼料中の抗生物質と同様の効果を生じるためにIL-1raの効果が遅延性であるか、または数回の処理が必要であることを意味する。
【0154】
IL-1ra処理したブタの高い増加割合の傾向は、成長期および仕上げ期(それぞれ43〜92日、および93〜134日)を通して継続した。6週の注射を終わった後、飼料中の投薬を伴わずにIL-1raによって処理したブタでは、生理食塩水によって処理し、かつ飼料中の投薬を提供したブタと同程度に早く成長が進んだ(図3)。また、この結果は、離乳期(図2)および成長期(図3、79日および93日)の最後の2週に示したように、IL-1raによる処理が、ブタの成長の増大の促進において、抗生物質と同様に有効であることを意味する。IL-1raの効果は、6週のサイトカイン処理の停止後に長い存在期間であるように見える。
【0155】
IL-1raによって処理し、かつ投薬食餌を提供したブタでは、成長期(図3、79日および93日)にわたって最も高い増加割合を示したが、一方で生理食塩水によって処理し、非投薬食餌を摂取したブタは、全ての処理群のうちで最も低い増加割合を有した。
【0156】
仕上げ期において、投薬食餌を伴わずに離乳期の間にIL-1raによって処理したブタは、全ての群のうちでの最も高い割合を示した(図4)。この結果は、IL-1ra(6週まで投与された)に対する反応の遅延性の性質であること、およびIL-1raは、産業によって現在使用される飼料中の抗生物質と同様に有効なブタの成長のプロモーターであることをさらに例示する。
【0157】
また、成長促進剤としてのIL-1raのポジティブな効果は、屠殺時のブタの平均重量(図5)、およびこれらのその後の屠殺後の暖かい屠体の重量(図6)によって示される。飼料中の抗生物質の非存在下で離乳期にIL-1raによって処理したブタは、生理食塩水によって処理し、かつ飼料中の抗生物質を提供したブタよりも、屠殺時において平均0.7kg重かった。IL-1ra処理をしたもののこの重量の増加は、これらの2つの処理の間の飼料転化率のいかなる相違も伴わずに生じた(図7)。離乳期の間に飼料中の抗生物質を提供されたブタは、仕上げ期の間に2.5の飼料転化率を有し、その一方で、飼料中の抗生物質非存在下でIL-1raによって処理したブタでは、仕上げ期にわたって2.49の飼料転化率を有した。抗生物質の存在下では、IL-1raによって処理したブタの暖かい屠体の重量は、生理食塩水によって処理した対応物のものよりも多かった(図6)。さらに、抗生物質の非存在下でIL-1raによって処理したブタの暖かい屠体の重量は、抗生物質を摂取し、かつ生理食塩水によって処理したブタによって得られるものに等しかった。これらの結果は、IL-1ra処理したブタが、抗生物質処理したブタよりも多く重量を増加したが、この増加は、現在の摂食によるブタ抗生物質の商業習慣と同様に効率的であった。
【0158】
結論
1)IL-1raは、飼料中の抗生物質の非存在下においてブタの成長を改善した。
2)IL-1ra処理によって生じる成長の改善は、飼料中の抗生物質の付加によって見られるものに匹敵した。
3)IL-1raは、生理食塩水処理した対照、および抗生物質を補充した食餌を摂取し、生理食塩水処理したブタと比較して、飼料中の抗生物質の非存在下における離乳期の最後の2週の成長を改善した。
4)離乳期の間のIL-1ra投与の成長に対する効果は、遅延性で、および長期間で、成長期および仕上げ期の全体にわたって継続した。
5)IL-1ra処理したブタは、成長期に抗生物質を摂取したブタと同様に成長した。
6)IL-1ra処理したブタは、仕上げ期に抗生物質を摂取したブタよりも早く成長した。
7)離乳期におけるIL-1raの投与は、生理食塩水によって処理し、かつ抗生物質を補充した食餌を摂取したブタと比較して、屠殺重量の増大を生じた。
8)離乳期にIL-1raによって処理したブタは、離乳期の間に抗生物質を補充した食餌を摂取したブタと、仕上げ期の間に同じ飼料効率を有した。
9)これらの結果は、IL-1raが、飼料変換効率に影響を及ぼすことなく、抗生物質をブタ食餌に補充することによる現在の産業習慣よりも、大きなブタを生じることを示す。
【0159】
実施例2
飼料中の抗生物質レベルを減少させるための成長促進剤としての組換え型IL-1RA
本実験では、ブタの成績および/または免疫性の改善について、離乳期、成長期、および仕上げ期から屠殺時を通じて、雄および雌の離乳ブタの成長速度および健康を比較することによって、IL-1raの評価を繰り返す。本試行は、ブタの生産に現在使用される抗生物質投薬の通常レベルから、減少された抗生物質投薬および抗生物質投与なしにわたるいくつかのレベルの投薬で、IL-1raの促進効果を調べるためにデザインした。この実験は、通常の商業的なブタ立ち上がり条件下で、IL-1raが抗生物質を置換する能力を評価し、動物の一生にわたったIL-1raの連続投与の効果を決定した。
【0160】
実験デザイン
組換え型ブタIL-1raを大腸菌に発現させて、ポリHisタグ系を使用して精製した。実験の開始前に、生物検定で生物活性についてIL-1raを試験した。
【0161】
本実験は、ブタを28日齢で離乳させて食用ブタ飼育環境において行った。注射は全て1 mlであった。処理あたりブタ16匹、処理あたり雄8匹および雌8匹であった。各処理群におけるブタの平均体重は実験開始時では類似であった。
【0162】
処理プロトコル
群 処理 投薬
1 生理食塩水 0
2 生理食塩水 減少
3 生理食塩水 正常
4 IL-1ra 0
5 IL-1ra 減少
6 IL-1ra 正常
【0163】
用いた記号
−は、試験を通して飼料または水に抗生物質を添加しなかったことを示す。
0.5は、試験を通して単一の抗生物質を用いたことを示す。
+は、試験を通して用いた通常の商業的な抗生物質レジメを示す。
【0164】
処理
A.生理食塩水 1ml IMを頚部筋肉内注射
B.100μgのIL-1ra、1ml IMを頚部筋肉内注射
注射は、離乳期の間に1週間に2回投与し、成長期および仕上げ期を通して1週間に1回投与した。
【0165】
ブタを離乳させて、実験開始時(0日、0週)に体重を測定した。離乳期(0週〜6週)、成長期の間(9週)、成長期終了時(13週)、仕上げ期の間(16週)および19週での屠殺より前の仕上げ期の終了時(19週)にわたって、体重を毎週記録した。血液試料は、試験開始時(処理前)および離乳期、成長期、および仕上げ期の終了時に採取した。血液学的および免疫学的解析を行った。屠殺時に、P2の背脂肪測定を含む屠体の特徴および仕上げ動態の重量を記述した。
【0166】
結果
離乳期終了時、IL-1raで処理したブタは、3つ全てのレベルの投薬において、これらの生理食塩水処理した対応物よりも重かった(図8)。抗生物質の投与を伴わずにIL-1raによって処理した離乳期のブタの重量は、生理食塩水によって処理し、かつ抗生物質の正常レベルを提供した離乳期のブタの重量よりも、有意に重かった(Irap- vs 生理食塩水+、図8)。予想通りに、抗生物質の投薬は、生理食塩水処理されたブタの成長を増強し、並びにIL-1raによって処理したブタの成長を改善した。
【0167】
抗生物質の投薬が存在すると、重量減少または死亡を受けたブタの数によって測定される離乳期の間のブタの健康に対してかなりの効果を有した(図9)。抗生物質のレベルを増大すると、生理食塩水処理したブタの重量減少または死亡を受けるブタの数が減少した。しかし、IL-1ra処理されたブタは、抗生物質のレベルを問わず、最少の重量減少または死亡の記録を示した。抗生物質の非存在下で、生理食塩水によって処理した16匹のブタの半分以上は、離乳期にわたって健康および生産の減少を示した。しかし、この数は、IL-1ra処理(図9)を伴う16匹のブタから2匹に減少していた。
【0168】
この離乳期にわたった健康の改善および死亡率の減少は、重量増加の改善と組み合わされて、離乳期の終わりの総群重量の顕著な相違を生じた(図10)。生理食塩水の処理群は、投薬なし、減少した投薬、および完全な投薬で、それぞれ292kg、324kg、および406kgの重さであった。IL-1ra処理したブタの離乳期の終わりの同等の総群重量は、369kg、390kg、および451kgであった。このIL-1ra処理した群の重量の増大は、ゼロ、減少した、および通常のレベルの抗生物質の投薬における、それぞれ26.4%、20.4%、および11.1%の生産力の増大を反映する。
【0169】
IL-1ra処理されたものの離乳期において見られる生産力の改善は、成長期および仕上げ期の全体にわたって継続した(図11および12)。成長期終了時、IL-1raによって処理したブタは、投薬レベルに関係なく全ての生理食塩水の処理のものよりも重かった(図11)。重要なことに、抗生物質の非存在下でのIL-1raの輸送では、成長期終了時に現在の投薬の産業レベルよりも重い重量となった。生理食塩水で処理したブタの仕上げ期の重量は、用量依存的な様式で投薬による影響を受け、投薬のレベル増加と伴って、屠殺時の重量の増大を生じた(図12)。しかし、このパターンは、IL-1ra処理したブタにおいては繰り返されなかった。IL-1raによって処理したブタは、抗生物質の投薬の非存在下で生理食塩水処理したブタよりも16.7%重かった。実際に、投薬を伴わずにIL-1raを投与すると、仕上げ期のブタの成長促進が、現在の抗生物質処理の産業レベルを上回った(図12)。これらの結果は、IL-1raが、生産期の全体にわたったブタの成長促進において、抗生物質の投薬よりより有効なことを示唆する。IL-1ra処理により、屠殺時により大きなブタを生じたが、この重量の増加は、P2の背脂肪の増加を伴わなかった(図13)。抗生物質の非存在下でIL-1raによって処理したブタは、生理食塩水によって処理し、かつ完全な抗生物質の投薬を提供したブタのものに匹敵するP2の背脂肪レベルを有した(図13)。このような結果は、IL-1ra投与によって見られる生体重の改善が、最終産物にかけて行われ、より痩せた屠体を生じることを示唆する。
【0170】
結論
1)IL-1raは、飼料中の抗生物質の非存在下において、および減少された抗生物質のレベルで、ブタの成長を改善する。
2)IL-1ra処理によって生じる成長の改善は、現在の抗生物質の投薬の産業レベルによって見られるものを上回った。
3)IL-1raは、離乳期から仕上げ期にかけての生産期の全体にわたって成長を改善し、屠殺時により重い重量になった。
4)IL-1raは、生理食塩水の処理のものと比較して、死亡率の減少および重量減少の発生率の減少によって見られる離乳期のブタの健康を改善した。
5)IL-1ra投与によって見られる健康パラメータの改善は、抗生物質の投薬によって提供されるものよりも優れていた。
6)IL-1raの連続投与は、ブタに対していかなる有害な効果も有さなかった。
7)屠殺時においてP2背脂肪値が変化しないことによって見られるように、IL-1raは、屠体の品質を損なうことなく重量を改善した。
【0171】
実施例3
出血性の大腸菌に感染した離乳期ブタの健康を改善するための組換え型IL-1RAの輸送
本研究では、IL-1raが、出血性の大腸菌などの感染に曝露されたブタの健康を改善することが可能かどうかを決定した。さらなる目的は、IL-1raが離乳期に大腸菌に感染したブタの成長を改善することができるかどうかを決定することである。また、IL-1raが感染率を減少し、大腸菌に感染したブタの健康を改善することができるかどうかを示すように設計した。最後に、離乳期ブタにおける大腸菌感染症に対してIL-1raの予防能または治療能の評価を、現在の抗生物質治療と比較して決定できることが期待された。
【0172】
実験デザイン
平均体重5.4 kgの雄の離乳期ブタを、群の間の平均体重が同等になるように8群に割付した。ブタをそれぞれの処理群からの1回分を含む群ごとのブタ舎に収容した。ブタに固形飼料および水を自由に与えた。
【0173】
ブタに組換え生理食塩水、IL-1ra、または抗生物質アプラランを処理して、表3に概要を示すスケジュールに従って大腸菌をチャレンジした。生理食塩水または200μgのIL-1raは、1ml用量で筋肉内に輸送した。アプラランは、製造業者の説明書にしたがって12mg/kgの用量で経口によって輸送した。大腸菌は、108 cfu/mlを含む8 ml用量で経口投与した。表3に概要を示すように、大腸菌の初回チャレンジの-2日目、0日目、および+6日目に静脈穿刺によってブタから採血した。血液は、血液細胞数、差動的体細胞数、リンパ球サブセットの列挙、IgGレベル、およびサイトカイン産生を含む免疫パラメータに関してアッセイした。ブタの体重は-2日目、および6日目の試験終了時に測定した。
【0174】
それぞれのブタに関して、チャレンジ後2日目から6日目までの5日間、毎日糞試料を採取し;これらの試料をヒツジ血液寒天上で培養して大腸菌負荷を定量した。ヒツジ血液寒天上での増殖は、0〜5点として採点し(0は増殖を認めない、1は一次接種物での増殖を意味し、2は一次線条での増殖を意味し、3は二次線条における増殖を意味し、4は三次線条における増殖を意味し、および5は最終線条における大腸菌の増殖を意味する)で記録した。臨床兆候に関する指摘と共に正常、湿潤、または下痢として記入した。
【0175】
7日の実験終了時、ブタを安楽死させて、試料を、小腸(小腸の長さに沿って25%、50%および75%)、盲腸および大腸を含む消化管の異なる領域、ならびに糞からインサイチュウで採取した。これらの死後試料も上述のように、ヒツジ血液寒天上に播種して大腸菌負荷を定量した。
【0176】
(表3) ブタの大腸菌感染の予防薬としてのIL-1RAの有効性を検査する実験プロトコル

【0177】
結果
IL-1raまたはアプラランによって処理したブタは、生理食塩水を処理した対照のブタと比較して糞への大腸菌の排泄の減少を示した(図14)。アプラランによって処理したブタは、チャレンジ後2日目から5日目までの細菌の排泄を減少させ、一方IL-1ra処理したブタは、2日目から4日目までの細菌の排泄を減少させた。チャレンジ後6日目では、全ての群からの細菌排泄は同等であった。アプラランおよびIL-1ra処理の両方において、最終的な処理用量が輸送された3日後に、糞中の大腸菌の排泄は、生理食塩水の対照の水準に戻った。全体として、アプララン処理群は、全ての処理の中で最も少ない細菌排泄を示した。
【0178】
それぞれの群に関して全チャレンジ期間に対して記録された糞スコアは、生理食塩水処理対照と比較してアプララン処理ブタに関して糞排泄の80%減少を示したのに対し、IL-1ra処理ブタは、生理食塩水処理対照と比較して細菌排泄の37%減少を示した(図15)。
【0179】
商業的な状況において、感染したブタからの細菌の排泄が減少すればさらに、群れまたはブタ舎の他のメンバーにおける感染症をさらに減少させ、それによって離乳期ブタの健康を、したがって成長を改善するであろう。生産力の主要な予測は、離乳期の終わりの重量であるので、離乳期のブタの健康および成長を増強することにより、後の期の生産力が改善されるであろう。
【0180】
湿糞または下痢の存在などの糞の状態の変化として記録される臨床兆候は、IL-1raまたはアプラランを処理したブタにおいて減少した(図16)。IL-1raを処理したブタは、湿糞および下痢を記録した症例が、生理食塩水対照またはアプララン処理したブタより少なかった。アプラランを処理したブタは、生理食塩水対照より湿糞の記録がより少なかったが、チャレンジ後期間では下痢の発生の軽微な増加を示した(図16)。
【0181】
これらの臨床兆候を生理食塩水対照と比較して症状の減少百分率として記述した場合、IL-1ra処理が臨床兆候の64%減少を引き起こしたのに対し、アプラランは臨床兆候を27%減少させた(図17)。
【0182】
臨床徴候の結果は、IL-1raおよびアプラランがいずれも、大腸菌による感染症の外面的な兆候を減少させることができたことを示した。健康に関するこの測定において、IL-1raは、大腸菌感染症に対する現行の抗生物質治療であるアプラランを上回った。
【0183】
アプラランおよびIL-1ra処理はいずれも、生理食塩水処理対照と比較して消化管(GIT)の全ての領域における細菌負荷を減少させた(図18)。IL-1raを処理したブタでは、小腸および大腸において標本抽出した全ての領域について最低の培養スコアを記録した。IL-1raおよびアプララン処理したブタは、盲腸および糞から採取される試料について、同等の低い糞の培養スコアを有した。IL-1raの処理は、インサイチュウにおいて生理食塩水を処理した対照と比較して、小腸の前部において71%の大腸菌の減少、小腸の半ばにおいて51%減少、小腸の後方において47%、盲腸において39%、大腸において44%、および糞において23%の大腸菌の減少を生じた(図19)。
【0184】
全ての培養スコアをそれぞれのブタに関して記録して、群の平均総スコアを計算するために用いた場合(図20)、IL-1raを処理したブタは、可能性がある30点のうちスコアが10点未満であり、生理食塩水対照ブタに関しては17/30、およびアプララン処理ブタに関しては12/30であった。これらのデータを生理食塩水対照(図21)と比較して大腸菌培養スコアの減少百分率として表記した場合、IL-1raの予防的適用によって、消化管における大腸菌量は45%減少した。アプラランによる処理では、33%の腸の大腸菌コロニー形成を減らすことが可能なだけであった。
【0185】
これらの結果は、細菌負荷がIL-1ra処理ブタにおいて最も低いことを示し、若いブタにおける出血性大腸菌の制御に対する本調製物の価値をさらに強調する。
【0186】
大腸菌培養物に関する死後の結果を腸管における位置に基づいて分離すると、IL-1raおよびアプラランの作用に差が認められる可能性がある(図22)。小腸は分泌性の下痢が発現される部位であるため、小腸(前腸)における大腸菌細菌負荷は、疾患の重症度に相関する。IL-1raによる処理は、生理食塩水対照と比較して小腸における細菌負荷を55%減少させ、アプラランは小腸における細菌負荷を32%減少させた(図23)。後腸領域(盲腸および大腸)において、アプラランおよびIL-1ra処理に関して記録された細菌負荷は同様であり、生理食塩水の対照と比較して、それぞれ37%および42%の大腸菌の減少を生じた(図23)。
【0187】
IL-1raが前腸において細菌負荷を減少させることができることは、本処理によって出血性の大腸菌感染症に関連した疾患の重症度が減少する可能性があることを示唆した。実際に、これらの結果は、IL-1raによって処理したブタが、その他の処理と比較して減少した下痢の発病率を有したという疾患の臨床徴候に記録されたものを支持する(図16)。したがって、IL-1raは、ブタの生産に及ぼすこの疾患の有害な影響を制御するために、養豚業において現在投与されている抗生物質の代用または補助となる可能性がある。
【0188】
IL-1raおよびアプラランの、細菌排泄、臨床兆候、並びに死後の細菌負荷に対する同等の効果の概要を表4に示す。
【0189】
(表4) 若い離乳期ブタの出血性大腸菌感染の制御に対するIRAP(IL-1RA)およびアプラランの治療的な効果を比較する概要

【0190】
結論
1)IL-1raはブタの健康を改善した、すなわちIL-1raは、出血性大腸菌感染症が存在する場合の出血性下痢に関連した糞の変化に関して、疾患の臨床兆候を減少させた。
2)IL-1ra処理によって生じた健康の改善は、ブタにおける出血性大腸菌を治療する現行の方法である抗生物質アプラランによる処理によって生じた改善と同等であるか、場合によっては大きかった。
3)IL-1ra処理によって、生理食塩水処理対照と比較して感染の経過における糞中の細菌排泄が減少した。IL-1raを処理したブタは、チャレンジ後3/5日において生理食塩水対照より有意に少ない細菌排泄を示した。このような結果は、環境における細菌負荷を減少させることによって、感染率が減少する可能性があることを示唆した。
4)IL-1ra投与の効果によって、生理食塩水処理対照と比較してGITの全ての領域において細菌数が減少した。
5)有意に、IL-1raは、大腸菌感染症の経過において分泌性下痢が通常存在する部位である小腸(前腸)における細菌負荷を55%減少させた。小腸における細菌負荷は、疾患の重症度に関連しているため、IL-1raは、疾患の進行および病理に対して有意な治療効果を有する可能性がある。
6)IL-1ra処理は、小腸における重要な部位に存在する大腸菌の他に、疾患の臨床兆候である死後の腸に存在する大腸菌レベルの減少において、畜産業において現在用いられている抗生物質治療であるアプラランを上回った。
【0191】
実施例4
ブタ赤痢Brachyspira(Serpulina)hyodysenteriaeを引き起こす腸内炎症性病原体に感染した離乳期のブタの健康および生産性を改善するための組換え型IL-1raの輸送
本実施例の一つの目的は、ブタ赤痢を引き起こす腸の炎症性病原体、Brachyspira(Serpulina)hyodysenteriaeに感染したブタの健康を、IL-1raが改善できるか否かを決定することであった。さらなる目的は、ブタ赤痢をチャレンジした状態で、IL-4がブタの成長速度を改善できるか否かを決定することであった。
【0192】
実験デザイン
平均開始体重が6.5 kgの雄のブタを、ブタ8匹からなる処理群に割付した。ブタを群ごとのブタ舎に収容して、それぞれのブタ舎は、それぞれの処理群から同じ群を含む。1群8匹を別室に収容して、無処理対照として感染させなかった。ブタには固形飼料と水とを自由に与えた。
【0193】
ブタ赤痢をチャレンジする前に、ブタを200μgの組換え型IL-1raまたは1mlの生理食塩水によって筋肉内注射を介して処理した。リンコシンは、製造業者の説明書にしたがって2mlの筋肉内注射として輸送した。サイトカイン、抗生物質、およびチャレンジは、表5に概要した実験プロトコルに記載されている間隔で行った。0日目、1日目および2日目に、細胞約108個を含む対数増殖期のスピロヘータ培養物120 mlを1回経口投与として与えて、ブタにBrachyspira hyodysenteriaeを感染させた。
【0194】
糞の綿棒標本および血液試料を、表5に記載する間隔でそれぞれのブタから採取した。糞の綿棒標本は、スピロヘータの有無に関して培養した。血液試料は、上記の実施例3に記載したように免疫学的パラメータに関してアッセイした。ブタは実験の間毎週体重を測定し、これは初回チャレンジ後19日および20日に安楽死によって終了した。後腸領域からの死後の綿棒標本をスピロヘータの存在に関して培養して、消化管組織の全体の病態を記入した。
【0195】
(表5) ブタ赤痢感染症の予防的治療としてのIL-1raの有効性を評価する実験手順のプロトコル

【0196】
死後の後腸から採取したスピロヘータ培養物は、IL-1raによってブタを処理すると、生理食塩水対照と比較して腸に存在するスピロヘータ数が減少することを示している(図24)。IL-1raはまた、生理食塩水処理対照と比較して、盲腸、前大腸、後大腸、および糞におけるスピロヘータ培養スコアを減少させることができた。予想通りに、ブタ赤痢によってチャレンジされなかったブタは、死後のこれらの後腸または糞中にスピロヘータを有さなかった(データ示さず)。
【0197】
生理食塩水処理ブタと比較すると、IL-1ra処理によって、前結腸では15.8%減少、後結腸では47.1%、および糞中のスピロヘータでは42.1%減少を生じた(図25)。IL-1ra処理の全効果は、GITの全体にわたるスピロヘータの27%の減少であった。
【0198】
腸におけるスピロヘータ数の減少の他に、IL-1raによる処理はまた、糞の状態によって示される感染症に関連した臨床兆候を減少させた。図26は、IL-1ra処理ブタが、生理食塩水処理対照と比較して、赤痢に罹患した糞(血液で湿り、粘液性のもの)を示す兆候がより少なかったことを示している。
【0199】
IL-1raによる処理によって、生理食塩水の処理した対照と比較して、前炎症性サイトカインTNF、IL-8、およびIL-1の産生を減少させることができた(図27、28、および29)。重要なことに、前炎症性サイトカインは、動物の疾患行動と関係し、集中的に収容された家畜類において見られる生産力の減少に関係している。このIL-1raの抗炎症性の能力は、成長において長期の改善につながるであろう。実際に、このような結果は、上記の実施例1、2、および3に記載されている。
【0200】
さらに、ブタ赤痢の臨床症状は、おそらく前炎症性サイトカインなどの炎症性メディエータによって悪化する慢性炎症性の病態である。IL-1raがこれらの炎症性メディエータの産生を減少させる能力は、ブタ赤痢感染と関係する病態の減少に役割を果たすであろう。
【0201】
このような結果により、IL-1raがブタの健康に対するブタ赤痢感染の有害な効果を減少することが可能であることを確認した。IL-1raは、免疫系に対する抗炎症性の効果を有することが既知であり、したがって、赤痢と関係する腸の炎症性病理変化の減少は、このサイトカインの抗炎症性およびスピロヘータ負荷の減少に起因するのであろう(図24に示すとおり)。
【0202】
結論
1)IL-1raによるブタの処理によって、生理食塩水処理と比較して死後の後腸および糞中に存在するスピロヘータ数が減少した。
2)IL-1raは、糞の状態によって検出されるように、生理食塩水対照と比較してブタ赤痢感染症の臨床症状を減少させた。
3)IL-1raによるブタの処理は、障害された成長および生産力と関係する前炎症性サイトカインの産生の減少を生じた。
4)IL-1raは、2つの腸内の感染モデル:溶血性大腸菌およびBrachyspira(Serpulina)hyodysenteriae(ブタ赤痢)において、ブタの健康を改善することが示された。両方のモデルにおける健康の改善は、感染の間の臨床状態の減少によって記載された。大腸菌モデルにおいて、健康の改善は、死後に感染関連した病態の減少を伴った。ブタ赤痢モデルにおいては、前炎症性サイトカインのレベルの減少にも留意されたい。大腸菌に曝露されたブタの健康を改善するIL-1raによる予防的治療の能力は、抗生物質療法の現在の業界標準の成績と同様であった。したがって、IL-1raはブタにおける大腸菌およびブタ赤痢のための抗生物質、または予防薬に対する処理の、代わりのもの、または補充となる可能性を有する。健康プロモーターとしてのIL-1raの潜在性は、抗生物質の薬物療法との同時適用によってさらに増強される。
【0203】
実施例5
アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)に感染したブタにおける成長および健康を改善するためのプラスミドおよび組換え型IL-1raの輸送
本実施例の目的は、IL-1raが炎症性肺病原体(アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)(App))に感染したブタの健康を改善することができるかどうか決定することである。さらに、もう一つの目的は、IL-1raがAppをチャレンジした条件下でブタの成長速度を改善することができるかどうかを決定することである。さらに、本実施例は、IL-1raのプラスミドDNAまたは組換え輸送がより有効であるかどうかについて決定することを目的とした。
【0204】
実験デザイン
表6において概説したように、開始時の平均体重が52 kgである雄のブタを5個の処理群に割付した。ブタを群ごとに収容して、それぞれのブタ舎は、それぞれの処理群から同じ群を含んだ。それぞれの投与群およびそれぞれブタ舎の開始重量は、トライアルの開始前に同じであった。ブタには固形飼料と水とを自由に与えた。
【0205】
組換え型IL-1raおよび生理食塩水を1ml用量として耳の後に皮下投与した。プラスミドを1 ml用量として後肢に筋肉内投与した。フルニクスは、製造元の説明書に従って、2 ml用量として頚部に筋肉内投与した。投与の時間割の概要を下記の表6に示す。
【0206】
(表6) アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)感染症の予防的治療としてのIL-1RAの有効性を評価するための、サイトカイン実験において適用された処理および用量(1群あたりN=4)

【0207】
表7に記述したようにブタに組換え型サイトカイン、フルニクス、またはプラスミドを処理した。チャレンジに関する処理の時期を表9に記載する。ブタを麻酔して、0日目に7.5×105 pfuを気管内に感染させた。
【0208】
チャレンジ後0時間、24時間、および14日目に静脈穿刺によってブタから血液を採取した。前述したように免疫学パラメータに関して血液をアッセイした。ブタは、プラスミドの輸送からチャレンジの2週後の間に毎週重量を計測した。
【0209】
(表7) アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)感染症の予防的治療としてのIL-4の有効性を評価するための実験技法のプロトコル

【0210】
結果
チャレンジの週の間、IL-1raは、生理食塩水処理対照と比較してブタの成長を改善した(図30)。生理食塩水、フルニクス(非ステロイド性の抗炎症剤、NSAID)、または対照プラスミドを処理したブタは体重減少を示したが、IL-1raまたはプラスミドIL-1raを処理したブタは、チャレンジの週の間に積極的な成長を示した。チャレンジ後の週において、全ての群のブタの体重が増加したが、また、さらに組換え型IL-1raを処理したブタは、その他の処理群のブタよりも平均でより体重が増加した。生理食塩水を処理したブタはチャレンジ後2週間で有意に回復したが、IL-1raを処理したブタは、体重が増加し続けた。プラスミドまたはフルニクスを処理したブタは、チャレンジの2週目において全ての群の中で成長が最も悪かった。
【0211】
Appをチャレンジ後の2週間に及ぶ体重増加(図31)は、生理食塩水処理対照と比較して、組換え型IL-1ra処理によって体重が増加したことを示したが、この結果は統計学的に有意ではなかった。屠殺時に体重の差を認めた。フルニクスおよびプラスミド対照は、生理食塩水処理対照と比較して、成長に関して処理の成績が最も悪かった。IL-1raプラスミドでは、チャレンジ後の2週間の期間にわたる成長の点でプラスミド対照群よりも増強を示した(図31)。同様の成績パターンは、毎日の増加割合についても記述されており、組換え型IL-1raによって処理したブタについては、生理食塩水を処理した対照ブタについての1日433gと比較して、1日平均667g増加している(図32)。
【0212】
組換え型IL-1raによる処理では、生理食塩水対照を超えて53.8%の重量増加の改善を生じたが、NSAIDフルニクスによる処理では、84.6%の重量増加の減少が生じた(図33)。プラスミド処理では、一般に生理食塩水対照よりも重量増加の低下がもたらされたが、IL-1raプラスミドは、そのプラスミド対照と比較して、100%まで重量増加を改善した(図34)。
【0213】
前炎症性サイトカイン、TNFαおよびIL-6は、Appによるチャレンジ後いくつかの群において上昇した。興味深いことに、NSAIDフルニクスは、TNFαの産生を阻害できず(図35)、これはこの群において認められる成長不良を説明するために役立つかも知れない。組換え型IL-1ra、プラスミド対照、およびIL-1raプラスミドは全て、チャレンジ後13日において、チャレンジレベルと比較してTNFαのレベルが減少した。また、これらの3つの処理では、チャレンジ後13日で有意に生理食塩水を処理したブタおよびフルニクスを処理したブタよりもTNFα産生レベルが減少した(p<0.05)。
【0214】
全ての処理は、生理食塩水対照と比較してチャレンジ後24時間でIL-6の産生を減少させた(図36)。残念なことに、試料採取の誤りによってAppチャレンジ後13日で、IL-6のデータを生理食塩水処理群から回収できなかった。チャレンジ13日後、プラスミドまたは組換え型のいずれかとしてIL-1raを処理したブタは、フルニクスを処理したブタと比較して前炎症性サイトカインであるIL-6のレベルが減少した。
【0215】
抗炎症性サイトカイン処理は、循環中の前炎症性サイトカインレベルの減少を引き起こし、場合によっては成長を改善させたが、前炎症性サイトカインと成長障害との関係はなおも不明である。前炎症性サイトカインレベルが減少したブタの群は、一般に、チャレンジ後の最初の週において成長阻害が最も少なかった群でもあった。さらなる研究により、このチャレンジモデル下においてブタの重量減少の機構を解明することが必要とされる。
【0216】
ブタの成長の改善の他に、本発明者らは、サイトカイン処理がAppチャレンジに曝露されたブタの健康を改善しうることを発見した。図37のデータは、チャレンジの最初の週に行われた30回の症状観察の平均臨床スコアを示す。それぞれのブタが示した嗜眠、咳、および呼吸パラメータのような症状の重症度は0〜8のスコアをつけて、死亡または安楽死させたブタは、それぞれのその後の症状観察時に任意にスコア8を割り当てた。組換え型IL-1raを処理したブタは、生理食塩水処理対照と比較して疾患の臨床兆候をわずかに減少させた(p<0.05、図37)。プラスミドとして投与したIL-1raも同様に、生理食塩水およびプラスミド対照ブタと比較して臨床症状を減少させた。生理食塩水またはフルニクスのいずれかによって処理したブタは、全ての投与群のApp疾患で最も大きな臨床徴候を示した。
【0217】
組換え型として投与したIL-1raは、生理食塩水によって処理したブタと比較して臨床症状の存在を72%の減少を引き起こした(図38)。プラスミド型で投与したIL-1raは、生理食塩水処理対照と比較して52%の減少、およびプラスミド処理対照と比較して31%の減少を生じた(図38)。プラスミドまたは組換え型として投与したIL-1raは、App感染症の臨床症状を減少させる上でフルニクスより有効であった。
【0218】
試験終了時にブタを安楽死させて、肺を死後の剖検のために摘出した。肺を胸膜炎に関して0〜5までのスコアをつけて(図39および40)、罹患した肺の重量を測定して、肺の全重量の百分率として表記することによって胸膜肺炎の程度を決定した(図41および42)。フルニクスおよびIL-1raを処理したブタは、生理食塩水対照より胸膜炎が少なかった(図39)。プラスミドとして投与してIL-1raを処理したブタは、これらのプラスミド処理した対照よりも胸膜炎が少なかったが、これらの胸膜炎のレベルは、生理食塩水処理対照のものと同様であった(図39)。組換え型IL-1raは、生理食塩水を処理した対照と比較して、22%胸膜炎のレベルを減少したが、フルニクスによる処理では、55.6%まで胸膜炎を減少した(図40)。プラスミドとして投与したIL-1raは、生理食塩水を処理した対照と比較して、5.6%まで胸膜炎を減少し、プラスミド対照と比較して39.3%まで減少した(図40)。
【0219】
App病変に罹患した肺の百分率は、生理食塩水処理対照と比較してフルニクスまたは組換え型IL-1raのいずれかを処理したブタにおいて大きく減少した(図41)。生理食塩水の対照群およびプラスミド対照群の両者では、同様のレベルの破壊の影響を受けた肺を有した。IL-1raプラスミドは、生理食塩水およびプラスミド対照群と比較したときに、App病変に罹患した肺の割合を減少させたが、プラスミドIL-1raがApp疾患の病態を減じる能力は、組換えまたはフルニクスとして輸送されるIL-1raほど明白ではない(図41)。これらの結果は、生理食塩水を処理した対照と比較して、IL-1raについての73.9%、フルニクスについての64.1%、およびプラスミドIL-1raについて36.7%の影響を受けた肺質量の減少を反映する(図42)。
【0220】
結論
1)組換え型IL-1raは、Appチャレンジの最初の週の間に生理食塩水処理対照と比較してブタの成長を大きく増加させることができた。IL-1raを処理したブタは、チャレンジの2週間後である実験終了時に、引き続いて生理食塩水処理ブタより4.8 kg重く、これは成長が69%改善したことを表す。フルニクスを処理したブタは、2週間のチャレンジ期間において成長が最も悪かった。
2)組換え型IL-1ra、プラスミド対照、およびプラスミドIL-1raは、成長成績の不良に関連している前炎症性サイトカインTNFαおよびIL-6の産生を減少させることができた。フルニクスはIL-6の産生のみを減少させることができた。
3)IL-1raは、プラスミドとして投与したIL-1raと同様に、チャレンジの間疾患の臨床症状の重症度を減少させた。組換え型IL-1raは、臨床症状を72%減少したが、プラスミドIL-1raは、生理食塩水の処理と比較して、臨床症状を52%まで減少した。
4)フルニクスは、死後に認められた胸膜炎のレベルを減少させることができた。IL-1raは、生理食塩水の処理と比較して、22%まで胸膜炎を減少した。
5)フルニクス、IL-1ra、およびプラスミドIL-1raは全て、App病変に罹患した肺の割合を減少させた。組換えまたはプラスミドIL-1raによる処理では、Appの影響を受ける肺質量をそれぞれ74%および37%まで減少させた。
6)IL-1raを有するブタの処理は、Appチャレンジに曝露されたブタの健康および生産力を改善した。
7)組換え型IL-1raの輸送は、プラスミドIL-1raの輸送よりも有効であった。
【0221】
実施例6
アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)に感染させたブタの健康および成長を改善するための、低および高用量の組換え型IL-1RA、並びにIL-4と組み合わせた予防的輸送
本実施例の目的は、IL-1raの用量を増大することが、炎症性肺病原体(アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)(App))に感染させたブタの成長を改善すること、および病態を減少することに対してより優れた効果を生じることができるかどうかを決定することであった。さらに、もう一つの目的は、IL-1raがもう一つの抗炎症性サイトカインのIL-4と相乗作用して、Appを感染させたブタの成長に対するサイトカイン処理の有益効果を改善するたことができるかどうかを決定することであった。
【0222】
実験デザイン
表8において記載したように、開始時の平均体重が56 kgである雄のブタを5つの処理群に割付した。ブタを群ごとにブタ舎に収容して、それぞれのブタ舎は、それぞれの処理群から同じ群を含んだ。ブタには固形飼料と水とを自由に与えた。それぞれの投与群およびそれぞれのブタ舎の開示重量は、試験の開始前に同じであった。
【0223】
組換え型IL-1ra、IL-4、および生理食塩水を2 ml用量として耳の後に皮下投与した。したがって、相乗作用群のブタには、1用量の各々のIL-1raおよびIL-4を受けさせた。チャレンジの24時間前に、チャレンジの時点で、およびAppによるチャレンジの24時間後に、ブタをIL-1ra、IL-1ra+IL-4、または生理食塩水によって処理した。ブタを麻酔して、0日目に7.5×105 pfuを気管内に感染させた。
【0224】
チャレンジ後-24時間、0時間、24時間、および3週目に静脈穿刺によってブタから血液を採取した。先に記述したように免疫学パラメータに関して血液をアッセイした。-1日、10日、および3週にブタの重量を測定した。
【0225】
(表8) アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)感染症の予防的治療としてのIL-1RAおよびIL-1RA+IL-4の異なる用量の有効性を評価するためのサイトカイン試験に適用される治療および用量(1群あたりN=8)

【0226】
結果
実施例5とは異なり、生理食塩水によって処理した動物は、Appによるチャレンジ初期の間に重量減少を受けなかった(図30を図43と比較する)。この結果にもかかわらず、高用量のIL-1raによって処理したブタにおいて、成長の改善が見られ(図43)、100g/日を超える増加割合の増大に相当する。相乗作用を調査するためにIL-1raおよびIL-4の両方を適用すると、生理食塩水の処理したブタと比較して、Appチャレンジの最初の10日間に成長反応の抑制を生じた。群内の変動は、高く、大きなエラー・バーを占め、この場合は統計的有意差を欠いた。しかし、実施例5において見られるIL-1raによる重量増加の改善傾向は、この実験でも再現された。
【0227】
チャレンジの最後の10日において、低用量のIL-1raまたは低用量のILlra+IL-4によって処理したブタは、それぞれ1250g/日および1306g/日で、生理食塩水を処理した対照についての1079g/日と比較して、優れた増加割合を示した(図44)。高用量のIL-1raによって処理したブタは、1170g/日で増加し、生理食塩水処理についての増加の割合より高かった。高い相乗作用用量は、Appチャレンジ後期の間に、より低い重量増加を生じた。
【0228】
低用量または高用量のIL-1raおよび低用量のIL-1ra+IL-4によって処理したブタは、生理食塩水を処理した対照よりも高い重量増加を示した(図45)。21日のチャレンジ期間の間、低用量もしくは高用量のIL-1raによって処理したブタ、または低用量の相乗作用処理したものでは、それぞれ17.9kgおよび17kg増加したが、生理食塩水を処理した対照では、15.75kgだけ増加した(図45)。したがって、IL-1raまたは低用量のIL-1ra+IL-4による処理では、生理食塩水を処理した対照と比較して、それぞれ13.5%および7.9%まで成長を改善した(図46)。
【0229】
実施例5に示すように、組換え型IL-1raによるブタの処理によって、死後における病態の結果の記録として疾患重症度の減少を引き起こした(図39、40、41、および42)。現在の実施例において、高用量でのIL-1raの適用は、App病変による影響を受ける肺の量を減少した(図47)。同様に、低用量のIL-1raおよびIL-4の組み合わせの輸送は、生理食塩水の処理と比較して、影響を受ける肺重量を減少した。死後に見られる胸膜炎の程度は、高用量のIL-1raおよび高用量の相乗作用処理によって減少していた(図48)。
【0230】
前炎症性サイトカインIL-8の産生は、その他の処理と比較して、IL-1raおよびIL-1ra+IL-4(図49)の高用量処理によって非常に減少していた。IL-8は、肺に好中球を動員し、その後の好中球の脱顆粒は、App感染の病態の主要因子であると思われる。したがって、肺組織におけるIL-8レベルの減少は、病態の減少を生じ、App感染に曝露されたブタの健康を改善する可能性が高い。同様に、前炎症性のもう一つのサイトカインTNFαの産生は、肺組織において高用量のIL-1raまたは低用量のIL-1ra+IL-4(図50)による処理によって阻害された。これらの結果は、抗炎症性の機構が、Appチャレンジ条件下でのブタの成長および健康に対するこれらの処理の有益な効果に役割を果たしているであろうことを示唆する。
【0231】
結論
1)高用量のIL-1raは、チャレンジ初期に成長を改善したが、低用量または高用量のIL-1ra、および低用量のIL-1ra+IL-4は、チャレンジ後期の成長を改善した。
2)低用量または高用量のIL-1ra、および低用量のIL-1ra+IL-4は、全てのチャレンジ期間にわたって重量増加の増大を生じた。
3)高用量のIL-1raおよび低用量のIL-1ra+IL-4は、App病変によって影響を受ける肺の量を減少した。高用量のIL-1raおよびIL-1ra+IL-4は、胸膜炎スコアを減少した。
4)高用量のIL-1raおよびIL-1ra+IL-4は、肺組織における前炎症性サイトカインの産生の減少によって確認される抗炎症性効果を有した。
5)高用量のIL-1raは、病態に関係する肺におけるIL-8の産生を有意に減少させた。
6)これらの結果は、Appを感染する前に、および感染時に与えられたIL-1ra処理による成長の改善および病態の減少を見出した実施例5の結果を支持する。
【0232】
実施例7
アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)に感染したブタの健康および成長を改善するための低用量および高用量の組換え型IL-1RAの治療的な輸送
本実施例の目的は、アクチノバチルス・プリューロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)(App)の感染が確立された後のIL-1raの治療的な輸送は、感染を抑制して、ブタの成長を改善することができるかどうかを決定することであった。
【0233】
実験デザイン
開始時の平均体重が34.6kgである雄のブタをそれぞれ9匹のブタの4投与群に割付した。処理は、生理食塩水、kgにつき2μgのIL-1ra、kgにつき10μgのIL-1ra、およびApp感染のための現在の臨床的な処理のエクセナル(Excenel)であった。ブタは、3匹のブタ舎に収容し、それぞれ3つ複製する。ブタには固形飼料と水とを自由に与えた。それぞれの投与群およびそれぞれのブタ舎の開始重量は、試験開始前に同じであった。
【0234】
ブタを麻酔して、0日目に7.5×105 pfuを気管内に感染させた。組換え型IL-1raおよび生理食塩水を2 ml用量として耳の後に皮下投与した。エクセナルは、製造元の説明書に従ってブタに投与した。ブタには、Appでチャレンジ後の24時間、48時間、および1週間においてIL-1ra、生理食塩水、またはエクセナルを処理した。
【0235】
感染後0時間、24時間、1週間2週間に静脈穿刺によってブタから血液を採取した。先に記述したように免疫学パラメータに関して血液をアッセイした。ブタは、チャレンジ前、およびチャレンジ後の6日および13日に重量を測定した。
【0236】
結果
Appチャレンジ後の2週において増加した平均重量は(図51において図示してある)、低用量のIL-1raによって処理したブタが、その他の処理よりも多く重量が増加したことを示す。低用量のIL-1raによって処理したブタは、チャレンジ2週において、生理食塩水を処理した対照についての4.4kg、および抗生物質処理についての4.9kgの重量増加と比較して、平均5.7kg増加をした(図51)。
【0237】
さらに、IL-1ra処理は、生理食塩水の処理(図52)と比較して、抗生物質エクセナルで処理した毎日の飼料摂取を減少した。低用量および高用量のIL-1raによって処理したブタは、それぞれ1日あたり1.7および1.8kgの飼料を消費したが、エクセナルによって処理したブタは、2kgを消費し、および生理食塩水によって処理したブタは、2.2kgを消費した。
【0238】
重量増加の改善および飼料摂取の減少の併用効果は、生理食塩水の対照と比較して、低用量IL-1raによって処理したブタにおいて飼料転化率(FCR、飼料:増加)の改善を生じた(図53)。IL-1ra処理では、生理食塩水の処理についての2.1と比較して、FCRを1.6に減少した。
【0239】
低用量のIL-1raによって処理したブタは、殺されたAppの存在下において、リンパ球の増殖反応の改善をもたらす傾向があった(図54)。リンパ球増殖アッセイ法では、リンパ球が特定の抗原に反応する能力を測定する。この場合、抗原は、感染と相同であり、したがってインビトロでの高い増殖反応は、インビボでのApp病原体の認識およびこれに対する動員の増大を表す。リンパ球増殖反応において見られる傾向は、FCRのものに従い、殺されたAppに対して最も強いインビトロ反応を生じたブタのでは、FCRの減少によって証明されるとおり最も優れた飼料効率を有した。したがって、IL-1raは、特異的な免疫応答性を増強することによって、飼料効率および重量増加を改善するのであろう。
【0240】
Appに感染させたブタに対する低用量のIL-1raの治療的な輸送により、その他の処理と比較して、肺組織における前炎症性サイトカインIL-8の産生を減少した(図55)。低用量IL-1raおよびエクセナル処理でも、生理食塩水を処理した対照と比較して、尾側-縦隔のリンパ節(これは肺を排出する)におけるIL-8の産生を減少した(図56)。また、これらの結果は、IL-1raが、防御免疫応答および有害な炎症反応を調整し、これがAppに感染したブタの重量増加および飼料変換効率の改善に寄与するのであろうことを示唆する。
【0241】
結論
1)治療的に適用される低用量のIL-1raは、抗生物質処理または生理食塩水と比較して、Appに感染するブタの重量増加を改善した。
2)治療的に投与されるIL-1raは、その他の処理と比較して飼料摂取を減少させた。
3)IL-1raの治療的な投与は、Appに感染したブタの飼料効率を非常に改善した。
4)Appに感染したブタにおけるIL-1raの治療的な輸送は、炎症反応を減弱させると共に、細胞免疫反応の増強を生じた。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】飼料中に抗生物質を添加した場合または添加しなかった場合の、IL-1raまたは生理食塩水によって処理したブタについての離乳期の最初の4週の間の増加割合を示す。(バーは群の平均値および標準誤差を示す)。
【図2】飼料中に抗生物質を添加した場合または添加しなかった場合の、IL-1raまたは生理食塩水によって処理したブタについての離乳期の5〜6週の間の増加割合を示す。(バーは群の平均値および標準誤差を示す)。
【図3】飼料中に抗生物質を添加した場合または添加しなかった場合の、IL-1raまたは生理食塩水によって処理したブタの離乳期(7日-42日)並びに成長期(79日および93日)の間の増加割合を示す。
【図4】飼料中に抗生物質を添加した場合または添加しなかった場合の、IL-1raまたは生理食塩水によって処理したブタの仕上げ期の間の増加割合を示す。
【図5】離乳期の間に、飼料中に薬剤を添加した場合または添加しなかった場合の、生理食塩水またはIL-1raによって処理したブタの屠殺時の平均重量を示す。
【図6】離乳期の間に、飼料中に薬剤を添加した場合または添加しなかった場合の、生理食塩水またはIL-1raによって処理したブタについての平均仕上げ可食部体重(暖かい屠体の重量)を示す。
【図7】離乳期の間に、飼料中に薬剤を添加した場合または添加しなかった場合の、生理食塩水またはIL-1raによって処理したブタについての飼料転換率を示す。飼料転換率は、仕上げ期(93日〜133日)を通じて算出した。
【図8】IL-1raまたは生理食塩水のいずれかによって治療され、ゼロ、減少レベル、および正常レベルの抗生物質の投与とともに提供されたブタの離乳期終了後の平均重量を示す。
【図9】IL-1raまたは生理食塩水によって治療され、ゼロ、減少レベル、および正常レベルの抗生物質の投与とともに提供されたブタの、重量減少の発病率および死亡率に関する離乳期の間の生産減少を示す。
【図10】IL-1raまたは生理食塩水によって治療され、ゼロ、減少レベル、および正常レベルの抗生物質の投与とともに提供されたブタの離乳期終了時の全群の重量を示す。
【図11】IL-1raまたは生理食塩水のいずれかによって治療され、ゼロ、減少レベル、および正常レベルの抗生物質の投与とともに提供されたブタの成長期終了時の平均重量を示す。
【図12】IL-1raまたは生理食塩水のいずれかによって治療され、ゼロ、減少レベル、および正常レベルの抗生物質の投与とともに提供されたブタの仕上げ期終了時の平均重量を示す。
【図13】IL-1raまたは生理食塩水のいずれかによって治療され、ゼロ、減少レベル、および正常レベルの抗生物質の投与とともに提供されたブタの屠殺時のP2背部脂肪測定を示す。
【図14】大腸菌を初回チャレンジ後5日目の生理食塩水、IL-1ra、またはアプラランによって処理したブタから収集した糞から培養した大腸菌を示す。データ点は、群の平均値と標準誤差を示す。
【図15】IL-1raまたはアプラランのいずれかによって処理したブタにおける、生理食塩水の対照と比較した、大腸菌チャレンジ後5日間の総糞培養スコアの割合の減少を示す。
【図16】IL-1ra、生理食塩水、またはアプラランによって処理したブタにおける、大腸菌チャレンジ後5日間の下痢および湿糞の記録を示す。バーは各群の総記録を示す;各群の最大記録は40である。
【図17】生理食塩水の対照と比較して、IL-1raまたはアプラランによって処理したブタの大腸菌感染の臨床徴候(糞便の状態)の割合の減少を示す。
【図18】IL-1ra、生理食塩水、またはアプラランによって処理したブタにおける、死後の消化管に沿って異なる領域で採取した試料からの大腸菌培養スコアを示す。SIは小腸である。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図19】IL-1raまたはアプラランのいずれかによって処理したブタにおける、生理食塩水処理した対照と比較した、死後の大腸菌培養スコアの割合の減少を示す。
【図20】IL-1ra、生理食塩水、またはアプラランによって処理したブタにおける、死後の消化管の全ての領域からの総大腸菌スコアを示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図21】生理食塩水の対照と比較して、IL-1raまたはアプラランによって処理したブタにおける、死後の腸に存在する大腸菌の総レベルの割合の減少を示す。
【図22】IL-1ra、生理食塩水、またはアプラランによって処理したブタの前腸および後腸からの死後の大腸菌培養スコアを示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図23】生理食塩水の対照と比較した、IL-1raまたはアプラランによって処理したブタの前腸および後腸領域から得られた大腸菌培養スコアの割合の減少を示す。
【図24】IL-1raまたは生理食塩水によって処理したブタの死後の消化管に沿って異なる領域で採取した試料からのスピロヘータ培養スコアを示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図25】生理食塩水の対照と比較した、IL-1raによって処理したブタの死後のスピロヘータ培養スコアの割合の減少を示す。
【図26】生理食塩水またはIL-1raによって処理し、ブタ赤痢をチャレンジしたブタの死後の糞便状態を示す。
【図27】IL-1raまたは生理食塩水によって処理し、ブタ赤痢をチャレンジしたブタの末梢血中の前炎症性サイトカインTNFαのmRNAの発現を示す。
【図28】IL-1raまたは生理食塩水によって処理し、ブタ赤痢をチャレンジしたブタの末梢血中の前炎症性サイトカインIL-8のmRNAの発現を示す。
【図29】IL-1raまたは生理食塩水によって処理し、ブタ赤痢をチャレンジしたブタの末梢血中の前炎症性サイトカインIL-1のmRNAの発現を示す。
【図30】組換え型IL-1ra、プラスミドIL-1ra、NSAIDフルニクス、プラスミド対照、または生理食塩水の対照によって処理し、その後Appをチャレンジしたブタの2週の間の平均体重増加を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図31】生理食塩水、フルニクス、組換え型IL-1ra、プラスミド対照、またはプラスミドIL-1raによって処理したブタにおいて、Appをチャレンジした14日間の総重量増加を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図32】生理食塩水、フルニクス、組換え型IL-1ra、プラスミド対照、またはプラスミドIL-1raによって処理したブタにおいて、Appをチャレンジした14日間の毎日の増加割合を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図33】フルニクスまたはIL-1raのいずれかによって処理し、その後Appを14日間チャレンジしたブタの生理食塩水の対照と比較した、重量の変化割合を示す。
【図34】IL-1raプラスミドによって処理し、その後Appを14日間チャレンジしたブタの生理食塩水の対照およびプラスミド対照と比較した、重量の変化割合を示す。
【図35】生理食塩水、フルニクス、組換え型IL-1ra、プラスミドIL-1raのプラスミド対照によって処理し、その後Appをチャレンジしたブタの血清中のTNFαタンパク質のレベルを示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図36】生理食塩水、フルニクス、組換え型IL-1ra、プラスミド対照、またはプラスミドIL-1raによって処理し、その後Appをチャレンジしたブタの末梢血中の前炎症性サイトカインIL-6のmRNAの発現を示す。NSは、その時点において試料がないことをいう。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図37】生理食塩水、フルニクス、組換え型IL-1ra、プラスミド対照、またはプラスミドIL-1raによって処理し、その後Appをチャレンジしたブタの、チャレンジの最初の週での症状観察30回のApp疾患の臨床徴候の存在を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。最大の可能性のあるスコアは、240である。
【図38】フルニクス、組換え型IL-1ra、またはプラスミドIL-1raで処理し、Appをチャレンジしたブタの、関連した対照群と比較した、疾患の臨床徴候の割合の減少を示す。
【図39】生理食塩水、フルニクス、組換え型IL-1ra、プラスミド対照、またはプラスミドIL-1raによって処理し、Appをチャレンジしたブタにおける、胸膜炎スコア(0〜5)として表記した剖検時の胸膜炎の程度を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図40】フルニクス、組換え型IL-1ra、またはプラスミドIL-1raによって処理し、Appをチャレンジしたブタにおける、関連した対照と比較した、胸膜炎の割合の減少を示す。
【図41】生理食塩水、フルニクス、組換え型IL-1ra、プラスミド対照またはプラスミドIL-1raによって処理し、Appをチャレンジしたブタにおける、重量あたりの影響を受けた肺の割合として表記した剖検時の胸膜肺炎の程度を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図42】フルニクス、組換え型IL-1ra、またはプラスミドIL-1raによって処理しAppをチャレンジしたブタにおける、関連した対照と比較した、影響を受けた肺質量の割合の減少を示す。
【図43】生理食塩水、低もしくは高用量のIL-1ra、またはIL-1ra+IL-4(相乗作用)によって処理したブタにおける、Appチャレンジの最初の10日間の毎日の増加割合を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図44】生理食塩水、低もしくは高用量のIL-1ra、またはIL-1ra+IL-4(相乗作用)によって処理したブタにおける、Appチャレンジの第2の10日間の毎日の増加割合を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図45】生理食塩水、低もしくは高用量のIL-1ra、またはIL-1ra+IL-4(相乗作用)によって処理したブタにおける、Appチャレンジの全21日間に増加した総重量を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図46】低もしくは高用量のIL-1ra、またはIL-1ra+IL-4(相乗作用)によって予防的に処理したブタにおける、Appチャレンジの21日間にわたって生理食塩水処理した対照と比較した、重量増加を示す。
【図47】生理食塩水、低もしくは高用量のIL-1ra、またはIL-1ra+IL-4(相乗作用)によって処理したブタにおける、Appチャレンジの全21日間の総肺重量の割合として記載した、App傷害によって影響を受けた肺の量を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図48】生理食塩水、低もしくは高用量のIL-1ra、またはIL-1ra+IL-4(相乗作用)によって処理したブタ由来の肺における、Appチャレンジの全21日間の胸膜炎スコアを示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図49】生理食塩水、低もしくは高用量のIL-1ra、またはIL-1ra+IL-4(相乗作用)によって処理したブタから死後に採取した肺組織における、Appチャレンジの全21日間の前炎症性サイトカイン(IL-8)のmRNAの発現を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図50】生理食塩水、低もしくは高用量のIL-1ra、またはIL-1ra+IL-4(相乗作用)によって処理したブタから死後に採取した肺組織における、Appチャレンジの全21日間の前炎症性サイトカイン(TNFα)のmRNA発現を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図51】高または低用量でIL-1ra、生理食塩水、またはエクセナルによって後に処理したブタにおける、Appチャレンジの2週の増加した重量を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図52】Appチャレンジし、その後に高または低用量でIL-1ra、生理食塩水、またはエクセナルによって処理したブタにおける飼料摂取を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図53】Appチャレンジし、その後に高または低用量でIL-1ra、生理食塩水、またはエクセナルによって処理したブタにおける飼料利用効率を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図54】Appチャレンジし、その後に高または低用量でIL-1ra、生理食塩水、またはエクセナルによって処理したブタについて、殺されたAppでの刺激に応答したリンパ球の増殖能を示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。
【図55】Appチャレンジし、その後に高または低用量でIL-1ra、生理食塩水、またはエクセナルによって処理したブタにおいて、死後の肺に見られる前炎症性サイトカインIL-8のmRNAのレベルを示す。バーは群の平均値および標準誤差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つまたは複数の抗炎症剤の成長促進量を、それを必要とする動物に投与する段階を含む、動物の成長成績を改善する方法。
【請求項2】
抗炎症剤が、任意選択的に薬学的担体、アジュバント、または賦形剤と組み合わせて投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
動物の成長成績を改善する方法であって、その必要がある動物に、抗炎症剤を、抗生物質と共に、任意選択的に薬学的担体、アジュバント、または賦形剤と組み合わせて含む組成物を投与する段階を含み、該組成物は、相乗的成長促進作用を示す方法。
【請求項4】
動物の成長成績を改善する方法であって、その必要がある動物に、内因性の抗炎症剤レベルを増加または補足する化合物または組成物を投与する段階を含み、成長成績が、該化合物または組成物を投与していない動物の成長成績と比較して増強される方法。
【請求項5】
化合物または組成物が、一つまたは複数の抗炎症剤の成長促進量の投与の前に、投与と共に、または投与の後に投与される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
化合物または組成物が、前炎症性のサイトカイン受容体のアンタゴニストを含む、請求項4または請求項5記載の方法。
【請求項7】
アンタゴニストが、TNF-α受容体、GM-CSF受容体、IL-6受容体、IL-1受容体、IL-4受容体、またはIL-8受容体のものである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
化合物または組成物が、IL-10、1,8-ナフトスルタム置換化合物、またはキノキサリン化合物を含む、請求項4〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
化合物または組成物が、前炎症性のサイトカインの量を減少させることによって抗炎症剤の内因性レベルを増大させる、請求項4または請求項5記載の方法。
【請求項10】
抗炎症剤が、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片であって、抗炎症効果またはジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フルニクス、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、チアプロフェン酸、およびトルメチンからなる群より選択される抗炎症剤を有する、請求項1〜3または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
可溶性サイトカイン受容体またはこれらの生物活性断片が、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-1受容体、IL-4受容体、およびIL-8受容体、または動物の成長成績を改善することができるこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
可溶性サイトカイン受容体またはこれらの生物活性断片が、IL-1受容体、IL-4受容体、IL-8受容体、またはこれらの組み合わせのいずれかである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
可溶性サイトカイン受容体またはこれらの生物活性断片が、IL-1受容体である、請求項10記載の方法。
【請求項14】
サイトカイン受容体アンタゴニストまたはこれらの生物活性断片が、IL-1ra、IL-6ra、IL-8raおよびTNF-αraからなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
サイトカイン受容体アンタゴニストまたはこれらの生物活性断片がIL-1raである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
サイトカイン阻害因子またはこれらの生物活性断片が、TNFブロッキング因子およびTNFα阻害剤からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
抗生物質を投与する段階をさらに含む、請求項1、2、4〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
抗生物質を投与する段階が、抗炎症剤の投与の前または後である、請求項3記載の方法。
【請求項19】
抗生物質が、アモキシシリン、ペニシリン、プロカイン、アンピシリン、クロキサシリン、ペニシリンG、ベンザチン、ベネタミン、セフチオフル、セファロニウム、セフロキシム、エリスロマイシン、タイロシン、チルミコシン、オレアンドマイシン、キタサマイシン、リンコマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、ネオマイシン、アプラマイシン、ストレプトマイシン、アボパルシン、ジメトリダゾール、スルホンアミド(トリメトプリムおよびジアベリジンを含む)、バシトラシン、バージニアマイシン、モネンシン、サリノマイシン、ラサロシッド、ナラシンおよびオラキンドクスまたはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3または請求項17記載の方法。
【請求項20】
抗生物質が、リンコマイシン、スペクチノマイシン、もしくはアモキシシリン、またはこれらの組み合わせのいずれかである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
投与が、経口、局所、または非経口投与である、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
非経口投与が、皮下注射、エアロゾル、静脈内、筋肉内、腱鞘内、胸骨内の注射、注入技術、または封入された細胞のいずれかによるものである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
投与が、単回投与単位または多数回投与単位のいずれかである、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
投与が、水および/または飼料の添加剤として経口投与される、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
動物の成長成績が、成長速度の増加、飼料利用効率の増加、最終体重の増加、仕上げ重量の増加、および脂肪含有量の減少からなる群より選択される、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
動物の成長成績の改善が、免疫増強、抗寄生虫もしくは抗微生物作用、抗炎症作用、またはストレスの減少によって起こる、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
動物が、偶蹄目または鳥類のいずれかである、請求項1〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
偶蹄目が、ウシ、ブタ、ヒツジ、ラクダ、ヤギ、およびウマからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
鳥類が、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、およびカモからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
動物が、ウシ、ブタ、またはヒツジのいずれかである、請求項27記載の方法。
【請求項31】
一つまたは複数の薬学的担体、アジュバント、または賦形剤と共に、一つまたは複数の抗炎症剤を含む成長促進組成物。
【請求項32】
可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片であって、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フルニクス、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、チアプロフェン酸、およびトルメチンからなる群より選択される抗炎症剤を含む、請求項31記載の成長促進組成物。
【請求項33】
一つもしくは複数の可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片と、一つもしくは複数の異なる可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片、または一つもしくは複数の異なる抗炎症剤とを含む、請求項32記載の成長促進組成物。
【請求項34】
一つの可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片、および一つの異なる抗炎症剤または薬学的担体、アジュバント、もしくは賦形剤を含む、請求項32記載の成長促進組成物。
【請求項35】
可溶性サイトカイン受容体またはこれらの生物活性断片が、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-1受容体、IL-4受容体、およびIL-8受容体、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項32記載の成長促進組成物。
【請求項36】
可溶性サイトカイン受容体またはこれらの生物活性断片が、IL-1受容体、IL-4受容体、IL-8受容体、またはこれらの組み合わせのいずれかである、請求項32記載の成長促進組成物。
【請求項37】
可溶性サイトカイン受容体またはこれらの生物活性断片が、IL-1受容体である、請求項32記載の成長促進組成物。
【請求項38】
サイトカイン受容体アンタゴニストまたはこれらの生物活性断片が、IL-1ra、IL-6ra、IL-8ra、およびTNF-αraからなる群より選択される、請求項32記載の成長促進組成物。
【請求項39】
サイトカイン受容体アンタゴニストまたはこれらの生物活性断片が、IL-1raである、請求項32記載の成長促進組成物。
【請求項40】
サイトカイン阻害因子またはこれらの生物活性断片が、TNFブロッキング因子およびTNFα阻害剤からなる群より選択される、請求項32記載の成長促進組成物。
【請求項41】
一つまたは複数の抗生物質をさらに含む、請求項31〜40のいずれか一項記載の成長促進組成物。
【請求項42】
抗生物質が、アモキシシリン、ペニシリン、プロカイン、アンピシリン、クロキサシリン、ペニシリンG、ベンザチン、ベネタミン、セフチオフル、セファロニウム、セフロキシム、エリスロマイシン、タイロシン、チルミコシン、オレアンドマイシン、キタサマイシン、リンコマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、ネオマイシン、アプラマイシン、ストレプトマイシン、アボパルシン、ジメトリダゾール、スルホンアミド(トリメトプリムおよびジアベリジンを含む)、バシトラシン、バージニアマイシン、モネンシン、サリノマイシン、ラサロシッド、ナラシンおよびオラキンドクスまたはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項41記載の成長促進組成物。
【請求項43】
抗生物質が、リンコマイシン、スペクチノマイシン、もしくはアモキシシリン、またはこれらの組み合わせである、請求項42記載の成長促進組成物。
【請求項44】
動物の成長成績を改善する方法であって、その必要がある動物に、一つまたは複数の抗炎症剤をコードする核酸分子を投与する段階を含み、該核酸分子の発現により、一つまたは複数の抗炎症剤の増殖を促進する有効な量が産生される方法。
【請求項45】
核酸分子が、DNA、cDNA、RNA、またはこれらのハイブリッド分子である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
核酸分子が、全長分子またはこれらの生物活性断片である、請求項44または請求項45記載の方法。
【請求項47】
核酸分子が、可溶性サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片をコードするDNA分子である、請求項30〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
DNAが、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-1受容体、IL-4受容体、およびIL-8受容体からなる群より選択されるサイトカイン受容体、もしくはこれらの組み合わせ、またはIL-1ra、IL-6ra、およびTNF-αraからなる群より選択されるサイトカイン受容体アンタゴニストをコードする、請求項47記載の方法。
【請求項49】
核酸分子が、動物ゲノムに組み込まれるか、または細胞質因子である、請求項44〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
核酸分子が、皮下に、静脈内に、もしくは筋肉内に注射によって投与されるか、またはエアロゾルとして投与される、請求項44〜49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
核酸分子が、約1μg〜2000μg/用量の量で投与される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
核酸分子が、約5μg〜1000μg/用量の量で投与される、請求項50記載の方法。
【請求項53】
核酸分子が、約6μg〜200μg/用量の量で投与される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
核酸分子が、ベクターにおいてまたは裸のDNA分子として投与される、請求項44〜53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
ベクターが、ブタアデノウイルスベクターである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片の有効な量をインビボで送達するための構築物であって:
a)サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片をコードするヌクレオチド配列;
b)サイトカイン受容体、サイトカイン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害因子、またはこれらの生物活性断片が産生され、次にこれが動物の成長成績を改善するように、調節配列がa)のヌクレオチド配列の発現を制御することができる、調節配列を含むベクター、
を含む構築物。
【請求項57】
動物の成長成績を改善するために使用されるキットであって:
a)一つまたは複数の抗炎症剤;
b)該抗炎症剤のための送達装置;および、
c)本発明の方法に使用される説明書
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【公開番号】特開2008−1707(P2008−1707A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180420(P2007−180420)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【分割の表示】特願2002−592737(P2002−592737)の分割
【原出願日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【出願人】(500026418)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (13)
【Fターム(参考)】