説明

動物の育成方法

【課題】動物の自己免疫力を強化することにより、動物が病気になる率を効果的に低減することができる動物の育成方法を提供すること。
【解決手段】10kHz〜2400kHzの超音波とともに、各種周波数が混在する複合音波を水に印加して、水の活性度を高める。特に、20kHz〜1500kHzの超音波を複合音波とともに印加する。このようにして得た活性水は、解離易度が高いので、生命化学反応に効果的に寄与するので、自己免疫力強化資材とともに動物に与えれば、動物の自己免疫力を強化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の育成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種機能を高めた活性水については、従来、明確な定義が存在しておらず、それ故、その評価方法も確立していなかったので、本願出願人は、イオンのみが透過可能な隔膜によって第1の電解室と第2の電解室とを仕切った状態で前記第1の電解室と前記第2の電解室とに同じ被検水を貯留させるとともに、各々電極を浸漬して電解を行った後の各電解室の被検水の水素イオン濃度の差を水の活性度と定義することを提案している(特許文献1参照)。
【0003】
また、原水の種類にかかわらず、活性度を確実かつ効率よく高める方法として、被処理対象水に超音波および複合音波を印加することを提案している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−104221号公報
【特許文献2】特開2007−105677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は、このような方法で定義される水の活性度は生物の生体活動と深い関連があるという新たな知見を得、動物の育成に利用することを提案するものであるが、その効果をより確実に発現させる技術を確立したものである。
【0005】
すなわち、本発明の課題は、動物の自己免疫力を強化することにより、動物が病気になる率を効果的に低減することができる動物の成育方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、イオンのみが透過可能な隔膜によって第1の電解室と第2の電解室とを仕切った状態で前記第1の電解室と前記第2の電解室とに同じ被検水を貯留させるとともに、各々電極を浸漬して電解を行った後の各電解室の被検水の水素イオン濃度の差を水の活性度としたとき、処理対象水に対して、超音波、および超音波域よりも低い可聴域で複数の周波数が混在している複合音波の双方を印加して前記活性度を高めた活性水を、酵素、酵母、ミネラル、微生物、あるいは免疫賦活物質からなる自己免疫力強化資材とともに動物に与えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、まず、イオンのみが透過可能な隔膜によって仕切られた第1の電解室と第2の電解室とに区画した状態で第1の電解室と第2の電解室とに同じ被検水を貯留させるとともに各々電極を浸漬して電解した後の水素イオン濃度の差を被検水の活性度とする。そして、このような方法で定義された活性度については、処理対象水に対して、超音波および複合音波の双方を印加すれば、超音波のみ、特定周波数の音波のみ、あるいは複合音波のみを印加した場合に比較して確実にかつ効果的に活性度を高めることができる。その理由は、超音波および複合音波の双方を印加すれば、処理対象水に処理を加える際の処理槽の形状などの条件が違っていても、処理対象水の所定の振動を印加できるからと考えられる。また、処理対象水に超音波や複合音波を印加すると、処理対象水の活性度が高まる一方、印加しすぎると、高まった活性度が低下することがあるが、本発明では、活性度を定量的に測定可能な属性で定義したため、活性度を高めた状態で、動物の育成に用いることができる。
【0008】
ここで、本発明における活性度を高めた活性水は、活性度を高める前の水(原水)に比較して、インビトロでの試験では、ウイルス抑制因子や腫瘍壊死因子であるサイトカインの産生量を高める効果があるという知見を得た。そこで、かかる特性を効果的に動物の育成に寄与させるために、本発明に係る活性水を、酵素、酵母、ミネラル、微生物、あるいは免疫賦活物質からなる自己免疫力強化資材とともに動物に与えることを特徴とする。すなわち、自己免疫力強化資材を摂取させるとともに、飲料水など、動物の成育に用いる水として、本発明に係る活性水を用い、自己免疫力強化資材の効果を発揮しやすい体質とする。かかる構成によれば、動物自身が自己免疫力強化資材によってサイトカインを産生するのを、本発明に係る活性水が促進させるため、動物の自己免疫力を確実、かつ効果的に強化することができる。それ故、抗生物質などを与えなくても、動物が病気になる率や死亡する率を効果的に低減することができる。
【0009】
本発明において、処理対象水に印加する超音波には、20kHz〜1500kHzの帯域に含まれるいずれかの周波数の超音波が含まれていることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記超音波および前記複合音波を印加して処理対象水の活性度を高める際、当該処理対象水に酸素ガスを含む気体を供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明における活性度を高めた活性水は、ウイルス抑制因子や腫瘍壊死因子であるサイトカインの産生量を高める効果があるので、本発明に係る活性水を、酵素、酵母、ミネラル、微生物、あるいは免疫賦活物質からなる自己免疫力強化資材とともに動物に与えれば、動物の自己免疫力を確実かつ効果的に強化することができる。それ故、抗生物質などを与えなくても、動物が病気になる率や死亡する率を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[水の活性度]
図1は、水の活性度測定装置の基本構成を示す説明図である。図2(a)、(b)、(c)は、水の解離、解離定数、およびアミノ酸・たんぱく質の脱水縮合反応と加水分解反応の説明図である。
【0013】
まず、本発明に係る活性水の製造方法、およびかかる水を用いた動物の育成方法を説明する前に、図1を参照して、本願における「水の活性度」を測定する方法を説明する。図1に示す活性度測定装置1では、電解隔膜2で隔てた第1の電解室31および第2の電解室32のうち、第1の電解室31には陽極板41を配置する一方、第2の電解室32には陰極板42を配置する。また、第1の電解室31および第2の電解室32には各々、同一の被測定水51、52を同量、貯留させる。次に、直流電源6より夫々の極板41、42に一定電流を所定時間通電する。次に、第1の電解室31および第2の電解室32の各被測定水51、52をよく攪拌した後、水素イオン濃度の検出電極71、72を用いて検出装置8により、各被測定水51、52の水素イオン濃度を検出する。そして、水素イオン濃度の差を濃度差演算器9により算出し、その値を水の活性度の値とする。
【0014】
このような方法によれば、水の活性度を容易に測定でき、かつ、かかる方法で求めた活性度は、各生体活動に寄与する効果を高い相関性をもって把握できる。すなわち、生命化学反応は、水の一部が解離していることにより支えられており、本願で定義した「活性度」は、水の解離しやすさ(解離易度)を示す以上、水の生命化学反応と大きな関係を有する。
【0015】
すなわち、水の解離は、図2(a)に示すように表され、その際の解離定数は、図2(b)に示すように、温度のみで規定されると理解されている。但し、以下に説明する水処理方法によれば、かかる解離定数を高めたのと同様な挙動を示す。一方、生体反応(新陳代謝)の基本であるアミノ酸・たんぱく質の脱水縮合反応と加水分解反応には、図2(c)に示すように、水がイオンとして関与していることから、水の解離定数が高まれば、その分、生体反応(新陳代謝)が活発化し、自己免疫力が高まるといえる。
【0016】
ここに本願発明者等は、本発明における「活性度」を高めた活性水を用いて、高める前の水(原水)に比較して、インビトロでの試験を行ったところ、本発明に係る活性水によれば、ウイルス抑制因子や腫瘍壊死因子であるサイトカインの産生量を高める効果があるという知見を得た。そこで、かかる特性を効果的に動物の育成に寄与させるために、本発明に係る活性水を、酵素、酵母、ミネラル、微生物、あるいは免疫賦活物質からなる自己免疫力強化資材とともに動物に与えることを特徴とする。かかる自己免疫力強化資材としては、例えば、納豆菌を用いて造った納豆粉末などの酵素や酵母、セレン、亜鉛、銅などのミネラル、バイオ材料として用いられる乳酸菌などの微生物、免疫賦活物質を挙げることができる。免疫賦活物質としては、サポニン、キラヤサポニン、ハーブ、ポリリン酸、チャーガ、ペプチドグリカン、リポ多糖類、ペプチド、多糖類(β−1,3−グリカン)、キチン、キトサン、ラクトフェリン、有機酸などを挙げることができ、これらの免疫賦活物質は、動物が病気の原因となる細菌やウイルスに感染したときにそれを排除したり殺す機能(自然免疫)を活性化して抵抗力を増強する物質のことをいう。
【0017】
[活性水の製造方法1]
図3は、各種原水およびこれらの原水に活性化処理を行った後の活性度を比較して示すグラフである。図4は、活性化処理時間と活性度との関係を示すグラフである。図5は、活性化の際の処理条件と活性度との関係を示すグラフである。図6は、複合音波の説明図である。
【0018】
本願発明者は、上記の活性水を製造するには水に物理力を作用させればよく、特に、水に超音波と複合音波を作用させれば、多数のマイクロバブルあるいはナノバブルが発生するとともに、活性度が容易に、かつ、効率よく高めることができるという知見を得ている。具体的には水タンクに貯留した水に超音波と複合音波とを同時に印加する。
【0019】
その結果、図3に示すように、水の初期活性度は、原水によって相違するが、いずれの原水を用いた場合も、本発明を適用すれば活性度が向上するため、原水の活性度が低い場合でも、生体活動に有益な活性水を製造することができる。また、図4に示すように、水の活性度は超音波や複合音波の印加時間が長くなるに伴って向上する。
【0020】
そこで、本願出願人は、このような物理力の印加条件を種々、検討し、図5に示す結果を得た。図5には、各種処理条件と、処理後の活性度との関係を示すグラフであり、図5には、対照として、「複合音波も超音波も印加無し」の条件(原水の活性度)、「複合音波のみ」を印加して超音波を印加しない条件、「10kHz〜2400kHzの超音波のみ」を印加して複合音波を印加しない条件での活性度を示してある。また、図5には、本発明の実施例として、「10kHz〜2400kHzの超音波とともに、複合音波」を印加した条件で水を活性化した結果を示してある。いずれの条件でも、音波および超音波の出力レベルは同一であり、かつ、印加時間は同一である。なお、「音波」とは、超音波域よりも低周波数の可聴域の音波を意味し、かつ、「複合音波」とは、図6(a)あるいは図6(b)に示すように、超音波域とそれより低い可聴域で複数の周波数の音波が混在している音波のことを意味する。
【0021】
図5に示す結果からわかるように、「複合音波も超音波も印加無し」の条件(原水の活性度)では、活性度が0.8であったのに対して、複合音波のみを印加すると、活性度が1.4まで上昇することがわかる。また、10kHz〜2400kHzの超音波のみを印加した場合にも、活性度が上昇することがわかる。但し、本発明を適用した状態、すなわち、10kHz〜2400kHzの超音波とともに複合音波を印加した場合には、水の活性度をより効率よく高めることが確認できた。よって、本発明では、超音波および複合音波の双方を印加して活性度を高める。
【0022】
また、図5に示す結果からわかるように、各種帯域のうち、28kHz、46kHz、60kHz、70kHz、108kHz、1500kHzの超音波を複合音波とともに印加した場合には、10kHz、2400kHzの超音波を複合音波とともに印加した場合に比較して、活性度を効率よく高めることができる。
【0023】
さらに、図5に示す結果、およびその他の実験結果から、処理対象水に印加する超音波には、少なくとも、20kHz〜1500kHzの域に含まれる周波数の超音波が含まれている場合に活性度を効果的に高めることができることが確認できている。
【0024】
[活性水の製造方法2]
本発明では、処理対象水に超音波および複合音波を印加して活性度を高める際、空気など、酸素を含有する気体を処理対象水に吹き込むことを第2の特徴とする。本形態でも、処理対象水に印加する超音波には、少なくとも、20kHz〜1500kHzの域に含まれる周波数の超音波が含まれていることが好ましい。
【0025】
[インビトロでの評価結果]
図7は、インビトロでのサイトカイン産生量に対する、本発明に係る活性水の効果を示すグラフである。
【0026】
マウス由来マクロファージ様細胞株J774.1(1.5×105個/well)にサンプルの水を添加し、一定時間反応させた後のサイトカイン(TNF−α、IL−6、IL−12)の各産生量を比較したところ、図7(a)、(b)、(c)に示す結果を得た。図7(a)、(b)、(c)から分るように、原水に比較して、本発明を適用した活性水によれば、TNF−α、IL−6、IL−12)の産生量が高まることが確認できた。すなわち、本発明に係る活性水によれば、免疫細胞を活性化させ、サイトカインの産生を高めることができ、ウイルスや腫瘍を壊滅させる自己免疫力を強化することができる。なお、図7(a)、(b)、(c)には、LPSを与えた場合の結果も示してある。
【0027】
[動物の育成結果]
図8は、豚の死亡率の季節変化に対する、本発明に係る活性水の効果を示すグラフである。本発明を適用した活性水は、サイトカインの産生を促進することから、本発明を適用した動物の育成方法では、本発明に係る活性水を酵素、酵母、ミネラル、微生物、あるいは免疫賦活物質からなる自己免疫力強化資材とともに動物に与えることを特徴とする。かかる効果を検証するために、自己免疫力強化資材として納豆粉末を豚に与えながら飼育する際、対照区では原水を与え、試験区では、本発明を適用した活性水を与えた。そして、年間を通して、豚が病気になる率を調査したところ、図8に示す結果を得た。
【0028】
図8に示す結果から分るように、自己免疫力強化資材および活性水を与えた試験区では、年間を通して、自己免疫力強化資材および原水を与えた対照区と比較して、豚が病気になり死亡する率が低いことが確認できた。
【0029】
なお、図示を省略するが、自己免疫力強化資材を一切、与えずに原水を与えた場合には、豚が病気になり死亡する率が図8に示すレベルに比較して極めて高いという結果であった。また、自己免疫力強化資材を一切、与えずに活性水を与えた場合には、原水を与えた場合に比較して、豚が病気になり死亡する率が低いものの、図8に示すレベルに比較して高い傾向にあった。よって、自己免疫力強化資材および活性水を与えれば、動物の自己免疫力を強化することができるので、抗生物質を与えなくても、動物が病気になる率や死亡する率を効果的に低減することができる。
【0030】
なお、対象となる動物については、豚に限らず、人や馬、牛や鶏などの家畜の育成、犬、猫、鳥などのペットの育成、さらには魚類や貝類などの水生生物の育成に本発明を適用してもよい。また、上記形態では、本発明に係る活性水とともに与える自己免疫力強化資材として納豆粉末を与えた例を説明したが、納豆粉末等の酵素、酵母、セレン、亜鉛、銅などのミネラル、バイオ材料として用いられる乳酸菌などの微生物、サポニン、キラヤサポニン、ハーブ、ポリリン酸、チャーガ、ペプチドグリカン、リポ多糖類、ペプチド、多糖類(β−1,3−グリカン)、キチン、キトサン、ラクトフェリン、有機酸などの免疫賦活物質などの自己免疫力強化資材を、本発明に係る活性水とともに与えれば、自己免疫力強化資材を通常の水とともに与えた場合と比較して、動物の自己免疫力を強化することができるので、抗生物質を与えなくても、動物が病気になる率を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】水の活性度測定装置の基本構成を示す説明図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は、水の解離、解離定数、およびアミノ酸・たんぱく質の脱水縮合反応と加水分解反応の説明図である。
【図3】各種原水およびこれらの原水に活性化処理を行った後の活性度を比較して示すグラフである。
【図4】活性化処理時間と活性度との関係を示すグラフである。
【図5】活性化の際の処理条件と活性度との関係を示すグラフである。
【図6】複合音波の説明図である。
【図7】インビトロでのサイトカイン産生量に対する、本発明に係る活性水の効果を示すグラフである。
【図8】豚の死亡率の季節変化に対する、本発明に係る活性水の効果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 活性度測定装置
2 電解隔膜
31 第1の電解室
32 第2の電解室
41 陽極板
42 陰極板
51、52 被測定水
6 直流電源
71、72 検出電極
8 検出装置
9 濃度差演算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の育成方法であって、
イオンのみが透過可能な隔膜によって第1の電解室と第2の電解室とを仕切った状態で前記第1の電解室と前記第2の電解室とに同じ被検水を貯留させるとともに、各々電極を浸漬して電解を行った後の各電解室の被検水の水素イオン濃度の差を水の活性度としたとき、
処理対象水に対して、超音波、および超音波域よりも低い可聴域で複数の周波数が混在している複合音波の双方を印加して前記活性度を高めた活性水を、酵素、酵母、ミネラル、微生物、あるいは免疫賦活物質からなる自己免疫力強化資材とともに動物に与えることを特徴とする動物の育成方法。
【請求項2】
処理対象水に印加する超音波には、20kHz〜1500kHzの帯域に含まれるいずれかの周波数の超音波が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の動物の育成方法。
【請求項3】
前記超音波および前記複合音波を印加して処理対象水の活性度を高める際、当該処理対象水に酸素ガスを含む気体を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の動物の育成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−225748(P2009−225748A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77613(P2008−77613)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(391039586)株式会社ミカサ (3)
【Fターム(参考)】